説明

真空バルブ

【課題】 弁体を弁座に均一なシール力で接触させることができるシール性に勝れた真空バルブを得る。
【解決手段】 2つの主ポート11,12を結ぶ流路中の弁座14を開閉するポペット式の弁体15を、連結機構3を介して弁シャフト17に取り付けると共に、この弁シャフト17にピストン42を取り付け、このピストン42で上記弁体15を開閉操作するようにした真空バルブにおいて、上記連結機構3により弁体15に、弁シャフト17の軸線に対して傾斜する方向の自由度を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置などの理化学機械においてワークに化学的処理を施すための真空チャンバーの減圧などに使用する真空バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置において、プロセスガスを用いて半導体基板上に成膜処理を施す場合、真空チャンバ内でその処理が行われる。その際、成膜処理に先立つ真空チャンバ内の減圧や、成膜反応中の該真空チャンバ内の真空圧の調整等に、例えば特許文献1に示すような真空バルブが使用される。
【0003】
この種の真空バルブは、一般に、真空チャンバと真空ポンプとに接続される2つの主ポートを有していて、これらの主ポートを結ぶ流路中の弁座をポペット式の弁体で開閉するように構成されている。また、上記弁体は弁シャフトの先端に取り付けられ、該弁シャフトの後端部にはピストンが取り付けられ、このピストンで弁シャフトを駆動することにより上記弁体が開閉操作されるようになっている。
【特許文献1】特開平8−285132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の真空バルブにおいて重要なことは、反応性の強い危険なプロセスガスを使用するため、閉弁時即ち弁体で弁座を閉じたときのガス漏れを極力防止できるようにするということである。
ところが、バルブ製造時の各部品の加工精度や組立精度との関係で、上記弁シャフトと弁体との間に微小な傾き(ぶれ)が発生することがあり、このような傾きが発生すると、閉弁時に弁体が弁座に片当たりし、弁座全周にわたって均一なシール力が得られない場合があり、このような場合にガス漏れを生じ易い。
【0005】
そこで本発明の目的は、閉弁時に弁体を弁座全周にわたって常に均一なシール力で接触させることができる、シール性に勝れた真空バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の真空バルブは、2つの主ポート間の流路を開閉するポペット式の弁体を備えた主弁部と、上記弁体を操作するピストンを備えたシリンダ部とからなっていて、上記主弁部が、上記2つの主ポートがそれぞれ流路孔を通じて連通する弁室と、該弁室内において一方の主ポートに通じる流路孔の回りを取り囲むように位置する弁座と、該弁座を開閉するように弁室内に配設された上記弁体と、一端がこの弁体に連結機構を介して連結されると共に、他端が上記シリンダ部のピストンに連結された弁シャフトと、該弁シャフトに取り付けられたばね受けと、該ばね受けを介して上記弁体に弁座を閉じる方向のばね力を作用させる復帰ばねとを有し、上記弁体には、上記連結機構により、上記弁シャフトの軸線に対して傾斜する方向の自由度が付与されている。
【0007】
本発明において好ましくは、上記連結機構が、弁体に取り付けられた円筒状の連結金具と、上記弁シャフトの先端に形成されて該連結金具内に嵌合する円柱状の連結軸部と、これらの連結金具と連結軸部とを直径方向に貫通する連結孔と、該連結孔内に挿入されてこれらの連結軸部と連結金具とを連結する連結ピンとを有していて、上記連結金具と連結軸部との間、及び該連結軸部における連結孔と連結ピンとの間にそれぞれ、自由度を付与するためのクリアランスが形成されていることである。
【0008】
また、本発明においては、上記弁シャフトにおける上記連結軸部に近接する位置の外周に、円環状をしたストッパリングが取り付けられ、また、上記ばね受けが中央孔を有していて、該中央孔により上記弁シャフトに軸線方向に移動自在なるように嵌め付けられ、上記ストッパリングに係止する位置が該ばね受けの弁シャフトに対する取付位置であることが望ましい。
【0009】
さらに、本発明において好ましくは、上記ばね受けが、上記連結ピンの脱落を防止する安全部材を兼ねていて、上記ストッパリングに係止する取付位置において上記連結ピンの軸方向両端面を取り囲むことにより、該連結ピンの軸方向への移動を規制するように構成されていることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁体が弁シャフトに傾斜方向の自由度を持って取り付けられているため、これらの弁シャフトと弁体との間の傾きがこの自由度によって吸収され、閉弁時に弁体が弁座全周に常に均一なシート力で接触することができ、この結果、ガス漏れが発生しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図3は本発明に係る真空バルブの一実施形態を示すものである。このバルブは、流路中の弁座14を開閉するポペット式の弁体15を備えた主弁部1と、上記弁体15を操作するシリンダ部2とを有していて、これらの主弁部1とシリンダ部2とが、バルブの中心軸線Lに沿って直列に結合されている。
【0012】
上記主弁部1は、実質的に角柱状又は円柱状をした中空のバルブハウジング10を有している。このバルブハウジング10は、ステンレスなどの高耐食性素材からなるもので、真空チャンバー及び真空ポンプの一方に接続するための第1主ポート11と他方に接続するための第2主ポート12とを有している。上記第1主ポート11は、バルブハウジング10の軸線L方向の一端側に該軸線Lに沿う方向に開口し、第2主ポート12は、バルブハウジング10の側面に上記軸線Lと直交する方向に開口している。
【0013】
上記バルブハウジング10の内部には、上記第1主ポート11に通じる第1流路孔11aと、上記第2主ポート12に通じる第2流路孔12aと、これらの流路孔11a,12aが連通する弁室13とが形成されていて、上記第1流路孔11aの端部の該弁室13内に開口する部分に、その開口部を同心状に取り囲む円環状の上記弁座14が形成されている。また、上記弁室13の内部には、この弁座14を開閉するポペット式の上記弁体15が、該弁座14と同心状に配設されている。この弁体15は、円形のディスク形をしていて、その先端面15aの外周端寄りの位置に、上記弁座14に接離する円環形をした合成ゴムなどの弾性部材からなる弁シール部材16が取り付けられている。
【0014】
上記弁体15の背面中央部には、円柱状をした弁シャフト17の下端部が、傾き方向の自由度を付与するための連結機構3を介して連結されている。この弁シャフト17は、バルブハウジング10の内部を上記軸線Lに沿って延びていて、主弁部1とシリンダ部2とを区画する隔壁18の中央部に取り付けられた円筒状のシャフトガイド19の内部を摺動自在に貫通し、上端部が上記シリンダ部2のピストン室41内に延出してピストン42に連結されている。図中20は、上記弁シャフト17とシャフトガイド19との間をシールするシール部材、21は該弁シャフト17の摺動をガイドするスクレーパ兼用のウエアリングである。
【0015】
上記連結機構3による弁体15と弁シャフト17との連結の態様は次の通りである。即ち、上記弁体15の背面中央部には、内周面に雌ねじ22aを備えた円形の凹部22が形成されていて、この凹部22に連結金具23が取り付けられている。この連結金具23は円筒形をしていて、基端部外周面に雄ねじ23aを有し、この雄ねじ23aを上記凹部22の雌ねじ22aにねじ付けることにより、先端部を弁体15の背面側に突出させた状態で取り外し可能に取り付けられている。一方、上記弁シャフト17の下端部には、他の部分よりも小径をなす円柱状の連結軸部24が形成され、この連結軸部24が上記連結金具23内に嵌合されると共に、これらの連結金具23と連結軸部24とを直径方向に貫通する連結孔25a,25bが形成され、この連結孔25a,25b内に連結ピン26を挿入することにより、これらの連結軸部24と連結金具23とが相互に連結されている。
【0016】
そして、上記連結金具23の内径を連結軸部24の外径よりもクリアランス27a分だけ大きく形成すると共に、該連結軸部24における連結孔25aの内径を連結ピン26の外径よりもクリアランス27b分だけ大きく形成することにより、上記連結金具23と連結軸部24との間及び連結孔25a,25bと連結ピン26との間にそれぞれ形成される上記クリアランス27a,27bにより、上記弁体15に、上記弁シャフト17の軸線Lに対して傾斜する方向の自由度が付与されている。
【0017】
上記連結金具23は、上記弁シャフト17の連結軸部24に連結ピン26で結合した状態のまま、弁体15に対して相対的に回転させることにより、上記弁シャフト17と共に該弁体15から取り外すことができる。また、この連結金具23は、上記連結ピン26を抜き取ることにより、上記弁シャフト17の連結軸部24から取り外すことができる。
【0018】
また、上記弁シャフト17には、ばね受け30が取り付けられると共に、このばね受け30と上記隔壁18との間にコイル状の復帰ばね31が設けられ、この復帰ばね31のばね力が、上記ばね受け30を介して上記弁体15に、上記弁座14を閉じる方向に常時作用している。
【0019】
上記ばね受け30は円環状をなすもので、中央孔32を有し、この中央孔32で上記弁シャフト17にその軸線L方向に移動自在なるように嵌め付けられ、該弁シャフト17に取り付けられたストッパリング33に中央孔32の孔縁32aが係止することにより、決められた取付位置を占めるようになっている。上記ストッパリング33は、金属などの硬質素材で円環状に形成されていて、弁シャフト17の先端の上記連結軸部24に近接する位置の外周に形成された取付溝34内に固定的に嵌め付けられ、必要であれば弁シャフト17から取り外せるようになっている。そして、弁シャフト17からこのストッパリング33を取り外すと共に、上記連結ピン26を抜いて連結金具23を取り外すことにより、上記ばね受け30を該弁シャフト17から簡単に抜き取ることができる。
このように、上記ばね受け30を弁シャフト17にストッパリング33で取り付ける方法は、ねじ込み方式に比べて構成が簡単で、組立やメンテナンス時の分解も容易であり、ねじの緩みといった問題も生じることがない。
【0020】
上記ばね受け30はまた、上記連結機構3における連結ピン26の脱落を防止するための安全部材と、上記弁体15が弁座14を全開した時の最大開放位置を規定するストッパとを兼ねるものである。
即ち、上記ばね受け30の中心孔32の一部には、拡大孔部32bが形成されていて、この拡大孔部32bが、上記ばね受け30が上記ストッパリング33に係止する取付位置にあるときに上記連結ピン26の軸方向両端面の少なくとも一部を取り囲み、連結ピン26の軸方向への移動を規制するようになっており、これにより、該ばね受け30が安全部材として機能するように構成されている。
また、上記弁シャフト17が上昇して弁体15が弁座14を全開した時、上記ばね受け30が上記シャフトガイド19の下端に当接して弁シャフト17即ち弁体15をその位置に停止させることにより、ストッパとして機能するようになっている。
【0021】
さらに、上記弁室13内には、上記弁シャフト17とばね受け30及び復帰ばね31の回りを取り囲むように伸縮自在のベローズ35が設けられている。このベローズ35は、金属等の耐食性素材で形成されたもので、その一端は上記弁体15の背面に結合され、他端は円環状の支持金具36に結合され、この支持金具36が上記バルブハウジング10と隔壁18との間に挟持されている。このベローズ35は、上記弁体15の開閉に伴って伸縮するが、その伸縮を可能にするため、該ベローズ35の内側空間は、上記隔壁18及びシリンダハウジング40に形成された呼吸孔37を通じて外部に開放されている。
【0022】
そして上記ベローズ35は、図3に示すように、その両端に結合された上記弁体15及び支持金具36と共にベローズアセンブリ4を構成しており、反応生成物の付着や腐食等によって上記ベローズ35を交換する必要が生じた場合には、弁体15から上記連結金具23を取り外すと共に、支持金具36をバルブハウジング10と隔壁18との間から取り外すことにより、このベローズアセンブリ4を簡単に取り外すことができるようになっている。
【0023】
上記シリンダ部2は、上記バルブハウジング10に同軸状に結合された上記シリンダハウジング40を有している。このシリンダハウジング40は、上記バルブハウジング10と同じ四角柱状又は円柱状をしていて、内部に上記ピストン室41を有し、このピストン室41内に上記ピストン42がシール部材43を介して軸線方向に摺動自在に収容され、該ピストン42に上記弁シャフト17が連結されている。図中44は、これらのピストン42と弁シャフト17との間をシールするシール部材である。
【0024】
上記ピストン42と上記隔壁18との間には圧力室45が形成され、該圧力室45が、上記シリンダハウジング40の側面に開口するパイロットポート46に連通している。また、上記ピストン42の背面側の空間47は蓋板48で覆われているが、該蓋板48に形成された開口48aを通じて外部に開放している。
【0025】
そして、上記パイロットポート46を外部に開放して上記圧力室45を排気状態にすると、図1の左半部に示すように、復帰ばね31のばね力によって弁体15が弁座14に押し付けられ、弁シール部材16によって該弁座14が閉鎖される。このとき、上記弁体15には、連結機構3によって傾斜方向の自由度が与えられているため、該弁体15と弁シャフト17との間の傾きはこの自由度によって吸収され、該弁体15即ち弁シール部材16が弁座14に全周にわたって均一な力で押し付けられることになる。このため、該弁座が確実にシールされてガス漏れが発生しにくい。
【0026】
一方、上記パイロットポート46から圧力室45にパイロットエアを供給すると、図1の右半部に示すように、ピストン42が上昇することによって弁シャフト17及び弁体15が引き上げられ、弁シール部材16が弁座14から離れて該弁座14が開放する。そして、上記ばね受け30が上記シャフトガイド19の下端に当接することにより、上記弁シャフト17即ち弁体15がその位置に停止して最大開放位置が規定される。
【0027】
上記ピストン42は、ストッパリング50と係止金具51とによって上記弁シャフト17に取り付けられている。即ち、該弁シャフト17には、上記ピストン42の背面側におけるシャフト端部寄りの位置に、円環状をした上記係止金具51が該弁シャフト17に沿って移動自在なるように嵌め付けられると共に、該係止金具51よりもシャフト端部寄りの位置に、金属などの硬質素材からなる円環状の上記ストッパリング50が固定的に嵌着され、このストッパリング50に係止する上記係止金具51にピストン42の背面を当接させて係止させることにより、該ピストン42が弁シャフト17に取り付けられている。従って、上記ストッパリング50を取り外すことにより、上記係止金具51及びピストン42を弁シャフト17から抜き取ることができる。
このようなピストン42の弁シャフト17に対する取付構造は、ナットで固定する方法に比べて簡単で、組立やメンテナンス時の分解が容易であり、動作時のねじの緩みも生じにくいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る真空バルブの実施形態を示す断面図であって、左半部は全閉状態を示し、右半部は全開状態を示すものである。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】ベローズアセンブリ4の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 主弁部
2 シリンダ部
3 連結機構
11 第1主ポート
12 第2主ポート
13 弁室
14 弁座
15 弁体
17 弁シャフト
23 連結金具
24 連結軸部
25a,25b 連結孔
26 連結ピン
27a,27b クリアランス
30 ばね受け
31 復帰ばね
32 中央孔
33 ストッパリング
42 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主ポート間の流路を開閉するポペット式の弁体を備えた主弁部と、上記弁体を操作するピストンを備えたシリンダ部とからなり、
上記主弁部は、上記2つの主ポートがそれぞれ流路孔を通じて連通する弁室と、該弁室内において一方の主ポートに通じる流路孔の回りを取り囲むように位置する弁座と、該弁座を開閉するように弁室内に配設された上記弁体と、一端がこの弁体に連結機構を介して連結されると共に、他端が上記シリンダ部のピストンに連結された弁シャフトと、該弁シャフトに取り付けられたばね受けと、該ばね受けを介して上記弁体に弁座を閉じる方向のばね力を作用させる復帰ばねとを有し、
上記弁体には、上記連結機構により、上記弁シャフトの軸線に対して傾斜する方向の自由度が付与されている、
ことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
上記連結機構が、上記弁体に取り付けられた円筒状の連結金具と、上記弁シャフトの先端に形成されて該連結金具内に嵌合する円柱状の連結軸部と、これらの連結金具と連結軸部とを直径方向に貫通する連結孔と、該連結孔内に挿入されてこれらの連結軸部と連結金具とを連結する連結ピンとを有していて、上記連結金具と連結軸部との間、及び該連結軸部における連結孔と連結ピンとの間にそれぞれ、自由度を付与するためのクリアランスが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
上記弁シャフトにおける上記連結軸部に近接する位置の外周に、円環状をしたストッパリングが取り付けられ、また、上記ばね受けが中央孔を有していて、該中央孔により上記弁シャフトに軸線方向に移動自在なるように嵌め付けられ、上記ストッパリングに係止する位置が該ばね受けの弁シャフトに対する取付位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
上記ばね受けが、上記連結ピンの脱落を防止する安全部材を兼ねていて、上記ストッパリングに係止する取付位置において上記連結ピンの軸方向両端面を取り囲むことにより、該連結ピンの軸方向への移動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−329367(P2006−329367A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156121(P2005−156121)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】