説明

真空断熱パネル用包装材及び真空断熱パネル

【課題】真空断熱パネルの袋体の合せ目を脆弱化することなく包装材に断熱帯を形成し、かつ真空断熱パネルのコア材に対する包装材の自由度を大きくすることである。
【解決手段】基材フィルムとアルミニウム箔10と表面保護フィルムより成る包装材1の前記アルミニウム箔10を除去した断熱帯10aを設け、これによって袋体を形成し、コア材20を真空包装して真空断熱パネルを作製する。前記断熱帯10は、ヒートシール部となるマージン10cよりも内側でコア材20のエッヂライン21dよりもW1だけ離れた位置に、連続したループ状に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として冷蔵庫や電気ポットなどの断熱材として用いられる真空断熱パネルに用いられる高バリヤ性包装材及びこの包装材でコア材を包装した真空断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からグラスウールや発泡合成樹脂などの断熱材は、家電製品の断熱材として広く用いられてきたが、近年省エネルギの要請が高まり、さらに高性能の断熱材が求められ、その要請に答えるものとして真空断熱パネルが注目されている。
【0003】
この真空断熱パネルは、一般にパーライト粉末などの無機質粉体から成る無機質多孔性成型体、発泡合成樹脂から成る有機多孔性成型体、グラスファイバやセラミックファイバなどの繊維質等をコア材として、これをバリヤ性の高いフィルムまたはシートから成る包装材で形成された袋体(容器)に装填し、袋体内を真空引きした後、袋体を密封した構造になっている。そして袋体内部の真空度を高め、かつ維持するために、前記バリヤ性の高い包装材としてアルミニウム箔のような金属箔の積層体を用いることが多く、袋体を形成したとき、袋体の周縁部に包装材を重ね合せたヒートシール部が形成される。ところが金属箔は極めて熱伝導性が高いため、このような合せ目(マージン)を通じて袋体の表面側(一面側)と裏面側(他面側)に熱伝導が起こる。例えば冷蔵庫の壁面に真空断熱パネルを装填した場合、冷蔵庫壁面の外面は外気、壁面の内面は庫内の冷気にさらされる。従って真空断熱パネルの一面は外気の影響で比較的高い温度にさらされ、他面は庫内の冷気の影響で比較的低い温度にさらされることになる。しかるに上述のように真空断熱パネルの表面と裏面(一面と他面)が側面に位置する合せ目(マージン)を介して熱伝導が生じるため、断熱性が大きく阻害される問題が生じる。
【0004】
そのため、特許文献1、2に開示されているように、包装材の前記合せ目または側面の金属箔を取り除いて断熱帯を形成することが提案されている。しかしながら、バリヤ性を高めるために比較的厚みの大きい金属箔を用いるのが普通であり、この金属箔を除去した断熱帯の部分は包装材が脆弱になる恐れがあり、このような包装材で包装した断熱パネルを冷蔵庫などに装着する場合、断熱パネルの側端面を支持するのが一般的であり、また側端面に荷重がかかり易いため、脆弱な断熱帯の部分が破損する恐れがある。
【0005】
また、包装材の重ね合せ目(マージン)や側端面は巾が狭いため、充分な巾の断熱帯を設けることができず、さらに自由なパターンで断熱帯を形成することができない問題もある。
【0006】
また上記の真空断熱パネルの一つの問題は、コア材が包装袋に斜めに傾いた状態で包装されると、側端面から直接他面側の包装材に熱が伝わり、断熱帯が役に立たなくなることである。
【0007】
そこで、特許文献3には、側端面の金属薄膜を全部取り除いた真空断熱パネルが開示されているが、これでは側端面でバリヤ性、断熱性が低下し、パネル全体としての断熱性能が著しく低下する。
【0008】
これらの真空断熱パネルに用いる包装材の共通した問題は、真空断熱パネルのサイズが異なるごとに包装材の断熱帯の位置が異なるため、包装材を代えなければならないことである。そこで、特許文献4には、収納材(包装材)の金属層に格子状の切断線を形成することが提案されている。しかしながらこの技術も前述のものよりもさらに切断線(断熱帯)が多くなるだけであって、袋体を形成したときの接合部となる合せ目を脆弱化するばかりかバリヤ性も阻害する問題が生じる。
【0009】
そのほか、特許文献5には、袋体の合せ目(接合部分)にスペーサを介在させる技術が記載されているが、包装材の端面が接触すると熱橋を形成してしまうため、スペーサには一定以上の厚みが要求され、部材が増えるばかりでなくこれを合せ目の全周に設ける必要があって製造上面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭60−142928号公報
【特許文献2】特開昭60−256700号公報
【特許文献3】特開平5−272864号公報
【特許文献4】特開2006−70951号公報
【特許文献5】特開平10−185417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこでこの発明の課題は、真空断熱パネルの袋体の合せ目を脆弱化することなく包装材に自由なパターンで断熱帯を形成し、かつコア材に対する包装材の自由度を大きくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明は、アルミニウム箔の一面に基材フィルム、他面に表面保護フィルムを設け、前記アルミニウム箔の一部を帯状に除去した断熱帯を形成した積層体より成る真空断熱パネル用包装材において、前記断熱帯を、前記包装材によって袋体を形成するために袋体周縁部に設けられるヒートシール部よりも内側でかつ全体としてループ状に連続するように形成したのである。前記断熱帯は全体として各辺がほぼ直線の四角形ループを形成し、包装材によって真空包装されるコア材の一面と側端面との角部であるエッヂラインよりも断熱帯が所定距離だけ内側に位置するようにしておくのが好ましい。
【0013】
前記断熱帯が連続した規則的波形、円形、楕円形、多角形のいずれかであって、全体としてループを形成したものでもよい。これらの断熱帯の巾は0.05mm〜100mmが好ましい。
【0014】
上述のような包装材を用いて袋体を形成し、コア材を真空包装して真空断熱パネルを形成する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、以上のように、断熱帯を包装材のヒートシール部より内側、好ましくはコア材のエッヂラインよりも内側に配置することによって、取り扱い時や取り付けの際に負荷のかかる側端面にアルミニウム箔が除去された脆弱部が存在せず強度の優れた真空断熱パネルが得られる。
【0016】
また、断熱帯の線形状を適当に選択すれば、真空包装するコア材の位置が多少ずれても包装の際に突条や皺が生じることがなく強度も低下することがない。従って単一の包装材で異なるサイズのコア材を包装する数種類の袋体を形成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の包装材の一例を示す断面図
【図2】この発明の包装材の他の例を示す断面図
【図3】包装材のアルミニウム箔の一例を示す平面図
【図4】包装材のアルミニウム箔の他の例を示す平面図
【図5】包装材のアルミニウム箔の別の例を示す平面図
【図6】包装材のアルミニウム箔のさらに別の例を示す平面図
【図7】真空断熱パネルの一部拡大断面図
【図8】アルミニウム箔に設けた断熱帯の種々の例を示す模式図
【図9】真空断熱パネルの一部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。真空断熱パネル用包装材は、アルミニウム箔(以下アルミニウム合金箔を含む)を介在させた積層構造であればいずれでもよいが、例えば図1に示すように、バリア層としてのアルミニウム箔10の一面に基材フィルム11、他面に表面保護フィルム12を積層し、基材フィルム11の外面にヒートシール層13を設けた包装材1があげられる。その他、図2に示すように、アルミニウム箔10と表面保護フィルム12との間に金属またはセラミック蒸着層14aを設けた蒸着フィルム14を挿入した包装材1でもよい。また、フィルム11、12は、単層に限らず共押出しやラミネーションによる複合フィルムであってもよい。これらのフィルムや層の積層方法は、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、塗工など公知の手段を採用することができる。
【0019】
上記フィルム11、12、14の材料は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムが用いられる。またヒートシール層13としても同様の材料が用いられるが、ポリエチレン、中でも高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0020】
図3に示すように、前記包装材1のバリア層であるアルミニウム箔10には、アルミニウム箔10を線状または帯状に除去した断熱帯10aが設けられている。この断熱帯10aは、前記基材フィルム12にアルミニウム箔10を積層した後、アルミニウム箔10を常法に従ってエッチングし、アルミニウム箔を線状または帯状に除去したものである。断熱帯10aの巾Wは、0.05mm〜100mm程度が好ましい。この巾Wは主として真空断熱パネルの大きさに依存する。
【0021】
上記断熱帯10aは、図3に示すように、全体として連続した一つのループ(連続環)を形成している。そして、包装材1によって真空断熱パネルのコア材を包装する袋体を形成するためのヒートシール部に対応する部分10c(以下マージン10cという)よりも所定距離だけ(後述する)内側になるように断熱帯10aを形成する。
【0022】
前記断熱帯10aの全体形状は、通常長方形または正方形のアルミニウム箔10とほぼ相似形であるが、図4に示すように、二重のループを形成するように設けてもよい。勿論二重以上でもよい。また、図5に示すように、断熱帯10aが二個の独立したループを形成するように設けてもよい。この場合も鎖線で示すようにループを二重にすることができる。さらに、図6に示すように、三個の独立したループを設けることができる。図5、図6に示すような断熱帯10aを設けた場合、例えば冷凍室と冷蔵室が分けられた冷蔵庫の真空断熱パネルに用いると、バリア層(アルミニウム箔10)による冷蔵室から冷凍室への伝熱を遮断することができる。なお、断熱帯10aのコーナ部は、図示のようにアール状にしておくのが好ましく、それ以外の部分はほぼ直線状になっている。
【0023】
上述のようにして断熱帯10aを設けたアルミニウム箔10を用いて包装材1を形成し、この包装材1を2枚重ね合せ、前記したマージン10cに対応する部分を三方シールし一方を開口として残し、この開口から長方形板状コア材を挿入し、真空引きした後開口をさらにヒートシールして真空断熱パネルを形成する。出来上った真空断熱パネルを図7に示す。図示のように、コア材20の一面21a、他面21b及び側面(端面)21cに包装材1は真空引きによって密着している。そして断熱帯10aを、マージン10c(ヒートシール部)から所定距離、即ちコア材20の一面21aまたは他面21bの側端面21cから距離W1だけ離れた個所に位置するように予め設けておくことによって、図から明らかなように、板状真空断熱パネルのコア材20の一面21aを被覆するアルミニウム箔10と他面21bを被覆するアルミニウム箔10は完全に熱的に断絶する。そして包装材1は真空引きの際にぴったりとコア材20の一面(表面)21aと他面(裏面)21bに吸着されて密着し、隙間の生じ易い側面(端面)21及びマージン10cの部位には、アルミニウム箔10の除去された部分がないため、取り扱い時や取り付け時に負荷のかかり易い袋体の側面(端面)部を損傷することがない。なお距離W1は、5mm〜100mm程度であり、主として真空断熱パネルの大きさに依存して定められる。
【0024】
前記断熱帯10aの各辺はほぼ直線状に形成されていたが、図8に示すように規則的な曲線を画くように形成することができる。図8(a)は規則的な波形状断熱帯10bを示す。波形の振巾及びサイクル長さは適宜選択可能であるが、例えば振巾10mm〜100mm、長さも同様に10mm〜100mm程度がよい。勿論断熱帯10bの巾は断熱帯10aと同様0.05mm〜100mmで全体として図3乃至図6に示すような長方形または正方形のループを形成し、マージン10cの内側に設けられている。また波形は、図示のような滑らかな曲線に限らず、三角形、四角形等の多角形でもよい。図8(b)(c)に示すように、一方にのみ突出する規則的な波形であってもよい。波形の高さ及び巾は10mm〜100mm程度である。図8(d)に示すように、円形または楕円形を連続させて断熱帯10bを形成してもよい。この場合隣接するものと鎖状に連結してもよく、また円形に代えて多角形を用いることもできる。これらの最大径は10mm〜100mm程度である。なお、ここで規則的とは、隣接する例えば波形状が同一のものに限らず、大波形から次第に小波形になり、次いでまた大波形から小波形に変化するような循環的な規則性も含む。
【0025】
上記のような断熱帯10bを採用した場合次のような利点がある。先に示した図3乃至図6に示す断熱帯10aの場合、図7に示すように包装材1によって形成した袋体でコア材20を包装する際、コア材20が袋体内の正常な位置に装填されず、断熱帯10aとコア材20の他面21b(一面21aでもよい)と側面(端面)21cとの角部(エッヂライン)21dに近接するか或は交わるようなことが生じる。このような状態で真空引きされると、包装材1がコア材20に吸着されてエッヂライン21dに沿って折れ曲る前に、先に断熱帯10aに沿って包装材1が折れ曲り、包装材1に突条ができたり皺が生じる場合がある。
【0026】
一方、図8に示すような断熱帯10bを採用すると、コア材20のエッヂライン21dに近接したり交差しても断熱帯10bに沿って折れ曲ることはない。これを利用すると、断熱帯10bに、図7のようなエッヂライン21dより内側の位置から、図9のようにエッヂライン21dにまたがる(重なる)位置までの自由度を持たせることができる。即ち同じサイズの断熱帯10bを有する包装材1で予め数種類のサイズの袋体を作成し用意しておくことによって、外周長(一面21a+他面21b+両側面21cの合計長さ)の異なる数種類のコア材20を包装することができる。例えば図9に示すように、断熱帯10bがエッヂライン21dをまたがって形成されていても何ら支障なく、真空包装時に包装材1に突条や皺が生じることもない。このとき断熱帯10bの一部がコア材20の側面(端面)21cに位置する個所においても、アルミニウム箔10は表面側と連続しておりかつ側面21cにおける除去部分が少ないため、包装材1を脆弱化することはほとんどない。
【符号の説明】
【0027】
1 包装材
10 アルミニウム箔
10a、10b 断熱帯
10c マージン
11 基材フィルム
12 表面保護フィルム
13 ヒートシール層
14 蒸着フィルム
14a 蒸着層
20 コア材
21a コア材の一面
21b コア材の他面
21c コア材の側面(端面)
W 断熱帯の巾
1 断熱帯のコア材のエッヂからの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔の一面に基材フィルム、他面に表面保護フィルムを設け、前記アルミニウム箔の一部を帯状に除去した断熱帯を形成した積層体より成る包装材において、前記断熱帯を、前記包装材によって袋体を形成するために袋体周縁部に設けられるヒートシール部よりも内側でかつ全体としてループ状に連続するように形成したことを特徴とする真空断熱パネル用包装材。
【請求項2】
前記断熱帯が全体として各辺がほぼ直線の四角形ループを形成し、包装材によって真空包装されるコア材の一面と側端面との角部であるエッヂラインよりも内側に位置するようにした請求項1に記載の真空断熱パネル用包装材。
【請求項3】
前記断熱帯が連続した規則的波形から成り、全体として連続したループを形成していることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル用包装材。
【請求項4】
前記断熱帯が連続した規則的な円形、楕円形、多角形のいずれかから成り、全体として連続したループを形成していることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル用包装材。
【請求項5】
前記断熱帯の巾が0.05mm〜100mmである請求項1〜4のいずれかに記載の真空断熱パネル用包装材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の真空断熱パネル用包装材を用いてコア材を真空包装した真空断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−106653(P2011−106653A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265274(P2009−265274)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】