説明

真空断熱材、断熱パネル及び断熱箱

【課題】高い断熱性能を持ち、しかもコア材を外包材へ充填する際に充填しやすくすること。
【解決手段】外包材20の中にコア材30を充填して密封した真空断熱材10において、コア材30は、ケナフ靭皮に含まれるケナフ靭皮繊維の複数本が束となったケナフ靭皮繊維束である、構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外包材の中にコア材を充填して密封した真空断熱材、この真空断熱材を用いた断熱パネル及び断熱箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保冷車の荷箱等に用いられる真空断熱材は、外包材の中にコア材を充填し、真空状態で封止したものである。従来、コア材として、連続気泡硬質ウレタンフォームが頻繁に用いられているが、ウレタンフォームはリサイクル性に乏しく環境に優しくないため、近年、環境に優しい真空断熱材の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献2には、コア材として綿繊維が用いられた真空断熱材が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−114245号公報
【特許文献2】特開2005−163981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されたコア材(綿繊維)は、繊維径が小さいため、真空断熱材として高い断熱性能を得ることができる。しかし、綿繊維は外包材への充填時における成形性が良くないという問題が指摘されている。すなわち、綿繊維は、外包材へ充填する際にふわふわするので充填しにくいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、外包材の中にコア材を充填して密封した真空断熱材において、高い断熱性能を持ち、しかもコア材を外包材へ充填する際に充填しやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段は、以下の発明である。
(1)外包材の中にコア材を充填して密封した真空断熱材であって、
前記コア材は、ケナフ靭皮に含まれるケナフ靭皮繊維の複数本が束となったケナフ靭皮繊維束である、真空断熱材。
(2)上記(1)に記載の真空断熱材であって、
前記ケナフ靭皮繊維束は、その平均径が80μm以下である、真空断熱材。
(3)上記(1)または(2)に記載の真空断熱材であって、
前記ケナフ靭皮繊維は、その平均径が20μm以下である、真空断熱材。
(4)上記(1)から(3)のうちいずれかに記載の真空断熱材を内板と外板の間に固定した断熱パネル。
(5)上記(4)に記載の断熱パネルを箱型形状に複数個組み合わせて構成される断熱箱。
(6)保冷車用の断熱箱である、上記(5)に記載の断熱箱。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極めて細い径であるケナフ靭皮繊維束をコア材として用いることで、高い断熱性能を持つ真空断熱材を得ることができる。また、ある程度の強度と弾性力を有するケナフ靭皮繊維束をコア材として用いることで、コア材を外包材に充填する際に充填しやすくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本実施形態に係る真空断熱材10の斜視図である。図2は、図1のA−A線断面を示す断面図である。図1及び図2に示すように、真空断熱材10は、外包材20の中にコア材30を充填して真空状態とし、外包材20の四辺が封止されたものである。このため、図1で見て真空断熱材10の上下方向にコア材30が充填された分だけ膨らんでいる状態となっている。真空断熱材10を真空状態とするためには、例えば、真空引き装置を用いることができる。
【0009】
[外包材について]
コア材30を入れる外包材20としては、その内部の真空状態をできる限り保ち、密封することのできる外包材20を使用する。このような外包材20としては、例えば、高いガスバリア性を有するラミネートフィルムあるいはアルミフィルムなどを使用することができる。この中では、外包材20に穴のあきにくい、あるいは破れにくいといったいわゆる耐ピンホール性の高いラミネートフィルムが好ましい。このようなラミネートフィルムとしては、例えば、最外層にナイロン、中間層にアルミ箔、最内層にポリエチレンを配置した構成のラミネートフィルムを使用することができる。
【0010】
[コア材について]
本発明に係る真空断熱材10において、外包材20の中に充填するコア材30としては、ケナフ靭皮繊維束を使用する。ケナフ靭皮繊維束は、その径の大きさが小さいので真空断熱材として高い断熱性能を得ることができる。また、ケナフ靭皮繊維束は、適度な強度と弾性力を有するので、コア材を外包材に充填する際に充填しやすくなる。これにより、コア材を外包材に充填する際の作業効率を向上させることができる。
ケナフ靭皮繊維束は、ケナフ靭皮に含まれるケナフ靭皮繊維の複数本が束になって構成されるものである。一般に、ケナフの茎は、中心側の芯部とその芯部を被覆する靭皮から構成されている。本発明において、ケナフ靭皮繊維とは、ケナフ靭皮を構成している繊維のことを意味している。ケナフ靭皮繊維束は、例えば、ケナフの靭皮をオープナなどの解繊機によって解繊処理することで得ることができる。
また、ケナフは一年草の植物で短期間に大量に栽培可能であることから、地球環境への負荷を低減することが可能となる。すなわち、コア材としてケナフ靭皮繊維束を用いることで環境に優しい真空断熱材を提供することができる。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
図3は、実施例1に係る真空断熱材10の断面図である。図3に示すように、真空断熱材10は、袋状のラミネートフィルム22の中にケナフ靭皮を解繊処理して得たケナフ靭皮繊維束32を充填し、ゲッター剤40を入れた構成となっている。そして、真空断熱材10は、真空装置により真空引きして真空状態とし密封したものである。このとき、ケナフ靭皮繊維束32は、綿繊維のようにふわふわすることなくラミネートフィルム22に充填することができた。つまり、ケナフ靭皮繊維束32は、ラミネートフィルム22に入れる際、充填しやすいものであることが確認された。これは、ケナフ靭皮繊維束が適度な強度と弾性力を有するものだからであると考えられる。
なお、ゲッター剤40とは、ケナフ靭皮繊維束32(コア材30)と共にラミネートフィルム22(外包材20)に入れて、ケナフ靭皮繊維束32(コア材30)の中に含まれる微量な水分やガスならびにラミネートフィルム22(外包材20)を通して侵入するガスを吸着させるものである。これにより、真空断熱材10の真空状態が保持できるので、断熱性能の低下を防止することができる。
【0012】
また、ケナフ靭皮繊維束32を裁断し、一本一本の径の大きさを顕微鏡で観察したところ、ケナフ靭皮繊維束32の平均径は80μm以下であり、そのケナフ靭皮繊維束32を構成するケナフ靭皮繊維32aの平均径は20μm以下であった。図4に、顕微鏡で観察したケナフ靭皮繊維束32の表面の状態を示す。図4に示すように、ケナフ靭皮繊維束32は、ケナフ靭皮繊維32aが密集して構成されていることが観察された。
【0013】
また、コア材としての断熱性能を確認するために実施例1に係るケナフ靭皮繊維束32を使用した真空断熱材の熱伝導率を測定した。これと合わせて、比較例として、一般的に用いられている発泡ウレタンの熱伝導率を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
表1に示すように、ケナフ靭皮繊維束32をコア材として使用した真空断熱材の熱伝導率(0.005)は、比較例の発泡ウレタンの熱伝導率(0.02)の1/4となった。このことより、ケナフ靭皮繊維束32をコア材として用いた場合、発泡ウレタンよりも高い断熱性能を得られることが判明した。
また、優れた断熱性能を得るためには、ケナフ靭皮繊維束32の平均径が80μm以下であるものが好ましいことが示唆された。また、ケナフ靭皮繊維32aの平均径が20μm以下であるものが好ましいことが示唆された。
【0016】
[実施例2]
図5は、真空断熱材10を内板62に固定し、外板64を内板62に対向させた状態を示す斜視図である。図6は、図5のB−B線断面の一部分を示す断面図である。
図6の状態から断熱パネル60を作成するには、まず、真空断熱材10と所定形状の硬質ポリウレタンフォーム50とを一体成形(一体発泡)する。次に、一体成形した成形ユニット55の複数個を内板62上に並列に配置して接着剤により固着し、外板64を内板62と対向させる。次に、内板62と外板64との間の空隙に発泡ウレタンフォーム52を発泡注入すると図7の状態となる。このような方法により、真空断熱材10の複数個を内板62と外板64の間に固定したパネル形状の断熱パネル60を作成することができる。
また、図5に示すように、断熱パネル60は、真空断熱材10が内板62方向から硬質ポリウレタンフォーム50により被われる構成となっている。このため、内板62方向から外力が加わった場合でも真空断熱材10に耐ピンホール性を持たせることができる。
【0017】
[実施例3]
図8は、断熱箱70の外観を示す斜視図である。図8に示すように、断熱箱70は、断熱パネル60を箱型形状に複数個組み合わせて構成されるものである。図8で見て紙面の手前側には開閉可能な扉部72が形成され、扉部72から断熱箱70の内部に冷凍又は保冷を要する物品を収納することが可能な構成となっている。本実施例の断熱箱70は、例えば、冷蔵庫、クーラーボックス、検体輸送用保冷ボックス、洋菓子運搬用保冷ボックス、冷凍食品一次保管庫などとして使用することも可能である。
【0018】
[実施例4]
図9は、断熱箱70を積載した保冷車80を示す斜視図である。図9に示すように、断熱箱70は、保冷車用として用いるものである。この保冷車用の断熱箱70は、コア材として断熱性能の高いケナフ靭皮繊維束32を用いるものなので外気からの熱の浸入を減少させることが可能となる。これにより、断熱箱70の内部に収納された物品の鮮度を長時間にわたって保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】真空断熱材の斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面を示す断面図である。
【図3】実施例1に係る真空断熱材の断面図である。
【図4】ケナフ靭皮繊維束を裁断した断面を顕微鏡で観察した観察図である。
【図5】真空断熱材を内板に固定し、外板を内板に対向した状態を示す斜視図である。
【図6】図5のB−B線断面を示す断面図である。
【図7】断熱パネルの断面図である。
【図8】断熱箱の外観を示す斜視図である。
【図9】断熱箱を積載した保冷車を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
10 真空断熱材
20 外包材
22 ラミネートフィルム
30 コア材
32 ケナフ靭皮繊維束
32a ケナフ靭皮繊維
40 ゲッター剤
50 硬質ポリウレタンフォーム
52 発泡ウレタンフォーム
55 成形ユニット
60 断熱パネル
62 内板
64 外板
70 断熱箱
72 扉部
80 保冷車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外包材の中にコア材を充填して密封した真空断熱材であって、
前記コア材は、ケナフ靭皮に含まれるケナフ靭皮繊維の複数本が束となったケナフ靭皮繊維束である、真空断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の真空断熱材であって、
前記ケナフ靭皮繊維束は、その平均径が80μm以下である、真空断熱材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の真空断熱材であって、
前記ケナフ靭皮繊維は、その平均径が20μm以下である、真空断熱材。
【請求項4】
請求項1からは請求項3のうちいずれか1項に記載の真空断熱材を内板と外板の間に固定した断熱パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の断熱パネルを箱型形状に複数個組み合わせて構成される断熱箱。
【請求項6】
保冷車用の断熱箱である、請求項5に記載の断熱箱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−71247(P2007−71247A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256327(P2005−256327)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】