説明

真空ダイカスト法及び真空ダイカスト装置

【課題】鋳造製品中への外気の巻き込みが殆どない健全な製品を高い信頼性をもって鋳造することが可能な真空ダイカスト方法及び真空ダイカスト装置を提供する。
【解決手段】射出スリーブ3の内周面と摺接する環状シール材8を1つ以上装着して当該環状シール材8から金型キャビティに至る射出スリーブ3の内部空間Bを気密状にシールし、上記環状シール材に対してキャビティ側にシール状況監視用穴10を開口形成し、プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器11を連通させる通路12を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の型閉めを行なった後に、金型キャビティ内の外気を吸引し減圧した後若しくは吸引減圧しながら当該キャビティ内に溶湯を射出スリーブから射出充填して鋳造する真空ダイカスト法及び真空ダイカスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空ダイカスト法によれば、金型キャビティ内の外気を吸引減圧した後若しくは吸引減圧しながら溶湯を射出スリーブから射出充填して鋳造するので、鋳造された製品中への外気の巻き込みが少なく、鋳巣やブローホール等の鋳造欠陥が少ない健全なダイカスト製品を鋳造でき、特に、熱処理が必要な製品や溶接を必要とする製品などに多く適用されている。
【0003】
しかし、金型キャビティ内の外気を吸引減圧している最中に、射出スリーブとプランジャチップの間に形成される隙間を通して外気が金型キャビティ内に流入するのを完全に阻止することは実際問題として至難であり、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に、(1)ガス抜き溝を設けて吸引減圧を開始してから溶湯を金型キャビティに射出充填する方策(例えば、特許文献1参照。)、(2)ガス抜き溝とシールを設けて当該ガス抜き溝を真空吸引する方策(例えば、特許文献2参照。)、或いは、(3)ガス抜き溝とラビリンスシールを設けて当該ガス抜き溝を真空吸引する方策(例えば、特許文献3参照。)、等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特公平2−45941号公報
【特許文献2】特開平1−313175号公報
【特許文献3】特開2004−268051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、高真空による真空ダイカスト法を実施する場合に、射出スリーブとプランジャチップの間から外気が金型キャビティ内に流入しないようにする方策として、プランジャチップ若しくはプランジャロッドの外周に、射出スリーブの内周面と気密状に摺接する環状シール材を装着することにより、当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールする方策が考えられる。
この方策を実行する場合、環状シール材は、プランジャチップと一緒になって射出スリーブ内周面に繰り返し摺動するので磨耗し且つ射出スリーブからの熱的影響を受けて劣化し、十分なシール性能を発揮し得なくなる消耗品であるから、適切な時期に交換する必要がある。
【0006】
しかし乍ら、環状シール材のシール性能の低下は急激に出現する場合もあるが、殆どの場合徐々に出現するため、環状シール材によるシール性能の低下に気が付かずに不良品を鋳造してしまうことがある。環状シール材が十分なシール性能を発揮し得なくなると、外気がプランジャチップと射出スリーブとの隙間から金型キャビティ内に侵入してきて、鋳造製品に悪影響を与えるからである。
【0007】
例えば、後工程において熱処理や溶接を行なう製品を鋳造する場合、熱処理工程や溶接工程で初めて鋳造された製品中への外気の巻き込みの存在、すなわちシール性が低下したことをわかるために、熱処理工程や溶接工程で発見されるまで鋳造し続けた製品は全て不良になる場合がある。
更には、シール不良に伴う鋳造不良が製品の外観および検査で確認できずに市場に不良品が出回った場合には、基より高信頼性が要求される製品の信頼性を損なうことになり、真空ダイカストで生産することそのものができなくなる重大問題となる。
【0008】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、プランジャチップと射出スリーブとの隙間を含む金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールするための環状シール材によるシール性能の低下具合を検知することにより当該環状シール材の適切な交換時期を見極めることが可能となり、従ってプランジャチップと射出スリーブとの隙間から金型キャビティ内に侵入しようとする外気を全鋳造製品に対して有効に遮断することができ、その結果、鋳造製品中への外気の巻き込みが殆どない健全な製品を高い信頼性をもって鋳造することが可能な真空ダイカスト方法及び真空ダイカスト装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の真空ダイカスト法は、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に射出スリーブの内周面と摺接する環状シール材を装着することにより当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールし、型閉め後に金型キャビティ内の外気を吸引減圧した後若しくは吸引減圧しながら、射出スリーブ内に注湯した溶湯を前記プランジャチップで金型キャビティ内に射出充填して鋳造する真空ダイカスト法において、前記環状シール材のシール性能を検出することにより、前記プランジャチップと射出スリーブとの隙間におけるシールの状態を維持するようにしたことを特徴としたものである。
この際、前記環状シール材によるシール性能(気密性)を検出する場合に、射出スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填中若しくは充填直後または充填中から充填後の間に、前記環状シール材で気密状にシールされた前記プランジャチップと射出スリーブとの隙間空間における圧力変化を観測することにより前記環状シール材のシール性能を検出する場合(請求項2)と、射出スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填し鋳造した製品を金型キャビティから取り出してからプランジャチップを後退させるまでの間、前記環状シール材で気密状にシールされた前記プランジャチップと射出スリーブとの隙間空間を加圧若しくは減圧して前記環状シール材間の空間における圧力変化を観測することにより前記環状シール材のシール性能を検出する場合(請求項3)とが考えられる。
また、本発明の真空ダイカスト装置は、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に射出スリーブの内周面と摺接する環状シール材を装着することにより当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールし、型閉め後に金型キャビティ内の外気を吸引減圧した後若しくは吸引減圧しながら、射出スリーブ内に注湯した溶湯を前記プランジャチップで金型キャビティ内に射出充填して鋳造する真空ダイカスト装置であって、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に前記環状シール材を1つ以上装着すると共に、プランジャロッド又はプランジャチップに上記環状シール材に対してキャビティ側にシール状況監視用穴を開口形成し、プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器を連通させる通路を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて、前記環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出することを特徴としたものである(請求項4)。
更に、本発明に係る別の真空ダイカスト装置は、前記プランジャロッド又はプランジャチップの外周に環状シール材を2つ以上装着し、該環状シール材と環状シール材との間位置にシール状況監視用穴を開口形成し、プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器を連通させる通路を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて前記2つの環状シール材と射出スリーブで構成される内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出することを特徴としたものである(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る真空ダイカスト法によれば、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に射出スリーブの内周面と摺接する環状シール材を装着することにより当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールする際に、環状シール材のシール性能を検出することにより、当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間におけるシールの状態を維持するようにしたので、プランジャチップと射出スリーブとの隙間から金型キャビティ内に侵入しようとする外気を全鋳造製品に対して有効に遮断することができ、従って鋳造製品中への外気の巻き込みが殆どない健全な製品を高い信頼性をもって鋳造することが可能となる。
【0011】
また、本発明の真空ダイカスト装置によれば、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に前記環状シール材を1つ以上装着すると共に、プランジャロッド又はプランジャチップに上記環状シール材に対してキャビティ側にシール状況監視用穴を開口形成し、プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器を連通させる通路を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて、前記環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出するように構成されているので、上記環状シール材のシール性能の低下具合、言い換えれば環状シール材の交換時期を適切に見極めることが可能となり、従ってプランジャチップと射出スリーブとの隙間から金型キャビティ内に侵入しようとする外気を全鋳造製品に対して有効に遮断することができ、その結果、鋳造製品中への外気の巻き込みが殆どない健全な製品を鋳造することが出来る。この場合、金型の型開き前に実施したシール性能を検出した方がチップ前方へのリークが無いので検出誤差がないのでより好ましい。
【0012】
特に、本発明の請求項5に係る真空ダイカスト装置のように、プランジャロッド又はプランジャチップの外周に環状シール材を2つ以上装着し、該環状シール材と環状シール材との間位置にシール状況監視用穴を開口形成し、プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器を連通させる通路を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて前記2つの環状シール材と射出スリーブで構成される内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出するように構成されているので、環状シール材の摩耗・劣化状況を簡単且つ迅速に計測し検出することが可能となる。この場合、型開きして製品がない状態で検出した方がチップ側に設置したシール性能の検出がチェックできるのでより好ましい。
2つの環状シール材を用いて、射出充填中から充填後まで圧力変化を測定する方法において、キャビティ側のシール性能が低下した場合は、キャビティ側の真空減圧によって充填中に圧力が低下する量が多くなる。またロット側の環状シール材のシール性能が低下した場合は、充填後に圧力が大気圧に戻る時間が早くなる。これらの現象を事前に確認しておくことにより、シール性能が低下する基準をきめることができ、環状シール材を適時交換することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な好適実施例を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示実施例のものに限定されるものではない。
【0014】
図1は本発明に係る真空ダイカスト法が適用されるダイカストマシンの概念図を示し、固定型1aと可動型1bから構成される金型1に、製品を成形するためのキャビティ2が形成されていると共に、射出スリーブ3及び製品押出しピン4がキャビティ2内と連通状に接続されている。
そして、射出スリーブ3には溶湯を注ぎ込むための注湯口3aが開口形成されると共に、注湯口3a側の開放口に、プランジャロッド5の先端に連結されたプランジャチップ6がキャビティ2方へ向け往復摺動自在に嵌装されている。
【0015】
射出スリーブ3の注湯口3aから注入された溶湯は、プランジャロッド5のプランジャチップ6で射出されて金型キャビティ2内に圧入充填されて鋳造され、冷却凝固後に金型1a,1bを開き製品押出しピン4で金型キャビティ2内から押し出して取り出すと所定のダイカスト製品が得られる。
【0016】
一方、固定型1aと可動型1bの型合わせ面等には、金型用ガス抜き装置7が設置されており、そのガス抜き装置7によりキャビティ2内の外気が吸引され金型の外部へ除去され、キャビティ2の内部が減圧される仕組みになっている。そして、金型(固定型1aと可動型1b)の型閉めを行ない、ガス抜き装置7で金型キャビティ2内の外気を吸引し減圧した後、若しくは吸引減圧しながら、当該キャビティ2内に、射出スリーブ3内に注湯した溶湯をプランジャチップ6で射出充填して製品を鋳造する。
【0017】
この際、型合わせ面や製品押出しピン4が摺動する部分及び射出スリーブ3の内周面とプランジャチップ6の外周面との間で形成される隙間など、金型キャビティ2に通じる射出スリーブの内部の気密性を保持するためのシールが施される。
【0018】
特に本発明に係る真空ダイカスト装置では、プランジャロッド5又はプランジャチップ6の外周に射出スリーブ3の内周面と摺接する環状シール材8を1つ又は2つ以上装着することにより、プランジャロッド5の先端に設けられたプランジャチップ6の外周面と射出スリーブ3の内周面との間で形成される隙間を含む当該環状シール材8から金型キャビティ2に至る射出スリーブ3の内部空間Bが気密状にシールされている。
【0019】
上記環状シール材8は、例えば二トリルゴム系、シリコン系又はフッ素系の合成樹脂材等、弾性を有し且つ射出スリーブ3の高温に耐え得る材料を用いて、無端環状に形成されると共に、プランジャチップと一緒になって射出スリーブ内周面に繰り返し往復摺動してもその外周部分が射出スリーブ3の内周面3bに弾性的に密接し得るように形成される。
要するにこの環状シール材8は、その外周部分が射出スリーブ3の内周面3bに弾性的に密接して、射出スリーブ3の内周面とプランジャチップ6の外周面との間で形成される隙間を含む当該環状シール材8から金型キャビティ2に至る射出スリーブ3の内部空間Bを気密状にシールし得る構造であれば、図2や図4に示す如くO-リングでも良いし、図3に示す如くその外周部分が射出スリーブ3の内周面に弾性的に密接し得るように工夫された特殊な断面形状に形成されたものでも良く、図示実施例のものに限定されるものではない。
【0020】
ちなみに、図2に示した第1実施例ではプランジャロッド5の外周面に環状シール材8としてのO-リングが1つ装着され、図3に示した第2実施例ではプランジャロッド5の外周面に特殊な断面形状をした環状シール材8が2個装着され、図4に示した第3実施例では環状シール材8としてのO-リングが3つ装着され、図5に示した第4実施例ではプランジャチップ6の外周面に環状シール材8としてのO-リングが2個装着されている。
なお、第3実施例におけるプランジャチップ6寄りの環状シール材8’は、シール性能だけでなく、射出スリーブ3の内周面に付着したゴミを払拭するためのダスター(ダストシール)の役目を果たすためのものである。
【0021】
また、環状シール材8をプランジャロッド5の外周に装着する場合、プランジャロッド5又はプランジャチップ6の外周に沿って環状に形成された凹溝9にそれぞれ嵌合装着することが好ましい。
そうすれば、環状シール材8が、射出スリーブ3内周面と繰り返し往復摺接しても、プランジャロッド又はプランジャチップ6の外周に軸方向に移動することなくしっかりと固定される。
【0022】
また、プランジャロッド又はプランジャチップ6の外周には、プランジャチップ6と射出スリーブ3との隙間を含む空間部分Bが環状シール材8で適正にシールされているかを監視するためのシール状況監視用穴10が開口形成され、プランジャロッド5の内部又は側面には外部に設置されたシール状況計測器11と上記シール状況監視用穴10とを連通させるための通路12が形成される。
【0023】
この際、図5に示した第4実施例の如く、プランジャチップ6の外周面に環状シール材8を装着した場合のように、射出スリーブ3内周面との間に極めて狭い空間しかないときには、プランジャチップ6の外周面に全周にわたって凹溝9aを形成し、その凹溝9a内にプランジャチップ6と射出スリーブ3との隙間を含む空間部分Bに臨ませて、シール状況監視用穴10を開口形成することが望ましい。そうすれば、プランジャチップ6と射出スリーブ3との隙間を含む空間部分B全体にわたって当該環状シール材8のシール性能を効果的に検出することが可能となる。
【0024】
シール状況監視用穴10は、金型キャビティ2に至る射出スリーブ3の空間部分Bが環状シール材8で適正にシールされているかを監視し得るように、プランジャロッド5又はプランジャチップ6の外周に環状シール材8が1つしか装着されていない場合にはその環状シール材8に対して金型キャビティ側に配置して開口形成せしめ、2個以上の環状シール材8が装着されている場合には、環状シール材8と環状シール材8との間位置に開口形成せしめる。
【0025】
なお、各実施例の変形例として、シール状況監視用穴10に対して金型キャビティ2とは反対側のプランジャロッド又はプランジャチップ6の外周に、2つ以上の環状シール材8を装着するようにしても良い。そうすれば、仮にその内の1本のシール性能が低下しても直ちにマシンを停止させて環状シール材8を交換する必要が無くなり、環状シール材8の交換の手間を省くことが可能となる。
【0026】
そして、プランジャロッド5の内部又は側面に形成された通路12の出口側12aに、シール状況計測器11を接続せしめて、シール状況監視用穴10を囲む環状シール材8と環状シール材8との間及び射出スリーブ3の内周面3bとで形成される密閉された空間部分Bにおける気密性を計測・検知することにより、環状シール材8のシール性能、すなわち外気の漏れ具合を検知するように構成される。
【0027】
環状シール材8のシール性能をシール状況計測器11で計測する場合、シール状況監視用穴10を囲む環状シール材8間の空間と射出スリーブ3の内周面3bとで形成される密閉された空間部分Bにおける圧力変動を計測・検知することにより、その時の環状シール材8によるシール性能を知ることが出来る。
【0028】
具体的には、シール状況計測器11として真空センサーを用い、射出スリーブ3内の溶湯を金型キャビティ2内に射出充填中若しくは充填直後または充填中から充填後の間に、通路12内を吸引減圧して、シール状況監視用穴10を通して、シール状況監視用穴10を囲む環状シール材8間の空間と射出スリーブ3の内周面3bとで形成される密閉された空間部分Bにおける圧力変化を計測し、一定時間での圧力変化が所定の圧力を超えたときに環状シール材8のシール性能が劣化したと判断するものである。
また、別の方法として、射出スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填し鋳造した製品を金型キャビティから取り出してからプランジャチップを後退させるまでの間において、通路12内を加圧若しくは吸引減圧して、シール状況監視用穴10を囲む環状シール材8間の空間と射出スリーブ3の内周面3bとで形成される密閉された空間部分Bにおける圧力変化を計測し、圧力が所定の圧力を超える若しくは下回ったときに環状シール材8のシール性能が劣化したと判断するものである。
いずれの場合も、環状シール材8のシール性能が劣化したと判断されたときには、シール状況計測器11から信号を発信してダイカストマシンを停止させ、環状シール材8を交換するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る真空ダイカスト法が適用されるダイカストマシンの概念図。
【図2】第1実施例を示す要部の一部断面模式図。
【図3】第2実施例を示す要部の一部断面模式図。
【図4】第3実施例を示す要部の一部断面模式図。
【図5】第4実施例を示す要部の一部断面模式図。
【符号の説明】
【0030】
1:金型 1a:固定型
1b:可動型 2:キャビティ
3:射出スリーブ 3a:注湯口
4:製品押出しピン 5:プランジャ
6:プランジャチップ 7:ガス抜き装置
8:環状シール材 9, 9a:凹溝
10:シール状況監視用穴 11:シール状況計測器
12:通路 B:空間部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャロッド又はプランジャチップの外周に射出スリーブの内周面と摺接する環状シール材を装着することにより当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールし、型閉め後に金型キャビティ内の外気を吸引減圧した後若しくは吸引減圧しながら、射出スリーブ内に注湯した溶湯を前記プランジャチップで金型キャビティ内に射出充填して鋳造する真空ダイカスト法において、
前記環状シール材のシール性能を検出することにより、前記プランジャチップと射出スリーブとの隙間におけるシールの状態を維持するようにしたことを特徴とする真空ダイカスト法。
【請求項2】
射出スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填中若しくは充填直後または充填中から充填後の間に、前記環状シール材で気密状にシールされた前記プランジャチップと射出スリーブとの隙間空間における圧力変化を観測することにより前記環状シール材のシール性能を検出することを特徴とした請求項1に記載の真空ダイカスト法。
【請求項3】
射出スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填し鋳造した製品を金型キャビティから取り出してからプランジャチップを後退させるまでの間、前記環状シール材で気密状にシールされた前記プランジャチップと射出スリーブとの隙間空間を加圧若しくは減圧して前記環状シール材間の空間における圧力変化を観測することにより前記環状シール材のシール性能を検出することを特徴とした請求項1に記載の真空ダイカスト法。
【請求項4】
プランジャロッド又はプランジャチップの外周に射出スリーブの内周面と摺接する環状シール材を装着することにより当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールし、型閉め後に金型キャビティ内の外気を吸引減圧した後若しくは吸引減圧しながら、射出スリーブ内に注湯した溶湯を前記プランジャチップで金型キャビティ内に射出充填して鋳造する真空ダイカスト装置であって、
プランジャロッド又はプランジャチップの外周に前記環状シール材を1つ以上装着すると共に、プランジャロッド又はプランジャチップに上記環状シール材に対してキャビティ側にシール状況監視用穴を開口形成し、前記プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器を連通させる通路を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて、前記環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出することを特徴とした真空ダイカスト装置。
【請求項5】
プランジャロッド又はプランジャチップの外周に射出スリーブの内周面と摺接する環状シール材を装着することにより当該環状シール材から金型キャビティに至る射出スリーブの内部空間を気密状にシールし、型閉め後に金型キャビティ内の外気を吸引減圧した後若しくは吸引減圧しながら、射出スリーブ内に注湯した溶湯を前記プランジャチップで金型キャビティ内に射出充填して鋳造する真空ダイカスト装置であって、
前記プランジャロッド又はプランジャチップの外周に前記環状シール材を2つ以上装着し、該環状シール材と環状シール材との間位置にシール状況監視用穴を開口形成し、前記プランジャロッドの内部又は側面には上記シール状況監視用穴と外部に設置されたシール状況計測器を連通させる通路を形成し、該通路にシール状況計測器を接続せしめて前記2つの環状シール材と射出スリーブで構成される内部空間おける圧力変化を計測することにより当該環状シール材のシール性能を検出することを特徴とした真空ダイカスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−181626(P2006−181626A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380824(P2004−380824)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)