説明

直流遮断器

【課題】直流遮断器において、樹脂封止部の気密性を向上させる。
【解決手段】本発明の直流遮断器は、固定端子5と、固定端子5が配置される貫通孔6を有し、且つ、内部の封止空間Sにて固定端子5の端面を露出させるケースブロック1と、封止空間Sに配されて固定端子5の端面に対して接離する可動端子10と、封止空間Sに不活性ガスが封入された状態で貫通孔6を気密封止する樹脂封止部30とを具備したものである。そして、樹脂封止部30は、硬化性樹脂層31と粘土層32とが積層された積層構造から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流遮断器において不活性ガスを気密封止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図4には、従来の直流遮断器を、概略的に示している。直流遮断器は、ケースブロック100内に封止空間101を有し、この封止空間101内にて、固定端子102の端面に対して可動端子103を接触させることにより直流を通電させ、可動端子103を離間させることにより直流を遮断させる。
【0003】
この封止空間101内には、不活性ガスが封入される。封入された不活性ガスは、エポキシ樹脂を注入して形成した樹脂封止部104によって、封止空間101内に気密封止される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−15773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の直流遮断器においては、不活性ガスとして、一般的に窒素ガスが用いられる。一方、直流の遮断性能を向上させるには、不活性ガスとして水素ガスを充填させることが望ましい。
【0006】
これは、水素ガスの熱伝導率が窒素ガスの熱伝導率よりも高く、そのため、不活性ガスとして水素ガスを用いたほうが、遮断時に生じるアークの冷却性能が向上するからである。特に、300V以上の高電圧領域においては、発生するアーク容量が大きくなるので、窒素ガスではアークを瞬時に遮断させることが困難となる。
【0007】
しかし、水素ガスは、窒素ガスよりも分子サイズが小さいという特徴を有する。そのため、従来例のようにエポキシ樹脂を注入しただけの樹脂封止部では、この樹脂封止部を水素ガスが透過するおそれがある。つまり、従来のような樹脂封止部では、気密性が十分でなく、したがって、不活性ガスとして水素ガスを用いることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みて発明したものであって、水素ガスのような分子サイズの小さいガスであっても、直流遮断器の不活性ガスとして用いることができるように、樹脂封止部の気密性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明を、下記構成を具備した直流遮断器とする。
【0010】
本発明は、固定端子と、前記固定端子が配置される貫通孔を有し、且つ、内部の封止空間にて前記固定端子の端面を露出させるケースブロックと、前記封止空間に配されて前記固定端子の前記端面に対して接離する可動端子と、前記封止空間に不活性ガスが封入された状態で前記貫通孔を気密封止する樹脂封止部とを具備し、前記樹脂封止部は、硬化性樹脂層と粘土層とが積層された積層構造から成ることを特徴とする直流遮断器である。
【0011】
前記粘土層は、鱗片形状を有する粘土粒子が一方向にむけて配向されたものであることが好ましい。
【0012】
また、前記樹脂封止部は、前記ケースブロックの外表面から前記固定端子の外表面にかけての領域上に形成される前記硬化性樹脂層と、前記硬化性樹脂層に積層される前記粘土層とを有することが好ましい。
【0013】
このとき、前記ケースブロックは、少なくとも前記硬化性樹脂層が形成される部分が、アルミニウム製であり且つその外表面にアルマイト処理が施されたものであることが好ましい。
【0014】
また、前記樹脂封止部は、前記ケースブロックの外表面から前記固定端子の外表面にかけての領域上にペースト状の粘土を塗布して形成される前記粘土層と、前記粘土層に積層される前記硬化性樹脂層とを有することも好ましい。
【0015】
また、前記ケースブロックと前記固定端子の両方又は一方の外表面に、エッチング処理を施していることも好ましい。
【0016】
また、前記固定端子は、銅の外表面にNiめっきを施したものであることも好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂封止部の気密性が向上し、分子サイズの小さいガスであっても不活性ガスとして用いることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)〜(h)は、本発明の実施形態1の直流遮断器の組み立て工程を順に示す概略的な断面図である。
【図2】同上の直流遮断器で用いる粘土層の結晶構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】(a)〜(g)は、本発明の実施形態2の直流遮断器の組み立て工程を順に示す概略的な断面図である。
【図4】従来の直流遮断器の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0020】
図1(a)〜(h)には、本発明の実施形態1の直流遮断器の組み立て工程を、順に示している。図1(h)等に示すように、本実施形態では、金属ケース2と、この金属ケース2内に配される絶縁ケース3と、絶縁ケース3上に載置される金属製の受け部材4とで、ケースブロック1を構成している。このケースブロック1内に、封止空間Sが形成される。
【0021】
固定端子5を配置するための貫通孔6は、ケースブロック1のうち絶縁ケース3側に形成される貫通孔7と、受け部材4側に形成される貫通孔8とから成る。固定端子5は、この貫通孔6に貫通配置された状態で、その一端側の端面9を、封止空間S内に露出させる。
【0022】
封止空間Sには、この固定端子5の端面9に対して接離するように、可動端子10を配している。可動端子10は、金属ケース2内に配置される駆動機構11によって駆動され、所定の接離動作を行う。駆動機構11は、電磁石12と、この電磁石12によって進退駆動されるプランジャ13とを有する。プランジャ13は、その一部が絶縁ケース3内にまで挿入され、絶縁ケース3内の部分にて可動端子10に固定される。
【0023】
封止空間S内には、水素ガスが充填される。この水素ガスが、本実施形態での不活性ガスとなる。そして、貫通孔6を封止して封止空間S内を気密封止する樹脂封止部30を、硬化性樹脂層31と粘土層32の積層構造によって形成している。ここでは硬化性樹脂層31として、第一の硬化性樹脂層31aと第二の硬化性樹脂層31bを形成し、両樹脂層31a,31b間にフィルム状の粘土層32を介在させている。
【0024】
以下、図1(a)〜(h)に基づいて、本実施形態での組み立て工程を順に説明する。
【0025】
まず、図1(a)、(b)に示すように、アルミニウム、SUS、銅等の金属により有底筒型に成型した金属ケース2の内底面上に、電磁石12を配置する。次いで、図1(c)に示すように、この金属ケース2内にプランジャ13、可動端子10、絶縁ケース3及び固定端子5等を配置し、それぞれ所定箇所に位置決めする。このとき、絶縁ケース3は電磁石12上に載置され、絶縁ケース3の下側底壁の中央に設けた貫通孔14から、プランジャ13が挿入される。なお、本文中においては、電磁石12に対して絶縁ケース3が位置する側を上側、その逆側を下側とする。
【0026】
絶縁ケース3の上側底壁には、固定端子5が配置される一対の貫通孔7を、一対だけ上下方向に貫通形成している。貫通孔7は、上側の大径部分と下側の小径部分とを有し、この大径部分と小径部分とが、段差を介して同軸上に形成されている。固定端子5は棒状であり、その外周面から、この段差に係止するフランジ部16を突設している。固定端子5は、フランジ部16が段差上に係止した状態において、その一方の端部が絶縁ケース3内に突出し、他方の端部が絶縁ケース3外に突出する。
【0027】
次いで、図1(d)、(e)に示すように、アルミニウム、SUS、銅等の金属により皿状に成型した受け部材4を、金属ケース2内に配置する。このとき、受け部材4の底壁が、絶縁ケース3の上側底壁に載置され、受け部材4の周壁が、金属ケース2の周壁に対して内側から当接する。そして、受け部材4の底壁に設けた一対の貫通孔8が、絶縁ケース3に設けた一対の貫通孔7に対して、1対1で一直線状に連通される。受け部材4側の貫通孔8の孔径と、絶縁ケース3側の貫通孔7の大径部分の孔径とは、略同一に設けている。
【0028】
この状態において、金属ケース2と受け部材4とを、溶接にて一体化させる。溶接後において、ケースブロック1内に形成される封止空間Sは、一対の貫通孔6を通じてのみ外部空間に連通する状態となり、この貫通孔6にそれぞれ固定端子5が配される。
【0029】
次いで、図1(f)に示すように、この貫通孔6内に、受け部材4の上側からディスペンサ等の注入手段を用いてエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂を注入する。絶縁ケース3側の貫通孔7の小径部分は、固定端子5が隙間なく嵌合するように形成しているので、注入された硬化性樹脂は、貫通孔7の大径部分と、受け部材の貫通孔8内に封入される。これにより、貫通孔6を塞ぐようにして第一の硬化性樹脂層31aが形成される。
【0030】
次いで、図1(g)に示すように、皿状をなす受け部材4の内底面上に、粘土フィルム18を配置する。この粘土フィルム18は、鱗片形状を有する粘土粒子19が一方向にむけて配向されたものであり、このように配向された粘土粒子19の層が、複数層重ねられている(図2参照)。
【0031】
粘土フィルム18は、一対の固定端子5と対応する箇所に、それぞれ貫通孔20を有している。各貫通孔20に固定端子5が貫通するように粘土フィルム18を配置すると、この粘土フィルム18によって、受け部材4の内底面の略全体が覆われる。これにより、粘土フィルム18からなる粘土層32が、第一の硬化性樹脂層31aに積層される。
【0032】
なお、この粘土フィルム18を作成するには、以下の方法が用いられる。即ち、例えば天然モンモリロナイト、合成サポナイト等の粘土材料に蒸留水を加え、テフロン(登録商標)回転子とともにプラスチック容器に入れて攪拌し、均一な粘土分散液を得る。この粘土分散液を、底面が平坦なトレイ上に注いで水平に静置することで、粘土粒子を沈積させる。そして、このトレイを水平に保った状態で、一定温度条件下で熱風乾燥させることで、薄膜状の粘土フィルム18が得られる。この粘土フィルム18は、前記の粘土結晶構造を有するので、ガスは図2中の矢印のように迂回をしないと透過することができず、ガス透過経路が長くなるので、ガスバリア性能が非常に高いものとなる。
【0033】
次いで、図1(h)に示すように、受け部材4に配された粘土フィルム18上に、ディスペンサ等の注入手段を用いてエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂を注入する。注入された硬化性樹脂は、受け部材4の略全体を埋めるように封入されることにより、第二の硬化性樹脂層31bを形成する。
【0034】
なお、硬化性樹脂層31(本実施形態では、第一及び第二の硬化性樹脂層31a,31b)を形成するための硬化性樹脂としては、エポキシ系接着剤を用いることが好適である。エポキシ系接着剤は耐熱性に優れているため、高温環境下での気密性に優れるとともに、粘土層32との親和性も良好であるため、粘土層32との間において高い密着強度も得られる。さらに、このエポキシ系接着剤の中に、無機質フィラーとして酸化アルミニウムを添加することも好適である。これによれば、硬化性樹脂層31の耐熱性や気密性が一層向上する。酸化アルミニウムの粒径や添加量を調整することにより、エポキシ系接着剤の粘度を調整することもできる。
【0035】
上記のようにして、本実施形態の樹脂封止部30が形成される。この樹脂封止部30は、第一の硬化性樹脂層31a、粘土層32及び第二の硬化性樹脂層31bがこの順に積層された、三層の積層構造を有する。そして、この樹脂封止部30により各固定端子5が固定され、各固定端子5の一方の端部が絶縁ケース3内にて封止空間S内に突出し、他方の端部がケースブロック1外に突出する。
【0036】
ケースブロック1内の封止空間Sには、図示略のポートを通じて不活性ガスが封入され、この三層構造で形成される樹脂封止部30によって、気密状態で封止される。ここでの不活性ガスとしては、水素ガスを用いる。
【0037】
本実施形態においては、ガスバリア性の高い粘土層32が硬化性樹脂層31に積層されており、この粘土層32と硬化性樹脂層31の密着性も良好であるため、樹脂封止部30は非常に気密性の高いものとなる。そのため、不活性ガスとして水素ガスを封入しても、これを気密性よく封止することができる。水素ガスが用いられることで、遮断時に生じるアークの冷却性能が向上し、300V以上の高電圧領域であってもアークを瞬時に遮断させることが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態の直流遮断器では、金属ケース2と受け部材4をアルミニウムで成型し、陽極酸化処理によって、その外表面にアルマイト処理を施しておくことが好適である。アルマイト皮膜は多数の微細孔が形成された多孔質体となるので、この上から樹脂を封入することにより、アンカー効果によって樹脂との密着性が向上し、ひいてはガスバリア性が一層向上する。加えて、アルミニウムは加工性に優れるため、様々な構造を設計することも容易となる。
【0039】
また、ケースブロック1を構成する受け部材4や金属ケース2の外表面に、さらにエッチング処理を施すことや、固定端子5の外表面にエッチング処理を施すことも好適である。エッチング処理により外表面を粗面化することで、アンカー効果によって硬化性樹脂層31や粘土層32との密着性が向上し、ひいてはガスバリア性が一層向上する。エッチング方法としては、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング、フォトエッチング、化学エッチング等があるが、表面の粗化や凹凸形成という点では化学エッチングが好ましい。
【0040】
また、固定端子5の材質として銅を用い、その表面にNiめっきを施すことも好適である。電気抵抗の低い銅を用いることで、大電流での通電が可能となる。加えて、表面のNiめっきは特にエポキシ樹脂との間で密着性が高いので、固定端子5と硬化性樹脂層31との間での密着性が向上し、ひいてはガスバリア性が一層向上する。
【0041】
次に、本発明の実施形態2の直流遮断器について、図3に基づいて説明する。なお、本実施形態の構成のうち、前述した実施形態1と同様の構成については詳しい説明を省略し、本実施形態の特有の構成についてのみ以下に詳述する。
【0042】
図3には、本発明の実施形態2の直流遮断器の組み立て工程を示している。図3(g)等に示すように、本実施形態においても、封止空間S内を気密封止する樹脂封止部30を、硬化性樹脂層31と粘土層32の積層構造によって形成している。しかし、本実施形態では、ペースト状の粘土をまず塗布して粘土層32を形成し、その上に硬化性樹脂層31を積層させている。
【0043】
以下、図3に基づいて、本実施形態での組み立て工程を説明するが、図3(a)〜(e)の工程については実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
図3(f)では、溶接にて金属ケース2に一体化させた受け部材4に対して、バインダーを添加することでペースト化した粘土材料を、一面に塗布する。塗布された粘土材料は、絶縁ケース3に形成される貫通孔7の大径部分から受け部材4の貫通孔8に至る部分と、皿状をなす受け部材4の内底面から内周面に至る部分と、各固定端子5の外周面のうちケースブロック1外に突出する部分の、全面に亘って塗布される。これにより、ガスバリア性の高い粘土層32が、貫通孔6を塞ぐように広く形成される。
【0045】
次いで、図3(g)に示すように、この粘土層32を覆い隠すように硬化性樹脂を注入し、硬化性樹脂層31を形成する。この硬化性樹脂層31は、その表面から一対の固定端子5の端部がそれぞれ突出するように、皿状を成す受け部材4内の略全体に充填される。
【0046】
本実施形態においても、ケースブロック1内の封止空間Sには、水素ガスから成る不活性ガスが封入され、このペースト状の粘土材料を用いた樹脂封止部30によって、気密状態で封止される。
【0047】
本実施形態の直流遮断器においても、ケースブロック1を構成する受け部材4や金属ケース2の外表面に、さらにエッチング処理を施すことや、固定端子5の外表面にエッチング処理を施すことが好適である。エッチング処理により外表面を粗面化することで、アンカー効果により粘土層32との密着性が向上し、ガスバリア性が一層向上する。
【0048】
以上、実施形態に基づいて説明したように、本発明の直流遮断器は、固定端子5と、固定端子5が配置される貫通孔6を有し、且つ、内部の封止空間Sにて固定端子5の端面9を露出させるケースブロック1と、封止空間Sに配されて固定端子5の端面9に対して接離する可動端子10と、封止空間Sに不活性ガスが封入された状態で貫通孔6を気密封止する樹脂封止部30とを具備したものである。そして、樹脂封止部30は、硬化性樹脂層31と粘土層32とが積層された積層構造から成る。
【0049】
このように、不活性ガスを気密封止する樹脂封止部30が、ガスバリア性の高い粘土層32を積層したものとなっているので、不活性ガスとして分子サイズの小さいガスを用いても、これをより確実に気密封止することができる。そのため、分子サイズは小さいが熱伝導率の高い水素ガスを用いて、アークの冷却性能を向上させることが可能となり、ひいては、高電圧領域においてもアークを瞬時に遮断させることが可能となる。
【0050】
また、同じく実施形態に基づいて説明したように、本発明の直流遮断器において、粘土層32は、鱗片形状を有する粘土粒子が一方向にむけて配向されたものであることが好ましい。
【0051】
このようにすることで、樹脂封止部30を透過しようとするガスは、この樹脂封止部30中に積層される粘土層32にて粘土粒子間を迂回しながら通過することになり、ガスの透過経路が長くなることで、ガスバリア性能が一層向上する。
【0052】
また、樹脂封止部30は、ケースブロック1(実施形態ではケースブロック1の一部をなす受け部材4)の外表面から固定端子5の外表面にかけての領域上に形成される硬化性樹脂層31と、硬化性樹脂層31に積層される粘土層32とを有することが好ましい。
【0053】
このような積層構造によって、水素ガスからなる不活性ガスを気密封止することが可能となり、アークの冷却性能が向上する。
【0054】
このとき、ケースブロック1は、少なくとも硬化性樹脂層31が形成される部分(実施形態では受け部材4)が、アルミニウム製であり且つその外表面にアルマイト処理が施されたものであることが好ましい。
【0055】
これにより、ケースブロック1の外表面にアルマイト皮膜を形成し、このアルマイト皮膜と硬化性樹脂層31とをアンカー効果によって密着させることができる。そのため、樹脂封止部30全体のガスバリア性が一層向上する。加えて、アルミニウムは加工性に優れるため、様々な構造を設計することも容易となる。
【0056】
また、樹脂封止部30は、ケースブロック1(実施形態では受け部材4)の外表面から固定端子5の外表面にかけての領域上にペースト状の粘土を塗布して形成される粘土層32と、粘土層32に積層される硬化性樹脂層31とを有することも好ましい。
【0057】
このような積層構造によっても、水素ガスからなる不活性ガスを気密封止することが可能となり、アークの冷却性能が向上する。
【0058】
また、ケースブロック1と固定端子5の両方又は一方の外表面に、エッチング処理を施すことも好ましい。
【0059】
これにより、ケースブロック1や固定端子5の外表面を粗面化することができ、アンカー効果によって硬化性樹脂層31や粘土層32との密着性を向上させ、樹脂封止部30全体のガスバリア性を一層向上させることができる。
【0060】
また、固定端子5は、銅の外表面にNiめっきを施したものであることも好ましい。
【0061】
このように、固定端子5の材質として銅を用いることで、大電流での通電が可能となる。加えて、表面にNiめっきを施すことで、硬化性樹脂層31(特にエポキシ樹脂)との密着性が向上し、ひいては樹脂封止部30全体のガスバリア性が一層向上する。
【0062】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記各例の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、各例において適宜の設計変更を行うことや、各例の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ケースブロック
5 固定端子
6 貫通孔
10 可動端子
30 樹脂封止部
31 硬化性樹脂層
32 粘土層
S 封止空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端子と、前記固定端子が配置される貫通孔を有し、且つ、内部の封止空間にて前記固定端子の端面を露出させるケースブロックと、前記封止空間に配されて前記固定端子の前記端面に対して接離する可動端子と、前記封止空間に不活性ガスが封入された状態で前記貫通孔を気密封止する樹脂封止部とを具備し、前記樹脂封止部は、硬化性樹脂層と粘土層とが積層された積層構造から成ることを特徴とする直流遮断器。
【請求項2】
前記粘土層は、鱗片形状を有する粘土粒子が一方向にむけて配向されたものであることを特徴とする請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記樹脂封止部は、前記ケースブロックの外表面から前記固定端子の外表面にかけての領域上に形成される前記硬化性樹脂層と、前記硬化性樹脂層に積層される前記粘土層とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記ケースブロックは、少なくとも前記硬化性樹脂層が形成される部分が、アルミニウム製であり且つその外表面にアルマイト処理が施されたものであることを特徴とする請求項3に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記樹脂封止部は、前記ケースブロックの外表面から前記固定端子の外表面にかけての領域上にペースト状の粘土を塗布して形成される前記粘土層と、前記粘土層に積層される前記硬化性樹脂層とを有することを特徴とする請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記ケースブロックと前記固定端子の両方又は一方の外表面に、エッチング処理を施したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の直流遮断器。
【請求項7】
前記固定端子は、銅の外表面にNiめっきを施したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の直流遮断器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−8531(P2013−8531A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139771(P2011−139771)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】