説明

真空遮断器

【課題】
真空容器の外部に縦磁界用コイルを2組配置したものであっても、簡素な構造で均一な縦磁界を発生できる真空遮断器を提供する。
【解決手段】
本発明では、上記課題を解決するために、通電時に接点電極端面と垂直な方向に磁界を発生させる2組のコイルを真空容器外部に備え、該2組のコイルのうち、一方の一端は固定側電極に、他方の一端は可動側電極にそれぞれ接続されている真空遮断器において、前記2組のコイルは、前記真空容器の周囲に、互いに重なることなく交互に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空遮断器に係り、特に、真空容器の外部に縦磁界発生用コイルを有し、電力用に好適な真空遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力用遮断器は、送配電及び受配電系統に配置される機器であり、必要に応じて特定箇所を電力系統から切り離す役割を果たすものである。
【0003】
特に、真空遮断器は、真空容器の内部に配置された一対の接点電極を接離することにより、電流を投入または遮断するものであり、接点電極端面に垂直な磁界(以下、縦磁界という)を印加することによって、遮断性能が向上することが広く知られている。
【0004】
このような縦磁界型の真空遮断器は、真空容器内部の電極にコイルを備えたものと、真空容器外部にコイルを備えたものに大別される。
【0005】
前者に比べて後者は、発生する縦磁界が広範囲に渡って均一であること、電極を簡素化、軽量化できること、真空容器の軸方向寸法を縮小できること、電極対の開極にともなう磁界減衰がないこと等の特徴を有する。
【0006】
この後者の真空容器外部にコイルを備えた真空遮断器として、特許文献1がある。特許文献1に記載の真空遮断器は、縦磁界発生用のコイルを真空容器の外部に有しており、可動側ホルダ、可動側接点、固定側接点、外部コイル、折り返し電極、固定側ホルダの経路で電流が流れるようになっている。
【0007】
一方、真空容器外部に2組のコイルを備えた真空遮断器として、特許文献2がある。この特許文献2に記載の真空遮断器は、その第1図には、真空容器外部の軸方向両端板の各々にコイルを配置し、一方のコイルの一端を固定側ロッドに電気的に接続し、他方のコイルの一端を可動側ロッドに電気的に接続して、これら両コイルが、相対向する一対の電極に対して直列に接続され、一対の上記電極の開離の際に発生する真空アークの軸方向に平行な縦磁界を発生することが記載され、また、特許文献2の第10図には、特許文献2の第1図で述べた2組のコイルを一纏めにし、その一纏めのコイルを絶縁円筒の周囲に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭52−102576号公報
【特許文献2】特開平2−148636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1及び2では、真空容器外部に縦磁界用コイルを配置することで、空間的に均一な縦磁界を生成することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の図3に示す構造では、電流を折り返すための導体(折り返し導体)が必要となり、この折り返し導体に相当する導電性の円筒状容器をコイルの外周に設置することが必須となる。
【0011】
これにより、特許文献1では、円筒状容器をコイルの外周に設置することから全体の外径が増大し、これに伴い構造が複雑になると共に、円筒状容器(折り返し導体)を流れる電流により、電極間に生成する縦磁界が不均一になるといった問題が生じる。
【0012】
一方、特許文献2は、その第1図では、真空容器外部の軸方向両端板の各々にコイルを配置していることから軸方向距離が増大すること、及び特許文献2の第10図では、折り返し導体が必要なことから、特許文献1と同様な問題が生じる。
【0013】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、真空容器の外部に縦磁界用コイルを2組配置したものであっても、簡素な構造で均一な縦磁界を発生できる真空遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の真空遮断器は、上記目的を達成するために、通電時に接点電極端面と垂直な方向に磁界を発生させる2組のコイルを真空容器外部に備え、該2組のコイルのうち、一方の一端は固定側電極に、他方の一端は可動側電極にそれぞれ接続されている真空遮断器において、前記2組のコイルは、前記真空容器の周囲に、互いに重なることなく交互に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、真空容器の外部に縦磁界用コイルを2組配置したものであっても、簡素な構造で均一な縦磁界を発生できる真空遮断器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の真空遮断器の実施例1を示す断面図である。
【図2】本発明の真空遮断器の実施例1におけるコイルの接続状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の真空遮断器の実施例2を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した実施例に基き本発明の真空遮断器を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1及び図2に、本発明の真空遮断器の実施例1を示す。
【0019】
該図に示す如く、実施例1の真空遮断器は、固定側接点電極1と、これと相対向する可動側接点電極2と、固定側接点電極1を固定する固定側ロッド3と、可動側接点電極2を固定する可動側ロッド4と、内部と真空封止し、可動側接点電極2を移動可能に支持するベローズ5と、真空容器を構成する絶縁筒6と、固定側ロッド3を支持する固定側端板7と、可動側ロッド4を移動可能に支持する可動側端板8と、絶縁筒6の周囲に配置される第1のコイル9a及び第2のコイル9bと、固定側ロッド3と第2のコイル9bを接続する固定側接続導体10と、可動側ロッド4と第1のコイル9aを接続する可動側接続導体11と、第1のコイル9a及び第2のコイル9bをモールドする絶縁モールド12とから概略構成される。
【0020】
更に、実施例1の真空遮断器を詳述すると、固定側接点電極1及び可動側接点電極2は円板形状をなし、固定側接点電極1は円柱形状を有する固定側ロッド3に、可動側接点電極2は円柱形状を有する可動側ロッド4にそれぞれ固定されている。固定側接点電極1及び可動側接点電極2は、相対向しており、可動側接点電極2及び可動側ロッド4が軸方向に移動することで、互いに接離可能である。これら固定側接点電極1、可動側接点電極2、固定側ロッド3、及び可動側ロッド4の中心軸は、同一線上に配置される。
【0021】
絶縁筒6は円筒形状をなし、その両端面は円板形状を有する固定側端板7と可動側端板8で塞がれている。固定側端板7を通して固定側ロッド3が固定され、固定側接点電極1は、絶縁筒6の内部に配置されている。また、可動側端板8を通して移動可能な可動側ロッド4が、ベローズ5を介して取り付けられている。可動側接点電極2は、絶縁筒6の内部に配置されている。
【0022】
そして、実施例1では、絶縁筒6の周囲に配置される第1のコイル9a及び第2のコイル9bは断面円形状で、同一の螺旋形状をなし、互いに重なることなく絶縁筒6を取り囲むように交互に配置されている。
【0023】
この第1のコイル9aの固定側端部9a1は、外部回路に接続され、他方の可動側端部9a2は、可動側接続導体11を介して可動側ロッド4に接続されている。一方、第2のコイル9bの可動側端部9b2は、外部回路に接続され、他方の固定側端部9b1は、固定側接続導体10を介して固定側ロッド3に接続されている。更に、第1のコイル9aと第2のコイル9bとの絶縁を確保すると共に、電磁力によるコイルの変形を抑制するため、第1のコイル9aと第2のコイル9bは、絶縁モールド12により固定されている。
【0024】
次に、実施例1における電流経路について、図1を用いて説明する。
【0025】
図1に示す如く、外部回路より第1のコイル9aの固定側端部9a1に流入した電流は、第1のコイル9aを通り、可動側端部9a2へ流れる。続いて、可動側接続導体11→可動ロッド4→可動側接点電極2→固定側接点電極1→固定側ロッド3→固定側接続導体10を介して、第2のコイル9bの固定側端部9b1へ流れる。続いて、第2のコイル9bを通り、可動側端部9b2へ流れ、外部回路に流出する。
【0026】
次に、実施例1における電流を遮断するときの動作について、図1を用いて説明する。
【0027】
図1に示す如く、固定側接点電極1と可動側接点電極2が開極したとき、電極間にはアーク13が発生する。このとき第1のコイル9a及び第2のコイル9bを流れる電流は、図1に図示した方向であるため、アーク13に平行な縦磁界が発生する。アーク13は、磁力線に補足されるようにふるまうため、固定側接点電極1と可動側接点電極2の間に発生したアーク13は、電極端面全体に渡って均一に保持されることにより、良好な遮断性能を得ることができる。
【0028】
このような実施例1の構成によれば、真空容器の外部に縦磁界用コイルを2組配置したものであっても、従来のような折り返し導体は必要なくなり、全体の外径及び軸方向距離が増大することもなくなり、構造が複雑になることはないので、簡素な構造で均一な縦磁界を発生でき、良好な遮断性能を得るための真空遮断器を容易に製作することができる。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の真空遮断器の実施例2について、図3を用いて説明する。
【0030】
図3に示す実施例2の真空遮断器は、上述した実施例1における第1のコイル9a及び第2のコイル9bを、長方形断面を有するコイルに置き換えたものである。
【0031】
このような実施例2の構成とすることでも実施例1と同様な効果が得られることは勿論、コイル断面積が同じでも全体の外径が小さい真空遮断器を製作することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…固定側接点電極、2…可動側接点電極、3…固定側ロッド、4…可動側ロッド、5…ベローズ、6…絶縁筒、7…固定側端板、8…可動側端板、9a…第1のコイル、9a1…第1のコイルの固定側端部、9a2…第1のコイルの可動側端部、9b…第2のコイル、9b1…第2のコイルの固定側端部、9b2…第2のコイルの可動側端部、10…固定側接続導体、11…可動側接続導体、12…絶縁モールド、13…アーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に接点電極端面と垂直な方向に磁界を発生させる2組のコイルを真空容器外部に備え、該2組のコイルのうち、一方の一端は固定側電極に、他方の一端は可動側電極にそれぞれ接続されている真空遮断器において、
前記2組のコイルは、前記真空容器の周囲に、互いに重なることなく交互に配置されていることを特徴とする真空遮断器。
【請求項2】
円筒状に形成された絶縁筒の軸方向両端部が端板で封じられた真空容器と、該真空容器内に配置された相対的に開離する一対の固定側及び可動側電極と、該固定側及び可動側電極の裏面より前記真空容器外に延びるロッドと、前記真空容器外に配置され、通電時に前記固定側及び可動側電極の端面と垂直な方向に磁界を発生させる2組のコイルとを備え、該2組のコイルのうち、一方の一端は前記固定側電極に、他方の一端は前記可動側電極にそれぞれ接続されている真空遮断器において、
前記2組のコイルは、前記真空容器の周囲に、互いに重なることなく交互に配置されていることを特徴とする真空遮断器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空遮断器において、
前記2組のコイルは、断面円形で同一の螺旋形状をなしていることを特徴とする真空遮断器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の真空遮断器において、
前記2組のコイルは、断面長方形で同一の螺旋形状をなしていることを特徴とする真空遮断器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の真空遮断器において、
前記2組のコイルは、前記真空容器に絶縁モールドにより固定されていることを特徴とする真空遮断器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate