真菌細胞中の遺伝子発現を上昇させる方法
本発明は、(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド、ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす、及び銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、及び(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、ポリペプチドの産生方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌細胞中のポリペプチドをコードする遺伝子発現を上昇させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌宿主細胞(例えば、酵母又は糸状菌細胞)中の固有の又は外来ポリペプチドの組換え生産は、商業的に適切な量でポリペプチドを生産するためのより好ましい手段を提供する。
【0003】
固有の又は外来ポリペプチドの組換え生産は一般に、ポリペプチドをコードするDNAが制御遺伝子からのプロモーターの発現制御下にある発現カセットを構築することにより行われる。発現カセットは、一般にプラスミド介在形質転換により宿主細胞中に導入される。次に形質転換された宿主細胞の産生を、発現カセット上に含有されるプロモーターの正しい機能に必要な条件を誘導する条件下で培養することにより行われる。
【0004】
真菌宿主細胞中のポリペプチドの組換え生産のための新しい発現構築体とベクターの開発には、一般に宿主細胞中のポリペプチドの発現を制御するのに適した効率的なプロモーターが利用できることが必要である。しかし最もよく知られたプロモーターでさえ、目的の遺伝子を発現させるのには非効率的なことがある。
【0005】
多くのプロモーターは調節を受けて、その効率を上昇させることができる。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン遺伝子(CUP1と呼ぶ)は、CUP1転写活性化部位に対して−105から−230の間に存在すると報告されている特異的プロモーター領域UASCUP1(上流活性化配列)を介して、銅により転写活性化される(Thiele and Hamer, 1988,Mol,Cell.Biol,6:1158−1163;Zhou and Thiele,1993,Biofactors 4;105−115)。サッカロミセス・セレビシエのAce1タンパク質(Ace1p)は、銅イオン(Thiele,1988,Mol.Cell.Biol,8:2745−2752)又は銀イオン(Furst et al,,1988,Cell 55:705−717)の存在下で酵母メタロチオネイン遺伝子CUP1の誘導を引き起こす。Ace1pのアミノ末端側の半分は塩基性アミノ酸残基とシステインが豊富であり、Cu(I)又はAg(I)の非存在下ではなく存在下でCUP1上流のアクチベーター配列に特異的に結合する(Furst et al.,1988,前出)。Thiele and Hamer,1986,Molecular and Cellular Biology 6;1158−1163は、タンデムに複製された上流制御配列がサッカロミセス・セレビシエの銅−メタロチオネイン遺伝子の銅誘導性転写を仲介し、これらの要素の1つの合成物が2つのタンデムコピー中に存在する時、異種プロモーター上の銅誘導を与えることを開示する。
【0006】
Gralla et al.,1991,PNAS USA 88:8558−8562は、Ace1pが酵母の銅、亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子の発現を活性化することを開示する。Lapinskas et al.,1993,Current Genetics 24:388−393は、Ace1pがサッカロミセス・セレビシエのサイトゾル性カタラーゼ遺伝子の発現を活性化することを開示する。
【0007】
Mehra et al.,1989,J.Biological Chemistry 264:19747−19753は、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)からのメタロチオネイン遺伝子のクローニングと配列とを記載する。Zhou and Thiele,1991,PNAS USA 88:6112−6116は、カンジダ・グラブラタからの金属活性化転写因子遺伝子の単離を記載する。Thorvaldsen et al.,1993.J.Biological Chemistry 268:12512−12518は、AMT1によるカンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子(MTI、MTIIa、及びMTIIbと呼ぶ)の制御を開示する。
【0008】
Mascorro−Galiardo et al.,1996,Gene 172:169−170は、サッカロミセス・セレビシエ中の遺伝子発現を調節するためのCUP1プロモーターベースのベクターの構築を開示する。Macreadie et al.,1989,Plasmid 21:147−150は、サッカロミセス・セレビシエのCUP1遺伝子を利用する一連の酵母発現ベクターを開示する。Hottiger et al.,1994,Yeast 10:283−296は、CUP1プロモーターの生理学的性状解析と、その転写活性化因子Ace1pの過剰発現の結果を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、真菌宿主細胞中でポリペプチドを産生するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド、ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、ポリペプチドを産生する方法に関する。ポリペプチドは真菌宿主細胞に対して固有でも外来でもよい。
【0011】
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む真菌宿主細胞に関する。
【0012】
本発明はさらに、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)とを含む、核酸構築体とベクターとに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】pBm128aの制限地図である。
【図2】pMB1537の制限地図である。
【図3】pBM126aの制限地図である。
【図4】pMB1539の制限地図である。
【図5】pJLin168の制限地図である。
【図6】pBM142cの制限地図である。
【図7】pBM143bの制限地図である。
【図8】pMB1682の制限地図である。
【図9】pJLin195の制限地図である。
【図10】pBM163aの制限地図である。
【図11】pBM165aの制限地図である。
【図12】pBM168aの制限地図である。
【図13】pBM169aの制限地図である。
【図14】pBM171aの制限地図である。
【図15】pBM170aの制限地図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、ポリペプチドを産生する方法に関する。
【0015】
本発明の生産法において真菌宿主細胞は、当該技術分野で公知の方法を使用してポリペプチドを産生するのに適した栄養培地中で培養される。例えば細胞は、振盪フラスコ培養により、又は実験室発酵槽又は工業的発酵槽の小規模もしくは大規模発酵(連続発酵、バッチ発酵、供給バッチ発酵、又は固相発酵を含む)により培養される。培養は、炭素、窒素源、無機塩、及び銅イオン(及び/又は銀イオン)を含む適当な栄養培地で当該技術分野で公知の方法を使用して行われる。適当な培地は、販売業者から入手できるか、又は公開された組成(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)のカタログ中)に従って調製される。培地中に銅イオンが存在する場合、培地は少なくとも10μMの銅イオン、好ましくは少なくとも50μMの銅イオン、さらに好ましくは少なくとも100μMの銅イオン、さらに好ましくは少なくとも250μM、最も好ましくは少なくとも500μMの銅イオンを含有する。銅イオンはCuSO4、CuCl2、又は任意の他の適切な形で培地に添加される。培地はまた又はあるいは、銀イオンを含有する。培地中に銀イオンが存在する場合、培地は少なくとも10μMの銀イオン、好ましくは少なくとも50μMの銀イオン、さらに好ましくは少なくとも100μMの銀イオン、さらに好ましくは少なくとも250μM、最も好ましくは少なくとも500μMの銀イオンを含有する。銀イオンはAg2SO4、AgCl、又は任意の他の適切な形で培地に添加される。
【0016】
ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的な当該技術分野で公知の方法を使用して検出される。検出法には、特異抗体、高速液体クロマトグラフィー、毛細管クロマトグラフィー、酵素産物の生成、酵素基質の消失、又はSDS−PAGEの使用がある。例えばポリペプチドが酵素である場合、酵素の活性を測定するために酵素測定法が使用される。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素について当該技術分野で公知である(例えば、Schomburg and M.Saizmann(eds.),Enzyme Handbook,Springer−Verlag,New York,1990参照)。
【0017】
ポリペプチドが栄養培地中に分泌される場合、その物質は培地から直接回収される。ポリペプチドが分泌されない場合、これは細胞溶解物から回収することができる。生じるポリペプチドは、当該技術分野で公知の方法を使用して単離される。例えばポリペプチドは、特に限定されないが、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、及び/又は沈殿を含む従来法により培養培地から単離される。単離されたポリペプチドは次に、特に限定されないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば、分取、等電点電気泳動(IEF))、溶解度差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出を含む当該技術分野で公知の種々の方法によりさらに精製される(例えば、Protein Purification,J.−C.Janson and Lars Ryden,editors,VCH Publishers,New York,1989参照)。
【0018】
銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む本発明の真菌宿主細胞は、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチドと、及び/又は銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドが無い真菌宿主細胞より、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、さらに好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%、さらに最も好ましくは少なくとも200%多いポリペプチドを産生する。
【0019】
プロモーター
用語「プロモーター」は、本明細書において、RNAポリメラーゼに結合し、ポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの正しい下流の転写開始部位にポリメラーゼを向けて転写を開始させるDNA配列と定義される。RNAポリメラーゼは、コード領域の適切なDNA鎖に相補的なメッセンジャーRNAの組み立てを有効に触媒する。用語「プロモーター」はまた、mRNAへの転写後の翻訳のための5’非コード領域(プロモーターと翻訳開始の間)、転写活性化因子のようなシス作用性転写制御要素、及び転写因子と相互作用することができるヌクレオチド配列とを含むと理解される。
【0020】
用語「銅誘導性プロモーター配列」は、本明細書において、プロモーターの銅誘導性転写を引き起こす転写制御因子の結合部位を有する、プロモーターの成分としてシス作用性要素を介して銅イオンにより誘導されるプロモーターと定義される。
【0021】
用語「タンデムプロモーター」は、本明細書において、それぞれがコード配列に機能できる形で結合しており、コード配列のmRNAへの転写を仲介する2つまたはそれを超えるプロモーターと定義される。タンデムプロモーターの成分は、同じプロモーターであるか又は異なるプロモーターの組合せでもよい。プロモーターは、宿主細胞に対して固有であるか又は外来である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。タンデムプロモーターに含有される少なくとも1つのプロモーターは、銅誘導性プロモーターである。好適な態様においてタンデムプロモーターは、銅誘導性プロモーターからなる。
【0022】
用語「ハイブリッドプロモーター」は、本明細書において、コード配列に機能できる形で結合した2つまたはそれを超えるプロモーターの部分からなり、コード配列のmRNAへの転写を仲介するプロモーター配列と定義される。プロモーターは、宿主細胞に対して固有であるか又は外来である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。ハイブリッドプロモーターの少なくとも1つの部分は、銅誘導性プロモーターの部分である。好適な態様においてハイブリッドプロモーターは、2つまたはそれを超える銅誘導性プロモーターの部分からなる。
【0023】
用語「機能できる形で結合した(operably linked)」は、本明細書において、制御配列(例えばプロモーター配列)が、コード配列にコードされるポリペプチドの産生を指令するように、コード配列に対する位置で適切に配置された構成であると定義される。
【0024】
用語「コード配列」は、本明細書において、適切な制御配列の制御下に置かれると、ポリペプチド(例えば酵素)に翻訳されるmRNAに転写される核酸配列と定義される。コード配列の境界は一般に読みとり枠で決定され、これは通常ATG開始コドン又は代替開始コドン(例えばGTG及びTTG)で始まり、停止コドン(例えばTAA、TAG、及びTGA)で終わる。コード配列は、特に限定されないが、ゲノムDNA、cDNA、半合成、合成、及び組換え核酸配列を含む。
【0025】
本発明の方法の実施において銅誘導性プロモーターは、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)メタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)メタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルス(Agaricus bisporus)メタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)メタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)メタロチオネイン遺伝子から得られる。
【0026】
好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエCUP1遺伝子(受け入れ番号P07215)から得られる(Butt et al.,1984,PNAS USA 76:3332−3336)(DNAについては配列番号1、推定アミノ酸配列については配列番号2)。
【0027】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエSOD1遺伝子(受け入れ番号P00445)から得られる(Gralla et al.,1991,PSAS USA 88:8558−8562)(DNAについては配列番号3、推定アミノ酸配列については配列番号4)。
【0028】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエCTT1遺伝子(受け入れ番号P06115)から得られる(Lapinskas et al.,1993,Current Genetics 24:388−393)(DNAについては配列番号5、推定アミノ酸配列については配列番号6)。
【0029】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエCRS5遺伝子(受け入れ番号P41902)から得られる(Culotta et al.,1994,J.Biol.Chem.269:25295−252302)(DNAについては配列番号7、推定アミノ酸配列については配列番号8)。
【0030】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、カンジダ・グラブラタMT遺伝子から得られる、最も好適な態様において銅誘導性プロモーターは、カンジダ・グラブラタMT1遺伝子(受け入れ番号P15113)から得られる(Mehra et al.,1989,J.Biol.Chem.264:19747−19753;Mehra et al.,1992,Gene 114:75−80;Mehra et al.,1990,Gene 265:6369−6375)(DNAについては配列番号9、推定アミノ酸配列については配列番号10)。別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、カンジダ・グラブラタMTII遺伝子(受け入れ番号J05398)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)(DNAについては配列番号11、推定アミノ酸配列については配列番号12)。
【0031】
本発明の方法において銅誘導性プロモーターはまた、2つまたはそれを超えるプロモーターを含むタンデムプロモーターでも、又は2つまたはそれを超えるプロモーターの部分を含むハイブリッドプロモーターでもよい(その少なくとも1つは、銅誘導性プロモーター又は銅誘導性プロモーターの部分である)。
【0032】
銅誘導性プロモーターではないが、銅誘導性プロモーターとのタンデムプロモーター又はハイブリッドプロモーターの構築に有用なプロモーターの例には、特に限定されないが、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸安定アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーもしくはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ、アスペルギルス・オリザエアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ、フザリウム・ベネナツムDariaプロモーター、フザリウム・ベネナツムQuinnプロモーター、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)ベータグルコシダーゼ、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼI、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼII、トリコデルマ・リーセイベータキシロシダーゼ、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエアルコール脱水素酵素/グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(ADH2/GAP)、及びサッカロミセス・セレビシエ3−ホスホグリセレートキナーゼ;ならびにNA2−tpiプロモーター(アスペルギルス・ニガー中性アルファアミラーゼとアスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)の遺伝子から得られるプロモーター、及びこれらの変異体、末端切断型、及びハイブリッドプロモーターがある。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは、Romanos et al.,1992,Yeast 8:423−488に記載されている。
【0033】
本発明の方法においてハイブリッドプロモーター又はタンデムプロモーターは、タンデムプロモーター又はハイブリッドプロモーターの成分として野生型プロモーター又はその部分が核酸配列について固有であっても、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であると理解される。例えば少なくとも2つのプロモーターからなるタンデムプロモーターにおいて1つ又はそれを超える(複数個)のプロモーターは、ポリペプチドをコードする核酸配列の野生型プロモーターでもよい。
【0034】
上流活性化配列(UAS)
用語「銅応答性上流活性化配列」は、本明細書において、プロモーターの銅誘導性転写を引き起こす転写制御因子の結合部位として機能する、シス作用性要素と呼ぶDNA配列を含むプロモーターの領域と定義される。酵母及び真菌遺伝子についてかかるシス作用性要素を含有するプロモーター領域は、上流活性化配列(upstream activation sequence;UASと略される)と呼ばれる(Thiele,1992,Nucleic Acids Research 20:1183−1191)。かかるUASの同定と単離は、Thiele and Hamer,1986,前出;Zhou and Thiele,1993,前出;及びThiele,1992,前出、により記載された方法に従って行われる。
【0035】
本発明の方法において、銅誘導性の遺伝子転写を引き起こす任意のシス作用性プロモーター要素を使用することができる。銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子の銅誘導性プロモーターから得られる。
【0036】
好適な態様において、銅応答性上流活性化配列はサッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子のプロモーターから得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエCUP1遺伝子(受け入れ番号P07215)のプロモーターから得られる(Butt et al.,1984,前出)。
【0037】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子のプロモーターから得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエCTT1遺伝子(受け入れ番号P06115)のプロモーターから得られる(Lapinskas et al.,1993, 前出)。
【0038】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエSOD1遺伝子(受け入れ番号P00445)のプロモーターから得られる(Gralla et al.,1991,前出)。
【0039】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエCRS5遺伝子(受け入れ番号P41902)のプロモーターから得られる(Culotta et al.,1994,前出)。
【0040】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMT遺伝子から得られる。最も好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMT1遺伝子(受け入れ番号P15113)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)。別の最も好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMTIIa遺伝子(受け入れ番号P15113)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)。別の最も好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMTIIb遺伝子(受け入れ番号P15114)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)。
【0041】
本発明の方法において1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列(UAS)は、銅誘導性プロモーターの上流に機能できる形で結合している。銅誘導性プロモーターはそれ自体の銅応答性上流活性化配列を含有し、従ってプロモーターに機能できる形で結合した1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列は、プロモーター中に含有されるものと同じUAS領域でも、プロモーター中に含有されるものと異なるUAS領域でも、又はこれらの組合せでもよいと理解される。上流活性化配列に関連する銅応答性要素の数(すなわち銅応答性要素の数と銅依存性転写力価との相関)に依存して、2つ以上の上流活性化配列がプロモーターの上流に置かれてもよい。従って上流活性化配列中に含有される銅応答性シス作用性要素の数に依存して、特異的上流活性化配列の複数のコピーを使用することができ、異なる上流活性化配列の組合せを使用することができ、又は前記のそれぞれの組合せを使用することができる。銅応答性シス作用性要素の総数は少なくとも2であり、好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも4、さらに好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも6である。
【0042】
好適な態様において追加の銅応答性上流活性化配列の1つは配列番号46である。別の好適な態様において追加の銅応答性上流活性化配列の1つは配列番号47である。
【0043】
トランスアクチベーター遺伝子
用語「銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子」は本明細書において、銅依存性に、銅誘導性プロモーター配列に結合した銅応答性上流活性化配列(UAS)を介して遺伝子転写を活性化する転写因子をコードする遺伝子と定義される。かかる遺伝子はまた、銅金属制御性転写因子(MRTF)遺伝子とも呼ばれる。本明細書において用語「銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子」には、かかる遺伝子の末端切断型及び/又は変異体が含まれると理解される。
【0044】
本発明の方法において、銅応答性上流活性化配列(UAS)を介して遺伝子転写を活性化する転写因子をコードする任意の転写活性化因子遺伝子を使用することができる。転写活性化因子遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子、カンジダ・グラブラタAMT1遺伝子、ヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)CUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)、サッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)、及びアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)よりなる群から選択することができる。
【0045】
好適な態様において転写活性化因子遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子(受け入れ番号P15315)である(Thiele and Hamer,1986,Mol.Cell.Biol.6:1158−1163)(DNAについては配列番号13、推定アミノ酸配列については配列番号14)。
【0046】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はカンジダ・グラブラタAMT1遺伝子(受け入れ番号P41772)である(Zhou and Thiele, PNAS USA 88:6112−6116)である(DNAについては配列番号15、推定アミノ酸配列については配列番号16)。
【0047】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)である(DNAについては配列番号17、推定アミノ酸配列については配列番号18)。
【0048】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はシゾサッカロミセス・ポンベCUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)である(DNAについては配列番号19、推定アミノ酸配列については配列番号20)。
【0049】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はサッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)である(DNAについては配列番号21、推定アミノ酸配列については配列番号22)。
【0050】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はアスペルギルス・フミガツス銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)である(DNAについては配列番号23、推定アミノ酸配列については配列番号24)。
【0051】
本発明の方法において真菌宿主細胞は少なくとも1つの転写活性化因子遺伝子を含む。転写活性化因子遺伝子は宿主細胞に対して固有でも又は外来でもよい。好適な態様において、転写活性化因子遺伝子の複数のコピーが宿主中で存在してもよい。あるいはそれぞれが1つ又はそれを超える(複数個)のコピーで存在する少なくとも2つの異なる転写活性化因子遺伝子の組合せが、真菌宿主細胞中に存在してもよい。遺伝子は宿主細胞に対して固有でも又は外来でも、又はこれらの組合せでもよい。
【0052】
転写活性化因子遺伝子のコピー数の増加は、遺伝子の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞中に組み込むことにより、又は転写活性化因子遺伝子に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含めることにより得られ、ここで細胞は選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含有し、従って転写活性化因子遺伝子の追加のコピーを含有する細胞は、適切な選択物質の存在下で細胞を培養することにより選択することができる。
【0053】
転写活性化因子遺伝子は、宿主細胞の染色体中に組み込まれるか、又は染色体外要素として存在するか、又はこれらの組合せでもよい。好適な態様において転写活性化因子遺伝子は、宿主細胞の染色体中に組み込まれる。
【0054】
ポリペプチド
ポリペプチドは、目的の真菌宿主細胞に対して固有でも又は異種でもよい。用語「異種ポリペプチド」は本明細書において、宿主細胞に対して固有ではないポリペプチド、又は固有のポリペプチドを改変するように構造が修飾されている固有のポリペプチドと定義される。
【0055】
ポリペプチドは、目的の生物活性を有する任意のポリペプチドでもよい。本明細書において用語「ポリペプチド」は、特定の長さのコードされた生成物を意味するものではなく、従ってペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質を包含する。用語「ポリペプチド」はまたハイブリッドポリペプチド(これは、1つ又はそれを超える(複数個)が真菌細胞に対して異種である少なくとも2つの異なるポリペプチドから得られる部分的及び/又は完全なポリペプチド配列の組合せを含む)を包含する。ポリペプチドはさらに、ポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子及び遺伝子操作体を含む。
【0056】
好適な態様においてポリペプチドは、抗体、抗原、抗菌性ペプチド、酵素、増殖因子、ホルモン、イムノディレーター(immunodilator)、神経伝達物質、受容体、レポータータンパク質、構造タンパク質、及び転写因子である。
【0057】
より好適な態様においてポリペプチドは、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、又はリガーゼである。最も好適な態様においてポリペプチドは、アルファグルコシダーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリン、グリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、アルファガラクトシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、アルファグルコシダーゼ、ベータグルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、ウロキナーゼ、又はキシラナーゼである。
【0058】
別の好適な態様においてポリペプチドは、アルブミン、コラーゲン、トロポエラスチン、エラスチン、又はゼラチンである。
【0059】
ポリペプチドをコードする核酸配列は、任意の原核生物、真核生物、又は他の供給源から得られる。本発明の目的において用語「から得られる」はある供給源に関連して使用される時、ポリペプチドがその供給源により、又はその供給源からの遺伝子が挿入されている細胞により産生されることを意味する。
【0060】
ポリペプチドをコードする核酸配列を単離又はクローン化する方法は当該技術分野で公知であり、ゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はこれらの組合せを含む。かかるゲノムDNAからの核酸配列のクローニングは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して行うことができる。例えば、Innis et al.,1990,PCR Protocols:A Guide to Methods and Application,Academic Press,New Yorkを参照。クローニング法は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含む所望の核酸断片の切断と単離、ベクター分子への断片の挿入、及び真菌細胞への組換えベクターの取り込みがあり、ここで核酸配列の複数のコピーが複製される。核酸配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成、合成起源、又はこれらの組合せでもよい。
【0061】
核酸構築体
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合した目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に少なくとも1つの銅応答性上流活性化配列(UAS)を含む第2のポリヌクレオチドと、制御配列に適合する条件下で適当な宿主細胞中でポリヌクレオチドのコード配列の発現を指令する1つ又はそれを超える(複数個)の制御配列とを含む核酸構築体に関する。発現は、特に限定されないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含むと理解される。
【0062】
本明細書において「核酸構築体」は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又は天然に存在しないような方法で組合わされ並置された核酸のセグメントを含有するように修飾されている、1本鎖又は2本鎖の核酸分子と定義される。核酸構築体という用語は、核酸構築体が、コード配列とコード配列の発現に必要なすべての制御配列を含む時、発現カセットという用語と同義である。
【0063】
ポリペプチド又は銅依存性トランス活性化転写因子をコードする単離されたポリヌクレオチドはまた、ポリペプチド又は転写因子の改良された発現を与えるように操作することができる。ベクターへの挿入前の核酸配列の操作は、発現ベクターによっては好ましいか又は必要である。組換えDNA法を使用して核酸配列を修飾する方法は、当該技術分野で公知である。
【0064】
本発明の方法においてポリペプチド又は銅依存性トランス活性化転写因子をコードする核酸配列は、宿主細胞中のコード配列の発現を改良するために、1つ又はそれを超える(複数個)の固有の制御配列を含むか、又は1つ又はそれを超える(複数個)の固有の制御配列は、核酸配列に対して外来の1つ又はそれを超える(複数個)の制御配列で置換される。
【0065】
本明細書において用語「制御配列」は、ポリペプチドの発現に必要な又は有利なすべての成分を含むと定義される。各制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して固有でも又は外来でもよい。本明細書に記載の銅誘導性プロモーター及び銅応答性上流活性化配列以外に、かかる制御配列は、特に限定されないが、プロモーター、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを含む。少なくとも制御配列は、銅誘導性プロモーター、銅応答性上流活性化配列、及び転写及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、コード配列とポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域との結合を促進する特異的制限部位を導入するために、リンカーを提供される。
【0066】
目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーターの操作は、すでに本明細書に記載されている。銅依存性トランス活性化転写因子について、制御配列は適切なプロモーター配列(転写因子をコードするポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞により認識されるヌクレオチド配列)でもよい。プロモーター配列は、転写因子の発現を仲介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、選択された宿主細胞中の転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であり、変異プロモーター、末端切断型プロモーター、及びハイブリッドプロモーターを含み、宿主細胞に対して固有であるか又は外来である細胞外もしくは細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。
【0067】
糸状菌宿主細胞中で転写を指令するための適切なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー中性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸安定アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーもしくはアスペルギルス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ、アスペルギルス・オリザエアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランスアセトアミダーゼ、フザリウム・ベネナツムアミログルコシダーゼ(WO00/56900)、フザリウム・ベネナツムDaria(WO00/56900)、フザリウム・ベネナツムQuinn(WO00/56900)、フザリウム・オキシスポルムトリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787)、トリコデルマ・リーセイベータグルコシダーゼ、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼI、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼII、トリコデルマ・リーセイベータキシロシダーゼの遺伝子から得られるプロモーター、ならびにNA2−tpiプロモーター(アスペルギルス・ニガー中性アルファアミラーゼとアスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子からのプロモーターのハイブリッド);及びこれらの変異体、末端切断型、及びハイブリッドプロモーターがある。
【0068】
酵母宿主において有用なプロモーターは、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ(ENO1)、サッカロミセス・セレビシエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエアルコール脱水素酵素/グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシエトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン(CUP1)、及びサッカロミセス・セレビシエ3−ホスホグリセレートキナーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主細胞の他の有用なプロモーターは、Romanos et al.,1992,Yeast 8:423−488に記載されたように得られる。
【0069】
制御配列は適当な転写ターミネーター配列(宿主細胞に認識されて転写を停止させる配列)でもよい。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端に機能できる形で結合している。選択された真菌宿主細胞で機能する任意のターミネーターが本発明で使用される。
【0070】
糸状菌宿主細胞のための好適なターミネーターは、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガーアルファグルコシダーゼ、及びフザリウム・オキシスポルムトリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0071】
酵母宿主細胞のための好適なターミネーターは、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエチトクロームC(CYC1)、及びサッカロミセス・セレビシエグリセロアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素の遺伝子から得られる。酵母宿主細胞の他の有用なターミネーターは、Romanos et al.,1992,前出、に記載されたように得られる。
【0072】
制御配列はまた適当なリーダー配列(宿主細胞による翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域)でもよい。リーダー配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の5’末端に機能できる形で結合している。選択された宿主細胞で機能する任意のリーダー配列が本発明で使用される。
【0073】
糸状菌宿主細胞の好適なリーダーは、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランストリオースリン酸イソメラーゼ、フザリウム・ベネナツムトリプシン、及びフザリウム・ベネナツムグルコアミラーゼの遺伝子から得られる。
【0074】
酵母宿主細胞の適当なリーダーは、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ(ENO1)、サッカロミセス・セレビシエ3−ホスホグリセレートキナーゼ、サッカロミセス・セレビシエアルファ因子、及びサッカロミセス・セレビシエアルコール脱水素酵素/グリセロアルデヒド−3−リン酸(ADH2/GAP)の遺伝子から得られる。
【0075】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列(核酸配列の3’末端に機能できる形で結合しており、転写されると、転写されたmRNAにポリアデオシン残基を付加させるシグナルとして宿主細胞により認識される配列)でもよい。選択された真菌宿主細胞で機能する任意のポリアデニル化配列が本発明で使用される。
【0076】
糸状菌宿主細胞の好適なポリアデニル化配列は、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランスアントラニル酸シンターゼ、フザリウム・オキシスポルムトリプシン様プロテアーゼ、及びアスペルギルス・ニガーアルファグルコシダーゼの遺伝子から得られる。
【0077】
酵母宿主細胞の有用なポリアデニル化配列は、Guo and Sherman,1995,Molecular Cellular Biology 15:5983−5990に記載されている。
【0078】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に結合したアミノ酸配列をコードし、コードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に導くシグナルペプチドコード領域でもよい。核酸配列のコード配列の5’末端は本質的に、分泌されるポリペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読みとり枠中で天然に結合しているシグナルペプチドコード領域を含有してもよい。あるいはコード配列の5’末端は、コード配列に対して外来であるシグナルペプチドコード領域を含有してもよい。外来のシグナルペプチドコード領域は、コード配列がシグナルペプチドコード領域を自然に含有しない場合に、必要である。あるいは外来のシグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの分泌を増強するために、天然のシグナルペプチドコード領域を置換してもよい。しかし発現されたポリペプチドを、選択された真菌宿主細胞の分泌経路に導く任意のシグナルペプチドコード領域が本発明で使用される。
【0079】
糸状菌宿主細胞の有効なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、フミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード領域である。
【0080】
酵母宿主細胞の有用なシグナルペプチドは、サッカロミセス・セレビシエアルファ因子及びサッカロミセス・セレビシエインベルターゼの遺伝子から得られる。他の有用なシグナルペプチドコード領域は、Romanos et al.,1992,前出、に記載されたように得られる。
【0081】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコードするポリペプチドコード領域でもよい。生じるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又はある場合にはチモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般に不活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒性又は自己触媒性切断により成熟した活性ポリペプチドに変換することができる。プロペプチドコード領域は、サッカロミセス・セレビシエアルファ因子、リゾムコール・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、及びマイセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophilia)ラッカーゼ(WO95/33836)の遺伝子から得られる。
【0082】
シグナルペプチドとプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、プロペプチド領域はポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、シグナルペプチド領域はプロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0083】
また宿主細胞の増殖に対して、ポリペプチド又は銅依存性トランス活性化転写因子の発現の制御を可能にする制御配列を付加することが好ましいこともある。制御系の例は、化学的又は物理的刺激(制御化合物の存在を含む)に応答して遺伝子の発現のオン又はオフを引き起こすものがある。酵母では、ADH2系又はGAL1系が使用される。糸状菌では、TAKAアルファアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリザエグルコアミラーゼプロモーター、及びフザリウム・ベネナツムグルコアミラーゼプロモーターが制御配列として使用される。制御配列の他の例は、遺伝子増幅を可能にするものである。真核生物系ではこれらには、メソトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸還元酵素、及び重金属で増幅されるメタロチオネイン遺伝子がある。これらの場合にポリペプチドをコードする核酸配列は、制御配列に機能できる形で結合している。
【0084】
発現ベクター
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合した目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーターの銅誘導性転写を引き起こす)とを含む組換え発現ベクターに関する。上記の種々の核酸及び制御配列は一緒に連結されて組換え発現ベクターを産生し、これは、1つ又はそれを超える便利な制限部位を含み、かかる部位でポリペプチドをコードする核酸配列の挿入又は置換を可能にする。あるいは核酸配列は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを発現のための適切なベクター中に挿入することにより発現される。発現ベクターの作成においてコード配列は、コード配列が発現のために銅誘導性プロモーター、銅応答性上流活性化配列、及び1つ又はそれを超える適切な制御配列に機能できる形で結合するように、ベクター中に位置する。
【0085】
組換え発現ベクターは、都合良く組換えDNA操作を受けて核酸配列の発現を引き起こす任意のベクター(例えばプラスミド又はウイルス)である。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合性に依存する。ベクターは線状でも又は閉鎖環状プラスミドでもよい。
【0086】
ベクターは自律複製ベクター(すなわち染色体外物質として存在し、その複製は染色体複製に依存しない)でもよく、例えばプラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体である。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有する。あるいはベクターは、宿主細胞に導入された時ゲノム中に組み込まれ、組み込まれた染色体と一緒に複製されるものでもよい。さらに単一のベクター、又は宿主細胞のゲノムに導入される総DNAを一緒に含む2つまたはそれを超えるベクターもしくはプラスミド、又はトランスポゾンが使用される。
【0087】
本発明のベクターは、好ましくは形質転換細胞の容易な選択を可能にする1つ又はそれを超える選択マーカーを含有する。選択マーカーは、その生成物が殺生物性、ウイルス抵抗性、重金属に対して抵抗性、栄養要求性に対する原栄養性などを与える遺伝子である。酵母宿主細胞の適当なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3である。糸状菌宿主細胞で使用される選択マーカーには、特に限定されないが、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸還元酵素)、pyrG(オロチジン−5’−リン酸脱炭酸酵素)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニル酸シンターゼ)、ならびにこれらの同等物がある。アスペルギルス(Aspergillus)細胞での使用に好適なものは、アスペルギルス・ニーヅランス又はアスペルギルス・オリザエのamdSとpyrG遺伝子、及びストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子である。フザリウム細胞での使用に好適なものは、bar、amdS、pyrG、又はhygB遺伝子である。
【0088】
本発明のベクターは好ましくは、宿主細胞のゲノムへのベクターの安定な組み込み、又はゲノムに非依存性に細胞中のベクターの自律複製を可能にする要素を含有する。
【0089】
宿主細胞ゲノムへの組み込みのために、ベクターは、相同的組換え又は非相同的組換えによりゲノムへ組み込むための、ポリペプチド又はベクターの他の要素をコードするポリヌクレオチド配列に依存する。あるいはベクターは、染色体中の正確な位置で宿主細胞のゲノムへの相同的組換えによる組み込みを指令するための追加のヌクレオチド配列を含有してもよい。正確な位置での組み込みの確率を上昇させるために、組み込み要素は好ましくは充分な数の核酸、例えば100〜10,000塩基対、好ましくは400〜10,000塩基対、最も好ましくは800〜10,000塩基対を含有し、これは相同的組換えの確率を上昇させるための、対応する標的配列との高度の同一性を有する。組み込み要素は、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同的な任意の配列である。さらに組み込み要素は、非コード性又はコード性ヌクレオチド配列でもよい。一方ベクターは、非相同的組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。
【0090】
自律複製のためにベクターはさらに、宿主細胞中でベクターが自立的に複製することを可能にする複製開始点を含んでよい。酵母細胞中で有用なプラスミド複製開始点の例は、2ミクロン複製開始点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3との組合せ、及びARS4とCEN6との組合せである。糸状菌細胞中で有用なプラスミド複製開始点の例は、AMA1とANS1である(Gems et al.,1991,Gene 98:61−67;Cullen et al.,1987,Nucleic Acids Research 15:9163−9175;WO00/24883)。AMA1遺伝子の単離と遺伝子を含むプラスミドもしくはベクターの構築は、WO00/24883号に記載の方法に従って行われる。複製開始点は、宿主細胞中での機能を温度感受性にする変異を有するものでもよい(例えば、Ehrlich,1978,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1433)。
【0091】
遺伝子産物の産生を上昇させるために、ポリペプチドをコードする核酸配列の2つ以上のコピーを宿主細胞中に挿入してもよい。核酸配列のコピー数の増加は、配列の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞ゲノム中に組み込むことにより、又は核酸配列とともに増幅可能な選択マーカー遺伝子を含めることにより得られる(ここで、検出可能マーカー遺伝子の増幅されたコピー、従って核酸配列の追加のコピーを含有する細胞は、適切な選択物質の存在下で細胞を培養することにより選択することができる)。
【0092】
上記要素を連結して本発明の組換え発現ベクターを構築するのに使用される方法は、当業者に公知である(例えば、Sambrook et al.,1989,前出)。
【0093】
真菌宿主細胞
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合した目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む組換え真菌宿主細胞に関する。本明細書において発現ベクター又は核酸構築体は、ベクター又は構築体が、上記したように染色体組み込み物質として又は自己複製性染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞中に導入される。用語「宿主細胞」は、複製中に起きる変異のために親細胞と同一ではない、親細胞の任意の子孫を包含する。宿主細胞の選択はほとんど、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとその供給源、ならびに銅依存性トランス活性化転写因子をコードするポリヌクレオチドとに依存する。
【0094】
宿主細胞は本発明の方法で有用な任意の真菌細胞である。本明細書において「真菌」は、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)(Hawksworth et al.,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,第8版,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UK)、ならびに卵菌門(Oomycota)(Hawksworth et al,1995,前出、171頁)、及びすべての不完全菌類(Hawksworth et al,1995,前出)を含む。
【0095】
好適な態様において真菌宿主細胞は酵母細胞である。本明細書において「酵母」は、有子嚢胞子酵母(エンドミセス目(Endomycetales))、担子胞子酵母、及び不完全菌類(Fungi imperfecti)に属する酵母を含む。酵母の分類は将来変わる可能性があるため、本発明の目的において酵母は、Biology and Activities of Yesst(Skinner,F.A.,Passmore,S.M.and Davenport,R.R.,eds.,Soc.App.Bacteriol.Symposium Series No.9,1980)に記載されたように定義される。
【0096】
より好適な態様において酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、又はヤローウィア(Yarrowia)細胞である。
【0097】
最も好適な態様において酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ジアスタチクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)細胞である。別の最も好適な態様において酵母宿主細胞は、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)細胞である。別の最も好適な態様において酵母宿主細胞はヤローウィア・リポリティカ細胞である。
【0098】
さらに最も好適な態様において酵母宿主細胞はサッカロミセス・カールスベルゲンシス・セレビシエ(Saccharomyces carlsbergensis cerevisiae)JG169(MAT−α、ura3−52、leu2−3、pep4−1137、his3Δ2、prb1::leu2、Δpre1::his3)である(米国特許第5,770,406号)。
【0099】
別の好適な態様において真菌宿主細胞は糸状菌細胞である。「糸状菌」は、真菌類(Eumycota)亜門と卵菌類(Oomycota)亜門の糸状型の菌である(Hawksworth et al,1995,前出、により定義されたもの)。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖からなる菌糸壁が特徴である。栄養増殖は菌糸の伸長により、炭素異化は偏性好気性である。これに対してサッカロミセス・セレビシエのような酵母の栄養増殖は、単細胞葉状体の出芽により、炭素異化は発酵性である。
【0100】
より好適な態様において糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス、オーレオバシディウム(Aureobasidium)、ベルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クロソスポリウム(Chrysosporium)、コプリヌス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシディウム(Filibasidium)、ファサリウム(Fusarium)、フミコーラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ムロール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネオカリスマスティックス(Neocalismastix)、ノイロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロケーテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレロツス(Pleurotus)、シゾフィルム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、テルモアスクス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トラメテス(Trametes)、又はトリコデルマ(Trichoderma)細胞である。
【0101】
最も好適な態様において糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・フミガツス、アスペルギルス・フォエチヅス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニーヅランス、アスペルギルス・ニガー、又はアスペルギルス・オリザエ細胞である。別の最も好適な態様において糸状菌宿主細胞は、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルークウェレンセ(Fusarlum crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンディ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム、フザリウム・レチクラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロセウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテシオイデス(Fusarium trichothecioides)、又はフザリウム・ベネナツム細胞である。別の最も好適な態様において糸状菌宿主細胞は、ベルカンデラ・アヅスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブローサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブフファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・ケラチノフィルム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ラックノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・トロピクム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdariuim)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンスラディクム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・ゾナーツム(Chrysosporium zonatum)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオルス・ヒルスツス(Coriolus hirsutus)、フミコーラ・インソレンス、フミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophihora thermophila)、ノイロスポラ・クラッサ、ペニシリウム・プルプロゲヌム(Penicillium purpurogenum)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラディアータ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギイ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビローサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコラー(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0102】
真菌細胞は、それ自体公知の方法で、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及び細胞壁の再生を含む方法により形質転換される。アスペルギルス宿主細胞の形質転換の適当な方法は、EP238023号及びYelton et al.,1984,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81:1470−1474に記載されている。トリコデルマ・リーセイ宿主細胞の形質転換の適当な方法は、Penttila et al.,1987,Gene 61:155−164、及びGruber et al.,1990,Curr Genet.18(1):71−6に記載されている。フザリウム(Fusarium)種を形質転換するための適当な方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147−156、及びWO96/00787号に記載されている。酵母は、Becker and Guarente,In Abelson,J.N. and Simon,M.I.,editors,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Methods in Enzymology,Volume 194,pp.182−187,Academic Press,Inc.,New York;Ito et al.,1983,Journal of Bacteriology 153: 163; and Hinnen et al.,1978,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1920に記載されている方法を使用して形質転換される。
【0103】
本発明はさらに、以下の例により記載されるが、これは決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0104】
実施例
緩衝液及び基質として使用した化学物質は、少なくとも試薬等級の市販品である。
【0105】
DNA配列決定
DNA配列決定は、Applied Biosystemsモデル3130X Genetic Analyzer(Applied Biosystems、Foster city,CA,USA)を使用して色素ターミネーター化学(Giesecke et al.,1992,Journal of Virol.Methods 38:47−60)を使用して行った。配列は、配列特異的プライマーを用いてphred/phrap/consed(University of Washington,Seatle,WA,USA)を使用して組み立てた。
【0106】
菌株
サッカロミセス・セレビシエJG169(MAT−α、ura3−52、leu2−3、pep4−1137、his3Δ2、prb1::leu2、Δpre1::his3)(米国特許第5,770,406号)を、本明細書の実施例中の宿主株として使用した。
【0107】
培養培地
YPD培地は、1リットル当たり10gの酵母エキス、20gのバクトペプトン、及び2%のグルコースからなった。
【0108】
CUPマイナスura培地(pH7.0)(オリジナル培地)は、1リットル当たり1mlの100mM CuSO4・5H2O、アミノ酸と硫酸アンモニウムの無い1.7gの酵母窒素塩基(YNB)(BIO101、Carlsbad、CA、USA)、40mgのアデニンを有する0.8gのCSM−ura(BIO101、Carlsbad、CA、USA)、5gのカサミノ酸(Becton Dickinson and Company,Sparks,MD,USA)、100mlの50%グルコース、50mlの0.5M K2HPO4、及び1mlの100mg/mlアンピシリンからなった。
【0109】
酵母uraマイナス最適化培地(最適培地)は、1リットル当たり1mlの100mM CuSO4・5H2O、硫酸アンモニウムの無い6.7gの酵母窒素塩基(YNB)、40mgのアデニンを有する0.8gのCSM−ura、5.9gのコハク酸(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO.USA)、20gのガラクトース、10gのグルコース、及び1mlの100mg/mlアンピシリンからなった。
【0110】
酵母uraマイナス選択培地は、1リットル当たり、硫酸アンモニウムの無い6.7gの酵母窒素塩基(YNB)、5gのカサミノ酸、100mlの0.5Mコハク酸(pH5)、40mlの50%グルコース、及び2mlの10mg/mlクロラムフェニコールからなった。
【0111】
酵母uraマイナス選択プレートは、1リットル当たり20gのノーブル寒天を補足した酵母uraマイナス選択培地からなった。
【0112】
SCuraマイナス培地は、1リットル当たり7.5gのアミノ酸の無い酵母窒素塩基(Fluka,Buchs,Switzerland)、11.3gのコハク酸、6.8gの水酸化ナトリウム、5.6gのカサミノ酸、及び0.1gのL−トリプトファン、100mlの50%フルクトース無菌溶液、400μlの250mg/mlアンピシリン無菌溶液(いずれもオートクレーブ後に加えた)からなった。
【0113】
SCuraマイナスプレートは、SCuraマイナス培地(ただし100mlの無菌20%フルクトースを使用した)と20gの寒天(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO.USA)からなった。
【0114】
SDMUA培地は、1リットル当たり1.7gのアミノ酸の無い酵母窒素塩基、5.0gのカサミノ酸、40mgのADEを有する0.8gのCSM−ura(MP Biomedicals,Irvine,CA,USA)、10mlの10mM CuSO4・5H2O、及び10mlの1M K2HPO4、100mlの50%フルクトース無菌溶液、400μlの250mg/mlアンピシリン無菌溶液(いずれもオートクレーブ後に加えた)からなった。
【0115】
LB培地は、1リットル当たり10gのトリプトン、5gの酵母エキス、及び5gの塩化ナトリウムからなった。
【0116】
LBプレートは、LB培地と1リットル当たり15gのバクト寒天からなった。
【0117】
SOC培地は、2%トリプトン、0.5%酵母エキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、及び10mM MgSO4からなり、オートクレーブにより滅菌し、次にろ過滅菌したグルコースを20mMになるように加えた。
【0118】
2×YTプレートは、1リットル当たり16gのトリプトン、10gの酵母エキス、5gのNaCl、及び15gのバクトアガロースからなった。
【0119】
実施例1:銅誘導性プロモーター(CUP1プロモーター)のPCR増幅
PCRプライマー997247と997248(下記)を設計して、プラスミドpCu426(Labbe and Thiele,1999,Methods in Enzymology 306:145−153)からサッカロミセス・セレビシエ銅誘導性プロモーター(CUP1プロモーター)を増幅した。サッカロミセス・セレビシエ発現プラスミドpMB1537(実施例2参照)へのクローニングのためにプライマー設計に制限酵素部位AgeIとEcoRIを取り込んだ。
【0120】
プライマー997247:
5’−CACCGGTGCATGCCTGCAGGAGCTCCTAGTTAGAAA−3’(配列番号25) (下線部)AgeI
プライマー997248:
5’−AACTATTCTTGAATGGAATTCTAGTCGATGACTTCT−S’(配列番号26) (下線部)EcoRI
【0121】
CUPプロモーター断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR System(Roche,Indianapolis,IN,USA)を使用して増幅した。PCR増幅反応混合物は、約50ngのpCu426プラスミドDNA、1μlのプライマー997247(50pmol/μl)、1μlのプライマー997248(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN, USA)を含有した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)5333(Eppendorf,Westbury,NY,USA)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0122】
246bpのPCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動でTAE緩衝液(1リットル当たり、4.84gのトリス塩基、1.14mlの氷酢酸、及び2mlの0.5M EDTA、pH8.0)を使用して精製し、QIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してさらに精製した。246bpのPCR産物を製造業者の説明書に従ってpCR2.1−TOPO(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA, USA)と連結した。インキュベーション後、2μlの混合物を使用してONE SHOT(登録商標)TOP10化学的コンピタントな大腸菌(E.coli)細胞を形質転換した(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA,USA)。2μl容量の結合混合物を大腸菌(E.coli)細胞に加え、氷上で5分間インキュベートした。次に細胞に42℃で30分間熱ショックを与え、氷上に2分間置いた。250μlのSOC培地を細胞に加え、混合物を37℃で1時間250rpmでインキュベートした。インキュベーション後、コロニーを100μg/mlのアンピシリンを補足した2×YTプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドを選択した。プレート上に増殖した8つのコロニーを無菌つまようじで取り上げ、100μg/mlのアンピシリンを補足した3mlのLB培地を含有する15mlのFALCON(登録商標)チューブで37℃、250rpmで一晩増殖させた。BioRobot9600(QIAGEN Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してプラスミドを単離した。
【0123】
得られたプラスミドミニプレップの4μl容量をEcoRIで消化した。消化反応物を、PCR反応についてすでに記載したようにアガロースゲルクロマトグラフィーとUV分析により分析した。挿入体を含有する単離されたプラスミドを、1μlのプラスミド鋳型、1.6ngのM13プライマー(前進プライマー又は逆進プライマー)(MWG Biotech,High Point,NC,USA)を使用して水で6μlにして配列決定した。正しい配列を有する生じたプラスミドをpBM128aと命名した(図1)。
【0124】
実施例2:発現ベクターpMB1537の構築
発現ベクターpMB1537は、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ(配列番号27はDNA配列であり、配列番号28は推定アミノ酸配列である;受け入れ番号59952)をコードする野生型遺伝子の発現を駆動する酵母TPIプロモーター、CYC1ターミネーター、及び選択マーカーとしてURA3遺伝子を含有する。
【0125】
酵母発現プラスミドpSTED226(WO05/045018号)を、EXPAND(登録商標)Long Template PCR System(Roche,Germany)を使用して、鋳型としてのpSTED226と以下の2つのプライマーを用いてPCR増幅した。
【0126】
プライマー319137:
5’−TCTAGAGGGCCGCATCATGTAATTAG−3’(配列番号29)
プライマー19138:
5’−GACGCCATGGTGAAGCTTTCTTTTAATCGT−3’(配列番号30)
【0127】
PCR増幅反応混合物は、約50ngのpSTED226プラスミドDNA、1μlのプライマー319137(50pmol/μl)、1μlのプライマー19138(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cycler(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。PCR操作の終了後、5826bpのPCR断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを製造業者(Amersham Biosciences,United Kingdom)の説明書に従って精製し溶出した。
【0128】
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ遺伝子を含有する遺伝子断片を、EXPAND(登録商標)Long Template PCR System(Roche,Germany)を使用して、鋳型としてのpENI1298(WO00/24883号)と以下の2つのプライマーを用いてPCR増幅した。
【0129】
プライマー349699:
5’−CAAGAAGATTACAAACTATCAATTTCATACACAATATAAACGATTAAAAGAAAGCTCACCATGAGGAGCTCCCTTGTGCTGTTCTTTGTCTCTG−3’(配列番号31)
プライマー353031:
5’−GAGGGCGTGAATGTAAGCGTGACATAACTAATTACATGATGCGGCCCTCTAGATTATCAAAGACATGTCCCAATTAACCCGAAGTAC−3’(配列番号32)
【0130】
PCR増幅反応混合物は、約50ngのpENI1298プラスミドDNA、1μlのプライマー349699(50pmol/μl)、1μlのプライマー353031(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cyclerを使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。PCR操作の終了後、927bpのPCR断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを製造業者の説明書に従って精製し溶出した。
【0131】
得られた2つの断片(5826bpと927bp)を、電気穿孔法によりGENE PULSER(登録商標)とPulse Controller(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を1.5キロボルトで2mmのギャップキュベットを使用して製造業者の説明書に従って、サッカロミセス・セレビシエJG169中に形質転換した。形質転換反応物は、リガーゼ遺伝子を含有する100ngのPCR産物と混合した100ngのPCR増幅ベクターDNAを含有した。形質転換反応物を酵母uraマイナス選択プレートに蒔き、30℃で5日間インキュベートした。
【0132】
上記操作からの1つ酵母クローンを再度SCuraマイナスプレートに画線し、1つの酵母コロニーを50mlの振盪フラスコ中の10mlのSCuraマイナス培地中に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。酵母プラスミド調製のために、培養ブロス2mlをQIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kit(QIAGEN Inc.,Germany)を使用するプラスミド調製で使用した。次にプラスミドを配列決定し、予測されたDNA配列を証明した。プラスミドをpMB1537と命名した(図2)。
【0133】
実施例3:発現ベクターpBM126aの構築
プラスミドpBM128aをAgeIとEcoRIで消化し、プラスミドpMB1537をEcoRIとNdeIで消化し、断片(265bpと661bp)をそれぞれ1.8%及び0.7%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。ベクター断片を作成するために、pMB1537をAgeIとNdeIで消化した。生じた5148bp断片を0.7%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。
【0134】
次にすべての3つの断片をRapid DNA Ligation Kit(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN,USA)を使用して連結した。2μlの反応物を使用して、大腸菌(E.coli)XL10−GOLD(登録商標)ウルトラコンピタント細胞(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を製造業者の説明書に従って形質転換した。大腸菌(E.coli)形質転換体からBioRobot9600を使用してプラスミドDNAを調製した。挿入体を含有する単離されたプラスミドを、1μlのプラスミド鋳型、1.6ngのM13プライマー(前進プライマー又は逆進プライマー)を使用して、水で6μlにして配列決定した。正しい配列を有する生じたプラスミドをpBM126aと命名した(図3)。
【0135】
実施例4:発現ベクターpMB1539の構築
TPIプロモーターの制御下でサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体(配列番号33はDNA配列であり、配列番号34は推定アミノ酸配列である)をコードする遺伝子を含有するように、プラスミドpMB1539を構築した。
【0136】
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体を含有する遺伝子断片をPCRにより、EXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して、鋳型としてサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子(配列番号27)を含有するpENI1298(WO00/24883号)と、プライマー349699と353031(下記)とを用いてPCRにより調製した。
【0137】
プライマー349699:
5’−CAAGAAGATTACAAACTATCAATTTCATACACAATATAAACGATTAAAAGAAAGCTTCACCATGAGGAGCTCCCTTGTGCTGTTCTTTGTCTCTG−3’(配列番号35)
プライマー353031:
5’−GAGGGCGTGAATGTAAGCGTGACATAACTAATTACATGATGCGGCCCTCTAGATTATCAAAGACATGTCCCAATTAACCCGAAGTAC−3’(配列番号36)
【0138】
PCR増幅反応混合物は、約50ngのpENI1298プラスミドDNA、1μlのプライマー349699(50pmol/μl)、1μlのプライマー353031(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cyclerを使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0139】
PCR増幅後、993bpのDNA断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを使用して精製した。生じた断片(100ng)を実施例2に記載のpSTED226ベクター断片(100ng)と混合し、電気穿孔法によりGENE PULSER(登録商標)とPulse Controllerを1.5キロボルトで2mmのギャップキュベットを使用して製造業者の説明書に従って、電気コンピタントなサッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に形質転換した。次に形質転換細胞を酵母uraマイナス選択プレートに蒔き、30℃で5日間インキュベートした。
【0140】
上記操作からの1つ酵母クローンを再度SCuraマイナスプレートに画線し、1つの酵母コロニーを50mlの振盪フラスコ中の10mlのSCuraマイナス培地中に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。この培養物から培養ブロス2mlをQIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kitを使用するプラスミド調製で使用した。次にプラスミドを配列決定し、予測されたDNA配列を証明した。プラスミドをpMB1539と命名した(図4)。
【0141】
実施例5:発現ベクターpJLin168の構築
pBM126a(CUP1プロモーターの制御下でサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子を含有する)中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子を、pMB1539からのサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体遺伝子と交換することにより、CUP1プロモーターを使用してサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体発現ベクターを構築した。まずpBM126aとpMB1539の両方をHindIIIとMluIで消化し、pBM126aからの5kb断片とpMB1539からの1.1kb断片とをQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを使用してゲル精製した。次に両方の断片をRapid DNA Ligation Kitを使用して、ベクター量を50ngに設定してベクター:挿入体のモル比を1:2、1:3、及び1:4で連結した。生じたプラスミド(pJLin168と呼ぶ、図5)は、CUP1プロモーターの制御下でサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体遺伝子を含有した。
【0142】
実施例6:発現ベクターpBM142cとpBM143bの構築
QUIKCHANGE(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を使用して、pJLin168中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼのプロペプチド配列から、アミノ酸SPIRRをコードする最後の5つのコドンを除去するために、以下のプライマーを設計した:
【0143】
プライマー998570:
5’−CTCTGCGTGGACGGCCTTGGCCGAGGTCTCGCAGGATCTGTTTAAC−3’(配列番号37)
プライマー998571:
5’−TTAAACAGATCCTGCGAGACCTCGGCCAAGGCCGTCCACGCAGAG−3’(配列番号38)
【0144】
73ngのpJLin168、1×QUIKCHANGE(登録商標)反応緩衝液(Stratagene、La Jolla、CA,USA)、4μlのQUIKSOLUTION(登録商標)(Stratagene、La Jolla、CA,USA)、1μlのXL dNTPミックス(Stratagene、La Jolla、CA,USA)、及び1μlの2.5U/μl PfuUltra(登録商標)DNAポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を最終容量50μl中に含有するPCR反応物で、100ピコモルの各プライマーを使用した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)を、95℃で1分を1サイクル;95℃で50秒、60℃で50秒、及び68℃で6分をそれぞれ18サイクル;そして10℃に維持にプログラムした。1μlのDpnIを増幅反応物に直接加え、37℃で1時間インキュベートした。2μl容量のDpnI消化反応物を使用して、大腸菌(E.coli)XL10−GOLD(登録商標)ウルトラコンピタント細胞(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を製造業者の説明書に従って形質転換した。SPIRRコード領域に対応する15bpの無いクローンの1つをDNA配列決定により確認し、pBM142cと命名した(図6)。
【0145】
pBM142c中にさらなる変異が生成されるのを避けるために、pBM142cからのサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ遺伝子の5’領域をpJLin168中にクローン化して戻した。プラスミドpBM142cをHindIIIとNdeIで消化し、0.6kb断片を1.5%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。プラスミドpJLin168をHindIIIとNdeIで消化し、生じた5.5kb断片を0.7%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。次に2つの断片をRapid DNA Ligation Kitを使用して結合させた。生じた発現プラスミド(pBM143bと呼ぶ、図7)は、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ遺伝子の発現を駆動するCUP1プロモーターを含有した。すなわち最後の5つのアミノ酸(SPIRR)を除去することにより、22アミノ酸のシグナル/プロペプチド配列を17アミノ酸に変化させた。
【0146】
実施例7:発現ベクターpMB1682の構築
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子を含有するプラスミドpMB1537を使用して、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼシグナルペプチドのランダム突然変異誘発ライブラリーを構築した。シグナルペプチドコード配列とフランキングDNA領域のランダム突然変異誘発PCR断片を、PCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemと以下のプライマー(DNA−Technology,Aarthus,Denmark)を使用して増幅した。
【0147】
プライマー309787:
5’−CTAGGAACCCATCAGGTTGGTGGAAG−3’(配列番号39)
プライマー373172:
5’−CTGTGCAAAGAGATTGAACTGGTTAAACAGATCCTGCGANNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNCATGGTGAAGCTTTCTTTTAA−3’(配列番号40)
【0148】
ここで、配列番号40の41、50、51、60、64、66、68、70、71、72、74、75、77、80、82、83、及び87位のNは、99%がAで1%がG、C、又はTである;
配列番号40の40、46、47、52、53、56、62、65、67、73、78、84、85、86、及び88位のNは、99%がGで、1%がA、C、又はTである;
配列番号40の42、43、45、48、49、54、55、58、59、61、63、69、76、79、81、89、91、及び92位のNは、99%がCで、1%がA、G、又はTである;及び
配列番号40の44、57、90、及び93位のNは、99%がTで、1%がA、C、又はGである。
【0149】
多様性を導入するプライマーを以下の規則で設計した:ランダム化位置の野生型塩基は絶えず99%で存在し、他の3つの塩基は1%で存在し、3つすべては等しく出現する。
【0150】
シグナルペプチドコード配列の突然変異誘発断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して増幅した。PCR増幅反応混合物は、約50ngのpMB1537、1μlのプライマー309787(50pmol/μl)、1μlのプライマー373172(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cyclerを使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0151】
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子の遺伝子断片をPCRにより、PCR反応物中の鋳型としてpMB1537を使用して、EXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して調製した。PCRで使用したプライマーは上記のプライマー309787と373172である。
【0152】
PCR増幅後、600bpのPCR断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを製造業者のプロトコールに従って使用して精製し、50μlの10mMトリス−塩酸(pH8.0)中に溶出した。
【0153】
プラスミドpMB1537を、シグナルペプチドコード配列内のDNA位置でSacIで消化して線状化した。ドナーDNAとしてフランキングDNA領域(受容体プラスミドの受容体DNAに100%相同的)を有するシグナルペプチドコード配列のPCR断片を使用して、サッカロミセス・セレビシエJG169の形質転換において、線状化ベクターを受容体DNAとして使用した。
【0154】
具体的には、約3μgのSacI消化pMB1537を約1μgの600bp PCR断片とともに、GENE PULSER(登録商標)とPulse Controllerを1.5キロボルトで2mmのギャップキュベットを使用して、100μlの電気コンピタントなサッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に電気穿孔した。電気穿孔後、形質転換細胞に1mlの1Mソルビトールを加え、30℃で1時間インキュベートし、次に100μg/mlアンピシリンを補足したSCuraマイナスプレートに1.1mlを蒔いた。
【0155】
100μg/mlアンピシリンを補足したSCuraマイナスプレートから全部で8400コロニーを取り上げ、96ウェルのポリスチレンマイクロウェルプレートに移し、取り上げたコロニーを横の列B〜Hと縦の列1〜12に入れ、列Aは空のままとし、これにサッカロミセス・セレビシエJG169中の野生型プラスミド構築体を野生型対照として接種した。すべてのウェルは、1リットル当たり40mgのアデニンが添加されたSD培地URAを含有した(SDMUAと呼ぶ)(製造業者Qbiogene,Inc.,BiO 101(登録商標)Systemの推奨に従う、AH Diagnostics,Aarhus,Denmarkにより販売)。プレートを30℃、250rpmで5日間インキュベートした。5日後、プレートを4℃に維持し、次に後述の吉草酸p−ニトロフェニルアッセイを使用してリパーゼ活性を測定した。
【0156】
以下のアッセイで、培養上清のリパーゼ活性を吉草酸p−ニトロフェニルを基質として使用して測定した。培養上清を50mMトリス(pH7)、10mM CaCl2、0.4%トリトンX−100緩衝液(希釈緩衝液)で希釈した。リポラーゼ(LIPOLASE)(登録商標)標準物質(Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を、試料緩衝液で1.0LU/ml濃度から出発して0.125LU/ml濃度で終わる2倍工程で希釈した。ポリスチレンマイクロウェルプレート中で、10μlの上清を90μlの希釈緩衝液と混合した。100μlの吉草酸p−ニトロフェニル基質溶液(117μlの吉草酸p−ニトロフェニルを10mlのイソプロパノールに溶解した)を各ウェルに加え、短時間混合し、次に405nmの吸光度を12秒毎に3分間測定した。アッセイデータを評価して、サッカロミセス・セレビシエJG169(A列のウェル中)中のpMB1539より高い活性を有するすべての試料を同定した。
【0157】
対照より高い活性を有するすべてのクローンを陽性ヒットとして集め、これを同じ構成で再分析し、まだ対照より高い活性を有するクローンを、マイクロウェルプレート中の新鮮なSDMUA培地への接種物質として使用した。A列を再度対照株用に使用した。プレートを上記したようにインキュベートし、上記したように分析した。
【0158】
対照より高い活性を有するすべてのクローンをウェルから取り出し、SC−寒天プレートに再度画線した。マイクロウェルプレート中の200μlのSDMUA培地と、10mlのSDMUA培地を含有する50mlチューブとでの再増殖のために、すべてのクローンの単一のコロニーを集め、30℃で5日間インキュベートし、次に上記の吉草酸p−ニトロフェニルアッセイを使用して、収率を対照株の収率と比較した。
【0159】
各クローンを3つの隣接マイクロウェルと3つの個々の50mlチューブ中で増殖させた。活性レベルの比較のために、3つの増殖実験の平均値を使用した。
【0160】
最後にマイクロウェルプレートと50mlチューブ中の両方で最も高いリパーゼ活性を有するクローンを、10mlのSDMUA培地を含有する振盪フラスコ(2つの邪魔板を有する250mlの円錐邪魔板付き振盪フラスコ)に接種し、250rpmで30℃で5日間インキュベートした。上記したように吉草酸p−ニトロフェニルを使用して、上清をリパーゼ活性について測定した。最も高いリパーゼ活性を有するクローンのDNAを配列決定した。
【0161】
最も高い活性を示すクローンをMB1665と命名し、これはリパーゼのシグナルペプチド中でR2K置換を有した(シグナルペプチドの2番目のコドンがAGGからAAGに変化した)。
【0162】
実施例4に記載したものと同じ原理を使用して、このシグナルペプチドをコードするDNAを、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体をコードするpMB1539構築体に移した。この場合、実施例4と同じ方法を使用してより小さいPCR断片を作成した。しかし、実施例4に従って、しかし鋳型としてMB1539からプラスミドDNAを使用して、より大きい断片も作成した。サッカロミセス・セレビシエJG169のGAP修復と形質転換を上記したように行った。このクローニングにより、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体のより高い発現を有するクローンを得た。このクローンをサッカロミセス・セレビシエMB1681と命名した。
【0163】
SC−寒天プレートからのサッカロミセス・セレビシエMB1681細胞物質(30℃で5日間増殖)を使用して、50ml振盪フラスコ中の10mlのSCuraマイナス培地に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。この培養物から、酵母プラスミド調製のために、培養ブロス2mlをQIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kitを使用するプラスミド調製で使用した。精製したプラスミドを製造業者の説明書に従って大腸菌(E.coli)Top10F(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)中に形質転換した。形質転換大腸菌(E.coli)細胞を、100μg/mlアンピシリンを補足したLBプレートに蒔いた。単一のコロニーを単離し、再画線し、LB培地中に接種し、30℃で一晩インキュベートした。一晩培養物の1mlを、QIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kitを使用するプラスミド調製で使用した。最後に単離されたプラスミドをDNA配列決定の鋳型として使用し、変異体シグナル配列の配列(配列番号41)とサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体コード領域(配列番号33、推定アミノ酸配列は配列番号34)を証明した。生じたプラスミドをpMB1682と命名した(図8)。プラスミドpMB1682はTPIプロモーターとサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体コード領域(R2K変化を有するSPIRRが無い)を含んだ。
【0164】
実施例8:発現ベクターpJLin195の構築
サッカロミセス・セレビシエCUP1プロモーターを使用して、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体(R2K変化を含有するシグナル配列を有し、SPIRRが無い)発現ベクターを含有するプラスミドpJLin195を構築した。
【0165】
pMB1682のHindIII−NdeI断片を、HindIIIとNdeIで消化したpBM143b中にクローン化し、第2のアミノ酸Arg(AGG)をLys(AAG)のコード配列で置換した。pMB1682とpBM143bの両方をHindIIIとNdeIの両方で消化し、pMB1682からの1kb断片とpBM143bからの5kb断片をQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて抽出した。断片を製造業者の説明書に従ってRapid DNA Ligation Kitを使用して、ベクター量を50ngに設定してベクター:挿入体のモル比を1:2、1:1、及び3:1で連結した。生じたプラスミド(DNA配列決定により確認した)をpJLin195と命名した(図9)。
【0166】
実施例9:発現ベクターpBM165aの構築
以下のプライマーを使用して、4つのサッカロミセス・セレビシエ上流活性化配列(UAS)を含む発現ベクターを構築するためのPCR断片を作成した:
【0167】
プライマー999003:
5’−CCGGTGCATGCCTGCAGGAGCTCCT−3’(配列番号42) (下線部)SphI
プライマー999005:
5’−ACCGGTCTTTTTTGCTGGAACGGTTCA−3’(配列番号43) (下線部)AgeI
【0168】
断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して増幅した。PCR混合物は、0.5μlの約25ngのpBM143b DNA、1μlのプライマー999003(50pmol/μl)、1μlのプライマー999005(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックスを含有した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0169】
生じた147bpのPCR断片を1.8%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製し、147bpのPCR産物を製造業者の説明書に従ってpCR2.1−TOPO(登録商標)と連結した。1μl容量の新鮮なPCR産物、3μlの2回蒸留水、及び1μlのTOPO(登録商標)クローニングベクターをピペットで混合し、室温で5分間インキュベートした。
【0170】
インキュベーション後、2μlの混合物を使用してONESHOT(登録商標)TOP10化学的コンピタント大腸菌(E.coli)細胞を形質転換した。2μl容量の結合混合物を大腸菌(E.coli)細胞に加え、氷上で5分間インキュベートした。次に細胞に42℃で30分間熱ショックを与え、氷上に2分間置いた。250μlのSOC培地を細胞に加え、混合物を37℃で1時間250rpmでインキュベートした。インキュベーション後、コロニーを100μg/mlのアンピシリンを補足した2×YTプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドを選択した。プレート上に増殖した8つのコロニーを無菌つまようじで取り上げ、100μg/mlのアンピシリンを補足した3mlのLB培地を含有する15mlのFALCON(登録商標)チューブで37℃、250rpmで一晩増殖させた。BioRobot9600を使用してプラスミドを単離した。
【0171】
得られたプラスミドミニプレップの4μl容量をEcoRIで消化した。消化反応物を、PCR反応についてすでに記載したようにアガロースゲルクロマトグラフィーにより分析した。挿入体を含有する単離されたプラスミドを、1μlのプラスミド鋳型、1.6ngのM13プライマー(前進プライマー又は逆進プライマー)、及び水で6μlを使用して配列決定した。正しい配列を有する生じたプラスミドをpBM163aと命名した(図10)。
【0172】
4つのUAS配列を含有する最終的発現構築体を作成するために、pBM163aをSphIとAgeIで消化し、pJLin168をAgeIとHindIIIで消化した。132bpのSphI−AgeIと340bpのAgeI−HIndIII断片をサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現ベクターpBM143b(これはあらかじめSphIとHindIIIで消化させた)中にクローン化した。生じたプラスミドをpBM165aと命名した(図11)。
【0173】
実施例10:ACE1過剰産生発現ベクターの構築
サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC20458)のゲノムDNAからACE1遺伝子を増幅するために、以下のPCRプライマーを設計した。発現プラスミドpBM143bとpJLin195へのクローニングのために、BspHI制限部位を取り込んだ。
【0174】
プライマー999262:
5’−TCATGATACGATCGTGAAAGAATAT−3’(配列番号44) (下線部)BspHI
プライマー999263:
5’−TCATGAGGATGATGACAAAGAAGAC−3’(配列番号45) (下線部)BspHI
【0175】
ACE1遺伝子断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して増幅した。ゲノムDNAをサッカロミセス・セレビシエS288C株から、YEASTER(登録商標)Genomic DNA kit(ZYMO Research,Orange,CA.USA)を使用して製造業者の説明書に従って単離した。PCR反応物は、0.1μgのサッカロミセス・セレビシエS288C ゲノムDNA、1μlのプライマー999262(50pmol/μl)、1μlのプライマー999263(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックスを最終容量50μl中に含有した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で1分45秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で1分45秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0176】
生じた1589bpのPCR断片を1.8%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。1589bpのPCR産物を製造業者の説明書に従ってpCR2.1−TOPO(登録商標)と連結した。生じたプラスミド(pBM168aと命名、図12)をヌクレオチド配列決定により確認した。
【0177】
BspHIとACE1遺伝子分節(1583bp)で消化したプラスミドpBM168aを、同じ酵素で消化した発現ベクターpBM143b、pJLin195、及びpBM165a中にクローン化した。断片をQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitにより抽出した。断片を製造業者の説明書に従ってRapid DNA Ligation Kitを使用して、ベクター量を50ngに設定してベクター:挿入体のモル比を1:2、1:1、及び3:1で連結した。生じたプラスミドをpBM169a(図13)、pBM171a(図14)、pBM170a(図15)と命名した。
【0178】
実施例11:pBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM169a、pBM170a、及びpBM171aを用いる酵母形質転換
プラスミドpBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM169a、pBM170a、及びpBM171aをそれぞれ、サッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に、YEASTMAKER(登録商標)Yeast Transformation System(Clontech,Palo Alto,CA,USA)を使用して製造業者の説明書に従って形質転換した。簡単に説明するとサッカロミセス・セレビシエJG169の1つのコロニーを使用して50mlのYPD培地に接種し、オービタルシェーカー(250rpm)で30℃で一晩インキュベートした。
【0179】
細胞が600nmで0.4〜0.5の吸光度に達した時、細胞を700×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを30mlの脱イオン水に再懸濁した。Sorvall RT6000D遠心分離機で700×gで5分間遠心分離後、細胞ペレットを1.5mlの1.1×TE/酢酸リチウム溶液(110mM酢酸リチウム、11mMトリス(pH8)、1.1mM EDTA)に再懸濁した。微量遠心分離機で12,000×gで15秒間遠心分離後、細胞ペレットを600μlの1.1×TE/酢酸リチウム溶液に再懸濁した。約0.5μgのpBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM170a、又はpBM171a、250μlのPEG/酢酸リチウム溶液(40% PEG4000、0.1M酢酸リチウム、10mMトリス−塩酸(pH8)、1mM EDTA)、及び5μlの10mg/ml変性Herring Testes Carrier DNAを、50μlのコンピタントな細胞にを添加後、混合物を550rpmで30℃で30分間振盪し、細胞を反転して10分毎に混合した。各形質転換混合物に総量20μlのDMSOを加え、42℃で15分インキュベートし、混合物を5分毎に反転した。形質転換混合物を微量遠心分離機で12,000×gで15秒間遠心分離し、細胞を1mlのYPD PLUS(登録商標)Liquid Medium(YEASTMAKER(登録商標)Yeast Transformation System,Clontech,Palo Alto,CA,USA)に再懸濁し、550rpmで30℃で90分間振盪した。遠心分離後、細胞を1mlの0.9%NaCl溶液で洗浄し、15%グリセロールの存在下で1mlの酵母uraマイナス選択培地に再懸濁した。50μlの各形質転換反応物を二重測定で酵母uraマイナス選択プレートに蒔き、コロニーが現れるまで30℃でインキュベートした。
【0180】
pBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM169a、pBM170a、又はpBM171aを含有するサッカロミセス・セレビシエJG169形質転換体を使用して、96ウェルプレート中の180μlのuraマイナス選択培地に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。次に一晩培養物を180μlの銅誘導性「オリジナル」培地又は「最適」培地で100倍希釈し、30℃で5日間増殖させた。
【0181】
培養上清のリパーゼ活性を酪酸p−ニトロフェニル(pNB)を基質として以下のアッセイで測定した:まず培養上清を0.1M MOPS、4mM CaCl2、0.01%トリトンX−100緩衝液(pH7.5)(試料緩衝液)で1/15希釈し、次に希釈試料を0倍、1/3倍、1/9倍と連続希釈した。LIPOLASE(登録商標)標準物質(Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を、試料緩衝液で1.0LU/ml濃度から出発して0.125LU/ml濃度で終わる2倍工程で希釈した。全部で20μlの各希釈物(標準物質を含む)を96ウェルの平底プレートに入れた。200μlの酪酸p−ニトロフェニル基質溶液(酪酸p−ニトロフェニル:DMSO:0.1M MOPS(pH7.5)の比率は1:99:400)を各ウェルに加え、次に25℃で15分インキュベートした。インキュベーションの終了後、96ウェルプレートについて405nmの吸光度を測定した。作成した標準曲線から外挿して試料濃度を決定した。振盪フラスコ分析のために、代表的形質転換体を2mlのuraマイナス選択培地に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。一晩培養物を125mlガラス振盪フラスコ中の25mlのCUPマイナスura培地で200倍希釈し、30℃で6日間増殖させた。試料を採取し、微量遠心分離機で12,000×gで10秒間遠心分離し、上清を上記したように酪酸p−ニトロフェニルアッセイを使用してリパーゼ活性について試験した。
【0182】
10μlの培養上清をLaemmli試料緩衝液(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)と1:2の比率で混合した。2分間沸騰させた後、試料を15μlのPRECISION PLUS PROTEIN(登録商標)標準物質(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)とともに10〜20%のSDS−PAGEゲル(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)にのせた。ゲルを1×トリス−グリシン−SDSランニングバッファー(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)で200Vで1時間流した。次にゲルを水でそれぞれ5分間の洗浄を3回行い、BIO−SAFE(登録商標)クマシー染色(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)で1時間染色し、次に水で少なくとも30分間脱色した。
【0183】
pBM143b、pJLin195、pBM169a、又はpBM171aを含有するサッカロミセス・セレビシエJG169形質転換体(各プラスミドについて24個)を、96ウェルプレート中の「オリジナル」銅含有培地で5日間増殖させた。培養ブロス試料中のリパーゼ活性を、上記したように酪酸p−ニトロフェニルを基質として使用して測定した。pBM143b、pBM169a、pJLin195、又はpBM171a形質転換体について平均相対的リパーゼ活性は、表1に示すようにそれぞれ100、202、196、及び506であった。
【0184】
【表1】
【0185】
表に示した結果は、高コピープラスミドを有するAce1p転写活性化因子を過剰産生することにより、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現レベルが倍増することを示した。
【0186】
酵母形質転換体中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ活性は、コハク酸を緩衝液として含有し、ガラクトースと配合物を一次炭素源として含有する「最適」培地で増殖させた形質転換体について、改良されていることが証明された。
【0187】
Ace1p過剰産生形質転換体中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現レベルが「最適」培地中でさらに増強されるかどうかを試験するために、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ活性を、96ウェルプレート中で「オリジナル」又は「最適」銅含有培地中で増殖させたpBM143b、pJLin195、pBM169a、又はpBM171aを含有するサッカロミセス・セレビシエJG169株形質転換体から測定した。すべての4つの発現プラスミドは上記したように評価した。
【0188】
「オリジナル」培地中のpBM143b、pBM169a、pJLin195、及びpBM171a形質転換体についての平均相対的リパーゼ活性は、それぞれ100、190、170、及び402であった。表IIに示すように、「最適」培地中のpBM143b、pBM169a、pJLin195、及びpBM171a形質転換体についての平均相対的リパーゼ活性は、それぞれ240、318、285、及び266であった。「最適」培地で増殖させた形質転換体から、すべてのプラスミドについてより高い全体的発現が観察された。サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ産生に対するAce1p過剰発現の影響は、プラスミドpBM143bをプラスミドpBM169aと比較すると約30%高かった。しかし「最適」培地中のpJLin195と比較したpBM171aからのACE1遺伝子の過剰発現は、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現のわずかな低下を引き起こした。
【0189】
【表2】
【0190】
pBM143b、pJLin195、pBM169a、又はpBM171aからのサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼの発現を振盪フラスコで評価した。各プラスミドについて2つの代表的形質転換体を、「オリジナル」又は「最適」銅含有培地を使用して二重測定で25mlの振盪フラスコ培養で増殖させた。振盪フラスコ試料を4、5、及び6日目に採取した。5日目の試料の上清を、上記したように酪酸p−ニトロフェニルアッセイを使用してサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ活性について測定した。
【0191】
振盪フラスコでは、ACE1遺伝子の過剰発現作用のためにサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現は、「最適培地」中のpBM143bとpBM169aを比較すると約1.1倍高く、「オリジナル」培地では約1.6倍高かった。さらに表IIIに示すように、「オリジナル」培地中のpJLin195と比較してpBM171aからのACE1遺伝子の過剰発現は約3.5倍の発現上昇を与え、「最適」培地では発現が1.6倍低下した。両方の培地でpBM171形質転換体の相対的発現レベルは同じであったが、pJLin195形質転換体中のリパーゼ発現レベルは「最適」培地で有意に高かった。培養濁度(OD600)を上昇させ、寒天培地に蒔いて総CFU/mlを測定することにより増殖を追跡した。一般に「オリジナル」培地中の細胞は「最適」培地中で増殖させた細胞より少なくとも2倍速く増殖し、これはおそらく炭素源としてのグルコースに対する選択性によると考えられる。微視的には「オリジナル」培地中で増殖させた酵母細胞と比較して、「最適」培地中で増殖させた酵母細胞は、少なくとも3倍のサイズになった大きな液胞を有して膨れているようであった。
【0192】
【表3】
【0193】
上記したように、代表的振盪フラスコからの上清についてSDS−PAGEを行うと、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼバンドの強度は、酪酸p−ニトロフェニルアッセイの結果と一致した。
【0194】
プラスミドpBM165aとpBM170aを、上記したようにサッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に形質転換させた。形質転換体(各プラスミドについて24個)を選択し、上記したように96ウェルプレート中の「オリジナル」培地中で増殖させた。表IVに示すように結果は、「オリジナル」培地中のpBM165a、pBM170a、及びpBM169aの平均相対的リパーゼ活性が、それぞれ100、277、及び173であることを示した。
【0195】
【表4】
【0196】
Ace1p転写因子について一次結合部位を複製し、複数コピープラスミドからのACE1遺伝子の発現を上昇させることにより、96ウェルプレートでサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現の1.6倍の上昇が観察された。
【0197】
本明細書に開示した具体例は本発明のいくつかの態様を例示する目的であり、本明細書に記載し特許請求した発明は、本明細書に開示した具体例に限定されるものではない。同等の実施態様は本発明の範囲内にあると考えられる。実際、前記説明から当業者には、本明細書で証明し記載したもの以外に本発明の種々の修飾が明らかであろう。そのような修飾態様は添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。矛盾する可能性がある場合は、定義を含む本開示が優先する。
【0198】
受け入れ番号を含む種々の文献が本明細書に引用されたが、その開示内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌細胞中のポリペプチドをコードする遺伝子発現を上昇させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌宿主細胞(例えば、酵母又は糸状菌細胞)中の固有の又は外来ポリペプチドの組換え生産は、商業的に適切な量でポリペプチドを生産するためのより好ましい手段を提供する。
【0003】
固有の又は外来ポリペプチドの組換え生産は一般に、ポリペプチドをコードするDNAが制御遺伝子からのプロモーターの発現制御下にある発現カセットを構築することにより行われる。発現カセットは、一般にプラスミド介在形質転換により宿主細胞中に導入される。次に形質転換された宿主細胞の産生を、発現カセット上に含有されるプロモーターの正しい機能に必要な条件を誘導する条件下で培養することにより行われる。
【0004】
真菌宿主細胞中のポリペプチドの組換え生産のための新しい発現構築体とベクターの開発には、一般に宿主細胞中のポリペプチドの発現を制御するのに適した効率的なプロモーターが利用できることが必要である。しかし最もよく知られたプロモーターでさえ、目的の遺伝子を発現させるのには非効率的なことがある。
【0005】
多くのプロモーターは調節を受けて、その効率を上昇させることができる。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン遺伝子(CUP1と呼ぶ)は、CUP1転写活性化部位に対して−105から−230の間に存在すると報告されている特異的プロモーター領域UASCUP1(上流活性化配列)を介して、銅により転写活性化される(Thiele and Hamer, 1988,Mol,Cell.Biol,6:1158−1163;Zhou and Thiele,1993,Biofactors 4;105−115)。サッカロミセス・セレビシエのAce1タンパク質(Ace1p)は、銅イオン(Thiele,1988,Mol.Cell.Biol,8:2745−2752)又は銀イオン(Furst et al,,1988,Cell 55:705−717)の存在下で酵母メタロチオネイン遺伝子CUP1の誘導を引き起こす。Ace1pのアミノ末端側の半分は塩基性アミノ酸残基とシステインが豊富であり、Cu(I)又はAg(I)の非存在下ではなく存在下でCUP1上流のアクチベーター配列に特異的に結合する(Furst et al.,1988,前出)。Thiele and Hamer,1986,Molecular and Cellular Biology 6;1158−1163は、タンデムに複製された上流制御配列がサッカロミセス・セレビシエの銅−メタロチオネイン遺伝子の銅誘導性転写を仲介し、これらの要素の1つの合成物が2つのタンデムコピー中に存在する時、異種プロモーター上の銅誘導を与えることを開示する。
【0006】
Gralla et al.,1991,PNAS USA 88:8558−8562は、Ace1pが酵母の銅、亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子の発現を活性化することを開示する。Lapinskas et al.,1993,Current Genetics 24:388−393は、Ace1pがサッカロミセス・セレビシエのサイトゾル性カタラーゼ遺伝子の発現を活性化することを開示する。
【0007】
Mehra et al.,1989,J.Biological Chemistry 264:19747−19753は、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)からのメタロチオネイン遺伝子のクローニングと配列とを記載する。Zhou and Thiele,1991,PNAS USA 88:6112−6116は、カンジダ・グラブラタからの金属活性化転写因子遺伝子の単離を記載する。Thorvaldsen et al.,1993.J.Biological Chemistry 268:12512−12518は、AMT1によるカンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子(MTI、MTIIa、及びMTIIbと呼ぶ)の制御を開示する。
【0008】
Mascorro−Galiardo et al.,1996,Gene 172:169−170は、サッカロミセス・セレビシエ中の遺伝子発現を調節するためのCUP1プロモーターベースのベクターの構築を開示する。Macreadie et al.,1989,Plasmid 21:147−150は、サッカロミセス・セレビシエのCUP1遺伝子を利用する一連の酵母発現ベクターを開示する。Hottiger et al.,1994,Yeast 10:283−296は、CUP1プロモーターの生理学的性状解析と、その転写活性化因子Ace1pの過剰発現の結果を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、真菌宿主細胞中でポリペプチドを産生するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド、ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、ポリペプチドを産生する方法に関する。ポリペプチドは真菌宿主細胞に対して固有でも外来でもよい。
【0011】
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む真菌宿主細胞に関する。
【0012】
本発明はさらに、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)とを含む、核酸構築体とベクターとに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】pBm128aの制限地図である。
【図2】pMB1537の制限地図である。
【図3】pBM126aの制限地図である。
【図4】pMB1539の制限地図である。
【図5】pJLin168の制限地図である。
【図6】pBM142cの制限地図である。
【図7】pBM143bの制限地図である。
【図8】pMB1682の制限地図である。
【図9】pJLin195の制限地図である。
【図10】pBM163aの制限地図である。
【図11】pBM165aの制限地図である。
【図12】pBM168aの制限地図である。
【図13】pBM169aの制限地図である。
【図14】pBM171aの制限地図である。
【図15】pBM170aの制限地図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、ポリペプチドを産生する方法に関する。
【0015】
本発明の生産法において真菌宿主細胞は、当該技術分野で公知の方法を使用してポリペプチドを産生するのに適した栄養培地中で培養される。例えば細胞は、振盪フラスコ培養により、又は実験室発酵槽又は工業的発酵槽の小規模もしくは大規模発酵(連続発酵、バッチ発酵、供給バッチ発酵、又は固相発酵を含む)により培養される。培養は、炭素、窒素源、無機塩、及び銅イオン(及び/又は銀イオン)を含む適当な栄養培地で当該技術分野で公知の方法を使用して行われる。適当な培地は、販売業者から入手できるか、又は公開された組成(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)のカタログ中)に従って調製される。培地中に銅イオンが存在する場合、培地は少なくとも10μMの銅イオン、好ましくは少なくとも50μMの銅イオン、さらに好ましくは少なくとも100μMの銅イオン、さらに好ましくは少なくとも250μM、最も好ましくは少なくとも500μMの銅イオンを含有する。銅イオンはCuSO4、CuCl2、又は任意の他の適切な形で培地に添加される。培地はまた又はあるいは、銀イオンを含有する。培地中に銀イオンが存在する場合、培地は少なくとも10μMの銀イオン、好ましくは少なくとも50μMの銀イオン、さらに好ましくは少なくとも100μMの銀イオン、さらに好ましくは少なくとも250μM、最も好ましくは少なくとも500μMの銀イオンを含有する。銀イオンはAg2SO4、AgCl、又は任意の他の適切な形で培地に添加される。
【0016】
ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的な当該技術分野で公知の方法を使用して検出される。検出法には、特異抗体、高速液体クロマトグラフィー、毛細管クロマトグラフィー、酵素産物の生成、酵素基質の消失、又はSDS−PAGEの使用がある。例えばポリペプチドが酵素である場合、酵素の活性を測定するために酵素測定法が使用される。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素について当該技術分野で公知である(例えば、Schomburg and M.Saizmann(eds.),Enzyme Handbook,Springer−Verlag,New York,1990参照)。
【0017】
ポリペプチドが栄養培地中に分泌される場合、その物質は培地から直接回収される。ポリペプチドが分泌されない場合、これは細胞溶解物から回収することができる。生じるポリペプチドは、当該技術分野で公知の方法を使用して単離される。例えばポリペプチドは、特に限定されないが、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、及び/又は沈殿を含む従来法により培養培地から単離される。単離されたポリペプチドは次に、特に限定されないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば、分取、等電点電気泳動(IEF))、溶解度差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出を含む当該技術分野で公知の種々の方法によりさらに精製される(例えば、Protein Purification,J.−C.Janson and Lars Ryden,editors,VCH Publishers,New York,1989参照)。
【0018】
銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む本発明の真菌宿主細胞は、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチドと、及び/又は銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドが無い真菌宿主細胞より、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、さらに好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%、さらに最も好ましくは少なくとも200%多いポリペプチドを産生する。
【0019】
プロモーター
用語「プロモーター」は、本明細書において、RNAポリメラーゼに結合し、ポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの正しい下流の転写開始部位にポリメラーゼを向けて転写を開始させるDNA配列と定義される。RNAポリメラーゼは、コード領域の適切なDNA鎖に相補的なメッセンジャーRNAの組み立てを有効に触媒する。用語「プロモーター」はまた、mRNAへの転写後の翻訳のための5’非コード領域(プロモーターと翻訳開始の間)、転写活性化因子のようなシス作用性転写制御要素、及び転写因子と相互作用することができるヌクレオチド配列とを含むと理解される。
【0020】
用語「銅誘導性プロモーター配列」は、本明細書において、プロモーターの銅誘導性転写を引き起こす転写制御因子の結合部位を有する、プロモーターの成分としてシス作用性要素を介して銅イオンにより誘導されるプロモーターと定義される。
【0021】
用語「タンデムプロモーター」は、本明細書において、それぞれがコード配列に機能できる形で結合しており、コード配列のmRNAへの転写を仲介する2つまたはそれを超えるプロモーターと定義される。タンデムプロモーターの成分は、同じプロモーターであるか又は異なるプロモーターの組合せでもよい。プロモーターは、宿主細胞に対して固有であるか又は外来である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。タンデムプロモーターに含有される少なくとも1つのプロモーターは、銅誘導性プロモーターである。好適な態様においてタンデムプロモーターは、銅誘導性プロモーターからなる。
【0022】
用語「ハイブリッドプロモーター」は、本明細書において、コード配列に機能できる形で結合した2つまたはそれを超えるプロモーターの部分からなり、コード配列のmRNAへの転写を仲介するプロモーター配列と定義される。プロモーターは、宿主細胞に対して固有であるか又は外来である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。ハイブリッドプロモーターの少なくとも1つの部分は、銅誘導性プロモーターの部分である。好適な態様においてハイブリッドプロモーターは、2つまたはそれを超える銅誘導性プロモーターの部分からなる。
【0023】
用語「機能できる形で結合した(operably linked)」は、本明細書において、制御配列(例えばプロモーター配列)が、コード配列にコードされるポリペプチドの産生を指令するように、コード配列に対する位置で適切に配置された構成であると定義される。
【0024】
用語「コード配列」は、本明細書において、適切な制御配列の制御下に置かれると、ポリペプチド(例えば酵素)に翻訳されるmRNAに転写される核酸配列と定義される。コード配列の境界は一般に読みとり枠で決定され、これは通常ATG開始コドン又は代替開始コドン(例えばGTG及びTTG)で始まり、停止コドン(例えばTAA、TAG、及びTGA)で終わる。コード配列は、特に限定されないが、ゲノムDNA、cDNA、半合成、合成、及び組換え核酸配列を含む。
【0025】
本発明の方法の実施において銅誘導性プロモーターは、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)メタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)メタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルス(Agaricus bisporus)メタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)メタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)メタロチオネイン遺伝子から得られる。
【0026】
好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエCUP1遺伝子(受け入れ番号P07215)から得られる(Butt et al.,1984,PNAS USA 76:3332−3336)(DNAについては配列番号1、推定アミノ酸配列については配列番号2)。
【0027】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエSOD1遺伝子(受け入れ番号P00445)から得られる(Gralla et al.,1991,PSAS USA 88:8558−8562)(DNAについては配列番号3、推定アミノ酸配列については配列番号4)。
【0028】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエCTT1遺伝子(受け入れ番号P06115)から得られる(Lapinskas et al.,1993,Current Genetics 24:388−393)(DNAについては配列番号5、推定アミノ酸配列については配列番号6)。
【0029】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、サッカロミセス・セレビシエCRS5遺伝子(受け入れ番号P41902)から得られる(Culotta et al.,1994,J.Biol.Chem.269:25295−252302)(DNAについては配列番号7、推定アミノ酸配列については配列番号8)。
【0030】
別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子から得られる。より好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、カンジダ・グラブラタMT遺伝子から得られる、最も好適な態様において銅誘導性プロモーターは、カンジダ・グラブラタMT1遺伝子(受け入れ番号P15113)から得られる(Mehra et al.,1989,J.Biol.Chem.264:19747−19753;Mehra et al.,1992,Gene 114:75−80;Mehra et al.,1990,Gene 265:6369−6375)(DNAについては配列番号9、推定アミノ酸配列については配列番号10)。別の好適な態様において銅誘導性プロモーター配列は、カンジダ・グラブラタMTII遺伝子(受け入れ番号J05398)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)(DNAについては配列番号11、推定アミノ酸配列については配列番号12)。
【0031】
本発明の方法において銅誘導性プロモーターはまた、2つまたはそれを超えるプロモーターを含むタンデムプロモーターでも、又は2つまたはそれを超えるプロモーターの部分を含むハイブリッドプロモーターでもよい(その少なくとも1つは、銅誘導性プロモーター又は銅誘導性プロモーターの部分である)。
【0032】
銅誘導性プロモーターではないが、銅誘導性プロモーターとのタンデムプロモーター又はハイブリッドプロモーターの構築に有用なプロモーターの例には、特に限定されないが、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸安定アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーもしくはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ、アスペルギルス・オリザエアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ、フザリウム・ベネナツムDariaプロモーター、フザリウム・ベネナツムQuinnプロモーター、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)ベータグルコシダーゼ、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼI、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼII、トリコデルマ・リーセイベータキシロシダーゼ、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ(ENO−1)、サッカロミセス・セレビシエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエアルコール脱水素酵素/グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(ADH2/GAP)、及びサッカロミセス・セレビシエ3−ホスホグリセレートキナーゼ;ならびにNA2−tpiプロモーター(アスペルギルス・ニガー中性アルファアミラーゼとアスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)の遺伝子から得られるプロモーター、及びこれらの変異体、末端切断型、及びハイブリッドプロモーターがある。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは、Romanos et al.,1992,Yeast 8:423−488に記載されている。
【0033】
本発明の方法においてハイブリッドプロモーター又はタンデムプロモーターは、タンデムプロモーター又はハイブリッドプロモーターの成分として野生型プロモーター又はその部分が核酸配列について固有であっても、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であると理解される。例えば少なくとも2つのプロモーターからなるタンデムプロモーターにおいて1つ又はそれを超える(複数個)のプロモーターは、ポリペプチドをコードする核酸配列の野生型プロモーターでもよい。
【0034】
上流活性化配列(UAS)
用語「銅応答性上流活性化配列」は、本明細書において、プロモーターの銅誘導性転写を引き起こす転写制御因子の結合部位として機能する、シス作用性要素と呼ぶDNA配列を含むプロモーターの領域と定義される。酵母及び真菌遺伝子についてかかるシス作用性要素を含有するプロモーター領域は、上流活性化配列(upstream activation sequence;UASと略される)と呼ばれる(Thiele,1992,Nucleic Acids Research 20:1183−1191)。かかるUASの同定と単離は、Thiele and Hamer,1986,前出;Zhou and Thiele,1993,前出;及びThiele,1992,前出、により記載された方法に従って行われる。
【0035】
本発明の方法において、銅誘導性の遺伝子転写を引き起こす任意のシス作用性プロモーター要素を使用することができる。銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子の銅誘導性プロモーターから得られる。
【0036】
好適な態様において、銅応答性上流活性化配列はサッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子のプロモーターから得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエCUP1遺伝子(受け入れ番号P07215)のプロモーターから得られる(Butt et al.,1984,前出)。
【0037】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子のプロモーターから得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエCTT1遺伝子(受け入れ番号P06115)のプロモーターから得られる(Lapinskas et al.,1993, 前出)。
【0038】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエSOD1遺伝子(受け入れ番号P00445)のプロモーターから得られる(Gralla et al.,1991,前出)。
【0039】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、サッカロミセス・セレビシエCRS5遺伝子(受け入れ番号P41902)のプロモーターから得られる(Culotta et al.,1994,前出)。
【0040】
別の好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子から得られる。さらに好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMT遺伝子から得られる。最も好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMT1遺伝子(受け入れ番号P15113)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)。別の最も好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMTIIa遺伝子(受け入れ番号P15113)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)。別の最も好適な態様において銅応答性上流活性化配列は、カンジダ・グラブラタMTIIb遺伝子(受け入れ番号P15114)から得られる(Mehra et al.,1989,前出;Mehra et al.,1992,前出;Mehra et al.,1990,前出)。
【0041】
本発明の方法において1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列(UAS)は、銅誘導性プロモーターの上流に機能できる形で結合している。銅誘導性プロモーターはそれ自体の銅応答性上流活性化配列を含有し、従ってプロモーターに機能できる形で結合した1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列は、プロモーター中に含有されるものと同じUAS領域でも、プロモーター中に含有されるものと異なるUAS領域でも、又はこれらの組合せでもよいと理解される。上流活性化配列に関連する銅応答性要素の数(すなわち銅応答性要素の数と銅依存性転写力価との相関)に依存して、2つ以上の上流活性化配列がプロモーターの上流に置かれてもよい。従って上流活性化配列中に含有される銅応答性シス作用性要素の数に依存して、特異的上流活性化配列の複数のコピーを使用することができ、異なる上流活性化配列の組合せを使用することができ、又は前記のそれぞれの組合せを使用することができる。銅応答性シス作用性要素の総数は少なくとも2であり、好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも4、さらに好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも6である。
【0042】
好適な態様において追加の銅応答性上流活性化配列の1つは配列番号46である。別の好適な態様において追加の銅応答性上流活性化配列の1つは配列番号47である。
【0043】
トランスアクチベーター遺伝子
用語「銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子」は本明細書において、銅依存性に、銅誘導性プロモーター配列に結合した銅応答性上流活性化配列(UAS)を介して遺伝子転写を活性化する転写因子をコードする遺伝子と定義される。かかる遺伝子はまた、銅金属制御性転写因子(MRTF)遺伝子とも呼ばれる。本明細書において用語「銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子」には、かかる遺伝子の末端切断型及び/又は変異体が含まれると理解される。
【0044】
本発明の方法において、銅応答性上流活性化配列(UAS)を介して遺伝子転写を活性化する転写因子をコードする任意の転写活性化因子遺伝子を使用することができる。転写活性化因子遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子、カンジダ・グラブラタAMT1遺伝子、ヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)CUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)、サッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)、及びアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)よりなる群から選択することができる。
【0045】
好適な態様において転写活性化因子遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子(受け入れ番号P15315)である(Thiele and Hamer,1986,Mol.Cell.Biol.6:1158−1163)(DNAについては配列番号13、推定アミノ酸配列については配列番号14)。
【0046】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はカンジダ・グラブラタAMT1遺伝子(受け入れ番号P41772)である(Zhou and Thiele, PNAS USA 88:6112−6116)である(DNAについては配列番号15、推定アミノ酸配列については配列番号16)。
【0047】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)である(DNAについては配列番号17、推定アミノ酸配列については配列番号18)。
【0048】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はシゾサッカロミセス・ポンベCUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)である(DNAについては配列番号19、推定アミノ酸配列については配列番号20)。
【0049】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はサッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)である(DNAについては配列番号21、推定アミノ酸配列については配列番号22)。
【0050】
別の好適な態様において転写活性化因子遺伝子はアスペルギルス・フミガツス銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)である(DNAについては配列番号23、推定アミノ酸配列については配列番号24)。
【0051】
本発明の方法において真菌宿主細胞は少なくとも1つの転写活性化因子遺伝子を含む。転写活性化因子遺伝子は宿主細胞に対して固有でも又は外来でもよい。好適な態様において、転写活性化因子遺伝子の複数のコピーが宿主中で存在してもよい。あるいはそれぞれが1つ又はそれを超える(複数個)のコピーで存在する少なくとも2つの異なる転写活性化因子遺伝子の組合せが、真菌宿主細胞中に存在してもよい。遺伝子は宿主細胞に対して固有でも又は外来でも、又はこれらの組合せでもよい。
【0052】
転写活性化因子遺伝子のコピー数の増加は、遺伝子の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞中に組み込むことにより、又は転写活性化因子遺伝子に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含めることにより得られ、ここで細胞は選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含有し、従って転写活性化因子遺伝子の追加のコピーを含有する細胞は、適切な選択物質の存在下で細胞を培養することにより選択することができる。
【0053】
転写活性化因子遺伝子は、宿主細胞の染色体中に組み込まれるか、又は染色体外要素として存在するか、又はこれらの組合せでもよい。好適な態様において転写活性化因子遺伝子は、宿主細胞の染色体中に組み込まれる。
【0054】
ポリペプチド
ポリペプチドは、目的の真菌宿主細胞に対して固有でも又は異種でもよい。用語「異種ポリペプチド」は本明細書において、宿主細胞に対して固有ではないポリペプチド、又は固有のポリペプチドを改変するように構造が修飾されている固有のポリペプチドと定義される。
【0055】
ポリペプチドは、目的の生物活性を有する任意のポリペプチドでもよい。本明細書において用語「ポリペプチド」は、特定の長さのコードされた生成物を意味するものではなく、従ってペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質を包含する。用語「ポリペプチド」はまたハイブリッドポリペプチド(これは、1つ又はそれを超える(複数個)が真菌細胞に対して異種である少なくとも2つの異なるポリペプチドから得られる部分的及び/又は完全なポリペプチド配列の組合せを含む)を包含する。ポリペプチドはさらに、ポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子及び遺伝子操作体を含む。
【0056】
好適な態様においてポリペプチドは、抗体、抗原、抗菌性ペプチド、酵素、増殖因子、ホルモン、イムノディレーター(immunodilator)、神経伝達物質、受容体、レポータータンパク質、構造タンパク質、及び転写因子である。
【0057】
より好適な態様においてポリペプチドは、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、又はリガーゼである。最も好適な態様においてポリペプチドは、アルファグルコシダーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリン、グリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、アルファガラクトシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、アルファグルコシダーゼ、ベータグルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、ウロキナーゼ、又はキシラナーゼである。
【0058】
別の好適な態様においてポリペプチドは、アルブミン、コラーゲン、トロポエラスチン、エラスチン、又はゼラチンである。
【0059】
ポリペプチドをコードする核酸配列は、任意の原核生物、真核生物、又は他の供給源から得られる。本発明の目的において用語「から得られる」はある供給源に関連して使用される時、ポリペプチドがその供給源により、又はその供給源からの遺伝子が挿入されている細胞により産生されることを意味する。
【0060】
ポリペプチドをコードする核酸配列を単離又はクローン化する方法は当該技術分野で公知であり、ゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はこれらの組合せを含む。かかるゲノムDNAからの核酸配列のクローニングは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して行うことができる。例えば、Innis et al.,1990,PCR Protocols:A Guide to Methods and Application,Academic Press,New Yorkを参照。クローニング法は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含む所望の核酸断片の切断と単離、ベクター分子への断片の挿入、及び真菌細胞への組換えベクターの取り込みがあり、ここで核酸配列の複数のコピーが複製される。核酸配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成、合成起源、又はこれらの組合せでもよい。
【0061】
核酸構築体
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合した目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に少なくとも1つの銅応答性上流活性化配列(UAS)を含む第2のポリヌクレオチドと、制御配列に適合する条件下で適当な宿主細胞中でポリヌクレオチドのコード配列の発現を指令する1つ又はそれを超える(複数個)の制御配列とを含む核酸構築体に関する。発現は、特に限定されないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含むと理解される。
【0062】
本明細書において「核酸構築体」は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又は天然に存在しないような方法で組合わされ並置された核酸のセグメントを含有するように修飾されている、1本鎖又は2本鎖の核酸分子と定義される。核酸構築体という用語は、核酸構築体が、コード配列とコード配列の発現に必要なすべての制御配列を含む時、発現カセットという用語と同義である。
【0063】
ポリペプチド又は銅依存性トランス活性化転写因子をコードする単離されたポリヌクレオチドはまた、ポリペプチド又は転写因子の改良された発現を与えるように操作することができる。ベクターへの挿入前の核酸配列の操作は、発現ベクターによっては好ましいか又は必要である。組換えDNA法を使用して核酸配列を修飾する方法は、当該技術分野で公知である。
【0064】
本発明の方法においてポリペプチド又は銅依存性トランス活性化転写因子をコードする核酸配列は、宿主細胞中のコード配列の発現を改良するために、1つ又はそれを超える(複数個)の固有の制御配列を含むか、又は1つ又はそれを超える(複数個)の固有の制御配列は、核酸配列に対して外来の1つ又はそれを超える(複数個)の制御配列で置換される。
【0065】
本明細書において用語「制御配列」は、ポリペプチドの発現に必要な又は有利なすべての成分を含むと定義される。各制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して固有でも又は外来でもよい。本明細書に記載の銅誘導性プロモーター及び銅応答性上流活性化配列以外に、かかる制御配列は、特に限定されないが、プロモーター、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを含む。少なくとも制御配列は、銅誘導性プロモーター、銅応答性上流活性化配列、及び転写及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、コード配列とポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域との結合を促進する特異的制限部位を導入するために、リンカーを提供される。
【0066】
目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーターの操作は、すでに本明細書に記載されている。銅依存性トランス活性化転写因子について、制御配列は適切なプロモーター配列(転写因子をコードするポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞により認識されるヌクレオチド配列)でもよい。プロモーター配列は、転写因子の発現を仲介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、選択された宿主細胞中の転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であり、変異プロモーター、末端切断型プロモーター、及びハイブリッドプロモーターを含み、宿主細胞に対して固有であるか又は外来である細胞外もしくは細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。
【0067】
糸状菌宿主細胞中で転写を指令するための適切なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー中性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸安定アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーもしくはアスペルギルス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ、アスペルギルス・オリザエアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランスアセトアミダーゼ、フザリウム・ベネナツムアミログルコシダーゼ(WO00/56900)、フザリウム・ベネナツムDaria(WO00/56900)、フザリウム・ベネナツムQuinn(WO00/56900)、フザリウム・オキシスポルムトリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787)、トリコデルマ・リーセイベータグルコシダーゼ、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーセイセロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーセイエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼI、トリコデルマ・リーセイキシラナーゼII、トリコデルマ・リーセイベータキシロシダーゼの遺伝子から得られるプロモーター、ならびにNA2−tpiプロモーター(アスペルギルス・ニガー中性アルファアミラーゼとアスペルギルス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子からのプロモーターのハイブリッド);及びこれらの変異体、末端切断型、及びハイブリッドプロモーターがある。
【0068】
酵母宿主において有用なプロモーターは、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ(ENO1)、サッカロミセス・セレビシエガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエアルコール脱水素酵素/グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシエトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン(CUP1)、及びサッカロミセス・セレビシエ3−ホスホグリセレートキナーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主細胞の他の有用なプロモーターは、Romanos et al.,1992,Yeast 8:423−488に記載されたように得られる。
【0069】
制御配列は適当な転写ターミネーター配列(宿主細胞に認識されて転写を停止させる配列)でもよい。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端に機能できる形で結合している。選択された真菌宿主細胞で機能する任意のターミネーターが本発明で使用される。
【0070】
糸状菌宿主細胞のための好適なターミネーターは、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガーアルファグルコシダーゼ、及びフザリウム・オキシスポルムトリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0071】
酵母宿主細胞のための好適なターミネーターは、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエチトクロームC(CYC1)、及びサッカロミセス・セレビシエグリセロアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素の遺伝子から得られる。酵母宿主細胞の他の有用なターミネーターは、Romanos et al.,1992,前出、に記載されたように得られる。
【0072】
制御配列はまた適当なリーダー配列(宿主細胞による翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域)でもよい。リーダー配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の5’末端に機能できる形で結合している。選択された宿主細胞で機能する任意のリーダー配列が本発明で使用される。
【0073】
糸状菌宿主細胞の好適なリーダーは、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランストリオースリン酸イソメラーゼ、フザリウム・ベネナツムトリプシン、及びフザリウム・ベネナツムグルコアミラーゼの遺伝子から得られる。
【0074】
酵母宿主細胞の適当なリーダーは、サッカロミセス・セレビシエエノラーゼ(ENO1)、サッカロミセス・セレビシエ3−ホスホグリセレートキナーゼ、サッカロミセス・セレビシエアルファ因子、及びサッカロミセス・セレビシエアルコール脱水素酵素/グリセロアルデヒド−3−リン酸(ADH2/GAP)の遺伝子から得られる。
【0075】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列(核酸配列の3’末端に機能できる形で結合しており、転写されると、転写されたmRNAにポリアデオシン残基を付加させるシグナルとして宿主細胞により認識される配列)でもよい。選択された真菌宿主細胞で機能する任意のポリアデニル化配列が本発明で使用される。
【0076】
糸状菌宿主細胞の好適なポリアデニル化配列は、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニーヅランスアントラニル酸シンターゼ、フザリウム・オキシスポルムトリプシン様プロテアーゼ、及びアスペルギルス・ニガーアルファグルコシダーゼの遺伝子から得られる。
【0077】
酵母宿主細胞の有用なポリアデニル化配列は、Guo and Sherman,1995,Molecular Cellular Biology 15:5983−5990に記載されている。
【0078】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に結合したアミノ酸配列をコードし、コードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に導くシグナルペプチドコード領域でもよい。核酸配列のコード配列の5’末端は本質的に、分泌されるポリペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読みとり枠中で天然に結合しているシグナルペプチドコード領域を含有してもよい。あるいはコード配列の5’末端は、コード配列に対して外来であるシグナルペプチドコード領域を含有してもよい。外来のシグナルペプチドコード領域は、コード配列がシグナルペプチドコード領域を自然に含有しない場合に、必要である。あるいは外来のシグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの分泌を増強するために、天然のシグナルペプチドコード領域を置換してもよい。しかし発現されたポリペプチドを、選択された真菌宿主細胞の分泌経路に導く任意のシグナルペプチドコード領域が本発明で使用される。
【0079】
糸状菌宿主細胞の有効なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギルス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、フミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード領域である。
【0080】
酵母宿主細胞の有用なシグナルペプチドは、サッカロミセス・セレビシエアルファ因子及びサッカロミセス・セレビシエインベルターゼの遺伝子から得られる。他の有用なシグナルペプチドコード領域は、Romanos et al.,1992,前出、に記載されたように得られる。
【0081】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコードするポリペプチドコード領域でもよい。生じるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又はある場合にはチモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般に不活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒性又は自己触媒性切断により成熟した活性ポリペプチドに変換することができる。プロペプチドコード領域は、サッカロミセス・セレビシエアルファ因子、リゾムコール・ミエヘイアスパラギン酸プロテイナーゼ、及びマイセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophilia)ラッカーゼ(WO95/33836)の遺伝子から得られる。
【0082】
シグナルペプチドとプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、プロペプチド領域はポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、シグナルペプチド領域はプロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0083】
また宿主細胞の増殖に対して、ポリペプチド又は銅依存性トランス活性化転写因子の発現の制御を可能にする制御配列を付加することが好ましいこともある。制御系の例は、化学的又は物理的刺激(制御化合物の存在を含む)に応答して遺伝子の発現のオン又はオフを引き起こすものがある。酵母では、ADH2系又はGAL1系が使用される。糸状菌では、TAKAアルファアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリザエグルコアミラーゼプロモーター、及びフザリウム・ベネナツムグルコアミラーゼプロモーターが制御配列として使用される。制御配列の他の例は、遺伝子増幅を可能にするものである。真核生物系ではこれらには、メソトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸還元酵素、及び重金属で増幅されるメタロチオネイン遺伝子がある。これらの場合にポリペプチドをコードする核酸配列は、制御配列に機能できる形で結合している。
【0084】
発現ベクター
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合した目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーターの銅誘導性転写を引き起こす)とを含む組換え発現ベクターに関する。上記の種々の核酸及び制御配列は一緒に連結されて組換え発現ベクターを産生し、これは、1つ又はそれを超える便利な制限部位を含み、かかる部位でポリペプチドをコードする核酸配列の挿入又は置換を可能にする。あるいは核酸配列は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを発現のための適切なベクター中に挿入することにより発現される。発現ベクターの作成においてコード配列は、コード配列が発現のために銅誘導性プロモーター、銅応答性上流活性化配列、及び1つ又はそれを超える適切な制御配列に機能できる形で結合するように、ベクター中に位置する。
【0085】
組換え発現ベクターは、都合良く組換えDNA操作を受けて核酸配列の発現を引き起こす任意のベクター(例えばプラスミド又はウイルス)である。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合性に依存する。ベクターは線状でも又は閉鎖環状プラスミドでもよい。
【0086】
ベクターは自律複製ベクター(すなわち染色体外物質として存在し、その複製は染色体複製に依存しない)でもよく、例えばプラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体である。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有する。あるいはベクターは、宿主細胞に導入された時ゲノム中に組み込まれ、組み込まれた染色体と一緒に複製されるものでもよい。さらに単一のベクター、又は宿主細胞のゲノムに導入される総DNAを一緒に含む2つまたはそれを超えるベクターもしくはプラスミド、又はトランスポゾンが使用される。
【0087】
本発明のベクターは、好ましくは形質転換細胞の容易な選択を可能にする1つ又はそれを超える選択マーカーを含有する。選択マーカーは、その生成物が殺生物性、ウイルス抵抗性、重金属に対して抵抗性、栄養要求性に対する原栄養性などを与える遺伝子である。酵母宿主細胞の適当なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3である。糸状菌宿主細胞で使用される選択マーカーには、特に限定されないが、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸還元酵素)、pyrG(オロチジン−5’−リン酸脱炭酸酵素)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニル酸シンターゼ)、ならびにこれらの同等物がある。アスペルギルス(Aspergillus)細胞での使用に好適なものは、アスペルギルス・ニーヅランス又はアスペルギルス・オリザエのamdSとpyrG遺伝子、及びストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子である。フザリウム細胞での使用に好適なものは、bar、amdS、pyrG、又はhygB遺伝子である。
【0088】
本発明のベクターは好ましくは、宿主細胞のゲノムへのベクターの安定な組み込み、又はゲノムに非依存性に細胞中のベクターの自律複製を可能にする要素を含有する。
【0089】
宿主細胞ゲノムへの組み込みのために、ベクターは、相同的組換え又は非相同的組換えによりゲノムへ組み込むための、ポリペプチド又はベクターの他の要素をコードするポリヌクレオチド配列に依存する。あるいはベクターは、染色体中の正確な位置で宿主細胞のゲノムへの相同的組換えによる組み込みを指令するための追加のヌクレオチド配列を含有してもよい。正確な位置での組み込みの確率を上昇させるために、組み込み要素は好ましくは充分な数の核酸、例えば100〜10,000塩基対、好ましくは400〜10,000塩基対、最も好ましくは800〜10,000塩基対を含有し、これは相同的組換えの確率を上昇させるための、対応する標的配列との高度の同一性を有する。組み込み要素は、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同的な任意の配列である。さらに組み込み要素は、非コード性又はコード性ヌクレオチド配列でもよい。一方ベクターは、非相同的組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。
【0090】
自律複製のためにベクターはさらに、宿主細胞中でベクターが自立的に複製することを可能にする複製開始点を含んでよい。酵母細胞中で有用なプラスミド複製開始点の例は、2ミクロン複製開始点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3との組合せ、及びARS4とCEN6との組合せである。糸状菌細胞中で有用なプラスミド複製開始点の例は、AMA1とANS1である(Gems et al.,1991,Gene 98:61−67;Cullen et al.,1987,Nucleic Acids Research 15:9163−9175;WO00/24883)。AMA1遺伝子の単離と遺伝子を含むプラスミドもしくはベクターの構築は、WO00/24883号に記載の方法に従って行われる。複製開始点は、宿主細胞中での機能を温度感受性にする変異を有するものでもよい(例えば、Ehrlich,1978,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1433)。
【0091】
遺伝子産物の産生を上昇させるために、ポリペプチドをコードする核酸配列の2つ以上のコピーを宿主細胞中に挿入してもよい。核酸配列のコピー数の増加は、配列の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞ゲノム中に組み込むことにより、又は核酸配列とともに増幅可能な選択マーカー遺伝子を含めることにより得られる(ここで、検出可能マーカー遺伝子の増幅されたコピー、従って核酸配列の追加のコピーを含有する細胞は、適切な選択物質の存在下で細胞を培養することにより選択することができる)。
【0092】
上記要素を連結して本発明の組換え発現ベクターを構築するのに使用される方法は、当業者に公知である(例えば、Sambrook et al.,1989,前出)。
【0093】
真菌宿主細胞
本発明はまた、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合した目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす)と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む組換え真菌宿主細胞に関する。本明細書において発現ベクター又は核酸構築体は、ベクター又は構築体が、上記したように染色体組み込み物質として又は自己複製性染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞中に導入される。用語「宿主細胞」は、複製中に起きる変異のために親細胞と同一ではない、親細胞の任意の子孫を包含する。宿主細胞の選択はほとんど、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとその供給源、ならびに銅依存性トランス活性化転写因子をコードするポリヌクレオチドとに依存する。
【0094】
宿主細胞は本発明の方法で有用な任意の真菌細胞である。本明細書において「真菌」は、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)(Hawksworth et al.,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,第8版,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UK)、ならびに卵菌門(Oomycota)(Hawksworth et al,1995,前出、171頁)、及びすべての不完全菌類(Hawksworth et al,1995,前出)を含む。
【0095】
好適な態様において真菌宿主細胞は酵母細胞である。本明細書において「酵母」は、有子嚢胞子酵母(エンドミセス目(Endomycetales))、担子胞子酵母、及び不完全菌類(Fungi imperfecti)に属する酵母を含む。酵母の分類は将来変わる可能性があるため、本発明の目的において酵母は、Biology and Activities of Yesst(Skinner,F.A.,Passmore,S.M.and Davenport,R.R.,eds.,Soc.App.Bacteriol.Symposium Series No.9,1980)に記載されたように定義される。
【0096】
より好適な態様において酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、又はヤローウィア(Yarrowia)細胞である。
【0097】
最も好適な態様において酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ジアスタチクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)細胞である。別の最も好適な態様において酵母宿主細胞は、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)細胞である。別の最も好適な態様において酵母宿主細胞はヤローウィア・リポリティカ細胞である。
【0098】
さらに最も好適な態様において酵母宿主細胞はサッカロミセス・カールスベルゲンシス・セレビシエ(Saccharomyces carlsbergensis cerevisiae)JG169(MAT−α、ura3−52、leu2−3、pep4−1137、his3Δ2、prb1::leu2、Δpre1::his3)である(米国特許第5,770,406号)。
【0099】
別の好適な態様において真菌宿主細胞は糸状菌細胞である。「糸状菌」は、真菌類(Eumycota)亜門と卵菌類(Oomycota)亜門の糸状型の菌である(Hawksworth et al,1995,前出、により定義されたもの)。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖からなる菌糸壁が特徴である。栄養増殖は菌糸の伸長により、炭素異化は偏性好気性である。これに対してサッカロミセス・セレビシエのような酵母の栄養増殖は、単細胞葉状体の出芽により、炭素異化は発酵性である。
【0100】
より好適な態様において糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス、オーレオバシディウム(Aureobasidium)、ベルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クロソスポリウム(Chrysosporium)、コプリヌス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシディウム(Filibasidium)、ファサリウム(Fusarium)、フミコーラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ムロール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネオカリスマスティックス(Neocalismastix)、ノイロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロケーテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレロツス(Pleurotus)、シゾフィルム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、テルモアスクス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トラメテス(Trametes)、又はトリコデルマ(Trichoderma)細胞である。
【0101】
最も好適な態様において糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・フミガツス、アスペルギルス・フォエチヅス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニーヅランス、アスペルギルス・ニガー、又はアスペルギルス・オリザエ細胞である。別の最も好適な態様において糸状菌宿主細胞は、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルークウェレンセ(Fusarlum crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンディ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム、フザリウム・レチクラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロセウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテシオイデス(Fusarium trichothecioides)、又はフザリウム・ベネナツム細胞である。別の最も好適な態様において糸状菌宿主細胞は、ベルカンデラ・アヅスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブローサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブフファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・ケラチノフィルム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ラックノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・トロピクム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdariuim)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンスラディクム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・ゾナーツム(Chrysosporium zonatum)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオルス・ヒルスツス(Coriolus hirsutus)、フミコーラ・インソレンス、フミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophihora thermophila)、ノイロスポラ・クラッサ、ペニシリウム・プルプロゲヌム(Penicillium purpurogenum)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラディアータ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギイ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビローサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコラー(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0102】
真菌細胞は、それ自体公知の方法で、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及び細胞壁の再生を含む方法により形質転換される。アスペルギルス宿主細胞の形質転換の適当な方法は、EP238023号及びYelton et al.,1984,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81:1470−1474に記載されている。トリコデルマ・リーセイ宿主細胞の形質転換の適当な方法は、Penttila et al.,1987,Gene 61:155−164、及びGruber et al.,1990,Curr Genet.18(1):71−6に記載されている。フザリウム(Fusarium)種を形質転換するための適当な方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147−156、及びWO96/00787号に記載されている。酵母は、Becker and Guarente,In Abelson,J.N. and Simon,M.I.,editors,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Methods in Enzymology,Volume 194,pp.182−187,Academic Press,Inc.,New York;Ito et al.,1983,Journal of Bacteriology 153: 163; and Hinnen et al.,1978,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1920に記載されている方法を使用して形質転換される。
【0103】
本発明はさらに、以下の例により記載されるが、これは決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0104】
実施例
緩衝液及び基質として使用した化学物質は、少なくとも試薬等級の市販品である。
【0105】
DNA配列決定
DNA配列決定は、Applied Biosystemsモデル3130X Genetic Analyzer(Applied Biosystems、Foster city,CA,USA)を使用して色素ターミネーター化学(Giesecke et al.,1992,Journal of Virol.Methods 38:47−60)を使用して行った。配列は、配列特異的プライマーを用いてphred/phrap/consed(University of Washington,Seatle,WA,USA)を使用して組み立てた。
【0106】
菌株
サッカロミセス・セレビシエJG169(MAT−α、ura3−52、leu2−3、pep4−1137、his3Δ2、prb1::leu2、Δpre1::his3)(米国特許第5,770,406号)を、本明細書の実施例中の宿主株として使用した。
【0107】
培養培地
YPD培地は、1リットル当たり10gの酵母エキス、20gのバクトペプトン、及び2%のグルコースからなった。
【0108】
CUPマイナスura培地(pH7.0)(オリジナル培地)は、1リットル当たり1mlの100mM CuSO4・5H2O、アミノ酸と硫酸アンモニウムの無い1.7gの酵母窒素塩基(YNB)(BIO101、Carlsbad、CA、USA)、40mgのアデニンを有する0.8gのCSM−ura(BIO101、Carlsbad、CA、USA)、5gのカサミノ酸(Becton Dickinson and Company,Sparks,MD,USA)、100mlの50%グルコース、50mlの0.5M K2HPO4、及び1mlの100mg/mlアンピシリンからなった。
【0109】
酵母uraマイナス最適化培地(最適培地)は、1リットル当たり1mlの100mM CuSO4・5H2O、硫酸アンモニウムの無い6.7gの酵母窒素塩基(YNB)、40mgのアデニンを有する0.8gのCSM−ura、5.9gのコハク酸(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO.USA)、20gのガラクトース、10gのグルコース、及び1mlの100mg/mlアンピシリンからなった。
【0110】
酵母uraマイナス選択培地は、1リットル当たり、硫酸アンモニウムの無い6.7gの酵母窒素塩基(YNB)、5gのカサミノ酸、100mlの0.5Mコハク酸(pH5)、40mlの50%グルコース、及び2mlの10mg/mlクロラムフェニコールからなった。
【0111】
酵母uraマイナス選択プレートは、1リットル当たり20gのノーブル寒天を補足した酵母uraマイナス選択培地からなった。
【0112】
SCuraマイナス培地は、1リットル当たり7.5gのアミノ酸の無い酵母窒素塩基(Fluka,Buchs,Switzerland)、11.3gのコハク酸、6.8gの水酸化ナトリウム、5.6gのカサミノ酸、及び0.1gのL−トリプトファン、100mlの50%フルクトース無菌溶液、400μlの250mg/mlアンピシリン無菌溶液(いずれもオートクレーブ後に加えた)からなった。
【0113】
SCuraマイナスプレートは、SCuraマイナス培地(ただし100mlの無菌20%フルクトースを使用した)と20gの寒天(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO.USA)からなった。
【0114】
SDMUA培地は、1リットル当たり1.7gのアミノ酸の無い酵母窒素塩基、5.0gのカサミノ酸、40mgのADEを有する0.8gのCSM−ura(MP Biomedicals,Irvine,CA,USA)、10mlの10mM CuSO4・5H2O、及び10mlの1M K2HPO4、100mlの50%フルクトース無菌溶液、400μlの250mg/mlアンピシリン無菌溶液(いずれもオートクレーブ後に加えた)からなった。
【0115】
LB培地は、1リットル当たり10gのトリプトン、5gの酵母エキス、及び5gの塩化ナトリウムからなった。
【0116】
LBプレートは、LB培地と1リットル当たり15gのバクト寒天からなった。
【0117】
SOC培地は、2%トリプトン、0.5%酵母エキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、及び10mM MgSO4からなり、オートクレーブにより滅菌し、次にろ過滅菌したグルコースを20mMになるように加えた。
【0118】
2×YTプレートは、1リットル当たり16gのトリプトン、10gの酵母エキス、5gのNaCl、及び15gのバクトアガロースからなった。
【0119】
実施例1:銅誘導性プロモーター(CUP1プロモーター)のPCR増幅
PCRプライマー997247と997248(下記)を設計して、プラスミドpCu426(Labbe and Thiele,1999,Methods in Enzymology 306:145−153)からサッカロミセス・セレビシエ銅誘導性プロモーター(CUP1プロモーター)を増幅した。サッカロミセス・セレビシエ発現プラスミドpMB1537(実施例2参照)へのクローニングのためにプライマー設計に制限酵素部位AgeIとEcoRIを取り込んだ。
【0120】
プライマー997247:
5’−CACCGGTGCATGCCTGCAGGAGCTCCTAGTTAGAAA−3’(配列番号25) (下線部)AgeI
プライマー997248:
5’−AACTATTCTTGAATGGAATTCTAGTCGATGACTTCT−S’(配列番号26) (下線部)EcoRI
【0121】
CUPプロモーター断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR System(Roche,Indianapolis,IN,USA)を使用して増幅した。PCR増幅反応混合物は、約50ngのpCu426プラスミドDNA、1μlのプライマー997247(50pmol/μl)、1μlのプライマー997248(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN, USA)を含有した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)5333(Eppendorf,Westbury,NY,USA)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0122】
246bpのPCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動でTAE緩衝液(1リットル当たり、4.84gのトリス塩基、1.14mlの氷酢酸、及び2mlの0.5M EDTA、pH8.0)を使用して精製し、QIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してさらに精製した。246bpのPCR産物を製造業者の説明書に従ってpCR2.1−TOPO(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA, USA)と連結した。インキュベーション後、2μlの混合物を使用してONE SHOT(登録商標)TOP10化学的コンピタントな大腸菌(E.coli)細胞を形質転換した(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA,USA)。2μl容量の結合混合物を大腸菌(E.coli)細胞に加え、氷上で5分間インキュベートした。次に細胞に42℃で30分間熱ショックを与え、氷上に2分間置いた。250μlのSOC培地を細胞に加え、混合物を37℃で1時間250rpmでインキュベートした。インキュベーション後、コロニーを100μg/mlのアンピシリンを補足した2×YTプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドを選択した。プレート上に増殖した8つのコロニーを無菌つまようじで取り上げ、100μg/mlのアンピシリンを補足した3mlのLB培地を含有する15mlのFALCON(登録商標)チューブで37℃、250rpmで一晩増殖させた。BioRobot9600(QIAGEN Inc.,Valencia,CA,USA)を使用してプラスミドを単離した。
【0123】
得られたプラスミドミニプレップの4μl容量をEcoRIで消化した。消化反応物を、PCR反応についてすでに記載したようにアガロースゲルクロマトグラフィーとUV分析により分析した。挿入体を含有する単離されたプラスミドを、1μlのプラスミド鋳型、1.6ngのM13プライマー(前進プライマー又は逆進プライマー)(MWG Biotech,High Point,NC,USA)を使用して水で6μlにして配列決定した。正しい配列を有する生じたプラスミドをpBM128aと命名した(図1)。
【0124】
実施例2:発現ベクターpMB1537の構築
発現ベクターpMB1537は、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ(配列番号27はDNA配列であり、配列番号28は推定アミノ酸配列である;受け入れ番号59952)をコードする野生型遺伝子の発現を駆動する酵母TPIプロモーター、CYC1ターミネーター、及び選択マーカーとしてURA3遺伝子を含有する。
【0125】
酵母発現プラスミドpSTED226(WO05/045018号)を、EXPAND(登録商標)Long Template PCR System(Roche,Germany)を使用して、鋳型としてのpSTED226と以下の2つのプライマーを用いてPCR増幅した。
【0126】
プライマー319137:
5’−TCTAGAGGGCCGCATCATGTAATTAG−3’(配列番号29)
プライマー19138:
5’−GACGCCATGGTGAAGCTTTCTTTTAATCGT−3’(配列番号30)
【0127】
PCR増幅反応混合物は、約50ngのpSTED226プラスミドDNA、1μlのプライマー319137(50pmol/μl)、1μlのプライマー19138(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cycler(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。PCR操作の終了後、5826bpのPCR断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを製造業者(Amersham Biosciences,United Kingdom)の説明書に従って精製し溶出した。
【0128】
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ遺伝子を含有する遺伝子断片を、EXPAND(登録商標)Long Template PCR System(Roche,Germany)を使用して、鋳型としてのpENI1298(WO00/24883号)と以下の2つのプライマーを用いてPCR増幅した。
【0129】
プライマー349699:
5’−CAAGAAGATTACAAACTATCAATTTCATACACAATATAAACGATTAAAAGAAAGCTCACCATGAGGAGCTCCCTTGTGCTGTTCTTTGTCTCTG−3’(配列番号31)
プライマー353031:
5’−GAGGGCGTGAATGTAAGCGTGACATAACTAATTACATGATGCGGCCCTCTAGATTATCAAAGACATGTCCCAATTAACCCGAAGTAC−3’(配列番号32)
【0130】
PCR増幅反応混合物は、約50ngのpENI1298プラスミドDNA、1μlのプライマー349699(50pmol/μl)、1μlのプライマー353031(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cyclerを使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。PCR操作の終了後、927bpのPCR断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを製造業者の説明書に従って精製し溶出した。
【0131】
得られた2つの断片(5826bpと927bp)を、電気穿孔法によりGENE PULSER(登録商標)とPulse Controller(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を1.5キロボルトで2mmのギャップキュベットを使用して製造業者の説明書に従って、サッカロミセス・セレビシエJG169中に形質転換した。形質転換反応物は、リガーゼ遺伝子を含有する100ngのPCR産物と混合した100ngのPCR増幅ベクターDNAを含有した。形質転換反応物を酵母uraマイナス選択プレートに蒔き、30℃で5日間インキュベートした。
【0132】
上記操作からの1つ酵母クローンを再度SCuraマイナスプレートに画線し、1つの酵母コロニーを50mlの振盪フラスコ中の10mlのSCuraマイナス培地中に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。酵母プラスミド調製のために、培養ブロス2mlをQIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kit(QIAGEN Inc.,Germany)を使用するプラスミド調製で使用した。次にプラスミドを配列決定し、予測されたDNA配列を証明した。プラスミドをpMB1537と命名した(図2)。
【0133】
実施例3:発現ベクターpBM126aの構築
プラスミドpBM128aをAgeIとEcoRIで消化し、プラスミドpMB1537をEcoRIとNdeIで消化し、断片(265bpと661bp)をそれぞれ1.8%及び0.7%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。ベクター断片を作成するために、pMB1537をAgeIとNdeIで消化した。生じた5148bp断片を0.7%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。
【0134】
次にすべての3つの断片をRapid DNA Ligation Kit(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN,USA)を使用して連結した。2μlの反応物を使用して、大腸菌(E.coli)XL10−GOLD(登録商標)ウルトラコンピタント細胞(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を製造業者の説明書に従って形質転換した。大腸菌(E.coli)形質転換体からBioRobot9600を使用してプラスミドDNAを調製した。挿入体を含有する単離されたプラスミドを、1μlのプラスミド鋳型、1.6ngのM13プライマー(前進プライマー又は逆進プライマー)を使用して、水で6μlにして配列決定した。正しい配列を有する生じたプラスミドをpBM126aと命名した(図3)。
【0135】
実施例4:発現ベクターpMB1539の構築
TPIプロモーターの制御下でサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体(配列番号33はDNA配列であり、配列番号34は推定アミノ酸配列である)をコードする遺伝子を含有するように、プラスミドpMB1539を構築した。
【0136】
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体を含有する遺伝子断片をPCRにより、EXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して、鋳型としてサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子(配列番号27)を含有するpENI1298(WO00/24883号)と、プライマー349699と353031(下記)とを用いてPCRにより調製した。
【0137】
プライマー349699:
5’−CAAGAAGATTACAAACTATCAATTTCATACACAATATAAACGATTAAAAGAAAGCTTCACCATGAGGAGCTCCCTTGTGCTGTTCTTTGTCTCTG−3’(配列番号35)
プライマー353031:
5’−GAGGGCGTGAATGTAAGCGTGACATAACTAATTACATGATGCGGCCCTCTAGATTATCAAAGACATGTCCCAATTAACCCGAAGTAC−3’(配列番号36)
【0138】
PCR増幅反応混合物は、約50ngのpENI1298プラスミドDNA、1μlのプライマー349699(50pmol/μl)、1μlのプライマー353031(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cyclerを使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0139】
PCR増幅後、993bpのDNA断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを使用して精製した。生じた断片(100ng)を実施例2に記載のpSTED226ベクター断片(100ng)と混合し、電気穿孔法によりGENE PULSER(登録商標)とPulse Controllerを1.5キロボルトで2mmのギャップキュベットを使用して製造業者の説明書に従って、電気コンピタントなサッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に形質転換した。次に形質転換細胞を酵母uraマイナス選択プレートに蒔き、30℃で5日間インキュベートした。
【0140】
上記操作からの1つ酵母クローンを再度SCuraマイナスプレートに画線し、1つの酵母コロニーを50mlの振盪フラスコ中の10mlのSCuraマイナス培地中に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。この培養物から培養ブロス2mlをQIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kitを使用するプラスミド調製で使用した。次にプラスミドを配列決定し、予測されたDNA配列を証明した。プラスミドをpMB1539と命名した(図4)。
【0141】
実施例5:発現ベクターpJLin168の構築
pBM126a(CUP1プロモーターの制御下でサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子を含有する)中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子を、pMB1539からのサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体遺伝子と交換することにより、CUP1プロモーターを使用してサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体発現ベクターを構築した。まずpBM126aとpMB1539の両方をHindIIIとMluIで消化し、pBM126aからの5kb断片とpMB1539からの1.1kb断片とをQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを使用してゲル精製した。次に両方の断片をRapid DNA Ligation Kitを使用して、ベクター量を50ngに設定してベクター:挿入体のモル比を1:2、1:3、及び1:4で連結した。生じたプラスミド(pJLin168と呼ぶ、図5)は、CUP1プロモーターの制御下でサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体遺伝子を含有した。
【0142】
実施例6:発現ベクターpBM142cとpBM143bの構築
QUIKCHANGE(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を使用して、pJLin168中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼのプロペプチド配列から、アミノ酸SPIRRをコードする最後の5つのコドンを除去するために、以下のプライマーを設計した:
【0143】
プライマー998570:
5’−CTCTGCGTGGACGGCCTTGGCCGAGGTCTCGCAGGATCTGTTTAAC−3’(配列番号37)
プライマー998571:
5’−TTAAACAGATCCTGCGAGACCTCGGCCAAGGCCGTCCACGCAGAG−3’(配列番号38)
【0144】
73ngのpJLin168、1×QUIKCHANGE(登録商標)反応緩衝液(Stratagene、La Jolla、CA,USA)、4μlのQUIKSOLUTION(登録商標)(Stratagene、La Jolla、CA,USA)、1μlのXL dNTPミックス(Stratagene、La Jolla、CA,USA)、及び1μlの2.5U/μl PfuUltra(登録商標)DNAポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を最終容量50μl中に含有するPCR反応物で、100ピコモルの各プライマーを使用した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)を、95℃で1分を1サイクル;95℃で50秒、60℃で50秒、及び68℃で6分をそれぞれ18サイクル;そして10℃に維持にプログラムした。1μlのDpnIを増幅反応物に直接加え、37℃で1時間インキュベートした。2μl容量のDpnI消化反応物を使用して、大腸菌(E.coli)XL10−GOLD(登録商標)ウルトラコンピタント細胞(Stratagene、La Jolla、CA,USA)を製造業者の説明書に従って形質転換した。SPIRRコード領域に対応する15bpの無いクローンの1つをDNA配列決定により確認し、pBM142cと命名した(図6)。
【0145】
pBM142c中にさらなる変異が生成されるのを避けるために、pBM142cからのサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ遺伝子の5’領域をpJLin168中にクローン化して戻した。プラスミドpBM142cをHindIIIとNdeIで消化し、0.6kb断片を1.5%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。プラスミドpJLin168をHindIIIとNdeIで消化し、生じた5.5kb断片を0.7%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。次に2つの断片をRapid DNA Ligation Kitを使用して結合させた。生じた発現プラスミド(pBM143bと呼ぶ、図7)は、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ遺伝子の発現を駆動するCUP1プロモーターを含有した。すなわち最後の5つのアミノ酸(SPIRR)を除去することにより、22アミノ酸のシグナル/プロペプチド配列を17アミノ酸に変化させた。
【0146】
実施例7:発現ベクターpMB1682の構築
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子を含有するプラスミドpMB1537を使用して、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼシグナルペプチドのランダム突然変異誘発ライブラリーを構築した。シグナルペプチドコード配列とフランキングDNA領域のランダム突然変異誘発PCR断片を、PCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemと以下のプライマー(DNA−Technology,Aarthus,Denmark)を使用して増幅した。
【0147】
プライマー309787:
5’−CTAGGAACCCATCAGGTTGGTGGAAG−3’(配列番号39)
プライマー373172:
5’−CTGTGCAAAGAGATTGAACTGGTTAAACAGATCCTGCGANNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNCATGGTGAAGCTTTCTTTTAA−3’(配列番号40)
【0148】
ここで、配列番号40の41、50、51、60、64、66、68、70、71、72、74、75、77、80、82、83、及び87位のNは、99%がAで1%がG、C、又はTである;
配列番号40の40、46、47、52、53、56、62、65、67、73、78、84、85、86、及び88位のNは、99%がGで、1%がA、C、又はTである;
配列番号40の42、43、45、48、49、54、55、58、59、61、63、69、76、79、81、89、91、及び92位のNは、99%がCで、1%がA、G、又はTである;及び
配列番号40の44、57、90、及び93位のNは、99%がTで、1%がA、C、又はGである。
【0149】
多様性を導入するプライマーを以下の規則で設計した:ランダム化位置の野生型塩基は絶えず99%で存在し、他の3つの塩基は1%で存在し、3つすべては等しく出現する。
【0150】
シグナルペプチドコード配列の突然変異誘発断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して増幅した。PCR増幅反応混合物は、約50ngのpMB1537、1μlのプライマー309787(50pmol/μl)、1μlのプライマー373172(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液(Roche,Indianapolis,IN,USA)、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックス(Roche,Indianapolis,IN,USA)を含有した。PTC Peltier Thermal Cyclerを使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で15秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0151】
サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)野生型リパーゼ遺伝子の遺伝子断片をPCRにより、PCR反応物中の鋳型としてpMB1537を使用して、EXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して調製した。PCRで使用したプライマーは上記のプライマー309787と373172である。
【0152】
PCR増幅後、600bpのPCR断片を、GFX(登録商標)PCR DNAとGel Band Purification Kitを製造業者のプロトコールに従って使用して精製し、50μlの10mMトリス−塩酸(pH8.0)中に溶出した。
【0153】
プラスミドpMB1537を、シグナルペプチドコード配列内のDNA位置でSacIで消化して線状化した。ドナーDNAとしてフランキングDNA領域(受容体プラスミドの受容体DNAに100%相同的)を有するシグナルペプチドコード配列のPCR断片を使用して、サッカロミセス・セレビシエJG169の形質転換において、線状化ベクターを受容体DNAとして使用した。
【0154】
具体的には、約3μgのSacI消化pMB1537を約1μgの600bp PCR断片とともに、GENE PULSER(登録商標)とPulse Controllerを1.5キロボルトで2mmのギャップキュベットを使用して、100μlの電気コンピタントなサッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に電気穿孔した。電気穿孔後、形質転換細胞に1mlの1Mソルビトールを加え、30℃で1時間インキュベートし、次に100μg/mlアンピシリンを補足したSCuraマイナスプレートに1.1mlを蒔いた。
【0155】
100μg/mlアンピシリンを補足したSCuraマイナスプレートから全部で8400コロニーを取り上げ、96ウェルのポリスチレンマイクロウェルプレートに移し、取り上げたコロニーを横の列B〜Hと縦の列1〜12に入れ、列Aは空のままとし、これにサッカロミセス・セレビシエJG169中の野生型プラスミド構築体を野生型対照として接種した。すべてのウェルは、1リットル当たり40mgのアデニンが添加されたSD培地URAを含有した(SDMUAと呼ぶ)(製造業者Qbiogene,Inc.,BiO 101(登録商標)Systemの推奨に従う、AH Diagnostics,Aarhus,Denmarkにより販売)。プレートを30℃、250rpmで5日間インキュベートした。5日後、プレートを4℃に維持し、次に後述の吉草酸p−ニトロフェニルアッセイを使用してリパーゼ活性を測定した。
【0156】
以下のアッセイで、培養上清のリパーゼ活性を吉草酸p−ニトロフェニルを基質として使用して測定した。培養上清を50mMトリス(pH7)、10mM CaCl2、0.4%トリトンX−100緩衝液(希釈緩衝液)で希釈した。リポラーゼ(LIPOLASE)(登録商標)標準物質(Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を、試料緩衝液で1.0LU/ml濃度から出発して0.125LU/ml濃度で終わる2倍工程で希釈した。ポリスチレンマイクロウェルプレート中で、10μlの上清を90μlの希釈緩衝液と混合した。100μlの吉草酸p−ニトロフェニル基質溶液(117μlの吉草酸p−ニトロフェニルを10mlのイソプロパノールに溶解した)を各ウェルに加え、短時間混合し、次に405nmの吸光度を12秒毎に3分間測定した。アッセイデータを評価して、サッカロミセス・セレビシエJG169(A列のウェル中)中のpMB1539より高い活性を有するすべての試料を同定した。
【0157】
対照より高い活性を有するすべてのクローンを陽性ヒットとして集め、これを同じ構成で再分析し、まだ対照より高い活性を有するクローンを、マイクロウェルプレート中の新鮮なSDMUA培地への接種物質として使用した。A列を再度対照株用に使用した。プレートを上記したようにインキュベートし、上記したように分析した。
【0158】
対照より高い活性を有するすべてのクローンをウェルから取り出し、SC−寒天プレートに再度画線した。マイクロウェルプレート中の200μlのSDMUA培地と、10mlのSDMUA培地を含有する50mlチューブとでの再増殖のために、すべてのクローンの単一のコロニーを集め、30℃で5日間インキュベートし、次に上記の吉草酸p−ニトロフェニルアッセイを使用して、収率を対照株の収率と比較した。
【0159】
各クローンを3つの隣接マイクロウェルと3つの個々の50mlチューブ中で増殖させた。活性レベルの比較のために、3つの増殖実験の平均値を使用した。
【0160】
最後にマイクロウェルプレートと50mlチューブ中の両方で最も高いリパーゼ活性を有するクローンを、10mlのSDMUA培地を含有する振盪フラスコ(2つの邪魔板を有する250mlの円錐邪魔板付き振盪フラスコ)に接種し、250rpmで30℃で5日間インキュベートした。上記したように吉草酸p−ニトロフェニルを使用して、上清をリパーゼ活性について測定した。最も高いリパーゼ活性を有するクローンのDNAを配列決定した。
【0161】
最も高い活性を示すクローンをMB1665と命名し、これはリパーゼのシグナルペプチド中でR2K置換を有した(シグナルペプチドの2番目のコドンがAGGからAAGに変化した)。
【0162】
実施例4に記載したものと同じ原理を使用して、このシグナルペプチドをコードするDNAを、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体をコードするpMB1539構築体に移した。この場合、実施例4と同じ方法を使用してより小さいPCR断片を作成した。しかし、実施例4に従って、しかし鋳型としてMB1539からプラスミドDNAを使用して、より大きい断片も作成した。サッカロミセス・セレビシエJG169のGAP修復と形質転換を上記したように行った。このクローニングにより、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体のより高い発現を有するクローンを得た。このクローンをサッカロミセス・セレビシエMB1681と命名した。
【0163】
SC−寒天プレートからのサッカロミセス・セレビシエMB1681細胞物質(30℃で5日間増殖)を使用して、50ml振盪フラスコ中の10mlのSCuraマイナス培地に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。この培養物から、酵母プラスミド調製のために、培養ブロス2mlをQIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kitを使用するプラスミド調製で使用した。精製したプラスミドを製造業者の説明書に従って大腸菌(E.coli)Top10F(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)中に形質転換した。形質転換大腸菌(E.coli)細胞を、100μg/mlアンピシリンを補足したLBプレートに蒔いた。単一のコロニーを単離し、再画線し、LB培地中に接種し、30℃で一晩インキュベートした。一晩培養物の1mlを、QIAPREP(登録商標)Spin Miniprep Kitを使用するプラスミド調製で使用した。最後に単離されたプラスミドをDNA配列決定の鋳型として使用し、変異体シグナル配列の配列(配列番号41)とサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体コード領域(配列番号33、推定アミノ酸配列は配列番号34)を証明した。生じたプラスミドをpMB1682と命名した(図8)。プラスミドpMB1682はTPIプロモーターとサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体コード領域(R2K変化を有するSPIRRが無い)を含んだ。
【0164】
実施例8:発現ベクターpJLin195の構築
サッカロミセス・セレビシエCUP1プロモーターを使用して、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ変異体(R2K変化を含有するシグナル配列を有し、SPIRRが無い)発現ベクターを含有するプラスミドpJLin195を構築した。
【0165】
pMB1682のHindIII−NdeI断片を、HindIIIとNdeIで消化したpBM143b中にクローン化し、第2のアミノ酸Arg(AGG)をLys(AAG)のコード配列で置換した。pMB1682とpBM143bの両方をHindIIIとNdeIの両方で消化し、pMB1682からの1kb断片とpBM143bからの5kb断片をQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて抽出した。断片を製造業者の説明書に従ってRapid DNA Ligation Kitを使用して、ベクター量を50ngに設定してベクター:挿入体のモル比を1:2、1:1、及び3:1で連結した。生じたプラスミド(DNA配列決定により確認した)をpJLin195と命名した(図9)。
【0166】
実施例9:発現ベクターpBM165aの構築
以下のプライマーを使用して、4つのサッカロミセス・セレビシエ上流活性化配列(UAS)を含む発現ベクターを構築するためのPCR断片を作成した:
【0167】
プライマー999003:
5’−CCGGTGCATGCCTGCAGGAGCTCCT−3’(配列番号42) (下線部)SphI
プライマー999005:
5’−ACCGGTCTTTTTTGCTGGAACGGTTCA−3’(配列番号43) (下線部)AgeI
【0168】
断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して増幅した。PCR混合物は、0.5μlの約25ngのpBM143b DNA、1μlのプライマー999003(50pmol/μl)、1μlのプライマー999005(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックスを含有した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0169】
生じた147bpのPCR断片を1.8%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製し、147bpのPCR産物を製造業者の説明書に従ってpCR2.1−TOPO(登録商標)と連結した。1μl容量の新鮮なPCR産物、3μlの2回蒸留水、及び1μlのTOPO(登録商標)クローニングベクターをピペットで混合し、室温で5分間インキュベートした。
【0170】
インキュベーション後、2μlの混合物を使用してONESHOT(登録商標)TOP10化学的コンピタント大腸菌(E.coli)細胞を形質転換した。2μl容量の結合混合物を大腸菌(E.coli)細胞に加え、氷上で5分間インキュベートした。次に細胞に42℃で30分間熱ショックを与え、氷上に2分間置いた。250μlのSOC培地を細胞に加え、混合物を37℃で1時間250rpmでインキュベートした。インキュベーション後、コロニーを100μg/mlのアンピシリンを補足した2×YTプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドを選択した。プレート上に増殖した8つのコロニーを無菌つまようじで取り上げ、100μg/mlのアンピシリンを補足した3mlのLB培地を含有する15mlのFALCON(登録商標)チューブで37℃、250rpmで一晩増殖させた。BioRobot9600を使用してプラスミドを単離した。
【0171】
得られたプラスミドミニプレップの4μl容量をEcoRIで消化した。消化反応物を、PCR反応についてすでに記載したようにアガロースゲルクロマトグラフィーにより分析した。挿入体を含有する単離されたプラスミドを、1μlのプラスミド鋳型、1.6ngのM13プライマー(前進プライマー又は逆進プライマー)、及び水で6μlを使用して配列決定した。正しい配列を有する生じたプラスミドをpBM163aと命名した(図10)。
【0172】
4つのUAS配列を含有する最終的発現構築体を作成するために、pBM163aをSphIとAgeIで消化し、pJLin168をAgeIとHindIIIで消化した。132bpのSphI−AgeIと340bpのAgeI−HIndIII断片をサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現ベクターpBM143b(これはあらかじめSphIとHindIIIで消化させた)中にクローン化した。生じたプラスミドをpBM165aと命名した(図11)。
【0173】
実施例10:ACE1過剰産生発現ベクターの構築
サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC20458)のゲノムDNAからACE1遺伝子を増幅するために、以下のPCRプライマーを設計した。発現プラスミドpBM143bとpJLin195へのクローニングのために、BspHI制限部位を取り込んだ。
【0174】
プライマー999262:
5’−TCATGATACGATCGTGAAAGAATAT−3’(配列番号44) (下線部)BspHI
プライマー999263:
5’−TCATGAGGATGATGACAAAGAAGAC−3’(配列番号45) (下線部)BspHI
【0175】
ACE1遺伝子断片をPCRによりEXPAND(登録商標)High Fidelity PCR Systemを使用して増幅した。ゲノムDNAをサッカロミセス・セレビシエS288C株から、YEASTER(登録商標)Genomic DNA kit(ZYMO Research,Orange,CA.USA)を使用して製造業者の説明書に従って単離した。PCR反応物は、0.1μgのサッカロミセス・セレビシエS288C ゲノムDNA、1μlのプライマー999262(50pmol/μl)、1μlのプライマー999263(50pmol/μl)、15mM MgCl2を有する5μlの10×PCR緩衝液、1μlのdNTPミックス(各10mM)、40.25μlの水、及び0.75μl(3.5U/μl)のDNAポリメラーゼミックスを最終容量50μl中に含有した。EPPENDORF(登録商標)MASTERCYCLER(登録商標)を使用して、94℃で2分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で1分45秒をそれぞれ10サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で1分45秒をそれぞれ15サイクルで、さらに各サイクル後に5秒の伸長;72℃で7分を1サイクル;そして10℃で維持、にプログラムして、断片を増幅した。
【0176】
生じた1589bpのPCR断片を1.8%アガロースゲル電気泳動によりTAE緩衝液を使用してQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて精製した。1589bpのPCR産物を製造業者の説明書に従ってpCR2.1−TOPO(登録商標)と連結した。生じたプラスミド(pBM168aと命名、図12)をヌクレオチド配列決定により確認した。
【0177】
BspHIとACE1遺伝子分節(1583bp)で消化したプラスミドpBM168aを、同じ酵素で消化した発現ベクターpBM143b、pJLin195、及びpBM165a中にクローン化した。断片をQIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitにより抽出した。断片を製造業者の説明書に従ってRapid DNA Ligation Kitを使用して、ベクター量を50ngに設定してベクター:挿入体のモル比を1:2、1:1、及び3:1で連結した。生じたプラスミドをpBM169a(図13)、pBM171a(図14)、pBM170a(図15)と命名した。
【0178】
実施例11:pBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM169a、pBM170a、及びpBM171aを用いる酵母形質転換
プラスミドpBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM169a、pBM170a、及びpBM171aをそれぞれ、サッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に、YEASTMAKER(登録商標)Yeast Transformation System(Clontech,Palo Alto,CA,USA)を使用して製造業者の説明書に従って形質転換した。簡単に説明するとサッカロミセス・セレビシエJG169の1つのコロニーを使用して50mlのYPD培地に接種し、オービタルシェーカー(250rpm)で30℃で一晩インキュベートした。
【0179】
細胞が600nmで0.4〜0.5の吸光度に達した時、細胞を700×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを30mlの脱イオン水に再懸濁した。Sorvall RT6000D遠心分離機で700×gで5分間遠心分離後、細胞ペレットを1.5mlの1.1×TE/酢酸リチウム溶液(110mM酢酸リチウム、11mMトリス(pH8)、1.1mM EDTA)に再懸濁した。微量遠心分離機で12,000×gで15秒間遠心分離後、細胞ペレットを600μlの1.1×TE/酢酸リチウム溶液に再懸濁した。約0.5μgのpBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM170a、又はpBM171a、250μlのPEG/酢酸リチウム溶液(40% PEG4000、0.1M酢酸リチウム、10mMトリス−塩酸(pH8)、1mM EDTA)、及び5μlの10mg/ml変性Herring Testes Carrier DNAを、50μlのコンピタントな細胞にを添加後、混合物を550rpmで30℃で30分間振盪し、細胞を反転して10分毎に混合した。各形質転換混合物に総量20μlのDMSOを加え、42℃で15分インキュベートし、混合物を5分毎に反転した。形質転換混合物を微量遠心分離機で12,000×gで15秒間遠心分離し、細胞を1mlのYPD PLUS(登録商標)Liquid Medium(YEASTMAKER(登録商標)Yeast Transformation System,Clontech,Palo Alto,CA,USA)に再懸濁し、550rpmで30℃で90分間振盪した。遠心分離後、細胞を1mlの0.9%NaCl溶液で洗浄し、15%グリセロールの存在下で1mlの酵母uraマイナス選択培地に再懸濁した。50μlの各形質転換反応物を二重測定で酵母uraマイナス選択プレートに蒔き、コロニーが現れるまで30℃でインキュベートした。
【0180】
pBM143b、pJLin195、pBM165a、pBM169a、pBM170a、又はpBM171aを含有するサッカロミセス・セレビシエJG169形質転換体を使用して、96ウェルプレート中の180μlのuraマイナス選択培地に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。次に一晩培養物を180μlの銅誘導性「オリジナル」培地又は「最適」培地で100倍希釈し、30℃で5日間増殖させた。
【0181】
培養上清のリパーゼ活性を酪酸p−ニトロフェニル(pNB)を基質として以下のアッセイで測定した:まず培養上清を0.1M MOPS、4mM CaCl2、0.01%トリトンX−100緩衝液(pH7.5)(試料緩衝液)で1/15希釈し、次に希釈試料を0倍、1/3倍、1/9倍と連続希釈した。LIPOLASE(登録商標)標準物質(Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を、試料緩衝液で1.0LU/ml濃度から出発して0.125LU/ml濃度で終わる2倍工程で希釈した。全部で20μlの各希釈物(標準物質を含む)を96ウェルの平底プレートに入れた。200μlの酪酸p−ニトロフェニル基質溶液(酪酸p−ニトロフェニル:DMSO:0.1M MOPS(pH7.5)の比率は1:99:400)を各ウェルに加え、次に25℃で15分インキュベートした。インキュベーションの終了後、96ウェルプレートについて405nmの吸光度を測定した。作成した標準曲線から外挿して試料濃度を決定した。振盪フラスコ分析のために、代表的形質転換体を2mlのuraマイナス選択培地に接種し、30℃、250rpmで一晩インキュベートした。一晩培養物を125mlガラス振盪フラスコ中の25mlのCUPマイナスura培地で200倍希釈し、30℃で6日間増殖させた。試料を採取し、微量遠心分離機で12,000×gで10秒間遠心分離し、上清を上記したように酪酸p−ニトロフェニルアッセイを使用してリパーゼ活性について試験した。
【0182】
10μlの培養上清をLaemmli試料緩衝液(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)と1:2の比率で混合した。2分間沸騰させた後、試料を15μlのPRECISION PLUS PROTEIN(登録商標)標準物質(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)とともに10〜20%のSDS−PAGEゲル(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)にのせた。ゲルを1×トリス−グリシン−SDSランニングバッファー(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)で200Vで1時間流した。次にゲルを水でそれぞれ5分間の洗浄を3回行い、BIO−SAFE(登録商標)クマシー染色(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)で1時間染色し、次に水で少なくとも30分間脱色した。
【0183】
pBM143b、pJLin195、pBM169a、又はpBM171aを含有するサッカロミセス・セレビシエJG169形質転換体(各プラスミドについて24個)を、96ウェルプレート中の「オリジナル」銅含有培地で5日間増殖させた。培養ブロス試料中のリパーゼ活性を、上記したように酪酸p−ニトロフェニルを基質として使用して測定した。pBM143b、pBM169a、pJLin195、又はpBM171a形質転換体について平均相対的リパーゼ活性は、表1に示すようにそれぞれ100、202、196、及び506であった。
【0184】
【表1】
【0185】
表に示した結果は、高コピープラスミドを有するAce1p転写活性化因子を過剰産生することにより、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現レベルが倍増することを示した。
【0186】
酵母形質転換体中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ活性は、コハク酸を緩衝液として含有し、ガラクトースと配合物を一次炭素源として含有する「最適」培地で増殖させた形質転換体について、改良されていることが証明された。
【0187】
Ace1p過剰産生形質転換体中のサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現レベルが「最適」培地中でさらに増強されるかどうかを試験するために、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ活性を、96ウェルプレート中で「オリジナル」又は「最適」銅含有培地中で増殖させたpBM143b、pJLin195、pBM169a、又はpBM171aを含有するサッカロミセス・セレビシエJG169株形質転換体から測定した。すべての4つの発現プラスミドは上記したように評価した。
【0188】
「オリジナル」培地中のpBM143b、pBM169a、pJLin195、及びpBM171a形質転換体についての平均相対的リパーゼ活性は、それぞれ100、190、170、及び402であった。表IIに示すように、「最適」培地中のpBM143b、pBM169a、pJLin195、及びpBM171a形質転換体についての平均相対的リパーゼ活性は、それぞれ240、318、285、及び266であった。「最適」培地で増殖させた形質転換体から、すべてのプラスミドについてより高い全体的発現が観察された。サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ産生に対するAce1p過剰発現の影響は、プラスミドpBM143bをプラスミドpBM169aと比較すると約30%高かった。しかし「最適」培地中のpJLin195と比較したpBM171aからのACE1遺伝子の過剰発現は、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現のわずかな低下を引き起こした。
【0189】
【表2】
【0190】
pBM143b、pJLin195、pBM169a、又はpBM171aからのサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼの発現を振盪フラスコで評価した。各プラスミドについて2つの代表的形質転換体を、「オリジナル」又は「最適」銅含有培地を使用して二重測定で25mlの振盪フラスコ培養で増殖させた。振盪フラスコ試料を4、5、及び6日目に採取した。5日目の試料の上清を、上記したように酪酸p−ニトロフェニルアッセイを使用してサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ活性について測定した。
【0191】
振盪フラスコでは、ACE1遺伝子の過剰発現作用のためにサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現は、「最適培地」中のpBM143bとpBM169aを比較すると約1.1倍高く、「オリジナル」培地では約1.6倍高かった。さらに表IIIに示すように、「オリジナル」培地中のpJLin195と比較してpBM171aからのACE1遺伝子の過剰発現は約3.5倍の発現上昇を与え、「最適」培地では発現が1.6倍低下した。両方の培地でpBM171形質転換体の相対的発現レベルは同じであったが、pJLin195形質転換体中のリパーゼ発現レベルは「最適」培地で有意に高かった。培養濁度(OD600)を上昇させ、寒天培地に蒔いて総CFU/mlを測定することにより増殖を追跡した。一般に「オリジナル」培地中の細胞は「最適」培地中で増殖させた細胞より少なくとも2倍速く増殖し、これはおそらく炭素源としてのグルコースに対する選択性によると考えられる。微視的には「オリジナル」培地中で増殖させた酵母細胞と比較して、「最適」培地中で増殖させた酵母細胞は、少なくとも3倍のサイズになった大きな液胞を有して膨れているようであった。
【0192】
【表3】
【0193】
上記したように、代表的振盪フラスコからの上清についてSDS−PAGEを行うと、サーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼバンドの強度は、酪酸p−ニトロフェニルアッセイの結果と一致した。
【0194】
プラスミドpBM165aとpBM170aを、上記したようにサッカロミセス・セレビシエJG169細胞中に形質転換させた。形質転換体(各プラスミドについて24個)を選択し、上記したように96ウェルプレート中の「オリジナル」培地中で増殖させた。表IVに示すように結果は、「オリジナル」培地中のpBM165a、pBM170a、及びpBM169aの平均相対的リパーゼ活性が、それぞれ100、277、及び173であることを示した。
【0195】
【表4】
【0196】
Ace1p転写因子について一次結合部位を複製し、複数コピープラスミドからのACE1遺伝子の発現を上昇させることにより、96ウェルプレートでサーモミセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)変異体リパーゼ発現の1.6倍の上昇が観察された。
【0197】
本明細書に開示した具体例は本発明のいくつかの態様を例示する目的であり、本明細書に記載し特許請求した発明は、本明細書に開示した具体例に限定されるものではない。同等の実施態様は本発明の範囲内にあると考えられる。実際、前記説明から当業者には、本明細書で証明し記載したもの以外に本発明の種々の修飾が明らかであろう。そのような修飾態様は添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。矛盾する可能性がある場合は、定義を含む本開示が優先する。
【0198】
受け入れ番号を含む種々の文献が本明細書に引用されたが、その開示内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドを産生する方法であって、
(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド、ここで、前記プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす、及び銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、及び
(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
銅誘導性プロモーター配列が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)メタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)メタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)メタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルス(Agaricus bisporus)メタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)メタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)メタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子から得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子、又はこれらの組合せから得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、配列番号46及び/又は配列番号47であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子、カンジダ・グラブラタAMT1遺伝子、ヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)CUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)、サッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)、及びアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
真菌宿主細胞が、第1のポリヌクレオチドの1つ又はそれを超える(複数個)のコピーを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドが、抗原、酵素、増殖因子、ホルモン、イムノディレーター(immunodilator)、神経伝達物質、受容体、レポータータンパク質、構造タンパク質、及び転写因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドが、アルブミン、コラーゲン、トロポエラスチン、エラスチン、又はゼラチンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリペプチドが、真菌宿主細胞に対して固有であるか又は外来であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1及び第2のポリヌクレオチドが、真菌宿主細胞の染色体又は染色体外要素中に含有されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第3のポリヌクレオチドが、真菌宿主細胞の染色体又は染色体外要素中に含有されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
真菌宿主細胞は糸状菌又は酵母細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得られるポリペプチド。
【請求項14】
銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含み、ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす、核酸構築体。
【請求項15】
銅誘導性プロモーター配列が、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子から得られることを特徴とする、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項16】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子、及びこれらの組合せ、よりなる群から選択される遺伝子から得られることを特徴とする、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項17】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、配列番号46及び/又は配列番号47であることを特徴とする、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の核酸構築体を含む組換え発現ベクター。
【請求項19】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の核酸構築体と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む組換え真菌宿主細胞。
【請求項20】
銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子、カンジダ・グラブラタAMT1遺伝子、ヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)、シゾサッカロミセス・ポンベCUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)、サッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)、及びアスペルギルス・フミガツス銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の組換え真菌宿主細胞。
【請求項1】
ポリペプチドを産生する方法であって、
(a)ポリペプチドの産生に寄与する培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、真菌宿主細胞は、銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチド、ここで、前記プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす、及び銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含み、及び
(b)培養培地からポリペプチドを単離することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
銅誘導性プロモーター配列が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)メタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)メタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)メタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルス(Agaricus bisporus)メタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)メタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)メタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子から得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子、又はこれらの組合せから得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、配列番号46及び/又は配列番号47であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子、カンジダ・グラブラタAMT1遺伝子、ヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)CUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)、サッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)、及びアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
真菌宿主細胞が、第1のポリヌクレオチドの1つ又はそれを超える(複数個)のコピーを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドが、抗原、酵素、増殖因子、ホルモン、イムノディレーター(immunodilator)、神経伝達物質、受容体、レポータータンパク質、構造タンパク質、及び転写因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドが、アルブミン、コラーゲン、トロポエラスチン、エラスチン、又はゼラチンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリペプチドが、真菌宿主細胞に対して固有であるか又は外来であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1及び第2のポリヌクレオチドが、真菌宿主細胞の染色体又は染色体外要素中に含有されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第3のポリヌクレオチドが、真菌宿主細胞の染色体又は染色体外要素中に含有されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
真菌宿主細胞は糸状菌又は酵母細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得られるポリペプチド。
【請求項14】
銅依存性トランス活性化転写因子により活性化される銅応答性上流活性化配列を含む銅誘導性プロモーター配列に機能できる形で結合したポリペプチドをコードする核酸配列を含む第1のポリヌクレオチドと、プロモーター配列の上流に機能できる形で結合した1つまたはそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含み、ここで、プロモーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列に対して外来であり、銅応答性上流活性化配列はプロモーター配列の銅誘導性転写を引き起こす、核酸構築体。
【請求項15】
銅誘導性プロモーター配列が、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子よりなる群から選択される遺伝子から得られることを特徴とする、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項16】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、サッカロミセス・セレビシエメタロチオネイン遺伝子、サッカロミセス・セレビシエスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエサイトゾル性カタラーゼ遺伝子、サッカロミセス・セレビシエ銅抵抗性サプレッサー遺伝子、カンジダ・グラブラタメタロチオネイン遺伝子、ノイロスポラ・クラッサメタロチオネイン遺伝子、ヤローウィア・リポリティカメタロチオネイン遺伝子、アガリクス・ビスポルスメタロチオネイン遺伝子、マグナポルテ・グリセアメタロチオネイン遺伝子、及びポドスポラ・アンセリナメタロチオネイン遺伝子、及びこれらの組合せ、よりなる群から選択される遺伝子から得られることを特徴とする、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項17】
1つ又はそれを超える(複数個)の追加の銅応答性上流活性化配列が、配列番号46及び/又は配列番号47であることを特徴とする、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の核酸構築体を含む組換え発現ベクター。
【請求項19】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の核酸構築体と、銅依存性トランス活性化転写因子をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む第3のポリヌクレオチドとを含む組換え真菌宿主細胞。
【請求項20】
銅依存性トランス活性化転写因子遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエACE1遺伝子、カンジダ・グラブラタAMT1遺伝子、ヤローウィア・リポリティカCRF1遺伝子(受け入れ番号P45815)、シゾサッカロミセス・ポンベCUF2遺伝子(受け入れ番号O94588)、サッカロミセス・セレビシエHAA1遺伝子(受け入れ番号Q12753)、及びアスペルギルス・フミガツス銅フィストDNA結合ドメインタンパク質遺伝子(受け入れ番号Q4WN33)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の組換え真菌宿主細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−543560(P2009−543560A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519709(P2009−519709)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/073486
【国際公開番号】WO2008/008967
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500175602)ノボザイムス,インコーポレイティド (26)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/073486
【国際公開番号】WO2008/008967
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500175602)ノボザイムス,インコーポレイティド (26)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】
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