説明

真空コレクターチューブおよびこのような真空コレクターチューブの製造法

光のカップリングを改善するために、排気され閉鎖された空間を形成する、2つの同心的に互いの中へ配置されたチューブを少なくとも有し、内側チューブ上に外側でTCO層およびその上に垂直方向に自立したZnOナノロッドからの層が配置されており、TCO層およびZnOナノロッドを有する内側のチューブが真空コレクターチューブの選択的な吸収体を形成する、真空コレクターチューブが記載される。公知の手段で施されたTCO層上にZnOナノロッドが電着により析出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気され閉鎖された空間を形成する、2つの同心的に互いの中へ配置されたチューブを少なくとも有する、太陽光をカップリングするための真空コレクターチューブならびにこのような真空コレクターチューブを製造するための方法に関する。
【0002】
真空コレクターチューブは、できるだけ効率的に光をカップリングし、熱に変換し、および発生した熱を伝熱媒体中に導出する。
【0003】
公知技術水準には、如何にして真空コレクターチューブの吸収体中への光カップリングをさらに改善することができるのかという種々の解決策が公知である。
【0004】
例えば、ドイツ連邦共和国実用新案第29801531号明細書U1には、上記の特徴を有する、二重壁の真空コレクターチューブが記載されている。内側チューブの外壁には、選択的な光吸収性被覆が装備されていることが記載されている。この場合には、内側チューブの外面上の吸収性層から内側チューブの内面上を直接流れすぎる伝熱媒体への熱移動が行なわれる。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10033240号明細書A1には、部分的な反射面を有する、排気された透明シリンダを有する、ソーラーエネルギー装置のための真空チューブが記載されており、この透明シリンダ中には、反射面に対向する少なくとも1つの吸収体チューブが透明シリンダの中心点に対してずれて配置されている。更に、少なくとも1つの吸収体フラッグが吸収体チューブ上に配置されていてもよい。この装置は、改善された太陽エネルギー収量を実現する。吸収体層に関しては、説明がなかった。
【0006】
ESTEC. Energiespartechnik GmbH社のインターネットサイトならびにOptimuzz 7Islas S.L.社のインフォメーション冊子には、高度に選択性の吸収体被覆が真空クリーンルームの内側内でガラス表面上にスパッタリングにより施されたことが述べられている。前記チューブの内側内で360°旋回される銅吸収体は、直接壁面に隣接して配置されており、それによってガラスの良好な熱移動は、吸収体上で実現される。丸く包囲する吸収体およびその後方にある、高光沢の陽極酸化されたアルミニウムからのミラーとは、入射角度は、無関係であり、それによって光のカップリングは、改善される。
【0007】
光のカップリングに関連する公知の解決策は、実際に1つの改善をもたらすが、しかし、この改善は、工業的費用を用いてのみ実現させることができる。
【0008】
近年、種々の材料のナノ構造体がその性質および使用可能性について試験された。
【0009】
Nano Lett.,Vol.8,No.5,1501−1505には、形成要素の活性領域内への光のカップリングを改善するために、ソーラーセル中の有効な抗反射性層として、低い温度で基体上に配置された、1つの溶液からの種結晶層の上に成長したZnOナノ構造体について報告されている。
【0010】
NREL/TP−520−31267、2002年7月、技術報告書"Review of Mid− to High−Temperature Solar Selektive Absorber Materials"には、高度にドーピングされた半導体材料、例えばSnO2:F、SnO2:Sb、In2SO3:SnまたはZnO:Alから形成された、黒体に類似した吸収体上の選択的に太陽光を反射する被覆が記載されている。更に、常用の真空チューブ状コレクターの吸収被覆は、一般的に次の3つの異なる機能層からなることが記載されている:赤外反射金属層、太陽光吸収層および抗反射層。この赤外反射金属層は、熱の放出を減少させる。この抗反射層は、反射損失を減少させる。吸収層によって吸収された太陽エネルギーは、赤外反射金属層およびガラスを通じて、ガラスチューブ中に存在する水の中に導入される。
【0011】
Chem.Mater.2005,17,1001−1006においては、ZnOナノチューブの製造のために2段階のプロセスが使用され、この場合には、最初に均質な種結晶層がALD(原子層堆積法Atomic Layer Deposition)により任意の基体上に析出され、引続きこの基体上で水溶液中で二次元のZnOナノロッドが成長される。
【0012】
Zn(NO32とHNO3とからの水溶液中での電着により高い内部量子効率を有するZnOナノロッドを製造するための1段階の方法は、Appl.Phys.Lett.92,161906(2008)中に記載されている。
【0013】
ところで、本発明の課題は、太陽光の入射角度とは無関係の光のカップリングを有し、その製造において比較的少ない費用である、もう1つの真空コレクターチューブを記載し、ならびにその製造方法を記載することである。
【0014】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。
【0015】
この場合には、冒頭に記載された種類の真空コレクターチューブにおいて、本発明によれば、内側チューブが光吸収性に形成され、この内側チューブ上の外側にはTCO層が配置され、およびこの層上には、垂直方向に自立したZnOナノロッドからの1つの層が配置されている。TCO層および自立したZnOナノロッドを有する、吸収性の内側チューブは、本発明によれば、真空チューブの選択的な吸収体を形成する。この選択的な吸収体は、高い吸収率および少ない放出率を有する。
【0016】
光のカップリングのための自立したZnOナノロッドからのシステムは、太陽光に対する高い透過率および僅かな広域反射率を示す。太陽光は、直接吸水性チューブ中にカップリングされ、熱は、内側チューブ内に存在する水に伝達される。このシステムは、真空チューブ状コレクターのための太陽光選択性の吸収体エレメントとして機能する。
【0017】
本発明による装置を用いた場合には、上述した層順序の赤外反射金属層、太陽光吸収層および抗反射層を比較的僅かな費用で代替することができるという1つの解決策が記載される。
【0018】
自立したZnOナノロッドの高い透過率および少ない放出率の記述した性質と共に、このZnOナノロッドの下方に存在するTCO層は、赤外反射層として作用し、それによって熱輻射の放出を減少させる。
【0019】
本発明において、太陽光は、太陽光を吸収する黒色ガラスから形成されていてもよいし、施された薄手の光吸収性層を有する薄手の黒色プラスチックチューブまたは金属チューブから形成されていてよい内側チューブ内に直接カップリングされる。黒色ガラスの使用は、特に好ましい。それというのも、加熱されたガラスは、チューブの内側内で熱を水に引き渡すからである。即ち、この加熱されたガラスは、常用の真空チューブ状コレクターにおいて必要とされているような他の吸収体層ではない。それというのも、光吸収性の内側チューブは、高い吸収率を有しかつ光吸収体の機能を引き受ける。
【0020】
本発明の実施態様は、最初にTCO層およびZnOナノロッドに関する。
【0021】
内側チューブ上の外側に施されたTCO層の厚さは、40〜4000nmであることが設けられている。
【0022】
ZnOナノロッドに関連して、前記のZnOナノロッドは、30〜500nmの直径および100〜3000nmの長さを有することが設けられている。前記のZnOナノロッドの互いの間隔は、nmの範囲内にあり、殊に数10nm〜数100nmである。ZnOナノロッドを針状に形成しかつ尖った円錐台に終わらせることは、好ましいことが証明された。
【0023】
別の実施態様には、透明である外側チューブ上に外側に付加的なTCO層が施され、真空コレクターチューブからの熱放射の放出率を減少させることが設けられている。
【0024】
赤外レフレクターの機能と共に、もう1つの実施態様において、外側の透明チューブ上には、内側に付加的なTCO層が施されている。
【0025】
このTCO層のための材料は、FTO、ITOまたはZnO:金属から選択され、付加的なTCO層の厚さは、20〜3000nmである。
【0026】
TCO層で被覆され、その上に配置されたZnOナノロッドを有する内側チューブから形成された、選択的な吸収体を有する本発明による真空コレクターチューブは、ロッド状のコレクターシステム中ならびにU字形のコレクターシステム中に使用されることができ、かつ公知の手段により互いに結合されることができる。
【0027】
記載された真空コレクターチューブを製造するための本発明による方法は、請求項11に記載されている。
【0028】
相応して、内側のガラスチューブには、外側の透明チューブとの同心的な配置の前に最初にTCO層が備えられ、引続きその上に垂直方向に自立したZnOナノロッドからの層が電着により施され、この場合には、標準の三極型リアクター中でZn塩とナノ構造化されたZnOのためのドーピング剤とからの水溶液が使用され、この溶液は、TCO層と共に内側に備えられたチューブ中に充填され、電位の印加および90℃未満の析出温度への調節の際に前記水溶液中に存在する、導電性のTCO層を有するチューブ上にナノ構造化されたZnO材料が析出される。
【0029】
このための実施態様においては、Zn塩としてZn(NO32を使用することが設けられている。この塩の濃度は、1〜20mM/lである。
【0030】
別の実施態様において、ドーピング剤としてHNO3またはNH4NO3またはNH3が水中に溶解されて使用される。この場合、前記溶液中のZn(NO32とHNO3とのモル比は、約100:1であり、かつZn(NO32とNH4NO3とのモル比は、1:1〜130:1である。
【0031】
析出中に、Pt参照電極に対する電位は、−1.2V〜−1.8Vの値に調節され、析出温度は、60℃〜90℃に調節され、この場合この温度は、数分間から20時間の期間に亘って維持される。前記溶液を析出中に攪拌することは、好ましいことが証明された。
【0032】
本発明による方法を用いた場合には、高い結晶品質の安価なZnOナノロッドは、電気化学的方法で大面積的に真空コレクターチューブの内側のガラスチューブ上に析出されることができる。
【0033】
本方法は、方法パラメーターに依存して、ZnOナノロッドの光学的性質に対する効果なしにZnOナノロッドの形、直径および長さを変動させることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による装置を示す略図である。
【図2】本発明による第2の装置を示す略図である。
【図3】本発明による第3の装置を示す略図である。
【0035】
更に、本発明は、次の実施態様において詳説される。
【0036】
原理的に真空コレクターチューブVRは、少なくとも、同心的に互いの中へ配置された2つのチューブからなり、大部分は排気され閉鎖された空間を形成するガラスチューブからなる。
【0037】
図1中で、内側チューブRiは、0.2〜3mmの厚さを有する黒色ガラスから形成されている。このチューブRi上には、外側に40〜4000nmの厚さのTCO層TCOiと垂直方向に自立したZnOナノロッドNRからの層とが配置されている。ZnOナノロッドは、30〜500nmの直径および100〜3000nmの長さを有する。外側チューブは、透明であり、この場合には、例えばガラスチューブとして形成されており、Raで示されている。TCO層TCOiおよびZnOナノロッドNRを有するチューブRiは、真空チューブの選択的な吸収体sAを形成する。
【0038】
図2中で、図1とは異なり、付加的なTCO層TCOz1は、外側チューブRa上に外側に20〜3000nmの厚さで施され、この外側チューブRaは、選択的な吸収体sAからの熱輻射の放出を減少させる。
【0039】
図3は、付加的なTCO層TCOz2が外側チューブRa上に内側で、また、20〜3000nmの厚さで施されている、本発明の1つの実施態様を示す。この実施態様において、TCO層TCOz2は、赤外レフレクターとして機能し、この赤外レフレクターは、コレクターの内側に熱を保持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気され閉鎖された空間を形成する、2つの同心的に互いの中へ配置されたチューブを少なくとも有する、太陽光をカップリングするための真空コレクターチューブであって、内側チューブ(Ri)上に外側でTCO層(TCOi)および垂直方向に自立したZnOナノロッド(NR)からの層が配置されており、TCO層(TCOi)およびZnOナノロッド(NR)を有するチューブ(Ri)が真空コレクターチューブ(VR)の選択的な吸収体を形成する、太陽光をカップリングするための上記真空コレクターチューブ。
【請求項2】
内側チューブ(Ri)が黒色ガラスから形成されているか、または施された薄手の光吸収性層を有する薄手の黒色プラスチックチューブまたは金属チューブから形成されている、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項3】
TCO層(TCOi)が40〜4000nmの厚さを有する、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項4】
ZnOナノロッド(NR)が30〜500nmの直径および100〜3000nmの長さを有する、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項5】
ZnOナノロッド(NR)が互いにナノメートルの範囲内の間隔、殊に数10nm〜数100nmの間隔を有する、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項6】
ZnOナノロッド(NR)が針状に形成されかつ尖った円錐台に終わっている、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項7】
透明である外側チューブ(Ra)上に外側で付加的なTCO層(TCOz1)が施されている、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項8】
透明である外側チューブ(Ra)上に内側で付加的なTCO層(TCOz2)が施されている、請求項1記載の真空コレクターチューブ。
【請求項9】
TCO層(TCOz1、TCOz2)のための材料がFTO、ITOまたはZnOから選択される、請求項1および/または7または8のいずれか1項に記載の真空コレクターチューブ。
【請求項10】
付加的なTCO層(TCOz1、TCOz2)の厚さが20〜3000nmである、請求項8または9に記載の真空コレクターチューブ。
【請求項11】
異なる直径の2つのチューブを同心的に配置し、これらのチューブを閉鎖し、かつ形成された中間空間を排気する処理工程を少なくとも含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の真空コレクターチューブの製造法であって、内側の光吸収性チューブに、外側の透明チューブとの同心的な配置の前に最初にTCO層が備え、引続きその上に垂直方向に自立したZnOナノロッドからの層を電着により施し、この場合には、標準の三極型リアクター中でZn塩とナノ構造化されたZnOのためのドーピング剤とからの水溶液を使用し、この溶液を、TCO層と共に内側に備えられたチューブ中に充填し、電位の印加および90℃未満の析出温度への調節の際に前記水溶液中に存在する、導電性のTCO層を有するチューブ上にナノ構造化されたZnO材料を析出することを特徴とする、異なる直径の2つのチューブを同心的に配置し、これらのチューブを閉鎖し、かつ形成された中間空間を排気する処理工程を少なくとも含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の真空コレクターチューブの製造法。
【請求項12】
内側の光吸収性チューブとして、黒色ガラスからのチューブを使用するか、または施された薄手の光吸収性層を有する薄手の黒色プラスチックチューブまたは金属チューブからのチューブを使用する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
Zn塩としてZn(NO32を使用する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
Zn(NO32を1〜20mM/lの濃度で使用する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ドーピング剤としてHNO3またはNH4NO3またはNH3を水中に溶解して使用する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
Zn(NO32とHNO3とからの溶液を約100:1のモル比で使用する、請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
Zn(NO32とNH4NO3とからの溶液を約1:1〜130:1のモル比で使用する、請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
Pt参照電極に対する電位を−1.2V〜−1.8Vの値に調節する、請求項11記載の方法。
【請求項19】
析出温度を60℃〜90℃に調節し、数分間ないし20時間の期間に亘って維持する、請求項11記載の方法。
【請求項20】
溶液を析出中、攪拌する、請求項11記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−526960(P2012−526960A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510115(P2012−510115)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000538
【国際公開番号】WO2010/130252
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(591157202)ヘルムホルツ−ツェントルム ベルリン フュア マテリアリエン ウント エナギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz−Zentrum Berlin fuer Materialien und Energie GmbH
【住所又は居所原語表記】Hahn−Meitner−Platz 1,D−14109 Berlin,Germany