説明

真空吸着パッド

【課題】
凹凸面で凹凸切替わり部に鋭角な落ち込みある場合には、低硬度弾性体のシール材によっても隙間を塞ぎ真空漏れを防ぐことは困難との課題があった。
【解決手段】
真空吸着パッドにおいて、真空室を形成する周縁部の真空シール壁を内シール壁と、内シール壁に外接して外シール壁を設け、二重シール壁の二重構造で形成した。
また、内シール壁と外シール壁の間に液体を連続的に供給する構造を設け、液体シール壁を形成する機能を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸面に吸着する真空吸着パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空吸着パッドの凹凸面への吸着においては、該吸着パッドの接面シールが被吸着面の凹凸に完全に沿うことが出来ないため被吸着面と接面シールとの間に隙間ができ易く、真空漏れにより被吸着面での吸着力が低下するとの課題があった。このため、接面シール材を低硬度の弾性体で形成することや真空吸引の流量を増やす等の手段を用い対応してきた。
然しながら、被吸着面の凹凸切替わり部に鋭角な落ち込みがある凹凸面では、吸着時の真空漏れは大きく、真空漏れを防ぎ、被吸着面への吸着力を維持することは困難であった。そのため、下記の特許公報により開示されている様に接面シール材や形状の変更等、様々な改良や発明が試みられてきた。
依然、数リットルから十数リットル程度の小真空流量においても凹凸切替わり部の鋭角な隙間を塞ぎ、真空吸着力を維持する接面シール構造を持つ真空吸着パッドは見当たらず、省電力で作用し吸着性能に優れる真空吸着パッドの出現が待たれているとの課題があった。
【0003】
被吸着面が凹凸である場合の真空吸着パッドの接面シールの発明としては、接面シール部とそれを保持する保持部との硬度切換えを特徴とした発明に特許第3236698号広報(特開平06-307200号広報)や特開2010−201536号広報が開示され、低硬度の接面シール材を利用する事を特徴とした発明に特開平10−299757号広報や特開2008−238306号広報が開示され、接面シール壁の形状や構造に特徴がある発明に特開平05−263817号広報や特開平2004−034195号広報が開示されている。
【0004】
特許第3236698号広報(特開平06-307200号広報)では、円盤状をなす支持板と、該支持板の下面に形成され、内部に吸着空間を有する略円筒状のリング状壁部と、前記支持板中央に取り付けられ、前記吸着空間に連通する吸着パイプとを備えた吸着パッド構造において、前記リング状壁部の支持板側略3分の2をショアC硬度35乃至25の軟質弾性部材で、接地面側略3分の1をショアC硬度15乃至10の軟質弾性部材で形成して重ね合わせ、かつ吸着空間がすり鉢形状となるよう、支持板側に向かって肉厚として構成されている。
また、特開2010−201536号広報では、蛇腹状のスカート部の一端部に、このスカート部内を真空にする真空装置からのパイプが接続された基部が気密的に設けられ、蛇腹状のスカート部内の大径部に、少なくとも一つ以上の貫通穴が形成された円板状の固定板が設けられ、蛇腹状のスカート部の大径部からなる他端部に、他端部と当接するとともに、少なくとも一つ以上の貫通穴が形成された軟質ゴムよりなる円板状のエッジホルダが設けられ、エッジホルダと固定板とが一体的に形成されるとともに、エッジホルダの外装面には、エッジホルダよりも軟らかい軟質ゴムより形成されて平面上のワークの板面に当接する環状のエッジ部が気密的に設けられている。
上記開示の発明は、接面シール材の接面部の柔軟性を確保しながらその接面部を接面付勢するために硬度を高めた弾性体を重ねた2層構造を採用しているが、被吸着面に吸着する接面部のシール材は低硬度で先端が鋭角構造であるため、耐久性が課題である。また2層構造の一体型シール壁の製作はコスト高になるとの課題がある。
【0005】
特開平10−299757号広報では、吸着する波板との間を負圧とする吸引孔を有する支持部材のスカート部に取り付けられ、波板と接するクッション材がシリコーン系弾性発泡体からなり、アスカーC型硬度計での、圧縮率50%のときの硬度が1〜20であり、該シリコーン系弾性発泡体の表面層が独立気泡構造または独立気泡構造と連続気泡構造とが混在した構造とされる。
また、特開2008−238306号広報では、真空吸着パッドにおいて、上記シール部材は、高分子ゲルで形成されるとともに、被吸着面側先端に向かって先細りとし、断面形状において、上記先端の角度が鋭角であり、かつ、この先端を、パッド基板に固定したシール部材固定部の幅方向中心よりも外側に位置させた。
上記開示の発明においても、同様にシール材は低硬度であり耐久性や耐候性に課題がある。
【0006】
特開平2004−034195号広報では、吸着パッドの吸着面の外周側と内周側に大径パッドと、小径パッドを同心円状に設け、一方のパッドの吸着部の材質を独立気泡含有スポンジゴム製とし、他方の吸着部を蛇腹式として、それぞれ別々の真空系統にて吸引させるようにし、さらに、板状ワークの吸着面と蛇腹式パッド4の吸着面までの間隔が、独立気泡含有スポンジゴムからなるスポンジパッドの吸着面までの間隔よりも小とした。
上記開示の発明は、各々真空連通手段を持つ2台の吸着パッドの一方の吸着パッドを他方の吸着パッドの内側に離して設けた構造であり、被吸着面が凹凸の場合、蛇腹式シール部は真空漏れが大きく、スポンジパッド部しか凹凸面での吸着には貢献していないとの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3236698号広報(特開平06-307200号広報)
【0008】
【特許文献2】特開2010−201536号広報
【0009】
【特許文献3】特開平10−299757号広報
【0010】
【特許文献4】特開平05−263817号広報
【0011】
【特許文献5】特開平2004−034195号広報
【0012】
【特許文献6】特開2008−238306号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の様に、低硬度の弾性体の接面シール材は、吸着時に凹凸に沿った形状を作り易く真空漏れが少ないが、接面シール材の耐久性が課題であった。
また、耐久性を高めるために接面シールの硬度を高めれば、接面時に被吸着面での凹凸の隙間を塞ぎきれず、真空漏れが多いとの課題があった。
更に、凹凸面で凹凸切替わり部に鋭角な落ち込みがある場合には、低硬度弾性体のシール材によっても隙間を塞ぎ、真空漏れを防ぐことは困難との課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、数リットル〜十数リットル程度の少真空流量であっても、被吸着面の凹凸切替わり部の鋭角な落込みの隙間を塞ぎ、真空漏れを防ぐ真空吸着パッドを低コストで製作できることを目的とした。
【0015】
請求項1に係る発明では、パッド基板の内側に真空源に連通する真空引き孔と、該基板の周縁部に真空室形成のため設けられたシール壁とを備え、接面時に被吸着面に吸着する吸着パッドにおいて、前記シール壁が5〜30度程度の低硬度の軟性弾性体の内シール壁と、該内シール壁を取り囲み、該内シール壁に接して外側に、該内シール壁よりも壁高が0.5から2.5mm低く、接面部が平坦に設けられた35〜50度程度の中硬度の軟質弾性体の外シール壁との二重シール壁構造を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明では、前記内シール壁は前記吸着パッド基板から所定高で被吸着面方向に傘状に広がって設けられている事を特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明では、前記外シール壁の接面側平坦部は、前記内シール壁の傘状に広がった接面周縁部の背面に接して設けられ、接面吸着時には該外シール壁の接面平坦部が、該内シール壁の傘状に広がった接面周縁部の背面を押し、被吸着面側に付勢する事を特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明では、前記内シール壁の側面に外接する前記外シール壁の外径は、該内シール壁の接面周縁部の広がった外径より所定長大きく、接面吸着時には該外シール壁の接面平坦部が該内シール壁の傘状に広がった接面周縁部の背面を押し、被吸着面側に付勢するとともに、該外シール壁の接面平坦部自体も被吸着面へ付勢される構造に形成された事を特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明では、前記内シール壁の傘の開いた部分が当接する該外シール壁の一部を切り欠いて、該外シール壁の残りの接面部は平坦に設けられている事を特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明では、前記内シール壁と前記外シール壁の間に該内シール壁を取り囲んで設けられたリング状の保水弾性体を挾持し、接面吸着時の収縮により保水弾性体から排出された液体が該内シール壁と該外シール壁との間で液体からなる第三のシール壁を形成する事を特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明では、前記保水弾性体には、液体供給手段が設けられており、接面時の弾性体の収縮作用と、離面時の弾性体の膨張作用とにより、液体を吸水し保水弾性体内に保持し、且つ収縮により接面側に排出することで、液体シール壁形成の連続的な作動機能を備える事を特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によれば、吸着においては壁面高が高い前記内シール壁は前記外シール壁より先に被吸着面に接し、該内シール壁は硬度が低く低反発であるため、凹凸面においても容易に吸着することが出来る。該内シール壁の吸着により、背後の前記吸着パッド基板から付勢された反発力が高い中硬度の該外シール壁も、凹凸面に吸着することが出来る。該外シール壁は、被吸着面と前記吸着パッド基板との間で圧縮され縮退するが、中硬度で反発力が高いため、所定高で圧縮力と均衡し縮退は止まる。接面付勢力を受ける前記吸着パッド基板が被吸着面から所定高で止まることにより、低硬度で柔らかいが耐久性に劣る前記内シール壁にかかる過剰な力を防ぐことが出来る。また前記外シール壁は前記内シール壁の外側に隣接し該内シール壁を囲んでリング状に設けられ、低硬度の該内シール壁を外側から保護することが出来る。
凹凸面の凹凸切替わり部の鋭角な落ち込み部には、前記内シール壁の低硬度の柔らかい素材が凹凸面の隙間を塞ぐことが出来る。
また、前記外シール壁の接面部は平坦で弾力性があるため、接面時には付勢力を面で平均して受け該外シール壁の耐久性を高めるとともに、面で接すことにより凹凸面での隙間を塞ぎ真空漏れを防ぐことができる。
性質と構造が異なる隣接した二重シール構造は、各々が得意な役割を果たし、前記内シール壁を前記外シール壁が保護しながら、該内シール壁が凹凸切替わり部の鋭角な隙間も塞ぎ真空漏れを2重に防ぐことができる。
【0023】
請求項2に係る発明によれば、前記内シール壁はその接面周縁部が傘状に広がって設けられているため、被吸着面とは平行でなく傾いて接面した場合にも該内シール壁が内側に巻き込まれることが無く、安定した形状で吸着することができる。
安定した接面姿勢は、接面においての吸着力を高めることができる。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、前記外シール壁の接面平坦部が、前記内シール壁の接面外周部を接面付勢するため、硬度が低く柔軟な該内シール壁の接面外周部は該外シール壁の接面平坦部により凹凸面に付勢され、面の凹凸切替わり部の鋭角な落ち込み部の隙間も柔らかい該内シール壁により塞ぎ真空漏れを防ぐことができる。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、前記外シール壁の接面平坦部は、前記内シール壁の接面周縁部に当接し該接面外周部を面方向に付勢し凹凸面への密着性を高めるとともに、該外シール壁の接面平坦部自体も凹凸面に面で付勢される。
シール壁は真空室側では該内シール壁と該外シール壁が重なり合った2層構造を備え、また外側方向には該内シール壁に接して該外シール壁を備える2重構造のシール壁として設けられ、面の凹凸切替わり部の鋭角な落ち込み部の隙間も塞ぐ該内シール壁の役割と、面で接面し凹凸面の隙間を塞ぐ2重の構造により真空漏れ防ぐことができる。
【0026】
請求項5に係る発明によれば、前記内シール壁の傘の開いた周縁部が当接する該外シール壁の一部を切り欠いて、該外シール壁の残りの接面部は平坦に設けられている事を特徴とする。この切り欠きにより前記内シール壁を付勢する前記外シール壁の高さを調節でき、該内シール壁への付勢力を変化させることにより、凹凸面への密着性と該内シール壁の耐久性を調整することができる。
【0027】
請求項6に係る発明によれば、前記外シール壁と前記内シール壁との間で水等の流動性液体からなる被吸着面に接する第三のシール壁を形成する事ができる。液体シール壁は連続体の弾性体では塞ぎきれない凹凸面の凹凸切替わり部の鋭角な隙間を、液体が付着することにより塞ぐことができ真空漏れを防ぐことができる。
【0028】
請求項7に係る発明によれば、液体供給手段により前記液体シール壁を形成する液体は連続的に供給されるため、該液体シール壁を連続的して形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は真空吸着パッドの構造の説明例の外観図である。
【図2】図2は請求項1に係る説明への断面図である。(実施例1)
【図3】図3は請求項1に係る説明への断面図である。(実施例2)
【図4】図4は請求項2から4に係る説明への断面図である。(実施例3)
【図5】図5は請求項2から4に係る説明への断面図である。(実施例4)
【図6】図6は請求項2から4に係る説明への断面図である。(実施例5)
【図7】図7は請求項5または6に係る説明への断面図である。(実施例6)
【図8】図8は請求項5または6に係る説明への断面図である。(実施例7)
【発明を実施するための形態】
【0030】
請求項の順に従って実施例を説明する。
図1は、本発明の請求項を説明するために図示された真空吸着パッド例の側面外観図である。また、図2から8は、図1の略中央部分での側面断面図である。
図1に例示する真空吸着パッドは、真空生成源に連通する真空継手1と、真空継手が螺設される基板支持棒2と、基板2−1と、基板の周縁部に設けられたシール壁3、4とから構成される。一般的には、真空継手1は基板2−1に螺設され設けられている。
【実施例1】
【0031】
図2は請求項1の実施例1を説明するものである。
図2において、基板支持棒2に穿設された真空連通孔2−2に固設された基板2−1の周縁部には、真空室8を囲んで、シール保持具6,7と基板2−1との間に内シール壁4が挾着される。内シール壁4は5〜30度程度の低硬度の軟質弾性体であり、内シール壁4を囲んで設けられる外シール壁3は35〜50度程度の中硬度の軟質弾性体で設けられる。
また、図2に示す様に、内シール壁4の壁高は外シール壁3の壁高より0.5から2.5mm程度高く設けられている。真空連通孔2−2からの真空引きにより、接面した内シール壁4は、接面反力が低いため容易に凹凸面にも真空吸着することができる。内シール壁4の吸着により真空室8が形成され接面方向に付勢された前記基板2−1は、外シール壁3を背面から凹凸面に付勢し吸着させるべく作用する。シール壁4と外シール壁3は真空吸着により圧縮され、前記基板2−1は吸着力と反力とが均衡するストッパー7の所定高まで沈み込み吸着姿勢を維持する。
中硬度の前記外シール壁3は、低硬度の前記内シール壁4を外周側から保護し、また極端な圧縮力が該内シール壁4にかかることをストッパー7と共同で防ぎ、また接面平坦部の面全体が凹凸面に接することで真空漏れを防ぐ働きをしている。柔らかく凹凸に沿い易い前記内シール壁4と強靭な前記外シール壁3とが密接に隣り合い、各々の特徴を生かした働きをする構成に設けられている。
【実施例2】
【0032】
実施例1において、内シール壁4の接面先端の周縁部断面に丸みを備えたものが、図3に例示する実施例2である。前記内シール壁の硬度に合わせて図3に示す様に丸みを備えたシール壁とすることもできる。
【実施例3】
【0033】
図4は請求項2から4に係る実施例である。
図4において、前記内シール壁4の接面周縁部が傘状に外側に広がって設けられていることを除き、実施例1と同一構造に設けられている。前記内シール壁4は接面周縁部が傘状に広がって設けられているため、被吸着面とは平行でなく傾いて接面した場合にも該内シール壁4の接面周縁部は内側に巻き込まれることが無く、安定した形状で吸着することができる。
また、前記外シール壁3の接面平坦部は、前記内シール壁4の傘状に広がった接面周縁部の接面逆方向の背面に当接し設けられているため、接面吸着時には該外シール壁3の接面平坦部が該内シール壁4の接面周縁部を背面から付勢し、凹凸面での密着性を高める様に設けられている。
また、前記内シール壁4の側面に外接する前記外シール壁3の外径は、前記内シール壁4の広がった周縁部の外径より大きいため、接面吸着時には、該外シール壁3は該内シール壁4の接面側に広がった傘状の周縁部を接面付勢するとともに、自らの接面平坦部をも接面付勢される構造に設けられている。
尚、前記内シール壁4の傘状に開いた周縁部の先端が鋭角であれば、0.5mm以下程度の微細な隙間による流入空気流であっても、内シール壁4の周縁部先端の鋭角膜は流入空気流に吸引付勢され、凹凸面の凹凸切替わり部の鋭角な落ち込みの隙間を塞ぐことができ、吸着力を高めることが出来る。
【実施例4】
【0034】
図5も請求項2から4に係る実施例であり、図4の接面方向に傘状に広がった前記内シール壁4の周縁部断面が鋭角状に限らないことを示す図である。実施例3と同様に、前記内シール壁4はその接面周縁部が傘状に広がって設けられているため、被吸着面とは平行でなく傾いて接面した場合にも該内シール壁4の接面周縁部は内側に巻き込まれることが無く、安定した形状で吸着することができる。
また、前記外シール壁3の接面平坦部は、前記内シール壁4の傘状に開いた接面反対方向の背面に当接し設けられているため、接面吸着時には該外シール壁3の接面平坦部が該内シール壁4の接面周縁部を背面から付勢し、凹凸面での密着性を高める様に設けられている。
また、前記内シール壁4の側面に外接する前記外シール壁3の外径は、前記内シール壁4の広がった接面周縁部の外径より大きいため、接面吸着時には、該外シール壁3は該内シール壁4の接面側に広がった傘状の周縁部を接面付勢するとともに、自らの接面平坦部をも接面付勢される構造に設けられている。
この構造により凹凸面の凹凸切替わり部の鋭角な落ち込みの隙間を塞ぎ、吸着力を高めることが出来る。
【実施例5】
【0035】
図6は請求項5に係る実施例であり、前記内シール壁4の傘状に広がった接面周縁部に当接する前記外シール壁3の平坦部の一部を切り欠き設けられている。
この切り欠きは基板2−1方向への高さを変更することにより、接面吸着時に前記外シール壁3の平坦部が前記内シール壁4の傘状に広がった接面周縁部を付勢する接面押し付け力を調整することができる。
この付勢力を調整することにより、接面時の密着性を維持しながら前記内シール壁4の耐久性を高めることができる。
また、前記内シール壁4の傘状に広がった周縁部の先端が鋭角であれば、0.5mm以下程度の微細な隙間による流入空気流であっても、内シール壁4の周縁部先端の鋭角膜は流入空気流に吸引付勢され隙間を塞ぐことができる。
【実施例6】
【0036】
図7は請求項6及び7に係る実施例である。
前記内シール壁4の側面外側に、所定幅、所定高の水等の流動液体を包含できる保水弾性体5をリング状に巻き付け、該保水弾性体5の側面外側に、前記外シール壁3をリング状に巻き付けて設けられる。
また、前記外シール壁3のリング状の側面内側に、または内シール壁4のリング状の側面外側に、所定高、所定幅の切り欠きの溝を設け、前記保水弾性体5を溝に嵌着し設けても良い。または、前記内シール壁4のリング状の側面外側と前記外シール壁3のリング状の側面内側とに所定高、所定幅の切り欠きの溝を設け、前記保水弾性体5を溝に嵌着し設けても良い。
また、前記内シール壁4の側面外側と前記外シール壁3の側面内側とは密着しない状況で、所定幅の隙間を保ち設けられ、前記保水弾性体5と前記パッド基板2−1に至る迄のリング状の隙間を液体流入溝5-2とし、前記保水弾性体5と前記外シール壁3の接面平坦部に至る迄のリング状の隙間を液体流出孔5−3として設けられる。
また、液体を供給する手段として設けられた前記液体流入溝5−2と、前記パッド基板2−1の該液体流入溝5−2が当接する位置には、所定個数の液体供給孔5−1が穿設された構造を備えて設けられる。
また、前記内シール壁4及び前記外シール壁3は不透液性の弾性体であり、前記保水弾性体5は透水性且つ保水性の弾性素材であり、前記液体供給孔5−1から注入された液体は前記液体流入溝5−2を流れ、前記保水弾性体5で吸水され保水される。
【0037】
吸着パッドの接面吸着時には、前記内シール壁4及び前記外シール壁3の圧縮に伴い前記保水弾性体5は収縮し、包含する液体を前記液体流出溝5−3に排出する。
排出された液体は、前記液体流出溝5−3を伝わり前記内シール壁4及び前記外シール壁3接する被吸着面上に達し、真空漏れを塞ぐ液体からなるシール壁を形成することができる。
液体の真空シール壁は、液体自体が凹凸面の不連続な凹凸形状に沿うため、弾性体のシール壁が塞ぎきれない凹凸切替わり部の鋭角な落ち込みの0.5mm以下程度の微細な隙間を塞ぎ真空漏れを防ぐことができる。
【0038】
吸着パッドが離面した場合には、前記内シール壁4及び前記外シール壁3の膨張に伴い前記保水弾性体5も膨張し、排水により低下した圧力を取り戻すために前記液体流入溝5−2からの液体を吸水し保水することができる。
【0039】
吸着パッドの接面吸着時と離面時における前記内シール壁4及び前記外シール壁3の収縮と膨張の作用は、前記内シール壁4と前記外シール壁3とに挟持される前記保水弾性体5を収縮と膨張させ、該保水弾性体5の吸水と排水機能を行わせる。
前記保水弾性体5の収縮後の膨張による圧力低下と毛細管作用を利用した連続的な給排水の作用は、連続的に液体シール壁を形成する機能として作用している。
【0040】
尚、前記液体流出溝5−3に薄い膜からなる排水逆止弁を設けても良い。
【実施例7】
【0041】
図8は請求項6及び7に係る実施例である。
図8において、前記内シール壁4が傘状に外側に広がって設けられていることを除き、実施例6と同一構造に設けられている。
前記内シール壁4はその接面周縁部が傘状に広がって設けられているため、被吸着面とは平行でなく傾いて接面した場合にも該内シール壁4の接面周縁部は内側に巻き込まれることが無く、被吸着面との間に隙間を生じることなく、安定した形状で吸着することができる。
また、接面吸着時には前記内シール壁4の周縁部の傘状に開いた壁膜の上部を伝った液体シールは、凹凸面の0.5mm以下程度の微細な隙間に流入空気流により入り込み、0.5mm以下程度の微細な隙間を塞ぎ真空漏れを防ぐことができる。
また、前記内シール壁4の傘状に開いた周縁部の先端が鋭角であれば、0.5mm以下程度の微細な隙間による流入空気流であっても、内シール壁4の周縁部先端の鋭角膜は流入空気流に吸引付勢され隙間を塞ぐことができる。
図8の実施例においては、上記の前記周縁部の先端鋭角膜の遮蔽作用と、前記液体シールの遮蔽作用の2種の真空漏れ遮蔽作用により0.5mm以下程度の微細な隙間も塞ぐことができ、真空吸着力を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
凹凸著しいコンクリート面やタイル面等へ吸着作用する真空吸着パッド。
【符号の説明】
【0043】
1 真空継手
2 基板支持棒
2-1 パッド基板
2-2 真空連通孔
3 外シール壁
3-1 外シール切り欠き
4 内シール壁
5 保水弾性体
5-1 液体供給孔
5-2 液体流入溝
5-3 液体流出孔
6 シール保持具
7 シール保持、兼高さ制御ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド基板の内側に真空源に連通する真空引き孔と、該パッド基板の周縁部に真空室形成のため設けられたシール壁とを備え、接面時に被吸着面に吸着する吸着パッドにおいて、前記シール壁が低硬度の軟性弾性体の内シール壁と、該内シール壁を取り囲み、該内シール壁に接して外側に、該内シール壁よりも壁高が0.5から2.5mm低く、接面部が平坦に設けられた中硬度の軟質弾性体の外シール壁との二重シール壁構造を備えた事を特徴とする真空吸着パッド。
【請求項2】
前記内シール壁は前記基板から所定高で被吸着面方向に傘状に広がって設けられたことを特徴とする請求項1に記載の真空吸着パッド。
【請求項3】
前記外シール壁の接面側平坦部は、前記内シール壁の傘状に広がった接面周縁部の背面に接して設けられ、接面吸着時には該外シール壁の接面平坦部が、該内シール壁の傘状に広がった接面周縁部の背面を押し、被吸着面側に付勢する事を特徴とする請求項2に記載の真空吸着パッド。
【請求項4】
前記内シール壁の側面に外接する前記外シール壁の外径は、該内シール壁の接面周縁部の広がった外径より所定長大きく、接面吸着時には該外シール壁の接面平坦部が該内シール壁の傘状に広がった接面周縁部の背面を押し被吸着面側に付勢するとともに、該外シール壁の接面平坦部自体も被吸着面へ付勢される構造に形成された事を特徴とする請求項3に記載の真空吸着パッド。
【請求項5】
前記内シール壁の傘の開いた部分が当接する該外シール壁の一部を切り欠いて、該外シール壁の残りの接面部は平坦に設けられている事を特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の真空吸着パッド。
【請求項6】
前記内シール壁と前記外シール壁の間に該内シール壁を取り囲んで設けられたリング状の保水弾性体を挾持し、接面吸着時の収縮により保水弾性体から排出された液体が該内シール壁と該外シール壁との間で液体からなる被吸着面に接する第三のシール壁を形成する事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の真空吸着パッド。
【請求項7】
前記保水弾性体には、液体供給手段が設けられており、接面時の弾性体の収縮作用と、離面時の弾性体の膨張作用とにより、液体を吸水し保水弾性体内に保持し、且つ収縮により接面側に排出することで、液体シール壁形成の連続的な作動機能を備える事を特徴とする請求項6に記載の真空吸着パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−110981(P2012−110981A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259613(P2010−259613)
【出願日】平成22年11月21日(2010.11.21)
【出願人】(503051224)
【Fターム(参考)】