説明

真空断熱材及び真空断熱材の曲げ加工方法

【課題】均一な板厚を備えつつ、曲げ加工によるしわの発生を抑制できる真空断熱材及び真空断熱材の曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】真空断熱材100の外包材300を構成する積層フィルム310a,310bは、ヒートシール層311a,311b、ガスバリア層312a,312b、第1保護層313a,313b及び第2保護層314a,314bからなる。ここで、曲げ加工時に外側とするガスバリア層312aは、純アルミニウム又はアルミニウム合金を焼きなましたもの形成され、曲げ加工時に内側とするガスバリア層312bは、純アルミニウム又はアルミニウム合金を加工硬化したもので形成される。また、曲げ加工時に内側とする第2保護層(最外層)314bは、ナイロンやポリテトラフルオロエチレンPTFEなどを用いて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工に供される真空断熱材、及び、当該真空断熱材の曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空断熱材の厚み方向に垂直な側面部に、少なくとも1本以上の溝を形成し、溝部分でガスバリア性フィルムのテンションが低下することで、容易に折り曲げが行えるようにした、真空断熱材があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−336691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、真空断熱材に溝を形成することで、折り曲げが容易に行えるようになるが、溝部分で板厚が薄くなるため、断熱性能が低下するという問題があった。
一方、真空断熱材に溝を設けなければ板厚を均一にできるが、曲げ加工によって曲げの内側となる真空断熱材の面にしわが発生し、曲げの内側面を保温、断熱の対象物(例えば、貯湯タンクなど)に密着させる場合、しわによって密着性が悪化することで、断熱性能が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、均一な板厚を備えつつ、曲げ加工によるしわの発生を抑制できる真空断熱材及び真空断熱材の曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る真空断熱材は、シート状のコア材と、前記コア材を被覆する積層フィルムからなる外包材とを備え、前記外包材の内部を減圧密封して形成され、曲げ加工に供される真空断熱材であって、曲げの外側となる前記積層フィルムを、曲げの内側となる前記積層フィルムよりも延性が大きな積層フィルムとした。
また、本発明に係る真空断熱材の曲げ加工方法は、本発明に係る真空断熱材を用意する工程と、延性がより小さい積層フィルムで被覆される側を内側として前記真空断熱材を曲げる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る真空断熱材及び真空断熱材の曲げ加工方法によると、曲げ加工に伴うしわの発生を抑制でき、しわによる密着性の悪化を抑制して、高い断熱性能を発揮できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る真空断熱材の一実施形態を示す図であり、(A)は上面図、(B)は断面図、(C)は部分拡大断面図である。
【図2】実施形態に係る真空断熱材の使用例を示す斜視図である。
【図3】実施形態において真空断熱材の曲げ加工に用いる曲げ加工装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態の真空断熱材を示す図である。図1に示した真空断熱材100は、曲げ加工に供されて円弧状に曲げられ、例えば円筒状の貯湯タンクの被覆などに用いられる真空断熱材である。
真空断熱材100は、シート状のコア材(芯材)200と、外包材300と、吸着剤400とを備え、コア材200及び吸着剤400を、積層フィルムからなる外包材300で被覆し、外包材300の内部を減圧密封したものである。
【0010】
真空断熱材100の製造は、以下のようにして行われる。
まず、同じ大きさの長方形の積層フィルムを2枚重ねて、3辺をヒートシールし、袋状の外包材300を作製する。
次いで、外包材300の開口部からコア材200及び吸着剤400を内部に挿入し、これをチャンバー内に設置して、内部を例えば13Pa以下まで減圧した後、外包材300の開口部をヒートシールすることで、真空断熱材100を得る。
【0011】
次に、真空断熱材100の構成を詳細に説明する。
コア材200は、珪酸ガラスを主成分とする非結晶構造を有するグラスファイバーをシート状に加工成型したものである。コア材200を構成する繊維としては、グラスファイバーの他、グラスウール、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウールなどを用いることができる。
また、コア材200としては、繊維系の他、発泡樹脂、多孔質体、粉末や粉末の成形体、薄膜積層体などを用いることができる。
【0012】
吸着剤400は、真空断熱材100の断熱性能を向上させるための水分吸着剤やガス吸着剤であり、酸化カルシウム、酸化バリウム、ゼオライト、シリカゲルなどである。
外包材300を構成する積層フィルム310a,310bは、ヒートシール層311a,311b、ガスバリア層312a,312b、ガスバリア層312a,312bを保護するための第1保護層313a,313b及び第2保護層314a,314bからなる4層構造のラミネートフィルムであって、厚さは60μm〜100μm程度のものである。
【0013】
そして、第2保護層314a,314bを最外層とし、ヒートシール層311a,311bを最内層とし、積層フィルム310a,310bを重ねるときに、相互のヒートシール層311a,311bを密着させて熱溶着する。
尚、積層フィルム310a,310bは、保護層を1層として、ヒートシール層、ガスバリア層、保護層の3層構造とすることができる。
【0014】
ヒートシール層311a,311b(最内層)は樹脂層(樹脂フィルム層)であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)などから選択した共通の樹脂材料によって、厚さ50μm程度に形成される。
また、第1保護層313a,313bも樹脂層(樹脂フィルム層)であり、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンナフタレートPEN、ポリプロピレンなどから選択した共通の樹脂材料によって、厚さ5〜10μm程度に形成される。
尚、ヒートシール層311a,311b及び第1保護層313a,313bを形成する樹脂材料が、積層フィルム310aと積層フィルム310bとで異なってもよい。
【0015】
一方、ガスバリア層312a,312bは、金属箔層であり、ガスバリア層312aとガスバリア層312bとで硬さ(延性)の異なる金属材料を用いている。
具体的には、積層フィルム310aのガスバリア層312aは、例えば、JIS規格のA1100‐O、A1N30‐O、A8021‐Oなどに準拠する純アルミニウム又はアルミニウム合金を用いたアルミニウム箔層としてある。
A1100及びA1N30は純度99%以上の純アルミニウムであり、また、A8021は、鉄の量が多いアルミニウム合金であり、A1100‐O、A1N30‐O、A8021‐Oの調質記号「O」は、軟化焼きなましにより完全に再結晶して最も軟らかい状態になったものであることを示す。
【0016】
一方、積層フィルム310bのガスバリア層312bは、例えば、JIS規格のA1100‐H18、A1N30‐H18、A8021‐H18などに準拠する純アルミニウム又はアルミニウム合金を用いたアルミニウム箔層としてある。
A1100‐H18、A1N30‐H18、A8021‐H18の調質記号「H18」の「H1n(n:1〜9)」は、加工硬化させたものであることを示し、nは強さの度合いを示す。尚、H18の他、H19、或いは、H11〜H17のいずれかの強さを適宜選択して用いることができる。
【0017】
但し、ガスバリア層312a,312bに用いる純アルミニウム又はアルミニウム合金を、A1100、A1N30、A8021のいずれかに限定するものではなく、例えば、1000番台のA1100、A1N30以外の純アルミニウムを用いることができる。
このように、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312aでは、純アルミニウム又はアルミニウム合金を軟化焼きなましによって最も軟らかくしたもの(O材)を用いているのに対し、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312bでは、純アルミニウム又はアルミニウム合金を加工硬化させて強さを増加させたもの(H材)を用いている。
【0018】
そして、このような調質(非熱処理)の違いにより、ガスバリア層312aを形成するアルミニウム箔は、ガスバリア層312bを形成するアルミニウム箔に比べて軟らかく、延性が大きく塑性変形し易いものになっていて、これにより、積層フィルム310bに比べ、積層フィルム310aの延性(素材が破断せずに柔軟に変形する限界)がより大きくなるようにしてある。
ここで、真空断熱材100の曲げ加工においては、積層フィルム310a側が曲げの外側になり、積層フィルム310b側が曲げの内側になるようにして曲げられるようになっているから、積層フィルム310bに比べて積層フィルム310aの延性がより大きいということは、曲げ加工時に外側になる積層フィルム310aの延性が、曲げ加工時に内側になる積層フィルム310bよりも大きくしてあることになる。
【0019】
更に、本実施形態では、曲げ加工の前の状態で、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312bに比べて、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312aの厚さを厚くしてある。換言すれば、曲げ加工において外側となるアルミニウム箔層の厚さを、内側よりも厚くしてある。具体的には、ガスバリア層312aの厚さを、ガスバリア層312bの厚さの1.03〜1.21倍程度に設定することが好ましく、例えば、ガスバリア層312bの厚さが6μm程度であるのに対して、ガスバリア層312aの厚さを7μm程度に設定する。
【0020】
即ち、曲げ加工によって曲げの外側のガスバリア層(アルミニウム箔層)312aが延び、その厚さが薄くなることを考慮し、曲げ加工後に、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312aの厚さとガスバリア層(アルミニウム箔層)312bの厚さとが同程度になるように、曲げ加工前で、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312aの厚さがガスバリア層(アルミニウム箔層)312bの厚さよりも厚くなるようにしてある。
尚、ガスバリア層312aの厚さとガスバリア層312bの厚さとの比率は、曲げ加工における曲率、コア材200の厚さ、ガスバリア層(アルミニウム箔層)312aの硬さなどに応じて最適値が変化するものであり、これらの条件に応じて適宜設定する。
【0021】
また、第2保護層314a,314b(最外層)は厚さ5〜10μm程度の樹脂層(樹脂フィルム層)であり、第2保護層314aと第2保護層314bとで、摩擦係数(曲げ加工に用いるローラに対する摩擦係数)が異なる樹脂材料を用いている。
具体的には、第2保護層314aは、例えば、ポリエチレンテレフタレートPET(ポリエステル系樹脂)、ポリエチレンナフタレートPEN(ポリエステル系樹脂)、ポリプロピレンなどから選択した樹脂材料で形成される。
一方、第2保護層314bは、第2保護層314aを形成する樹脂材料(ポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂)よりも摩擦係数の小さい樹脂材料である、例えば、ポリアミドPA系樹脂のナイロンやフッ素系樹脂のポリテトラフルオロエチレンPTFEなどを用いて形成される。
【0022】
積層フィルム310a,310bの好ましい一例としては、積層フィルム310aを、外側から内側に向けて、ポリエチレンテレフタレートフィルム層(第2保護層314a)、ナイロンフィルム層(第1保護層313a)、A1100‐Oに準拠するアルミニウム箔層(ガスバリア層312a)、ポリエチレンフィルム層(ヒートシール層311a)を積層したラミネートフィルムとする。
一方、積層フィルム310bを、外側から内側に向けて、ポリテトラフルオロエチレンフィルム層(第2保護層314b)、ナイロンフィルム層(第1保護層313b)、A1100‐H18に準拠するアルミニウム箔層(ガスバリア層312b)、ポリエチレンフィルム層(ヒートシール層311b)を積層したラミネートフィルムとする。
【0023】
また、積層フィルム310a,310bを3層構造とする場合の好ましい一例としては、積層フィルム310aを、外側から内側に向けて、ポリエチレンテレフタレートフィルム層(保護層)、A1100‐Oに準拠するアルミニウム箔層(ガスバリア層312a)、ポリエチレンフィルム層(ヒートシール層311a)を積層したラミネートフィルムとする。
一方、積層フィルム310bを、外側から内側に向けて、ポリテトラフルオロエチレンフィルム層(保護層)、A1100‐H18に準拠するアルミニウム箔層(ガスバリア層312b)、ポリエチレンフィルム層(ヒートシール層311b)を積層したラミネートフィルムとする。
【0024】
上記の真空断熱材100は、例えば、円筒状の貯湯タンクの外周に合わせて円弧状に曲げ加工された後、図2に示すように、貯湯タンク600の外周を覆うように取り付けられ、貯湯タンク600の保温、断熱材として用いられる。
但し、保温、断熱の対象物を貯湯タンクに限定するものではなく、浴槽、魔法瓶、冷蔵庫などの保温、断熱に、真空断熱材100を曲げ加工したものを用いることができる。
【0025】
そして、真空断熱材100を円弧状に曲げる曲げ加工は、例えば、図3に示すように、上ロール701と、上ロール701に対して真空断熱材100を挟んで対向する一対の下ロール702a,702bとを備えた曲げ加工装置700を用いて行われる。
尚、曲げ加工を円弧状の曲げに限定するものではなく、円筒状やL字状などであってもよく、従って、曲げ加工装置700は、図3に示したものに限定されず、例えば、型曲げを行う曲げ加工装置であってもよい。
更に、本実施形態の曲げ加工方法には、保温、断熱の対象物(例えば貯湯タンクなど)に真空断熱材100を押し付け、対象物の外形に沿って変形させる加工を含むものとする。
【0026】
ここで、真空断熱材100を曲げ加工する場合には、図3に示したように、曲げの内側(曲げ加工装置700では上ロール701側)が、真空断熱材100の積層フィルム310b側となり、曲げの外側(曲げ加工装置700では下ロール702a,702b側)が、真空断熱材100の積層フィルム310a側となるようにする。
このように、積層フィルム310bに比べて積層フィルム310aの延性をより大きくした真空断熱材100を、延性がより大きい積層フィルム310a側を外側にして曲げ加工することで、積層フィルム310a,310bとして同じ材料、同じ物性である同一の積層フィルムを用いた真空断熱材に比較して、曲げ加工後における曲げの内側の積層フィルムのしわを低減できることを確認できた。
【0027】
曲げの外側となる積層フィルム310a、換言すれば、曲げ加工時における引っ張り応力側の積層フィルム310aでは、ガスバリア層312aが曲げ加工に伴って延びるときに破断することがないよう、ガスバリア層312aを形成する材料として、軟らかく延性の大きな材料(例えば、純アルミニウム又はアルミニウム合金の焼きなましたもの)を用いることが要求される。
しかし、曲げの内側となる積層フィルム310b、換言すれば、曲げ加工時における圧縮応力側の積層フィルム310bでは、ガスバリア層312bを形成する材料が、外側のガスバリア層312aに要求される軟らかさ(延性)と同程度の材料であると、積層フィルム310bに座屈によるしわが発生し易くなってしまう。
【0028】
逆に、座屈によるしわが発生を低減するために内側のガスバリア層312aの材料として要求される硬さ(延性)を、外側のガスバリア層312aを形成する材料にそのまま適用すると、曲げ加工時にガスバリア層312aが破断したりピンホールが発生したりする可能性が高くなってしまう。
即ち、曲げの外側におけるガスバリア層の損傷を抑制するために要求されるガスバリア層(金属箔層)の硬さ(延性)と、曲げの内側における積層フィルムのしわを抑制するために要求されるガスバリア層(金属箔層)の硬さ(延性)とが異なるので、ガスバリア層312a,312bを同じ硬さ(材料)のものとすると、損傷の抑制としわの抑制とを両立させることが難しい。
【0029】
これに対し、本実施形態の真空断熱材100では、積層フィルム310a側(曲げの外側)のガスバリア層312aで、積層フィルム310b側(曲げの内側)のガスバリア層312bに比べて、純アルミニウム又はアルミニウム合金としてより軟らかく延性の大きなものを用いたので、曲げ加工に伴って曲げの外側のガスバリア層312aが損傷することを抑制しつつ、曲げの内側の積層フィルム310bにしわが発生することを抑制できる。
曲げの内側の積層フィルム310bに生じるしわが少なければ、貯湯タンクなどの保温、断熱の対象物に、曲げの内側の面を密着させることができ、しわが多い場合に比べて高い断熱性能が得られる。
【0030】
また、本実施形態の真空断熱材100では、板厚が略均一なコア材200を用い、曲げ加工後も板厚は略均一に保持されるので、これによっても、高い断熱性能を得られる。換言すれば、本実施形態の真空断熱材100は、板厚が略均一なコア材200を用いつつ、しわの発生を抑制でき、保温、断熱の対象物の外形に合わせる曲げ加工を施して組み付けたときに、高い断熱性能を発揮できる。
【0031】
更に、本実施形態の真空断熱材100では、曲げの内側の積層フィルム310bの最外層である保護層314bを、樹脂の中でも摩擦係数が小さいフッ素系樹脂のポリテトラフルオロエチレンPTFEやポリアミドPA系樹脂のナイロンやアセタール樹脂系のポリアセタールPOMなどを用いて形成したので、これによっても、曲げの内側の積層フィルム310bに曲げ加工に伴ってしわが発生することを抑制できる。
ここで、曲げ加工時における引っ張り応力側となる、曲げの外側の積層フィルム310aでは、しわ対策が不要である一方、曲げの外側になる保護層314aには、曲げの内側になる保護層314bに比べて大きな延性が求められる。
【0032】
更に、保護層314bを形成するポリテトラフルオロエチレンPTFEなどのエンジニアリングプラスチックは、ポリエチレンテレフタレートPETなどの汎用プラスチックに比べて一般に高価であり、また、ポリテトラフルオロエチレンPTFEなどの樹脂の中でも摩擦係数の低いものは、ポリエチレンテレフタレートPETなどに比べて、延性の点で劣ることが多い。
即ち、曲げの内側の積層フィルム310bの保護層314bには、しわ抑制のために摩擦係数の小さい樹脂を用いることが好ましいが、曲げの外側の積層フィルム310aの保護層(最外層)314aにも同じ樹脂を用いると、必要な延性が得られなくなったり、真空断熱材100のコストを無用に増加させたりすることになってしまう。
【0033】
従って、保護層314bには、ポリテトラフルオロエチレンPTFEなどの樹脂の中でも摩擦係数が小さい材料を用いるとしても、保護層314aには、相対的に摩擦係数が大きい材料ではあるものの、延性を確保でき、かつ、廉価なポリエチレンテレフタレートPETなどを用いることが好ましく、結果的に、保護層(最外層)314bを形成する材料として、保護層314aよりも摩擦係数の小さい材料を選択したことになる。
そして、上記のようにして保護層314a,314bの材料を使い分けるようにすれば、しわをより低減させつつ、曲げの外側の積層フィルム310aの延びを確保し、更に、真空断熱材100のコストを抑制できる。
【0034】
また、上記真空断熱材100では、曲げ加工の前の状態で、曲げの外側となるガスバリア層312aの厚さを、曲げの内側となるガスバリア層312bよりも厚くしてあるので、曲げ加工後に、ガスバリア層312aの厚さが、ガスバリア層312bに比べて薄くなり、ガスバリア層312aにおけるガスバリア性がガスバリア層312bよりも低下してしまうことを抑制できる。
【0035】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、本実施形態では、ガスバリア層312a,312bの双方を、純アルミニウム又はアルミニウム合金で形成したアルミニウム箔層としたが、例えば、ガスバリア層312aを、純アルミニウム又はアルミニウム合金を焼きなましたもので形成したアルミニウム箔層とし、ガスバリア層312bを、ステンレス箔で形成することができる。
この場合も、ガスバリア層312aの金属材料として、ガスバリア層312bの金属材料よりも軟らかく延性の大きな材料を用いることになり、曲げ加工に伴うガスバリア層312aの損傷を抑制しつつ、積層フィルム310bのしわを抑制できる。
【0036】
また、保護層314b(最外層)の材料として、保護層314aと同じポリエチレンテレフタレートPETなどを用いる一方、保護層314bの外表面や、積層フィルム310bと接触する曲げ加工装置700のロールなどに、潤滑剤や潤滑塗料を塗布してもよい。
更に、保護層314bの摩擦係数を、添加剤を用いて低減することができ、例えば、保護層314bの材料として、二硫化モリブデンを添加したポリアミド(ナイロン)を用いたり、フッ素樹脂添加剤を添加したポリエチレンナフタレートPENを用いたりすることができる。
【0037】
また、真空断熱材100においては、曲げ加工時に外側とすべき面と内側にすべき面とが既定され、これを逆転させて曲げ加工すると、多くのしわが発生したり、ガスバリア性が大きく低下するなどの不具合が生じる。そこで、真空断熱材100の曲げ加工時に外側とすべき面と内側にすべき面とを容易に区別できるように、真空断熱材100の表裏(保護層314a,314b)の色を異ならせたり、曲げ加工時に外側とすべき面であるか内側とすべき面であるか(又は、保温、断熱の対象物に密着させる面であるか否か)を指示する文字や図形を表裏にプリントしたりすることが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
100…真空断熱材、200…コア材、300…外包材、310a,310b…積層フィルム、311a,311b…ヒートシール層、312a,312b…ガスバリア層、313a,313b…第1保護層、314a,314b…第2保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のコア材と、前記コア材を被覆する積層フィルムからなる外包材とを備え、前記外包材の内部を減圧密封して形成され、曲げ加工に供される真空断熱材であって、
曲げの外側となる前記積層フィルムを、曲げの内側となる前記積層フィルムよりも延性が大きな積層フィルムとした、真空断熱材。
【請求項2】
前記積層フィルムが金属箔層を含み、曲げの外側となる前記積層フィルムの金属箔層を形成する金属を、曲げの内側となる前記積層フィルムの金属箔層を形成する金属よりも軟らかく延性の大きな金属とした、請求項1記載の真空断熱材。
【請求項3】
曲げの外側となる前記積層フィルムの金属箔層の厚さを、曲げの内側となる前記積層フィルムの金属箔層よりも厚くした、請求項2記載の真空断熱材。
【請求項4】
曲げの内側となる前記積層フィルムの最外層を形成する材料の摩擦係数を、曲げの外側となる前記積層フィルムの最外層を形成する材料の摩擦係数よりも小さくした、請求項1〜3のいずれか1つに記載の真空断熱材。
【請求項5】
曲げの外側となる前記積層フィルムの金属箔層を形成する金属が、純アルミニウム又はアルミニウム合金を焼きなましたものであり、曲げの内側となる前記積層フィルムの金属箔層を形成する金属が、純アルミニウム又はアルミニウム合金を加工硬化したものである、請求項2又は3記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記純アルミニウム又はアルミニウム合金が、JIS規格のA1100、A1N30、A8021のいずれか1つに準拠する純アルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項5記載の真空断熱材。
【請求項7】
曲げの内側となる前記積層フィルムの最外層を形成する材料が、フッ素系樹脂又はポリアミド系樹脂であり、曲げの外側となる前記積層フィルムの最外層を形成する材料が、ポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である、請求項4記載の真空断熱材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の真空断熱材を用意する工程と、
延性がより小さい積層フィルムで被覆される側を内側として前記真空断熱材を曲げる工程と、
を含む、真空断熱材の曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−7462(P2013−7462A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141409(P2011−141409)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】