説明

相乗的抗微生物組成物

(a)3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートと、(b)フルメツラムとを含む相乗的抗微生物組成物。(a)3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートと、(b)ジクロスラムとを含む相乗的抗微生物組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年8月5日に出願された米国仮特許出願第61/273,529号の35U.S.C.119(e)の下での優先権の利益を主張する。
本発明は殺生物剤の組み合わせに関し、この組み合わせは個々の抗微生物化合物について観察されるであろうよりも高い活性を有する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の抗微生物化合物の組み合わせの使用は潜在的な市場を広げることができ、使用濃度およびコストを低減させることができ、かつ廃棄物を低減させることができる。ある場合には、市販の抗微生物化合物は、ある種の微生物、例えば、いくつかの抗微生物化合物に耐性の微生物に対する弱い活性のせいで高い使用濃度でさえ微生物の効果的な制御を提供することができない。特定の最終使用環境における微生物の全体的な制御を提供するために、異なる抗微生物化合物の組み合わせが場合によっては使用される。例えば、米国特許第6,197,805号は3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマート(IPBC)と2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンゾイミダゾールとの組み合わせを開示するが、この文献は本願で特許請求される組み合わせのいずれも示唆していない。特に乾燥膜コーティングにおける微生物の効果的な制御を提供するために、様々な株の微生物に対して向上した活性を有する抗微生物化合物のさらなる組み合わせについての必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,197,805号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、抗微生物化合物のそのような追加の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は(a)3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートと、(b)フルメツラムとを含み、3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマート:フルメツラムの重量比が10:1〜1:10である、相乗的抗微生物組成物に関する。
本発明は(a)3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートと、(b)ジクロスラムとを含み、3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマート:ジクロスラムの重量比が15:1〜1:15である、相乗的抗微生物組成物にさらに関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは以下の用語は指定された定義を有する。用語「抗微生物化合物」とは、微生物の成長を阻止し、または成長を制御することができる化合物をいい;抗微生物化合物には、適用される用量レベル、システム条件および望まれる微生物制御の水準に応じて、殺バクテリア剤、静バクテリア剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺藻剤および静藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビ)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、ATCC=アメリカンタイプカルチャーコレクション、およびMIC=最小阻止濃度。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージに関する言及は重量基準(重量%)である。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは組成物中の活性成分の全重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定化剤もしくは存在しうる他の物質の量を除いた抗微生物化合物自体に基づく。
【0007】
抗微生物組成物がIPBCおよびフルメツラムを含む本発明のある実施形態においては、IPBC:フルメツラムの重量比は9:1〜1:8、あるいは8:1〜1:6、あるいは8:1〜1:5、あるいは7:1〜1:5、あるいは8:1〜1:3、あるいは8:1〜1:2、あるいは7:1〜1:3、あるいは7:1〜1:2、あるいは7:1〜1:1、あるいは6:1〜1:2、あるいは6:1〜1:1、あるいは5:1〜1:1、あるいは4:1〜2:1である。
【0008】
抗微生物組成物がIPBCおよびジクロスラムを含む本発明のある実施形態においては、IPBC:ジクロスラムの重量比は15:1〜1:10、あるいは15:1〜1:5、あるいは12:1〜1:5、あるいは15:1〜1:2、あるいは15:1〜1:1、あるいは12:1〜1:2、あるいは12:1〜1:1、あるいは12:1〜2:1、あるいは11:1〜1:1、あるいは11:1〜2:1、あるいは11:1〜3:1、あるいは10:1〜4:1である。
【0009】
本発明のある実施形態においては、本発明の抗微生物組み合わせは液体組成物、特に水性媒体中のポリマーの分散物に組み込まれる。殺生物剤の組み合わせは建築材料、例えば、接着剤、コーキング材、目地材、シーラント、ウォールボードなど、塗料、コーティング、ポリマー、プラスチック、合成および天然ゴム、紙製品、ガラス繊維シート、断熱材、外断熱仕上げシステム、屋根用および床用フェルト、建築用プラスター、木材製品および木材−プラスチック複合体の保存に特に有用である。本発明のある実施形態においては、抗微生物組成物は、本明細書に開示される殺生物剤の組み合わせを含むラテックス塗料もしくは他の液体コーティング組成物である。殺生物剤の組み合わせは塗料もしくは他の液体コーティング組成物の適用の後で得られる乾燥膜コーティングの保存に有用である。ある実施形態においては、抗微生物組成物は本明細書に開示された殺生物剤の組み合わせの1種以上を含むアクリルラテックス塗料、またはこの塗料を表面に適用して得られた乾燥膜コーティングである。
【0010】
典型的には、微生物の成長を制御するための本発明の殺生物剤の組み合わせの量は100ppm〜10,000ppm活性成分である。本発明のある実施形態においては、組成物の活性成分は、少なくとも300ppm、あるいは少なくとも500ppm、あるいは少なくとも600ppm、あるいは少なくとも700ppmの量で存在する。ある実施形態においては、組成物の活性成分は8,000ppm以下、あるいは6,000ppm以下、あるいは5,000ppm以下、あるいは4,000ppm以下、あるいは3,000ppm以下、あるいは2,500ppm以下、あるいは2,000ppm以下、あるいは1,800ppm以下、あるいは1,600ppm以下の量で存在する。上で言及された濃度は殺生物剤の組み合わせを含む液体組成物中のものであり、乾燥膜コーティングにおける殺生物剤の濃度はより高いであろう。
【0011】
本発明は、特許請求の範囲に特定された殺生物剤の組み合わせのいずれかを建築材料、特に乾燥膜コーティングに組み込むことにより、建築材料、特に乾燥膜コーティングにおける微生物の成長を妨げるための方法も包含する。
【実施例】
【0012】
サンプル調製:殺生物剤を含まない白色アクリルラテックス塗料のサンプルが50mlの量で製造された。その塗料中で必要な活性成分濃度を生じさせる様に、それぞれの殺生物剤が後添加された。試験された殺生物剤合計濃度は750、1500、2500および5000ppmであった。殺生物剤添加の後で、各サンプルは最低30秒間、手作業で混合され、次いで3分間ペイントシェーカー(RED DEVIL)にかけられた。この塗料サンプルのそれぞれ、並びに対照サンプル(殺生物剤を含んでいない)が使用されて、3milのバードバーアプリケータを使用して黒色プラスチック−ビニルクロライド/アセタートコポリマーパネル(レネタ、ニュージャージー州モーウォー)上に膜を製造した。これらパネルは、太陽光への直接の曝露を避けつつ少なくとも5日間完全に乾燥させられた。正方形のディスク(15mm)が各パネルから切り出されて、真菌および藻類有効性試験のための基材として使用された。このサンプルサイズは、このサンプルディスクが試験プレートのウェルに配置された場合の寒天境界を可能にした。
【0013】
試験条件:微生物の成長をサポートするために、適切な培地(緑藻植物(Chlorophytes)についてBOLDの3N、シアノバクテリアについてはBG−11、および真菌についてはPDA)が使用された。試験プレートは、藻類については、室温(25℃〜26℃)で、サイクル化された明暗環境で3週間維持された。真菌有効性試験のためのプレートは30℃で3週間維持された。インキュベーション期間の終わりに、サンプルは目に見える微生物の成長によって覆われた領域のパーセントについて集計された。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
藻類有効性試験:改変されたASTM5589
ASTM5589は藻類汚損に対する様々なコーティング(塗料を含む)の抵抗性を決定するための標準加速試験方法である。高スループットスクリーニングを提供するために、この方法はペトリ皿から12ウェルプレートにスケールダウンされた。滅菌鉗子を用いて1つの試験片が塗布面が上を向くように寒天プラグの中央(上に)に配置された。各ウェルには、表面(塗料膜およびそれを取り囲む寒天)全体が均一に覆われるのを確実にするように、150μlの生物(1×10cfu/ml)が接種された。このプレートは室温(25℃〜26℃)で明相(OTT−Liteモデル#OTL4012P、40ワット、26Kルーメン)および暗相への周期的な曝露を伴い、3週間にわたってインキュベートされた。2週後から各週の終わりに、覆われた領域のパーセントについて5%刻みで、覆われた合計領域が評価された。プレートを評定しつつ、阻止の区域について表記がなされた。
【0017】
真菌有効性試験:改変されたASTM5590
ASTM5590は真菌汚損に対する様々なコーティング(塗料を含む)の抵抗性を決定するための標準加速試験方法である。高スループットスクリーニングを提供するために、この方法はペトリ皿から12ウェルプレートにスケールダウンされた。試験をセットアップするために、寒天プラグが滅菌12ウェルプレートの各ウェルの底に配置された。滅菌鉗子を用いて1つの試験片が塗布面が上を向くように寒天プラグの中央(上に)に配置された。各ウェルには、表面(塗料膜およびそれを取り囲む寒天)全体が均一に覆われるのを確実にするように、150μlの生物(1×10cfu/ml)が接種された。このプレートは水分の存在下で30℃で3週間にわたってインキュベートされた。2週間後から各週の終わりに、覆われた合計領域パーセントが評価され、記録され、並びに5%刻みで記録された。
【0018】
相乗効果指数(SI)
SIは、F.C.Kullらの方法(アプライドマイクロバイオロジー(Applied Microbiology)Vol.9(1961))に基づいて計算される。この検討においてSIは、試験された各微生物に対する個々の殺生物剤によって示される阻止パーセントに基づいて選択された最小阻止濃度で、以下の式に基づいて計算された。
SI=Qa/QA+Qb/QB
Qa=混合物中での殺生物剤Aの濃度
QA=この殺生物剤だけの場合の殺生物剤Aの濃度
Qb=混合物中での殺生物剤Bの濃度
QB=この殺生物剤だけの場合の殺生物剤Bの濃度
【0019】
この式における1未満のSI値は、混合された殺生物剤の相乗効果が存在することを示す。
【0020】
実施例1
単独の活性物としての、またはIPBCとの混合物でのフルメツラム(Flumet)の、塗料膜における、様々な藻類および真菌に対する有効性が検討された。この混合物は、広いスペクトルの真菌および藻類に対して非常に良好な相乗効果を示した。これら混合物の相乗的性能は、混合物がより高濃度のIPBCを含んでいた場合よりもより良好であった。3週間の曝露後の結果は藻類については表1に、および真菌については表2に示される。
【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
実施例2
この試験は、IPBC:ジクロスラム(Diclo)の重量比10:1〜4:1でのIPBCとジクロスラムとの混合物の性能を検討するために行われた。これらの混合物は、真菌および藻類の広いスペクトルに対して、非常に良好な相乗効果を示した。試験されたそれぞれの混合物は試験されたIPBC:ジクロスラムの全ての比率で少なくとも1種の生物に対して相乗効果を示した。3週間の曝露後の結果は藻類については表3に、および真菌については表4に示される。
【0024】
【表5】

【0025】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートと、(b)フルメツラムとを含み、3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマート:フルメツラムの重量比が10:1〜1:10である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項2】
前記重量比が6:1〜1:2である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
建築材料、塗料、コーティング、ポリマー、プラスチック、合成もしくは天然ゴム、紙製品、ガラス繊維シート、断熱材、外断熱仕上げシステム、屋根用および床用フェルト、建築用プラスター、木材製品または木材−プラスチック複合体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
乾燥膜コーティングである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
(a)3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートと、(b)ジクロスラムとを含み、3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマート:ジクロスラムの重量比が15:1〜1:15である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項6】
前記重量比が12:1〜2:1である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
建築材料、塗料、コーティング、ポリマー、プラスチック、合成もしくは天然ゴム、紙製品、ガラス繊維シート、断熱材、外断熱仕上げシステム、屋根用および床用フェルト、建築用プラスター、木材製品または木材−プラスチック複合体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
乾燥膜コーティングである請求項7に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−501050(P2013−501050A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523658(P2012−523658)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043693
【国際公開番号】WO2011/017190
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】