説明

相間スペーサ

【課題】架空送電線用の相間スペーサにおいて、連結部材の内部に溜まる水が確実に抜けるための構造を備える。
【解決手段】張架された電線同士を絶縁状態に保持するための相間スペーサであって、一方端部の第1電線クランプ部、連結部材、1体または複数体のがいし部材、他方端部の第2電線クランプ部の各部材を備え、それらが直線状に連結された構成を備え、連結部材は、その一方端部に第1電線クランプ部または第2電線クランプ部と接続する手段とその他方端部にがいし部材と接続する手段とを備えるか、または、その一方端部に複数体のがいし部材うちの一つと接続する手段とその他方端部に他のがいし部材と接続する手段とを備えるとともに、その内部を筒状形状にして水が流れる構成を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線用の相間スペーサに係り、より詳細には、相間スペーサの構成部材の内部に水が溜まらない構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、架空送電線用の相間スペーサの1例として、相間スペーサ100を示す図である。この相間スペーサ100は、全体としては細長い棒状体からなる碍子装置であって、その中央のかなりの部分は絶縁材料からなるがいし部材10によって占められており、相間スペーサ100の両端には、電線を把持するためのクランプ部CLl(上部)とクランプ部CL2(下部)とが設けられている。
【0003】
この相間スペーサ100では、上部のクランプ部CLlとがいし部材10との間には、長さの調整を可能とする連結部材である長さ調整部材20が配設されており、図6の相間スペーサ100は、「クランプ部CLl(上部)−長さ調整部材20−がいし部材10−クランプ部CL2(下部)」の一連の部材が、一直線上に連結して棒体状に配列された構成となっている。
また、この相間スペーサ100のがいし部材10の絶縁材料としては、シリコーン樹脂などのポリマー材料や、従来から多く使われている磁器碍子が用いられる。
【0004】
図6に示す相間スペーサ100は、シリコーンゴムなどのポリマー材料からなるがいし部材10を備え、クランプ部CLl(上部)とクランプ部CL2(下部)とによって架空送電線(図示せず)の相の間に取り付けられる碍子装置であり、電線に強風が当たることにより生じる振動(ギャロッピング)や、付着した氷雪が脱落して生じる電線跳ね上がり(スリートジャンプ)の対策用の電線付属品として用いられ、電線−電線間に取り付けられると電線の相間距離が変化しないように働くので、相間短絡事故を防ぐことができる。
この相間スペーサ100の両端に設けられた電線クランプ(CL1,CL2)は、コイルスプリングを用いて電線を把持するボルトレス型の把持部であり、この把持部は、施工性が良い、長期に渡って把持力が安定している、メンテナンスが不要である、などの優れた特徴がある。なお、電線クランプ(CL1,CL2)としては、ボルトレス型電線把持部ではなく、ボルト締め付けタイプの電線把持部を用いてもよい。
【0005】
つぎに、相間スペーサ100の連結部材である長さ調整部材20について、図6の右図を用いて説明する。
長さ調整部材20は、「キャップ状連結金具23−パイプ状部材22−パイプ状フランジ金具21−がいし部材10側のフランジ部10T」のように、円筒形状を基とする各構成部材が直線的に組み合わされて一体化された構造であり、その材料としては金属材料の鉄や、それより軽量のアルミなどが用いられる。
【0006】
このキャップ状連結金具23は、上面側に電線クランプCL1への連結部23aを有して、下側に開口するキャップ形状または断面逆凹形(逆U形)の立体形状をなし、その側面には、内部と外部とを挿通するように開口して概略逆U形状に切り欠かれた開口部u1が形成されている。
このキャップ状連結金具部23の開口部u1は、側面の所定箇所に挿通口が設けられたものであり、内部と外部との水分や空気の通過を容易にして、溶接時の熱膨張による破裂や凍結などによる破損を防止するとともに、点検者によるキャップ状連結金具23の内部の連結部材の観察なども容易にすることができる。
【0007】
相間スペーサ100の長さ調整部材20において、キャップ状連結金具23とパイプ状部材22との連結接続については、キャップ状連結金具23の円筒状部分の断面円形の内部形状とパイプ状部材22の断面円形の外部形状とが合致するように、予め形成しておく。そして、キャップ状連結金具23をパイプ状部材22の上端から被せて、外面から円周状に結合させる溶接部w1によって、キャップ状連結金具23の下端部とパイプ状部材22の外側面部が一体的に溶接結合されて、連結接続がなされる。
ここで、相間スペーサ100の長さ調整部材20は、パイプ状部材22自身の長さ(寸法)を調整して設定することにより、長さ調整部材20全体の長さを調整することが可能である。
【0008】
また、パイプ状フランジ金具21は、上部の円筒形状のパイプ部(図示せず)と、下部の円板状または鍔状に外周に向けて突起された第1フランジ部21fと、が一体化された形状を有している。
そして、パイプ状部材22とパイプ状フランジ金具21との連結については、パイプ状部材22の断面円形の内部形状とパイプ状フランジ金具21のパイプ部(図示せず)の断面円形の外部形状とが合致するように形成しておいて、パイプ状フランジ金具21にパイプ状部材22の下端を付け合せて、溶接部w2の箇所を溶接し、一体的に接合している。
【0009】
また、がいし部材10側の上部には第1フランジ部21fと同様な形状に形成された第2フランジ部10fを有し、その下部は棒状の充実体となっている。
2つのフランジである上部の第1フランジ部21f(上)と下部のがいし10側の第2のフランジ部10f(下)とは、断面円形の内接面同士が上下位置(天地方向)で合わせられ、ボルト、ナット、ばね座金などの締結用部材によって、天地方向に締め付けて結合されている。
【0010】
こうして、相間スペーサ100の長さ調整部材20は、パイプ状部材22自身の長さ(寸法)を調整して設定することにより、長さ調整部材20の上下(天地方向)の長さの調整が可能な構造となっている。
そして、長さ調整部材20においては、長さ調整部材20側の第1フランジ部21f(上側)の下向き内接面と、がいし部材10側の第2のフランジ部10f(下側)の上向きの内接面とが合わされて締結部材により接合されている。
【0011】
また、相間スペーサ100の長さ調整部材20においては、パイプ状部材22の内部を密封したとすれば、溶接時に熱膨張による破裂が懸念されることとなるので、長さ調整部材20の内部は密封されることはなく開口部u1が設けられており、長さ調整部材20の内部に水が浸入したときには、長さ調整部材20の下部にある2つのフランジ部の合わせ部から水が抜けることはなく、水が流れずに溜まってしまう、という問題点がある。
【0012】
本発明の技術分野に係わる文献として、特許文献1には、「把持された導体のサブスパン振動による導体の損傷をゴム材の介在なしに防ぐための導体相間スペ−サ」が記載されており、また、特許文献2には、「各送電線の間において荷重を受けたときに連続的に撓むことができ、良好にギャロッピングを抑制して、信頼性の向上を図ることができる送電線用相間スペーサ」が記載されてはいるものの、相間スペーサの水抜きに関する技術については、何も開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−108344号公報
【特許文献2】特開2003−224924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、架空送電線用の相間スペーサに関わる上記の問題点を解決するためになされたものであり、相間スペーサの連結部材の内部には水が溜まることがなく、水が入ったとしても確実に抜けるための構造を備えた相間スペーサを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)張架された電線同士を絶縁状態に保持するための相間スペーサであって、
一方端部の第1電線クランプ部、連結部材、1体または複数体のがいし部材、他方端部の第2電線クランプ部の各部材を備えて、それらが直線状に連結された構成を備え、
第1電線クランプ部は、第1の電線を把持する手段と、連結部材またはがいし部材と接続する手段と、を備え、
第2電線クランプ部は、第2の電線を把持する手段と、連結部材またはがいし部材と接続する手段と、を備え、
がいし部材は、その両端部に、第1電線クランプ部、連結部材、第2電線クランプ部、他のがいし部材、のうちの2つ部材と接続する手段を備え、
連結部材は、その一方端部に第1電線クランプ部または第2電線クランプ部と接続する手段とその他方端部にがいし部材と接続する手段とを備えるか、または、その一方端部に複数体のがいし部材うちの一つと接続する手段とその他方端部に他のがいし部材と接続する手段とを備えるとともに、その内部を筒状形状にして水が流れる構成を備える。
【0016】
なお、相間スペーサ全体の構造としては、つぎのような構成例がある。
「第1電線クランプ部−連結部材−がいし部材−第2電線クランプ部」
「第1電線クランプ部−第1がいし部材−連結部材−第2がいし部材−第2電線クランプ部」
「第1電線クランプ部−連結部材−第1がいし部材−第2がいし部材−第2電線クランプ部」
【0017】
(2)(1)の相間スペーサにおいて、
前記連結部材は、隣接する部材と接続するためのフランジ部を介した接続手段を備え、
前記隣接する部材は、前記連結部材のフランジ部と接続するためのフランジ部を介した接続手段を備え、
前記2つのフランジ部を介する接続手段では、前記2つのフランジ部の合わせ面を向き合わせて、それを貫通する締結ボルトによってそれらを締め付ける構成とし、
前記2つのフランジ部の合わせ面の間には、水が流れる水路が設けられる。
(3)(1)または(2)の相間スペーサにおいて、
前記連結部材は、自身の長さを調整する手段を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明による架空送電線用の相間スペーサでは、連結部材の内部から水を抜く手段または水を抜ける構造を提供することにより、以下の効果が期待される。
(1)内部にある連結ボルトなどの部材についての腐食の懸念を取り除くことができる。
(2)連結部材の内部に溜まった水の氷結による部材破損の懸念を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の相間スペーサに係り、フランジ部により接続された連結部材の水抜き手段を説明するための図である。
【図2】本発明の相間スペーサに係り、フランジ部の水抜き手段の種々の例を示す図である。
【図3】本発明の相間スペーサに係り、水抜き手段を備える連結部材の1例を示す図である。
【図4】本発明の相間スペーサに係り、水抜き手段を備える連結部材の別の例を示す図である。
【図5】本発明の相間スペーサに係り、フランジ部を備えない連結部材についての水抜き手段の例を示す図である。
【図6】相間スペーサの全体的な構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
さて、図1を用いて、本発明の一実施形態である相間スペーサ100Aについて、詳細に説明する。
図1の相間スペーサ100Aは、水抜き手段を有するフランジ接続型の構造を備え、図1においては、図6に示した相間スペーサ100と同一又は同等の構成部材については同一の符号を用い、主要な構成部材である長さ調整部材20A側の第1フランジ部25Fとがいし部材10A側の第2フランジ部15Fとを備えるフランジ接続型の構造を有している。
【0021】
この相間スペーサ100Aは、上下にまたは傾斜して張架されている電線と他の電線とを絶縁状態に保持するための間隔体であり、「第1電線クランプ部CL1−長さ調整部材20A−がいし部材10A−第2電線クランプ部CL2」の複数の部材が、一直線状または棒状に連結された構成を備えている。
この相間スペーサ100Aでは、第1電線クランプ部CL1と第2電線クランプ部CL2については省略し、がいし部材10Aについては、上方端部に位置する端部15Tの付近の部位のみを示している。
【0022】
第1電線クランプ部CL1(図示せず)は、第1の電線(図示せず)を把持する手段と、長さ調整部材20Aと接続する手段と、を備えている。
また、長さ調整部材20Aは、「キャップ状連結金具23−パイプ状部材22−連結用フランジ部25」の各部材が一体化された構造を有して、第1電線クランプ部CL1と接続する手段と、自身の長さを調整する手段と、がいし部材10Aと接続するための第1フランジ部25Fを介した接続手段と、を備えている。
【0023】
図1の相間スペーサ100Aでは、長さ調整部材20Aにおいて、パイプ状部材22自身の長さ(寸法)を調整して設定することにより、長さ調整部材20A自身の長さを調整することができる。
がいし部材10Aは、長さ調整部材20Aと接続するために、がいし部材10Aの上方端部側にある第2フランジ部15Fを介した接続手段と、下方の第2電線クランプ部CL2(図示せず)と接続する手段と、を備えている。
第2電線クランプ部CL2(図示せず)は、がいし部材10Aと接続する手段と、第2の電線(図示せず)を把持する手段と、を備えている。
【0024】
図1の相間スペーサ100Aでは、長さ調整部材20A側にある第1フランジ部25Fと、がいし部材10A側にある第2フランジ部15Fとを介する接続手段では、第1フランジ部25Fの合わせ面25aと第2フランジ部15Fの合わせ面15aとを向き合わせて、第1フランジ部25Fと第2フランジ部15Fとを貫通する締結ボルト(b1,b2,b3)によって締め付ける。
ここで、長さ調整部材20A側の第1フランジ部25Fとがいし部材10A側の第2フランジ部15Fとには、ボルトを通す穴として、円形のフランジ部を中心から60度に均等配分した位置において、長さ調整部材20A側の第1フランジ部25Fの貫通穴(h11,h12,h13)と、がいし部材10A側の第2フランジ部15Fの貫通穴(h1,h2,h3)とが設けられている。
【0025】
そして、図1の相間スペーサ100Aでは、2つのフランジ部の平らな合わせ面(25a,15a)の間には、これらの2つの合わせ面(25a,15a)を所定の間隔に保持するための間隔保持部(k1,k2,k3)が設けられている。
これにより、2つのフランジ部の合わせ面(25a,15a)の間には、合わせ面(25a,15a)間の所定距離αが確保されるので、間隔保持部(k1,k2,k3)は支柱とすれば、合わせ面(25a,15a)の間の他の空間を通して水を流すことができ、相間スペーサ100Aではフランジ部に水路(空間)が形成される。
【0026】
図1の相間スペーサ100Aでは、間隔保持部(k1,k2,k3)は、長さ調整部材20A側の第1フランジ部25Fの合わせ面25aから下方への3箇所の突出部として形成され、間隔保持部(k1,k2,k3)は同じ高さを有しているので、2つの合わせ面(25a,15a)の間隔αを一定に保持することができる。
また、図1に示す間隔保持部(k1,k2,k3)は、貫通する締結ボルト(b1,b2,b3)を取り囲むように、長さ調整部材20A側の第1フランジ部25Fの貫通穴(h11,h12,h13)に添って、円環状の突出部として形成されているが、これらの間隔保持部(k1,k2,k3)は第1フランジ部25Fから突設させるのではなく、がいし部材10Aの側の第2フランジ部15Fから突設させてもよく、貫通する締結ボルト(b1,b2,b3)の周囲でなく、離れたところに設けてもよいことは、いうまでもない。
【0027】
従来の相間スペーサでは、2つのフランジ部の合わせ面の間に前記間隔保持部と水抜きのための水路(空間)とを有していないが、本発明による相間スペーサ100Aでは、2つのフランジ部の合わせ面の間に、水が流れる水路(空間)を形成して、水を貯めることなく外部に抜く構成としている。
つぎの図2は、相間スペーサ100Aにおいて、フランジ部に水路(空間)が形成されたときのいくつかの例を示す図である。
図1のように「円環状の突出部」を有するタイプは、図2においては「台座型」として示している。
【0028】
図2において、「3方向溝」は、2つのフランジ部の平らな合わせ面の間において、合せ面の片方に溝を掘って水路を作り、中心部から外周に抜けるような構造とし、その溝は120度ずつの均等な角度とした「3方向溝」として形成し、これを水が流れる水路としている。
「2方向溝」は、中心部から外に抜けるように、180度の間隔すなわち直線状に「2方向溝」を形成し、これを水が流れる水路としている。
「Z90°溝」は、中心部から外に抜けるように、120度ずつ均等に3方向の溝を形成しているが、その溝は真っ直ぐではなく、途中に1箇所または2箇所の曲がりがあって、概略Zの形状に見え、そのうち1箇所が約90°の曲がりになっているので、そのように呼んでいる。
【0029】
「Z60°溝」は、中心部から外に抜けるように、120度ずつ均等に3方向の溝を形成しているが、その溝は真っ直ぐではなく、途中に2箇所または3箇所の曲がりがあって、概略Zの形状となっており、そのうち1箇所が約60°の曲がりになっているので、そのように呼んでいる。
「台座型」は、図1に示した「円環状の突出部」を有するタイプであり、台座部分は間隔支持部であり、水が流れるのは台座部分の周囲の空間である。
「ボルト穴型」は、中心部から3箇所のボルト穴に向けて3つの溝を形成し、ボルト穴から水がぬけるような水路としたものである。
【0030】
図3は、相間スペーサ100Bの部分を示す図であり、図3(1)を正面図として、図3(2)はその側面図であり、図3(3)は正面図の状態での断面を含む構造説明図である。
相間スペーサ100Bは、「第1電線クランプ部CL3−長さ調整部材50B−がいし部材40B−第2電線クランプ部CL4」が一直線状または棒状に連結された構成を備えており、図3の相間スペーサ100Bでは、上方にある第1電線クランプ部CL3は記載しているが、下方にある第2電線クランプ部CL4は省略している。また、がいし部材40Bについては、その上方端部に位置するフランジ部f1より下の部位を示している。
【0031】
第1電線クランプ部CL3は、第1の電線(図示せず)を把持する手段と、長さ調整部材50Bに接続する手段と、を備えている。
また、長さ調整部材50Bは、「上側のキャップ状連結金具B2−中間のパイプ状部材B1−下側の連結用フランジ部B3」の各部材が一体的に結合された形状を有し、図1と同様にパイプ接続型の構造を備え、3つの部材が溶接部(w3,w4)を介して接続されており、とりわけ、パイプ状部材B1自身の長さを変化させることによって、長さ調整部材50Bの自身の長さを調整する手段を備えている。
【0032】
この長さ調整部材50Bの上方の部材のキャップ状連結金具B2には開口部u2が設けられ、下方の部材の連結用フランジ部B3の下端には、がいし部材40B側のフランジ部f1に接続するためのフランジ部f2を備えている。
がいし部材40Bは、長さ調整部材50B側のフランジ部f2と接続するために、その上方端部にあるフランジ部f1を介した接続手段と、下方端部において第2電線クランプ部CL4と接続する手段と、を備えている。
【0033】
図3の相間スペーサ100Bの第2電線クランプ部CL4は図示されていないが、上方でがいし部材40Bと接続する手段と、第2の電線(図示せず)を把持する手段と、を備えている。
そして、この相間スペーサ100Bでは、2つのフランジ部(f1−f2)を用いたフランジ接続形の構造を有し、2つのフランジ部(f1−f2)の平らな合わせ面の間には、合せ面の片方に溝を掘って水路を作って、その中の溝を通して水を流すことができ、図2に示すような水路が形成されている。
【0034】
図4は、相間スペーサ100Cの上部の部分を示す図であり、図3(1)を正面図として、図3(2)は正面図の状態での断面を含む構造説明図である。
相間スペーサ100Cは、「第1電線クランプ部CL5−フランジ形接続部51−長さ調整部材50C(上部連結用フランジ部52−パイプ状部材54−下部連結用フランジ部53)−がいし部材40C−第2電線クランプ部CL6」が、一直線状または棒状に連結された構成を備え、この図4では、上側の第1電線クランプ部CL5だけを示し、下側の第2電線クランプ部CL6については省略している。
【0035】
第1電線クランプ部CL5は、第1の電線(図示せず)を把持する手段とフランジ形接続部51と接続する手段とを備え、また、このフランジ形接続部51は下部の部材に連結されるフランジ部f6を有するとともに、その上面には上方に突設させた連結部51tが設けられていて、第1電線クランプ部CL5はその連結部51tに接続されている。
また、相間スペーサ100Cの長さ調整部材50Cについては、「上部連結用フランジ部52−パイプ状部材54−下部連結用フランジ部53」が溶接部(w5,w6)を介して一体的に接続され、パイプ状部材54自体の長さを調整することにより、長さ調整部材50Cの長さを調整するように構成されている。
【0036】
そして、この相間スペーサ100Cにおいて、上部連結用フランジ部52はそのフランジ部f5を介してフランジ形接続部51のフランジ部f6と接続する手段を備えており、下部連結用フランジ部53はそのフランジ部f7を介して、がいし部材40Cの上端のフランジ部f8と接続する手段を備えている。
さらに、がいし部材40Cは、下部連結用フランジ部53のフランジ部f7と接続するために、その上部の端部のフランジ部f8を介した接続手段と、第2電線クランプ部CL6(図示せず)と接続する手段と、を備えている。
なお、第2電線クランプ部CL6は図示していないが、がいし部材40Cと接続する手段と、第2の電線(図示せず)を把持する手段と、を備えている。
【0037】
この相間スペーサ100Cにおいて、「フランジ形接続部51のフランジ部f6−上部連結用フランジ部52のフランジ部f5」、および、「下部連結用フランジ部53のフランジ部f7−がいし部材40Cのフランジ部f5」によるフランジ接続形の構造は、図1−3におけるフランジ接続形の構造は同様のものとしている。
したがって、フランジ部(f6−f5)の合わせ面の間と、フランジ部(f7−f8)の合わせ面の間には、合せ面の片方に溝を掘って水路を作っておいて、図2に示すように、他の空間を通して水を流す水路(空間)を形成することができる。
【0038】
図5は、相間スペーサ100Dの部分を示す図であり、図5(1)を正面図として、図5(2)はその側面図であり、図5(3)は正面図の状態での断面を含む構造説明図である。
相間スペーサ100Dは、「第1電線クランプ部CL7−上側のキャップ状連結金具57−中間のパイプ状部材56−下側のキャップ状連結金具58−がいし部材40D−第2電線クランプ部CL8(図示せず)」が、一直線状または棒状に一体的に連結される構成を備えている。
【0039】
この相間スペーサ100Dにおける長さ調整部材50Dは、「上側のキャップ状連結金具57−中間のパイプ状部材56−下側のキャップ状連結金具58」の各部材の組み合わせからなり、断面円形のパイプ状の部位を組み合わせた構造を備えており、パイプ状部材56自体の長さを変化させて調節することにより、長さ調整部材50Dの長さを調整する手段を備えている。
【0040】
上側のキャップ状連結金具57は、開口部u3が設けられたパイプ状形状部57pとその天井部の上側に突設された接続部57tとを備えていて、接続部57tの部位において第1電線クランプ部CL7に連結接続する。
また、下側のキャップ状連結金具58は、開口部u4が設けられたパイプ状形状部58pとその底部から下側に突設された羽子板形状の凸形接続部57sとを備え、その凸形接続部57sにおいてがいし部材40Dの上端に設けられた凹形接続部57sに接続し、側面から貫通する締結部材(B1,B2)により凹凸結合部が締め付けられる凹凸接続型の接続構造が形成されている。
なお、図5の相間スペーサ100Dでは、上側の第1電線クランプ部CL7は記載してされているが、下側の第2電線クランプ部CL8は省略されており、また、がいし部材40Dについては、上方端部において凹型接続部40sの近隣の部位を示しているが、その下方の部位は省略している。
【0041】
図5の相間スペーサ100Dにおいて、第1電線クランプ部CL7は、第1の電線(図示せず)を把持する手段とキャップ状連結金具57に接続する手段とを備える。
また、キャップ状連結金具57は、上側の第1電線クランプ部CL7に接続する手段と下側のパイプ状部材56に接続する手段とを備える。
そして、パイプ状部材56は、上側のキャップ状連結金具57と下側のキャップ状連結金具58との両方に接続する手段とを備える。
さらに、キャップ状連結金具58は上側のパイプ状部材56と下側のがいし部材40Dに接続する手段とを備えている。
【0042】
図5の相間スペーサ100Dにおいて、3つの部材「上側のキャップ状連結金具57−パイプ状部材56−下側のキャップ状連結金具58」の組み合わせにより「長さ調整部材50D」が構成されており、図5の相間スペーサ100Dは、図1や図3と同様のパイプ型の接続構造を備えているので、パイプ状部材56自体の長さを変化させて調節することにより、「長さ調整部材50D」の自身の長さを調整する手段を備えている。
【0043】
相間スペーサ100Dにおいて、がいし部材40Dは、上方ではキャップ状連結金具58に凹凸式係合で接続する凹型接続部40sを有し、下方では第2電線クランプ部CL8(図示せず)と接続する手段と、を備えている。
また、第2電線クランプ部CL8(図示せず)は、がいし部材40Dと接続する手段と、第2の電線(図示せず)を把持する手段と、を備えている。
【0044】
この相間スペーサ100Dでは、上部のキャップ状連結金具57の開口部u3とパイプ状部材56の内部と下部のキャップ状連結金具58の開口部u4とを通して、水分が流れる水路を形成したものである。
ここで、下側のキャップ状連結金具58とがいし部材40Dとの接続については、図1,2,4のようなフランジ接続型の接続手段を用いずに、凹型と凸型の部位を組み合わせて係合させた凹凸係合式の接続部として構成し、それを外側から貫通するボルト(B1,B2)で締め付ける方式としており、下部のキャップ状連結金具58とがいし部材40Dとの接続部位については、凹凸形接続構造にして構成する必要がある。
【0045】
さて、相間スペーサに風が吹きつけたときに起こる風騒音については、考察してみるに、本発明による相間スペーサは、パイプ状の連結部材の内部に水が流れる空間(水路)を有しているので、空間(水路)を有していない従来の相間スペーサに比べて、笛吹き音等の風騒音に関する音圧レベルが高くなると推測される。
そこで、「本発明による水抜き路付きの相間スペーサ」と、「水抜き路のない従来の相間スペーサ」とについて、相間スペーサに風が吹いたときの風騒音の音圧レベルを測定して、そのレベルを比較する実験を行ってみた。
その結果、風騒音の音圧レベルについては、本発明のものは、従来のものと同等であることが判明した。
【0046】
これまで述べてきたように、本発明では、アルミ材などの軽量な金属のパイプ形状を用い、そこに窓部(開口部)を設けて、そのために内部に水が溜まる構造の相間スペーサにおいて、内部の水を自然に抜ける水路を確保することができる。
相間スペーサの連結部材は、密封すると溶接を用いた製作の都合上、加熱による内部空気の膨張による破裂の危険性があるので窓部(開口部)を設けなくてはならず、そこから水が侵入してしまうことがある。水が侵入すると、部材の腐食や凍結破損を招く虞があるので、本発明のように水を抜く手段(機構)を適用すれば、最も適切な対策となりうる。
本発明の構成により、連結部材内部の連結ボルト等の部材の腐食や、連結部材の内部に溜まった水の氷結による割れなどの懸念を取り除くことができる。
【符号の説明】
【0047】
100A、100 相間スペーサ
10A、10 がいし部材
10T がいし部材の端部
10f がいし部材側のフランジ部
CLl 電線クランプ部(上部)
CL2 電線クランプ部(下部)
20A、20 長さ調整部材
21 連結用フランジ金具
21f 連結用フランジ金具のフランジ部
22 パイプ状部材
23 キャップ状連結金具
w1、w2 溶接部
15F がいし部材側のフランジ部(水路付き)
15a フランジ部15Fの合わせ面
25 連結用フランジ部
25F 長さ調整部材20側のフランジ部(水路付き)
25a フランジ部25Fの合わせ面
b1,b2,b3 締結ボルト
h1,h2,h3 フランジ部15Fの貫通穴
h11,h12,h13 フランジ部25Fの貫通穴
k1,k2,k3 間隔保持部
100B 相間スペーサ
CL3 第1電線クランプ部
50B 長さ調整部材
B1 パイプ状部材
B2 キャップ状連結金具
B3 連結用フランジ金具
u2 開口部
40B がいし部材40B
w3,w4 溶接部
f1、f2 フランジ部
100C 相間スペーサ
CL5 第1電線クランプ部
40C がいし部材
50C 長さ調整部材
52、53 連結用フランジ部
54 パイプ状部材
f5、f6、f7、f8 フランジ部
w5、w6 溶接部
100D 相間スペーサ
CL7 第1電線クランプ部
40D がいし部材
40s がいし部材40Dの凹型接続部
50D 長さ調整部材
56 パイプ状部材
57、58 キャップ状連結金具
58s キャップ状連結金具58の凸型接続部
u3、u4 開口部
w7、w8 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
張架された電線同士を絶縁状態に保持するための相間スペーサであって、
一方端部の第1電線クランプ部、連結部材、1体または複数体のがいし部材、他方端部の第2電線クランプ部の各部材を備えて、それらが直線状に連結された構成を備え、
第1電線クランプ部は、第1の電線を把持する手段と、連結部材またはがいし部材と接続する手段と、を備え、
第2電線クランプ部は、第2の電線を把持する手段と、連結部材またはがいし部材と接続する手段と、を備え、
がいし部材は、その両端部に、第1電線クランプ部、連結部材、第2電線クランプ部、他のがいし部材、のうちの2つ部材と接続する手段を備え、
連結部材は、その一方端部に第1電線クランプ部または第2電線クランプ部と接続する手段とその他方端部にがいし部材と接続する手段とを備えるか、または、その一方端部に複数体のがいし部材うちの一つと接続する手段とその他方端部に他のがいし部材と接続する手段とを備えるとともに、その内部を筒状形状にして水が流れる構成を備える、
ことを特徴とする相間スペーサ。
【請求項2】
請求項1に記載の相間スペーサにおいて、
前記連結部材は、隣接する部材と接続するためのフランジ部を介した接続手段を備え、
前記隣接する部材は、前記連結部材のフランジ部と接続するためのフランジ部を介した接続手段を備え、
前記2つのフランジ部を介する接続手段では、前記2つのフランジ部の合わせ面を向き合わせて、それを貫通する締結ボルトによってそれらを締め付ける構成とし、
前記2つのフランジ部の合わせ面の間には、水が流れる水路が設けられる、ことを特徴とする相間スペーサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の相間スペーサにおいて、
前記連結部材は、自身の長さを調整する手段を備える、ことを特徴とする相間スペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62054(P2011−62054A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212045(P2009−212045)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】