説明

真空断熱材

【課題】耐熱性を維持したまま、金属製の外包材を用いた真空断熱材を安価にかつ的確に被取り付け体に取り付けることができると共に、余剰部を有効に活用できる真空断熱材を提供する。
【解決手段】芯材部が存在する存在部と、芯材部が存在しない非存在部とに画定し、この非存在部を用いて、被取り付け体に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属製の外包材を用いた真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、断熱材の耐熱性を高めるために、外包材として金属製のものを用いた真空断熱材が考案されてきていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、外包材として樹脂製のものを用いた真空断熱材も従来から考案されてきていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−150098号公報
【特許文献2】特開平7−113494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した金属製の外包材を用いた真空断熱材は、それ自体では、耐熱性に優れているものの、発熱体等の被取り付け体に真空断熱材を取り付けるときには、接着剤や両面テープ等の樹脂を用いて行われてきた。このため、使用条件によっては、長期の接着性に問題が生じるおそれがあるため、用途により樹脂以外の固定方法、又は樹脂と併用する固定方法が必要であった。また、耐熱性の高い樹脂を用いた場合には、高価にならざるを得なかった。
【0005】
また、金属製の外包材を用いた場合でも、樹脂製の外包材を用いた場合でも、真空にするために、外包材同士を接合して封止する必要があり、外包材のみが存在する余剰部、いわゆるヒレと称される部分を形成せざるを得なかった。この余剰部は、断熱には何ら効果を奏するものではなく、真空断熱材の取り付け作業を阻害しないようにするために、折り曲げ等をする必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐熱性を維持したまま、金属製の外包材を用いた真空断熱材を安価にかつ的確に被取り付け体に取り付けることができると共に、余剰部を有効に活用できる真空断熱材を提供することにある。
【0007】
以上のような目的を達成するために、本発明においては、真空断熱材を、芯材部が存在する存在部と、芯材部が存在しない非存在部とに画定し、この非存在部を用いて、被取り付け体に取り付ける。
【0008】
具体的には、本発明に係る真空断熱材は、
芯材部と、前記芯材部を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる金属製外包材と、を含む真空断熱材であって
互いに向かい合う前記金属製外包材が接合されて形成された接合部を含み、
前記接合部は、
前記金属製外包材の内部を封止して減圧状態に維持し、かつ、
前記芯材部が存在する存在部と、前記芯材部が存在しない非存在部とに画定し、
前記非存在部を介して、被取り付け体に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
上述したように、本発明に係る真空断熱材は、芯材部と金属製外包材とを含む。この金属製外包材は、芯材部を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる。さらに、金属製外包材は、接合部も含む。この接合部は、互いに向かい合う金属製外包材を接合することによって形成された部位である。
【0010】
この接合部は、互いに向かい合う金属製外包材を接合するので、金属製外包材の内部を封止して減圧状態に維持することができる。さらに、接合部によって、存在部と非存在部とが画定される。この存在部は、芯材部が存在する部位であり、非存在部は、芯材部が存在しない部位である。このように画定された非存在部を用いて、被取り付け体に取り付けられる。被取り付け体は、真空断熱材を取り付けることができるものであれば、いかなるものでもよい。
【0011】
このように非存在部は、被取り付け体に対して、真空断熱材の被接合部として機能する。このようにしたことで、余剰部となる非存在部を有効に活用することができる。また、非存在部を用いることによって、接着剤等の樹脂を用いることなく、被取り付け体に真空断熱材を取り付けることができるので、耐熱性を維持したまま、安価にかつ的確に被取り付け体に取り付けることができる真空断熱材を提供することができる。また、熱融着によるシール層を有しないので、耐熱性能、長期的な断熱性能を維持できる。
【0012】
また、本発明に係る真空断熱材は、
前記非存在部が、前記芯材部よりも外側に位置するものが好ましい。
【0013】
このようにしたことにより、余剰部である非存在部を有効に活用することができると共に、余剰部を折り曲げたりする手間を省くことができ、作業効率を高めることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る真空断熱材は、
前記接合部が、溶接法によって形成されたものが好ましい。
【0015】
このように、溶接によって接合部を形成することにより、的確に封止でき、工程を簡素化、容易化することができる。
【0016】
さらにまた、本発明に係る真空断熱材は、
前記金属製外包材が、ステンレス製であるものがより好ましい。
【0017】
このようにステンレス製の外包材を用いることによって、熱伝導を低くして断熱効果を高めることができると共に、耐熱性も高めることができるので、長期間の使用に耐えることができる真空断熱材を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る真空断熱材は、
前記非存在部には、貫通孔が形成され、
前記非存在部は、前記貫通孔を介して、固定具及び/又は固定部によって、前記被取り付け体に取り付けられるものが好ましい。
【0019】
非存在部に貫通孔を形成することによって、ネジやボルト等を固定具とした場合には、被取り付け体に容易に取り付けることができると共に、着脱可能にできるので、真空断熱材の交換作業を容易にすることができる。また、リベット等を固定具とした場合には、被取り付け体に的確かつ確実に取り付けることができ、長期間に亘っても、真空断熱材と被取り付け体との間に緩みが生じないので、断熱性能を維持することができる。さらに、被取り付け体側に固定部を設けて取り付けられるようにしても良い。例えば、固定部として前記貫通孔を掛止可能とするような突起部を設けるようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明に係る真空断熱材は、
前記芯材部が、無機系芯材から構成されたものが好ましい。
【0021】
無機系芯材を用いることによって、耐熱性を高めることができ、長期間に亘って断熱効果を維持することができる。
【0022】
さらにまた、本発明に係る真空断熱材は、
前記金属製外包材が、熱融着シール層を含まないものが好ましい。
【0023】
耐熱性が低い部材を用いないので、長期間に亘って耐熱性を高めた状態を維持することができる。
【0024】
また、本発明に係る真空断熱材は、
前記非存在部が、前記被取り付け体の形状に適合させて変形できるものが好ましい。
【0025】
被取り付け体の形状に適合するように非存在部を変形させて、取り付けることができるので、外気と接触する箇所を少なくでき、的確に断熱することができる。
【発明の効果】
【0026】
耐熱性を維持したまま、金属製の外包材を用いた真空断熱材を安価にかつ的確に被取り付け体に取り付けることができると共に、余剰部を有効に活用できる真空断熱材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
<<<第1の実施の形態>>>
図1は、真空断熱材100を示す斜視図である。図2は、この真空断熱材100を示す正面図であり、図3は、図1に示した線I−Iに沿った真空断熱材100を示す断面図である。なお、図3は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。
【0029】
図1〜図3に示すように、真空断熱材100と外包材120とを含む。真空断熱材100は、芯材部110を外包材120に収納して、溶接ライン130を形成することによって作ることができる。真空断熱材100の作り方の詳細については、後で述べる。
【0030】
<<芯材部110>>
<芯材部110の形状>
図1及び図2に示すように、芯材部110は、略薄板状の形状を有する。芯材部110の厚さや大きさは、断熱すべき対象物(以下、被取り付け体と称する。)の大きさや、被取り付け体に要する断熱性能に応じて適宜定めればよい。
【0031】
<芯材部110の材料>
芯材部110は、特に限定されないが、繊維集合体、連続気泡発泡体等が使用される。断熱性の観点から好ましくは繊維集合体である。繊維集合体は、作業性の観点から、上述したように、略板状の形態で使用されることが好ましい。繊維集合体を、そのままの「わた状態」や、微細化した「粉体状」で使用する場合には、芯材部110の取り扱い性が低下するので、芯材部110を、後述する外包材120へ収納する工程が煩雑になり、作業性が悪化する。
【0032】
繊維集合体は無機繊維、有機繊維またはそれらの混合物からなる。
【0033】
無機繊維としては、例えば、ガラス繊維(グラスウール)、アルミナ繊維、スラグウール繊維、シリカ繊維、ロックウール等が挙げられる。
【0034】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維、ポリノジック繊維、レーヨン繊維等の合成繊維、麻、絹、綿、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。無機繊維および有機繊維は、1種からなる単独繊維または複数種の混合繊維として用いられる。
【0035】
この第1の実施の形態では、後述する外包材120の耐熱性の利点を活かすために、芯材部110としても耐熱性に優れる無機系芯材が好ましく、断熱性も考慮すれば、グラスウール製芯材が特に好ましい。
【0036】
<<外包材120>>
<外包材120の形状>
外包材120は、図1及び図2に示すように、2枚のシート状の外包材120a及び120bによって成形される。なお、以下では、外包材120a及び120bを、単に外包材120と称する場合もある。
【0037】
2枚の外包材120a及び120bの各々は、同じ大きさの正方形や長方形等の一定の形状を有する。2枚の外包材120a及び120bの各々の形状及び大きさは、芯材部110の形状及び大きさや、後述する非存在部134の形状及び大きさ等に合せて適宜定めればよい。
【0038】
後述するように、2枚の外包材120a及び120bが、互いに重なり合うようにし、その間に芯材部110を挟んで、芯材部110を周回するように、2枚の外包材120a及び120bを溶接することで、真空断熱材100を作ることができる。
【0039】
<外包材120の材料>
外包材120は、真空断熱材100が使用される温度や圧力等の条件下で十分に耐え、真空断熱材100としての機能を維持できる金属であれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、軟鋼薄板、ステンレス鋼薄板、亜鉛メッキ鋼薄板等の各種の鋼薄板や、アルミニウム合金薄板や、チタン薄板や、スズ薄板等を用いることができる。特に、板厚が0.05mmから0.5mm程度のステンレス、鉄、チタン等を使用するのが好ましい。
【0040】
なお、外包材120を、単一の層の金属製の薄板で構成するだけでなく、複数の層の金属製の薄板で構成してもよい。外包材の構成は、耐熱性や芯材部110の断熱性等を考慮して適宜定めればよい。
【0041】
<溶接ライン130、存在部132、非存在部134>
後述するように、真空断熱材100は、2枚の外包材120a及び120bの間に芯材部110を挟み、芯材部110の外周に沿って、2枚の外包材120a及び120bを溶接することによって作ることができる。図1〜図3に示すように、この2枚の外包材120a及び120bを溶接することによって、溶接ライン130を形成することができる。
【0042】
この溶接ライン130は、図1及び図2に示すように、芯材部110を周回するように形成される。図1及び図2に示した例では、溶接ライン130は、正方形の4つの辺に沿った形状を有し、外包材の一端から反対側の端部まで設けられている。この溶接ライン130によって、真空断熱材100を、内側の領域と外側の領域とに画定することができる。溶接ライン130が、「接合部」に対応する。
【0043】
真空断熱材100の内側の領域は、溶接ライン130によって、略四角形状の形状を有し、真空状態が維持された領域である。この内側の領域には、芯材部110が存在し、この内側の領域によって、真空断熱材100の存在部132が構成される。上述したように、真空断熱材100の存在部132は、真空状態が維持された領域であるので、真空維持領域として機能する。
【0044】
一方、真空断熱材100の外側の領域は、存在部132を周回するように形成され、この領域には、芯材部110は存在しない。この外側の領域によって、真空断熱材100の非存在部134が構成される。この非存在部134は、真空状態ではないので、非真空領域として機能する。
【0045】
上述したように、溶接ライン130は、芯材部110を周回するように形成される。特に、この溶接ライン130は、芯材部110と重ならずに、かつ、芯材部110の外周に可能な限り近づけて形成するものが好ましい。後述するように、非存在部134は、真空断熱材100を被取り付け体に取り付けるためのものである(図4又は図5参照)。上述したように、溶接ライン130を形成することによって、真空断熱材100を取り付けるための領域を的確に確保することができると共に、存在部132を大きくできるので、断熱効果を奏する領域を大きくすることができる。非存在部134には、芯材部110が存在しないので、断熱効果には寄与しないため、従来は、余剰部として扱われてきたが、非存在部134を、被取り付け体に取り付けるためのものとすることによって、有効に活用することができる。
【0046】
さらに溶接ラインの幅は、5mm以内にすることが好ましい。従来の外包材内層を熱融着する方式であれば、この幅は広いほど長期断熱性能に優れるので、通常は10mm程度のシール幅である。しかし、本発明は、溶接ラインで仕切られた非存在部を用いて固定するため、必要以上の非存在部を設けることは断熱効率として好ましいものではなく、溶接ライン幅を小さくするのが好ましいのである。特に好ましくは、0.5〜3mmである。
【0047】
また、非存在部の幅は、真空断熱材の大きさにもより、特に制限されるものではないが、3〜70mm程度であり、断熱効率及び取り付け性の観点から好ましくは10〜40mmである。
【0048】
<貫通孔140>
上述した非存在部134には、貫通孔140が形成されている。図1及び図2に示した例では、非存在部134の四隅の近傍に1つずつ、合計で4つの貫通孔が形成されている。
【0049】
この貫通孔140は、後述するように、被取り付け体B(図4及び図5参照)に真空断熱材100を取り付けるために、ネジやボルトやビスやリベットを貫通させるための孔であり、被取り付け体の固定部を貫通させる孔である。なお、被取り付け体Bに真空断熱材100を溶接で取り付ける場合には、この貫通孔140は必要ない。
【0050】
<<ゲッター剤150>>
<ゲッター剤150の機能>
外包材120の中には、ゲッター剤150(図示せず)を設けてもよい。外包材120の内部を減圧して溶接した後に、外包材120の内部では、ガス、例えば、芯材部110からアウトガスや水分が発生する場合があり、真空度を低下させる場合がある。このため、ガスや水分を吸着することができるゲッター剤150を、外包材120の内部に芯材部110と共に収納することが好ましい。
【0051】
このように、ゲッター剤150を外包材120の内部に収納することで、ゲッター剤150によってガスや水分を吸収できるので、真空断熱材100の断熱効果をより長く持続させることができる。
【0052】
<ゲッター剤150の材質>
ガスや水分を吸着できる物質は、特に、限定されるものではなく、物理的にガスや水分等を吸着するものとして、例えば、活性炭、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト等がある。また、化学的にガスや水分等を吸着するものは、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム等や、鉄、亜鉛等の金属粉素材、バリウム−リチウム系合金、ジルコニウム系合金等がある。
【0053】
<<真空断熱材100>>
この真空断熱材100は、以下のようにして作ることができる。
【0054】
まず、略同じ大きさの2枚の金属製の外包材120a及び120bを用意し(図3参照)、これらの2枚の外包材120a及び120bが、おおよそ重なるように配置する。次いで、2枚の外包材120a及び120bの間に芯材部110を挟み、芯材部110が、外包材120a及び120bの略中央部に位置するように位置づける。最後に、芯材部110の外周に沿って、芯材部110を周回するように、2枚の外包材120a及び120bを溶接することによって、溶接ライン130を形成する。この溶接ライン130を形成するときには、芯材部110と2枚の外包材120a及び120bとの全体を真空状態にして溶接、いわゆる真空溶接をする。このようにすることで、内部を減圧状態にした真空断熱材100を作ることができ、2枚の外包材120a及び120bを溶接することによって、減圧状態を維持することができる。
【0055】
溶接は、2枚の外包材120a及び120bを接合できるものであれば、いかなる種類のものを用いてもよい。例えば、シーム溶接等の圧着接合方法、TIG溶接等の突き合わせ溶接、MIGブレージング等がある。特に、真空状態や高温状態であっても、接合部である溶接ライン130からガスなどが発生しない溶接方法を用いるのが好ましい。
【0056】
なお、上述した例では、接合部を溶接によって形成したが、ハンダ付けやロウ付けによって形成してもよい。
【0057】
<<真空断熱材100の取り付け>>
図4及び図5は、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付ける態様の例を示す断面図である。なお、図4及び図5は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。
【0058】
以下に示す例の真空断熱材100は、芯材部110として、厚さが10mmのグラスウールを用い、外包材120として、厚さが0.1mmで、縦の長さが500mmで、横の長さが500mmのステンレス製の単層品を用いた。この外包材120の外周部から12mmの箇所を真空条件下でシーム溶接して、溶接ライン130を幅2.5mmで形成したものを、真空断熱材100として用いた。なお、非存在部の幅は20mmである。
【0059】
図4(a)に示した例は、ネジやボルトやビスやリベット等の固定具を用いて、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付ける態様を示す図である。この場合には、上述したように、非存在部134に貫通孔140が形成された真空断熱材100を用いる。
【0060】
この例の場合には、被取り付け体Bとして、厚さが1.0mmのブリキ板を用いた。また、非存在部134の4箇所に貫通孔140a〜140dを形成した。具体的には、真空断熱材100の隅部(真空断熱材100の外周部から6mmの位置)の4箇所に、貫通孔140a〜140dとして、4.2mm径の下穴をポンチで開けた。なお、真空断熱材100の隅部(真空断熱材100の外周部)からの距離が長い場合には、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付ける作業で、溶接部分に負担をかけることが少ないので、真空断熱材100に下穴を形成しなくても、真空断熱材100を取り付けることができる。
【0061】
被取り付け体Bの所望する位置に、真空断熱材100を配置した後、ネジ径4mmのドリルビス142を、貫通孔140a〜140dの各々を差し込んで、電動ドリルにより、非存在部134を被取り付け体Bに固定することによって、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けることができる。このように、ネジやボルトやビス等を用いることによって、真空断熱材100を被取り付け体Bに容易に取り付けることができると共に、真空断熱材100を着脱可能にできるので、真空断熱材100の交換作業を容易にすることができる。
【0062】
また、貫通孔140を介して、リベットを被取り付け体Bに打ち込むことによって、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けることもできる。この例の場合にも、被取り付け体Bとして、厚さが1.0mmのブリキ板を用いた。また、非存在部134の4箇所に貫通孔140a〜140dを形成した。具体的には、真空断熱材100の隅部(真空断熱材100の外周部から6mm)の位置の4箇所に、貫通孔140a〜140dとして、4.2mm径の下穴をポンチで開けた。さらに、リベットを用いる場合には、対応するブリキ板の所望の位置にも、同じく4.2mmの下穴を開けた。このようにすることで、リベットを的確に固定することができる。
【0063】
被取り付け体Bの所望する位置に、真空断熱材100を配置した後、径4mmのリベットを、貫通孔140a〜140dの各々を差し込み、リベッターで締め上げて、非存在部134を被取り付け体Bに固定することによって、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けることができる。このようにリベットを用いた場合には、真空断熱材100を被取り付け体Bに的確かつ確実に取り付けることができ、長期間に亘っても、真空断熱材100と被取り付け体Bとの間に緩みが生じないので、断熱性能を維持することができる。また、表面外観の仕上げをよくすることもできる。
【0064】
図4(b)に示した例は、溶接によって、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付ける態様を示す図である。この場合には、上述したように、非存在部134に貫通孔140が形成されていない真空断熱材100を用いる。
【0065】
この例の場合にも、被取り付け体Bとして、厚さが1.0mmのブリキ板を用いた。まず、真空断熱材100を被取り付け体Bに対し所望の位置に仮固定する。次いで、ワンサイドスポット溶接機を用いて、溶接により非存在部134を被取り付け体Bに固定することによって、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けることができる。
【0066】
このように、非存在部134の所望する位置で、非存在部134を被取り付け体Bに溶接することによって、図4(b)に示すように、溶接部144を形成して、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けることができる。溶接部144の位置や数は、真空断熱材100の大きさや重さや被取り付け体Bの種類や外包材120の種類に応じて適宜定めればよい。
【0067】
溶接の場合には、溶接部分は小さな範囲で済むため、真空断熱材100の外周部からの溶接ライン130までの距離を短くすることができる。このため、非存在部134を小さくできるので、断熱効果を有する存在部132を大きくでき、断熱効果を奏する領域を大きくすることができる。
【0068】
図5(a)に示した例は、真空断熱材100のみならず、他の断熱材160も被取り付け体Bに取り付ける例を示す図である。
【0069】
上述したように、非存在部134には、芯材部110が存在しないため、真空断熱材100のみを用いたときには、非存在部134の周辺では、十分に断熱できない場合が生じる可能性もある。このため、真空断熱材100と略同じ大きさの他の断熱材160を用いることで、非存在部134の周辺も断熱することができる。特に、ドリルビス142のねじ山が形成されている箇所を他の断熱材160で覆うことができるので、ドリルビス142の周辺を十分に断熱することができる。この他の断熱材160としては、グラスウールにするのが好ましい。グラスウールを用いることによって、耐熱性及び断熱性を確保することができる。
【0070】
図5(b)に示した例は、非存在部134を被取り付け体Bに沿って折り曲げて、ドリルビス142を用いて、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付ける例を示す図である。
【0071】
このようにすることで、芯材部110によって、被取り付け体Bの側面(図5(b)の右側の面)の全体を覆うことができるので、断熱性を十分に確保することができる。
【0072】
このような場合には、非存在部134の厚さを、折り曲げやすくかつ耐熱性を確保できるものにすればよい。また、図5(b)に示した例では、ドリルビス142を、被取り付け体Bの上面と下面とに取り付けるので、被取り付け体Bを有効に活用することもできる。
【0073】
なお、図5(b)に示した例では、ドリルビス142等のネジやボルトやビス等の固定具を用いて、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付ける例を示したが、固定具を用いずに、非存在部134を被取り付け体Bに沿って折り曲げた後、折り曲げた非存在部134を被取り付け体Bの上面と下面とに溶接して、真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けてもよい。
【0074】
<<<第2の実施の形態>>>
図6は、第2の実施の形態による真空断熱材200を示す正面図である。なお、図6では、第1の実施の形態による真空断熱材100と同様の構成には、同一の符号を付して示した。
【0075】
真空断熱材200は、芯材部210と、外包材220とを含む。外包材220は、2枚の外包材220aと220bとからなる。この真空断熱材200は、以下のようにして作ることができる。
【0076】
まず、略同じ大きさの2枚の金属製の外包材220a及び220bを用意し(図3参照)、これらの2枚の外包材220a及び220bが、おおよそ重なるように配置する。次いで、2枚の外包材220a及び220bの間に芯材部210を挟み、芯材部210が、外包材220a及び220bの略中央部に位置するように位置づける。
【0077】
次に、芯材部210の外周に沿って、芯材部210を周回するように、2枚の外包材220a及び220bを溶接し、溶接ライン230aを形成する。この第2の実施の形態では、溶接ライン230aを2枚の外包材220a及び220bの外周の近傍に形成することができる。この溶接ライン230aは、2枚の外包材220a及び220bの外周と重ならずに、かつ、2枚の外包材220a及び220bの外周に可能な限り近づけて形成するものが好ましい。このようにすることで、溶接ライン230aを形成するための溶接処理を容易にすることができる。
【0078】
溶接ライン230aを形成した後、2枚の外包材220a及び220bの四隅の各々の周囲の2箇所を溶接して、溶接ライン230bを形成する。すなわち、図6に示すように、2枚の外包材220a及び220bの四隅の各々の近くで、2枚の外包材220a及び220bの外周と溶接ライン230bとによって囲まれた略四角形状の領域(後述する非存在部234)が形成されるように、溶接ライン230bを形成する。この溶接ライン230bは、2枚の外包材220a及び220bの四隅の各々の近くに形成されるので、溶接ライン230bを形成するための溶接処理を容易にすることができる。
【0079】
このように溶接ライン230bを形成することによって、2枚の外包材220a及び220bの四隅の各々に、略四角形状の非存在部234を形成することができる。なお、図6では、非存在部234を明確に示すために、斜線を付して、非存在部234が存在する領域を示した。このように、第2の実施の形態の真空断熱材200では、4箇所の非存在部234が形成される。この真空断熱材200においても、非存在部234には、芯材部210は存在しない。
【0080】
この真空断熱材200の場合にも、図6に示したように、貫通孔140a〜140dを形成する態様と、形成しない態様とにすることができる。4箇所の非存在部234の各々に、貫通孔140a〜140dを形成したときには、非存在部234の各々は、真空状態を維持できないので、非真空領域として機能する。一方、4箇所の非存在部234の各々に、貫通孔140a〜140dを形成しない場合には、真空状態を維持することができる。
【0081】
また、第2の実施の形態の真空断熱材200では、4箇所の非存在部234を除いた領域(図6において斜線を付さなかった領域)が、存在部232となる。存在部232は、芯材部110が存在し、真空状態が維持された領域であるので、真空維持領域として機能できる。
【0082】
この第2の実施の形態では、上述したように、溶接ライン230aを2枚の外包材220a及び220bの外周の近傍に形成することができるので、溶接処理を容易にすることができる。
【0083】
真空断熱材200の芯材部210は、芯材部110と形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、2枚の外包材220a及び220bも、2枚の外包材120a及び120bと形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、貫通孔140も第1の実施の形態の真空断熱材100と同様に形成することができる。さらに、ゲッター剤150も設けてもよい。
【0084】
<<<第3の実施の形態>>>
図7は、第3の実施の形態による真空断熱材300を示す正面図である。なお、図7では、第1の実施の形態による真空断熱材100や第2の実施の形態による真空断熱材200と同様の構成には、同一の符号を付して示した。
【0085】
真空断熱材300は、芯材部310と、外包材220とを含む。外包材220は、2枚の外包材220aと220bとからなる。
【0086】
この第3の実施の形態による真空断熱材300では、芯材部310の形状のみが、第2の実施の形態による真空断熱材200と異なり、真空断熱材200と同様にして作ることができる。
【0087】
第3の実施の形態による真空断熱材300の芯材部310は、溶接ライン230a及び230bに沿った形状、すなわち、存在部232に応じた形状にしているので、芯材部310を大きくでき、断熱効果を奏する領域を大きくすることができる。
【0088】
上述したように、真空断熱材300は、芯材部310の形状のみが、第2の実施の形態による真空断熱材200と異なる。したがって、真空断熱材300の芯材部310は、芯材部110と同じ材質にすることができる。また、2枚の外包材220a及び220bも、2枚の外包材120a及び120bと形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、貫通孔140も第1の実施の形態の真空断熱材100と同様に形成することができる。さらに、ゲッター剤150も設けてもよい。
【0089】
<<<第4の実施の形態>>>
図8は、第4の実施の形態による真空断熱材400を示す正面図である。なお、図8でも、第1の実施の形態による真空断熱材100や、第2の実施の形態による真空断熱材200と同様の構成には、同一の符号を付して示した。
【0090】
真空断熱材400は、芯材部410と、外包材420とを含む。外包材420は、2枚の外包材420aと420bとからなる。真空断熱材400は、第1の実施の形態の真空断熱材100と同様にして作ることができる。
【0091】
図8に示すように、真空断熱材400は、突出する4つの非存在部434を有する。真空断熱材400においては、4つの非存在部434が形成されていない箇所が、存在部432となる。4つの非存在部434には、芯材部410は存在しない。また、後述するように、4つの非存在部434の各々に、貫通孔140a〜140dを形成した場合には、非存在部434は、真空状態ではないので、非真空領域として機能する。また、存在部432は、芯材部410が存在し、真空状態が維持された領域であるので、真空維持領域として機能する。図8に示した例では、4つの非存在部434の各々には、貫通孔140a〜140dが形成されている。
【0092】
このように、非存在部434を突出するように構成したことにより、存在部432の大きさを十分に確保することができ、断熱効果を奏する領域を大きくできるので、真空断熱材400の断熱性を高めることができる。
【0093】
また、4つの非存在部434が形成された箇所は、折り曲げやすいので、図5(b)に示した態様で、真空断熱材400を被取り付け体Bに取り付ける場合に有効である。この場合にも、ネジやボルトやビスやリベット等の固定具を用いて、4つの非存在部434を被取り付け体Bに固定して、真空断熱材400を被取り付け体Bに取り付けることができる。また、4つの非存在部434の各々に、貫通孔140a〜140dを形成せずに、4つの非存在部434を被取り付け体Bに溶接して、真空断熱材400を被取り付け体Bに取り付けてもよい。
【0094】
真空断熱材400の芯材部410は、芯材部110と形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、2枚の外包材420a及び420bも、2枚の外包材120a及び120bと形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、貫通孔140a〜140dも第1の実施の形態の真空断熱材100と同様に形成することができる。さらに、真空断熱材400にゲッター剤150も設けてもよい。
【0095】
なお、図8に示した例では、真空断熱材400の外周の上下の辺の各々に、非存在部434を形成したものを示したが、非存在部434が突出する構成であれば、非存在部434が形成される位置や数は、被取り付け体の大きさや形状等に応じて適宜定めればよい。
【0096】
<<<第5の実施の形態>>>
図9は、第5の実施の形態による真空断熱材500を示す正面図である。なお、図9でも、第1の実施の形態による真空断熱材100や、第2の実施の形態による真空断熱材200と同様の構成には、同一の符号を付して示した。
【0097】
真空断熱材500は、芯材部510と、外包材520とを含む。外包材520は、2枚の外包材520aと520bとからなる。真空断熱材500は、第1の実施の形態の真空断熱材100と同様にして作ることができる。
【0098】
被取り付け体の外形は、平面で構成されている場合には限られない。例えば、被取り付け体には、排気や吸気等のためのパイプやホース等の配管が接続される場合もある。被取り付け体が、このような構成や構造であっても、被取り付け体自体を断熱する必要が生ずる場合がある。このため、芯材部510と、2枚の外包材520a及び520bとの略中央部に開口を形成することによって、図9に示すように、真空断熱材500に開口570を形成する。なお、開口570の大きさや位置は、被取り付け体に取り付けられる配管の大きさや位置に応じて適宜定めればよい。この開口570に、パイプやホース等の配管を貫通させて、真空断熱材500を被取り付け体に取り付けることができる。
【0099】
開口570の周辺の略円環状の領域は、芯材部510が存在しない領域であり、非存在部534である。また、真空断熱材500においては、非存在部534が形成されていない領域が、芯材部510が存在する領域であり、存在部532となる。また、後述するように、非存在部534に、貫通孔540a〜540dを形成した場合には、非存在部534は、真空状態ではないので、非真空領域として機能する。また、存在部432は、真空状態が維持された領域であるので、真空維持領域として機能する。
【0100】
図9に示した例では、非存在部534には、貫通孔540a〜540dが形成されている。貫通孔540a〜540dを介して、ネジやボルトやビスやリベット等の固定具を用いて、非存在部534を被取り付け体に固定して、真空断熱材500を被取り付け体に取り付けることができる。
【0101】
真空断熱材500の芯材部510は、芯材部110と形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、2枚の外包材520a及び520bも、2枚の外包材120a及び120bと形状が異なるだけで、同じ材質にすることができる。また、貫通孔540も第1の実施の形態の真空断熱材100の貫通孔140と同様に形成することができる。さらに、真空断熱材500にゲッター剤150も設けてもよい。
【0102】
上述したように、配管等が取り付けられるような被取り付け体に対しても、的確に、真空断熱材500を取り付けることができると共に、被取り付け体を的確に断熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1の実施の形態の真空断熱材100を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の真空断熱材100を示す正面図である。
【図3】第1の実施の形態の真空断熱材100を示す断面図である。
【図4】真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けた態様を示す断面図である。
【図5】真空断熱材100を被取り付け体Bに取り付けた他の態様を示す断面図である。
【図6】第2の実施の形態の真空断熱材200を示す正面図である。
【図7】第3の実施の形態の真空断熱材300を示す正面図である。
【図8】第4の実施の形態の真空断熱材400を示す正面図である。
【図9】第5の実施の形態の真空断熱材500を示す正面図である。
【符号の説明】
【0104】
100、200、300、400、500 真空断熱材
110、210、310、410、510 芯材部
120、220、420、520 外包材
130、230a、230b 溶接ライン(接合部)
132、232、432、532 存在部
134、234、434、534 非存在部
140、540 貫通孔
142 ドリルビス(固定具)
B 被取り付け体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材部と、前記芯材部を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる金属製外包材と、を含む真空断熱材であって、
互いに向かい合う前記金属製外包材が接合されて形成された接合部を含み、
前記接合部は、
前記金属製外包材の内部を封止して減圧状態に維持し、かつ、
前記芯材部が存在する存在部と、前記芯材部が存在しない非存在部とに画定し、
前記非存在部を介して、被取り付け体に取り付けられることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記非存在部は、前記芯材部よりも外側に位置する請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記接合部は、溶接法によって形成された請求項1又は2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記金属製外包材は、ステンレス製である請求項1ないし3のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記非存在部には、貫通孔が形成され、
前記非存在部は、前記貫通孔を介して、固定具及び/又は固定部によって、前記被取り付け体に取り付けられる請求項1ないし4のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記芯材部は、無機系芯材から構成された請求項1ないし5のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記金属製外包材は、熱融着シール層を含まない請求項1ないし6のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項8】
前記非存在部は、前記被取り付け体の形状に適合させて変形できる請求項1ないし7に記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−275109(P2008−275109A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121082(P2007−121082)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】