説明

真空ポンプを清掃する方法

【解決手段】少なくとも1つのポンプロータ(14)を有するポンプ室(12)を備えた真空ポンプ(10)を清掃するための効果的な方法は、ステップa) ポンプ室(12)にクリーニング液(28)を満たす、ステップb) クリーニング液(28)をポンプ室(12)内で分散させる、ステップc) クリーニング液(28)を用いて不純物を溶解する、及び、ステップd) クリーニング液(28)をポンプ室(12)から排出する、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポンプロータを有するポンプ室を備えた真空ポンプを清掃する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような真空ポンプの様々な適用において、真空ポンプの動作中に形成されて、吸込室(ポンプ室)に蓄積する不純物の問題がある。このような適用として、例えばMOCVD 処理、LPCVD 処理、PECvVD処理、PVD 処理又は太陽電池モジュールの積層化処理がある。これらの処理は、処理ガスが用いられる処理であるか、又は、圧力/温度条件により真空ポンプ内で分解するか若しくは互いに反応する反応生成物が処理室で生成される処理である。そのため、層になって成長するか又はダストとして存在する粒子が形成される。
【0003】
真空ポンプのこのような適用として、例えば、真空ポンプを使用した、太陽電池の製造のための透明導電性酸化物層(TCO 層)の堆積がある。TCO 層は、例えば、水とジエチル亜鉛との組み合わせから生成される。水及びジエチル亜鉛は、大気圧で相当激しく反応する場合がある。数ミリバールの低圧では、反応は著しく遅くなる。従って、TCO 層の生成では、両方の物質を強いて遅く反応させるために処理室を真空にして反応させる。水とジエチル亜鉛との反応の副生成物が、ポンプハウジング中及びロータ上での蓄積を生じさせるダスト粒子の形態の不純物である。このような反応は、ポンプで生じる場合もある。このような蓄積により、ポンプの最大作動時間が低下する。また、真空ポンプの清掃は、手間がかかり多大な時間を必要とし、通常ポンプ全体の分解を必要とする。
【0004】
独国特許出願公開第102004063058号明細書から、真空スクリューポンプを清掃するための洗浄方法が公知であり、この方法では、真空スクリューポンプは、定格回転速度で回転しながら、洗浄液及び洗浄ガスの混合物であるクリーニング用流体を用いて洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004063058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、真空ポンプを分解する又は真空ポンプを装置から外す必要性なく真空ポンプを清掃するための簡単な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る方法は、請求項1の特徴によって定義されている。
【0008】
ポンプ室は、例えば、酸、塩基、溶剤又は軟化剤の形態のクリーニング用流体で満たされる。ロータを動かすことにより、クリーニング液が、ポンプ室の達するのが困難な部分にも達することが可能であるように、クリーニング液がポンプ室内で分散される。ロータを動かすことによって、クリーニング液と溶解された不純物との混合物が生成される。この混合物は、その後ポンプ室から排出される。クリーニング液による不純物の溶解は、真空ポンプの最大作動時間が増加され得る簡単な清掃方法を意味している。この清掃方法を用いると、不純物の蓄積による真空ポンプの詰まりと、ひいては真空ポンプの損傷、又は破壊をも回避され得る。清掃方法は、従来の簡単な洗浄方法よりも効率的である。清掃処理の継続時間は従来の方法と比較して低減され、それにより、真空ポンプの利用可能な有効時間が増加する。
【0009】
真空ポンプが定格回転速度で作動されている間に洗浄流体を用いる公知の洗浄方法と比較すると、洗浄処理自体とは無関係に、クリーニング液をポンプ室に満たして、クリーニング液をポンプ室に分散することにより、不純物が更に溶解され得ることが利点である。これは、特には、真空ポンプが定格回転速度で回転している間に清掃処理が行なわれない場合に有効である。このために、ポンプ室入口及びポンプ室出口を閉じる必要があり、ポンプ室はクリーニング液で完全にあふれさせる必要がある。清掃処理の後、真空ポンプは、例えば公知の洗浄方法を用いて洗浄され得る。
【0010】
クリーニング液の排出の後、ポンプ室は、洗浄液、例えば水を用いて洗浄されて、その後、真空ポンプが再始動される前に乾燥される。クリーニング液は、酸性クリーニング溶液であってもよい。この酸性クリーニング溶液は、亜鉛を含有する堆積物を溶解する。
【0011】
清掃方法の効率を高めるために、有利にはポンプ室にクリーニング液が補充されて、新鮮なクリーニング液が、未だ残っている堆積物に達して堆積物を溶解するように、クリーニング液はロータの動作によってポンプ室内に分散される。溶解された堆積物によりクリーニング液が使い果たされるので、クリーニング液を繰り返し補充してロータを動かすことが、効率を向上させるために必要であり得る。
【0012】
クリーニング液をポンプ室に満たす前に、真空ポンプの作動を停止すべきである。その後、ポンプ室入口及びポンプ室出口を閉じる。特には、生じ得る二次的ガスを清掃処理中にポンプ室から排出することが有利である。二次的ガスは、例えば窒素であり、窒素は、ポンプ室とポンプロータのための隣り合う伝動区画との間のシールガス「軸のシールパージ」(seal shaft purge)として、又は、圧縮ガスの凝縮を防ぐことを意図したガスバラストとして用いられる。例えば、ガスバラストの供給を停止して、シールガスの流量を減らす。通気のために、脱気開口部が、ポンプ室の上部分に設けられることが可能であり、脱気開口部を介して、二次的ガスがポンプ室から大気に上方に抜けることが可能である。二次的ガスは、クリーニング液の均一な分散を妨げる場合があり、それにより、清掃処理の効率を低下させる。脱気開口部は、着脱可能なストッパを備えてもよい。二次的ガスの放出のために、脱気パイプラインが、脱気開口部に設けられてもよく、脱気パイプラインを介して、抜け出る二次的ガスが大気に導かれる。脱気パイプラインは、ポンプ室出口のための排出ガスラインと接続されていることが好ましい。
【0013】
酸性クリーニング溶液が使用される場合、効果的な清掃のためには、クリーニング溶液の酸性度を十分高くすべきである一方、真空ポンプの構成要素へのあらゆる不必要な作用を回避するためには十分低くすべきである。このような特性は、2%乃至15%間の酸性度で付与される。特に有利な酸性度は約10%である。クリーニング液での使用に有利な酸はクエン酸である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ポンプ室及びポンプロータを備えた真空ポンプを示す断面図である。
【図2】図1の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0016】
図示された真空ポンプ10は、ロータ14が軸方向の圧縮のために支持されているポンプ室12(吸込室)を備えている。ロータ14は、ポンプ室12の外側に配置されて伝動区画16に設けられた伝動装置によって駆動される。ポンプ室12はハウジング18によって囲まれている。ハウジング18は、ポンプ室入口20及びポンプ室出口22を有している。ロータ14の軸15が、ポンプ室12からハウジング18と伝動区画16との間の通路17を介して伝動区画16内を通っている。通路17は、図2に詳細に示されている。
【0017】
脱気開口部24がハウジング18の上部に設けられており、脱気開口部24に脱気パイプライン26が設けられている。脱気パイプライン26は、ポンプ室出口22と接続された排出ガスライン30と接続されている。
【0018】
真空ポンプを水蒸気とジエチル亜鉛とを用いて作動すると、圧力が上昇するにつれて、水蒸気とジエチル亜鉛とが反応し、亜鉛若しくは亜鉛酸化物の形態の金属堆積物又は酸化堆積物がポンプ室に形成される。これらの不純物を溶解するために、まず、真空ポンプ10の作動を停止して、ポンプ室出口22に加えてポンプ室入口20も閉じる。その後、ポンプ室12を、クエン酸を含有するクリーニング溶液の形態のクリーニング液28であふれさせる。その後のロータ14の動作により、クリーニング液28が均一に分散され、従ってポンプ室12の内面全てに達し、特には、ポンプ及びロータの達するのが困難な部分にも達する。クリーニング液28は堆積物を溶解し、堆積物を含有する溶液を形成する。クリーニング液28を分散させるために新鮮なクリーニング液28を繰り返し補充し、ロータ14を動かすことによって、依然として新鮮なクリーニング液28が、残っている不純物に達することが可能であり、更に不純物を溶解することが可能である。
【0019】
二次的ガスの蓄積によりクリーニング溶液が堆積物に達することができないことを防止するために、二次的ガスは、脱気開口部24を介して排出される。脱気開口部24がハウジング18の上部に形成されているので、二次的ガスは、クリーニング溶液を通って上方に上昇する気泡の形態で脱気開口部24を介して抜けることが可能である。脱気パイプライン26は、脱気開口部24に設けられており、抜け出た二次的ガスを大気に放出する。図1に図示された実施形態では、脱気パイプライン26は、ポンプ室出口22と接続された排気ガスライン30に導かれている。
【0020】
窒素が、典型的な二次的ガスである。例えば、窒素は、真空ポンプ10の作動中に水蒸気の凝縮を防ぐためのガスバラストとして用いられる。不純物が真空ポンプ10から伝動区画16内に入り込むことがないように、またクリーニング液が伝動区画16に漏れることがないように、窒素は、伝動区画16からポンプ室12内へのロータ14の軸15のための通路17をシールするためのシールガスとして更に用いられる。これに関連して、シールガスは、シールガス供給ライン32を介して軸封部36の隙間34に供給されて、隙間34からポンプ室12内に流れ込む。シールガスとして窒素を用いることにより、シール効果を有するガスが、通路17の出口側38の領域に蓄積されて、クリーニング液28が、シールされるべき領域内に入り込むことを防止することが可能である。シールガスが出口側38の領域を越えて蓄積し、清掃されるべき表面を覆うことを防止するために、通気口が必要である。隙間34から漏れるシールガスが、ポンプ室12内のクリーニング液28中を上昇し、通路17の出口側38の上方の領域に蓄積するので、この通気口は、通路17の出口側38の上方に脱気開口部24を設けることにより実現される。シールガスは、脱気開口部24を通って放出される。
【0021】
不純物がクリーニング溶液中に溶解された後、クリーニング液28は、溶解された不純物と共にポンプ室12から排出される。その後、ポンプ室12は浄水で洗浄されて、その後乾燥される。ここで、特には、先行技術から公知である洗浄方法を用いることが可能である。乾燥の後、清掃処理を終了して、真空ポンプ10は再始動され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポンプロータ(14)を有するポンプ室(12)を備えた真空ポンプ(10)を清掃する方法において、
ステップa) 前記ポンプ室(12)にクリーニング液(28)を満たす、
ステップb) クリーニング液(28)を前記ポンプ室(12)内で分散させる、
ステップc) クリーニング液(28)を用いて不純物を溶解する、及び
ステップd) クリーニング液(28)を前記ポンプ室(12)から排出する
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップe) 前記ポンプ室(12)を洗浄液を用いて洗浄する、及び
ステップf) 前記ポンプ室(12)を乾燥させる
を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クリーニング液(28)は酸性クリーニング溶液であり、及び/又は前記洗浄液は水であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ロータ(14)を動かすことにより、クリーニング液を前記ポンプ室(12)内で分散させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ステップa)を実行する前に、前記真空ポンプの作動を停止する、及び/又はポンプ室入口(20)及びポンプ室出口(22)を閉じることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ステップa)乃至前記ステップc)を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記クリーニング液(28)は、クエン酸を含有しており、約2%乃至15%の酸性度を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記酸性度は10%であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧縮ガスの凝縮を防止するガスバラストの前記ポンプ室(12)への供給を停止することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ポンプ室(12)と前記ポンプロータ(14)のための隣り合う伝動区画との間のシールガス領域が狭いことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
脱気開口部(24)が前記ポンプ室(12)の上部に設けられており、それにより、除去されるべき不純物とクリーニング液(28)とが反応することを妨げるガスが、前記ポンプ室(12)から前記脱気開口部(24)を通って抜けることが可能としてあることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記脱気開口部(24)は、前記伝動区画(16)と前記ポンプ室(12)との間の、前記ポンプロータ(14)の軸のための通路(17)の出口側(38)の上方領域に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脱気パイプライン(26)が前記脱気開口部(24)に設けられており、漏出ガスが前記脱気パイプライン(26)を通って大気中に導かれることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
脱気パイプライン(26)が、前記脱気開口部(24)に設けられており、前記ポンプ室出口(22)に接続された排出ガスライン(30)に通じていることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−506765(P2012−506765A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532664(P2011−532664)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064122
【国際公開番号】WO2010/049407
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508206070)オーリコン レイボルド バキューム ゲーエムベーハー (43)
【出願人】(511102701)オーリコン ソラー アーゲー,トルーバッハ (1)
【Fターム(参考)】