説明

真空保存容器

【課題】作業者が蓋を押圧する労力を要せず、フリーハンドで効率よく吸引作業を行える真空保存容器を提供する。
【解決手段】上方開口状の容器体1と、容器体1を閉塞して密閉空間9を形成する弁8を有する蓋4とを備え、吸引装置2によって密閉空間9のエアーを吸引し真空状態に減圧して真空状態を保持する真空保存容器に於て、蓋4には、外環状に突設された鉛直壁部5と、鉛直壁部5と平行状に垂設された内環状の支持壁14によって、容器体1の上端周縁部13が遊嵌状に差込可能な下方開口状の嵌着溝6が形成され、嵌着溝6には、環状の弾性パッキン3を嵌着し、弾性パッキン3が、支持壁14の外周面14Aに接触するパッキン本体部10と、上端周縁部13の内面13Aに密接して密閉空間9を初期密封するための薄肉舌片部11と、真空状態への減圧に伴って蓋4が容器体1に対して接近下降して圧縮変形し上端周縁部13の上端面13Bに密着する肉厚ブロック部12とを、一体に具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品や菓子等を保存するための密閉容器に於て、真空ポンプを備えた吸引装置によって、容器内部のエアを吸引して真空状態にできる真空保存容器が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された真空保存容器は、吸引装置として手動のハンドポンプを用い、ハンドポンプによって蓋を上方から容器に押し付けて容器と蓋を密着させつつ、容器内部のエアーを吸引する作業を行っていた。
容器と蓋を密着させる方法としては、上記の方法以外に、特許文献2記載のように、ネジ式の蓋を回転させて容器に締付ける等の方法や、特許文献3記載のように、ストッパーを利用する等の方法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−199681号公報
【特許文献2】特開2001−46252号公報
【特許文献3】特開2009−255970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の真空保存容器は、容器内部を真空状態とする際に、ハンドポンプにて容器内部のエアーを吸引する作業の最中、蓋を容器に押圧し続ける必要がある為、余分な労力を要するという欠点があった。
また、特許文献2記載の真空保存容器は、ネジ式の蓋を回転させて着脱する作業に手間が掛かり非常に面倒であった。
また、特許文献3記載の真空保存容器は、ストッパーの開閉する作業に手間がかかり面倒であった。
【0005】
そこで、本発明は、作業者が蓋を押圧する労力を要せず、フリーハンドで迅速かつ簡単に吸引作業を行える真空保存容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る真空保存容器は、上方開口状の容器体と、該容器体を閉塞して密閉空間を形成する弁を有する蓋とを備え、吸引装置によって上記密閉空間のエアーを吸引し真空状態に減圧して真空状態を保持する真空保存容器に於て、上記蓋には、外環状に突設された鉛直壁部と、該鉛直壁部と平行状に垂設された内環状の支持壁によって、上記容器体の上端周縁部が遊嵌状に差込可能な下方開口状の嵌着溝が形成され、上記嵌着溝には、環状の弾性パッキンを嵌着し、該弾性パッキンが、上記支持壁の外周面に接触するパッキン本体部と、上記上端周縁部の内面に密接して上記密閉空間を初期密封するための薄肉舌片部と、真空状態への減圧に伴って上記蓋が上記容器体に対して接近下降して圧縮変形し上記上端周縁部の上端面に密着する肉厚ブロック部とを、一体に具備するものである。
【0007】
また、上記嵌着溝に上記容器体の上端周縁部が差込まれる前の未施蓋状態に於て、上記薄肉舌片部は、略水平突出状に形成され、かつ、上記嵌着溝の幅寸法に対して、上記薄肉舌片部の突出長さ寸法を、60%〜90%に設定したものである。
また、上記嵌着溝に上記容器体の上端周縁部が差込まれた後の施蓋状態に於て、上記嵌着溝の幅寸法に対して、上記上端周縁部と上記支持壁との間隙寸法を、35%〜55%に設定したものである。
【0008】
また、上記未施蓋状態下で、上記略水平突出状の薄肉舌片部が、水平面に対して成す角度を、5°〜20°に設定したものである。
また、上記弾性パッキンは、上記パッキン本体部の下端部に、上記支持壁の外周面に圧接する低突隆部を設けているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の真空保存容器によれば、吸引装置による吸引開始前から初期吸引までの低真空状態の段階に於て、薄肉舌片部によって初期密封され、引き続いて吸引されることで、蓋が大気圧を受けて自動的に下降して、肉厚ブロック部が容器体の上端周縁部に密着し、肉厚ブロック部をもって高真空の最終密封状態(真空状態)に至る。言い換えると、容器の内部を所望の真空状態へと減圧するまでの初期吸引段階から吸引完了段階までの全工程に於て、作業者が蓋を容器体に押圧せずに済み、しかも、容器内部の真空状態を確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る真空保存容器の実施の一形態を示した斜視図である。
【図2】本発明の真空保存容器の上部に吸引装置を載置した使用状態を示した作用説明図である。
【図3】自由状態の弾性パッキンを示した拡大断面図である。
【図4】閉蓋前(未施蓋状態)の真空保存容器を示した要部断面図である。
【図5】閉蓋後(施蓋状態)の真空保存容器を示した要部断面図である。
【図6】真空状態の真空保存容器を示した要部断面図である。
【図7】未施蓋状態の弾性パッキンを示した要部拡大断面図である。
【図8】施蓋状態の弾性パッキンを示した要部拡大断面図である。
【図9】初期密封状態の弾性パッキンを示した要部拡大断面図である。
【図10】最終密封状態の弾性パッキンを示した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1と図2に示すように、本発明の真空保存容器は、食料品や菓子等の保存用容器や漬物の製造(保存)用容器に用いられるものである。真空保存容器Zは、上方開口状の容器体1と、容器体1を閉塞して密閉空間9を形成する蓋4とを備え、この蓋4には弁8が設けられ、また、吸引装置2によって密閉空間9のエアーを吸引し真空状態に減圧して真空状態を保持するように構成されている。
図3と、図4〜図6に示すように、蓋4には、外環状に突設された鉛直壁部5と、鉛直壁部5と平行状に垂設された内環状の支持壁14によって、容器体1の上端周縁部13が遊嵌状に差込可能な下方開口状の嵌着溝6が形成されている。
嵌着溝6には、環状の弾性パッキン3を嵌着し、弾性パッキン3が、支持壁14の外周面14Aに接触するパッキン本体部10と、上端周縁部13の内面13Aに密接して初期吸引段階の密閉空間9を密封するための薄肉舌片部11と、真空状態への減圧に伴って蓋4が容器体1に対して接近下降して圧縮変形し上端周縁部13の上端面13Bに密着する肉厚ブロック部12とを、一体に具備している。
【0012】
容器体1は、ガラス又は合成樹脂等から成り、透明で、かつ、剛性の高い成型品であって、平面視円型乃至楕円型、又は、角型等に形成され、菓子、生鮮品、乾物(例えば、海苔、茶葉等)、漬物、カレー等の食料品、又は、コーヒー、紅茶、お茶、水等の飲料、又は、砂糖、塩、醤油、ソース等の調味料、その他種々の保存対象品を収納できるように上方を広く開口している。
蓋4は、ABS強化プラスチック樹脂や金属等から成り、容器体1の開口部に上方から置いて軽く押えるのみで施蓋が可能である。蓋4は、その外周部に水平状の天井壁部18を備え、天井壁部18の外端部に鉛直壁部5を鉛直下向きに連設し、さらに、天井壁部18の内端寄りに支持壁14を垂設し、所定の幅寸法Wを有する嵌着溝6を形成している。
弾性パッキン3は、シリコンゴムから成り、容器体1の開口部の全体形状(蓋4の嵌着溝6の形状)に対応するように、前述の円型乃至楕円型、又は、角型等に成型されている。弾性パッキン3は、肉厚ブロック部12が嵌着溝6の上方奥部に嵌め込まれ、パッキン本体部10が支持壁14を外嵌状としてゴムバンドのように締め付けている。
【0013】
図4と図7に示すように、本発明の真空保存容器Zは、嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13が差込まれる前の未施蓋状態に於て、薄肉舌片部11は、略水平突出状に形成され、かつ、嵌着溝6の幅寸法Wに対して、薄肉舌片部11の(水平方向に測った)突出長さ寸法Lを、60%〜90%に設定している。
弾性パッキン3は、パッキン本体部10の下端部に、薄肉舌片部11を連設し、未施蓋状態で、薄肉舌片部11の先端が上方傾斜状となるように形成されている。言い換えると、弾性パッキン3は、薄肉舌片部11からパッキン本体部10の下部に掛かる部位の断面形状が、略レの字状になるように形成されている。なお、本発明に於て、薄肉舌片部11の突出長さ寸法Lとは、薄肉舌片部11の先端縁から支持壁14の外周面14Aへの垂線の長さ寸法を示すものである。
薄肉舌片部11の突出長さ寸法Lを、60%未満に設定すると、蓋4を閉じても真空保存容器Z内部を十分に密封できない虞れがあり、90%を超えると、蓋4の嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13がスムーズに差込みできなくなる虞れがあり、また、図5と図8に示すように、薄肉舌片部11の初期密封の断面形状(弯曲姿勢)が不安定となり、密封性が低下する虞れがある。
また、弾性パッキン3は、未施蓋状態下で、略水平突出状の薄肉舌片部11が、水平面に対して成す角度θを、5°〜20°に設定している。この角度θを、5°未満、又は、20°を超すように設定すると、薄肉舌片部11が上端周縁部13の内面13Aに正確に密接することができず、真空保存容器Z内部を十分に初期密封できない虞れがある。
【0014】
図5と図8に示すように、本発明の真空保存容器Zは、嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13が差込まれた後の施蓋状態に於て、嵌着溝6の幅寸法Wに対して、上端周縁部13と支持壁14との間隙寸法Gを、35%〜55%に設定している。この間隙寸法Gを、35%未満に設定すると、蓋4の嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13がスムーズに差込みできなくなる虞れがあり、55%を超えると、薄肉舌片部11が上端周縁部13の内面13Aに正確に密接することができず、真空保存容器Z内部を十分に初期密封できない虞れがある。
また、弾性パッキン3は、容器体1の上端周縁部13に接触する肉厚ブロック部12の下面12Aの幅寸法Wを、嵌着溝6の幅寸法Wに対して、50%〜70%の大きさに設定している。この構成により、ガラス等から成る容器体1の開口部の内径寸法の公差が大きくなった場合であっても、肉厚ブロック部12の下面12Aが容器体1の上端周縁部13に確実に接触する。さらに、嵌着溝6は、容器体1の上端周縁部13と鉛直壁部5の間に、隙間17を生じるように形成されている。
つまり、真空保存容器Zは、容器体1に蓋4を余裕を持って施蓋できるように構成しており、容器体1の上端周縁部13が、十分な遊びをもって、嵌着溝6に差込可能となっている。嵌着溝6に差し込まれた上端周縁部13には、嵌着溝6の幅寸法Wの60%〜90%の突出長さ寸法Lを有する弾性パッキン3の薄肉舌片部11が上方に弯曲状として必ず接触している。つまり、容器体1に蓋4が施蓋された状態下では、弾性パッキン3は、容器体1の上端周縁部13との接触により、薄肉舌片部11が(弾性)変形を受け、上方に弯曲している。薄肉舌片部11は、弾性的復元力をもって上端周縁部13の内面13Aに密接し、真空保存容器Z内部の密閉空間9を、初期密封状態としている。ここで、初期密封状態とは、真空保存容器Z内部の密閉空間9が、真空保存容器Z外部の空気と同等の大気圧を有している場合であって、薄肉舌片部11により真空保存容器Z外部の空気が密閉空間9に出入りしないように、遮断している状態を示している。
【0015】
図6と図10に示すように、吸引装置2のエアー吸引により真空保存容器Z内を減圧した真空状態に於て、薄肉舌片部11により初期密封した密閉空間9の減圧に伴って、蓋4が降下して容器体1に接近しており、弾性パッキン3の肉厚ブロック部12が、上端周縁部13と天井壁部18に挟まれるようにして圧縮されている。肉厚ブロック部12は、圧縮されることにより(弾性)変形を受け、上端周縁部13を弾性的に押し返す力(弾性的反発力)を有している。肉厚ブロック部12は、弾性的反発力をもって上端周縁部13の上端面13Bに密着し、真空保存容器Z内部の密閉空間9を、最終密封状態としている。ここで、最終密封状態とは、真空保存容器Z内部の密閉空間9が、真空保存容器Z外部の空気よりも圧力の低い真空状態とした場合であって、肉厚ブロック部12により真空保存容器Z外部の空気が密閉空間9に出入りしないように、ほぼ完全に遮断している状態を示している。
【0016】
また、図3と図7に示すように、弾性パッキン3は、パッキン本体部10の下端部に、支持壁14の外周面14Aに圧接する低突隆部7を設けている。
弾性パッキン3は、支持壁14の外周面14Aに、局部的に強い締付力をもって低突隆部7を圧接して、扁平状に弾性変形させている。この構成により、嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13が差込まれた施蓋状態下で、薄肉舌片部11が上方に弯曲しパッキン本体部10の下端部が変形した場合であっても、パッキン本体部10と支持壁14とが離間することなく密着し、シール性を保持している。
さらに、パッキン本体部10は、その上端部から下端部にかけて次第に肉厚が減少するように形成されている。つまり、パッキン本体部10の上端部近傍の肉厚寸法tが、下端部近傍の肉厚寸法tに比べて大きく設定されている。この構成により、施蓋状態下で、パッキン本体部10の下端部が、上端部に比べて弯曲し易くなって、薄肉舌片部11が上方に弯曲変形した場合であっても、パッキン本体部10が異常変形することなく、支持壁14に密着し、シール性を保持している。
【0017】
なお、吸引装置2としては、図2と図6に示すように、乾電池又は充電池の電力で駆動する小型真空ポンプを内有したものであって、真空保存容器Z内のエアーを吸引可能なハンディタイプ(持ち運び自在)の真空ユニットを用いるのが好ましい。吸引装置2は、ABS強化プラスチック樹脂から成るケーシング20の下部に、吸盤21を有している。吸引装置2の下部には、吸盤21を包囲状としてカバー部材23が取着されており、蓋4によって施蓋した真空保存容器Zの上部に載置され、下部の吸盤21に設けた吸込孔22を介して内部の密閉空間9のエアーを吸引して減圧できるように構成されている。吸引装置2には、真空保存容器Z内の密閉空間9が所定の真空状態となったことを検知して真空ポンプのON・OFFを切換える自動制御手段を設けるも望ましい。なお、他の吸引装置として手動のハンドポンプを用いても良い。
【0018】
また、蓋4には、図4〜図6に示すように、真空保存容器Zの外部と、内部の密閉空間9とを、連通させる通気孔16を有し、その通気孔16を開閉可能として弁8が設けられている。弁8は、自然状態では常に通気孔16を閉じている。蓋4の上部には、水平面状の蓋上面4Aから下方に窪んだ環状凹溝15が、弁8を包囲するように形成されている。蓋4は、吸引装置2を真空保存容器Zの上部に載置して使用する際に、環状凹溝15にカバー部材23が余裕をもって嵌まるように配設し、吸盤21が弁8に確実に対応するように構成している。さらに、蓋4には、環状凹溝15からさらに凹状に窪んだ弁室15Aが設けられている。
弁8は、弁室15A内に揺動自在に枢着されると共に貫孔42Aを通気孔16に対応する位置に配設した負圧解除用の揺動部材42と、貫孔42A内で浮動可能として複数の係止爪42Bに遊着される浮動円盤体40と、通気孔16に近接して設けられたシリコンゴム製のパッキン41と、を備えている。弁8は、浮動円盤体40がパッキン41に接触・離間することで、通気孔16を開閉するものである。揺動部材42は、上方に揺動すると、浮動円盤体40が通気孔16を閉蓋した状態から上方に持ち上げられ、パッキン41と離間して密閉空間9を大気開放し、真空保存容器Z内の負圧を解除するように構成されている。つまり、この構成により、真空保存容器Z内を真空状態とした際に、揺動部材42を引き上げると、シューという音を立てて密閉空間9を大気開放し、ワンタッチで容易に真空保存容器Z内の負圧を解除して、容器体1から蓋4を迅速に取り外すことができるように構成している。
【0019】
上述した本発明の真空保存容器の使用方法(作用)について説明する。
容器体1に保存すべき食料品等を入れ、蓋4で施蓋する。真空保存容器Z内の密閉空間9は、蓋4の弁8と、弾性パッキン3により密封される。そして、真空保存容器Z内を減圧するために、吸引装置2を蓋4の上部の所定位置に載置し、吸盤21を弁8近傍に接近させる。吸引装置2は、カバー部材23が環状凹溝15に嵌まり込み、真空保存容器Zの上で、直立する。つまり、真空保存容器Zは、使用者が吸引装置2から手を離しても、蓋4の上で吸引装置2が自立するように支持する。
【0020】
次に、吸引装置2を作動させて、吸盤21の吸込孔22からエアーを吸引する。吸盤21は、蓋4の揺動部材42上面に吸着し、貫孔42A内を負圧にする。この負圧によって、浮動円盤体40が浮き上がり、パッキン41から離間して通気孔16を開放する。吸引装置2は、通気孔16から真空保存容器Z内部の密閉空間9のエアーを吸引し、減圧を開始する。
【0021】
図9に示すように、吸引装置2が作動した直後の初期吸引段階に於て、薄肉舌片部11によって初期密封された密閉空間9のエアが吸引され、真空保存容器Z内部の圧力が低下することで、蓋4を下向きに押す初期押圧力Fが発生する。即ち、この初期押圧力Fは、真空保存容器Z外部の大気圧と、真空保存容器Z内部の密閉空間9の圧力との、圧力差によって発生する。薄肉舌片部11は、弾性的復元力をもって上端周縁部13の内面13Aに密接し、真空保存容器Z内部の負圧が外部に逃げないように空気を遮断する。蓋4は、初期押圧力Fによって、降下して容器体1に接近するが、この際、肉厚ブロック部12が、天井壁部18の下面(嵌着溝6の上方奥面)と、上端周縁部13の上端面13Bにより挟圧され、弾性的圧縮力を受ける。
【0022】
そして、吸引装置2による減圧が経時的に進行し、真空保存容器Z内の圧力が低下するにつれて、蓋4を下向きに押す力は、その大きさを増していき、肉厚ブロック部12に掛かる弾性的圧縮力が増大すると、蓋4がさらに下降する。
図10に示すように、真空保存容器Z内が真空状態となった吸引完了段階に於て、肉厚ブロック部12は、弾発的反発力をもって上端周縁部13の上端面13Bに密着し、真空保存容器Z内部の密閉空間9を最終密封状態とする。この際、蓋4には、初期押圧力Fよりも大きな下向きの最終押圧力Fが作用する。蓋4は、大気圧に起因する最終押圧力Fによって、肉厚ブロック部12を継続的に圧縮するため、揺動部材42を操作して負圧を解除しない限り、肉厚ブロック部12による最終密封状態を保持し、真空保存容器Z内部を真空状態として保ち続ける。
【0023】
以上のように、本発明に係る真空保存容器は、上方開口状の容器体1と、容器体1を閉塞して密閉空間9を形成する弁8を有する蓋4とを備え、吸引装置2によって密閉空間9のエアーを吸引し真空状態に減圧して真空状態を保持する真空保存容器に於て、蓋4には、外環状に突設された鉛直壁部5と、鉛直壁部5と平行状に垂設された内環状の支持壁14によって、容器体1の上端周縁部13が遊嵌状に差込可能な下方開口状の嵌着溝6が形成され、嵌着溝6には、環状の弾性パッキン3を嵌着し、弾性パッキン3が、支持壁14の外周面14Aに接触するパッキン本体部10と、上端周縁部13の内面13Aに密接して密閉空間9を初期密封するための薄肉舌片部11と、真空状態への減圧に伴って蓋4が容器体1に対して接近下降して圧縮変形し上端周縁部13の上端面13Bに密着する肉厚ブロック部12とを、一体に具備するので、吸引装置2による吸引開始前から初期吸引までの低真空状態の段階に於て、薄肉舌片部11によって初期密封され、引き続いて吸引されることで、蓋4が大気圧を受けて下降して、肉厚ブロック部12が容器体1の上端周縁部13に密着し、肉厚ブロック部12をもって高真空の最終密封状態(真空状態)に至る。言い換えると、容器の内部を所望の真空状態へと減圧するまでの初期吸引段階から吸引完了段階までの全工程に於て、作業者が蓋4を容器体1に押圧せずに済み、しかも、容器内部の真空状態を確実に保持できる。
【0024】
また、嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13が差込まれる前の未施蓋状態に於て、薄肉舌片部11は、略水平突出状に形成され、かつ、嵌着溝6の幅寸法Wに対して、薄肉舌片部11の突出長さ寸法Lを、60%〜90%に設定したので、蓋4の嵌着溝6に対し容器体1の上端周縁部13をスムーズに差込むことができ、しかも、真空保存容器Z内部を十分に初期密封できる。即ち、容器体1の開口部に蓋4を上方から置いて、小さい力で軽く押えるのみで、薄肉舌片部11が弯曲して、容器体1の上端周縁部13に確実に密接し、真空保存容器Zの初期密封が可能である。
【0025】
また、嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13が差込まれた後の施蓋状態に於て、嵌着溝6の幅寸法Wに対して、上端周縁部13と支持壁14との間隙寸法Gを、35%〜55%に設定したので、蓋4の嵌着溝6に対し容器体1の上端周縁部13をスムーズに差込むことができ、しかも、真空保存容器Z内部を十分に初期密封できる。即ち、容器体1の上端周縁部13が、十分な遊びをもって、嵌着溝6に差込可能であり、嵌着溝6に差し込まれた上端周縁部13に、弾性パッキン3の薄肉舌片部11が必ず接触して、確実に密接し、真空保存容器Zの初期密封が可能である。
【0026】
また、未施蓋状態下で、略水平突出状の薄肉舌片部11が、水平面に対して成す角度θを、5°〜20°に設定したので、薄肉舌片部11が上端周縁部13の内面13Aに正確に密接することができ、真空保存容器Z内部を確実に初期密封できる。
【0027】
また、弾性パッキン3は、パッキン本体部10の下端部に、支持壁14の外周面14Aに圧接する低突隆部7を設けているので、嵌着溝6に容器体1の上端周縁部13が差込まれた施蓋状態下で、薄肉舌片部11が上方に弯曲しパッキン本体部10の下端部が変形した場合であっても、パッキン本体部10と支持壁14とが離間することなく密着し、シール性が低下するのを防止できる。
【符号の説明】
【0028】
1 容器体
2 吸引装置
3 弾性パッキン
4 蓋
5 鉛直壁部
6 嵌着溝
7 低突隆部
8 弁
9 密閉空間
10 パッキン本体部
11 薄肉舌片部
12 肉厚ブロック部
13 上端周縁部
13A 内面
13B 上端面
14 支持壁
14A 外周面
幅寸法
突出長さ寸法
G 間隙寸法
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口状の容器体(1)と、該容器体(1)を閉塞して密閉空間(9)を形成する弁(8)を有する蓋(4)とを備え、吸引装置(2)によって上記密閉空間(9)のエアーを吸引し真空状態に減圧して真空状態を保持する真空保存容器に於て、
上記蓋(4)には、外環状に突設された鉛直壁部(5)と、該鉛直壁部(5)と平行状に垂設された内環状の支持壁(14)によって、上記容器体(1)の上端周縁部(13)が遊嵌状に差込可能な下方開口状の嵌着溝(6)が形成され、
上記嵌着溝(6)には、環状の弾性パッキン(3)を嵌着し、該弾性パッキン(3)が、上記支持壁(14)の外周面(14A)に接触するパッキン本体部(10)と、上記上端周縁部(13)の内面(13A)に密接して上記密閉空間(9)を初期密封するための薄肉舌片部(11)と、真空状態への減圧に伴って上記蓋(4)が上記容器体(1)に対して接近下降して圧縮変形し上記上端周縁部(13)の上端面(13B)に密着する肉厚ブロック部(12)とを、一体に具備することを特徴とする真空保存容器。
【請求項2】
上記嵌着溝(6)に上記容器体(1)の上端周縁部(13)が差込まれる前の未施蓋状態に於て、上記薄肉舌片部(11)は、略水平突出状に形成され、かつ、上記嵌着溝(6)の幅寸法(W)に対して、上記薄肉舌片部(11)の突出長さ寸法(L)を、60%〜90%に設定した請求項1記載の真空保存容器。
【請求項3】
上記嵌着溝(6)に上記容器体(1)の上端周縁部(13)が差込まれた後の施蓋状態に於て、上記嵌着溝(6)の幅寸法(W)に対して、上記上端周縁部(13)と上記支持壁(14)との間隙寸法(G)を、35%〜55%に設定した請求項1又は2記載の真空保存容器。
【請求項4】
上記未施蓋状態下で、上記略水平突出状の薄肉舌片部(11)が、水平面に対して成す角度(θ)を、5°〜20°に設定した請求項1,2又は3記載の真空保存容器。
【請求項5】
上記弾性パッキン(3)は、上記パッキン本体部(10)の下端部に、上記支持壁(14)の外周面(14A)に圧接する低突隆部(7)を設けている請求項1,2,3又は4記載の真空保存容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111504(P2012−111504A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259780(P2010−259780)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(593057263)多田プラスチック工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】