説明

直流モータ

【課題】出力を低下させることなく電機子コイルによる大型化を抑制するとともに、振動を抑制することができる直流モータを提供する。
【解決手段】直流モータM1の電機子コア12は、5本のティース21〜25を備える。電機子コア12には、各ティース21〜25の基端側にそれぞれ巻回されて径方向に互いに重なることなく周方向に並ぶ複数の内層コイル42a〜42eと、内層コイル42a〜42eよりも外周側で隣り合う2つのティース21〜25にそれぞれ分布巻にて巻回されて径方向に互いに重なることなく周方向に並ぶ複数の外層コイル43a〜43eとが巻装されている。そして、各内層コイル42a〜42eの周方向の中心と各外層コイル43a〜43eの周方向の中心とは周方向にずれていることを特徴とする直流モータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、周方向に並設された複数の磁極を有する固定子と、該固定子と径方向に対向する電機子とを備えた直流モータがある。電機子は、放射状に延びる複数のティース(突極)を有する電機子コアを備え、該電機子コアには、周方向に隣り合うティース間の空間であるスロットを通るように複数の電機子コアが巻装されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された直流モータにおいては、複数の電機子コイルは、複数のティースを跨ぐように巻回される分布巻にて電機子コアに巻装されている。また、特許文献2に記載された直流モータにおいては、複数の電機子コイルは、ティース毎に集中して巻回される集中巻にて電機子コアに巻装されている。そして、一般的に、分布巻の電機子コイルを有する直流モータは、集中巻の電機子コイルを有する直流モータに比べて、電機子コアと磁極との間の磁気による加振力が小さいため、騒音及び振動の低減に有利である。一方、集中巻の電機子コイルを有する直流モータは、電機子コイルの占積率が高いため、高出力化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−116813号公報
【特許文献2】特開2004−88915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電機子コイルが分布巻きで電機子コアに巻装される場合、電機子コイルにおける電機子コアの軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位であるコイルエンド部が軸方向に重なり合うため、直流モータの大型化を招いてしまう。そして、直流モータの大型化を抑制するためにコイルエンド部の軸方向高さを抑えようとすると、電機子コイルの巻数が減少されてしまい、直流モータの出力低下を招いてしまう。
【0006】
一方、電機子コアに対し電機子コイルが集中巻にて巻装された直流モータにおいては、磁極とティース(突極)との差が少ないために磁束の変動が急激となってしまい、直流モータの駆動時に電機子コアに加振力が作用して大きな振動が発生する虞があった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、出力を低下させることなく電機子コイルによる大型化を抑制するとともに、振動を抑制することができる直流モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、周方向に並設された複数の磁極と、周方向に並設された複数のティースを有し前記ティースの先端が前記磁極と径方向に対向される電機子コアと、前記ティースに巻回された複数の電機子コイルと、周方向に並設された複数のセグメントを有し前記電機子コアと一体回転可能に設けられた整流子と、前記セグメントに押圧接触される複数の給電ブラシと、を備えた直流モータであって、各前記ティースは、その先端部に、周方向に離間するように分岐して二股状をなす一対の分岐ティース部を有し、複数の前記電機子コイルは、各前記ティースの基端部に集中巻にてそれぞれ巻回されて径方向に互いに重なることなく周方向に並ぶ複数の内層コイルと、前記内層コイルよりも外周側で隣り合う2つの前記ティースの隣り合う2つの前記分岐ティース部にそれぞれ分布巻にて巻回されて径方向に互いに重なることなく周方向に並ぶ複数の外層コイルとであり、各前記内層コイルの周方向の中心と各前記外層コイルの周方向の中心とが周方向にずれており、前記整流子は、前記セグメントを前記ティースの2倍の数だけ備え、複数の前記セグメントのうちn個(nは2以上の偶数)の前記セグメントには、前記内層コイルの端部及び前記外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りの前記セグメントのうち半数の前記セグメントには、2つの前記内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数の前記セグメントには、2つの前記外層コイルの端部が1本ずつ接続されていることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、外層コイルは、内層コイルよりも外周側でティースに巻回されているため、内層コイルと軸方向に重ならない。従って、内層コイル及び外層コイルのコイルエンド部が軸方向に大きくなることを抑制でき、ひいては本発明の直流モータの軸方向の大型化を抑制することができる。そして、コイルエンド部の軸方向高さを抑えるために内層コイル及び外層コイルの巻数を減少させなくてもよいため、出力を低下させることなく直流モータの軸方向の大型化を抑制することができる。また、分布巻の電機子コイルを備えた従来の直流モータと同等の大きさとする場合には、内層コイル及び外層コイルの巻数を増加させて占積率を高くできるため、直流モータの高出力化を図ることができる。更に、各内層コイルの周方向の中心と各外層コイルの周方向の中心とが周方向にずれているため、集中巻の電機子コイルを備えた直流モータに比べて磁束の変動を緩やかにすることが可能である。従って、直流モータの駆動時に発生する振動を抑制することができる。
【0010】
また、各ティースは、その先端部に、周方向に離間するように分岐して二股状をなす一対の分岐ティース部を有するため、ティースの基端部に内層コイルを巻回し、周方向に隣り合うティースに跨るように周方向に隣り合う2つの分岐ティース部に外層コイルを巻回することにより、内層コイルの外周側に容易に外層コイルを形成することができるとともに、各内層コイルの周方向の中心と各外層コイルの周方向の中心とを容易に周方向にずらすことができる。また、内層コイルは、ティースの基端部、即ち分岐していない部分に集中巻にて巻回されているため、ティースの基端部付近を高占積率とすることができる。
【0011】
また、(n/2)個のフライヤを用いて、連続して内層コイル及び外層コイルを電機子コアに巻装することができる。nが2である場合には、全ての内層コイルを巻回した後に外層コイルを巻回することにより、1本の導線で連続して全ての内層コイル及び外層コイルを電機子コアに巻回することができる。一方、nが4以上である場合には、複数個のフライヤを同時に用いて、内層コイルを巻回した後に外層コイルを巻回することにより、各フライヤにおいて1本の導線で連続して内層コイル及び外層コイルを巻回することができる。そして、複数のフライヤを同時に用いた場合には、内層コイル及び外層コイルの巻回に要する時間を短縮することができ、直流モータの生産性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の直流モータにおいて、前記磁極をP個(Pは偶数)備え、(360/(P/2))°間隔に位置する(P/2)個の前記セグメント同士を短絡する短絡線を介して、複数の前記セグメントのうち2個の前記セグメントに前記内層コイルの端部及び前記外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りの前記セグメントのうち半数の前記セグメントに2つの前記内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数の前記セグメントに2つの前記外層コイルの端部が1本ずつ接続されたことをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、短絡線も含めて全ての内層コイル及び外層コイルを1本の導線で連続して巻回することが可能である。そして、短絡線も含めて全ての内層コイル及び外層コイルを1本の導線で連続して巻回すると、内層コイル及び外層コイルの巻回時に連続して短絡線も形成されるため、別途短絡部材を形成して配置する場合に比べて製造工程の数が減少される。従って、直流モータの生産性が向上する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の直流モータにおいて、前記整流子は、前記セグメントを前記磁極の数の整数倍の数だけ備え、前記電機子コアは、隣り合う前記ティース間に前記内層コイルが挿通される内側スロットを備えるとともに、各前記ティースの対をなす前記分岐ティース部間に前記外層コイルが挿通される外側スロットを前記内側スロットと同数備え、前記内側スロット及び前記外側スロットの合計が前記セグメントの数と同じ数であり、陽極の前記給電ブラシと陰極の前記給電ブラシとは、前記磁極の周方向の中心を通る磁極中心線上の通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置され、陽極の前記給電ブラシによる整流と陰極の前記給電ブラシによる整流とが交互に行われることをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、内側スロット及び外側スロットの合計数が磁極の数で割り切れる場合であっても、陽極の給電ブラシによる整流と陽極の給電ブラシによる整流とが交互に行われるようになる。従って、異極の給電ブラシによる整流が同時に行われる構成の直流モータに比べて、直流モータの駆動時における電流値の変化量を小さくすることができ、磁気音を低減させることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の直流モータにおいて、各前記給電ブラシにおける前記セグメントに摺接する摺接部に隣接するとともに、隣接する前記給電ブラシの通常位置から隣接する前記給電ブラシがシフトされた方向と反対方向にシフトして配置される高抵抗ブラシを設けたことをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、各給電ブラシがセグメントと接触する際、及び離間する際の火花の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、出力を低下させることなく電機子コイルによる大型化を抑制するとともに、振動を抑制することが可能な直流モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の直流モータの断面図。
【図2】第1実施形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図3】第1実施形態の直流モータにおけるコイルエンド部を示す模式図。
【図4】従来の分布巻の電機子コイルを備えた直流モータにおけるコイルエンド部を示す模式図。
【図5】従来の分布巻の電機子コイルを備えた直流モータの断面図。
【図6】従来の分布巻の電機子コイルを備えた直流モータを平面状に展開した模式図。
【図7】第2実施形態の直流モータの断面図。
【図8】第2実施形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図9】第3実施形態の直流モータの断面図。
【図10】第3実施形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図11】集中巻の内層コイル及び外層コイルを備えた直流モータの断面図。
【図12】集中巻の内層コイル及び外層コイルを備えた直流モータを平面状に展開した模式図。
【図13】第4実施形態の直流モータの概略図。
【図14】第4実施形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図15】第5実施形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図16】第5実施形態の直流モータの概略図。
【図17】第5実施形態の直流モータの概略図。
【図18】従来の直流モータの概略図。
【図19】従来の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図20】従来の直流モータの概略図。
【図21】スロットの総数及び磁極の数と問題点との関係を説明するための説明図。
【図22】(a)は第5実施形態の直流モータにおける時間と誘起電圧との関係を示すグラフ、(b)は第5実施形態の直流モータにおける時間と電機子コイルに供給される電流との関係を示すグラフ。
【図23】(a)は従来の直流モータにおける時間と誘起電圧との関係を示すグラフ、(b)は従来の直流モータにおける時間と電機子コイルに供給される電流との関係を示すグラフ。
【図24】別の形態の直流モータの概略図。
【図25】別の形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図26】別の形態の直流モータの概略図。
【図27】別の形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図28】別の形態の直流モータの内層コイルの態様を説明するための説明図。
【図29】別の形態の直流モータの外層コイルの態様を説明するための説明図。
【図30】別の形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図31】別の形態の直流モータの内層コイルの態様を説明するための説明図。
【図32】別の形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図33】別の形態の直流モータを平面状に展開した模式図。
【図34】別の形態の直流モータの断面図。
【図35】別の形態の直流モータの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本第1実施形態の直流モータM1の断面図を示す。図1に示すように、直流モータM1は、固定子1と、該固定子1の内側に配置された電機子2とを備えている。固定子1を構成する略円筒状のヨークハウジング3の内周面には、磁極としての4個のマグネット4a〜4dが固着されている。マグネット4a〜4dは、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)となるように、且つN極とS極とが周方向に交互となるように配置されている。そして、直流モータM1は、4個のマグネット4a〜4dを有することにより磁極の数Pが「4」となっている。
【0021】
図1及び図2に示すように、前記電機子2は、回転軸11と、該回転軸11に固定された電機子コア12と、同じく回転軸11に固定された略円筒状の整流子13とを備えている。この電機子2は、回転軸11が前記固定子1によって軸支されることにより、固定子1に対して回転可能に支持されている。そして、電機子コア12及び整流子13は、共に回転軸11に固定されることにより、回転軸11の回転に伴って一体回転される。電機子2が固定子1の内側に配置された状態においては、電機子コア12がマグネット4a〜4dと径方向に対向するとともに、整流子13の外周に配置された陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が同整流子13に摺接可能に押圧接触される。陽極側ブラシ14と陰極側ブラシ15とは、周方向に隣り合うマグネット4a〜4d間の間隔と同じ90°の間隔を空けて配置されている。また、陽極側ブラシ14は、N極のマグネット4aの周方向中心と対応する位置に配置されるとともに、陰極側ブラシ15は、S極のマグネット4bの周方向中心と対応する位置に配置されている。そして、電機子2には、これら陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15を介して電流が供給される。
【0022】
図2に示すように、整流子13は、絶縁性樹脂材料よりなる円筒状の保持部材(図示略)の外周面に並設された10個のセグメント16を備えている。尚、図2は、直流モータM1を平面状に展開した模式図である。10個のセグメント16は、保持部材の外周で略円筒状をなすように配置されており、径方向外側から前記陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が押圧接触される。本実施形態では、図2に示すように、周方向に並設された10個のセグメント16に対し、セグメント番号「1」〜「10」を付すことにする。
【0023】
また、整流子13において、同じ極のマグネットが配置される角度間隔と同じ角度間隔で配置されたセグメント16同士は、セグメント16の軸方向一端に固定された短絡部材17によって短絡(電気的に接続)されている。具体的には、固定子1において、N極の2つのマグネット4a,4c(若しくはS極の2つのマグネット4b,4d)は、180°間隔で配置されている。従って、180°間隔を開けて配置された2つのセグメント16(例えば、セグメント番号「1」のセグメント16とセグメント番号「6」のセグメント16)が短絡部材17によって互いに短絡されて同電位とされる。そして、図2には、短絡部材17によってセグメント16を短絡することにより陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が配置された状態と同じ状態になる様子を模式的に示すべく、仮想ブラシを二点鎖線にて図示している。尚、短絡部材17は、例えば、導線を用いて所定のセグメント16同士を短絡可能に構成されるものである。また、短絡部材17は、銅板等の導電性板材を所定形状に打ち抜いて形成されるものであってもよい。
【0024】
図1に示すように、前記電機子コア12は、円筒状のコアバック20と、該コアバック20の外周面から径方向外側に向かって延びる5本のティース21〜25とが一体に形成されてなるとともに、コアバック20が前記回転軸11に外嵌されることにより同回転軸11に対して固定されている。ここで、図2に示すように、前記整流子13に備えられるセグメント16の数Sは、電機子コア12に備えられるティース21〜25の数Nに基づいて設定されており、本実施形態では、S=2Nを満たすように設定されている。従って、本実施形態の整流子13に備えられるセグメント16の数Sは「10」に設定されている。
【0025】
図1に示すように、5本のティース21〜25は、コアバック20に対し周方向に等角度間隔(本実施形態では72°間隔)となる位置に一体に形成されている。そして、各ティース21〜25の先端部には、周方向に離間するように二股状に分岐してなる一対の分岐ティース部26a,26bが設けられるとともに、各ティース21〜25は、先端部に分岐ティース部26a,26bが形成されることにより、軸方向から見た形状が略Y字状をなしている。各ティース21〜25に設けられた対の分岐ティース部26a,26bは、先端に向かうに連れて周方向に遠ざかるように形成されており、隣り合う2本のティース(ティース21〜25のうち周方向に隣り合う2本のティース)のうち一方のティースの分岐ティース部26aと、該分岐ティース部26aと隣り合う他方のティースの分岐ティース部26bとの間隔は、対の分岐ティース部26a,26b間の間隔よりも狭くなっている。また、各ティース21〜25において分岐ティース部26a,26bよりも径方向内側となる基端部側の部位は、内側巻回部27とされている。更に、各ティース21〜25において、それぞれ対をなす分岐ティース部26a,26bの先端部には、周方向に沿って延びる板状の延設部28が一体に形成されている。対をなす分岐ティース部26a,26bにそれぞれ形成された2つの延設部28は、分岐ティース部26a,26bの先端部から互いに近づく方向に延設されている。そして、電機子コア12に設けられた合計10個の延設部28は、周方向に等角度間隔に設けられるとともに、全体で略円筒状をなすように形成されている。
【0026】
また、電機子コア12は、周方向に隣り合うティース21〜25間に、内側スロット31を有するとともに、対をなす分岐ティース部26a,26b間に外側スロット32を有する。各内側スロット31は、主として周方向に隣り合う内側巻回部27間の空間によって構成され、各外側スロット32は、対をなす分岐ティース部26a,26b間の空間によって構成されている。本実施形態の電機子コア12は、ティース21〜25を5本備えることから、内側スロット31を5個備えるとともに外側スロット32を5個備える。また、内側スロット31と外側スロット32とは周方向にずれた位置に形成されており、各外側スロット32は、周方向に隣り合う内側スロット31間に位置する。尚、本実施形態では、図2に示すように、5本のティース21〜25の分岐ティース部26a,26bに対し、周方向に順にティース番号「1」〜「10」を付すことにする。ティース番号は、図2中では、分岐ティース部26a,26bの先端部に示した数字である。
【0027】
図1に示すように、上記のように構成された電機子コア12には、導線41が巻回されることにより複数の電機子コイルが巻装されている。複数の電機子コイルは、各ティース21〜25の基端部側の部位である内側巻回部27にそれぞれ巻回された5個の内層コイル42a〜42eと、分岐ティース部26a,26bに巻回された5個の外層コイル43a〜43eとである。
【0028】
ここで、図2を参照して、電機子コア12への内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eの巻回の順序を詳述する。尚、図2では、内層コイル42a〜42eを中線で図示し、外層コイル43a〜43eを太線で図示している。導線41は、まず、セグメント番号「1」のセグメント16のライザに接続され、セグメント番号「1」のセグメント16からティース21の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されることにより内層コイル42aを形成する。次いで、導線41は、セグメント番号「2」のセグメント16のライザにフッキングされ、ティース21,22の合計4つの分岐ティース部26a,26bのうち中央の互いに隣り合う2つの分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「2」の分岐ティース部26bとティース番号「3」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル43aを形成する。尚、本明細書中では、「分布巻」とは、複数のティースに跨って導線を巻回することを意味する。このとき、先に巻回された内層コイル42aと後から巻回された外層コイル43aとは、径方向に互いにずれた位置に形成され、軸方向に重ならないようになっている(図1参照)。また、同内層コイル42aの周方向の中心と同外層コイル43aの周方向の中心とは、電機子コア12の周方向に互いにずれている。
【0029】
以後、同様に、導線41は、内側巻回部27と分岐ティース部26a,26bとに交互に巻回されることにより、内層コイル42b〜42eと外層コイル43b〜43eとを交互に形成していく。そして、導線41は、各内層コイル42b〜42e及び各外層コイル43b〜43eを形成する度に、周方向に並設されたセグメント16に順にフッキングされる。
【0030】
即ち、導線41は、セグメント番号「3」のセグメント16のライザにフッキングされた後に、ティース22の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されることにより内層コイル42bを形成し、セグメント番号「4」のセグメント16のライザにフッキングされる。次いで、導線41は、ティース22,23の合計4つの分岐ティース部26a,26bのうち中央の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「4」の分岐ティース部26bとティース番号「5」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル43bを形成した後に、セグメント番号「5」のセグメント16のライザにフッキングされる。次いで、導線41は、ティース23の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されることにより内層コイル42cを形成した後に、セグメント番号「6」のセグメント16にフッキングされ、ティース23,24の合計4つの分岐ティース部26a,26bのうち中央の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「6」の分岐ティース部26bとティース番号「7」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル43cを形成する。次いで、導線41は、セグメント番号「7」のセグメント16にフッキングされた後に、ティース24の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されることにより内層コイル42dを形成し、セグメント番号「8」のセグメント16にフッキングされた後に、ティース24,25の合計4つの分岐ティース部26a,26bのうち中央の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「8」の分岐ティース部26aとティース番号「9」の分岐ティース部26b)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル43dを形成する。次いで、導線41は、セグメント番号「9」のセグメント16にフッキングされた後に、ティース25の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されることにより内層コイル42eを形成し、セグメント番号「10」のセグメント16にフッキングされた後に、ティース25,21の合計4つの分岐ティース部26a,26bのうち中央の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「10」の分岐ティース部26bとティース番号「1」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル43eを形成する、そして、導線41は、セグメント番号「1」のセグメント16にフッキングされて全ての内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eの巻装を終了する。
【0031】
このように、全ての内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eは、一本の導線41にて最初から最後まで連続して形成されるとともに、内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eの電機子コア12への巻装は図示しない1個のフライヤを用いて自動で行われる。そして、各セグメント16のライザにフッキングされた導線41は、ヒュージング(結線)されて各セグメント16に電気的に接続され、これにより、各内層コイル42a〜42e及び各外層コイル43a〜43eの巻き始めと巻き終わりの端部が、それぞれフッキングされたセグメント16に電気的に接続される。本実施形態では、各セグメント16には、何れか1つの内層コイル42a〜42eの端部と、何れか1つの外層コイル43a〜43eの端部とがそれぞれ1本ずつ接続されている。
【0032】
ここで、図5に、分布巻にて電機子コイルが巻装された従来の直流モータM10の断面図を示とともに、図6に、直流モータM10を平面状に展開した模式図を示す。図5及び図6に示すように、直流モータM10は、略円筒状のヨークハウジング51の内周面に4個のマグネット52を固着してなる固定子53と、該固定子53の内側に該固定子53に対して回転可能に配置された電機子54とを備えている。電機子54の回転軸55に固定された電機子コア56は、回転軸55に外嵌された円筒状のコアバック56aと、該コアバック56aの外周面から径方向外側に向かって放射状に延びる10本のティース56bとが一体に形成されてなる。そして、電機子コア56は、周方向に隣り合うティース56b間に合計10個のスロット56cを有する。この電機子コア56には、10個の電機子コイル57が分布巻にて巻装されるとともに、各電機子コイル57は、1つのスロット56cを跨ぐように2本のティース56bに巻回されている。また、回転軸55には、周方向に並設された10個のセグメント58を有する整流子59が固定されるとともに、各セグメント58には、2つの電機子コイル57の端部が1本ずつ接続されている。更に、整流子59には、電機子コイル57に電流を供給するための陽極側ブラシ61及び陰極側ブラシ62が押圧接触されている。このような分布巻の電機子コイル57を備えた直流モータM10においては、図4に示すように、電機子コイル57のコイルエンド部57aが軸方向に重なり合うため、コイルエンド部57aが軸方向に大きくなってしまう。尚、コイルエンド部57aは、電機子コイル57において、電機子コア56の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位である。
【0033】
一方、図1及び図3に示すように、本実施形態の直流モータM1においては、各内層コイル42a〜42eは、ティース21〜25の内側巻回部27に集中巻にて巻回されているため、内層コイル42a〜42e同士が径方向に互いに重なることがないとともに、内層コイル42a〜42e同士が電機子コア12の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。また、外層コイル43a〜43eは、周方向に隣り合う2本の分岐ティース部26a,26bにそれぞれ巻回されるが、各外層コイル43a〜43eは、それぞれ異なる分岐ティース部26a,26bに巻回されているため、外層コイル43a〜43e同士が径方向に互いに重なることがないとともに、周方向に隣り合う外層コイル43a〜43e同士が電機子コア12の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。更に、外層コイル43a〜43eは内層コイル42a〜42eよりも径方向外側でティース21〜25に巻回されているため、外層コイル43a〜43eと内層コイル42a〜42eとは径方向ずれており電機子コア12の軸方向の両側で軸方向に互いに重なり合わない。これらのことから、内層コイル42a〜42eのコイルエンド部45(各内層コイル42a〜42eにおいて電機子コア12の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位)及び外層コイル43a〜43eのコイルエンド部46(各外層コイル43a〜43eにおいて電機子コア12の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位)が軸方向に重なり合わないため、従来の直流モータM10の分布巻の電機子コイル57(図4参照)よりも、コイルエンド部45,46を軸方向に小さくすることができる。
【0034】
上記したように、本第1実施形態によれば、以下の作用効果を有する。
(1)外層コイル43a〜43eは、内層コイル42a〜42eよりも外周側でティース21〜25に巻回されているため、内層コイル42a〜42eと軸方向に重ならない。従って、内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eのコイルエンド部45,46が軸方向に大きくなることを抑制でき、ひいては直流モータM1の軸方向の大型化を抑制することができる。そして、コイルエンド部の軸方向高さを抑えるために内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eの巻数を減少させなくてもよいため、占積率を低下させることなく、また、出力を低下させることなく直流モータM1の軸方向の大型化を抑制することができる。また、分布巻の電機子コイルを備えた従来の直流モータと同等の大きさとする場合には、内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eの巻数を増加させて占積率を高くできるため、直流モータM1の高出力化を図ることができる。更に、各内層コイル42a〜42eの周方向の中心と各外層コイル43a〜43eの周方向の中心とが周方向にずれているため、集中巻の電機子コイルを備えた直流モータに比べて磁束の変動を緩やかにすることができる。従って、直流モータM1の駆動時に発生する振動を抑制することができる。
【0035】
(2)各ティース21〜25は、その先端部に、周方向に離間するように分岐して二股状をなす一対の分岐ティース部26a,26bを有するため、ティース21〜25の基端部に内層コイル42a〜42eを巻回し、周方向に隣り合うティース21〜25に跨るように周方向に隣り合う2つの分岐ティース部26a,26bに外層コイル43a〜43eを巻回することにより、内層コイル42a〜42eの外周側に容易に外層コイル43a〜43eを形成することができる。更に、各内層コイル42a〜42eの周方向の中心と各外層コイル43a〜43eの周方向の中心とを容易に周方向にずらすことができる。また、内層コイル42a〜42eは、ティース21〜25の基端部、即ち分岐していない部分(内側巻回部27)に集中巻にて巻回されているため、ティース21〜25の基端部付近を高占積率とすることができる。更に、各ティース21〜25が、一対の分岐ティース部26a,26bを有する略Y字状をなすことにより、例えば分岐ティース部26a,26bを有さない10本のティースを備えた電機子コアに内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eを巻回する場合に比べて、スロットの面積を大きく取ることができ、高占積率化を図ることができる。
【0036】
(3)整流子13は、セグメント16をティース21〜25の2倍の数だけ備え、各セグメント16には、内層コイル42a〜42eの端部と外層コイル43a〜43eの端部がそれぞれ1本ずつ接続されることから、内層コイル42a〜42eと外層コイル43a〜43eとを交互に巻回していくことにより、1本の導線41で全ての内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eを連続して形成することができる。従って、電機子コア12への内層コイル42a〜42e及び外層コイル43a〜43eの巻回を容易に行うことができる。
【0037】
(4)全ての電機子コイルが分布巻にて巻装された従来の直流モータでは、電機子コアの軸方向の端面上でコイルエンド部が重なり合うことにより、電機子コイルが軸方向に大きくなることがある。すると、電機子コイルを構成する導線の長さが長くなるため、巻線抵抗が大きくなる虞がる。しかし、本実施形態の直流モータM1においては、内層コイル42a〜42eのコイルエンド部45及び外層コイル43a〜43eのコイルエンド部46は軸方向に重なり合わないため、巻線抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0038】
(5)内層コイル42a〜42eのコイルエンド部45及び外層コイル43a〜43eのコイルエンド部46は軸方向に重なり合わないため、全ての電機子コイルが分布巻にて巻装された従来の直流モータに比べて、電機子2のバランスが良好となる。従って、直流モータM1の駆動時における電機子2の振動をより抑制することができる。
【0039】
(6)各分岐ティース部26a,26bの先端部には、周方向に沿って延びる板状の延設部28が一体に形成されている。従って、この延設部28によって、外層コイル43a〜43eの径方向外側へのはみ出しが防止される。
【0040】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。尚、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図7は、本第2実施形態の直流モータM2の断面図、図8は、直流モータM2を平面状に展開した模式図を示す。本第2実施形態の直流モータM2は、上記第1実施形態の直流モータM1と比較すると電機子の構成が異なる。図7及び図8に示すように、固定子1の内側に配置された電機子81は、回転軸11と、該回転軸11に固定された電機子コア82と、同じく回転軸11に固定された略円筒状の整流子83とを備えている。電機子81は、回転軸11が固定子1によって軸支されることにより、固定子1に対して回転可能に指示されている。そして、電機子81が固定子1の内側に配置された状態においては、電機子コア82がマグネット4a〜4dと径方向に対向するとともに、整流子83の外周に配置された陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が同整流子83に摺接可能に押圧接触される。
【0042】
図8に示すように、整流子83は、絶縁性樹脂材料よりなる円筒状の保持部材(図示略)の外周面に並設された12個のセグメント16を備えている。本実施形態では、図8に示すように、周方向に並設された12個のセグメント16に対し、セグメント番号「1」〜「12」を付すことにする。また、整流子83において、同じ極の磁極が配置される角度間隔と同じ角度間隔で配置されたセグメント16同士は、セグメント16の軸方向の一端に固定された短絡部材85によって短絡されている。即ち、固定子1においてN極の2つのマグネット4a,4cは、180°間隔で配置されているため、180°間隔を開けて配置された2つのセグメント16(例えば、セグメント番号「1」のセグメント16とセグメント番号「7」のセグメント16)が短絡部材85によって互いに短絡されて同電位とされる。そして、図8には、短絡部材85によってセグメント16を短絡することにより陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が配置された状態と同じ状態になる様子を模式的に示すべく、仮想ブラシを二点鎖線にて図示している。
【0043】
図7に示すように、前記電機子コア82は、円筒状のコアバック20と、該コアバック20の外周面から径方向外側に向かって延びる6本のティース91〜96とが一体に形成されてなる。ここで、前記整流子83に備えられるセグメント16の数Sは、上記第1実施形態と同様に電機子コア82に備えられるティース91〜96の数Nに基づいて設定されており、S=2Nを満たすように設定されている。従って、本実施形態の整流子83に備えられるセグメント16の数Sは「12」に設定されている。
【0044】
5本のティース91〜96は、コアバック20に対し周方向に等角度間隔(本実施形態では60°間隔)となる位置に一体に形成されるとともに、各ティース91〜96は、上記第1実施形態の各ティース21〜25と同様の形状をなしている。即ち、各ティース91〜96の先端部には、上記第1実施形態と同様の一対の分岐ティース部26a,26bが設けられるとともに、各ティース91〜96において分岐ティース部26a,26bよりも径方向内側となる基端部側の部位が内側巻回部27とされている。更に、各ティース91〜96において、それぞれ対をなす分岐ティース部26a,26bの先端部には延設部28が一体に形成されている。また、電機子コア82は、周方向に隣り合うティース91〜96間に、内側スロット31を有するとともに、対をなす分岐ティース部26a,26b間に外側スロット32を有する。本実施形態の電機子コア82は、ティース91〜96を6本備えることから、内側スロット31を5個備えるとともに、外側スロット32を6個備える。また、電機子コア82において、内側スロット31と外側スロット32とは周方向にずれた位置に形成されており、各外側スロット32は、周方向に隣り合う内側スロット31間に位置する。尚、本実施形態では、図8に示すように、6本のティース91〜96の分岐ティース部26a,26bに対し、周方向に順にティース番号「1」〜「12」を付すことにする。ティース番号は、図8中では、分岐ティース部26a,26bの先端部に示した数字である。
【0045】
図7に示すように、上記のように構成された電機子コア82には、導線41が巻回されることにより複数の電機子コイルが巻装されている。複数の電機子コイルは、各ティース91〜96の基端部側の部位である内側巻回部27にそれぞれ巻回された6個の内層コイル102a〜102fと、分岐ティース部26a,26bに巻回された6個の外層コイル103a〜103fとである。
【0046】
ここで、図8を参照して、電機子コア82への内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの巻回の順序を詳述する。尚、図8では、内層コイル102a〜102fを中線で図示し、外層コイル103a〜103fを太線で図示している。
【0047】
本実施形態では、180°間隔で配置された2つのフライヤを同時に作動させ、2本の導線41で全ての内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを巻回する。一方のフライヤでは、導線41は、まず、セグメント番号「1」のセグメント16のライザに接続され、次いで、ティース91の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されて内層コイル102aを形成する。そして、導線41は、セグメント番号「2」のセグメント16のライザにフッキングされ、その後、内層コイル102aが巻回されたティース91の隣のティース96の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されて内層コイル102fを形成する。次いで、導線41は、セグメント番号「9」のセグメント16のライザにフッキングされた後に、内層コイル102fが巻回されたティース96の隣のティース95の内側巻回部27に集中巻にて複数回巻回されて内層コイル102eを形成し、その後、セグメント番号「10」のセグメント16にフッキングされる。次いで、導線41は、ティース95,96の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「10」の分岐ティース部26bとティース番号「11」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル103eを形成する。このとき、外層コイル103eは、先に巻回された内層コイル102a,102e,102fと径方向に互いにずれた位置に形成され、軸方向に重ならないよう形成される。次いで、導線41は、セグメント番号「11」のセグメント16のライザにフッキングされた後に、直前に形成した外層コイル103eと周方向に隣り合う位置、即ちティース94,95の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「8」の分岐ティース部26bとティース番号「9」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル103dを形成する。次いで、導線41は、セグメント番号「6」のセグメント16のライザにフッキングされた後に、直前に形成した外層コイル103dと周方向に隣り合う位置、即ちティース93,94の互いに隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ちティース番号「6」の分岐ティース部26bとティース番号「7」の分岐ティース部26a)に分布巻にて複数回巻回されることにより外層コイル103cを形成する。そして、導線41は、セグメント番号「7」のセグメント16にフッキングされ、一方のフライヤにおける電機子コイルの巻回は終了する。
【0048】
このように、一方のフライヤでは、周方向に連続して並ぶ3本のティース91,96,95の内側巻回部27に連続して内層コイル102a,102f,102eを巻回した後に、内層コイル102a,102f,102eが巻回された3本のティースを含む周方向に連続して並ぶ4本のティース96,95,94,93の6つの分岐ティース部26a,26bに対し連続して周方向に順に3つの外層コイル103e,103d,103cを巻回する。このとき、同フライヤは、各内層コイル102a,102f,102e及び各外層コイル103e,103d,103cを形成する度に、導線41をセグメント16にフッキングしている。他方のフライヤも同様に、セグメント番号「7」のセグメント16のライザに導線41を接続した後に周方向に連続して並ぶ3本のティース94,93,92の内側巻回部27に連続して内層コイル102d,102c,102bを巻回し、次いで、内層コイル102d,102c,102bが巻回された3本のティースを含む周方向に連続して並ぶ4本のティース93,92,91,96の6本の分岐ティース部26a,26bに対し連続して周方向に順に3つの外層コイル103b,103a,103fを巻回する。尚、他方のフライヤにおいても、各内層コイル102d,102c,102b及び各外層コイル103b,103aを形成する度に、導線41を、セグメント番号「8」,「3」,「4」,「5」,「12」のセグメント16のライザに順にフッキングしている。そして、他方のフライヤは、セグメント番号「1」のセグメント16に導線41を接続すると、電機子コイルの巻回を終了する。
【0049】
そして、各セグメント16のライザにフッキングされた導線41は、ヒュージング(結線)されて各セグメント16に電気的に接続され、これにより、各内層コイル102a〜102f及び各外層コイル103a〜103fの巻き始めと巻き終わりの端部がそれぞれフッキングされたセグメント16に電気的に接続される。本実施形態では、各セグメント16には、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの端部のうちの何れか2本ずつが接続されている。詳述すると、セグメント番号「1」,「4」,「7」,「10」の4個のセグメント16には、ティース91〜96のうち周方向に隣り合うティースに巻回された内層コイル及び外層コイルの端部がそれぞれ1本ずつ接続されている。また、12個のセグメント16からセグメント番号「1」,「4」,「7」,「10」のセグメント16を除いた8個のセグメント16のうち、半数の4個のセグメント16(本実施形態ではセグメント番号「2」,「3」,「8」,「9」のセグメント16)には、内層コイル102a〜102fのうち周方向に隣り合う2つの内層コイルの端部が2本ずつ接続されている。そして、もう半数の4個のセグメント16(本実施形態ではセグメント番号「5」,「6」,「11」,「12」のセグメント16)には、外層コイル103a〜103fのうち周方向に隣り合う2つの外層コイルの端部が2本ずつ接続されている。
【0050】
図7に示すように、本実施形態の直流モータM2においては、上記第1実施形態と同様に、内層コイル102a〜102fは、ティース91〜96の内側巻回部27に集中巻にて巻回されているため、内層コイル102a〜102f同士が電機子コア82の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。また、外層コイル103a〜103fは、周方向に隣り合う2本の分岐ティース部26a,26bにそれぞれ巻回されるが、各外層コイル103a〜103fは、それぞれ異なる分岐ティース部26a,26bに巻回されているため、周方向に隣り合う外層コイル103a〜103f同士が電機子コア82の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。更に、外層コイル103a〜103fは内層コイル102a〜102fよりも径方向外側でティース91〜96に巻回されているため、外層コイル103a〜103fと内層コイル102a〜102fとは径方向ずれており電機子コア82の軸方向の両側で軸方向に互いに重なり合わない。これらのことから、内層コイル102a〜102fのコイルエンド部104(各内層コイル102a〜102fにおいて電機子コア82の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位)及び外層コイル103a〜103fのコイルエンド部105(各外層コイル103a〜103fにおいて電機子コア82の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位)が軸方向に重なり合わないため、コイルエンド部104,105を軸方向に小さくすることができる。
【0051】
上記したように、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(4)〜(6)と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
(1)整流子83は、セグメント16をティース91〜96の2倍の12個だけ備えている。そして、12個のセグメントのうち4個のセグメント16には、ティース91〜96のうち周方向に隣り合うティースに巻回された内層コイル及び外層コイルの端部がそれぞれ1本ずつ接続されている。更に、残りの8個のセグメント16のうち半数の4個のセグメント16には、内層コイル102a〜102fのうち周方向に隣り合う2つの内層コイルの端部が2本ずつ接続され、もう半数の4個のセグメント16には、外層コイル103a〜103fのうち周方向に隣り合う2つの外層コイルの端部が2本ずつ接続されている。従って、2個のフライヤを同時に用いて、内層コイル102a〜102fを巻回した後に外層コイル103a〜103fを巻回することにより、各フライヤにおいて1本の導線41で連続して内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを巻回することができる。このように、2個のフライヤを同時に用いることにより、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの巻回に要する時間を短縮することができ、直流モータM2の生産性を向上させることができる。
【0052】
(第3実施形態)
以下、本発明を具体化した第3実施形態を図面に従って説明する。尚、本第3実施形態では、上記第1及び第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図9は、本第3実施形態の直流モータM3の断面図、図10は、直流モータM3を平面状に展開した模式図を示す。本第3実施形態の直流モータM3は、上記第1実施形態の直流モータM1及び上記第2実施形態の直流モータM2と比較すると、固定子に備えられるマグネット(磁極)の数及び電機子の構成が異なる。
【0054】
図9に示すように、固定子131は、ヨークハウジング3の内周面に固着された磁極としての6個のマグネット132a〜132fを有する。6個のマグネット132a〜132fは、周方向に等角度間隔(本実施形態では60°間隔)となるように、且つN極とS極とが周方向に交互となるように配置されている。そして、直流モータM3は、6個のマグネット132a〜132fを有することにより磁極の数Pが「6」となっている。
【0055】
図9及び図10に示すように、固定子131の内側に配置された電機子141は、回転軸11と、該回転軸11に固定された電機子コア142と、同じく回転軸11に固定された略円筒状の整流子143とを備えている。電機子141は、回転軸11が固定子1によって軸支されることにより、固定子131に対して回転可能に指示されている。そして、電機子141が固定子131の内側に配置された状態においては、電機子コア142がマグネット132a〜132fと径方向に対向するとともに、整流子143の外周に配置された陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が同整流子143に摺接可能に押圧接触される。陽極側ブラシ14と陰極側ブラシ15とは、周方向に隣り合うマグネット132a〜132f間の間隔の奇数倍の間隔を空けて配置されており、本実施形態では60°の3倍である180°の間隔を空けて配置されている。また、陽極側ブラシ14は、図9における下側のN極のマグネット132dの周方向中心と対応する位置に配置されるとともに、陰極側ブラシ15は、図9における上側のS極のマグネット132aの周方向中心と対応する位置に配置されている。
【0056】
図10に示すように、整流子143は、絶縁性樹脂材料よりなる円筒状の保持部材(図示略)の外周面に並設された24個のセグメント16を備えている。本実施形態では、図10に示すように、周方向に並設された24個のセグメント16に対し、セグメント番号「1」〜「24」を付すことにする。また、整流子143において、同じ極の磁極が配置される角度間隔と同じ角度間隔で配置されたセグメント16同士は、セグメント16の軸方向の一端に固定された短絡部材145によって短絡されている。即ち、固定子1においてN極のマグネット132b,132d,132fは、120°間隔で配置されているため、120°間隔を開けて配置された3つのセグメント16(例えば、セグメント番号「1」のセグメント16とセグメント番号「9」のセグメント16とセグメント番号「17」のセグメント16)が短絡部材145によって互いに短絡されて同電位とされる。そして、図10には、短絡部材145によってセグメント16を短絡することにより陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15が配置された状態と同じ状態になる様子を模式的に示すべく、仮想ブラシを一点鎖線にて図示している。
【0057】
図9に示すように、前記電機子コア142は、筒状のコアバック20と、該コアバック20の外周面から径方向外側に向かって延びる8本のティース151〜158とが一体に形成されてなる。ここで、本実施形態では、電機子コア142に備えられるティース151〜158の数Nは、磁極の数Pに基づいてN=P±2(但し、P=4のときN=6)を満たすように設定されており、磁極の数Pが「6」であることに基づいて、ティース151〜158の数Nは「8」に設定されている。また、前記整流子143に備えられるセグメント16の数Sは、磁極の数P及びティース151〜158の数Nに基づいて設定されており、「S=N×(P/2)」を満たすように設定されている。従って、本実施形態の整流子143に備えられるセグメント16の数Sは「24」に設定されている。
【0058】
8本のティース151〜158は、コアバック20に対し周方向に等角度間隔(本実施形態では45°間隔)となる位置に一体に形成されるとともに、各ティース151〜158上記第1実施形態の各ティース21〜25と同様の形状をなしている。即ち、各ティース151〜158の先端部には、上記第1実施形態と同様の一対の分岐ティース部26a,26bが設けられるとともに、各ティース151〜158において分岐ティース部26a,26bよりも径方向内側となる基端部側の部位が内側巻回部27とされている。更に、各ティース151〜158において、それぞれ対をなす分岐ティース部26a,26bの先端部には延設部28が一体に形成されている。また、電機子コア142は、周方向に隣り合うティース151〜158間に、内側スロット31を有するとともに、対をなす分岐ティース部26a,26b間に外側スロット32を有する。本実施形態の電機子コア142は、ティース151〜158を8本備えることから、内側スロット31を8個備えるとともに、外側スロット32を8個備える。また、電機子コア142において、内側スロット31と外側スロット32とは周方向にずれた位置に形成されており、各外側スロット32は、周方向に隣り合う内側スロット31間に位置する。尚、本実施形態では、図10に示すように、8本のティース151〜158の分岐ティース部26a,26bに対し、周方向に順にティース番号「1」〜「16」を付すことにする。
【0059】
図9及び図10に示すように、上記のように構成された電機子コア142には、導線41が巻回されることにより複数の電機子コイルが巻装されている。複数の電機子コイルは、各ティース151〜158の基端部側の部位である内側巻回部27にそれぞれ巻回された8個の内層コイル162a〜162hと、分岐ティース部26a,26bに巻回された8個の外層コイル163a〜163hとである。尚、図10では、内層コイル162a〜162hを中線で図示し、外層コイル163a〜163hを太線で図示している。
【0060】
電機子コア142には、まず、各ティース151〜158の内側巻回部27にそれぞれ内層コイル162a〜162hが集中巻にて巻回される。その後、周方向に隣り合うティース151〜158の周方向に隣り合う2つの分岐ティース部26a,26b(即ち、隣り合う2つのティースにおける一方のティースの分岐ティース部26aと該分岐ティース部26aと隣り合う他方のティースの分岐ティース部26b)に、それぞれ外層コイル163a〜163hが分布巻にて巻回される。尚、全ての内層コイル162a〜162hは、その巻回方向が同じであるとともに、各外層コイル163a〜163hは、各内層コイル162a〜162hと同方向に巻回される。また、先に巻回された内層コイル162a〜162hと後から巻回された外層コイル163a〜163hとは、径方向に互いにずれた位置に形成され、軸方向に重ならないようになっている。更に、各内層コイル162a〜162hの周方向の中心と各外層コイル163a〜163hの周方向の中心とは、電機子コア142の周方向に互いにずれており、周方向に交互に且つ周方向に等角度間隔になっている。
【0061】
そして、8個の内層コイル162a〜162hの巻き始めの端部は、周方向に2つ置きの8個のセグメント16にそれぞれ接続されるとともに、内層コイル162a〜162hの巻き終わりの端部は、各内層コイル162a〜162hから周方向に約120°(図9において各ティースから時計方向に約120°)進んだ位置にある外層コイル163a〜163hの巻き始めの端部とそれぞれ接続される。これにより、各内層コイル162a〜162hは、周方向に約120°離れた位置にある各外層コイル163a〜163hとそれぞれ直列に結合されている。更に、各外層コイル163a〜163hの巻き終わりの端部は、各外層コイル163a〜163hが巻回された2つの分岐ティース部26a,26bのうち一方の分岐ティース部26aを有するティース151〜158に巻回された内層コイル162a〜162hの巻き始めの端部が接続されたセグメント16にそれぞれ接続されている。従って、周方向に2つ置きの8個のセグメント16(即ち、セグメント番号「2」,「5」,「8」,「11」,「14」,「17」,「20」,「23」のセグメント16)には、内層コイル162a〜162hの巻き始めの端部と、外層コイル163a〜163hの巻き終わりの端部とが1本ずつ接続されている。
【0062】
そして、本実施形態の電機子141においては、直列に結合された内層コイルと外層コイル(例えば、内層コイル162aと外層コイル163d)は、互いの周方向の中心が、同じ磁極のマグネット間の間隔(S極のマグネット132a,132c,132e間(若しくはN極のマグネット132b,132d,132f間)の間隔)である120°に近い間隔を有する。尚、図9には、上側のS極のマグネット132aの周方向の中心を通る中心線X1、右下のS極のマグネット132cの周方向の中心を通る中心線X2、内層コイル162aの周方向の中心を通る中心線Y1及び外層コイル163dの周方向の中心を通る中心線Y2を図示している。
【0063】
図9に示すように、本実施形態の直流モータM3においては、上記第1実施形態と同様に、内層コイル162a〜162hは、ティース151〜158の内側巻回部27に集中巻にて巻回されているため、内層コイル162a〜162h同士が電機子コア142の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。また、外層コイル163a〜163hは、周方向に隣り合う2本の分岐ティース部26a,26bにそれぞれ巻回されるが、各外層コイル163a〜163hは、それぞれ異なる分岐ティース部26a,26bに巻回されているため、周方向に隣り合う外層コイル163a〜163h同士が電機子コア142の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。更に、外層コイル163a〜163hは内層コイル162a〜162hよりも径方向外側でティース151〜158に巻回されているため、外層コイル163a〜163hと内層コイル162a〜162hとは径方向ずれており電機子コア142の軸方向の両側で軸方向に互いに重なり合わない。これらのことから、内層コイル162a〜162hのコイルエンド部164(各内層コイル162a〜162hにおいて電機子コア142の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位)と、外層コイル163a〜163hのコイルエンド部165(各外層コイル163a〜163hにおいて電機子コア142の軸方向の端面よりも軸方向に突出した部位)とが軸方向に重なり合わないため、コイルエンド部164,165を軸方向に小さくすることができる。
【0064】
ここで、図11に、内層コイル及び外層コイルが共に集中巻とされた直流モータM11の断面図を示すとともに、図12は、直流モータM11を平面状に展開した模式図を示す。尚、図11及び図12に示す直流モータM11においては、本実施形態の直流モータM3と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図11及び図12に示すように、この直流モータM11を構成する電機子171の電機子コア172は、筒状のコアバック20の外周面から径方向外側に向かって放射状に延びる8個のティース181〜188を備えている。各ティース181〜188の基端側の部位には、内層コイル191a〜191hがそれぞれ巻回されるとともに、各ティース181〜188の先端側の部位は、外層コイル192a〜192hがそれぞれ巻回されている。そして、8個の内層コイル191a〜191hの巻き始めの端部は、周方向に2つ置きの8個のセグメント16にそれぞれ接続されるとともに、内層コイル191a〜191hの巻き終わりの端部は、各内層コイル191a〜191hから周方向に120°進んだ位置にある外層コイル192a〜192hの巻き始めの端部とそれぞれ接続されている。これにより、各内層コイル191a〜191hは、周方向に120°離れた位置にある各外層コイル192a〜192hとそれぞれ直列に結合されている。更に、各外層コイル192a〜192hの巻き終わりの端部は、同じティース151〜158にそれぞれ巻回された内層コイル191a〜191hの巻き始めの端部が接続されたセグメント16にそれぞれ接続されている。従って、周方向に2つ置きの8個のセグメント16(即ち、セグメント番号「2」,「5」,「8」,「11」,「14」,「17」,「20」,「23」のセグメント16)には、内層コイル191a〜191hの巻き始めの端部と、外層コイル192a〜192hの巻き終わりの端部とが1本ずつ接続されている。
【0066】
この直流モータM11では、陽極側ブラシ14はN極のマグネット132dの周方向中心と対応する位置に配置されるとともに、陰極側ブラシ15はS極のマグネット132aの周方向中心と対応する位置に配置されており、更に、120°間隔を開けて配置された3つのセグメント16同士が短絡部材145によって互いに短絡されて同電位とされている。従って、各内層コイル191a〜191hは、その周方向の中心と、各マグネット132a〜132fの周方向の中心とが一致する位置に配置された場合に整流される。即ち、径方向に対向する2箇所で内層コイル191a〜191hの整流が行われる。
【0067】
一般的に、径方向に対向する2箇所で整流を行う直流モータでは、電流変動による磁気的な加振力が整流中の2つの電機子コイルに対応した2箇所に集中しやすいことが知られている。また、整流中の電機子コイルと次に整流が行われる電機子コイルとを直列に結合すると、この磁気的な加振力を分散して電機子の振動を低減できることが知られている。そして、図11に示す直流モータM11では、整流中の内層コイル191aと、該内層コイル191aの次に整流が行われる外層コイル192dとが直列に結合されており、電機子171の振動の低減が図られている。
【0068】
しかし、直流モータM11におけるティース181〜188の数Nは「8」であるため、図11において整流中の内層コイル191aが巻回されたティース181と、該内層コイル191aと直列に結合された外層コイル192dが巻回されたティース184とは135°をなすため、各コイル191a,192dの周方向の中心を通る中心線Y11,Y12のなす角度は135°である。更に、内層コイル191aと径方向に対向するS極のマグネット132aと、外層コイル192dと径方向に対向するS極のマグネット132cとのなす角度(即ち、マグネット132a,132cの周方向の中心を通る中心線X11,X12のなす角度)は120°である。従って、整流中の内層コイル191aと直列に結合され次に整流が行われる外層コイル192dの周方向の中心は、該外層コイル192dと径方向に対向するS極のマグネット132cの周方向の中心に対してずれてしまう。そのため、直流モータM11は、振動低減効果が小さくなってしまうという問題がある。
【0069】
一方、図9に示すように、本実施形態の直流モータM3においては、各ティース151〜158の先端部には、周方向に離間するように分岐した一対の分岐ティース部26a,26bがそれぞれ設けられている。そして、各外層コイル163a〜163hは、周方向に隣り合う2本のティースに跨るように分岐ティース部26a,26bにそれぞれ巻回されているため、各外層コイル163a〜163hは、各内層コイル162a〜162hに対し周方向にずれている。従って、例えば、図9において整流中の内層コイル162aと直列に接続され次に整流が行われる外層コイル163cは、ティース153,154に跨るように分岐ティース部26a,26bに巻回されることにより、その周方向の中心が、ティース153とティース154との間に位置する。よって、図11に示す直流モータM11における外層コイル192dの周方向の中心に比べて、直流モータM3における外層コイル163cの周方向の中心は、径方向に対向するS極のマグネット132cの周方向の中心に近づく。その結果、本実施形態の直流モータM3は、直流モータM11よりも電機子141の回転軸11の振動低減効果が大きくなる。
【0070】
上記したように、本第3実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(4)〜(6)の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
(1)直流モータM3は、磁極の数PがP=6であり、ティース151〜158の数NがN=8であり、セグメントの数SがS=24である。従って、内層コイル162a〜162h及び外層コイル163a〜163hを備えた直流モータM3において、直流モータM3の駆動時に電機子コア142に作用するラジアル方向の力を極めて小さくすることができ(特開2004−88916号公報、特開2003−259582号公報参照)、直流モータM3における振動をより低減することができる。
【0071】
(2)電流変動による磁気的な加振力を4箇所に分散させることができ、整流時の電機子141の振動を一層低減することができる。また、ヨークハウジング3の変形モードを、2次モードよりも高次の変形モードとすることができ、ヨークハウジング3の共振を回避しやすくなる。
【0072】
(第4実施形態)
以下、本発明を具体化した第4実施形態を図面に従って説明する。尚、本第4実施形態では、上記第1乃至第3実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図13は、本第4実施形態の直流モータM4の概略図を示す。この直流モータM4は、上記第3実施形態の直流モータM3と比較すると、電機子201を構成する外層コイルの構成が異なる。
【0074】
電機子コア82には、上記第2実施形態と同様に8個の内層コイル202a〜202h及び8個の外層コイル203a〜203hが巻装されている。そして、周方向に隣り合うティースに跨るように周方向に隣り合う2つの分岐ティース部26a,26bに巻回された各外層コイル203a〜203hは、分岐ティース部26a,26bの基端側に巻回された内側コイル211a〜211hと分岐ティース部26a,26bの先端側に巻回された外側コイル212a〜212hとの2つの部位から構成されている。尚、図14では、内層コイル202a〜202hを中線で図示し、内側コイル211a〜211hを一点鎖線で図示し、外側コイル212a〜212hを太線で図示している。また、図14では、各内側巻回部27に導線を複数回巻回して形成される各内層コイル202a〜202hを簡略化して図示している。
【0075】
図13及び図14に示すように、電機子コア142には、まず、各ティース151〜158の内側巻回部27に内層コイル202a〜202hが集中巻にてそれぞれ巻回される。尚、全ての内層コイル202a〜202hは、その巻回方向が同じである。その後、周方向に隣り合うティース151〜158の周方向に隣り合う分岐ティース部26a,26b(即ち、隣り合う2つのティースにおける一方のティースの分岐ティース部26aと該分岐ティース部26aと隣り合う他方のティースの分岐ティース部26b)の基端側の部分に、内側コイル211a〜211hが分布巻にてそれぞれ巻回される。このとき、各内側コイル211a〜211hは、各内層コイル202a〜202hと逆方向に巻回される。その後、内側コイル211a〜211hが巻回された2つずつの分岐ティース部26a,26bの先端側の部位に、外側コイル212a〜212hが分布巻にてそれぞれ巻回される。このとき、各外側コイル212a〜212hは、内側コイル211a〜211hと同じ方向(即ち内層コイル202a〜202hと逆方向)に巻回される。尚、先に巻回された内層コイル202a〜202hと後から巻回された外層コイル203a〜203h(即ち内側コイル211a〜211h及び外側コイル212a〜212h)とは、径方向に互いにずれた位置に形成され、軸方向に重ならないようになっている。更に、各内層コイル202a〜202hの周方向の中心と各外層コイル203a〜203hの周方向の中心とは、電機子コア142の周方向に互いにずれており、周方向に交互に且つ周方向に等角度間隔になっている。また、各内層コイル202a〜202hの電気抵抗は、各内側コイル211a〜211hのうち1つ内側コイルの電気抵抗と各外側コイル212a〜212hのうち1つの外側コイルの電気抵抗との和と等しくなっている。
【0076】
そして、各内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部は、周方向に2つ置きの8個のセグメント16にそれぞれ接続されるとともに、各内側コイル211a〜211hの巻き終わりの端部は、各内側コイル211a〜211hから、隣り合うマグネット132a〜132f間の間隔と略等しい間隔(即ち約60°)だけ離れた位置にある内層コイル202a〜202hの巻き始めの端部とそれぞれ接続される。また、各内層コイル202a〜202hの巻き終わりの端部は、各内層コイル202a〜202hから約60°離れた位置にある外側コイル212a〜212hの巻き始めの端部とそれぞれ接続されている。そして、各外側コイル212a〜212hの巻き終わりの端部は、同じ分岐ティース部26a,26bに巻回された各内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部が接続されたセグメント16にそれぞれ接続されている。従って、周方向に2つ置きの8個のセグメント16(即ち、セグメント番号「2」,「5」,「8」,「11」,「14」,「17」,「20」,「23」のセグメント16)には、内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部と、外側コイル212a〜212hの巻き終わりの端部とが1本ずつ接続されている。
【0077】
このように、本実施形態の電機子201においては、各内層コイル202a〜202hと、各内層コイル202a〜202hが巻回されたティース151〜158の周方向の両側のティースのうち一方のティースに巻回された内側コイル211a〜211hと、他方のティースに巻回された外側コイル212a〜212hとの3つずつのコイルがそれぞれ直列に結合されている。そして、直列に結合された3つのコイルは、隣り合うマグネット132a〜132fの間隔と略等しい間隔(即ち約60°)ごとに配置されている。これにより、直流モータM4においては、各内層コイル202a〜202h、各内側コイル211a〜211h及び各外側コイル212a〜212hの整流時に電機子201に作用する磁気的な加振力を6箇所に分散させることができる。例えば、図13に示すように、内層コイル202aがS極のマグネット132aと径方向に対向して同内層コイル202aの整流が行われる場合、内層コイル202aの径方向の両側、該内層コイル202aと直列に結合された内側コイル211gの径方向の両側、及び該内層コイル202aと直列に結合された外側コイル212bの径方向の両側の合計6箇所に加振力が分散される。従って、電気変動による磁気的な加振力に起因した電機子201の振動が一層低減される。
【0078】
上記したように、本第4実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(4)〜(6)の作用効果及び上記第3実施形態の(1)の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
【0079】
(1)電流変動による磁気的な加振力を6箇所に分散させることができ、整流時の電機子201の振動をより一層低減することができる。また、ヨークハウジング3の変形モードを、2次モードよりも高次の変形モードとすることができ、ヨークハウジング3の共振を回避しやすくなる。
【0080】
(第5実施形態)
以下、本発明を具体化した第5実施形態を図面に従って説明する。尚、本第5実施形態では、上記第1乃至第4実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図15は、本第5実施形態の直流モータM9を平面状に展開した模式図を示す。本実施形態の直流モータM9は、上記第2実施形態の直流モータM2とほぼ同じ構成をなしている。詳述すると、図16に示すように、直流モータM9は、固定子1と、該固定子1の内側に回転可能に配置された電機子81とを備えている。固定子1は、ヨークハウジング3の内周面に固定された4個のマグネット4a〜4dを有することから、直流モータM9の磁極の数Pは「4」となっている。また、4個のマグネット4a〜4dは周方向に等角度間隔に設けられており、各マグネット4a〜4dの開角度θ1(回転軸11の回転中心を中心とした各マグネット4a〜4dの周方向の範囲に該当する角度)は90°となっている。
【0082】
前記電機子81を構成する回転軸11は、その軸方向の両端部が固定子1によって回転可能に支持されるとともに、該回転軸11には、上記第2実施形態の直流モータM2に備えられた電機子コア82と同じ電機子コア82が一体回転可能に固定されている。この電機子コア82は、それぞれ先端部に一対の分岐ティース部26a,26bを有する6本のティース91〜96を備えることにより、導線41を挿通して内層コイル102a〜102fを巻回するための内側スロット31を6個、導線41を挿通して外層コイル103a〜103fを形成するための外側スロット32を6個備えている。即ち、電機子コア82は、電機子コイル(即ち内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103f)を巻装するためのスロットを合計12個備えており、スロットの総数Mが磁極の数P(即ち「4」)の3倍となっている。
【0083】
図15及び図16に示すように、電機子コア82に巻装された各内層コイル102a〜102fは、それぞれ各ティース91〜96の基端側の部位である内側巻回部27にそれぞれ集中巻にて巻回されている。また、電機子コア82に巻装された外層コイル103a〜103fは、周方向に隣り合う2本の分岐ティース部26a,26bにそれぞれ巻回されるが、各外層コイル103a〜103fは、それぞれ異なる分岐ティース部26a,26bに巻回されているため、周方向に隣り合う外層コイル103a〜103f同士が電機子コア82の軸方向の両側で軸方向に重なり合うことがない。更に、外層コイル103a〜103fは内層コイル102a〜102fよりも径方向外側でティース91〜96に巻回されているため、外層コイル103a〜103fと内層コイル102a〜102fとは径方向ずれており電機子コア82の軸方向の両側で軸方向に互いに重なり合わない。従って、各内層コイル102a〜102f及び各外層コイル103a〜103fのコイルピッチP1(回転軸11の回転中心を中心とした各コイルの周方向の範囲に該当する角度)は60°となる。尚、図16には、代表として外層コイル103aのみを図示している。
【0084】
また、図15及び図17に示すように、前記回転軸11に固定され電機子81を構成する整流子83は、周方向に並設された12個のセグメント16を備えており、セグメント16の数Sは磁極の数P(即ち「4」)の3倍となっている。そして、各セグメント16には、電機子コア82の内側巻回部27に巻回された内層コイル102a〜102fの端部がそれぞれ1本ずつ接続されるとともに、分岐ティース部26a,26bに巻回された外層コイル103a〜103fの端部がそれぞれ1本ずつ接続されている。
【0085】
整流子83の外周には、2個の陽極側ブラシ501及び2つの陰極側ブラシ502が配置されている。略四角柱状をなす陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とは、周方向に交互に配置されるとともに、整流子83側の先端面が、整流子83の外周に設けられたセグメント16に摺接可能に押圧接触される。尚、陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502においては、その先端面が整流子83のセグメント16に摺接する摺接部となる。
【0086】
各陽極側ブラシ501及び各陰極側ブラシ502は、その周方向の幅w1が、セグメント16の周方向の幅w2の半分の幅に設定されている。そして、各陽極側ブラシ501は、N極のマグネット4a,4cの周方向の略中心と対応する位置にそれぞれ配置されるとともに、各陰極側ブラシ502は、S極のマグネット4b,4dの周方向の略中心と対応する位置にそれぞれ配置されている。通常、陽極側ブラシ及び陰極側ブラシは、各ブラシの周方向の中心がマグネットの磁極中心線(マグネットの周方向の中央を通り径方向に延びる直線)上に位置する通常位置に配置される。しかし、本実施形態の直流モータM9においては、陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とは、マグネット4a〜4dの周方向の中心を通る磁極中心線X3〜X6上の通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置されている。即ち、図17において上側に配置されたN極のマグネット4aに対応して配置された陽極側ブラシ501は、マグネット4aの磁極中心線X3上の通常位置から時計方向にシフトして配置されるとともに、図17において下側に配置されたN極のマグネット4cに対応して配置された陽極側ブラシ501は、マグネット4cの磁極中心線X5上の通常位置から時計方向にシフトして配置されている。そして、これら2つの陽極側ブラシ501における反時計方向側の端面は、それぞれ磁極中心線X3,X5上に位置している。一方、図17において右側に配置されたS極のマグネット4bに対応して配置された陰極側ブラシ502は、マグネット4bの磁極中心線X4上の通常位置から反時計方向にシフトして配置されるとともに、図17において左側に配置されたS極のマグネット4dに対応して配置された陰極側ブラシ502は、マグネット4dの磁極中心線X6上の通常位置から反時計方向にシフトして配置されている。そして、これら2つの陰極側ブラシ502における時計方向側の端面は、それぞれ磁極中心線X4,X6上に位置している。従って、これら陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502を電機子81に電流が供給されて該電機子81が回転されると、電機子81の回転に伴って陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とにおいて交互に整流が行われる。
【0087】
ここで、図18及び図20に、分布巻にて電機子コイルが巻装された従来の直流モータM12の概略図を示すとともに、図19に、直流モータM12を平面状に展開した模式図を示す。図18乃至図20に示すように、直流モータM12は、略円筒状のヨークハウジング601の内周面に4個のマグネット602を固着してなる固定子603と、該固定子603の内側に該固定子603に対して回転可能に配置された電機子604とを備えている。電機子604の回転軸605に固定された電機子コア606は、回転軸605に外嵌された円筒状のコアバック606aと、該コアバック606aの外周面から径方向外側に向かって放射状に延びる12本のティース606bとが一体に形成されてなる。そして、電機子コア606は、周方向に隣り合うティース606b間に合計12個のスロット606cを有する。この電機子コア606には、12個の電機子コイル607が分布巻にて巻装されている。各電機子コイル607は、複数のスロットを跨ぐように3本のティース606bに巻回されている。尚、図19には、12個の電機子コイル607のうち代表として2個のみを図示し、図20には、12個の電機子コイル607のうち代表として1つのみを図示している。また、回転軸605には、周方向に並設された12個のセグメント608を有する整流子609が固定されるとともに、各セグメント608には、2つの電機子コイル607の端部が1本ずつ接続されている。更に、整流子609の周囲には、電機子コイル607に電流を供給するための2つの陽極側ブラシ701及び2つの陰極側ブラシが配置されている。陽極側ブラシ701及び陰極側ブラシ702は、その周方向の幅がセグメント608の周方向の幅と等しく形成されるとともに、その先端面が整流子609のセグメント608に摺接可能に押圧接触されている。そして、陽極側ブラシ701と陰極側ブラシ702とは、周方向に交互に配置されるとともに、4つのマグネット602の周方向の中心を通る磁極中心線(図18において一点鎖線にて図示)上に各ブラシ701,702の周方向の中心がそれぞれ配置される通常位置に配置されている。
【0088】
このような従来の直流モータM12は、本実施形態の直流モータM9と同様に、スロットの数及び電機子コイルの数が「12」となっている。また、図20に示すように、直流モータM12におけるマグネット602の開角度θ2も、直流モータM9と同様に90°となっている。しかし、この直流モータM12では、各電機子コイル607は、それぞれ3本のティース606bに巻回されているため、各電機子コイル607のコイルピッチP2(回転軸11の回転中心を中心とした各コイルの周方向の範囲に該当する角度)は90°である。即ち、本実施形態の直流モータM9は、分布巻にて巻装された電機子コイル607を備えた従来の直流モータM12に比べて、コイルピッチP1(図16参照)が小さくなっている。そのため、従来の直流モータM12では、図23(a)に示すように整流区間において誘起電圧が発生して図23(b)に示すように不足整流が生じるが、本実施形態の直流モータM9では、図22(a)に示すように整流区間において誘起電圧の発生が抑えられ、その結果、図22(b)に示すように不足整流が生じることが抑制されて整流が良好に行われる。
【0089】
また、図21に示すように、スロットの総数Mが磁極の数Pで割り切れる場合には、陽極側ブラシと陰極側ブラシとで同時に整流が行われることになるため、電流リップル(電流波形)の山数が少なく、電流リップルが大きくなる(電流波形の変動が大きくなる)傾向にあることがわかる。電流リップルが大きくなると、駆動時における直流モータの振動・騒音が大きくなってしまう。
【0090】
そして、本実施形態の直流モータM9(図21において太線で囲んだ部位に該当)は、磁極の数Pが「4」であるとともに、スロットの総数Mが「12」であり、スロットの総数Mが磁極の数Pで割り切れる。しかし、本実施形態の直流モータM9では、陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とは、マグネット4a〜4dの周方向の中心を通る磁極中心線X3〜X6上の通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置されることにより、陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とにおいて交互に整流が行われるように構成されている。そのため、スロットの総数Mが磁極の数Pで割り切れる構成であっても、図15及び図19に図示した電流波形を見てわかるように、直流モータM9では、従来の直流モータM12に比べて電流値の変化量が小さく抑えられ、電流リップルが小さくなるため、駆動時の振動・騒音の発生が抑制される。
【0091】
上記したように、本第5実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)乃至(6)と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
(1)直流モータM9は、内側スロット31及び外側スロット32の合計(即ちスロットの総数M)が磁極の数Pで割り切れる構成であるが、陽極側ブラシ501による整流と陰極側ブラシ502による整流とが交互に行われる。従って、陽極側ブラシ701及び陰極側ブラシ702において同時に整流が行われる構成の直流モータM12に比べて、駆動時における電流値の変化量を小さくすることができ、振動・磁気音を低減させることができる。
【0092】
尚、本発明の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第5実施形態の直流モータM9においては、陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502の周方向の幅w1(各ブラシにおけるセグメント16に摺接する摺接部の周方向の幅)は、セグメント16の周方向の幅w2の半分の幅に設定されている。しかしながら、陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とは、マグネット4a〜4dの周方向の中心を通る磁極中心線X3〜X6上の通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置され、電機子81の回転に伴って陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とにおいて交互に整流が行われるのであれば、その周方向の幅w1は、セグメント16の周方向の幅w2の半分の幅より小さい値に設定されてもよいし、セグメント16の周方向の幅w2の半分の幅より大きい値に設定されてもよい。このようにすると、上記第5実施形態と同様に、電機子81の回転に伴って陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とにおいて交互に整流が行われるため、従来のモータよりも電流リップルが小さく抑えられ、トルクリップルが低下されることから、駆動時の振動・騒音の発生を抑制することができる。また、陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とを通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置し、陽極側ブラシ501と陰極側ブラシ502とにおいて交互に整流が行われるようにする場合、陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502におけるセグメント16に摺接する摺接部の周方向の幅をセグメント16の周方向の幅w2の半分以下とすると、振動・騒音の発生の抑制に加えて、トルクの上昇を図ることができる。更に、陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502の摺接部の周方向の幅をセグメント16の周方向の幅w2の半分とすると、振動・騒音の発生の抑制及びトルクの上昇を図ることができる上、上記のように陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502が交互に整流を行う構成とした場合において供給電流を最大限に大きくすることができる。
【0093】
・図24及び図25に示すように、上記第5実施形態の直流モータM9において、陽極側ブラシ501及び陰極側ブラシ502の周方向の一方側に各陽極側ブラシ501及び各陰極側ブラシ502に比べて抵抗の大きい高抵抗ブラシ801を配置してもよい。詳述すると、各高抵抗ブラシ801は、各陽極側ブラシ501及び各陰極側ブラシ502の先端面(摺接部)と周方向に隣接するとともに、マグネット4a〜4dの磁極中心線X3〜X6上の通常位置から隣接する各ブラシ501,502がシフトされた方向と反対方向にシフトして配置されている。このようにすると、各陽極側ブラシ501及び各陰極側ブラシ502がセグメント16と接触する際、及び離間する際の火花の発生を抑制することができる。
【0094】
・第5実施形態の直流モータM9のように、スロットの総数Mが磁極の数Pで割り切れる直流モータにおいて、整流中の内層コイルと次に整流が行われる外層コイルとを直列に接続した構成としてもよい。このようにすると、電機子の振動をより低減することができる。また、同構成の直流モータにおいて、陽極側ブラシと陰極側ブラシとを、マグネットの周方向の中心を通る磁極中心線上の通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置すると、陽極側ブラシによる整流と陰極側ブラシによる整流とが交互に行われるようになるため、駆動時における電流値の変化量を小さくすることができ、振動・磁気音を更に低減させることができる。更に、各陽極側ブラシ及び各陰極側ブラシの先端面(摺接部)と隣接するとともに、隣接する各ブラシが前記通常位置からシフトされた方向と反対方向にシフトして配置された高抵抗ブラシを設けることにより、各ブラシがセグメントと接触する際、及び離間する際の火花の発生を抑制することができる。
【0095】
・上記第4実施形態では、各内層コイル202a〜202hと、各内層コイル202a〜202hが巻回されたティース151〜158の周方向の両側のティースのうち一方のティースに巻回された内側コイル211a〜211hと、他方のティースに巻回された外側コイル212a〜212hとの3つずつのコイルがそれぞれ直列に結合されている。しかしながら、各内層コイル202a〜202hに直列に結合される内側コイル及び外側コイルの組み合わせは、上記第4実施形態のものに限らない。図26に示すように、内層コイル202aと、該内層コイル202aから周方向の一方側に約120°離れた位置にある内側コイル211cと、周方向の他方側に約120°離れた位置にある外側コイル212fとを直列に結合してもよい。この場合、S極のマグネット132aと内層コイル202aとが径方向に対向して同内層コイル202aが整流されるときには、内側コイル211c及び外側コイル212fは、S極のマグネット132c,132eと径方向に対向する。図26には、代表として、直列に結合される内層コイル202a、内側コイル211c及び外側コイル212fのみを図示しているが、残りの内層コイル202b〜202hについても、各内層コイル202b〜202hから同様の位置関係にある内側コイル211a,211b,211d〜211h及び外側コイル212a〜212e,212g,212hが直列に結合される。そして、このようにする場合には、内側コイル211a〜211h及び外側コイル212a〜212hは、内層コイル202a〜202hと同方向に巻回される。また、各内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部は、整流子143の24個のセグメント16のうち2つ置きのセグメント16にそれぞれ接続され、各内側コイル211a〜211hの巻き終わりの端部は、各内側コイル211a〜211hから周方向に約120°離れた位置にある内層コイル202a〜202hの巻き始めの端部と接続される。更に、各内層コイル202a〜202hの巻き終わりの端部は、各内層コイル202a〜202hから周方向に約120°離れた位置にある外側コイル212a〜212hの巻き始めの端部と接続され、各外側コイル212a〜212hの巻き終わりの端部は、同じ分岐ティース部26a,26bに巻回された内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部が接続されたセグメント16にそれぞれ接続される。このようにしても、上記第4実施形態と同様に、磁気的な加振力を6箇所に分散させることができる。
【0096】
・上記第4実施形態のように、各外層コイル203a〜203hを、各内側コイル211a〜211h及び各外側コイル212a〜212hの2つのコイルから構成する場合、内層コイル202a〜202h及び外層コイル203a〜203hの接続の態様は上記第4実施形態のものに限らない。例えば、図27に示すように内層コイル202a〜202h及び外層コイル203a〜203hを形成してもよい。図27に示す直流モータM5においては、図28に示すように、各ティース151〜158の内側巻回部27に巻回された各内層コイル202a〜202hの巻き始めと巻き終わりの端部は、周方向に8つおきの2つのセグメント16にそれぞれ接続されている。従って、2つおきのセグメント16(即ち、セグメント番号「2」,「5」,「8」,「11」,「14」,「17」,「20」,「23」のセグメント16)には、それぞれ内層コイル202a〜202hの巻き始めと巻き終わりの端部が1本ずつ接続されている。また、図29に示すように、内側コイル211a〜211h及び外側コイル212a〜212hは、内層コイル202a〜202hと巻回方向が逆向きとなっている。そして、各内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部は、2つおきのセグメント16(即ち、セグメント番号「2」,「5」,「8」,「11」,「14」,「17」,「20」,「23」のセグメント16)に接続されるとともに、各内側コイル211a〜211hの巻き終わりの端部は、各内側コイル211a〜211hから周方向に135°離れた位置にある外側コイル212a〜212hの巻き始めの端部にそれぞれ接続されている。更に、外側コイル212a〜212hの巻き終わりの端部は、同じ分岐ティース部26a,26bに巻回された内側コイル211a〜211hの巻き始めの端部が接続されたセグメント16にそれぞれ接続されている。このようにしても、上記第4実施形態と同様に、磁気的な加振力を6箇所に分散させることができる。
【0097】
また、例えば、図30に示す直流モータM6では、内側コイル211a〜211h及び外側コイル212a〜212hは、図29に示す例と同様に巻回されている。そして、各内層コイル202a〜202hは、図31に示すように、その巻き初めと巻き終わりの端部が、周方向に隣り合う2つのセグメント16にそれぞれ接続されている。このようにしても、上記第4実施形態と同様に、磁気的な加振力を6箇所に分散させることができる。
【0098】
・上記第2実施形態では、2つのフライヤを用いて、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを電機子コア82に巻装する。しかしながら、各内層コイル102a〜102f及び各外層コイル103a〜103fの端部を、図32に示すようにセグメント16に接続することにより、1つのフライヤを用いて1本の導線41で全ての内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを電機子コア82に巻装することができる。この場合、全ての内層コイル102a〜102fを巻回した後に、外層コイル103a〜103fを巻回する。詳述すると、導線41は、セグメント番号「1」のセグメント16に接続された後、ティース91の内側巻回部27に内層コイル102aを巻回し、セグメント番号「2」のセグメント16に接続される。次いで、導線41は、ティース番号「2」の分岐ティース部26b及びティース番号「3」の外層コイル103aと磁気的に等価位置にある内層コイル102fを形成する。このとき、内層コイル102fは、外層コイル103fと磁極は逆となるため、同外層コイル103fとは巻回方向が逆向きとなる。尚、図32に図示した矢印は、各内層コイル102a〜102f及び各外層コイル103a〜103fの巻回方向を示している。以後、導線41によって、内層コイル102b,102d,102c,102eが順に形成されるとともに、各内層コイル102b,102d,102c,102eを形成する度に、導線41は、セグメント番号「3」〜「7」のセグメント16に順に接続される。そして、セグメント番号「7」のセグメント16に接続された導線41は、外層コイル103b,103d,103c,103e,103a,103fを順に形成するとともに、各外層コイル103b,103d,103c,103e,103a,103fを形成する度に、導線41は、セグメント番号「8」〜「12」,「1」のセグメント16に順に接続される。そして、外層コイル103fの巻回後に、導線41が、セグメント番号「1」のセグメントに接続されると全ての内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの巻装が終了する。従って、12個のセグメントのうち、2個のセグメント16には、内層コイル及び外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りの10個のセグメント16のうち半数の5個のセグメント16には、内層コイルの端部が2本ずつ接続され、もう半数の5個のセグメント16には、外層コイルの端部が2本ずつ接続される。このように全ての内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを1本の導線41で連続して巻回できると、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの巻回にかかる時間を短くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0099】
尚、上記したように1本の導線41にて全ての内層コイル及び外層コイルを電機子コアに巻回するためには、ティースの数Nを磁極の数Pの奇数倍とする必要がある。例えば、磁極の数PがP=4であってティースの数NがN=12の直流モータ、又は、磁極の数PがP=6であってティースの数NがN=18の直流モータが挙げられる。
【0100】
・(360/(P/2))°間隔に位置する(P/2)個のセグメント16同士を短絡する短絡線を介して、複数のセグメント16のうち2個のセグメント16に内層コイルの端部及び外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りのセグメント16のうち半数のセグメント16に2つの内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数のセグメント16に2つの外層コイルの端部が1本ずつ接続されるように構成してもよい。図33に示す例では、短絡線301〜306は、180°間隔に位置する2個のセグメント16同士を短絡するものである。そして、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを巻回する際には、セグメント番号「1」のセグメント16に接続された導線41は、内層コイル102aを形成した後に、セグメント番号「2」のセグメント16にフッキングされる。その後、導線41は、短絡線302を形成しつつセグメント番号「8」のセグメント16まで導かれて同セグメント16にフッキングされた後に、内層コイル102cを形成する。以後、導線41は、短絡線301,303〜306を形成しつつ、内層コイル102c,102b,102d,102f,102e、外層コイル103b,103d,103c,103e,103a,103fを順に連続して形成する。これにより、短絡線301〜306を介して、12個のセグメント16のうち2個のセグメント16に内層コイルの端部及び外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りの10個のセグメント16のうち半数の5個のセグメント16に2つの内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数の5個のセグメント16に2つの外層コイルの端部が1本ずつ接続される。このようにすると、短絡線301〜306も含めて全ての内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを1本の導線41で連続して巻回することができる。そして、短絡線301〜306も含めて全ての内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを1本の導線41で連続して巻回すると、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの巻回時に連続して短絡線301〜306も形成されるため、別途短絡部材を形成して配置する場合に比べて製造工程の数が減少される。従って、直流モータの生産性が向上する。
【0101】
・上記第2実施形態では、2つのフライヤを用いて、内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fを電機子コア82に巻装する。しかしながら、3つ以上のフライヤを用いて内層コイル102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの電機子コア82への巻装を行ってもよい。この場合、整流子に備えられる複数のセグメント16のうちn個(nは2以上の偶数)のセグメント16には、内層コイルの端部及び外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りのセグメント16のうち半数のセグメント16には、2つの内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数のセグメント16には、2つの外層コイルの端部が1本ずつ接続される。そして、複数のフライヤを同時に用いると、102a〜102f及び外層コイル103a〜103fの巻回に要する時間を短縮することができ、直流モータM2の生産性を向上させることができる。
【0102】
・上記各実施形態では、電機子コア12,82,142は、何れもティースの先端部に分岐ティース部26a,26bを備えている。しかしながら、ティースは、分岐ティース部26a,26bを備えない構成とされてもよい。この場合、直流モータは、磁極の数Pが4以上の偶数、ティースの数NがN=2×(P±2)(但しP=4のときN=12)、セグメント16の数SがS=((P/2)×N)とされる。そして、各内層コイルは、隣り合う2本のティースの基端部にそれぞれ巻回される。更に、外層コイルは、隣り合う2つの内層コイルが巻回された4本のティースのうち中央の隣り合う2本のティースの先端部にそれぞれ巻回される。また、(360/(P/2))°間隔に位置する(P/2)個のセグメント16同士が短絡部材にて短絡されるとともに、複数のセグメント16のうちティースと同数の周方向に等角度間隔に配置されたセグメント16に、内層コイル及び外層コイルの端部が1本ずつ接続される。例えば、図34に示す直流モータM7の電機子コア401は、円筒状のコアバック20の外周面から径方向外側に向かって放射状に延びる16本のティース402を備えている。そして、周方向に隣り合う2本ずつのティース402の基端部には、それぞれ内層コイル403a〜403hが巻回されるとともに、隣り合う2つの内層コイルが巻回された4本のティース402のうち中央の隣り合う2本のティース402の先端部に、外層コイル404a〜404hがそれぞれ巻回されている。尚、各内層コイル403a〜403h及び各外層コイル404a〜404hの端部は、上記第3実施形態の内層コイル162a〜162h及び外層コイル163a〜163hと同様に整流子83のセグメント16に接続されている。このようにしても、上記第3実施形態の直流モータM3と同様に、出力を低下させることなく大型化を抑制するとともに、振動を抑制することができる。また、磁極の数Pが4以上の偶数であり、ティースの数NがN=2×(P±2)(但しP=4のときN=12)であり、セグメントの数SがS=((P/2)×N)であるため、直流モータM7の駆動時に電機子コア401に作用するラジアル方向の力を極めて小さくすることができ、直流モータM7における振動をより低減することができる(特開2004−88916号公報、特開2003−259582号公報参照)。
【0103】
・上記第1乃至第4実施形態では、直流モータM1〜M4は、陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15を1つずつ備えている。しかしながら、直流モータM1〜M4は、陽極側ブラシ14及び陰極側ブラシ15を複数個ずつ備えてもよい。
【0104】
・固定子1,131に備えられる磁極(マグネット)の数P及び電機子コア12,82,142に備えられるティースの数Nは、適宜変更してもよい。但し、N=P±2とすると、より大きな振動低減効果を得ることができる(特開2004−88916号公報、特開2003−259582号公報参照)。例えば、図35に示す直流モータM8は、上記第1実施形態の固定子1を備えるとともに、上記第3実施形態の電機子141を備えることにより、磁極の数PがP=4、ティースの数NがN=8となっている。
【0105】
・上記各実施形態では、直流モータM1〜M4,M9は、固定子1,131の内側に電機子2,81,141,201が配置されたインナロー型の直流モータである。しかしながら、固定子の外周に電機子が配置されるアウタロータ型の直流モータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0106】
4a〜4d,132a〜132f…磁極としてのマグネット、12,82,142,401…電機子コア、13,83,143…整流子、14,501…給電ブラシとしての陽極側ブラシ、15,502…給電ブラシとしての陰極側ブラシ、16…セグメント、21〜25,91〜96,151〜158,402…ティース、26a,26b…分岐ティース部、31…内側スロット、32…外側スロット、42a〜42e,102a〜102f,162a〜162h,202a〜202h,403a〜403f…電機子コイルとしての内層コイル、43a〜43e,103a〜103f,163a〜163h,203a〜203h,404a〜404f…電機子コイルとしての外層コイル、145…短絡部材,301〜306…短絡線、801…高抵抗ブラシ、X3〜X6…磁極中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並設された複数の磁極と、
周方向に並設された複数のティースを有し前記ティースの先端が前記磁極と径方向に対向される電機子コアと、
前記ティースに巻回された複数の電機子コイルと、
周方向に並設された複数のセグメントを有し前記電機子コアと一体回転可能に設けられた整流子と、
前記セグメントに押圧接触される複数の給電ブラシと、
を備えた直流モータであって、
各前記ティースは、その先端部に、周方向に離間するように分岐して二股状をなす一対の分岐ティース部を有し、
複数の前記電機子コイルは、各前記ティースの基端部に集中巻にてそれぞれ巻回されて径方向に互いに重なることなく周方向に並ぶ複数の内層コイルと、前記内層コイルよりも外周側で隣り合う2つの前記ティースの隣り合う2つの前記分岐ティース部にそれぞれ分布巻にて巻回されて径方向に互いに重なることなく周方向に並ぶ複数の外層コイルとであり、各前記内層コイルの周方向の中心と各前記外層コイルの周方向の中心とが周方向にずれており、
前記整流子は、前記セグメントを前記ティースの2倍の数だけ備え、
複数の前記セグメントのうちn個(nは2以上の偶数)の前記セグメントには、前記内層コイルの端部及び前記外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りの前記セグメントのうち半数の前記セグメントには、2つの前記内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数の前記セグメントには、2つの前記外層コイルの端部が1本ずつ接続されていることを特徴とする直流モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の直流モータにおいて、
前記磁極をP個(Pは偶数)備え、
(360/(P/2))°間隔に位置する(P/2)個の前記セグメント同士を短絡する短絡線を介して、複数の前記セグメントのうち2個の前記セグメントに前記内層コイルの端部及び前記外層コイルの端部が1本ずつ接続され、残りの前記セグメントのうち半数の前記セグメントに2つの前記内層コイルの端部が1本ずつ接続され、もう半数の前記セグメントに2つの前記外層コイルの端部が1本ずつ接続されたことを特徴とする直流モータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の直流モータにおいて、
前記整流子は、前記セグメントを前記磁極の数の整数倍の数だけ備え、
前記電機子コアは、隣り合う前記ティース間に前記内層コイルが挿通される内側スロットを備えるとともに、各前記ティースの対をなす前記分岐ティース部間に前記外層コイルが挿通される外側スロットを前記内側スロットと同数備え、前記内側スロット及び前記外側スロットの合計が前記セグメントの数と同じ数であり、
陽極の前記給電ブラシと陰極の前記給電ブラシとは、前記磁極の周方向の中心を通る磁極中心線上の通常位置から周方向に沿って相反する方向にシフトして配置され、陽極の前記給電ブラシによる整流と陰極の前記給電ブラシによる整流とが交互に行われることを特徴とする直流モータ。
【請求項4】
請求項3に記載の直流モータにおいて、
各前記給電ブラシにおける前記セグメントに摺接する摺接部に隣接するとともに、隣接する前記給電ブラシの通常位置から隣接する前記給電ブラシがシフトされた方向と反対方向にシフトして配置される高抵抗ブラシを設けたことを特徴とする直流モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2013−55883(P2013−55883A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−274386(P2012−274386)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2008−296717(P2008−296717)の分割
【原出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】