真空ダイカスト方法
【課題】射出スリーブ内の射出チップの前後における差圧に着目し、減圧室と充填室から真空排気を行うタイミングをそれぞれ制御することにより、射出チップと射出スリーブとのクリアランスに溶湯が差し込むことを防止するとともに、射出チップの潤滑剤が溶湯に混入することを防止して、射出チップおよび射出スリーブの長寿命化とダイカスト製品の鋳巣欠陥の低減を図る。
【解決手段】給湯口2aから充填室11に対して溶湯6を供給し終えるとき以後であって、射出チップ3の射出スリーブ2内におけるキャビティ4側への変位を開始するとき以前に、給湯口2aと、開放端部2bと、を包囲する減圧室12を形成するとともに、充填室11と、減圧室12と、からの真空排気を開始して、射出工程を開始した後の、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するとき以後は、減圧室12からの真空排気を弱める。
【解決手段】給湯口2aから充填室11に対して溶湯6を供給し終えるとき以後であって、射出チップ3の射出スリーブ2内におけるキャビティ4側への変位を開始するとき以前に、給湯口2aと、開放端部2bと、を包囲する減圧室12を形成するとともに、充填室11と、減圧室12と、からの真空排気を開始して、射出工程を開始した後の、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するとき以後は、減圧室12からの真空排気を弱める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ダイカスト方法の技術に関し、より詳しくは真空ダイカスト方法における減圧方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の内部で発生する巻き込み巣等の鋳巣欠陥を低減するための技術として、キャビティ内を減圧した状態でダイカストを行う真空ダイカスト方法が知られており、広く利用されている。
この真空ダイカスト方法では、射出時においてキャビティの真空度を高めた状態に保持することが重要な要素となるが、射出スリーブと射出チップにはクリアランス(隙間)を設けておく必要があるため、射出時にこのクリアランスから空気が流入して、キャビティの真空度を高めることが困難であるという問題があった。
【0003】
そこで従来、射出時におけるキャビティの真空度を確実に確保するための技術が種々開発されており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
特許文献1に開示されている従来技術では、射出スリーブの開放端部に該開放端部を取り囲む減圧室を内部に形成する閉塞部材を設けて、この閉塞部材(減圧室)によって、射出チップの裏側の気密を確保できる構成としている。そして、減圧室とキャビティの両方から真空排気を行うことによって、射出時におけるキャビティの真空度を確実に確保する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−93712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術では、射出工程の全工程において、減圧室とキャビティの両方から真空排気を行っており、減圧室とキャビティから真空排気を行うタイミング等が制御されていない。このため、射出工程において、減圧室とキャビティの各真空度が成り行きになるため、減圧室とキャビティの圧力に差圧が生じる場合があった。
【0006】
例えば、減圧室の真空度がキャビティの真空度に比して過度に高くなると、溶湯がキャビティ側から減圧室側に吸い出されて、射出スリーブと射出チップのクリアランス(隙間)に溶湯が差し込むという問題が発生する(図4(a)参照)。この場合、射出チップや射出スリーブにバリやかじり等が発生し、射出チップや射出スリーブの寿命が著しく低下するという問題があった。
【0007】
また反対に、キャビティの真空度が減圧室の真空度に比して過度に高くなると、射出チップに塗布されている潤滑剤がキャビティ側に吸い出されて、溶湯に潤滑剤が混入するという問題が発生する(図4(b)参照)。この場合、溶湯により加熱された潤滑剤が気化して気泡が発生し、ダイカスト製品にガス巣が発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、係る現状の課題を鑑みてなされたものであり、射出スリーブ内の射出チップの前後における差圧に着目し、減圧室とキャビティから真空排気を行うタイミングをそれぞれ制御することにより、射出チップと射出スリーブとのクリアランスに溶湯が差し込むことを防止するとともに、射出チップの潤滑剤が溶湯に混入することを防止して、射出チップおよび射出スリーブの長寿命化とダイカスト製品の鋳巣欠陥の低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、金型に形成するキャビティと、該キャビティに連通する湯道と、該湯道に連通する射出スリーブと、該射出スリーブに挿入する射出チップと、によって形成される空間である充填室から真空排気をして、前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給し終えるとき以後であって、前記射出チップの前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位による射出動作を開始するとき以前に、前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成するとともに、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始して、前記射出動作を開始した後の、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後は、前記減圧室からの真空排気を弱めるものである。
【0011】
請求項2においては、金型に形成するキャビティと、該キャビティに連通する湯道と、該湯道に連通する射出スリーブと、該射出スリーブに挿入する射出チップと、によって形成される空間である充填室から真空排気をして、前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給する給湯工程と、該給湯工程が完了するとき以後に、前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する一端とは反対側の他端に形成される開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成する減圧室形成工程と、該減圧室形成工程が完了するとき以後に、前記射出チップを、前記射出スリーブ内において前記キャビティ側へ変位して前記溶湯を前記キャビティに射出する射出工程と、前記減圧室形成工程が完了するとき以後であって、前記射出チップが前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位を開始するとき以前に、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始するとともに、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するときまで、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を継続する第一の減圧工程と、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後に、前記減圧室からの真空排気を停止するとともに、前記射出工程が完了するときまで、前記充填室からの真空排気を継続する第二の減圧工程と、を備えるものである。
【0012】
請求項3においては、前記第一の減圧工程を開始するときは、前記射出チップを、前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記開放端部側に配置し、前記給湯口を介して、前記充填室と前記減圧室を連通させるものである。
【0013】
請求項4においては、前記射出チップの変位速度は、前記第一の減圧工程中の前記射出工程における変位速度に比して、前記第二の減圧工程中の前記射出工程における変位速度を高速とするものである。
【0014】
請求項5においては、前記充填室からの真空排気と、前記減圧室からの真空排気と、を別々の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行うものである。
【0015】
請求項6においては、前記充填室からの真空排気と、前記減圧室からの真空排気と、を同一の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行うものである。
【0016】
請求項7においては、前記減圧室は、内寸が前記射出スリーブの外寸に比して小さい筒状の部材であって、一端部が開放され、かつ、他端部が閉止される第一の閉塞部材と、前記射出スリーブの外周面に付設され、前記一端部の形状に適合する蓋状の部材である第二の閉塞部材と、によって形成するものである。
【0017】
請求項8においては、前記減圧室は、前記第一の閉塞部材を、該第一の閉塞部材の一端部を前記射出スリーブの前記開放端部に対面させて配置しておき、前記第一の閉塞部材を前記射出スリーブ側に変位させることによって、前記開放端部および前記給湯口を、前記第一の閉塞部材に挿入するとともに、前記第一の閉塞部材の一端部を、前記第二の閉塞部材に当接させることによって形成するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、射出工程において、充填室と減圧室の差圧が過度に大きくなることを防止でき、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを防止できる。またこれにより、射出チップに塗布された潤滑剤が溶湯に混入することを防止でき、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(特にガス巣)の発生を抑制することができる。またさらに、真空ダイカストにおける真空排気量を低減でき、省エネルギーに寄与することができる。
【0020】
請求項2においては、射出工程において、充填室と減圧室の差圧が過度に大きくなることを防止でき、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを防止できる。またこれにより、射出チップに塗布された潤滑剤が溶湯に混入することを防止でき、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(特にガス巣)の発生を抑制することができる。またさらに、真空ダイカストにおける真空排気量を低減でき、省エネルギーに寄与することができる。
【0021】
請求項3においては、射出前において、射出チップの前後から略均等に真空排気を行うことができ、射出チップの前後で生じる差圧を抑制することができる。これにより、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを防止できる。
【0022】
請求項4においては、高速射出を行った場合であっても、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを確実に防止できる。
【0023】
請求項5においては、射出チップの前後で生じる差圧をより細かく調整することができる。
【0024】
請求項6においては、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを、より簡易な構成の真空ダイカスト装置によって、防止できる。
【0025】
請求項7においては、より簡易な構成で減圧室を形成することができる。
【0026】
請求項8においては、より簡易な構成で減圧室を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法における真空排気時間と真空度の関係を示す図。
【図3】真空ダイカストにおける空気の偏析の発生状況を示す模式図、(a)本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法における空気の偏析の発生状況を示す模式図、(b)従来の真空ダイカスト方法における空気の偏析の発生状況を示す模式図。
【図4】射出スリーブと射出チップのクリアランスにおいて発生する不具合を示す模式図、(a)減圧室が充填室に比して過度に真空度が高い場合におけるクリアランスに対する溶湯の差込状況を示す模式図、(a)充填室が減圧室に比して過度に真空度が高い場合における溶湯に対するクリアランスからの潤滑剤の漏出状況を示す模式図。
【図5】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法におけるクリアランスの良好な状態を示す模式図。
【図6】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる別実施態様の真空ダイカスト装置の全体構成を示す模式図。
【図7】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法を示すフロー図。
【図8】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程における射出速度の変化を示す図。
【図9】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−1〜STEP−2)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図10】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−3〜STEP−5)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図11】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−6)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図12】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−7〜STEP−8)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図13】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−8〜STEP−9)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
図1に示す如く、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の一例である真空ダイカスト装置30は、金型1、射出スリーブ2、射出チップ3、アクチュエータ9、閉塞部材10、真空タンク18、真空ポンプ19、開閉バルブ20・21、制御装置22、溶湯検出センサ23等により構成されている。
【0029】
金型1は、可動型1aと固定型1bからなり、各型1a・1bの合わせ面には、製品形状をかたどった空隙部であるキャビティ4と、該キャビティ4に溶湯6を供給するための経路となる湯道5が形成されている。
そして、金型1の固定型1b側には、湯道5に連通させて、溶湯6を供給するための経路となる射出スリーブ2が付設されている。
【0030】
射出スリーブ2は、その内部にキャビティ4に向けて射出される溶湯6を貯留しておくことができる管状の部位であり、ラドル7から溶湯6を供給するための開口部である給湯口2aが形成されている。また、射出スリーブ2の固定型1bに接続される側とは反対側の端部には開放された開放端部2bが形成されている。
そして、射出スリーブ2内には、開放端部2b側から射出チップ3が挿入されている。
【0031】
射出チップ3は、射出スリーブ2の内径に略一致する外径(但し、射出スリーブ2の内径に比して小さい)に形成される略円筒状の部位であり、射出スリーブ2内に貯留される溶湯6をキャビティ4側に向けて押し出す役割を果たすための部位である。この射出チップ3は、アクチュエータ9が備える支持軸9aによって、射出スリーブ2と軸心が同一となるように支持されている。
尚以下では、射出スリーブ2、射出チップ3、キャビティ4、湯道5によって形成される空間であって、射出工程において溶湯6が充填される空間(図1参照)を充填室11と呼ぶ。
【0032】
支持軸9aは、エアシリンダや油圧シリンダ等のアクチュエータ9に備えられる軸部であり、軸心方向に進退(往復)可能に構成されている。そして、このような支持軸9aの先端に、射出チップ3を配設することによって、射出スリーブ2内にて射出チップ3を往復摺動させることができる構成としている。
【0033】
また、射出スリーブ2の外周面には、フランジ部8が設けられている。このフランジ部8は、射出チップ3の摺動方向と略直交する平面と略平行となる壁面を形成するように構成される。また、このフランジ部8の位置は、給湯口2aが配置される位置よりも、射出チップ3が溶湯6を射出する際に変位する側、即ち、金型1側とされている。
【0034】
また、支持軸9aの軸心上には、後述する減圧室12を形成するための閉塞部材10が設けられている。
この閉塞部材10は、射出チップ3が射出の際に移動する側の端面10aが開放される筒状の部材であり、もう一方の閉じた側の端面10cのボス部10dには、支持軸9aが摺動自在に挿通される貫通孔10eが形成されている。
【0035】
また、閉塞部材10の閉じた端面10cに設けた貫通孔10eに対し、支持軸9aが摺動自在に貫装され、また、貫通孔10eには、支持軸9aとの間の隙間をシールするOリング等から構成されるシール部材10f・10fが設けられている。
また、筒状に構成される閉塞部材10の内寸は、射出スリーブ2の外寸よりも大きく構成され、閉塞部材10の端面10aを、射出チップ3の射出方向(金型1側)へ変位させることで、閉塞部材10の内部の空間に射出スリーブ2の開放端部2bが挿入される構成としている。
そして、閉塞部材10の端面10aに設けたフランジ部10bを射出スリーブ2の外周面に付設されたフランジ部8に圧接することによって、射出スリーブ2の開放端部2bを包囲する減圧室12(チャンバ)が形成される構成としている。
尚ここで言う減圧室12は、射出スリーブ2、射出チップ3、閉塞部材10によって形成される空間であって、射出チップ3を挟んで充填室11の裏側に形成される空間(図1参照)を意味している。
【0036】
また、閉塞部材10は、エアシリンダや油圧シリンダ等からなるアクチュエータ13が備える支持軸13aによって、射出チップ3(支持軸9a)と同一の軸心上の位置を保ったまま移動するように構成されている。
【0037】
また、射出スリーブ2の外周面に立設されるフランジ部8において、閉塞部材10のフランジ部10bと対向する側には、Oリング等から構成される図示しないシール部材が設けられている。このシール部材によって、両フランジ部8・10bが圧接される状態において、両者間に形成される隙間がシールされる構成としている。尚、閉塞部材10のフランジ部10b側にシール部材を設ける構成としてもよい。
【0038】
また、閉塞部材10には、その内部に形成される空間である減圧室12から真空排気するための吸引口15が設けられている。
尚、ここで言う「真空排気する」とは、ある空間に真空ポンプ19等の減圧装置を接続し、当該空間に存在する空気を空間の外部に排気することによって、当該空間の圧力を大気圧に比して低い圧力にまで減圧することを意味している(以下同じ)。
【0039】
また、金型1には、キャビティ4に通じ、該キャビティ4から真空排気するための吸引口16が設けられている。また、キャビティ4と吸引口16を結ぶ経路には、射出時に吸引口16から溶湯6が漏出することを防止するためのシャットバルブ17が設けられている。
【0040】
そして、二つの各吸引口15・16に接続される真空排気経路(真空配管)は、各真空タンク18a・18bを介して、それぞれ各真空ポンプ19a・19bに接続され、その各真空排気経路に設けた開閉バルブ20・21の動作によって、充填室11および減圧室12からの真空排気を行うか否かを切り替えることができる構成としている。尚、各真空タンク18a・18bは、各真空排気経路(真空配管)の内容積を増大させておくことによって、真空度の安定化を図るためのバッファとして機能させるものである。このため、各真空タンク18a・18bとして、充填室11および減圧室12の内容積に比して十分に大きい内容積のものを選定しておくことにより、充填室11および減圧室12の真空度を、各開閉バルブ20・21の開放後、短時間で目標真空度に到達させることが可能になる。
【0041】
また、図1に示す構成において、射出チップ3(アクチュエータ9)、ラドル7、閉塞部材10(アクチュエータ13)、シャットバルブ17、真空ポンプ19、開閉バルブ20等の各動作は、制御装置22によって連動するように制御される構成とすることが望ましい。
尚、各装置を動作させる具体的な機構については、特に限定されるものではない。
【0042】
さらに、真空ダイカスト装置30において、制御装置22には、キャビティ4の所定部位に溶湯6が到達したことを検出するための手段である溶湯検出センサ23が接続されている。
溶湯検出センサ23は、例えば超音波センサ等を採用することによって、キャビティ4の所定部位に溶湯6が存在するか否かを検出することができる。
この溶湯検出センサ23によって溶湯6の存在を検出する部位は、キャビティ4に溶湯6が充満する以前の溶湯6の存在(液位)を検出するようにしている。
そして、設定した所定部位に溶湯6が到達したタイミングと、溶湯6の射出速度およびアクチュエータ9および開閉バルブ20・21等の応答遅れ時間を考慮して、制御装置22によって、前記各部位9・20・21等の動作を制御する構成としている。
【0043】
ここで、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法における真空度の変化について、図1および図2を用いて説明をする。
図1に示す如く、真空ダイカスト装置30では、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行うことができる。ここで、減圧室12に接続される吸引口15の口径は、吸引口16の口径に比して大きく設定することが可能であるため、射出チップ3が給湯口2aよりもアクチュエータ9側に位置している状態で、減圧室12を介して充填室11側の真空排気を行うことによって、より短時間で充填室11および減圧室12の真空度を目標真空度に到達させることが可能になる。
【0044】
つまり、図2に示すように、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行うことによって、粘性流域における真空排気をより短時間で行うことが可能になり、充填室11および減圧室12の真空度を効率よく(より短時間で)高めることができる。尚、分子領域における真空排気については、二つの各吸引口15・16から真空排気を行うことによる効果が少なく、尚一定の時間を要するが、目標真空度に到達するまでに要する時間を、トータルとしては短縮することができる。
【0045】
またここで、キャビティ4で発生する現象である空気の偏析について、図1および図3を用いて説明をする。
従来の真空ダイカスト装置では、充填室11(キャビティ4)に対する吸引口16からのみ真空排気が行われるため、図3(b)に示すように、キャビティ4の下部において吸引されない空気が偏析する現象が生じていた。このように吸引口16から離間した位置で偏析する空気は、分子流域の真空排気においてようやく排出される(即ち、排出されにくい)という性質があり、このキャビティ4の下部において偏析する空気が、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(巻き込み巣)の原因となっていた。
【0046】
一方、図1に示すように、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行う場合、図3(a)に示すように、キャビティ4の中央部において空気が偏析する。ここで偏析した空気は、吸引口16から比較的近い部位に位置しているため、吸引口16からの真空排気を継続することによって、粘性流域における真空排気によって徐々に偏析している空気を減少させることができ、かつ、空気が偏析する位置を吸引口16により近い位置へと遷移させることができる。さらに、吸引口16付近で偏析する空気は、射出時の溶湯6の流れに沿って、吸引口16へと押し出されて効果的に排気されるため、二つの各吸引口15・16から真空排気を行う本実施例に係る真空ダイカスト方法によれば、偏析した空気による鋳巣欠陥の発生を効果的に減少させることができる。
【0047】
さらにここで、射出スリーブと射出チップとのクリアランスにおける溶湯および潤滑剤の状況について、図1、図4および図5を用いて説明をする。
図1に示すように、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行う場合において、減圧室12の真空度が充填室11の真空度に比して過度に高くなると、図4(a)に示す如く、溶湯6が充填室11側から減圧室12側に吸い出されて、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランスに溶湯6が差し込むという現象が生じる。この場合、射出チップ3や射出スリーブ2にバリやかじり等が発生し、射出チップ3や射出スリーブ2の寿命が著しく低下するという問題が発生する。
【0048】
また反対に、充填室11の真空度が減圧室12の真空度に比して過度に高くなると、図4(b)に示す如く、射出チップ3に塗布されている潤滑剤3aが充填室11側に吸い出されて、溶湯6に潤滑剤3aが混入するという現象が生じる。この場合、溶湯6により加熱された潤滑剤3aが気化して気泡3b・3b・・・が発生し、ダイカスト製品におけるガス巣が増加するという問題が発生する。
【0049】
そこで、充填室11と減圧室12の真空度に過度の差異が生じないように各室11・12の真空度を調整した場合には、図5に示す如く、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランスに溶湯6が差し込むことがない。尚、より詳しくは、図5に示すように、クリアランスに対して、溶湯6が若干入り込むことが望ましい。これにより、射出チップ3に塗布されている潤滑剤3aが充填室11側に吸い出され漏出することが確実に防止できる。
【0050】
即ち、図1に示すような、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気をする真空ダイカスト装置30を用いる場合には、充填室11と減圧室12の真空度の差異(即ち、差圧)が過度に大きくならないように調整しながら射出工程を実行することが望ましく、より詳しくは、図5に示すように、クリアランスに対して、溶湯6が若干入り込む程度の差圧が生じるように、各室11・12の真空度のバランスを調整することが望ましい。
【0051】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、充填室11からの真空排気と、減圧室12からの真空排気と、を別々の真空排気をするための手段である真空排気手段(各吸引口15・16、異なる系統の真空配管および真空ポンプ19a・19b)によって行うものである。
このような構成により、射出チップ3の前後で生じる差圧をより細かく調整することができる。
【0052】
次に、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法を適用する真空ダイカスト装置の別実施態様について、図6を用いて説明をする。
図6に示す如く、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の別実施態様である真空ダイカスト装置31は、先述した真空ダイカスト装置30に比して、真空タンク18および真空ポンプ19の台数を削減しており、一台の真空タンク18cと一台の真空ポンプ19cによって真空ダイカスト装置31を構成している点で異なっている。
【0053】
このような構成により、真空ダイカスト装置30と同等の機能を確保しつつ、真空タンク18および真空ポンプ19の台数や真空排気経路(真空配管)の物量等を削減することが可能になる。このため、真空ダイカスト装置31の構成とすることにより、真空ダイカスト装置30に比してイニシャルコストの削減が可能になる。
【0054】
また、真空ダイカスト装置31は、真空ポンプ19の台数が削減されている(即ち、真空ポンプ19c一台のみを備えている)ため、真空ダイカスト装置30のように、真空ポンプ19a・19bの二台を運転する場合に比して、真空ポンプ19の運転による消費電力を削減することが可能な場合がある。この場合、ランニングコストの削減が可能になるとともに、省エネルギーに寄与することもできる。
【0055】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、充填室11からの真空排気と、減圧室12からの真空排気と、を同一の真空排気をするための手段である真空排気手段(同一系統の真空配管および真空ポンプ19c)によって行うものである。
このような構成により、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを、より簡易な構成の真空ダイカスト装置31によって、防止できる。
【0056】
次に、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法を適用した真空ダイカスト工程について、図7〜図13を用いて説明をする。
図7および図9に示す如く、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程では、まず始めに、固定型1bに対して可動型1aを圧接して、金型1を型閉めしておく(STEP−1)。
【0057】
このとき、閉塞部材10は、アクチュエータ13の支持軸13aを金型1から離間する方向に短縮することにより、金型1から離間する方向に変位されている。このとき、減圧室12は未だ形成されておらず、給湯口2aが外部に開放され露出している。また、射出チップ3は給湯口2aよりもアクチュエータ9側に位置している。
そしてこの状態で、ラドル7によって、射出スリーブ2に対して給湯口2aから溶湯6を注入し、射出スリーブ2(充填室11)内に溶湯6を供給する(STEP−2)。
またこのとき、開閉バルブ20・21は、共に「閉」としている。
【0058】
そしてこの状態で、各真空ポンプ19a・19bを運転し、各開閉バルブ20・21より各真空ポンプ19a・19bに近い側の各真空排気経路(各真空タンク18a・18bを含む)内を所定の真空度にまで高めておく。
そして、射出スリーブ2(充填室11)内に所定量の溶湯6が注入し終わると、次のステップに移行する。
【0059】
次に、図7および図10に示す如く、閉塞部材10を、アクチュエータ13により金型1側に変位し、各フランジ部8・10bに圧接することによって、減圧室12を形成する(STEP−3)。そして、これ以後、射出工程および減圧工程に移行する。
【0060】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、減圧室12は、内寸が射出スリーブ2の外寸に比して小さい筒状の部材であって、一端部(端面10a)が開放され、かつ、他端部(端面10c)が閉止される第一の閉塞部材である閉塞部材10と、射出スリーブ2の外周面に付設され、閉塞部材10の一端部(端面10aのフランジ部10b)の形状に適合する蓋状の部材である第二の閉塞部材であるフランジ部8と、によって形成するものである。
【0061】
また、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、減圧室12は、閉塞部材10を、該閉塞部材10の端面10aを射出スリーブ2の開放端部2bに対面させて配置しておき、閉塞部材10を射出スリーブ2側に変位させることによって、開放端部2bおよび給湯口2aを、閉塞部材10に挿入するとともに、閉塞部材10の一端部(端面10aのフランジ部10b)を、フランジ部8に当接させることによって形成するものである。
このような構成により、より簡易な構成で減圧室12を形成することができる。
【0062】
(低速射出工程および第一減圧工程)
本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法において、射出工程は、低速射出工程と高速射出工程によって構成され、まず低速射出工程が実行される。
低速射出工程に移行すると、図7および図10に示す如く、減圧室12の気密を保持した状態で、各開閉バルブ20・21を、共に「開」とし、減圧室12と充填室11(キャビティ4)にそれぞれ接続される各吸引口15・16から真空排気を行い、第一減圧工程を開始する(STEP−4)。
【0063】
このとき、各開閉バルブ20・21より各真空ポンプ19a・19bに近い側の各真空排気経路(各真空タンク18a・18bを含む)内は、予め所定の真空度にまで高められているため、各開閉バルブ20・21を「開」にすると、充填室11および減圧室12の真空度を速やかに高めることができる。
【0064】
次に、図7および図8に示す如く、減圧室12とキャビティ4の真空度を確認しつつ(STEP−5)、射出チップ3の変位速度を所定の速度VLまで加速しながら金型1側に変位させるとともに、射出チップ3の変位速度が速度VLに到達した後は、射出チップ3の変位速度を速度VLに維持した状態で金型1側に変位させて、充填室11における溶湯6の充填率を高めていく(即ち、低速射出工程を実行する)。
【0065】
ここで、射出チップ3が給湯口2aよりもアクチュエータ9側に位置している間は、充填室11と減圧室12は給湯口2aを介して連通して一体的な空間となっているため、各吸引口15・16からの真空排気によって、充填室11および減圧室12の真空度が短時間で高められる。
【0066】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、第一減圧工程を開始するときは、射出チップ3を、射出スリーブ2内において給湯口2aよりも開放端部2b側に配置し、給湯口2aを介して、充填室11と減圧室12を連通させるものである。
このような構成により、射出前において、射出チップ3の前後から略均等に真空排気を行うことができ、射出チップ3の前後で生じる差圧を抑制することができる。これにより、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを防止できる。
【0067】
また、射出チップ3が給湯口2aよりも金型1側に位置している間は、充填室11と減圧室12は射出チップ3によって隔絶されるため、吸引口16からの真空排気によって、充填室11の真空度が高められ、かつ、吸引口15からの真空排気によって減圧室12の真空度が高められる。
【0068】
このとき、図10に示すように、充填室11(キャビティ4)と減圧室12の両方から真空排気を行うことによって、速やかに充填室11(キャビティ4)および減圧室12の真空度が高められる(図2参照)。またこのとき、充填室11と減圧室12の真空度の差異(即ち、差圧)が過度に大きくならないように各真空ポンプ19a・19bによる排気速度等が調整される。
【0069】
そして、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達すると、低速射出工程を終了し、高速射出工程および第二減圧工程に移行する。
【0070】
(高速射出工程および第二減圧工程)
次に、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達したときには、図7および図11に示す如く、開閉バルブ20は「開」の状態を維持して、キャビティ4からの真空排気は継続して行うとともに、開閉バルブ21を「閉」として、減圧室12からの真空排気を停止して、第二減圧工程に移行する(STEP−6)。
これにより、減圧室12の真空度が、充填室11(キャビティ4)の真空度に比して、過度に高まることを防止して、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランス(隙間)に対する溶湯6の浸入を防止している。
【0071】
尚、本実施例では、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達したときには、開閉バルブ21を「閉」として、減圧室12からの真空排気を完全に停止する場合を例示しているが、例えば、開閉バルブ21の開度を調整する等して、減圧室12からの真空排気量を少なくする(即ち、減圧室12からの真空排気を弱める)構成とすることも可能である。
【0072】
このように、充填室11と減圧室12の真空度の差異(即ち、差圧)が過度に大きくならないように、各開閉バルブ20・21の動作を制御することによって、図5に示す如く、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランスには溶湯6が差し込まず、かつ、射出チップ3に塗布された潤滑剤3aが充填室11側に漏出することもない状態を保持しつつ、射出工程を行うことができる。
【0073】
尚、より詳しくは、図5に示すように、クリアランスに対して、溶湯6が若干入り込むように調整するのが、潤滑剤3aの漏出を確実に防止するためには望ましく、溶湯6がクリアランスに若干入り込む程度に差圧が生じるように、各開閉バルブ20・21の動作タイミングを制御することが望ましい。
【0074】
また、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達したときには、図8に示すように、射出チップ3の変位速度を所定の速度VHまで加速しながら金型1側に変位させるとともに、射出チップ3の変位速度が速度VHに到達した後は、射出チップ3の変位速度を速度VHに維持した状態で金型1側に変位させて、キャビティ4に溶湯6を高速で射出する(即ち、高速射出工程を実行する)。
【0075】
尚、本実施例では、図11に示すように、充填室11における溶湯6の充填率が100%(即ち、湯道5が溶湯6で完全に満たされており、かつ、キャビティ4には溶湯6が到達していない状態)となるタイミングで、開閉バルブ21を「閉」として、減圧室12からの真空排気を停止する場合を例示しているが、減圧室12からの真空排気を停止するタイミングにおける充填率は、必ずしも100%である必要はなく、充填率が100%未満(即ち、湯道5が溶湯6で満たされていない)の状態であったり、あるいは充填率が100%を越えている(即ち、キャビティ4に溶湯6が浸入している)状態であったりしてもよい。
【0076】
次に、図7、図8および図12に示す如く、高速射出工程が進行し、溶湯検出センサ23によって、射出された溶湯6がキャビティ4の所定部位に到達したことを検出すると、この検出情報が制御装置22に送られる(STEP−7)。
【0077】
そして、制御装置22が溶湯6が検出された旨の情報を取得すると、制御装置22によって、この情報の検出タイミングに基づいて、高速射出工程の終了タイミングを制御する(STEP−7)。より詳しくは、溶湯検出センサ23によって溶湯6を検出したタイミングに基づいて、支持軸9aの応答遅れ時間を考慮して、射出速度VH(即ち、支持軸9a(射出チップ3)の変位)による変位をあとどれだけ継続するかを制御している。
【0078】
また、制御装置22が溶湯6が検出された旨の情報を取得すると、制御装置22によって、開閉バルブ20を「閉」とし、各開閉バルブ20・21を、共に「閉」とする(STEP−8)。
尚、溶湯検出センサ23によって溶湯6が検出されてから、開閉バルブ20が「閉」とするまでの応答遅れ時間の間に、高速射出工程が進行し、充填室11に溶湯6が充満するように、開閉バルブ20の応答遅れ時間を考慮して、溶湯検出センサ23による検出部位を設定するようにしている。
【0079】
このようにして、高速射出工程の終了タイミングに合わせて、開閉バルブ20を「閉」とし、不要な真空排気を行わないようにしている。また、このときシャットバルブ17が「閉」となり、吸引口16に対する溶湯6の漏出を確実に防止する構成としている。
ここまでで、一連の射出工程(低速射出工程および高速射出工程)を完了する。
尚、本実施例では、射出工程が低速・高速それぞれ一段ずつの二段射出である場合を例示しているが、本発明に係る真空ダイカスト方法を適用する場合における射出工程の態様をこれに限定するものではない。
【0080】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、射出チップ3の変位速度(即ち、射出速度)は、第一減圧工程中の射出工程(即ち、低速射出工程)における変位速度(即ち、射出速度VL)に比して、第二減圧工程中の射出工程(即ち、高速射出工程)における変位速度(即ち、射出速度VH)を高速とする(即ち、VH>VL)ものである。
このような構成により、高速射出を行った場合であっても、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを確実に防止できる。
【0081】
そして、図7、図8および図13に示す如く、キャビティ4(充填室11)に対して溶湯6が完全に充填された状態で、射出チップ3の変位速度を所定の速度VLLまで減速して金型1側に変位させるとともに、射出チップ3の変位速度が速度VLLに到達した後は、射出チップ3の変位速度を速度VLLに維持した状態で金型1側にさらに低速で変位させて、キャビティ4の溶湯6を加圧する。
これにより、一連の加圧工程を完了する。
【0082】
そして、図7および図13に示す如く、可動型1aを変位させて金型1を型開きするとともに(STEP−9)、金型1のキャビティ4からダイカスト製品を離型する(STEP−10)。また、閉塞部材10を金型1から離間する方向に変位させて、次の真空ダイカスト工程に備えて減圧室12を開放しておく(STEP−11)。
これにより、本発明の一実施例に係る一連の真空ダイカスト工程を完了する。
【0083】
そして、図7に示すように、再度(STEP−1)に戻って、(STEP−1)〜(STEP−11)の一連のステップを繰返して実行することによって、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカストを繰り返し実行することができる。
【0084】
次に、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法の適用効果について、説明をする。
本発明の一実施例に係る一連の真空ダイカスト工程により製造されたダイカスト製品について鋳巣体積率(ダイカスト製品の体積に対してダイカスト製品に含まれる鋳巣欠陥の体積が占める割合)の分析を行ったところ、(1)従来の充填室11(キャビティ4)のみから真空排気する真空ダイカスト方法により製造されたダイカスト製品に比して、鋳巣体積率が約1/3に減少していた。
また、(2)従来の充填室11(キャビティ4)と減圧室12の両方から真空排気する真空ダイカスト方法(即ち、特許文献1に記載の真空ダイカスト方法)により製造されたダイカスト製品に比しても、鋳巣体積率が約1/2に減少していることが確認できた。
つまり、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、鋳巣欠陥の低減に効果を有することが確認できた。
【0085】
また、鋳巣欠陥(即ち、気泡)は、(1)空気の巻き込みに起因する巻き込み巣と、(2)射出チップに塗布される潤滑剤が気化して生じる気泡に起因するガス巣と、(3)溶湯に混入した水分に起因する水残り欠陥等に分類できる。そして、鋳巣欠陥(気泡)に含まれる気体成分の分析を行うと、(1)巻き込み巣の場合は主に窒素が、(2)ガス巣の場合は主に炭素が、(3)水残り欠陥の場合は主に水素が、それぞれ検出される。
【0086】
そして、本発明に係る真空ダイカスト方法により製造されたダイカスト製品について、鋳巣欠陥に含まれる気体の成分分析を行ったところ、従来の真空ダイカスト方法により製造したダイカスト製品に比して、前記(2)ガス巣の主成分である炭素の検出量が減少していることが確認できた。
つまり、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、射出チップ3に塗布される潤滑剤3aが溶湯6へ混入することが抑制できるため、鋳巣欠陥の中でも特にガス巣の低減に顕著な効果を有することが確認できた。
【0087】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、金型1に形成するキャビティ4および該キャビティ4に連通する湯道5と、該湯道5に連通する射出スリーブ2と、該射出スリーブ2に挿入する射出チップ3と、によって形成される空間である充填室11から真空排気をして、充填室11の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、射出スリーブ2に形成する開口部である給湯口2aから充填室11に対して溶湯6を供給し終えるとき以後であって、射出チップ3の射出スリーブ2内におけるキャビティ4側への変位による射出動作を開始するとき以前に、給湯口2aと、射出スリーブ2の湯道5に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部2bと、を包囲する空間である減圧室12を形成するとともに、充填室11および減圧室12からの真空排気を開始して、射出工程を開始した後の、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するとき以後は、減圧室12からの真空排気を弱めるものである。
【0088】
また、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、金型1に形成するキャビティ4および該キャビティ4に連通する湯道5と、該湯道5に連通する射出スリーブ2と、該射出スリーブ2に挿入する射出チップ3と、によって形成される空間である充填室11から真空排気をして、充填室11の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、射出スリーブ2に形成する開口部である給湯口2aから充填室11に対して溶湯6を供給する給湯工程と、該給湯工程が完了するとき以後に、給湯口2aと、射出スリーブ2の湯道5に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部2bと、を包囲する空間である減圧室12を形成する減圧室形成工程と、該減圧室形成工程が完了するとき以後に、射出チップ3を、射出スリーブ2内においてキャビティ4側へ変位して溶湯6をキャビティ4に射出する射出工程と、減圧室形成工程が完了するとき以後であって、射出チップ3が射出スリーブ2内におけるキャビティ4側への変位を開始するとき以前に、充填室11および減圧室12からの真空排気を開始するとともに、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するときまで、充填室11および減圧室12からの真空排気を継続する第一の減圧工程である第一減圧工程と、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するとき以後に、減圧室12からの真空排気を停止するとともに、射出工程が完了するときまで、充填室11からの真空排気を継続する第二の減圧工程である第二減圧工程と、を備えるものである。
このような構成により、射出工程において、充填室11と減圧室12の差圧が過度に大きくなることを防止でき、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを防止できる。またこれにより、射出チップ3に塗布された潤滑剤3aが溶湯6に混入することを防止でき、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(特にガス巣)の発生を抑制することができる。またさらに、真空ダイカストにおける真空排気量を低減でき、省エネルギーに寄与することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 金型
2 射出スリーブ
3 射出チップ
4 キャビティ
5 湯道
6 溶湯
11 充填室
12 減圧室
18 真空タンク
19 真空ポンプ
20 開閉バルブ
21 開閉バルブ
30 真空ダイカスト装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ダイカスト方法の技術に関し、より詳しくは真空ダイカスト方法における減圧方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の内部で発生する巻き込み巣等の鋳巣欠陥を低減するための技術として、キャビティ内を減圧した状態でダイカストを行う真空ダイカスト方法が知られており、広く利用されている。
この真空ダイカスト方法では、射出時においてキャビティの真空度を高めた状態に保持することが重要な要素となるが、射出スリーブと射出チップにはクリアランス(隙間)を設けておく必要があるため、射出時にこのクリアランスから空気が流入して、キャビティの真空度を高めることが困難であるという問題があった。
【0003】
そこで従来、射出時におけるキャビティの真空度を確実に確保するための技術が種々開発されており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
特許文献1に開示されている従来技術では、射出スリーブの開放端部に該開放端部を取り囲む減圧室を内部に形成する閉塞部材を設けて、この閉塞部材(減圧室)によって、射出チップの裏側の気密を確保できる構成としている。そして、減圧室とキャビティの両方から真空排気を行うことによって、射出時におけるキャビティの真空度を確実に確保する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−93712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術では、射出工程の全工程において、減圧室とキャビティの両方から真空排気を行っており、減圧室とキャビティから真空排気を行うタイミング等が制御されていない。このため、射出工程において、減圧室とキャビティの各真空度が成り行きになるため、減圧室とキャビティの圧力に差圧が生じる場合があった。
【0006】
例えば、減圧室の真空度がキャビティの真空度に比して過度に高くなると、溶湯がキャビティ側から減圧室側に吸い出されて、射出スリーブと射出チップのクリアランス(隙間)に溶湯が差し込むという問題が発生する(図4(a)参照)。この場合、射出チップや射出スリーブにバリやかじり等が発生し、射出チップや射出スリーブの寿命が著しく低下するという問題があった。
【0007】
また反対に、キャビティの真空度が減圧室の真空度に比して過度に高くなると、射出チップに塗布されている潤滑剤がキャビティ側に吸い出されて、溶湯に潤滑剤が混入するという問題が発生する(図4(b)参照)。この場合、溶湯により加熱された潤滑剤が気化して気泡が発生し、ダイカスト製品にガス巣が発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、係る現状の課題を鑑みてなされたものであり、射出スリーブ内の射出チップの前後における差圧に着目し、減圧室とキャビティから真空排気を行うタイミングをそれぞれ制御することにより、射出チップと射出スリーブとのクリアランスに溶湯が差し込むことを防止するとともに、射出チップの潤滑剤が溶湯に混入することを防止して、射出チップおよび射出スリーブの長寿命化とダイカスト製品の鋳巣欠陥の低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、金型に形成するキャビティと、該キャビティに連通する湯道と、該湯道に連通する射出スリーブと、該射出スリーブに挿入する射出チップと、によって形成される空間である充填室から真空排気をして、前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給し終えるとき以後であって、前記射出チップの前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位による射出動作を開始するとき以前に、前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成するとともに、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始して、前記射出動作を開始した後の、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後は、前記減圧室からの真空排気を弱めるものである。
【0011】
請求項2においては、金型に形成するキャビティと、該キャビティに連通する湯道と、該湯道に連通する射出スリーブと、該射出スリーブに挿入する射出チップと、によって形成される空間である充填室から真空排気をして、前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給する給湯工程と、該給湯工程が完了するとき以後に、前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する一端とは反対側の他端に形成される開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成する減圧室形成工程と、該減圧室形成工程が完了するとき以後に、前記射出チップを、前記射出スリーブ内において前記キャビティ側へ変位して前記溶湯を前記キャビティに射出する射出工程と、前記減圧室形成工程が完了するとき以後であって、前記射出チップが前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位を開始するとき以前に、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始するとともに、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するときまで、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を継続する第一の減圧工程と、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後に、前記減圧室からの真空排気を停止するとともに、前記射出工程が完了するときまで、前記充填室からの真空排気を継続する第二の減圧工程と、を備えるものである。
【0012】
請求項3においては、前記第一の減圧工程を開始するときは、前記射出チップを、前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記開放端部側に配置し、前記給湯口を介して、前記充填室と前記減圧室を連通させるものである。
【0013】
請求項4においては、前記射出チップの変位速度は、前記第一の減圧工程中の前記射出工程における変位速度に比して、前記第二の減圧工程中の前記射出工程における変位速度を高速とするものである。
【0014】
請求項5においては、前記充填室からの真空排気と、前記減圧室からの真空排気と、を別々の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行うものである。
【0015】
請求項6においては、前記充填室からの真空排気と、前記減圧室からの真空排気と、を同一の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行うものである。
【0016】
請求項7においては、前記減圧室は、内寸が前記射出スリーブの外寸に比して小さい筒状の部材であって、一端部が開放され、かつ、他端部が閉止される第一の閉塞部材と、前記射出スリーブの外周面に付設され、前記一端部の形状に適合する蓋状の部材である第二の閉塞部材と、によって形成するものである。
【0017】
請求項8においては、前記減圧室は、前記第一の閉塞部材を、該第一の閉塞部材の一端部を前記射出スリーブの前記開放端部に対面させて配置しておき、前記第一の閉塞部材を前記射出スリーブ側に変位させることによって、前記開放端部および前記給湯口を、前記第一の閉塞部材に挿入するとともに、前記第一の閉塞部材の一端部を、前記第二の閉塞部材に当接させることによって形成するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、射出工程において、充填室と減圧室の差圧が過度に大きくなることを防止でき、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを防止できる。またこれにより、射出チップに塗布された潤滑剤が溶湯に混入することを防止でき、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(特にガス巣)の発生を抑制することができる。またさらに、真空ダイカストにおける真空排気量を低減でき、省エネルギーに寄与することができる。
【0020】
請求項2においては、射出工程において、充填室と減圧室の差圧が過度に大きくなることを防止でき、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを防止できる。またこれにより、射出チップに塗布された潤滑剤が溶湯に混入することを防止でき、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(特にガス巣)の発生を抑制することができる。またさらに、真空ダイカストにおける真空排気量を低減でき、省エネルギーに寄与することができる。
【0021】
請求項3においては、射出前において、射出チップの前後から略均等に真空排気を行うことができ、射出チップの前後で生じる差圧を抑制することができる。これにより、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを防止できる。
【0022】
請求項4においては、高速射出を行った場合であっても、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを確実に防止できる。
【0023】
請求項5においては、射出チップの前後で生じる差圧をより細かく調整することができる。
【0024】
請求項6においては、溶湯が射出チップと射出スリーブとのクリアランスに差し込むことを、より簡易な構成の真空ダイカスト装置によって、防止できる。
【0025】
請求項7においては、より簡易な構成で減圧室を形成することができる。
【0026】
請求項8においては、より簡易な構成で減圧室を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法における真空排気時間と真空度の関係を示す図。
【図3】真空ダイカストにおける空気の偏析の発生状況を示す模式図、(a)本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法における空気の偏析の発生状況を示す模式図、(b)従来の真空ダイカスト方法における空気の偏析の発生状況を示す模式図。
【図4】射出スリーブと射出チップのクリアランスにおいて発生する不具合を示す模式図、(a)減圧室が充填室に比して過度に真空度が高い場合におけるクリアランスに対する溶湯の差込状況を示す模式図、(a)充填室が減圧室に比して過度に真空度が高い場合における溶湯に対するクリアランスからの潤滑剤の漏出状況を示す模式図。
【図5】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法におけるクリアランスの良好な状態を示す模式図。
【図6】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる別実施態様の真空ダイカスト装置の全体構成を示す模式図。
【図7】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法を示すフロー図。
【図8】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程における射出速度の変化を示す図。
【図9】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−1〜STEP−2)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図10】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−3〜STEP−5)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図11】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−6)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図12】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−7〜STEP−8)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【図13】本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程(STEP−8〜STEP−9)における真空ダイカスト装置の動作状況を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
図1に示す如く、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の一例である真空ダイカスト装置30は、金型1、射出スリーブ2、射出チップ3、アクチュエータ9、閉塞部材10、真空タンク18、真空ポンプ19、開閉バルブ20・21、制御装置22、溶湯検出センサ23等により構成されている。
【0029】
金型1は、可動型1aと固定型1bからなり、各型1a・1bの合わせ面には、製品形状をかたどった空隙部であるキャビティ4と、該キャビティ4に溶湯6を供給するための経路となる湯道5が形成されている。
そして、金型1の固定型1b側には、湯道5に連通させて、溶湯6を供給するための経路となる射出スリーブ2が付設されている。
【0030】
射出スリーブ2は、その内部にキャビティ4に向けて射出される溶湯6を貯留しておくことができる管状の部位であり、ラドル7から溶湯6を供給するための開口部である給湯口2aが形成されている。また、射出スリーブ2の固定型1bに接続される側とは反対側の端部には開放された開放端部2bが形成されている。
そして、射出スリーブ2内には、開放端部2b側から射出チップ3が挿入されている。
【0031】
射出チップ3は、射出スリーブ2の内径に略一致する外径(但し、射出スリーブ2の内径に比して小さい)に形成される略円筒状の部位であり、射出スリーブ2内に貯留される溶湯6をキャビティ4側に向けて押し出す役割を果たすための部位である。この射出チップ3は、アクチュエータ9が備える支持軸9aによって、射出スリーブ2と軸心が同一となるように支持されている。
尚以下では、射出スリーブ2、射出チップ3、キャビティ4、湯道5によって形成される空間であって、射出工程において溶湯6が充填される空間(図1参照)を充填室11と呼ぶ。
【0032】
支持軸9aは、エアシリンダや油圧シリンダ等のアクチュエータ9に備えられる軸部であり、軸心方向に進退(往復)可能に構成されている。そして、このような支持軸9aの先端に、射出チップ3を配設することによって、射出スリーブ2内にて射出チップ3を往復摺動させることができる構成としている。
【0033】
また、射出スリーブ2の外周面には、フランジ部8が設けられている。このフランジ部8は、射出チップ3の摺動方向と略直交する平面と略平行となる壁面を形成するように構成される。また、このフランジ部8の位置は、給湯口2aが配置される位置よりも、射出チップ3が溶湯6を射出する際に変位する側、即ち、金型1側とされている。
【0034】
また、支持軸9aの軸心上には、後述する減圧室12を形成するための閉塞部材10が設けられている。
この閉塞部材10は、射出チップ3が射出の際に移動する側の端面10aが開放される筒状の部材であり、もう一方の閉じた側の端面10cのボス部10dには、支持軸9aが摺動自在に挿通される貫通孔10eが形成されている。
【0035】
また、閉塞部材10の閉じた端面10cに設けた貫通孔10eに対し、支持軸9aが摺動自在に貫装され、また、貫通孔10eには、支持軸9aとの間の隙間をシールするOリング等から構成されるシール部材10f・10fが設けられている。
また、筒状に構成される閉塞部材10の内寸は、射出スリーブ2の外寸よりも大きく構成され、閉塞部材10の端面10aを、射出チップ3の射出方向(金型1側)へ変位させることで、閉塞部材10の内部の空間に射出スリーブ2の開放端部2bが挿入される構成としている。
そして、閉塞部材10の端面10aに設けたフランジ部10bを射出スリーブ2の外周面に付設されたフランジ部8に圧接することによって、射出スリーブ2の開放端部2bを包囲する減圧室12(チャンバ)が形成される構成としている。
尚ここで言う減圧室12は、射出スリーブ2、射出チップ3、閉塞部材10によって形成される空間であって、射出チップ3を挟んで充填室11の裏側に形成される空間(図1参照)を意味している。
【0036】
また、閉塞部材10は、エアシリンダや油圧シリンダ等からなるアクチュエータ13が備える支持軸13aによって、射出チップ3(支持軸9a)と同一の軸心上の位置を保ったまま移動するように構成されている。
【0037】
また、射出スリーブ2の外周面に立設されるフランジ部8において、閉塞部材10のフランジ部10bと対向する側には、Oリング等から構成される図示しないシール部材が設けられている。このシール部材によって、両フランジ部8・10bが圧接される状態において、両者間に形成される隙間がシールされる構成としている。尚、閉塞部材10のフランジ部10b側にシール部材を設ける構成としてもよい。
【0038】
また、閉塞部材10には、その内部に形成される空間である減圧室12から真空排気するための吸引口15が設けられている。
尚、ここで言う「真空排気する」とは、ある空間に真空ポンプ19等の減圧装置を接続し、当該空間に存在する空気を空間の外部に排気することによって、当該空間の圧力を大気圧に比して低い圧力にまで減圧することを意味している(以下同じ)。
【0039】
また、金型1には、キャビティ4に通じ、該キャビティ4から真空排気するための吸引口16が設けられている。また、キャビティ4と吸引口16を結ぶ経路には、射出時に吸引口16から溶湯6が漏出することを防止するためのシャットバルブ17が設けられている。
【0040】
そして、二つの各吸引口15・16に接続される真空排気経路(真空配管)は、各真空タンク18a・18bを介して、それぞれ各真空ポンプ19a・19bに接続され、その各真空排気経路に設けた開閉バルブ20・21の動作によって、充填室11および減圧室12からの真空排気を行うか否かを切り替えることができる構成としている。尚、各真空タンク18a・18bは、各真空排気経路(真空配管)の内容積を増大させておくことによって、真空度の安定化を図るためのバッファとして機能させるものである。このため、各真空タンク18a・18bとして、充填室11および減圧室12の内容積に比して十分に大きい内容積のものを選定しておくことにより、充填室11および減圧室12の真空度を、各開閉バルブ20・21の開放後、短時間で目標真空度に到達させることが可能になる。
【0041】
また、図1に示す構成において、射出チップ3(アクチュエータ9)、ラドル7、閉塞部材10(アクチュエータ13)、シャットバルブ17、真空ポンプ19、開閉バルブ20等の各動作は、制御装置22によって連動するように制御される構成とすることが望ましい。
尚、各装置を動作させる具体的な機構については、特に限定されるものではない。
【0042】
さらに、真空ダイカスト装置30において、制御装置22には、キャビティ4の所定部位に溶湯6が到達したことを検出するための手段である溶湯検出センサ23が接続されている。
溶湯検出センサ23は、例えば超音波センサ等を採用することによって、キャビティ4の所定部位に溶湯6が存在するか否かを検出することができる。
この溶湯検出センサ23によって溶湯6の存在を検出する部位は、キャビティ4に溶湯6が充満する以前の溶湯6の存在(液位)を検出するようにしている。
そして、設定した所定部位に溶湯6が到達したタイミングと、溶湯6の射出速度およびアクチュエータ9および開閉バルブ20・21等の応答遅れ時間を考慮して、制御装置22によって、前記各部位9・20・21等の動作を制御する構成としている。
【0043】
ここで、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法における真空度の変化について、図1および図2を用いて説明をする。
図1に示す如く、真空ダイカスト装置30では、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行うことができる。ここで、減圧室12に接続される吸引口15の口径は、吸引口16の口径に比して大きく設定することが可能であるため、射出チップ3が給湯口2aよりもアクチュエータ9側に位置している状態で、減圧室12を介して充填室11側の真空排気を行うことによって、より短時間で充填室11および減圧室12の真空度を目標真空度に到達させることが可能になる。
【0044】
つまり、図2に示すように、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行うことによって、粘性流域における真空排気をより短時間で行うことが可能になり、充填室11および減圧室12の真空度を効率よく(より短時間で)高めることができる。尚、分子領域における真空排気については、二つの各吸引口15・16から真空排気を行うことによる効果が少なく、尚一定の時間を要するが、目標真空度に到達するまでに要する時間を、トータルとしては短縮することができる。
【0045】
またここで、キャビティ4で発生する現象である空気の偏析について、図1および図3を用いて説明をする。
従来の真空ダイカスト装置では、充填室11(キャビティ4)に対する吸引口16からのみ真空排気が行われるため、図3(b)に示すように、キャビティ4の下部において吸引されない空気が偏析する現象が生じていた。このように吸引口16から離間した位置で偏析する空気は、分子流域の真空排気においてようやく排出される(即ち、排出されにくい)という性質があり、このキャビティ4の下部において偏析する空気が、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(巻き込み巣)の原因となっていた。
【0046】
一方、図1に示すように、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行う場合、図3(a)に示すように、キャビティ4の中央部において空気が偏析する。ここで偏析した空気は、吸引口16から比較的近い部位に位置しているため、吸引口16からの真空排気を継続することによって、粘性流域における真空排気によって徐々に偏析している空気を減少させることができ、かつ、空気が偏析する位置を吸引口16により近い位置へと遷移させることができる。さらに、吸引口16付近で偏析する空気は、射出時の溶湯6の流れに沿って、吸引口16へと押し出されて効果的に排気されるため、二つの各吸引口15・16から真空排気を行う本実施例に係る真空ダイカスト方法によれば、偏析した空気による鋳巣欠陥の発生を効果的に減少させることができる。
【0047】
さらにここで、射出スリーブと射出チップとのクリアランスにおける溶湯および潤滑剤の状況について、図1、図4および図5を用いて説明をする。
図1に示すように、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気を行う場合において、減圧室12の真空度が充填室11の真空度に比して過度に高くなると、図4(a)に示す如く、溶湯6が充填室11側から減圧室12側に吸い出されて、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランスに溶湯6が差し込むという現象が生じる。この場合、射出チップ3や射出スリーブ2にバリやかじり等が発生し、射出チップ3や射出スリーブ2の寿命が著しく低下するという問題が発生する。
【0048】
また反対に、充填室11の真空度が減圧室12の真空度に比して過度に高くなると、図4(b)に示す如く、射出チップ3に塗布されている潤滑剤3aが充填室11側に吸い出されて、溶湯6に潤滑剤3aが混入するという現象が生じる。この場合、溶湯6により加熱された潤滑剤3aが気化して気泡3b・3b・・・が発生し、ダイカスト製品におけるガス巣が増加するという問題が発生する。
【0049】
そこで、充填室11と減圧室12の真空度に過度の差異が生じないように各室11・12の真空度を調整した場合には、図5に示す如く、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランスに溶湯6が差し込むことがない。尚、より詳しくは、図5に示すように、クリアランスに対して、溶湯6が若干入り込むことが望ましい。これにより、射出チップ3に塗布されている潤滑剤3aが充填室11側に吸い出され漏出することが確実に防止できる。
【0050】
即ち、図1に示すような、充填室11および減圧室12に対して、二つの各吸引口15・16から真空排気をする真空ダイカスト装置30を用いる場合には、充填室11と減圧室12の真空度の差異(即ち、差圧)が過度に大きくならないように調整しながら射出工程を実行することが望ましく、より詳しくは、図5に示すように、クリアランスに対して、溶湯6が若干入り込む程度の差圧が生じるように、各室11・12の真空度のバランスを調整することが望ましい。
【0051】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、充填室11からの真空排気と、減圧室12からの真空排気と、を別々の真空排気をするための手段である真空排気手段(各吸引口15・16、異なる系統の真空配管および真空ポンプ19a・19b)によって行うものである。
このような構成により、射出チップ3の前後で生じる差圧をより細かく調整することができる。
【0052】
次に、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法を適用する真空ダイカスト装置の別実施態様について、図6を用いて説明をする。
図6に示す如く、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法に用いる真空ダイカスト装置の別実施態様である真空ダイカスト装置31は、先述した真空ダイカスト装置30に比して、真空タンク18および真空ポンプ19の台数を削減しており、一台の真空タンク18cと一台の真空ポンプ19cによって真空ダイカスト装置31を構成している点で異なっている。
【0053】
このような構成により、真空ダイカスト装置30と同等の機能を確保しつつ、真空タンク18および真空ポンプ19の台数や真空排気経路(真空配管)の物量等を削減することが可能になる。このため、真空ダイカスト装置31の構成とすることにより、真空ダイカスト装置30に比してイニシャルコストの削減が可能になる。
【0054】
また、真空ダイカスト装置31は、真空ポンプ19の台数が削減されている(即ち、真空ポンプ19c一台のみを備えている)ため、真空ダイカスト装置30のように、真空ポンプ19a・19bの二台を運転する場合に比して、真空ポンプ19の運転による消費電力を削減することが可能な場合がある。この場合、ランニングコストの削減が可能になるとともに、省エネルギーに寄与することもできる。
【0055】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、充填室11からの真空排気と、減圧室12からの真空排気と、を同一の真空排気をするための手段である真空排気手段(同一系統の真空配管および真空ポンプ19c)によって行うものである。
このような構成により、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを、より簡易な構成の真空ダイカスト装置31によって、防止できる。
【0056】
次に、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法を適用した真空ダイカスト工程について、図7〜図13を用いて説明をする。
図7および図9に示す如く、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカスト工程では、まず始めに、固定型1bに対して可動型1aを圧接して、金型1を型閉めしておく(STEP−1)。
【0057】
このとき、閉塞部材10は、アクチュエータ13の支持軸13aを金型1から離間する方向に短縮することにより、金型1から離間する方向に変位されている。このとき、減圧室12は未だ形成されておらず、給湯口2aが外部に開放され露出している。また、射出チップ3は給湯口2aよりもアクチュエータ9側に位置している。
そしてこの状態で、ラドル7によって、射出スリーブ2に対して給湯口2aから溶湯6を注入し、射出スリーブ2(充填室11)内に溶湯6を供給する(STEP−2)。
またこのとき、開閉バルブ20・21は、共に「閉」としている。
【0058】
そしてこの状態で、各真空ポンプ19a・19bを運転し、各開閉バルブ20・21より各真空ポンプ19a・19bに近い側の各真空排気経路(各真空タンク18a・18bを含む)内を所定の真空度にまで高めておく。
そして、射出スリーブ2(充填室11)内に所定量の溶湯6が注入し終わると、次のステップに移行する。
【0059】
次に、図7および図10に示す如く、閉塞部材10を、アクチュエータ13により金型1側に変位し、各フランジ部8・10bに圧接することによって、減圧室12を形成する(STEP−3)。そして、これ以後、射出工程および減圧工程に移行する。
【0060】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、減圧室12は、内寸が射出スリーブ2の外寸に比して小さい筒状の部材であって、一端部(端面10a)が開放され、かつ、他端部(端面10c)が閉止される第一の閉塞部材である閉塞部材10と、射出スリーブ2の外周面に付設され、閉塞部材10の一端部(端面10aのフランジ部10b)の形状に適合する蓋状の部材である第二の閉塞部材であるフランジ部8と、によって形成するものである。
【0061】
また、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、減圧室12は、閉塞部材10を、該閉塞部材10の端面10aを射出スリーブ2の開放端部2bに対面させて配置しておき、閉塞部材10を射出スリーブ2側に変位させることによって、開放端部2bおよび給湯口2aを、閉塞部材10に挿入するとともに、閉塞部材10の一端部(端面10aのフランジ部10b)を、フランジ部8に当接させることによって形成するものである。
このような構成により、より簡易な構成で減圧室12を形成することができる。
【0062】
(低速射出工程および第一減圧工程)
本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法において、射出工程は、低速射出工程と高速射出工程によって構成され、まず低速射出工程が実行される。
低速射出工程に移行すると、図7および図10に示す如く、減圧室12の気密を保持した状態で、各開閉バルブ20・21を、共に「開」とし、減圧室12と充填室11(キャビティ4)にそれぞれ接続される各吸引口15・16から真空排気を行い、第一減圧工程を開始する(STEP−4)。
【0063】
このとき、各開閉バルブ20・21より各真空ポンプ19a・19bに近い側の各真空排気経路(各真空タンク18a・18bを含む)内は、予め所定の真空度にまで高められているため、各開閉バルブ20・21を「開」にすると、充填室11および減圧室12の真空度を速やかに高めることができる。
【0064】
次に、図7および図8に示す如く、減圧室12とキャビティ4の真空度を確認しつつ(STEP−5)、射出チップ3の変位速度を所定の速度VLまで加速しながら金型1側に変位させるとともに、射出チップ3の変位速度が速度VLに到達した後は、射出チップ3の変位速度を速度VLに維持した状態で金型1側に変位させて、充填室11における溶湯6の充填率を高めていく(即ち、低速射出工程を実行する)。
【0065】
ここで、射出チップ3が給湯口2aよりもアクチュエータ9側に位置している間は、充填室11と減圧室12は給湯口2aを介して連通して一体的な空間となっているため、各吸引口15・16からの真空排気によって、充填室11および減圧室12の真空度が短時間で高められる。
【0066】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、第一減圧工程を開始するときは、射出チップ3を、射出スリーブ2内において給湯口2aよりも開放端部2b側に配置し、給湯口2aを介して、充填室11と減圧室12を連通させるものである。
このような構成により、射出前において、射出チップ3の前後から略均等に真空排気を行うことができ、射出チップ3の前後で生じる差圧を抑制することができる。これにより、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを防止できる。
【0067】
また、射出チップ3が給湯口2aよりも金型1側に位置している間は、充填室11と減圧室12は射出チップ3によって隔絶されるため、吸引口16からの真空排気によって、充填室11の真空度が高められ、かつ、吸引口15からの真空排気によって減圧室12の真空度が高められる。
【0068】
このとき、図10に示すように、充填室11(キャビティ4)と減圧室12の両方から真空排気を行うことによって、速やかに充填室11(キャビティ4)および減圧室12の真空度が高められる(図2参照)。またこのとき、充填室11と減圧室12の真空度の差異(即ち、差圧)が過度に大きくならないように各真空ポンプ19a・19bによる排気速度等が調整される。
【0069】
そして、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達すると、低速射出工程を終了し、高速射出工程および第二減圧工程に移行する。
【0070】
(高速射出工程および第二減圧工程)
次に、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達したときには、図7および図11に示す如く、開閉バルブ20は「開」の状態を維持して、キャビティ4からの真空排気は継続して行うとともに、開閉バルブ21を「閉」として、減圧室12からの真空排気を停止して、第二減圧工程に移行する(STEP−6)。
これにより、減圧室12の真空度が、充填室11(キャビティ4)の真空度に比して、過度に高まることを防止して、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランス(隙間)に対する溶湯6の浸入を防止している。
【0071】
尚、本実施例では、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達したときには、開閉バルブ21を「閉」として、減圧室12からの真空排気を完全に停止する場合を例示しているが、例えば、開閉バルブ21の開度を調整する等して、減圧室12からの真空排気量を少なくする(即ち、減圧室12からの真空排気を弱める)構成とすることも可能である。
【0072】
このように、充填室11と減圧室12の真空度の差異(即ち、差圧)が過度に大きくならないように、各開閉バルブ20・21の動作を制御することによって、図5に示す如く、射出スリーブ2と射出チップ3とのクリアランスには溶湯6が差し込まず、かつ、射出チップ3に塗布された潤滑剤3aが充填室11側に漏出することもない状態を保持しつつ、射出工程を行うことができる。
【0073】
尚、より詳しくは、図5に示すように、クリアランスに対して、溶湯6が若干入り込むように調整するのが、潤滑剤3aの漏出を確実に防止するためには望ましく、溶湯6がクリアランスに若干入り込む程度に差圧が生じるように、各開閉バルブ20・21の動作タイミングを制御することが望ましい。
【0074】
また、充填室11における溶湯6の充填率が所定の設定充填率に達したときには、図8に示すように、射出チップ3の変位速度を所定の速度VHまで加速しながら金型1側に変位させるとともに、射出チップ3の変位速度が速度VHに到達した後は、射出チップ3の変位速度を速度VHに維持した状態で金型1側に変位させて、キャビティ4に溶湯6を高速で射出する(即ち、高速射出工程を実行する)。
【0075】
尚、本実施例では、図11に示すように、充填室11における溶湯6の充填率が100%(即ち、湯道5が溶湯6で完全に満たされており、かつ、キャビティ4には溶湯6が到達していない状態)となるタイミングで、開閉バルブ21を「閉」として、減圧室12からの真空排気を停止する場合を例示しているが、減圧室12からの真空排気を停止するタイミングにおける充填率は、必ずしも100%である必要はなく、充填率が100%未満(即ち、湯道5が溶湯6で満たされていない)の状態であったり、あるいは充填率が100%を越えている(即ち、キャビティ4に溶湯6が浸入している)状態であったりしてもよい。
【0076】
次に、図7、図8および図12に示す如く、高速射出工程が進行し、溶湯検出センサ23によって、射出された溶湯6がキャビティ4の所定部位に到達したことを検出すると、この検出情報が制御装置22に送られる(STEP−7)。
【0077】
そして、制御装置22が溶湯6が検出された旨の情報を取得すると、制御装置22によって、この情報の検出タイミングに基づいて、高速射出工程の終了タイミングを制御する(STEP−7)。より詳しくは、溶湯検出センサ23によって溶湯6を検出したタイミングに基づいて、支持軸9aの応答遅れ時間を考慮して、射出速度VH(即ち、支持軸9a(射出チップ3)の変位)による変位をあとどれだけ継続するかを制御している。
【0078】
また、制御装置22が溶湯6が検出された旨の情報を取得すると、制御装置22によって、開閉バルブ20を「閉」とし、各開閉バルブ20・21を、共に「閉」とする(STEP−8)。
尚、溶湯検出センサ23によって溶湯6が検出されてから、開閉バルブ20が「閉」とするまでの応答遅れ時間の間に、高速射出工程が進行し、充填室11に溶湯6が充満するように、開閉バルブ20の応答遅れ時間を考慮して、溶湯検出センサ23による検出部位を設定するようにしている。
【0079】
このようにして、高速射出工程の終了タイミングに合わせて、開閉バルブ20を「閉」とし、不要な真空排気を行わないようにしている。また、このときシャットバルブ17が「閉」となり、吸引口16に対する溶湯6の漏出を確実に防止する構成としている。
ここまでで、一連の射出工程(低速射出工程および高速射出工程)を完了する。
尚、本実施例では、射出工程が低速・高速それぞれ一段ずつの二段射出である場合を例示しているが、本発明に係る真空ダイカスト方法を適用する場合における射出工程の態様をこれに限定するものではない。
【0080】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、射出チップ3の変位速度(即ち、射出速度)は、第一減圧工程中の射出工程(即ち、低速射出工程)における変位速度(即ち、射出速度VL)に比して、第二減圧工程中の射出工程(即ち、高速射出工程)における変位速度(即ち、射出速度VH)を高速とする(即ち、VH>VL)ものである。
このような構成により、高速射出を行った場合であっても、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを確実に防止できる。
【0081】
そして、図7、図8および図13に示す如く、キャビティ4(充填室11)に対して溶湯6が完全に充填された状態で、射出チップ3の変位速度を所定の速度VLLまで減速して金型1側に変位させるとともに、射出チップ3の変位速度が速度VLLに到達した後は、射出チップ3の変位速度を速度VLLに維持した状態で金型1側にさらに低速で変位させて、キャビティ4の溶湯6を加圧する。
これにより、一連の加圧工程を完了する。
【0082】
そして、図7および図13に示す如く、可動型1aを変位させて金型1を型開きするとともに(STEP−9)、金型1のキャビティ4からダイカスト製品を離型する(STEP−10)。また、閉塞部材10を金型1から離間する方向に変位させて、次の真空ダイカスト工程に備えて減圧室12を開放しておく(STEP−11)。
これにより、本発明の一実施例に係る一連の真空ダイカスト工程を完了する。
【0083】
そして、図7に示すように、再度(STEP−1)に戻って、(STEP−1)〜(STEP−11)の一連のステップを繰返して実行することによって、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法による真空ダイカストを繰り返し実行することができる。
【0084】
次に、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法の適用効果について、説明をする。
本発明の一実施例に係る一連の真空ダイカスト工程により製造されたダイカスト製品について鋳巣体積率(ダイカスト製品の体積に対してダイカスト製品に含まれる鋳巣欠陥の体積が占める割合)の分析を行ったところ、(1)従来の充填室11(キャビティ4)のみから真空排気する真空ダイカスト方法により製造されたダイカスト製品に比して、鋳巣体積率が約1/3に減少していた。
また、(2)従来の充填室11(キャビティ4)と減圧室12の両方から真空排気する真空ダイカスト方法(即ち、特許文献1に記載の真空ダイカスト方法)により製造されたダイカスト製品に比しても、鋳巣体積率が約1/2に減少していることが確認できた。
つまり、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、鋳巣欠陥の低減に効果を有することが確認できた。
【0085】
また、鋳巣欠陥(即ち、気泡)は、(1)空気の巻き込みに起因する巻き込み巣と、(2)射出チップに塗布される潤滑剤が気化して生じる気泡に起因するガス巣と、(3)溶湯に混入した水分に起因する水残り欠陥等に分類できる。そして、鋳巣欠陥(気泡)に含まれる気体成分の分析を行うと、(1)巻き込み巣の場合は主に窒素が、(2)ガス巣の場合は主に炭素が、(3)水残り欠陥の場合は主に水素が、それぞれ検出される。
【0086】
そして、本発明に係る真空ダイカスト方法により製造されたダイカスト製品について、鋳巣欠陥に含まれる気体の成分分析を行ったところ、従来の真空ダイカスト方法により製造したダイカスト製品に比して、前記(2)ガス巣の主成分である炭素の検出量が減少していることが確認できた。
つまり、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、射出チップ3に塗布される潤滑剤3aが溶湯6へ混入することが抑制できるため、鋳巣欠陥の中でも特にガス巣の低減に顕著な効果を有することが確認できた。
【0087】
即ち、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、金型1に形成するキャビティ4および該キャビティ4に連通する湯道5と、該湯道5に連通する射出スリーブ2と、該射出スリーブ2に挿入する射出チップ3と、によって形成される空間である充填室11から真空排気をして、充填室11の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、射出スリーブ2に形成する開口部である給湯口2aから充填室11に対して溶湯6を供給し終えるとき以後であって、射出チップ3の射出スリーブ2内におけるキャビティ4側への変位による射出動作を開始するとき以前に、給湯口2aと、射出スリーブ2の湯道5に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部2bと、を包囲する空間である減圧室12を形成するとともに、充填室11および減圧室12からの真空排気を開始して、射出工程を開始した後の、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するとき以後は、減圧室12からの真空排気を弱めるものである。
【0088】
また、本発明の一実施例に係る真空ダイカスト方法は、金型1に形成するキャビティ4および該キャビティ4に連通する湯道5と、該湯道5に連通する射出スリーブ2と、該射出スリーブ2に挿入する射出チップ3と、によって形成される空間である充填室11から真空排気をして、充填室11の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、射出スリーブ2に形成する開口部である給湯口2aから充填室11に対して溶湯6を供給する給湯工程と、該給湯工程が完了するとき以後に、給湯口2aと、射出スリーブ2の湯道5に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部2bと、を包囲する空間である減圧室12を形成する減圧室形成工程と、該減圧室形成工程が完了するとき以後に、射出チップ3を、射出スリーブ2内においてキャビティ4側へ変位して溶湯6をキャビティ4に射出する射出工程と、減圧室形成工程が完了するとき以後であって、射出チップ3が射出スリーブ2内におけるキャビティ4側への変位を開始するとき以前に、充填室11および減圧室12からの真空排気を開始するとともに、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するときまで、充填室11および減圧室12からの真空排気を継続する第一の減圧工程である第一減圧工程と、射出チップ3が射出スリーブ2内において給湯口2aよりもキャビティ4側に変位するとき以後に、減圧室12からの真空排気を停止するとともに、射出工程が完了するときまで、充填室11からの真空排気を継続する第二の減圧工程である第二減圧工程と、を備えるものである。
このような構成により、射出工程において、充填室11と減圧室12の差圧が過度に大きくなることを防止でき、溶湯6が射出チップ3と射出スリーブ2とのクリアランスに差し込むことを防止できる。またこれにより、射出チップ3に塗布された潤滑剤3aが溶湯6に混入することを防止でき、ダイカスト製品における鋳巣欠陥(特にガス巣)の発生を抑制することができる。またさらに、真空ダイカストにおける真空排気量を低減でき、省エネルギーに寄与することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 金型
2 射出スリーブ
3 射出チップ
4 キャビティ
5 湯道
6 溶湯
11 充填室
12 減圧室
18 真空タンク
19 真空ポンプ
20 開閉バルブ
21 開閉バルブ
30 真空ダイカスト装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に形成するキャビティと、
該キャビティに連通する湯道と、
該湯道に連通する射出スリーブと、
該射出スリーブに挿入する射出チップと、
によって形成される空間である充填室から真空排気をして、
前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、
前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給し終えるとき以後であって、前記射出チップの前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位による射出動作を開始するとき以前に、
前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成するとともに、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始して、
前記射出動作を開始した後の、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後は、
前記減圧室からの真空排気を弱める、
ことを特徴とする真空ダイカスト方法。
【請求項2】
金型に形成するキャビティと、
該キャビティに連通する湯道と、
該湯道に連通する射出スリーブと、
該射出スリーブに挿入する射出チップと、
によって形成される空間である充填室から真空排気をして、
前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、
前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給する給湯工程と、
該給湯工程が完了するとき以後に、前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する一端とは反対側の他端に形成される開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成する減圧室形成工程と、
該減圧室形成工程が完了するとき以後に、前記射出チップを、前記射出スリーブ内において前記キャビティ側へ変位して前記溶湯を前記キャビティに射出する射出工程と、
前記減圧室形成工程が完了するとき以後であって、前記射出チップが前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位を開始するとき以前に、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始するとともに、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するときまで、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を継続する第一の減圧工程と、
前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後に、前記減圧室からの真空排気を停止するとともに、前記射出工程が完了するときまで、前記充填室からの真空排気を継続する第二の減圧工程と、
を備える、
ことを特徴とする真空ダイカスト方法。
【請求項3】
前記第一の減圧工程を開始するときは、
前記射出チップを、
前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記開放端部側に配置し、
前記給湯口を介して、
前記充填室と前記減圧室を連通させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項4】
前記射出チップの変位速度は、
前記第一の減圧工程中の前記射出工程における変位速度に比して、
前記第二の減圧工程中の前記射出工程における変位速度を高速とする、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項5】
前記充填室からの真空排気と、
前記減圧室からの真空排気と、
を別々の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項6】
前記充填室からの真空排気と、
前記減圧室からの真空排気と、
を同一の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項7】
前記減圧室は、
内寸が前記射出スリーブの外寸に比して小さい筒状の部材であって、一端部が開放され、かつ、他端部が閉止される第一の閉塞部材と、
前記射出スリーブの外周面に付設され、前記一端部の形状に適合する蓋状の部材である第二の閉塞部材と、
によって形成する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項8】
前記減圧室は、
前記第一の閉塞部材を、
該第一の閉塞部材の一端部を前記射出スリーブの前記開放端部に対面させて配置しておき、前記第一の閉塞部材を前記射出スリーブ側に変位させることによって、
前記開放端部および前記給湯口を、
前記第一の閉塞部材に挿入するとともに、
前記第一の閉塞部材の一端部を、
前記第二の閉塞部材に当接させることによって形成する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項1】
金型に形成するキャビティと、
該キャビティに連通する湯道と、
該湯道に連通する射出スリーブと、
該射出スリーブに挿入する射出チップと、
によって形成される空間である充填室から真空排気をして、
前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、
前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給し終えるとき以後であって、前記射出チップの前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位による射出動作を開始するとき以前に、
前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する側の一端とは反対側の他端に形成する開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成するとともに、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始して、
前記射出動作を開始した後の、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後は、
前記減圧室からの真空排気を弱める、
ことを特徴とする真空ダイカスト方法。
【請求項2】
金型に形成するキャビティと、
該キャビティに連通する湯道と、
該湯道に連通する射出スリーブと、
該射出スリーブに挿入する射出チップと、
によって形成される空間である充填室から真空排気をして、
前記充填室の真空度を高めてダイカストを行う真空ダイカスト方法であって、
前記射出スリーブに形成する開口部である給湯口から前記充填室に対して溶湯を供給する給湯工程と、
該給湯工程が完了するとき以後に、前記給湯口と、前記射出スリーブの前記湯道に連通する一端とは反対側の他端に形成される開放された端部である開放端部と、を包囲する空間である減圧室を形成する減圧室形成工程と、
該減圧室形成工程が完了するとき以後に、前記射出チップを、前記射出スリーブ内において前記キャビティ側へ変位して前記溶湯を前記キャビティに射出する射出工程と、
前記減圧室形成工程が完了するとき以後であって、前記射出チップが前記射出スリーブ内における前記キャビティ側への変位を開始するとき以前に、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を開始するとともに、前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するときまで、前記充填室および前記減圧室からの真空排気を継続する第一の減圧工程と、
前記射出チップが前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記キャビティ側に変位するとき以後に、前記減圧室からの真空排気を停止するとともに、前記射出工程が完了するときまで、前記充填室からの真空排気を継続する第二の減圧工程と、
を備える、
ことを特徴とする真空ダイカスト方法。
【請求項3】
前記第一の減圧工程を開始するときは、
前記射出チップを、
前記射出スリーブ内において前記給湯口よりも前記開放端部側に配置し、
前記給湯口を介して、
前記充填室と前記減圧室を連通させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項4】
前記射出チップの変位速度は、
前記第一の減圧工程中の前記射出工程における変位速度に比して、
前記第二の減圧工程中の前記射出工程における変位速度を高速とする、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項5】
前記充填室からの真空排気と、
前記減圧室からの真空排気と、
を別々の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項6】
前記充填室からの真空排気と、
前記減圧室からの真空排気と、
を同一の真空排気をするための手段である真空排気手段によって行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項7】
前記減圧室は、
内寸が前記射出スリーブの外寸に比して小さい筒状の部材であって、一端部が開放され、かつ、他端部が閉止される第一の閉塞部材と、
前記射出スリーブの外周面に付設され、前記一端部の形状に適合する蓋状の部材である第二の閉塞部材と、
によって形成する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【請求項8】
前記減圧室は、
前記第一の閉塞部材を、
該第一の閉塞部材の一端部を前記射出スリーブの前記開放端部に対面させて配置しておき、前記第一の閉塞部材を前記射出スリーブ側に変位させることによって、
前記開放端部および前記給湯口を、
前記第一の閉塞部材に挿入するとともに、
前記第一の閉塞部材の一端部を、
前記第二の閉塞部材に当接させることによって形成する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の真空ダイカスト方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−79029(P2011−79029A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234488(P2009−234488)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
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