説明

真空冷却装置

【課題】一の被保管物を台車に積載した後、他の被保管物を容易に台車に積載することができ、一の被保管物を台車から降ろした後、他の被保管物を容易に台車から降ろすことができる真空冷却装置を提供する。
【解決手段】真空槽台車3の上面に、真空槽台車3の走行方向に対して左右方向に、緩やかな傾斜をつけたスライドレール32を設け、該スライドレール32の下端部には車止め32aを固設し、該スライドレール32上にパレット台車33を配設し、被保管物6を積載しない際にはパレット台車33がスライドレール32下端部で停止しており、一の被保管物6を載せたパレット34を前記スライドレール32下端部で停止しているパレット台車33に載置して真空槽台車3に積載し、他の被保管物6を載せたパレット34を真空槽台車3に積載する際に、先に積載した一の被保管物6の下方にあるパレット台車33を押し出しつつ真空槽台車3に積載した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空冷却装置の技術に関し、特に前面が開口する真空槽本体の底面に真空槽台車を前後方向に摺動自在に配設し、前記真空槽台車の上面に被保管物を積載して真空槽内に搬入する真空冷却装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜等の農作物や生鮮食品等を、鮮度を保ちながら保存するために真空冷却装置が用いられる。真空冷却装置は野菜等の被保管物に含まれる自由水の蒸発潜熱を利用して真空状態で冷却する装置である(例えば、特許文献1参照)。
前記真空冷却装置を構成する真空槽へ被保管物を搬入する方法として台車を前後方向に摺動可能とし、台車上に被保管物を積載した後、台車を押して真空槽へ収納する方法がある。前記台車式の真空冷却装置としては、前面が開口する真空槽の前面に、後端下面に車輪を有する台車を前後方向に摺動自在に取り付け、台車の前端に真空槽本体の前面を閉塞する扉体を設け、扉体の上面に立設したものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−205961号公報
【特許文献2】特開平7−139859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構成した台車式の真空冷却装置においては、扉体を引っ張って台車を引出し、台車上に被保管物を積載し、扉体を押して台車を真空槽へ収納する。これにより、真空槽へ収納する際、若しくは引出す際の労力が著しく軽減される。しかし、一方で被保管物を台車に積載する際に多大な労力を必要とする。例えば、二つ以上の被保管物を台車に積載する際に、一の被保管物を積載した後は、一の被保管物と接触しない別の方向から他の被保管物を台車に積載しなければならなかった。
そこで、本発明は、かかる課題に鑑み、一の被保管物を台車に積載した後、他の被保管物を容易に台車に積載することができ、一の被保管物を台車から降ろした後、他の被保管物を容易に台車から降ろすことができる真空冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、前面が開口する真空槽本体の底面に真空槽台車を前後方向に摺動自在に配設し、前記真空槽台車の上面に被保管物を積載して真空槽内に搬入する真空冷却装置において、前記真空槽台車の上面に、真空槽台車の走行方向に対して左右方向に、緩やかな傾斜をつけたスライドレールを設け、該スライドレールの下端部にはストッパーを固設し、該スライドレール上にパレット台車を配設し、被保管物を積載しない際にはパレット台車がスライドレール下端部で停止しており、一の被保管物を載せたパレットを前記スライドレール下端部で停止しているパレット台車に載置して真空槽台車に積載し、他の被保管物を載せたパレットを真空槽台車に積載する際に、先に積載した一の被保管物の下方にあるパレット台車を押し出しつつ真空槽台車に積載したものである。
【0007】
請求項2においては、前記パレット台車の他の被保管物を載せたパレットと接触する側の面に、他の被保管物のパレットによって押し出す力を受けるための面材を設けたものである。
【0008】
請求項3においては、前記パレット台車の上面を真空槽台車の走行面に対して水平としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、最初の被保管物を載置したパレットをパレット台車に静置して真空槽台車に積載したあと、二番目の被保管物を載置したパレットを真空槽台車に積載する際に最初の被保管物及びパレットを静置したパレット台車をスライドレールの傾斜上方へ押し上げることが可能となるため、真空槽台車への積載が容易となる。
【0011】
請求項2においては、最初の被保管物及びパレットを静置したパレット台車が二番目の被保管物を載置したパレットからの押し出す力を効率よく受けることができる。
【0012】
請求項3においては、パレット台車に被保管物及びパレットを静置する際に、被保管物及びパレットを真空槽台車の走行面と水平に静置することとなるため、被保管物を直立して載置することができ、被保管物の荷崩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空冷却装置を示した側面図。
【図2】真空冷却装置の平面図。
【図3】真空槽台車の側面図。
【図4】真空槽台車およびパレット台車を示した背面図。
【図5】真空槽台車およびパレット台車を示した背面図。
【図6】パレット台車及びパレットを示した背面図。
【図7】真空槽台車およびパレット台車を示した背面図。
【図8】真空槽台車およびパレット台車を示した背面図。
【図9】真空槽台車およびパレット台車を示した背面図。
【図10】パレット台車を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態においては、真空冷却装置1について、真空槽台車3が真空槽2より引出される方向、すなわち、図1における矢印Aの方向を前方向として定める。
【0015】
本実施形態にかかる真空冷却装置1の一例を図1乃至図3に示す。前記真空冷却装置1は、前面が開口した中空状の真空槽2と、真空槽2の底部に前後方向に摺動可能に取り付けられる引出し式の真空槽台車3と、前記真空槽台車3の前端に取り付けられて真空槽2の前面を気密的に閉塞することができる扉体4と、該扉体4の下端に取り付けられる車輪付き支持部5とを有する。
図1に示すように、本実施形態では真空槽2及び真空槽台車3を前後方向に二個具備しており、ここでは矢印Aの後方に位置する真空槽2を2a、矢印Aの前方に位置する真空槽2を2bとする。前記真空槽2a、2bは床等の地面に前後方向に沿って配設されるレール7を共有している。すなわち、一方の真空槽台車3が引出された状態にあるときは、一方の真空槽台車3は真空槽2内部に収納された状態となる。
なお、真空槽の個数、配置は本実施形態に限定されるわけでなく、例えば一個の真空槽のみで真空冷却装置を構成することも可能である。
前記真空槽2a及び2bはほぼ同じ構成であることから、以下では後方に位置する真空槽2aについて説明する。
【0016】
前記真空槽2aは金属等を素材とする外壁と内壁との間に適宜断熱材が内蔵され、その前面の開口部の周縁にフランジ8が形成され、底面の前端部には図示しない車止め部材が装着され、前記真空槽台車3が真空槽2aから完全に抜け出すことが無いようになっている。
【0017】
前記真空槽2aの内部を真空冷却する際には、図示せぬ真空ポンプにより、真空槽2a内を真空減圧し、被保管物6内部の水分が蒸発するときの蒸発潜熱により冷却する。その際に発生する水蒸気は真空槽2a内より低温であるコールドトラップ10に氷となって付着する。前記コールドトラップ10は、ブラインタンク11に貯蔵されているブライン(冷媒)を図示せぬブラインクーラーによって低温にして、ブラインポンプ12でコールドトラップ10内に循環させて真空槽2a内の温度よりも低温にする。
このように構成することにより、真空槽2a内の被保管物6が真空冷却されることとなる。
【0018】
前記扉体4は真空槽2aと同様に断熱性に富んだ素材によって構成され、真空槽2aの開口部とほぼ同じ形状を有し、その内面周縁には真空槽2のフランジ8に密着する図示しないパッキングが装着されている。
また、前記車輪付き支持部5は、水平台21の下面の前後部にそれぞれ左右一対の車輪22が回動自在に装着され、水平台21の上面の後部寄りに扉体4の下端がボルト等により固定され、水平台21の上面前部に支柱23が立設されると共に、支柱23の内面上端から支持アーム24が後方に張り出して設けられ、支持アーム24の先端と扉体4とを固設することにより、前記扉体4が倒れないように支持されている。
【0019】
また、車輪付き支持部5の車輪22は、床等の地面に前後方向に沿って配設されるレール7上を走行するようになっており、支柱23あるいは扉体4を引っ張って車輪付き支持部5を前方に走行させると、真空槽台車3が真空槽2aの開口部を通して外部に引出されるようになっている。
【0020】
次に真空槽台車3について図3を用いて説明する。
前記真空槽台車3は、真空槽2aの底面より一回り小さい平面形状を有し、後端部下面には回動する車輪又はローラより成る回転支持部材31が取り付けられ、該回転支持部材31を真空槽2a底面に載置することにより真空槽台車3が真空槽2aの内部に開口部を通して引出すことができるように収納されている。
【0021】
また、図4乃至図9に示すように、前記真空槽台車3の上面にはスライドレール32が真空槽台車3の摺動する前後方向に対して直交する左右方向に敷設されている。前記スライドレール32は本実施形態では真空槽台車3の後方視右側が低くなるように緩やかな傾斜がつけられており、スライドレール32の下端にはストッパーである車止め32aが装着されている。該スライドレール32を走行するパレット台車33がスライドレール32上に配置されている。本実施形態にかかる真空槽台車3は図2に示すように前後方向に四列、左右方向に二列の計八個の被保管物6が積載できるように構成されている。
なお、真空槽台車3上に積載する被保管物6の前後方向の列数は本実施形態に限定されるわけではなく、真空槽2aの大きさに合わせて変化させることも可能である。また、真空槽台車3上に積載する被保管物6の左右方向の列数も本実施形態に限定されるわけではなく、真空槽2aの大きさに合わせて変化させることも可能である。
【0022】
前記パレット台車33は、図10に示すように、外枠33aと外枠33a下部に設けられた回動する車輪又はローラより成る回転支持部材33bが取り付けられ、前記スライドレール32上を走行するようになっている。前記外枠33aはパレット台車33の上面が真空槽台車3の走行面(地面)に対して水平となるように、スライドレール32下端側のパレット台車33の高さを高くし、スライドレール32上端側のパレット台車33の高さを低く構成している。このように構成することにより、パレット台車33の上面が真空槽台車3の走行面に対して水平となり、パレット台車33に静置した被保管物6及びパレット34が真空槽台車3の走行面に対して垂直に保管されることとなるため、被保管物6の転倒による荷崩れを防止することができる。
また、該パレット台車33の外枠33aはスライドレール下端側の側面に、押し上げる力を効率よく受けるための面材である押し出し面33cを配設している。該押し出し面33cは外枠33aの該側面に溶接などによって固設されており、後述する二番目の被保管物6を載置したパレット34が押し上げる力を効率よく受けることができるようになる。
【0023】
次に被保管物6の真空槽台車3への積載方法について図4乃至図9を用いて説明する。
図4に示すように、パレット台車33自体は被保管物6が全く積載されていないときには重力に従いスライドレール32の下端に装着した車止め32aによって停止している。一方、被保管物6は、パレット台車33と略同じ大きさのパレット34に載置されている。
前記真空槽台車3の上面に被保管物6を載せたパレット34を積載する際には、扉体4を引っ張って前記真空槽台車3を前記真空槽2aより引出し、例えばフォークリフトの爪の部分によって被保管物6が載置されたパレット34を上昇させて、該パレット34を前記スライドレール32の下端部より積載する。
【0024】
まず、図5に示すように、左右方向に二個並べて積載する被保管物6のうち最初の被保管物6を載置したパレット34を前記パレット台車33に静置する。
次に、図6に示すように、二番目の被保管物6を載置したパレット34の積載作業を行う。二番目の被保管物6を載置したパレット34は、パレット34の上面が真空槽台車3の走行面に対して水平となるように、スライドレール32下端側のパレット34の高さを高くし、スライドレール32上端側のパレット34の高さを低く構成している。フォークリフト等で支持されている当該二番目の被保管物6を載置したパレット34で最初の被保管物6及びパレット34の静置されたパレット台車33をスライドレール32の傾斜上方へ押し上げるように操作する。パレット台車33を上方へ押し上げる際には、図7に示すように、二番目の被保管物6を載置したパレット34及び被保管物6の一部がパレット台車33の外枠33a及び押し出し面33cと接触し、二番目の被保管物6を移動させることにより、パレット台車33を押し上げる。
【0025】
更に最初の被保管物6及びパレット34の静置されたパレット台車33を移動させることにより、二番目の被保管物6を載置したパレット34を静置できるスペースが確保できた時点で、図8に示すように、フォークリフト等で支持されている二番目の被保管物6を載置したパレット34自体をスライドレール32上に静置する。該二番目の被保管物6を載置したパレット34はスライドレール32との摩擦力及び車止め32aによって固定され、最初の被保管物6及びパレット34を静置したパレット台車33を傾斜上方に押し上げた状態で停止することができる。
【0026】
一方、上記のように二個の被保管物6・6を左右方向に並べて積載した状態から被保管物6・6を搬出する場合には、図9に示すように、二番目の被保管物6を載置したパレット34をフォークリフト等により降ろすことにより、最初の被保管物6及びパレット34を静置したパレット台車33が重力でスライドレール32の傾斜下方へと移動し、車止め32aによってスライドレール32下端で停止する。このように移動することにより、最初の被保管物6を載置したパレット34をフォークリフト等により容易に降ろすことができる。
【0027】
なお、真空槽台車3上に積載する被保管物6の左右方向の列数を三列以上で構成する場合には、最後に積載する被保管物6を載置したパレット34自体をスライドレール32上に静置する。このように構成することにより、最後に積載する被保管物6を載置したパレット34はスライドレール32との摩擦力及び車止め32aによって固定され、他の被保管物6及びパレット34を静置したパレット台車33を傾斜上方に押し上げた状態で停止することができる。
【0028】
以上のように、真空冷却装置1は、前面が開口する真空槽2本体の底面に真空槽台車3を前後方向に摺動自在に配設し、前記真空槽台車3の上面に被保管物6を積載して真空槽2内に搬入する真空冷却装置1において、前記真空槽台車3の上面に、真空槽台車3の走行方向に対して左右方向に、緩やかな傾斜をつけたスライドレール32を設け、該スライドレール32の下端部にはストッパーである車止め32aを固設し、該スライドレール32上にパレット台車33を配設し、被保管物6を積載しない際にはパレット台車33がスライドレール32下端部で停止しており、一の被保管物6を載せたパレット34を前記スライドレール32下端部で停止しているパレット台車33に載置して真空槽台車3に積載し、他の被保管物6を載せたパレット34を真空槽台車3に積載する際に、先に積載した一の被保管物6の下方にあるパレット台車33を押し出しつつ真空槽台車3に積載したものである。このように構成することにより、最初の被保管物6を載置したパレット34をパレット台車33に静置して真空槽台車3に積載したあと、二番目の被保管物6を載置したパレット34を真空槽台車33に積載する際に最初の被保管物6及びパレット34を静置したパレット台車33をスライドレール32の傾斜上方へ押し上げることが可能となるため、真空槽台車3への積載が容易となる。
【0029】
また、前記パレット台車33の他の被保管物6を載せたパレット34と接触する側の面に、他の被保管物6のパレット34によって押し出す力を受けるための面材である押し出し面33cを設けたものである。このように構成することにより、最初の被保管物6及びパレット34を静置したパレット台車33が二番目の被保管物6を載置したパレット34からの押し出す力を効率よく受けることができる。
【0030】
また、前記パレット台車33の上面を真空槽台車3の走行面に対して水平としたものである。このように構成することにより、パレット台車33に被保管物6及びパレット34を静置する際に、被保管物6及びパレット34を真空槽台車3の走行面と水平に静置することとなるため、被保管物6を直立して載置することができ、被保管物6の荷崩れを防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 真空冷却装置
2 真空槽
3 真空槽台車
4 扉体
5 車輪付き支持部
6 被保管物
31 回転支持部材
32 スライドレール
33 パレット台車
34 パレット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口する真空槽本体の底面に真空槽台車を前後方向に摺動自在に配設し、前記真空槽台車の上面に被保管物を積載して真空槽内に搬入する真空冷却装置において、
前記真空槽台車の上面に、真空槽台車の走行方向に対して左右方向に、緩やかな傾斜をつけたスライドレールを設け、該スライドレールの下端部にはストッパーを固設し、該スライドレール上にパレット台車を配設し、被保管物を積載しない際にはパレット台車がスライドレール下端部で停止しており、
一の被保管物を載せたパレットを前記スライドレール下端部で停止しているパレット台車に載置して真空槽台車に積載し、他の被保管物を載せたパレットを真空槽台車に積載する際に、先に積載した一の被保管物の下方にあるパレット台車を押し出しつつ真空槽台車に積載したことを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
前記パレット台車の他の被保管物を載せたパレットと接触する側の面に、他の被保管物のパレットによって押し出す力を受けるための面材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却装置。
【請求項3】
前記パレット台車の上面を真空槽台車の走行面に対して水平としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−191013(P2011−191013A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58540(P2010−58540)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(391057395)株式会社ヤスジマ (8)
【Fターム(参考)】