説明

真空成膜装置

【課題】連絡室を省いて装置の小型化を図る。
【解決手段】真空成膜装置には、基板50を保持する基板搬送具40を外部から搬入出する準備室20と、基板搬送具40に保持した基板50に対して成膜処理を行う成膜室10とが設けられている。準備室20には、基板搬送具40を成膜室10に搬入出するピックアップ部26が設けられ、準備室20と成膜室10との間には、成膜室10の雰囲気を真空状態に保ちながら、ピックアップ部26による基板搬送具40の準備室20から成膜室10への搬入出と、成膜室10における基板50への成膜処理を行うための仕切部30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基板に対して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によってITO膜等を成膜するために使用される真空成膜装置として、例えば、特許文献1に開示のスパッタ装置が挙げられる。
【0003】
この特許文献1に開示のスパッタ装置では、外部から基板を搬入出する真空準備室と、スパッタリングによって基板に対して成膜を行う真空処理室と、真空準備室から基板を真空処理室に搬入出する連絡室とが設けられている。
【0004】
真空準備室では、成膜される基板が移動するループ状の軌道が内部に設けられ、その内部が真空状態とされている。また、真空処理室では、成膜される基板が移動するループ状の軌道が内部に設けられ、その内部が真空状態とされている。そして、連絡室によりこれら真空準備室の内部と真空処理室の内部とを直線状に連通している。また、ここでいう連絡室には、真空準備室内に搬入された基板を真空処理室に移動させる搬入軌道と、真空処理室にて成膜処理された基板を真空準備室に移動させる搬出軌道とが、内部にそれぞれ設けられている。
【特許文献1】特開2000−38669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示のスパッタ装置では、真空処理室と真空準備室との間に連絡室が介在された構成からなっているために、連絡室を設けるぶん装置が大型化してしまう。さらに、連絡室の内部では、基板の搬入軌道と搬出軌道とを別々に設けているために装置の小型化を行うことが難しい。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、連絡室を省いて装置の小型化を図る真空成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる真空成膜装置は、基板を保持する基板搬送具を外部から搬入出する準備室と、基板搬送具に保持した基板に対して成膜処理する成膜室とが設けられ、前記準備室には、基板搬送具を前記成膜室に搬入出するピックアップ部が設けられ、前記準備室と前記成膜室との間には、前記成膜室の雰囲気を真空状態に保ちながら、前記ピックアップ部による基板搬送具の前記準備室から前記成膜室への搬入出と、前記成膜室における基板への成膜処理を行うための仕切部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、従来技術でいう連絡室を省いて装置の小型化を図ることが可能となる。具体的に、前記準備室と前記成膜室との間における基板搬送具の搬入出を前記ピックアップ部により行うことで、従来技術でいう搬入軌道及び搬出軌道が必要では無くなり、搬入軌道及び搬出軌道を設けるスペースを省くことが実現できる。さらに、従来技術でいう搬入軌道及び搬出軌道を必要としなくなるので、これら搬入軌道、搬出軌道、およびこれら搬入出軌道において基板を移動させる際に用いるコロ付き搬送ローラコンベアのメンテナンスを行う時間およびコストを削減することが可能となる。また、前記仕切部によって前記成膜室の雰囲気の真空状態を保つことが可能となるので、従来技術でいう連絡室を用いた準備室の雰囲気の真空状態と大気状態との切替を行なわなくても、前記準備室の雰囲気の真空状態と大気状態との切替を容易に行うことが可能となる。
【0009】
前記構成において、前記準備室には、基板搬送具を保持してループ状に移動させる準備室内軌道部が設けられ、前記成膜室には、基板搬送具を保持してループ状に移動させる成膜室内軌道部が設けられ、基板搬送具に保持した基板の面がループ状外方に向けられた状態で基板搬送具を保持し、この保持状態で前記ピックアップ部によって前記準備室から前記成膜室への搬入出が行なわれてもよい。
【0010】
この場合、従来技術でいう基板搬送具の回転を行なわなくてもよく、その結果、基板搬送具を回転させる回転機構の設置スペースや基板搬送具の回転を行うスペースを必要とせずに、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0011】
前記構成において、前記準備室には、前記ループ状の準備室内軌道部が複数形成されてもよい。
【0012】
この場合、前記準備室への基板搬送具の搬送から、成膜後の前記準備室からの基板搬送具の搬出までの作業時間を短縮することが可能となる。具体的に、前記準備室に前記準備室内軌道部が1つ形成された場合と比較して、前記成膜室における基板への成膜中、前記準備室には基板搬送具を前記準備室軌道部に配することができない。これは、前記成膜室における基板への成膜を終了した後に前記成膜室から基板搬送具を前記準備室に搬出する必要があり、前記成膜室から搬入した基板搬送具を配する前記準備室内軌道部を確保しなければならないためである。従って、本構成のように前記準備室に前記準備室内軌道部が複数形成されることで、一方の前記準備室内軌道部を前記成膜室から搬入する基板搬送具を保持するために用い、他方の前記準備室内軌道部を次成膜で用いる基板搬送具を外部から前記準備室内に搬入するために用いることが可能となり、基板への成膜工程を一部重複して行ない、作業時間を短縮することが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記仕切部には、前記成膜室の雰囲気を真空状態に保ちながら前記成膜室と前記準備室との遮断と連通を行うバルブ部が設けられ、前記バルブ部は、前記搬送孔の前記成膜室と接する境界において前記成膜室と前記準備室とを遮断してもよい。
【0014】
この場合、前記搬送孔の前記準備室と接する境界において前記成膜室と前記準備室とを遮断する場合と比較して、前記仕切部における空間が前記成膜室の雰囲気に影響を与えるのを抑制するので、前記成膜室の雰囲気の真空状態をより精度よく保つことが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記ピックアップ部には、基板搬送具の上部を保持するピックアップ上保持部と、基板搬送具の下部を保持するピックアップ下保持部とが設けられ、前記ピックアップ上保持部および前記ピックアップ下保持部によって基板搬送具の保持が同時に行なわれてもよい。
【0016】
この場合、前記ピックアップ部への基板搬送具の保持の際や、基板搬送具の搬送の際に基板搬送具が前記ピックアップ部から外れるのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる真空成膜装置によれば、従来技術でいう連絡室を省いて装置の小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面(図1〜4)を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、真空成膜装置としてスパッタリング法を用いたスパッタ装置に本発明を適用した場合を示す。
【0019】
真空成膜装置には、図1〜3に示すように、基板50に対してITO膜等の成膜を行う成膜室10と、基板50を外部から搬入出する準備室20と、これら成膜室10と準備室20との連通と遮断を行う仕切部30とが設けられている。なお、基板50は基板搬送具40に保持されて準備室20に外部から搬入出され、本実施例では、図4に示すように4つの基板50が1つの基板搬送具に搭載可能とされている。
【0020】
上記した基板搬送具40は、図4に示すように、最大4枚の基板50を垂直方向に並べて配するものであり、基板搬送具40に配された全ての基板50の面は同一方向に向いている。そして、基板搬送具40の上部41には、当該基板搬送具40を成膜室10と準備室20との間で搬入出する際にピックアップ上保持部26a(下記参照)を挿通して保持する保持孔43が設けられている。また、基板搬送具40の下部42には、当該基板搬送具40を成膜室10と準備室20との間で搬入出する際にピックアップ下保持部26b(下記参照)に保持される下方保持部45が設けられている。この下方保持部45は、水平方向に延出した2つの平板状の棒体45aと、棒体45aの両端が棒体45aに対して垂直方向に延出した2つの平板状の棒体45bとから構成された梯子型の棒体からなり、当該基板搬送具40を成膜室10の図示しない搬送保持部(下記参照)および準備室20の図示しない搬送保持部(下記参照)で保持する保持部としても用いられる。
【0021】
円筒状の成膜室10は、図1〜3に示すように円筒リング状からなり、円筒状をした外周壁11と、この外周壁11内に同心状態で配置された円筒状の内周壁12とによって中空リング状に構成されている。この成膜室10には、外周壁11と内周壁12との間を、基板搬送具40を保持してループ状に移動させるループ状の成膜室内軌道部13(以下、軌道部13と略す)が設けられている。成膜室10内は、雰囲気が真空状態に保持されるようになっており、成膜室10における外周壁11および内周壁12には、軌道部13を挟んで相互に対向する複数のターゲット15がそれぞれ設けられている。
【0022】
成膜室10内のループ状の軌道部13には、成膜される複数の基板50が保持された基板搬送具40を搬送する複数の搬送保持部(図示省略)が、全周にわたって周方向に一定の間隔をあけて連続してループ状に設けられている。そして、この軌道部13上の搬送保持部は、基板搬送具40に保持した4つの基板50の面が全てループ状外方に向けられた状態で基板搬送具40(具体的に下方保持部45)を保持し、この保持状態でスパッタリング法により基板50の成膜を行う。
【0023】
準備室20は、図1〜3に示すように円筒リング状からなり、円筒状をした外周壁21と、この外周壁21内に同心状態で配置された内周壁22とによって構成されている。この準備室20には、外周壁21と内周壁22との間を、基板搬送具40を保持してループ状に移動させる2つのループ状の準備室内軌道部23a,23b(以下、軌道部23a,23bと略す)が設けられている。準備室20内は、雰囲気が真空状態に保持されるようになっており、準備室20における外周壁21には、軌道部23a,23b内を移動する基板50が保持された基板搬送具40の搬入出を行う出入り口25が、周方向の1箇所に設けられている。
【0024】
準備室20内のループ状の軌道部23a,23bには、成膜される複数の基板50が保持された基板搬送具40を搬送する複数の搬送保持部(図示省略)が、全周にわたって周方向に一定の間隔をあけて連続してループ状に設けられている。すなわち、この軌道部23a,23b上の搬送保持部では、基板搬送具40に保持した最大4つの基板50の面が全てループ状外方に向けられた状態で基板搬送具40(具体的に下方保持部45)を保持し、この保持状態で準備室20内にて基板50の成膜待機および搬送待機を行う。
【0025】
また、準備室20には、基板搬送具40を成膜室10に搬入出するピックアップ部26が設けられている。ピックアップ部26には、基板搬送具40の上部41を保持するピックアップ上保持部26aと、基板搬送具40の下部42を保持するピックアップ下保持部26bとが設けられている。ピックアップ上保持部26aは、水平方向に突起した棒体である。また、ピックアップ下保持部26bは、水平方向に突起した2つの矩形状の棒体が配され、基板搬送具40を成膜室10と準備室20との間で搬入出する際にこれら2つの棒体によって基板搬送具40の下部42を持ち上げて保持し基板搬送具40の搬入出を行う。これらピックアップ上保持部26aおよびピックアップ下保持部26bにより、基板搬送具40の保持が同時に行なわれる。
【0026】
上記した準備室20と成膜室10との間には、成膜室10の雰囲気を真空状態に保ちながら、ピックアップ部26による基板搬送具40の準備室20から成膜室10への搬入出と、成膜室10における基板50への成膜処理を行うための仕切部30が設けられている。
【0027】
仕切部30には、図1〜3に示すように、準備室20から基板搬送具40を成膜室10に搬入出するための搬送孔31と、成膜室10の雰囲気を真空状態に保ちながら搬送孔31を開口と閉口とを行うバルブ部32(図2,3参照)と、バルブ部32への減圧と加圧により搬送孔31の開口と閉口とを行う6つからなる第1のシリンダ部33(図3参照)と、バルブ部32への減圧と加圧により搬送孔31の位置とその他の位置とに変位(移動)させる第2のシリンダ部34(図2,3参照)とが設けられている。そして、このバルブ部32は、仕切部30における成膜室10に近接した端部に設けられ、成膜室10の内部(雰囲気)と仕切部30の内部(雰囲気)との遮断および連通を行う。すなわち、バルブ部32により搬送孔31の成膜室10と接する境界において成膜室10と準備室20との遮断と連通が行われる。なお、バルブ部32は、水平面上において搬送孔31を開口と閉口するように仕切部30内を変位する。
【0028】
次に、上記した構成の真空成膜装置による基板50への成膜処理を、図面(特に図1〜3)を用いて説明する。
【0029】
例えば4つの基板50が保持された基板搬送具40を、準備室20の出入り口25を通って、準備室20内に搬入する。この場合、準備室20内の軌道部23a,23bでは、全ての搬送保持部が準備室20の放射方向に沿った状態とされて、ループ状に連続した状態になっている。なお、この時、仕切部30に設けられたバルブ部32は、図3に示すように、成膜室10との間を遮断した状態とされている。また、成膜室10の内部は真空状態とされている。このような状態で、準備室20の出入り口25から、複数の基板50がそれぞれ保持された複数の基板搬送具40を、順次、準備室20内の例えば軌道部23a上の搬送保持部に搬入して保持させる。
【0030】
軌道部23a上に所定数の基板搬送具40を搬入すると、出入り口25を閉鎖して、準備室20を真空状態にする。準備室20が真空状態になると、第1のシリンダ部33を減圧することによって成膜室10とバルブ部32との接合を開放する(図2参照)。この時、バルブ部32によって搬送孔31を開口し、準備室20と成膜室10とを連通状態とする。
【0031】
準備室20内が真空状態になると、図1に示すように第2のシリンダ部33によってバルブ部32を変位させ搬送孔31の位置から外れた位置に移動させる。バルブ部32を変位させた後に、準備室20から成膜室10にピックアップ部26により基板搬送具40を搬入する。
【0032】
軌道部23a上の搬送保持部に保持された全ての基板搬送具40が、ピックアップ部26によって成膜室10内に搬入されると、図2に示すように第2のシリンダ部33によってバルブ部32を搬送孔31の位置に移動させ、図1に示すように第1のシリンダ部33の加圧によってバルブ部32を成膜室10に圧着(接合)させる。つまり、バルブ部32により成膜室10の雰囲気が他の雰囲気と閉鎖状態となる。その後に準備室20の雰囲気を、真空状態を解除して大気に開放する。つまり、準備室20と成膜室10との雰囲気を遮断した状態とするとともに成膜室10の雰囲気を真空状態とする。
【0033】
そして、成膜室10内に搬入した各基板搬送具40が、軌道部13上の搬送保持部の周回移動により成膜室10内を所定方向に搬送されると、各基板搬送具40に保持された各基板50が加熱されるとともに、各ターゲット15によって、例えばITO膜が、それぞれ成膜される。
【0034】
また、バルブ部32によって真空状態に保持された成膜室10内にて、各基板搬送具40に保持された各基板50に対して成膜されている間、準備室20では、大気に開放された状態で、出入り口25から、次の成膜を行う基板50が保持された基板搬送具40を準備室20内の軌道部23b上に搬入して搬送保持部に保持させる。
【0035】
成膜室10内において、各基板搬送具40に保持された各基板50に対する成膜が終了し、かつ、準備室20内を真空状態にすると、第1のシリンダ部33と第2のシリンダ部34によりバルブ部32が開放されるとともに、成膜室10内の各基板搬送具40を、順次、ピックアップ部26による準備室20への基板搬送具40の搬出によって、順次、準備室20内に設けられた軌道部23a上に搬出して搬送保持部に保持させる。
【0036】
成膜された基板50が保持された各基板搬送具40が、成膜室10から準備室20内の軌道部23a上に全て搬出されると、その後、軌道部23bの搬送保持部に保持された次成膜対象の基板50が保持された基板搬送具40が、成膜室10に順次搬出される。
【0037】
軌道部23b上の搬送保持部に保持された全ての基板搬送具40が、ピックアップ部26によって成膜室10内に搬出されると、図2に示すように第2のシリンダ部33によってバルブ部32を変位させてバルブ部32を搬送孔31の位置に移動させ、図1に示すように第1のシリンダ部33の加圧によってバルブ部32を成膜室10に圧着(接合)させる。その後に準備室20の雰囲気を、真空状態を解除して大気に開放する。
【0038】
そして、成膜室10内に搬入された各基板搬送具40が、軌道部13上の搬送保持部の周回移動により成膜室10内を所定方向に搬送されると、各基板搬送具40に保持された各基板50が加熱されるとともに、各ターゲット15によって、例えばITO膜が、それぞれ成膜される。
【0039】
また、バルブ部32によって真空状態に保持された成膜室10内にて、各基板搬送具40に保持された各基板50に対して成膜されている間、準備室20では、大気に開放された状態で、出入り口25から、既に成膜処理を行なった基板50が保持された基板搬送具40を軌道部23aから外部に搬出して、新たに次の成膜を行う基板50が保持された基板搬送具40を準備室20内の軌道部23a上の搬送保持部に搬入して搬送保持部に保持させ、準備室20内で待機させる。
【0040】
成膜室10内において、各基板搬送具40に保持された各基板50に対する成膜が終了し、かつ、準備室20内を真空状態にすると、第1のシリンダ部33と第2のシリンダ部34によりバルブ部32が開放されるとともに、成膜室10内の各基板搬送具40を、順次、ピックアップ部26による準備室20への基板搬送具40の搬出によって、順次、準備室20内に設けられた軌道部23b上に搬出して搬送保持部に保持させる。
【0041】
以後、前述の動作と同様の動作が繰り返されることにより、各基板搬送具40に保持された複数の基板50に対して、連続して成膜が実施される。
【0042】
上記したように、本実施例によれば、準備室20と成膜室10とが設けられ、準備室20にピックアップ部26が設けられ、準備室20と成膜室10との間には仕切部30が設けられるので、従来技術でいう連絡室を省いて装置の小型化を図ることができる。具体的に、準備室20と成膜室10との間における基板搬送具40の搬入出をピックアップ部26により行うことで、従来技術でいう搬入軌道及び搬出軌道が必要では無くなり、搬入軌道及び搬出軌道を設けるスペースを省くことが実現できる。実際、上記した従来技術の連絡室と比較して、本実施例によれば準備室20と成膜室10との間の距離を約1/3短く(数千mmを数百mmに短縮)することが可能となる。さらに、従来技術でいう搬入軌道及び搬出軌道を必要としなくなるので、これら搬入軌道、搬出軌道、およびこれら搬入出軌道において基板を移動させる際に用いるコロ付き搬送ローラコンベアのメンテナンスを行う時間およびコストを削減することができる。
【0043】
また、仕切部30によって成膜室10の雰囲気の真空状態を保つことが可能となるので、従来技術でいう連絡室を用いた準備室の雰囲気の真空状態と大気状態との切替を行なわなくても、準備室20の雰囲気の真空状態と大気状態との切替を容易に行うことができる。
【0044】
また、準備室20に軌道部23a,23bが設けられ、成膜室10に軌道部13が設けられ、基板搬送具40に保持した基板50の面がループ状外方に向けられた状態で基板搬送具40を保持し、この保持状態でピックアップ部26によって準備室20から成膜室10への搬入出が行なわれるので、従来技術でいう基板搬送具40自体の回転を行なわなくてもよく、その結果、基板搬送具40を回転させる回転機構の設置スペースや基板搬送具40の回転を行うスペースを必要とせずに、装置の小型化を図ることができる。
【0045】
また、バルブ部32により、搬送孔31の成膜室10と接する境界において成膜室10と準備室20とを遮断するので、搬送孔31の準備室20と接する境界において成膜室10と準備室20とを遮断する場合と比較して、仕切部30における空間が成膜室10の雰囲気に影響を与えるのを抑制するので、成膜室10の雰囲気の真空状態をより精度よく保つことができる。
【0046】
また、準備室20には、2つの軌道部23a,23bが形成されるので、準備室20への基板搬送具40の搬送から、成膜後の準備室20からの基板搬送具40の搬出までの作業時間を短縮することができる。具体的に、準備室20に準備室内軌道部が1つ形成された場合と比較して、成膜室10における基板50への成膜中、準備室20には基板搬送具40を準備室軌道部に配することができない。これは、成膜室10における基板50への成膜を終了した後に成膜室10から基板搬送具40を準備室20に搬出する必要があり、成膜室10から搬入した基板搬送具40を配する準備室内軌道部を確保しなければならないためである。従って、このように準備室20に軌道部23a,23bが形成されることで、一方の軌道部23a(23b)を成膜室10から搬入する基板搬送具40を保持するために用い、他方の軌道部23b(23a)を次成膜で用いる基板搬送具40を外部から準備室20内に搬入するために用いることができ、基板50への成膜工程を一部重複して行ない、作業時間を短縮することができる。
【0047】
また、ピックアップ部26にピックアップ上保持部26aとピックアップ下保持部26bとが設けられ、ピックアップ上保持部26aおよびピックアップ下保持部26bによって基板搬送具40の保持が同時に行なわれるので、ピックアップ部26への基板搬送具40の保持の際や、基板搬送具40の搬送の際に基板搬送具40がピックアップ部26から外れるのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施例では、成膜室10と準備室20とにおける搬送保持部による基板搬送具40の保持位置を基板搬送部40の下部42としている。これら搬送保持部による基板搬送具40の保持位置によれば、搬送保持部に付着したゴミなどが成膜室10内における成膜中や、準備室20内における搬送待機中および成膜待機中に基板50に付着するのを防ぐことができる。特に、搬送保持部による基板搬送具40の保持位置を基板搬送部40の上部41とした場合、搬送保持部に付着したゴミが、基板搬送部40の上部41の下方に配された基板50に付着する可能性があるが、本実施例によれば、そのような不具合が生じるのを抑えることができる。
【0049】
なお、本実施例では、1つの基板搬送具に4つの基板50が搭載可能とされているが、これに限定されるものではなく、任意の枚数の基板が搭載可能とされていればよい。
【0050】
また、上記実施例では、準備室20に2つのループ状の軌道部23a,23bが設けられているが、これに限定されるものではなく、これは作業効率を向上させる好適な例であり、1つのループ状の軌道部が設けられてもよく、更に多くのループ状の軌道部が設けられてもよい。
【0051】
また、上記実施例では、成膜室10の軌道部13内において、加熱および成膜処理する構成であったが、準備室20の内部にて、基板50を加熱するようにしてもよい。また、成膜室10内には、4組のターゲットを設ける構成であったが、ターゲットの数は限定されない。
【0052】
また、上記本実施例では、第1のシリンダ部32は6つから構成しているが、これに限定されるものではなく、バルブ部32へのシリンダ圧が均一にかけることができればその個数や位置は図7に示す形態に限定されるものではない。
【0053】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、基板に対して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって、薄膜を形成する真空成膜装置に適用できる。特に、本発明は、液晶表示装置に使用される透明電極基板等を製造するために、透明基板に対して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって、ITO膜を成膜する真空成膜装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本実施例にかかる、準備室と成膜室との間で基板搬送具に搬入出が可能となる状態の真空成膜装置の概略構成平面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる、準備室と成膜室とが連通された状態の真空成膜装置の概略構成平面図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる、準備室と成膜室とが遮断された状態の真空成膜装置の概略構成平面図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる基板搬送具の概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
10 成膜室
13 成膜室内軌道部
20 準備室
23a,23b 準備室内軌道部
26 ピックアップ部
26a ピックアップ上保持部
26b ピックアップ下保持部
30 仕切部
31 搬送孔
32 バルブ部
40 基板搬送具
50 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成膜装置において、
基板を保持する基板搬送具を外部から搬入出する準備室と、基板搬送具に保持した基板に対して成膜処理を行う成膜室とが設けられ、
前記準備室には、基板搬送具を前記成膜室に搬入出するピックアップ部が設けられ、
前記準備室と前記成膜室との間には、前記成膜室の雰囲気を真空状態に保ちながら、前記ピックアップ部による基板搬送具の前記準備室から前記成膜室への搬入出と、前記成膜室における基板への成膜処理を行うための仕切部が設けられたことを特徴とする真空成膜装置。
【請求項2】
前記準備室には、基板搬送具を保持してループ状に移動させる準備室内軌道部が設けられ、
前記成膜室には、基板搬送具を保持してループ状に移動させる成膜室内軌道部が設けられ、
基板搬送具に保持した基板の面がループ状外方に向けられた状態で基板搬送具を保持し、この保持状態で前記ピックアップ部によって前記準備室から前記成膜室への搬入出が行なわれることを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項3】
前記準備室には、前記ループ状の準備室内軌道部が複数形成されたことを特徴とする請求項2に記載の真空成膜装置。
【請求項4】
前記仕切部には、前記成膜室の雰囲気を真空状態に保ちながら前記成膜室と前記準備室との遮断と連通を行うバルブ部が設けられ、
前記バルブ部は、前記搬送孔の前記成膜室と接する境界において前記成膜室と前記準備室とを遮断することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の真空成膜装置。
【請求項5】
前記ピックアップ部には、基板搬送具の上部を保持するピックアップ上保持部と、基板搬送具の下部を保持するピックアップ下保持部とが設けられ、前記ピックアップ上保持部および前記ピックアップ下保持部によって基板搬送具の保持が同時に行なわれることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の真空成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−261002(P2008−261002A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104208(P2007−104208)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(391006429)三容真空工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】