説明

眼の外部または内部への眼科用薬剤の送達法

本発明は、アミノ酸を含有する生分解性ポリエステルアミド(PEA)、ポリエステルウレタン(PEUR)およびポリエステル尿素(PEU)重合体に基づく眼内用重合体送達組成物を提供する。この組成物は、移植可能な固体としてまたは重合体粒子の液体分散液として、その中に分散されたまたは重合体の主鎖に組み込まれた眼科用薬剤の持続性送達のために製剤化されることができる。被験者の眼の中に組成物を移植することによって眼の外部または内部に眼科用薬剤を送達する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は全体として、薬物溶出性の重合体組成物に関し、特に制御された持続放出性の様式での眼科用薬剤の眼送達のための生分解性の、生体適合性の重合体送達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
多くの移植可能な薬物送達装置が過去数年間にわたって開発されている。そのような薬物送達装置は、合成または天然の、生分解性または非生分解性重合体から組み立てることができる。生分解性重合体は、これらの材料が水性の生理的環境に置かれる場合、例えば、酵素的または非酵素的加水分解により、時間とともにインビボにおいて徐々に分解するので、好ましい。したがって、薬物送達装置での生分解性重合体の使用は、この使用によって、薬物放出期間の終了時点での薬物送達装置の必然的な除去が回避されるので、好ましい。
【0003】
薬物は一般に、重合体組成物の中に組み込まれ、体外で所望の形状に成形される。次いで、この固体インプラントは典型的には、切開によりヒト、動物、鳥類などの身体の中に挿入される。あるいは、これらの重合体でできた小さなバラバラの粒子が注射器により身体の中に注射されることもある。
【0004】
ある種のこれらの重合体は液体重合体組成物として注射器により注射することもできる。これらの組成物は液体状態で、またはその代わりに、溶液として身体に投与される。いったん体内に入ると、この組成物は固体に凝集する。一つのタイプの重合体組成物は、体液分散性の溶媒に溶解された非反応性の熱可塑性重合体または共重合体を含む。この重合体溶液は、周辺の身体組織への溶媒の散逸または拡散によって重合体が凝結するかまたは促進的に凝固する身体の中に入れられる。
【0005】
特に、非生分解性の重合体インプラント、最も一般的には各種のメチルメタクリレートが、トブラマイシン、ゲンタマイシンおよびバンコマイシンのような抗生物質の局所送達に使用されている。ポリ乳酸およびポリ(DL-ラクチド):コ-グリコリドをバンコマイシンと組み合わせて作られた生分解性の抗生物質インプラントは、開発されており、限局性骨髄炎ウサギモデルにおいて評価されている(Cahoun JH et al. Clinical Orthopaedics & Related Research. Current Trends in the Management of Disorders of the Joints. (1997) 341:206-214(非特許文献1))。
【0006】
最近になって、ある種の脳腫瘍の術後処置でのインプラントとしてFDAに認可されたGIADEL (登録商標)ウエハ(Guilford Pharmaceutical Corp, Baltimore, MD)は、生分解性ポリ酸無水物共重合体のウエハから、腫瘍溶解剤カルムスチンを送達するために使用されている。Gliadel (登録商標)ウエハの加水分解産物(抗がん剤に加えて)は最終的には、出発点となるジ酸、すなわちセバシン酸および1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)である。ウサギ脳におけるGliadelインプラントの臨床試験から、限られた毒性、初期活性および分解生成物である遊離酸の速やかな排出が明らかにされている(A.J. Domb et al. Biomaterials. (1995) 16: 1069-1072(非特許文献2))。
【0007】
インプラントからの局所的な薬物送達は、比較的低い血清レベルとともに高い組織濃度という利点をもたらし、それによって全身送達に関連する毒性のいくらかを回避する。生物活性剤浸透性の重合体インプラントは、これらが高い組織レベルの抗生物質または腫瘍溶解剤を送達するだけでなく、ある種の外科手術後に生じる死腔を満たすのにも役立つので、特に魅力的である。しかしながら、そのような移植された薬物送達装置の薬物放出特性は、最適とは言えない場合がある。多くの場合、移植された薬物送達装置からの薬理学的に活性な薬剤の放出は不規則である。薬物が装置の表面から最初に放出される初期のバースト(burst)期間、引き続いてほとんどまたは全く薬物が放出されない第二の期間、および薬物の残りの大部分が初期のバーストにおけるよりも実質的に遅い速度で放出される第三の期間がある。
【0008】
最近になってCPPは、2003年の特許の国際公開公報第03/080147 A1号(特許文献1)における「Advanced Cardiovascular Systems, Inc」による血管適用のための生体吸収性ステントの調製に、および2005年5月25日付で出願された同時係属中の米国特許仮出願第60/684,670号(特許文献2)における重合体粒子の調製に有用な単量体として開示された。
【0009】
トランス-4-ヒドロキシケイ皮酸に基づく別の芳香族生分解性ジ酸単量体が最近になって記述されている。一般名4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸を持つ単量体は本質的に二つの加水分解に不安定なエステル基を含有し、特異的(酵素的)および非特異的(化学的)加水分解を受けると予想される(M Nagata, Y. Sato. Polymer. (2004) 45:87-93(非特許文献3))。不飽和基を含有する生分解性重合体は、さまざまな用途の可能性がある。例えば、不飽和基はさらなる修飾に有用な、エポキシまたはアルコールなどの他の官能基に変換することができる。それらの架橋は重合体の熱的安定性および機械的特性を増強しうる。シンナマートは光開始剤の存在なしに、290 nmを超える波長でのUV照射によって、可逆的[2 + 2]付加環化を起こすこと、すなわち重合体を自己光架橋性にする特性が知られている(Y. Nakayama, T. Matsuda. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. (1992) 30:2451-2457(非特許文献4))。さらに、シンナモイルエステルは体内で代謝され、非毒性であることが証明されている(M Nagata, Y. Sato. Polymer. (2004) 45:87-93(非特許文献3)の論文における引用)。
【0010】
最近の研究から、胃を通って、より塩基性の腸の中に種々の医用薬剤を誘導するために、ヒドロゲル型の材料を使用できることも明らかにされている。ヒドロゲルは、さまざまな薬剤化合物に対して高い浸透性がある、酸性環境に耐えることができる、かつ「膨潤し」、それによって捕捉した分子をその網状表面から放出するよう調整することができる、架橋された親水性の三次元重合体網目である。ゲルの化学組成に応じて、異なる内部および外部刺激(例えば、pHの変化、磁場または電場の適用、温度の変動および超音波照射)を用いて膨潤効果を誘発することができる。しかしながら、いったん誘発されると、捕捉された薬物の放出速度は重合体網目の架橋率によってのみ決まる。
【0011】
薬物の眼内送達は特有の問題である。眼は二室、つまり眼の前方にある前部、および眼の後方にある後部に分けられる。前部の疾患は点眼薬のような製剤によって処置しやすい。これはそれらの製剤を局所的に適用できるからである。例えば、緑内障は眼の前方から処置することができる。糖尿病性網膜症および黄斑変性症のような網膜の疾患は後部に位置しており、処置するのが困難である。これは点眼薬のような局所的に適用される薬物が典型的には、眼の後方にまで浸透しないからである。これらの疾患状態に対する薬物は通例、注射によって眼の後方に直接的に送達されている。
【0012】
研究者らはこれらの困難を克服しようとしてきた。眼の上への陽イオン乳濁液の局所投与は、従来の点眼薬および陰イオン乳濁液と比較して低い接触角および増大した拡張係数で、角膜上での親油性薬物の滞留時間を増大することが明らかにされている。眼の後部の場合、貯留層として働く角膜および結膜から経強膜的経路を介して親油性薬物が網膜に移動することを可能にする、非侵襲的な局所投与のためのある種の陽イオン乳濁液が開発されている。
【0013】
化学者、生化学者および化学技術者は全て、革新的な薬物輸送系を見出すために伝統的な重合体のおよび他の製剤の先を思い描いている。したがって、眼の外部または内部組織のような特定の身体部位を標的化するための、種々の異なるタイプの生物活性剤の制御送達に向けた新しくて、より良好な重合体送達組成物が当技術分野において依然として必要にされている。特に、例えば眼の前方および後方の慢性疾患の処置での、持続時間にわたる眼の前部または後部への眼科用薬剤の連続放出のための、新しくかつより良好な重合体送達組成物が当技術分野において必要とされている。
【0014】
【特許文献1】国際公開公報第03/080147 A1号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/684,670号
【非特許文献1】Cahoun JH et al. Clinical Orthopaedics & Related Research. Current Trends in the Management of Disorders of the Joints. (1997) 341:206-214
【非特許文献2】AJ. Domb et al. Biomaterials. (1995) 16: 1069-1072
【非特許文献3】M Nagata, Y. Sato. Polymer. (2004) 45:87-93
【非特許文献4】Y. Nakayama, T. Matsuda. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. (1992) 30:2451-2457
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明はポリエステルアミド(PEA)、ポリエステルウレタン(PEUR)およびポリエステル尿素(PEU)重合体のような、反復単位あたりに少なくとも一つのアミノ酸およびアミノ酸ではない部分を含有する重合体を用いて、重合体の生分解による眼の外部または内部への、一貫性かつ信頼性のある様式における眼科用薬剤の持続表出のための生分解性重合体送達組成物を製剤化できるという前提に基づく。
【0016】
本発明は同様に、重合体の生分解による一貫性かつ信頼性のある形での眼の外部または内部への持続放出のための重合体の主鎖に治療薬(例えば、眼科用ジオールの残基)を組み込んだ重合体送達組成物として、PEA、PEURおよびPEUを製剤化できるという前提に基づく。本発明の眼内用重合体送達組成物は任意で、眼の外部または内部へ、重合体中に分散されている別のタイプの生物活性剤を送達されてもよい。
【0017】
一つの態様において、本発明は、組成物が眼の外部または内部に移植可能であり、重合体が以下の少なくとも一つを含む、少なくとも一つの生分解性重合体の中に分散されている少なくとも一つの眼科用薬剤を含む眼内用重合体送達組成物を提供する。
構造式(I)により記述される化学式を有するPEA、

式(I)中において、nが約5〜約150の範囲であり; R1が下記式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレート、または(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンとの組み合わせでα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1〜C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、または治療用ジ酸の飽和もしくは不飽和残基から独立して選択され;

ここで式(III)中のR5およびR6が(C2〜C12)アルキレンまたは(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され; 個々のn単位中のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; かつR4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基、およびその組み合わせからなる群より独立して選択される;
あるいは構造式(IV)により記述される化学式を有するPEA重合体、

式(IV)中において、nが約5〜約150の範囲であり、mが約0.1〜0.9の範囲であり; pが約0.9〜0.1の範囲であり; R1が構造式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレート、または(C2〜C20)アルキレンおよび(C2〜C20)アルケニレンとの組み合わせでα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1〜C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸、4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、治療用ジ酸の飽和もしくは不飽和残基およびその組み合わせから独立して選択され; かつ
ここで式(III)中のR5およびR6が(C2〜C12)アルキレンまたは(C2〜C12)アルケニレンより独立して選択され; 各R2が独立して水素、(C1〜C12)アルキル、(C6〜C10)アリールまたは保護基であり; 個々のm単量体中のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; かつR4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基およびその組み合わせからなる群より独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の眼内用重合体送達組成物が構造式IおよびIV〜VIIIの一つまたは複数の重合体ならびに該一つまたは複数の重合体中に分散されている少なくとも一つの眼科用薬剤を含み、酵素作用により生分解し、制御された速度で眼の外部または内部に眼科用薬剤を放出する該組成物を被験者に眼内投与することにより、被験者の眼の外部または内部に眼科用薬剤を送達するための方法を提供する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、生分解性重合体を用いて、その内部に分散された眼科用薬剤の眼送達のための重合体送達組成物を作出できるという発見に基づく。眼用重合体送達組成物(ocular polymer delivery composition)は眼外または眼内送達のための粒子の分散物として、移植可能な固体として、またはフィルムとして形造ることができる。本発明の眼用重合体送達組成物は、制御された速度で眼科用薬剤を放出するように酵素加水分解作用によって生分解する。本発明の粒子組成物は安定であるので、運搬および保存のために凍結乾燥され、投与のために再分散されてもよい。使用される重合体の構造特性によって、本発明の眼内用重合体送達組成物は眼科用薬剤の高い負荷をもたらす。
【0020】
したがって、一つの態様において、本発明は、以下である少なくとも一つの生分解性重合体の中に分散されている、少なくとも一つの眼科用薬剤を含む、眼内用重合体送達組成物を提供する。
構造式(I)により記述される化学式を有するPEA、

式(I)中において、nが約5〜約150の範囲であり; R1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは治療用ジ酸の飽和もしくは不飽和残基およびその組み合わせから独立して選択され;


ここで式(III)中のR5およびR6が(C2〜C12)アルキレンまたは(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され; 個々のn単量体中のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; かつR4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、ならびに飽和または不飽和の治療用ジ酸残基からなる群より独立して選択される;
あるいは構造式(IV)により記述される化学式を有するPEA重合体、

式(IV)中において、nが約5〜約150の範囲であり、mが約0.1〜0.9の範囲であり; pが約0.9〜0.1の範囲であり; 式中においてR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、上記式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは治療用ジ酸の飽和もしくは不飽和残基およびその組み合わせから独立して選択され; ここで式(III)中のR5およびR6が(C2〜C12)アルキレンまたは(C2〜C12)アルケニレンより独立して選択され; 各R2が独立して水素、(C1〜C12)アルキルもしくは(C6〜C10)アリールまたは保護基であり; 個々のm単量体中のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキル、および-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; かつR4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびその組み合わせ、ならびに飽和または不飽和の治療用ジオール残基からなる群より独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニル、例えば、(C3〜C6)アルキルまたは(C3〜C6)アルケニルである。
【0021】
例えば、少なくとも一つの治療用ジオールまたはジ酸の残基の有効量が重合体主鎖に含有されてもよい。例えば、治療用ジオールは本明細書において開示の、眼科用薬剤であってもよい。あるいは、PEA重合体において、少なくとも一つのR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカンまたは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基であり、R4が一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、または飽和もしくは不飽和の治療用ジオール残基である。別の代替態様において、PEA重合体中のR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカンまたは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、治療用ジ酸の残基、およびその混合物である。別の代替態様では、PEA重合体においてR1が1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)のような、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカン、または4,4'-(アジポイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基であり、R4が1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)のような一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0022】
あるいは、本発明の眼内用重合体送達組成物は、以下を含む生分解性重合体の中に分散されている、少なくとも一つの眼科用薬剤を含むことができる。
構造式(V)により記述される化学式を有するPEUR重合体、

式(V)中において、nが約5〜約150の範囲であり; 個々のn単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; R4およびR6が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基、およびその混合物から独立して選択される;
あるいは一般構造式(VI)により記述される化学構造を有するPEUR重合体、

式(VI)中において、nが約5〜約150の範囲であり、mが約0.1〜約0.9の範囲であり; pが約0.9〜約0.1の範囲であり; R2が水素、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルまたは保護基から独立して選択され; 個々のm単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; R4およびR6が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基、およびその混合物から独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニル、例えば、(C3〜C6)アルキルまたは(C3〜C6)アルケニルである。
【0023】
例えば、本明細書において開示の、眼科用ジオールを含むが、これに限定されない少なくとも一つの治療用ジオールの残基の有効量が重合体主鎖に含有されてもよい。一つの代替態様では、PEUR重合体において、R4またはR6の少なくとも一方が1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)のような1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0024】
別の態様において、本発明の眼内用重合体送達組成物は、以下を含む生分解性重合体の中に分散されている、少なくとも一つの眼科用薬剤を含むことができる。
構造式(VII)により記述される化学式を有する少なくとも一つの生分解性PEU重合体、

式(VII)中においてnが約10〜約150であり; 個々のn単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキル、-(CH2)3および-(CH2)2S(CH3)から独立して選択され; R4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療用ジオール残基、または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片から独立して選択される;
あるいは構造式(VIII)により記述される化学式を有するPEU、

式(VIII)中において、mが約0.1〜約1.0であり; pが約0.9〜約0.1であり; nが約10〜約150であり; 各R2が独立して水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールであり; かつ個々のm単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立して選択され; R4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療用ジオール残基、または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、またはその混合物から独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニル、例えば、(C3〜C6)アルキルまたは(C3〜C6)アルケニルである。
【0025】
例えば、本明細書において開示の、眼科用ジオールを含むが、これに限定されない少なくとも一つの治療用ジオールの残基の有効量が、重合体主鎖に含有されてもよい。一つの代替態様では、PEU重合体において、少なくとも一つのR4が飽和もしくは不飽和の治療用ジオール残基、またはDASのような1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。別の代替態様では、PEU重合体において、少なくとも一つのR4がDASのような1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0026】
これらのPEU重合体は、さまざまな眼科用薬剤の、ヒトおよび他の哺乳動物の眼の内部または外部への送達に適した重合体粒子を作出するのに有用な高分子量の重合体として作成することができる。これらのPEUは、加水分解により切断可能なエステル基およびα-アミノ酸を含有する非毒性の天然単量体を重合体の鎖中に組み込む。PEUの最終的な生分解産物はアミノ酸、ジオール、およびCO2である。PEAおよびPEURとは対照的に、本発明のPEUは結晶性または半結晶性であり、完全に合成の、それゆえ作成するのが容易な、結晶性および半結晶性の重合体粒子、例えばナノ粒子の形成を可能にする有利な機械的、化学的および生分解特性を保有する。
【0027】
例えば、本発明の眼内用重合体粒子送達組成物において使用されるPEU重合体は高い機械的強度を有し、PEU重合体の表面侵食は加水分解酵素のような、生理的条件において存在する酵素によって触媒されうる。
【0028】
本明細書において用いられる場合、「アミノ酸」および「α-アミノ酸」という用語は、アミノ基、カルボキシル基およびペンダントR基、例えば本明細書において定義のR3基を含有する化合物を意味する。本明細書において用いられる場合、「生物学的α-アミノ酸」という用語は、合成に使用されるアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、またはその混合物から選択されることを意味する。本明細書において用いられる場合、「無方向性(adirectional)アミノ酸」という用語は、R基(例えば式VIおよびVII中のR13)が重合体主鎖内に挿入されるような、α-アミノ酸から得られる重合体鎖内の化学的部分を意味する。
【0029】
本明細書において用いられる場合、「治療用ジオール」とは、哺乳動物に投与される場合、治療的にまたは緩和的に、ヒトのような哺乳動物個体における生物学的過程に影響を与える、合成的に生成されたか、または天然に(例えば、内因的に)存在するかに関わらず、任意のジオール分子を意味する。
【0030】
本発明の組成物において使用されるPEA、PEURおよびPEU重合体は、重縮合体である。式(IV、VIおよびVIII)中の比率「m」および「p」は、これらの重縮合体重合体の記述のなかで無理数と定義される。さらに、「m」および「p」はそれぞれ、任意の重縮合体のなかである範囲を取るので、このような範囲は一対の整数によって定義できない。各重合体鎖は、全てのビス-アミノ酸ジオール(i)および無方向性アミノ酸(例えば、リジン) (ii)の単量体残基がそれら自体にまたは相互に、PEAの場合ジ酸単量体残基(iii)により、PEURの場合ジオール残基(iii)もしくはPEUの場合カルボニル(iii)により連結されるという規則によって一緒に連結された単量体残基の連なり(string)である。すなわち、i-iii-i; i-iii-ii (またはii-iii-i)およびii-iii-iiの線形結合しか形成されない。次には、これらの結合のそれぞれもそれら自体にまたは相互に、PEAの場合ジ酸単量体残基(iii)もしくはPEURの場合ジオール残基(iii)もしくはPEUの場合カルボニル(iii)により連結される。各重合体鎖はしたがって、単量体残基の総計的であるが、非無作為的な連なりである。各個々の重合体鎖は整数の単量体i、iiおよびiiiで構成される。しかしながら、一般に、任意の実用的な平均分子量(すなわち、十分な平均長)の重合体鎖の場合、式(IV、VIおよびVIII)中の単量体残基の比率「m」および「p」は整数(有理整数)ではないであろう。さらに、全ての多分散重合体鎖の縮合体の場合、鎖の全てで平均した(すなわち、平均鎖長に対し規準化した)単量体i、iiおよびiiiの数は整数ではないと考えられる。それは続いて、これらの比率は無理数値(すなわち、有理数ではない任意の実数)しかとれないということになる。無理数とは、この用語が本明細書において用いられる場合、nおよびjが整数である形式n/jのものではない比率に由来する。
【0031】
本明細書において用いられる場合、「治療用ジオール残基」という用語は、本明細書において記述の、治療用ジオールの一部分を意味し、この部分はジオールの二つのヒドロキシル基を除く。本明細書において用いられる場合、「治療用ジ酸残基」という用語は、本明細書において記述の、治療用ジ酸の一部分を意味し、この部分はジ酸の二つのカルボキシル基を除く。その「残基」を含有する対応の治療用ジオールまたはジ酸が重合体組成物の合成において使用される。本明細書において開示する眼科用薬剤は、本明細書において開示する治療用ジオールの一部である。治療用ジ酸またはジオールの残基は、PEA、PEURまたはPEU重合体の特性が組成物を作成するために選択され、当技術分野において公知の通りのおよび本明細書において記述する通りの特性に応じて制御された形で生分解により重合体の主鎖から放出された後、対応するジ酸またはジオールにインビボで(またはpH、水性媒質などの類似の条件下で)再構成される。
【0032】
本明細書において用いられる「生物活性剤」という用語は、重合体主鎖に組み込まれていない本明細書において開示の生物活性剤を意味する。一つまたは複数のそのような生物活性剤が本発明の眼内用重合体送達組成物に任意で分散されてもよい。本明細書において用いられる場合、「分散される」という用語は、生物活性剤が重合体の中に分散され、混合され、溶解され、ホモジナイズされおよび/または共有結合され(「分散され」)ている、例えば、組成物の生分解性重合体中の官能基にまたは重合体粒子の表面に付着されているが、PEA、PEURまたはPEU重合体の主鎖の中に組み込まれていないことを意味する。主鎖に組み込まれた治療用ジオールおよびジ酸を(その残基として)重合体主鎖の中に組み込まれていないものと区別するため、このような分散された治療薬または苦痛緩和薬を本明細書において「生物活性剤」といい、以下のように、重合体結合体内に含有させても、またはそうでなければ重合体粒子組成物中に分散させてもよい。そのような生物活性剤は、非限定的に、小分子薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、cDNA、RNA、糖、脂質および全細胞を含むことができる。一つの態様において、本発明の眼内用重合体送達組成物は、異なる治療目的を満たすのにおよび投与経路に適した種々のサイズおよび構造を有する重合体粒子のなかで、その中に分散された任意的な生物活性剤を伴いまたは伴わずに、眼科用薬剤を投与する。
【0033】
本発明の眼内用重合体送達組成物の作成において使用される、PEA、PEURおよびPEU重合体、その混合物およびブレンドなどを記述するよう本明細書において用いられる「生分解性の、生体適合性の」という用語は、重合体が身体の正常な機能において無害の生成物に分解されうることを意味する。これは、重合体の作成に使用されるアミノ酸が生物学的L-α-アミノ酸である場合、特に当てはまる。「生分解性重合体」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、重合体が水によりおよび/またはヒトのような哺乳動物患者の組織中に見られる酵素により分解されることも意味する。本発明の眼内用重合体送達組成物は同様に、本明細書において記述のように用いられる場合、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、フェレット)、家畜(例えば、ブタ、ウマ、ラバ、乳牛および肉牛)ならびに競走馬のような種々の哺乳動物患者の獣医学処置で用いるインプラントとして適当である。
【0034】
本発明の眼内用重合体送達組成物からの生物活性剤の放出を記述するよう本明細書において用いられる「制御された」という用語は、重合体インプラントが、所望の期間かかって分解し、円滑かつ規則的な(すなわち「制御された」)持続放出プロファイル(例えば、薬物放出での初期の不規則な急上昇の回避およびその代わりに本発明の組成物の生分解全体を通じて実質的に円滑な放出変化率の供与)をもたらすことを意味する。
【0035】
本発明の眼内用重合体送達組成物における重合体は、生分解性を提供する加水分解性エステルおよび酵素的に切断可能なアミド結合を含み、典型的には、主にアミノ基により、鎖終結される。任意で、重合体のアミノ末端は、限定するものではないが有機酸、生物不活性な生物製剤、および本明細書において記述の生物活性剤を含むために、アセチル化されるても、またはそうでなければその他任意の酸含有の生体適合性分子への結合によりキャップされてもよい。一つの態様において、重合体組成物全体、およびそれからできた任意の粒子が、実質的に生分解性である。
【0036】
一つの代替態様において、本発明の組成物および方法において使用される重合体の作成において使用されるα-アミノ酸の少なくとも一つは生物学的α-アミノ酸である。例えば、R3がCH2Phである場合、合成において使用される生物学的α-アミノ酸はL-フェニルアラニンである。R3がCH2-CH(CH3)2である代替態様において、重合体は生物学的α-アミノ酸のL-ロイシンを含有する。本明細書において記述の単量体内のR3を変えることにより、他の生物学的α-アミノ酸、例えば、グリシン(R3がHである場合)、アラニン(R3がCH3である場合)、バリン(R3がCH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3がCH2-C6H5である場合)、またはメチオニン(R3が-(CH2)2SCH3である場合)、およびその混合物を用いることもできる。別の代替態様において、本発明の重合体粒子または固体の眼内用送達組成物の作出において使用される重合体中に含有されるさまざまなα-アミノ酸の全てが、本明細書において記述の生物学的α-アミノ酸である。
【0037】
本発明の眼内用重合体送達組成物において使用される重合体を記述するよう本明細書において用いられる「生分解性の」という用語は、重合体が身体の正常な機能において無害かつ生物活性の生成物に分解されうることを意味する。一つの態様において、重合体粒子送達組成物全体が生分解性である。本明細書において記述する生分解性重合体は、生分解性を提供する加水分解性エステルおよび酵素的に切断可能なアミド結合を有し、典型的には、主にアミノ基により鎖終結される。任意で、これらのアミノ末端は、限定するものではないが有機酸、生物不活性な生物製剤および生物活性剤を含むために、アセチル化されても、またはそうでなければその他任意の酸含有の生体適合性分子への結合によりキャップされてもよい。
【0038】
一つの態様において、本発明の眼内用重合体送達組成物を粒子として作成し、これを製剤化して種々の特性を与えてもよい。例えば、重合体粒子を眼内で塊りになるようサイズ調整し、注射時または外科移植時に、分散された眼科用薬剤を周辺組織/細胞に局所送達するための持続放出性重合体貯蔵物を形成させてもよい。例えば、サイズが約19〜約27ゲージに及ぶ薬学的注射針を通過できるサイズの重合体粒子、例えば約1 μm〜約200 μmの範囲内の平均直径を有するものを眼内に注射することができ、これが塊りになってサイズの増大した粒子を形成し、これが貯蔵物を形成して眼科用薬剤を局所的に分配する。
【0039】
本発明の眼内用重合体送達組成物において使用される生分解性重合体は、重合体の生分解速度を調整して、選択の期間にわたり、さらなる生物活性剤を伴いまたは伴わずに、眼科用薬剤の持続的送達をもたらすようにデザインすることができる。例えば、典型的には、本明細書において記述の重合体貯蔵物は、約24時間、約7日間、約30日間、もしくは約90日間、またはそれ以上、例えば最大3年間から選択される期間かけて生分解する。適当な治療応答または緩和応答を得るため組成物を繰り返し注射する必要のない送達組成物を提供するには、より長い期間が特に適している。
【0040】
本発明は、眼の内部または外部に眼科用薬剤を送達するために、生分解性重合体の粒子媒介性または固体媒介性送達技術を用いる。例えば、本発明の組成物は、結膜下(角膜を除く眼前方の頂部を覆う薄膜下に)であるが、強膜(白眼)の頂部に置かれ、持続的送達をもたらすことができる。あるいは、本発明の組成物は、本明細書において記述のように、外科的に置かれ、外科用薬剤を眼後方に送達されてもよい。あるいは、本発明の組成物は強膜の頂部のテノン鞘下に置かれ、強膜を通じ眼後方から網膜までの眼科用薬剤の拡散を可能にしてもよい。この据え付け方法は「テノン嚢下(subtenon)」送達と呼ばれる。このように、本発明の組成物は多種多様な眼科疾患および疾患症状の処置において眼科薬剤を送達するのに使用することができる。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「眼内の」、「眼内に」および「眼の内部へ」という用語は、活性薬剤の結膜下、経強膜的またはテノン嚢下送達を意味するが、局所送達を意味するものではない。
【0042】
本明細書において記述する重合体粒子および固体送達組成物ならびに方法の個々の構成要素のうちのあるものは公知であったが、そのような組み合わせがそれらの構成要素を別々に使用した場合に達成されたレベルを超えて眼科用薬剤の持続放出性送達の効率を増強したことは、予想外でありかつ驚きであった。
【0043】
本発明の実践において使用されるPEA、PEURおよびPEU重合体は、眼科用薬剤の重合体への、および任意で他の生物活性剤または被覆分子の重合体への容易な共有結合を可能にする官能基を有する。例えば、カルボキシル基を有する重合体は、アミノ部分と容易に反応し、それによって得られるアミド基を介してペプチドを重合体に共有結合することができる。本明細書において記述するように、生分解性重合体および生物活性剤は、眼科用薬剤または他の生物活性剤を生分解性重合体に共有結合させるために使用できる多くの相補的な官能基を含有しうる。あるいは、重合体粒子のような本発明の組成物、および方法において使用されるそのような重合体は、前修飾の必要なしに、水溶性を高めるよう親水性構造を有する他の化学物質との、および被覆分子との反応の準備ができている。
【0044】
さらに、本明細書において開示する重合体(例えば、構造式(IおよびIV〜VIII)を有するもの)は、酵素分解の後、アミノ酸を供与する一方で、他の分解産物は、脂肪酸および糖類が代謝される形で代謝されうる。生物活性剤を有する重合体の取り込みは安全であり、いくつかの試験によって被験者が重合体分解産物を代謝/除去できることが明らかにされている。これらの重合体および本発明の眼内用重合体送達組成物は、それゆえ、注射自体により引き起こされる外傷は別として、注射の部位でも全身的にもともに被験者にとって実質的に非炎症性である。
【0045】
本発明の生分解性眼内用重合体粒子および固体送達組成物の形成において有用な生分解性PEA、PEURおよびPEU重合体は、単一の重合体分子のなかで複数の異なるα-アミノ酸、例えば、反復単位あたりに少なくとも二つの異なるアミノ酸を含有してもよく、または単一の重合体分子が、分子のサイズに応じて、重合体分子のなかで複数の異なるα-アミノ酸を含有してもよい。重合体はブロック共重合体であってもよい。別の態様において、重合体を2-または3-ブロック共重合体中の1ブロックとして使用し、それらを以下に記述のように、ミセルを作出するために使用する。
【0046】
さらに、本発明の重合体粒子および固体送達組成物において使用される重合体は、生理食塩水(PBS)媒質中で試験された場合、最小限の加水分解を示すが、キモトリプシンまたはCTのような酵素溶液中では、均質な侵食挙動が観察されている。
【0047】
PEA、PEURおよびPEU重合体で用いるのに適した保護基は、t-ブチルまたは当技術分野において公知の別のものを含む。一般式(II)の適当な1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、D-グルシトール、D-マンニトールまたはL-イジトールのような糖アルコールから得られるものを含む。ジアンヒドロソルビトールは、本発明の重合体粒子送達組成物の作成において使用されるPEA、PEURおよびPEU重合体で用いるのに現在好ましい1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0048】
PEA、PEURおよびPEU重合体分子は、任意でリンカーを介してそれに付着されたまたは分子間の架橋剤に組み込まれた、眼科用薬剤または他の生物活性剤を有してもよい。例えば、一つの態様において、重合体は、構造式(IX)を有する重合体-生物活性剤の結合体に含有される。

式中においてn、m、p、R1、R3およびR4は前述の通りであり、R5は-O-、-S-、およびR8がHまたは(C1〜C8)アルキルである-NR8-からなる群より選択され; かつR7は生物活性剤である。
【0049】
別の態様において、構造式(X)の重合体の二分子を架橋して-R5-R7-R5-結合体を供与することができる。別の態様において、下記の構造式(IX)に示す通り、生物活性剤は構造式(IV)の単一の重合体分子の二つの部分に-R5-R7-R5-結合体を通して共有結合され、R5は-O-、-S-、およびR8がHまたは(C1〜C8)アルキルである-NR8-からなる群より独立して選択され; かつR7は眼科用薬剤または他の生物活性剤である。

【0050】
あるいは、下記の構造式(XI)に示す通り、リンカー、-X-Y-を構造式(IV)の分子中のR5と生物活性剤R7との間に挿入してもよく、ここでXは(C1〜C18)アルキレン、置換アルキレン、(C3〜C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O、NおよびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜6員複素環系、置換複素環、(C2〜C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1〜C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1〜C4)アルキル、-S(C1〜C6)アルキル、-S[(=O)(C1〜C6)アルキル]、-S[(O2)(C1〜C6)アルキル]、-C[(=O)(C1〜C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1〜C6)アルキル]、-S(O2)[N(R9R10)]、-NH[(C=O)(C1〜C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)、-N(R9R10)の群より選択され; ここでR9およびR10は独立してHまたは(C1〜C6)アルキルであり; かつYは-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-NR8-、-C(=O)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)NH-、-NR8C(=O)-、-C(=O)NR8-、-NR8C(=O)NR8-、-NR8C(=O)NR8-および-NR8C(=S)NR8-からなる群より選択される。

【0051】
別の態様において、単一の巨大分子の二つの部分が-R5-R7-Y-X-R5-架橋により眼科用薬剤または他の生物活性剤に共有結合される(式XII)。

式中、Xは(C1〜C18)アルキレン、置換アルキレン、(C3〜C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O、NおよびSの群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜6員複素環系、置換複素環、(C2〜C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、(C6〜C10)アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群より選択され、ここで置換基はH、F、Cl、Br、I、(C1〜C6)アルキル、-CN、-NO2、-OH、-O(C1〜C6)アルキル、-S(C1〜C6)アルキル、-S[(=O)(C1〜C6)アルキル]、-S[(O2)(C1〜C6)アルキル]、-C[(=O)(C1〜C6)アルキル]、CF3、-O[(CO)-(C1〜C6)アルキル]、-S(O2)[N(R9R10)]、-NH[(C=O)(C1〜C6)アルキル]、-NH(C=O)N(R9R10)からなる群より選択され、ここでR9およびR10は独立してHまたは(C1〜C6)アルキルおよび-N(R11R12)であり、ここでR11およびR12は(C2〜C20)アルキレンおよび(C2〜C20)アルケニレンから独立して選択される。
【0052】
さらに別の態様において、眼内用重合体送達組成物は四分子の重合体を含有するが、四分子のうちの二分子だけはR7を持たず、架橋されて単一の-R5-X-R5-結合体を供与する。
【0053】
「アリール」という用語は、フェニル基または少なくとも一つの環が芳香族である、約9〜10個の環原子を有するオルト縮合二環式炭素環基を示すよう本明細書における構造式に関連して用いられる。ある種の態様において、環原子の一つまたは複数をニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシの一つまたは複数で置換することができる。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
「アルケニレン」という用語は、主鎖中にまたは側鎖中に少なくとも一つの不飽和結合を含有する二価の分枝または非分枝炭化水素鎖という意味で本明細書における構造式に関連して用いられる。
【0055】
ポリスチレン標準物質を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、本明細書における分子量および多分散性を測定する。より詳しくは、例えば、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器およびWaters 2410示差屈折率検出器を備えたModel 510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc., Milford, MA)を用いて、数および重量平均分子量(MnおよびMw)を測定する。テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶離液として使用する(1.0 mL/分)。狭い分子量分布を有するポリスチレンまたはポリ(メタクリル酸メチル)標準物質を較正用に使用した。
【0056】
一般式中にα-アミノ酸を含有する構造式の重合体を作出する方法は、当技術分野において周知である。例えば、R4がα-アミノ酸に組み込まれている構造式(I)の重合体の態様の場合、重合体合成のため、例えば、ペンダントR3を含有するα-アミノ酸をジオールHO-R4-OHと縮合することにより、ペンダントR3を有するα-アミノ酸をエステル化でビス-α,□-ジアミンに変換することができる。結果として、反応性α,□-アミノ基を有するジエステル単量体が生じる。次いで、ビス-α,□-ジアミンをセバシン酸のようなジ酸、またはそのビス-活性エステル、もしくはビス-塩化アシルとの重縮合反応に入れて、エステルとアミド結合の両方を有する最終重合体(PEA)を得る。あるいは、例えば、構造(I)の重合体の場合、ジ酸の代わりに、活性ジ酸誘導体、例えば、ビス-パラ-ニトロフェニルジエステルを活性ジ酸として使用してもよい。さらに、ビス(p-ニトロフェニル)ジカルボネートのようなビス-ジ-カルボネートを活性種として使用し、ジ酸の残基を含有する重合体を得ることができる。PEUR重合体の場合、エステルとウレタン結合の両方を有する最終重合体が得られる。
【0057】
より詳しくは、

かつ/または(b) R4が-CH2-CH=CH-CH2-である、上記に開示の構造式(I)の生分解性重合体として有用な不飽和ポリ(エステル-アミド) (UPEA)の合成を記述する。(a)が存在し、(b)が存在しない場合、(I)におけるR4は-C4H8-または-C6H12-である。(a)が存在せず、(b)が存在する場合、(I)におけるR1は-C4H8-または-C8H16-である。
【0058】
UPEAは、(1) 不飽和ジオールのビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩および飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルまたは(2) 飽和ジオールのビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩および不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステルまたは(3) 不飽和ジオールのビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩および不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステルのいずれかの溶液重縮合により調製することができる。
【0059】
ジアミンのアリールスルホン酸塩は、アミノ酸残基を含有する重合体の合成で用いることが公知である。ビス(α-アミノ酸)ジエステルのアリールスルホン基の塩は再結晶により容易に精製され、精密検査(workup)の間、アミノ基を反応性の低いアンモニウムトシレートとするので、遊離ジアミンの代わりにp-トルエンスルホン酸塩を使用する。重縮合反応において、求核性のアミノ基は、トリエチルアミンのような有機塩基の添加により容易に現れ、ビス-求電子単量体と反応し、したがって重合体生成物が高収率で得られる。
【0060】
ビス-求電子単量体、例えば、不飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルは、p-ニトロフェニルおよび不飽和ジカルボン酸塩化物から、例えば、トリエチルアミンおよびp-ニトロフェノールをアセトンに溶解し、不飽和ジカルボン酸塩化物を-78℃で撹拌しながら滴下し、水に注いで生成物を沈澱させることにより合成することができる。適当な酸塩化物にはフマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、エテニル-ブタン二酸および2-プロペニル-ブタン二酸塩化物が含まれる。構造(V)および(VI)の重合体の場合、飽和または不飽和ジオールのビス-p-ニトロフェニルジカルボネートを活性単量体として使用する。構造式(V)および(VI)の重合体の場合には、一般構造(XIII)のジカルボネート単量体を用い、

式中において各R5が独立して一つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換されてもよい(C6〜C10)アリールであり; かつR6が独立して(C2〜C20)アルキレンもしくは(C2〜C20)アルキルオキシ、または(C2〜C20)アルケニレンである。
【0061】
本発明の眼内用重合体送達組成物への導入のため、治療用ジオール単量体のビス(α-アミノ酸)ジエステル、または治療用ジ酸単量体のビス(カーボネート)を調製するのに使用できる適当な治療用ジオール化合物は、17-β-エストラジオールなどの天然に存在する治療用ジオール、再狭窄および腫瘍増殖の抑制に有用な、天然および内因性のホルモンを含む。PEA、PEURまたはPEU重合体の主鎖への、本明細書において開示の眼科用ジオールのような治療用ジオールの組み込みの手順は本出願のなかで実施例8によって例証されており、このなかでは第二級およびフェノール性の混合ヒドロキシルを含有する活性ステロイドホルモン17-β-エストラジオールがPEA重合体の主鎖に組み込まれている。粒子または固体を作成するのにPEA重合体が使用され、この粒子または固体が眼内に移植される場合、治療用ジオールは制御された速度で粒子または固体から放出される。本発明において、重合体の主鎖への組み込みに好ましい治療用ジオールは、眼科用ジオールである。
【0062】
本発明の組成物において使用されるPEA、PEURおよびPEU重合体の汎用性のため、重合体主鎖に組み込まれる治療用ジオールまたはジ酸の量は、重合体の構築ブロックの比率を変えることによって制御することができる。例えば、PEAの組成に応じて、17β-エストラジオールの40% w/wまでの負荷を達成することができる。以下のスキーム1において17β-エストラジオールのさまざまな負荷比を有する二つの異なる規則的直鎖PEAによりこの概念を説明する。

同様に、PEURおよびPEU重合体への治療用ジオールの負荷も、重合体の二つまたはそれ以上の構築ブロックの量を変えることで変化させることができる。
【0063】
本発明の眼内用インプラント組成物において使用される重合体の主鎖中に分散されまたは組み込まれうる、テストステロンまたはコレステロールに基づいた、適当な眼科用合成ステロイド性ジオールは、そのような化合物のヒドロコルチゾン、フルオロコルチゾン、コルチゾン、アルドステロン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニドなどを含む。
【0064】
本発明のPEA重合体組成物中のアミド結合を調製するのに使用できるさらなる眼科用ジオール化合物は、例えば、ラタノプロスト、ブリマトプロスト、トラボプロスト、シドフォビル、ペンシクロビルなどを含む。
【0065】
4-アンドロステン-3,17ジオール(4-アンドロステンジオール)、5-アンドロステン-3,17ジオール(5-アンドロステンジオール)、19-ノル5-アンドロステン-3,17ジオール(19-ノルアンドロステンジオール)のような、テストステロンまたはコレステロールに基づくさらなる合成ステロイド性治療用ジオールは同様に、本発明によるPEA、PEURおよびPEU重合体の主鎖への組み込みに適している。例えば、本発明の眼内用重合体粒子または固体送達組成物の調製で用いるのに適した治療用ジオール化合物は、例えば、アミカシン; アムホテリシンB; アピサイクリン; アプラマイシン; アルベカシン; アジダムフェニコール; バンベルマイシン; ブチロシン; カルボマイシン; セフピラミド; クロラムフェニコール; クロルテトラサイクリン; クリンダマイシン; クロモサイクリン; デメクロサイクリン; ジアチモスルホン; ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン; ジリスロマイシン; ドキシサイクリン; エリスロマイシン; フォーチミシン; ゲンタマイシン; グルコスルホン ソラスルホン; グアメサイクリン; イセパマイシン; ジョサマイシン; カナマイシン; ロイコマイシン; リンコマイシン; ルセンソマイシン; ライムサイクリン; メクロサイクリン; メタサイクリン; ミクロノマイシン; ミデカマイシン; ミノサイクリン; ムピロシン; ナタマイシン; ネオマイシン; ネチルマイシン; オレアンドマイシン; オキシテトラサイクリン; パロマイシン; ピパサイクリン; ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン; プリマイシン; リボスタマイシン; リファミド; リファンピン; ラファマイシン(rafamycin)SV; リファペンチン; リファキシミン; リストセチン; ロキタマイシン; ロリテトラサイクリン; ラサラマイシン(rasaramycin); ロキシスロマイシン; サンサイクリン; シソマイシン; スペクチノマイシン; スピラマイシン; ストレプトマイシン; テイコプラニン; テトラサイクリン; チアンフェニコール; チオストレプトン(theiostrepton); トブラマイシン; トロスペクトマイシン; ツベラクチノマイシン; バンコマイシン; カンジシジン; クロルフェネシン; デルモスタチン(dermostatin(s)); フィリピン; フンギクロミン; カナマイシン; ロイコマイシン; リンコマイシン; ルブセンソマイシン(lvcensomycin); ライムサイクリン; メクロサイクリン; メタサイクリン; ミクロノマイシン; ミデカマイシン; ミノサイクリン; ムピロシン; ナタマイシン; ネオマイシン; ネチルマイシン; オレアンドマイシン; オキシテトラサイクリン; パラモマイシン; ピパサイクリン; ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン; プリイシン(priycin); リボスタマイシン(ribostamydin); リファミド; リファンピン; リファマイシンSV; リファペンチン; リファキシミン; リストセチン; ロキタマイシン; ロリテトラサイクリン; ロサラマイシン; ロキシスロマイシン; サンサイクリン; シソマイシン; スペクチノマイシン; スピラマイシン; ストレプトン; トブラマイシン(otbramycin); トロスペクトマイシン; ツベラクチノマイシン; バンコマイシン; カンジシジン; クロルフェネシン; デルモスタチン(dermostatin(s)); フィリピン; フンギクロミン; メパルトリシン(meparticin); マイスタチン; オリゴマイシン; エリマイシン(erimycin)A; ツベルシジン; 6-アザウリジン; アクラシノマイシン; アンシタビン; アントラマイシン; アザシタジン; ブレオマイシン カルビシン; カルジノフィリンA; クロロゾトシン; クロモマイシン(chromomcin(s)); ドキシフルリジン; エノシタビン; エピルビシン; ゲムシタビン; マンノムスチン; メノガリル; アトルバシ(atorvasi) プラバスタチン; クラリスロマイシン; ロイプロリン(leuproline); パクリタキセル; ミトブロニトール; ミトラクトール; モピダモール; ノガラマイシン; オリボマイシン; ペプロマイシン; ピラルビシン; プレドニムスチン; プロマイシン; ラニムスチン; ツベルシジン; ビネシン(vinesine); ゾルビシン; クメタロール; ジクマロール; エチルビスクマセテート; エチリジン(ethylidine)ジクマロール; イロプロスト; タプロステン; チオクロマロール; アミプリロース; ロムルチド; シロリムス(ラパマイシン); タクロリムス; サリチルアルコール; ブロモサリゲニン(bromosaligenin); ジタゾール; フェプラジノール; ゲンチシン酸; グルカメタシン; オルサラジン; S-アデノシルメチオニン; アジスロマイシン; サルメテロール; ブデソニド; アルブテアル(albuteal); インジナビル; フルバスタチン; ストレプトゾシン; ドキソルビシン; ダウノルビシン; プリカマイシン; イダルビシン; ペントスタチン; ミトキサントロン(metoxantrone); シタラビン; リン酸フルダラビン; フロクスウリジン; クラドリイン(cladriine); カペシタビン(capecitabien); ドセタキセル; エトポシド; トポテカン; ビンブラスチン; テニポシドなどを含む。治療用ジオールは飽和または不飽和ジオールのいずれかであるように選択することができる。
【0066】
本発明のPEA重合体組成物におけるアミド結合を調製するのに使用できる、適当な治療用天然および合成ジ酸は、例えば、バンベルマイシン; ベナゼプリル; カルベニシリン; カルジノフィリンA; セフィキシム; セフィニノクス(cefininox)セフピミゾール; セフォジジム; セフォニシド; セフォラニド; セフォテタン; セフタジジム; セフチブテン; セファロスポリンC; シラスタチン; デノプテリン; エダトレキサート; エナラプリル; リシノプリル; メトトレキセート; モキサラクタム; ニフェジピン; オサラジン; ペニシリンN; ラミプリル; キナシリン(quinacillin); キナプリル; テモシリン; チカルシリン; Tomudex(登録商標) (N-[[5-[[(1,4-ジヒドロ-2-メチル-4-オキソ-6-キナゾリニル)メチル]メチルアミノ]-2-チエニル]カルボニル]-L-グルタミン酸)などを含む。天然に存在する治療用ジ酸の安全性プロファイルは、治療用合成ジ酸のものを上回ると考えられる。治療用ジ酸は飽和または不飽和ジ酸のいずれであってもよい。
【0067】
黄斑変性の阻害剤、腫瘍阻害剤、細胞毒性代謝拮抗剤、抗生物質などとしての上記の眼科用および他の治療用ジオールおよびジ酸の化学的および治療的特性は当技術分野において周知であり、その詳細な説明は、例えば、The Merck Indexの第13版(Whitehouse Station, N.J., USA)のなかで見出すことができる。
【0068】
α-アミノ酸および不飽和ジオールのジエステルのジアリールスルホン酸塩は、トルエン中でα-アミノ酸、例えば、p-アリールスルホン酸一水和物および飽和または不飽和ジオールを混合し、水の発生が最小になるまで還流温度に加熱し、次いで冷却することにより調製することができる。不飽和ジオールは、例えば、2-ブテン-1,3-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールを含む。
【0069】
ジカルボン酸の飽和ジ-p-ニトロフェニルエステルおよびビス-α-アミノ酸エステルの飽和ジ-p-トルエンスルホン酸塩は、米国特許第6,503,538 B1号に記述されているように調製することができる。
【0070】
前述の構造式(I)の生分解性重合体として有用な不飽和ポリ(エステル-アミド) (UPEA)の合成を次に記述する。構造式(I)を有するUPEAは、米国特許第6,503,538号の(III)のR4および/または米国特許第6,503,538号の(V)のR1が前述の(C2〜C20)アルケニレンである以外は、米国特許第6,503,538 B1号の化合物(VII)と類似の様式で作出することができる。反応は、例えば、無水トリエチルアミンを無水N,N-ジメチルアセトアミド中の米国特許第6,503,538号の(III)および(IV)ならびに米国特許第6,503,538号の(V)の混合物に室温で添加し、次いで温度を80℃まで上げて16時間撹拌し、次いで反応溶液を室温まで冷却し、エタノールで希釈し、水に注ぎ入れ、重合体を分離し、分離した重合体を水で洗浄し、減圧下で約30℃に乾燥し、次いでp-ニトロフェノールおよびp-トルエンスルホネートについての試験結果が陰性となるまで精製することにより行う。米国特許第6,503,538号の好ましい反応物(IV)はリジンベンジルエステルのp-トルエンスルホン酸塩であり、ベンジルエステル保護基を、好ましくは(II)から除去して生分解性を付与するが、水素化分解は所望の二重結合を飽和しうるため、これは米国特許第6,503,538号の実施例22のように水素化分解によって除去すべきではなく、それよりもベンジルエステル基を、不飽和を保存しうる方法により酸基に変換すべきである。あるいは、米国特許第6,503,538号のリジン反応物(IV)を、最終生成物において不飽和を保存しながら容易に除去できる、ベンジルとは異なる保護基により保護してもよく、例えば、リジン反応物をt-ブチルで保護してもよく(すなわち、反応物はリジンのt-ブチルエステルであってよく)、t-ブチルを酸での生成物(II)の処理により、不飽和を保存しながらHに変換してもよい。
【0071】
構造式(I)を有する化合物の実施例は、米国特許第6,503,538号の実施例1における(III)をビス(L-フェニルアラニン)2-ブテン-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩で置換することにより、または米国特許第6,503,538号の実施例1における(V)をフマル酸ジ-p-ニトロフェニルで置換することにより、または米国特許第6,503,538号の実施例1におけるIIIをビス(L-フェニルアラニン)2-ブテン-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩で置換することによりおよび同様に米国特許第6,503,538号の実施例1における(V)をフマル酸ビス-p-ニトロフェニルで置換することにより提供される。
【0072】
構造式(I)または(IV)のいずれかを有する不飽和化合物では、以下があてはまる。アミノ置換アミノキシル(N-オキシド)ラジカル保有基、例えば、4-アミノTEMPOを、縮合剤としてカルボニルジイミダゾール、または適当なカルボジイミドにより付着させることができる。本明細書において記述の、生物活性剤を、任意で二重結合官能基を介して付着させてもよい。ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートへの結合により、親水性を与えることができる。
【0073】
さらに別の局面において、本発明の重合体粒子送達系の生成での使用を企図するPEAおよびPEUR重合体には米国特許第5,516,881号; 同第6,476,204号; 同第6,503,538号に; ならびに米国特許出願第10/096,435号; 同第10/101,408号; 同第10/143,572号; および同第10/194,965号に記載のものが含まれ; これらのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
生分解性PEA、PEURおよびPEU重合体は、重合体分子あたり一つから複数の異なる眼科用化合物およびα-アミノ酸を含有してもよく、好ましくは10,000〜125,000の範囲の重量平均分子量を有し; これらの重合体および共重合体は典型的には、標準的な粘度測定法により測定した場合、25℃で0.3〜4.0の範囲、例えば、0.5〜3.5の範囲の固有粘度を有する。
【0075】
本発明の実践での使用を企図するPEAおよびPEUR重合体は、当技術分野において周知のさまざまな方法によって合成することができる。例えば、トリブチルスズ(IV)触媒はポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのようなポリエステルを生成するために一般的に使用される。しかしながら、本発明の実践で用いるのに適した重合体を生成するために、多種多様な触媒を使用できることが理解される。
【0076】
使用を企図するそのようなポリ(カプロラクトン)は下記の例示的な構造式(XIV)を有する。

【0077】
使用を企図するポリ(グリコリド)は下記の例示的な構造式(XV)を有する。

【0078】
使用を企図するポリ(ラクチド)は下記の例示的な構造式(XVI)を有する。

【0079】
アミノキシル部分を含む適当なポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)の例示的合成を以下に示す。第一段階は、構造式(XVII)の重合体を生成するための、触媒としてオクチル酸第一スズを用いたベンジルアルコールの存在下でのラクチドとε-カプロラクトンとの共重合を含む。

【0080】
次いで、ヒドロキシ末端重合体鎖を無水マレイン酸によりキャップして、構造式(XVIII)を有する重合体鎖を生成することができる。

【0081】
この時点で、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシをカルボキシル末端基と反応させて、4-アミノ基とカルボン酸末端基との間の反応により生じるアミド結合を介してアミノキシル部分を共重合体に共有結合させることができる。あるいは、マレイン酸キャップ共重合体にポリアクリル酸を接ぎ合わせて、その後のさらなるアミノキシル基の付着のためのさらなるカルボン酸部分を供与することができる。
【0082】
PEUのための構造式(VII)を有する不飽和化合物では、以下があてはまる。 アミノ置換アミノキシル(N-オキシド)ラジカル保有基、例えば、4-アミノTEMPOを、縮合剤としてカルボニルジイミダゾール、または適当なカルボジイミドにより付着させることができる。重合体組成物中の治療用ジオール残基が二重または三重結合を含有しないという条件で、本明細書において記述の、さらなる生物活性薬剤などを、二重結合官能基を介して任意で付着させてもよい。
【0083】
例えば、構造式(VII)を有する本発明の高分子量半結晶性PEUを、下記の反応スキーム(2)に示す通り、クロロホルム/水系においてビス-求電子単量体としてホスゲンを用いることで界面に調製することができる。

L-リジンエステルを含有するかつ構造式(VII)を有するコポリ(エステル尿素) (PEU)の合成を類似のスキーム(3)によって行うことができる。

例えば、トルエン中のホスゲン(ClCOCl) (高毒性)の20%溶液(市販されている(Fluka Chemie, GMBH, Buchs, Switzerland)をジホスゲン(クロロギ酸トリクロロメチル)またはトリホスゲン(ビス(トリクロロメチル)カーボネート)のいずれかで置き換えることができる。ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンの代わりに毒性の低いカルボニルジイミダゾールをビス-求電子単量体として使用することもできる。
【0084】
PEU合成の一般手順
高分子量のPEUを得るには、単量体の冷却溶液を用いる必要がある。例えば、水150 mL中のビス(α-アミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の懸濁液に、無水炭酸ナトリウムを加え、室温で約30分間撹拌し、約2〜0℃に冷却して第一溶液を生成する。並行して、クロロホルム中のホスゲンの第二溶液を約15〜10℃に冷却する。第一溶液を界面重縮合のための反応器に入れ、第二溶液を一度に速やかに加え、約15分間激しく撹拌する。次いで、クロロホルム層を分離し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過することができる。得られた溶液をさらなる使用のために保存することができる。
【0085】
作成した例示的なPEU重合体は全てクロロホルム中の溶液として得られ、これらの溶液は保存中安定である。しかし、いくつかの重合体、例えば、1-Phe-4は、分離後クロロホルムに不溶となる。この問題を克服するために、重合体を平滑な疎水性表面上にキャストし、クロロホルムを蒸発乾固させることにより、クロロホルム溶液から分離することができる。得られたPEUのさらなる精製は必要ない。この手順によって得られる例示的なPEUの収率および特徴を、本明細書の表1にまとめている。
【0086】
多孔性PEU調製の一般手順
一般式中にα-アミノ酸を含有するPEU重合体を作出する方法を次に記述する。例えば、式(I)または(III)の重合体の態様の場合、α-アミノ酸をビス(α-アミノ酸)-α,ω-ジオール-ジエステル単量体に、例えば、α-アミノ酸をジオールHO-R1-OHと縮合することにより変換することができる。結果として、エステル結合が形成される。次いで、炭酸の酸塩化物(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン)はビス(α-アミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩との重縮合反応に入れられ、エステルと尿素結合の両方を有する最終重合体を得る。本発明では、少なくとも一つの治療用ジオールを重縮合プロトコルにおいて使用することができる。
【0087】
不飽和PEUを、R1に少なくとも一つの二重結合を含む、ビス(α-アミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の界面溶液縮合により調製することができる。このために有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,4-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。不飽和単量体を反応前にアルカリ性水溶液、例えば、水酸化ナトリウム溶液に溶解することができる。次いで、水溶液を、等モル量の単量体、二量体または三量体ホスゲンを含有する有機溶媒層、例えばクロロホルムとともに、外部冷却下で激しく撹拌することができる。発熱反応が速やかに進行し、(ほとんどの場合)有機溶媒中に溶解したままの重合体をもたらす。有機層を水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、蒸発させることができる。収率約75%〜85%の不飽和PEUを、例えば約45℃で真空乾燥することができる。
【0088】
多孔性で、強い材料を得るため、両式(VII)の、1-L-Leu-4および1-L-Leu-6のようなL-Leuに基づくPEUを下記の一般手順により作成することができる。そのような手順は、L-Pheに基づくPEUに適用すると、多孔性で、強い材料の生成において成功率が低くなる。
【0089】
界面重縮合の直後に得られる、クロロホルム中のPEUの反応溶液または乳濁液(約100 mL)を、ガラスビーカー、好ましくはビーカー壁へのPEUの付着を減らすためにジメチルジクロルシランで疎水性としたビーカー中の約80℃〜85℃の水1,000 mLに撹拌しながら滴下する。重合体溶液を水中で小さい液滴に分散させ、クロロホルムをやや激しく蒸発させる。クロロホルムが蒸発するにつれ、徐々に、小さい液滴は一緒になって緻密なタール様の塊になり、これは粘着性のゴム様生成物に変換される。このゴム様生成物をビーカーから取り出し、疎水性化した円柱状ガラス試験管に入れ、これを約24時間サーモスタットで約80℃に制御する。次いで、試験管は、サーモスタットから取り出され、室温まで冷却され、重合体を得るために割られる。得られた多孔性の棒状物を真空乾燥機に入れ、約80℃にて約24時間、減圧下で乾燥する。さらに、多孔性重合体材料を得るために当技術分野において公知の任意の手順を使用することもできる。
【0090】
上記の手順により作出した高分子量の多孔性PEUの特性は、表2に要約の結果をもたらした。
【0091】
(表1)式(VII)および(VIII)のPEU重合体の特性

一般式(VII)のPEU、ここで、
1-L-Leu-4: R4=(CH2)4、R3=i-C4H9
1-L-Leu-6: R4=(CH2)6、R3=i-C4H9
1-L-Phe-6: R4=(CH2)6、R3=-CH2-C6H5
1-L-Leu-DAS: R4=1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール、R3=i-C4H
a) 粘性低下をDMF中25℃、濃度0.5 g/dLで測定した。
b) GPC測定をDMF、(PMMA)中で実施した。
c) DSC測定からの第二の加熱曲線から得たTg (加熱速度10℃/分)
d) GPC測定をDMAc、(PS)中で実施した。
【0092】
例示的な合成PEUの引張り強さを測定し、結果を表2にまとめている。引張り強さの測定結果はダンベル型PEUフィルム(4×1.6 cm)を用いて得た。このフィルムはクロロホルム溶液からキャストされた平均厚さ0.125 mmのもので、Nexygen FMソフトウェア(Amtek, Largo, FL)を用いるPCを組み込んだ引張り強さ測定器(Chatillon TDC200)上、クロスヘッド速度60 mm/分で、引張り試験に供した。本明細書において説明する例は、以下の機械的特性を有すると予想することができる。
1. 約30℃〜約90℃の範囲、例えば、約35℃〜約70℃の範囲のガラス転移温度。
2. 平均厚さ約1.6 cmの重合体のフィルムは、約20 Mpa〜約150 Mpa、例えば、約25 Mpa〜約60 Mpaの降伏時の引張り応力を有する;
3. 平均厚さ約1.6 cmの重合体のフィルムは、約10%〜約200%、例えば約50%〜約150%の伸び率を有する。 および
4. 平均厚さ約1.6 cmの重合体のフィルムは、約500 MPa〜約2000 MPaの範囲のヤング率を有する。下記表2にこの型の例示的なPEUの特性をまとめている。
【0093】
(表2)PEUの機械的特性

【0094】
別の態様において、本発明は、少なくとも一つの眼科用薬剤が分散され、混合され、溶解され、ホモジナイズされ、またはマトリックス化され(すなわち「分散され」)る担体層として少なくとも一つの生分解性の、生体適合性の重合体を含む一つまたは複数の固体層を含む固体重合体の眼内用送達組成物(solid polymer intraocular delivery composition)を提供する。二つもしくは複数の眼科用薬剤が担体層の中に分散されてもよく、または複数の担体層を有する本発明の組成物が二つもしくはそれ以上の眼科用薬剤を別個の担体層中へ分散させてもよい。
【0095】
一つの態様において、本発明は、かなりの長期間にわたる、例えば、3ヶ月〜約12ヶ月にわたる制御された速度での放出のための少なくとも一つの眼科用薬剤が分散されている、本明細書において記述の一般構造式(I)〜(IV〜VIII)により記述される化学式を有する少なくとも一つの生分解性の、生体適合性の重合体を含む、眼内移植のための固体重合体の眼内用送達組成物を提供する。任意で、本明細書において記述の、さらなる生物活性剤が少なくとも一つの重合体中に分散されていてもよい。組成物中の各種重合体層の生分解の結果として原位置で(すなわち、眼内に)組成物から、その中に存在する眼科用薬剤および任意の生物活性剤が放出される。
【0096】
固体重合体の眼内用送達組成物は、生分解性の、生体適合性の重合体の少なくとも一つのコーティング層をさらに含んでもよく、その層はその中にそのような眼科用薬剤を分散していてもまたはしていなくてもよい。重合体のコーティング層、例えば純粋な重合体殻の目的は、組成物中に含有される眼科用薬剤の放出を遅延することである。本明細書において記述する式(I)および(IV〜VIII)のPEA、PEURおよびPEU重合体は水を容易に吸収し、それを通して親水性分子が容易に拡散することを可能にする。この特徴によって、本発明の固体重合体組成物上のコーティングとして用いるのに適したそのようなPEA、PEURおよびPEU重合体は、そこからの少なくとも一つの生物活性剤の放出速度を制御する。
【0097】
本発明の固体重合体の眼内用送達組成物からの少なくとも一つの眼科用薬剤の放出速度は、組成物の各種層中の重合体の選択によってだけでなく、コーティングの厚さおよび密度を調節することによっても、ならびに本発明の組成物中に含有されるコーティング層の数によっても制御することができる。コーティング層の密度は、コーティング層での活性薬剤の負荷の調節によって調節することができる。例えば、コーティング層が生物活性剤を含有していない場合、重合体コーティング層は最も密であり、組成物の内部から眼科用薬剤または任意の生物活性剤がコーティング層を通して最もゆっくり溶離する。対照的に、眼科用薬剤または任意の生物活性剤がコーティング層中の生分解性の、生体適合性の重合体内に分散されている(すなわち、それと混合されまたは「マトリックス化」されている)場合、コーティング層の外面から始まって、コーティング層中の任意の活性剤が溶出されると、コーティング層は多孔性となる。多孔性コーティング層がこの過程によっていったん形成されると、固体組成物の担体層中の眼科用薬剤は増大した速度で溶離することができる。コーティング層中の活性剤の負荷が高くなるほど、コーティング層の密度はそれだけ低くなり、溶離速度はそれだけ高くなる。コーティング層中の活性剤の負荷は担体層中のそれよりも低いまたは高いこともあるが、制御された速度での眼科用薬剤の最も緩徐な持続的送達の場合、コーティング層は純粋な重合体殻である。本発明の組成物には複数の担体層だけでなく複数のコーティング層があってもよい。
【0098】
したがって、一つの態様において、本発明は、構造式(I)および(IV〜VIII)により記述される構造式を有する生分解性の、生体適合性の重合体中に分散された少なくとも一つの眼科用薬剤を含有する担体層と構造式(I)および(IV)により記述されるものなどの生分解性の、生体適合性の重合体を含む担体層を覆う少なくとも一つのコーティング層とを含む、眼科用薬剤の制御放出のための固体重合体組成物を提供する。製造上の便宜のために、コーティング層の重合体は担体層の重合体と同じものであってもよい。
【0099】
しかしながら、製造時、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物のコーティング層を作出するのに用いた重合体分散液中の溶媒は、たとえコーティング層の適用前に担体層が乾燥されたとしても、マトリックス化された眼科用薬剤を担体層の中から外に溶離する傾向があることが分かった。コーティング層を適用する際に用いた溶媒が担体層から生物活性剤のその負荷量を減らすのを防ぐため、本発明の組成物は、担体層と一つまたは複数のコーティング層のそれぞれとの間に障壁層をさらに含んでもよい。障壁層は、本発明の組成物においてコーティング層を固着させる重合体溶液または分散液中に使用される溶媒に溶解しない液体重合体を用いて作出されるが、この障壁層の重合体は生理的条件では、例えば水性条件および生理的酵素の存在下では溶解する。このように、本発明の組成物のコーティング層だけでなく障壁層も、担体重合体層からの眼科用薬剤の放出速度を制御するのに役立つ。
【0100】
ある種の態様において、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物は、障壁層およびコーティング層の一つまたは多数のセットを有し、コーティング層が最終組成物において各連続的であるセットの外側にあってもよい。その結果、担体層は障壁層およびコーティング層の保護セットの内側に隔離される。例えば、障壁層およびコーティング層の1〜10セット、例えば、1〜8セットが存在し、セットの数が組成物からの担体層中の眼科用薬剤の放出速度を決定付けてもよい。セットの数が大きいほどそれだけ緩徐な放出速度をもたらし、セットの数が小さいほどそれだけ迅速な放出速度をもたらす。
【0101】
一つの態様において、障壁層およびコーティング層のセットはサンドイッチ構造において担体層の両側に並列配置で配列されてもよく、両側にある障壁層およびコーティング層の二つのセットの中央に担体層を有する。別の態様において、層の多数のセットの外側に位置する連続的である層が全ての内部層を包含して、担体層が組成物の中央に隔離されたオニオンスキン構造を形成する。担体層の厚さならびに担体層中の一つまたは複数の眼科用薬剤(および任意の生物活性剤)の濃度は、移植時に組成物が送達できる各薬剤の総投与量を決定付ける。移植または生理的条件(例えば、水および酵素)へのインビトロでの曝露の後、外側の大部分の層のコーティングおよび障壁層は、接触と同時に生分解し始め、隔離された担体層からマトリックス化された生物活性剤が溶離する。内部担体層中の生物活性剤の濃度が減少するにつれ、生分解によって同様に組成物の表面積も減少する傾向があり、両作用は、生物活性剤の放出速度を制御された形で遅くする傾向がある。
【0102】
別の態様において、本発明の組成物は、上記のコーティングおよび障壁層の交互層または純粋な生分解性の、生体適合性の重合体の単一の外部コーティングを有するオニオンスキン構造に配列された担体および障壁の層の多数のセットを含む。この態様において、環境、例えば、眼内組織周囲の環境の水および酵素が、接触した外側の大部分のコーティングおよび障壁層を連続的に溶解して、連続的である担体層から眼科用薬剤を溶離し、それによって、重合体中にマトリックス化されうるか重合体主鎖の中に組み込まれうるかのいずれかの、眼科用薬剤を放出する。眼科用の活性剤の濃度がオニオンスキン構造の多層において実質的に一定である場合には、オニオンスキン構造の表面積が減少するのに比例して、送達速度は減少するであろう。マトリックス化された生物活性剤のより一定の送達速度を達成するには、この態様においてオニオンスキン構造における担体層中の生物活性剤の濃度勾配を利用し、組成物の表面積の減少に比例して内部の担体層により高い濃度を使用することが推奨される。必要に応じて、理論的な送達速度を計算するために、およびオニオンスキン構造の表面積が減少する場合の実質的に一定である送達速度を得るために、慣習的な流体力学の原理を使用できることを当業者は理解するであろう。
【0103】
さらに別の態様において、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物は、担体層周囲のオニオンスキンまたはサンドイッチ構造に配列されたさらなる重合体層を有する担体層を含む。一つの代替態様において、担体層およびコーティング層を、例えば、エアロゾルとしてスプレイすることによって形成された純粋な生分解性の、生体適合性の重合体の単一の外部コーティング層が存在してもよい。この構造は眼科用薬剤の迅速な放出のために厚さが0.1 mm〜2.5 mmの厚みを有する組成物に有利に働いた。別の代替態様において、いくつかのコーティング層がオニオンスキンまたはサンドイッチ構造における中核の担体層から外側に広がる。あるいは、より一定の送達速度を達成するために、多数の担体層が用いられてもよく、但しそれぞれの担体層がコーティング層で引き続きコーティングされるものとする。オニオンスキン構造における担体層中の生物活性分子の濃度勾配を達成するには、本発明の組成物の生分解時に組成物の表面積が減少するのと比例して眼科用分子の放出速度を維持できるように、内側の担体層には外側の担体層に比例してより高い濃度の眼科用分子を使用する。
【0104】
本発明の固体の眼内用重合体送達組成物(solid intraocular polymer delivery composition)は、典型的には、ウエハ、シートまたはフィルム、ボール、ディスク、円筒、繊維、管などのような、重合体の特性に適合し、かつ所与の眼科用薬剤および投与経路に対する治療かつ送達の要件を満たす三次元形状を有する。構成物は送達の要件および投与の位置にしたがってサイズ調整される。例えば、結膜下投与の場合、構成物のサイズは、約1 mm×1 mm×7 mmの長方形または皮下注射針を通じた注射に適した円筒よりも大きくないことが好ましいと考えられる。皮下注射針の口径の要件は投与の経路および位置と一致すべきであり、例えば、結膜下投与の場合、注射針の口径は約18〜約25ゲージとすべきである。
【0105】
本発明の固体の眼内用重合体送達組成物は任意で、意図した投与経路の範囲ではない他の位置への構成物の移動を阻止するために、縫合糸タブのような、投与部位の眼組織に固体組成物を固定するための手段をさらに含んでもよい(例えば、含むよう作成されてもよい)。
【0106】
本発明の固体重合体の眼内用送達組成物は、処置が眼科用薬剤の放出を必要とする状態に応じて、約24時間、約7日間、約30日間もしくは約90日間から、またはそれ以上、例えば最大3年間までの範囲にわたって眼科用薬剤を放出することができる。一つの態様において、この範囲は約1〜2日間から最大約6ヶ月までである。例えば、眼後方への眼科用薬剤の送達(例えば、AMDを処置するため)の場合、本発明の固体組成物は約6ヶ月間にわたって適当な眼科用薬剤の有効量を放出する。
【0107】
本発明の固体組成物は、組成物の重量の約0.1%から最大99.9%までの範囲の濃度で存在する眼科用薬剤を有することができる。さらに、本発明の固体組成物は、少なくとも一つの方法による、好ましくは多数の方法、例えば、蒸気法、γ線法、e放射法などによる、最終段階の滅菌に耐えることができる。
【0108】
一つの態様において、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物は、5℃で、好ましくは25℃ (室温)で最低2年間物理的におよび化学的に安定でありうる。
【0109】
好ましい固体形状はディスクおよび円筒であるが;しかしながら、ディスク、シート、フィルム、繊維または管のような任意の好都合な三次元形状を使用することができる。流体力学の当業者は、固体組成物の形状の選択も、本発明の組成物からの生物活性剤の溶離速度に影響を与えることを理解するであろう。インプラントは外科手術時に留置されうるので、皮下注射針または薬学的送達注射針の内部口径に沿って適合するようサイズ調整された円筒または長方形が外科手術時の留置には適当でありうる。一般に、内部送達のための本発明の組成物は、約1 mm×1 mm×約7 mmよりも大きくない寸法を有する。しかしながら、局所適用の場合、サイズはもっと大きくてもよい。例えば、シートが使用される場合には、シートは眼の表面への適用に適した任意のサイズ、例えば、およそ眼の外部の寸法、または約25 mm×25 mmを持ちうる。
【0110】
なおさらなる態様において、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物は多孔性固体である。本発明の重合体組成物の「多孔性固体」の作成は、この用語が本明細書において用いられる場合、1:1を超える、表面積の容量に対する比を有する組成物を意味する。下記のように、本発明の固体重合体組成物の最大の多孔率は、その形状および作成方法に依るであろう。重合体の中に細胞増殖用の細孔または「足場」を作出するための種々の方法のどれでも、本発明に関連して使用することができる。多孔性固体として本発明の組成物を作成するための方法の以下の例は、例証であり、限定することを意図するものではない。
【0111】
最初の例において、固体重合体送達組成物が組成物の層を貫く細孔の切断によって、例えばレーザー切断またはエッチング、例えば反応性イオンエッチングによって形成された後に、組成物の多孔率は達成される。例えば、短波長UVレーザーエネルギーは、本発明の重合体組成物のきれいな切断、穿孔および成形のためにはエッチングよりも優れている。マサチューセッツ工科大学(MIT)によって最初に開発されたUVレーザー技術は、各レーザーパルスによる「フォトアブレーション」プラズマプルームとして微細かつ一定量の材料の除去を可能とし、きれいに刻まれた細孔、またはチャネルを残す。UVエキシマレーザービームに特有の大きなサイズは、これが近視野像技術により多重ビームレットに分離されるのを可能にし、したがって、例えば、多数の細孔が各レーザーパルスによって同時に穿孔されうる。画像技術もサブミクロン分解能を可能にし、したがってナノ特性を効果的に制御かつ成形することができる。例えば、細孔の厚さ50マイクロメートルで、足場の厚さ250マイクロメートルおよびチャネルの深さ200マイクロメートルのマイクロマシニングは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドにこの技術を用いて達成された。
【0112】
さらに別の例において、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物の多孔率は、ガスのような孔形成物質、または熱もしくは湿気に曝露された場合にガスを放出する孔形成物質(すなわち、ポロゲン)を、本発明の送達組成物の各種層のキャストまたはスプレイにおいて使用される重合体分散液および溶液に加えることによって達成される。そのような孔形成物質は当技術分野において周知である。例えば、重炭酸アンモニウム塩粒子は溶媒蒸発によって凝固重合体マトリックスのなかにアンモニアおよび二酸化炭素を放出する。この方法は、気泡によって内部に空胞が形成された層を有する生成物送達組成物をもたらす。重合体マトリックス内での細孔の拡大は、細胞の高密度の内方増殖に理想的な、例えば、300〜400 μm前後の平均孔径を有する、十分に相互接続したマクロ多孔性の足場をもたらす。(Y.S. Nam et al., Journal of Biomedical Materials Research Part B: Applied Biomaterials (2000) 53(1):1-7)。重合体中に細孔を作出するための当技術分野において公知のさらなる技術は、溶媒キャストと粒子浸出の組み合わせ、および凍結乾燥法と組み合わせた温度誘導性相分離である。
【0113】
別の態様において、送達組成物の各層を微細重合体繊維の絡まりとして基材または組成物の前層の上にキャストし(例えば、電界紡糸法によって紡ぎ)、したがって層の乾燥により重合体のマットまたはパッドが形成される。電界紡糸法は約1 kV/cmの電界中で液滴を紡ぐことによって重合体溶液、固体粒子の懸濁液および乳濁液から、100 nmおよびさらにそれ未満の範囲の直径を有する重合体繊維を生み出す。電気力は重合体溶液の帯電噴流を液滴先端から流出させる。噴流がほぼ一直線に液滴から流れ出た後に、液滴は複雑な経路へ曲がって、その他の変形が起こり、その間に電気力は非常に大きな比率で液滴を引き延ばし、細くする。溶媒が蒸発した後に、凝固したマクロからナノ繊維が残る(D.H. Reneker et al. Nanotechnology (1996) 7:216-223)。
【0114】
以下は、固体重合体の長方形ストリップの上記3つの例示的な作成方法について予測できる多孔率の範囲の推定を例証する。
ここで、SA = 作成の表面積; V = 作成の容積; Vp = 固体重合体の容積; Nv = 孔の総数; R = 孔の平均半径; ならびに
ここで、


P - 多孔率はVv/Vpにより定義される 式3。
【0115】
固体フィルムの標準的な長方形ストリップの多孔率
半径Rの重合体の球形に対し、SA/V = 単位長さRあたり3。
1 cm3の重合体固体ブロックに対し、SA/V = 6 cm-1、すなわち単位長さあたり6。
1 cm3の固体重合体ブロックが1 mm×1 cm×10 cmのストリップに圧縮される場合には、以下があてはまる: SA/V = 2.04またはおよそ2 mm-1およびV = 1000 mm3 = 1 cm3 (立方形では)
したがって、SA = 22.2 cm2およびSA/V = およそ22.2 cm-1。上記の各種作成の場合、孔の表面積 対 容積比(Sv/Vv)は、空隙数Nvを計算する必要性を回避するために、多孔率(P)に関して計算される。
【0116】
同等の、しかし多孔性のストリップまたはフィルムの計算
Sv/VvはP=1なら最も単純にSA/Vに関連しうる: P=1の場合、Vv = Vp = V/2。
Sv>>SAという実用的近似がなされるなら、SA/V = およそ2Sv/Vp = 定数k=2の場合k(Sv/Vp)。P>1なら、いずれの場合にもSv/VpはPとともに直線的に増加し、SA/V = およそkP(Sv/Vp)。
【0117】
ドリル穴(円筒状細孔)を有するフィルム
各ドリル穴に対し、

各ドリル穴に対し、

多孔率に関して表すと、各ドリル穴に対し、

ここでTはフィルムの厚さである。
したがって、

かつ、


【0118】
P=1の場合、Vv = Vp = V/2およびSv/V = 1/R - 1/T = およそSA/V。したがって、上記の標準的なストリップ(T = 0.1 cm、V = 1 cm3)にドリルで開けた直径200 μmの穴(R = 0.01 cm)の場合:
SA/V = 90 cm-1 = 4.5[固体ストリップに対する(SA/V)]。同様に、上記直径の半分(R = 0.005 cm)の穴の場合: SA/V = 190 cm1 = 9.5[固体ストリップに対する(SA/V)]。
【0119】
P>1の場合、本質的に二次元のフィルムの完全性は、多くの用途の場合、損なわれうる。しかしながら、多孔率の理論的上限は以下のように推定することができる。
【0120】
100 μmの穴、および多孔率90%の場合、SA/Vの推定はP (上記式からの)に直線的に比例する。 SA/V = 99.5[固体ストリップに対する(SA/V)] = 85.5*[固体ストリップに対する(SA/V)]; これはSA/Vの上限およそ100×を示唆する。
【0121】
スポンジ(気泡から形成された)の場合
平均半径Rの球状孔の推測:


【0122】
P=1なら: Sv/Vp = 3/R = およそSA/V。細孔の平均直径が200 um (R = 0.01 cm)であるなら、Sv/Vp = 3102 = 300 cm-1 = およそ15[固体ストリップに対する(SA/V)]。ドリル穴とは異なり、スポンジは非常に小さな細孔で作出することができる: 細孔の平均直径が200 nm (R = 110-5 cm)であるなら、Sv/Vp = 3105 cm-1 = およそSA/V = 15,000[固体ストリップに対する(SA/V)]。この場合もまた、Sv/Vpは多孔率Pに直線的に比例する。
【0123】
P>1であるなら: 多孔率90%の場合、SA/V = およそ915,000[固体ストリップに対する(SA/V)]; これはPの多孔率上限およそ150,000×を示唆する。
【0124】
繊維状(電界紡糸)織物の場合
この作成方法に対するSA/Vの上限を概算する最も簡単な方法は、立方の細孔の線寸法2Rが交互配置(interleaving)の重合体シートの厚さと同じの正方格子をかたどることである。その結果、Sv/Vp = 3/2R。さらに、この最も簡単なモデルを逓増的Vv/Vp (すなわち、逓増的多孔率、P)にまで広げることで、Sv/Vp = 3P/2Rを得る。
【0125】
P=1なら: 直径200 nmの繊維の場合(R = 110-5 cm)、Sv/Vp = 3P//2R = (31)/2110-5 cmまたはおよそSA/V = 7,500*[固体ストリップに対する(SA/V)]。
【0126】
P>1なら: 多孔率90%の場合、SA/V = およそ97,500[固体ストリップに対する(SA/V)]; これはこの場合もまた、Pの上限およそ70,000×を示唆する。
【0127】
さらにまた要約すると、薬物溶出性フィルムに対する表面積 対 容積比の最も広い想定範囲は3〜(150,000×20) cm-1; すなわち3〜3,000,000 (3 M) cm-1である。この範囲は拡大縮小可能であり;非常に小さな固体がミリメートルの寸法で作出される場合には、SA/Vは3〜3 M mm-1に及びうる。したがって、一般に、範囲の上限は単位長さあたり3〜3 Mである。つまり、想定される最も多孔性の材料は同等の固体球の最大100万倍までの表面積 対 容積比を有することができる
【0128】
しかしながら、当業者は、実際には、本発明の重合体固体組成物の多孔率は、該組成物が対象とする特定用途の強度要件に照らして考慮されるべきであり、より大きな多孔率は重量のかからない(non-weight bearing)用途に適当であることを理解するであろう。
【0129】
ステンレス鋼、またはディスクのような任意の形状、好ましくは平面のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材のような任意の固体基材を、本発明の固体重合体の眼内用送達組成物を構成するさまざまな重合体層のキャストまたはスプレイに使用することができる。例えば、一つの態様において、本発明の組成物は、液体の重合体溶液または分散液をステンレス鋼のディスクまたはポリ(テトラフルオロエチレン)基材上にピペッティングすることにより形成される重合体層のサンドイッチとして形成される。この基材は本発明の組成物の製造時にはそのまま放置され、その後、使用前のどの時点で取り除かれてもよい。
【0130】
生物活性剤は重合体担体への化学結合なしに重合体マトリックス内に分散されてもよいが、生物活性剤または被覆分子を多種多様の適当な官能基を介して生分解性重合体に共有結合できることも企図される。例えば、生分解性重合体がポリエステルである場合、カルボキシル基鎖末端を用いて、ヒドロキシ、アミノ、チオなどの、生物活性剤または被覆分子の相補的部分と反応させることができる。多種多様の適当な試薬および反応条件が、例えば、March's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, (2001); およびComprehensive Organic Transformations, Second Edition, Larock (1999)に開示されている。
【0131】
他の態様において、生物活性剤を、本明細書において記述のPEA、PEURまたはPEU重合体にアミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィド結合によって結合することができる。そのような結合は適当に官能化された出発物質から、当技術分野において公知の合成手順を用いて形成することができる。
【0132】
例えば、一つの態様において、重合体を生物活性剤に、重合体の末端またはペンダントカルボキシル基(例えば、COOH)を介して結合することができる。例えば、構造IV、VIおよびVIIIの化合物を生物活性剤のアミノ官能基またはヒドロキシル官能基と反応させて、それぞれ、アミド結合またはカルボン酸エステル結合を介して生物活性剤が付着されている生分解性重合体を供与することができる。別の態様において、重合体のカルボキシル基をハロゲン化アシル、酸無水物/「混合」無水物、または活性エステルに変換またはベンジル化することができる。他の態様において、重合体分子の遊離-NH2末端をアシル化して、生物活性剤が重合体の遊離末端ではなく、重合体のカルボキシル基を介してのみ付着することを確実にすることができる。
【0133】
本明細書に記述の、ポリ(エチレングリコール) (PEG); ホスファチジルコリン(PC); ヘパリンを含むグリコサミノグリカン; ポリシアル酸を含む多糖; ポリセリン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジンおよびポリアルギニンを含むポリ(イオン性または極性アミノ酸); キトサンおよびアルギネートのような水溶性被覆分子、ならびに抗体、抗原およびリガンドのような標的化分子は、粒子の生成後に粒子外部の重合体に結合されて、生物活性剤が占有していない活性部位を遮断することも、または当技術分野において公知であるように特定の身体部位への粒子の送達を標的化することもできる。一つの粒子上のPEG分子の分子量は約200〜約200,000の範囲の実質的にいかなる分子量でもよく、その結果、粒子に付着している種々のPEG分子の分子量は変化しうる。
【0134】
あるいは、生物活性剤または被覆分子は、例えば、構造式(XI、XII)に記述の、リンカー分子を介して重合体に付着されてもよい。実際に、生分解性重合体の表面の疎水性を改善するため、酵素活性化に向けた生分解性重合体の到達性を改善するため、および生分解性重合体の放出プロファイルを改善するため、リンカーを用いて、生物活性剤を生分解性重合体に間接的に付着させてもよい。ある種の態様において、リンカー化合物は、約44〜約10,000、好ましくは44〜2000の分子量(MW)を有するポリ(エチレングリコール); セリンのようなアミノ酸; 1〜100の反復数を有するポリペプチド; およびその他任意の適当な低分子量重合体を含む。リンカーは典型的には、生物活性剤を重合体から約5オングストロームから最大約200オングストローム分だけ隔てる。
【0135】
なおさらなる態様において、リンカーは式W-A-Qの二価の基であり、ここでAは(C1〜C24)アルキル、(C2〜C24)アルケニル、(C2〜C24)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、または(C6〜C10)アリールであり、かつWおよびQはそれぞれ独立して-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、ここで各Rは独立してHまたは(C1〜C6)アルキルである。
【0136】
上記のリンカーを記述するために用いられる場合、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどを含む、直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0137】
リンカーを指すよう本明細書において用いられる場合、「アルケニル」とは、一つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。
【0138】
リンカーを指すよう本明細書において用いられる場合、「アルキニル」とは、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。
【0139】
リンカーを指すよう本明細書において用いられる場合、「アリール」とは、6個から最大14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基を指す。
【0140】
ある種の態様において、リンカーは約2個から最大約25個のアミノ酸を有するポリペプチドであってもよい。使用を企図する適当なペプチドは、ポリ-L-グリシン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-セリン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リジン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リジン-L-チロシンなどを含む。
【0141】
一つの態様において、生物活性剤は重合体を共有結合により架橋することができ、すなわち、生物活性剤は複数の重合体分子に結合される。この共有結合性架橋は、さらなる重合体-生物活性剤リンカーを用いてまたは用いないで行われることができる。
【0142】
生物活性剤分子は、二つの重合体分子間の共有結合によって分子内架橋に組み込まれることもできる。
【0143】
直鎖重合体ポリペプチド結合体は、ポリペプチド主鎖の求核剤の可能性がある部分を保護し、重合体または重合体リンカー構築物に結合される反応基を一つだけ残すことにより作出される。脱保護はペプチドの脱保護について当技術分野において周知の方法(例えば、BocおよびFmoc化学反応)にしたがって行われる。
【0144】
本発明の一つの態様において、ポリペプチド生物活性剤はレトロ-インベルソまたは部分的レトロ-インベルソペプチドとして提示される。
【0145】
他の態様において、生物活性剤をマトリックス中で光架橋可能な重合体型と混合し、架橋後、約0.1〜約10 μmの範囲の平均直径にまで材料を分散(粉砕)する。
【0146】
リンカーは、最初に、重合体にまたは生物活性剤にまたは被覆分子に結合されてもよい。合成時、リンカーは保護されていない形態であっても、または当業者に周知のさまざまな保護基を用いて、保護された形態であってもよい。保護されたリンカーの場合、リンカーの非保護末端を重合体または生物活性剤または被覆分子に最初に付着させることができる。その後、保護基をPd/H2水素化分解、弱酸もしくは塩基加水分解、または当技術分野において知られているその他任意の一般的な脱保護法を用いて脱保護することができる。脱保護されたリンカーを次いで、生物活性剤もしくは被覆分子に、または重合体に付着させることができる。
【0147】
本発明による生分解性重合体の例示的な合成(付着される分子はアミノキシルである)を以下に示す。
【0148】
ポリエステルをアミノ置換アミノキシル(N-オキシド)ラジカル保有基、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと、N,N'-カルボニルジイミダゾールの存在下で反応させて、ポリエステル鎖末端のカルボキシル基中のヒドロキシル部分をアミノ置換アミノキシル-(N-オキシド)ラジカル保有基に置き換えることができ、したがってアミノ部分がカルボキシル基のカルボニル残基の炭素に共有結合してアミド結合を形成する。N,N'-カルボニルジイミダゾールまたは適当なカルボジイミドは、ポリエステルの鎖末端のカルボキシル基中のヒドロキシル部分を、アミノキシル、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応する中間体生成物の部分に変換する。アミノキシル反応物は、典型的には反応物:ポリエステルを1:1〜100:1の範囲のモル比で用いられる。N,N'-カルボニルジイミダゾール:アミノキシルのモル比は、好ましくは約1:1である。
【0149】
典型的な反応は下記の通りである。ポリエステルを反応溶媒に溶解し、溶解に用いられた温度で反応は容易に行われる。反応溶媒はポリエステルが溶解するいかなるものであってもよい。ポリエステルがポリグリコール酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド) (グリコール酸のL-乳酸に対する単量体モル比が50:50を上回る)である場合、115℃〜130℃の高精製(純度99.9+%)ジメチルスルホキシドまたは室温のDMSOがポリエステルを適当に溶解する。ポリエステルがポリ-L-乳酸、ポリ-DL-乳酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド) (グリコール酸のL-乳酸に対する単量体モル比が50:50または50:50を下回る)である場合、室温から40〜50℃のテトラヒドロフラン、ジクロロメタン(DCM)およびクロロホルムがポリエステルを適当に溶解する。
【0150】
重合体-生物活性剤の結合
一つの態様において、本明細書において記述の本発明の重合体粒子送達組成物を作出するのに使用される重合体は、一つまたは複数の生物活性剤が重合体に直接結合されている。重合体の残基は一つまたは複数の生物活性剤の残基に結合することができる。例えば、重合体の一つの残基を生物活性剤の一つの残基に直接結合することができる。重合体および生物活性剤はそれぞれ、一つの空き原子価を有することができる。あるいは、複数の生物活性剤、複数の生物活性剤、または異なる治療的もしくは緩和的活性を有する生物活性剤の混合物を重合体に直接結合することができる。しかしながら、各生物活性剤の残基は対応する重合体残基に結合されうるので、一つまたは複数の生物活性剤の残基の数は重合体の残基上の空き原子価の数に対応しうる。
【0151】
本明細書において用いられる場合、「重合体の残基」とは、一つまたは複数の空き原子価を有する重合体の基を指す。この基が生物活性剤の残基に付着される場合に生物活性は実質的に保持されるという条件で、本発明の重合体(例えば、重合体主鎖またはペンダント基上)の任意の合成的に実現可能な原子または官能基は、空き原子価を供与するために除去することができる。さらに、この基が生物活性剤の残基に付着される場合に生物活性は実質的に保持されるという条件で、任意の合成的に実現可能な官能基(例えば、カルボキシル)を重合体上(例えば、重合体主鎖またはペンダント基上)に作出して、空き原子価を供与することもできる。望まれる結合に基づき、当業者は、当技術分野において公知である手順により本発明の重合体から誘導されうる適当に官能化された出発材料を選択することができる。
【0152】
本明細書において用いられる場合、「構造式()の化合物の残基」とは、一つまたは複数の空き原子価を有する本明細書において記述の重合体式(I)および(IV〜VIII)の化合物の基を指す。この基が生物活性剤の残基に付着される場合に生物活性は実質的に保持されるという条件で、化合物(例えば、重合体主鎖またはペンダント基上)の任意の合成的に実現可能な原子または官能基を除去して、空き原子価を供与することができる。さらに、この基が生物活性剤の残基に付着される場合に生物活性は実質的に保持されるという条件で、任意の合成的に実現可能な官能基(例えば、カルボキシル)を式(I)および(IV〜VIII)の化合物(例えば、重合体主鎖またはペンダント基)上に作出して、空き原子価を供与することもできる。望まれる結合に基づき、当業者は、当技術分野において公知である手順により式(I)および(IV〜VIII)の化合物から誘導されうる適当に官能化された出発材料を選択することができる。
【0153】
例えば、生物活性剤の残基を構造式(I)または(IV〜VIII)の化合物の残基に、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-もしくは-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-もしくは-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接(例えば、C-C結合)結合によって結合することができ、ここで各Rは独立してHまたは(C1〜C6)アルキルである。そのような結合は、当技術分野において公知である合成手順を用いて、適当に官能化された出発材料から形成することができる。望まれる結合に基づき、当業者は、当技術分野において公知である手順により構造式(I)または(IV〜VIII)の化合物の残基から、および生物活性剤またはアジュバントの所与の残基から誘導されうる適当に官能性の出発材料を選択することができる。生物活性剤またはアジュバントの残基を構造式(I)または(IV)の化合物の残基の、任意の合成的に実現可能な位置に結合することができる。さらに、本発明は同様に、生物活性剤またはアジュバント生物活性剤の複数の残基が構造式(I)または(IV)の化合物に直接結合されている化合物を提供する。
【0154】
重合体分子に結合されうる生物活性剤の数は典型的には、重合体の分子量に依存しうる。例えば、nが約5〜約150、好ましくは約5〜約70である構造式(I)の化合物の場合、生物活性剤を重合体の側基と反応させることにより、最大約150までの生物活性剤分子(すなわち、その残基)を重合体(すなわち、その残基)に直接結合することができる。不飽和重合体では、生物活性剤を重合体中の二重(または三重)結合と反応させることもできる。
【0155】
重合体分子に結合されうる生物活性剤の数は典型的には、重合体の分子量に依存しうる。例えば、nが約5〜約150、好ましくは約5〜約70である構造式(I)の飽和化合物の場合、生物活性剤を重合体の側基と反応させることにより、最大約150までの生物活性剤(すなわち、その残基)を重合体(すなわち、その残基)に直接結合することができる。不飽和重合体では、生物活性剤を重合体中の二重(または三重)結合と反応させることもできる。
【0156】
一つの態様において、PEA、PEURおよびPEU重合体、ならびにその混合物またはブレンドは、一貫性かつ信頼性のある形での少なくとも一つの眼科用薬剤の持続放出のための生分解性重合体粒子の眼内用送達組成物(biodegradable polymer particle intraocular delivery composition)を製剤化するために使用することができる。これらの重合体粒子の送達組成物は同様に、重合体粒子中の重合体の生分解による一貫性かつ信頼性のある形での重合体の主鎖からの生物活性剤の持続放出のために重合体の主鎖に眼科用ジオール、または治療用ジオールもしくはジ酸の残基を組み込むことができる。
【0157】
本明細書において記述のPEA、PEURおよびPEU重合体は水分を吸収し(重合体フィルム上で5〜25% w/wの水分取込み)、親水性分子がそれを通して容易に拡散するのを可能にする。この特徴によって、これらの重合体は、放出速度を制御するための粒子上のオーバーコーティングとして用いるのに適している。水分吸収は重合体、およびそのような重合体に基づく重合体粒子送達組成物の生体適合性も増強する。さらに、PEA、PEURおよびPEU重合体の親水性により、眼内に送達される場合、粒子は、特にインビボの温度で、粘着性となり、凝集する。したがって、重合体粒子は、局所送達のために眼内に注射された場合に、重合体貯蔵物を自発的に形成する。体内で効率的に循環しないサイズの、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲の平均直径を有する粒子が、眼内にそのような重合体貯蔵物を形成するのに適している。
【0158】
眼内用重合体粒子送達組成物を作出する方法
本発明の眼内用重合体送達組成物で用いるのに適した粒子は、不混和性溶媒技術を用い、ならびに本明細書においておよびそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる2005年5月25日付で出願された同時係属中の米国特許出願第60/684,670号; 2005年11月14日付で出願された同第60/737,401号; 2005年6月3日付で出願された同第60/687,570号; 2006年1月13日付で出願された同第60/759,179号(Atty Docket MEDIV2070-1); 2005年9月22日付で出願された同第60/719,950号において記述のように作出することができる。一般に、これらの方法は二つの不混和性液体の乳濁液の調製を伴う。一重乳化法を用いて、少なくとも一つの疎水性生物活性剤を組み込んだ重合体粒子を作出することができる。一重乳化法では、粒子に組み込まれる生物活性剤を最初に溶媒中の重合体と混合し、次いで界面活性剤のような表面安定剤とともに水溶液中で乳化する。このようにして、疎水性生物活性剤の結合体を有する重合体粒子を形成し、水溶液に懸濁し、この粒子中の疎水性結合体は水溶液への著しい溶離なしに安定であるが、このような分子は筋組織などの体組織内に溶離するであろう。
【0159】
ポリペプチド、タンパク質、DNA、細胞などを含むほとんどの生物製剤は、親水性である。二重乳化法を用いて、内部水相を有する重合体粒子およびその中に分散された親水性生物活性剤を作出することができる。二重乳化法では、水相または水に溶解された親水性生物活性剤を、最初に重合体親油性溶液に乳化して一次乳濁液を形成し、次いで、一次乳濁液を水に入れ再度乳化して、連続的である重合体相および分散相中の水性生物活性剤を有する粒子が形成されている、二次乳濁液を形成する。どちらの乳化法でも界面活性剤および添加剤を用いて、粒子の凝集を防ぐことができる。水に混和しないクロロホルムまたはDCMがPEAおよびPEUR重合体の溶媒として使用されるが、調製の後半に、当技術分野において公知の方法を用いて、溶媒は除去される。
【0160】
しかしながら、水溶性が低いある種の生物活性剤の場合、これらの二つの乳化法は限界がある。この文脈において、「低い水溶性」とは、タキソールのような真に親油性の薬物よりは疎水性が低いが、多くの生物製剤のような真に水溶性の薬物よりも親水性が低い生物活性剤を意味する。これらのタイプの中間体化合物は一重乳濁液粒子への高い負荷および安定なマトリックス化のためには親水性が高すぎるが、二重乳濁液内の高い負荷および安定性のためには疎水性が高すぎる。そのような場合、重合体層を重合体および水溶性が低い薬物でできた粒子上に、三回の乳化工程によりコーティングする。この方法では薬物負荷は比較的低くなる(約10% w/w)が、構造安定性および制御された薬物放出速度が得られる。
【0161】
三重乳化工程では、一次乳濁液は、生物活性剤を重合体溶液に混合し、次いで混合物を界面活性剤またはジ-(ヘキサデカノイル)ホスファチジルコリン(DHPC; 天然脂質の短鎖誘導体)のような脂質とともに水溶液中で乳化することによって作出する。このようにして、活性薬剤を含有する粒子を形成し、水中に懸濁して、一次乳濁液を形成する。二次乳濁液は、一次乳濁液を重合体溶液の中に入れ、混合物を乳化することによって形成し、重合体溶液のなかで内部に重合体/薬物粒子を含む水滴が形成される。水および界面活性剤または脂質は、粒子を分離し、粒子を重合体溶液に溶解する。次いで、三次乳濁液は、二次乳濁液を界面活性剤または脂質を含む水の中に入れ、混合物を乳化して水中に最終の粒子を形成することによって形成される。得られる粒子構造は中心に重合体と生物活性剤でできた一つまたは複数の粒子を有し、これらは水および界面活性剤または脂質のような表面安定剤で取り囲まれ、純粋な重合体殻で覆われることになる。表面安定剤および水は、重合体コーティング中の溶媒がコーティング内の粒子と接触し、それらを溶解するのを防ぐであろう。
【0162】
三重乳化法により生物活性剤の負荷を増大するため、重合体コーティングをせず、生物活性剤を水に溶解せずに、水溶性が低い活性薬剤を一次乳濁液中の表面安定剤でコーティングすることができる。この一次乳濁液において、水、表面安定剤および活性薬剤は、類似の容積、またはそれぞれ(1〜3):(0.2〜約2):1の範囲の容積比を有する。この場合、活性薬剤を溶解するためではなく、表面安定剤の助けにより生物活性剤を保護するために水を使用する。次いで、二重および三重乳濁液を上記のように調製する。この方法では最大50%の薬物負荷をもたらすことができる。
【0163】
あるいはまたはさらに、上記の一重、二重または三重乳化法では、重合体を用いて粒子を作出する前に、生物活性剤を本明細書において記述の重合体分子に結合させてもよい。あるいは、粒子の生成後に生物活性剤を本明細書において記述の粒子外部の重合体に結合させてもよい。
【0164】
多くの乳化技術は上記の乳濁液を作出するうえで役立つであろう。しかしながら、乳濁液を作出するのに現在のところ好ましい方法は、水に混和しない溶媒の使用によるものである。例えば、一重乳化法では、乳化手順は重合体を溶媒で溶解する段階、生物活性剤分子と混合する段階、水に入れる段階、次いで混合器および/または超音波処理器で撹拌する段階からなる。粒径は、撹拌速度ならびに/または重合体、生物活性剤および表面安定剤の濃度を制御することによって制御することができる。コーティングの厚さは、二次乳濁液と三次乳濁液との比率を調節することによって制御することができる。
【0165】
適当な乳化安定剤はモノオレイン酸マンニド、デキストラン70,000、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリコールエーテルなどのような非イオン性界面活性剤を含むことができ、これらは全て、例えば、Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.から容易に購入可能である。界面活性剤は約0.3%〜約10%、好ましくは約0.5%〜約8%、より好ましくは約1%〜約5%の濃度で存在する。
【0166】
本発明の組成物からの少なくとも一つの生物活性剤の放出速度は、コーティングの厚さ、粒径、構造およびコーティングの密度を調節することによって制御することができる。コーティングの密度は、コーティングに結合される生物活性剤の負荷を調節することによって調節することができる。例えば、コーティングが生物活性剤を含有していない場合、重合体コーティングは最も密であり、粒子の内部から生物活性剤がコーティングを通して最もゆっくり溶離する。対照的に、生物活性剤がコーティング中の重合体に負荷されている(すなわち、それと混合されもしくは「マトリックス化」されている)、または結合されている場合、コーティングの外面から始まって、生物活性剤が重合体から解き放たれ、溶出されると、コーティングは多孔性となる。したがって、粒子の中心の生物活性剤はより高い速度で溶離することができる。コーティング中の生物活性剤の負荷が高くなるほど、コーティング層の密度はそれだけ低くなり、溶離速度はそれだけ高くなる。コーティング中の生物活性剤の負荷は、外部コーティング下の粒子の内部中のそれよりも低いまたは高いこともある。粒子からの生物活性剤の放出速度は、前述のように調製した異なる放出速度の粒子を混合することによって制御することもできる。
【0167】
二重および三重乳化重合体を作出する方法の詳細な記述は、Pierre Autant et al, Medicinal and/or nutritional microcapsules for oral administration, 米国特許第6,022,562号; Iosif Daniel Rosca et al., Microparticle formation and its mechanism in single and double emulsion solvent evaporation, Journal of Controlled Release 99 (2004) 271-280; L. Mu, S.S. Feng, A novel controlled release formulation for the anticancer drug paclitaxel (Taxol): PLGA nanoparticles containing vitamin E TPGS, J. Control. Release 86 (2003) 33-48; Somatosin containing biodegradable microspheres prepared by a modified solvent evaporation method based on W/O/W-multiple emulsions, Int. J. Pharm. 126 (1995) 129-138およびF. Gabor, B. Ertl, M. Wirth, R. Mallinger, Ketoprofenpoly(d,l-lactic-co-glycolic acid) microspheres: influence of manufacturing parameters and type of polymer on the release characteristics, J. Microencapsul. 16 (1) (1999) 1-12のなかで見出すことができ、それぞれその全体が本明細書に組み入れられる。
【0168】
水溶性生物活性剤の送達のためのなおさらなる態様において、血液循環への送達のために粒子を約20 nm〜約200 nmの平均直径を有するナノ粒子に作出することができる。ナノ粒子は、活性薬剤をその中に分散されて、すなわち、本明細書において記述のように乳濁液中に混合されて、または重合体に結合されて、一重乳化法により作出することができる。ナノ粒子は、生物活性剤が結合されたPEAおよびPEURのような、本明細書において記述の重合体を含有するミセル組成物として供与することもできる。あるいはまたは重合体に結合された生物活性剤に加えて、ミセルは水中で形成されるので、水溶性生物活性剤を溶媒なしで同時にミセルの中に負荷してもよい。
【0169】
より詳しくは、生分解性ミセルは、水溶性重合体鎖に結合された疎水性重合体鎖の形を成す。ミセルの外側部分は主に、重合体の水溶性イオン化部分または極性部分からなる一方で、重合体の疎水性部分は主に、ミセルの内部に分配し、重合体分子をまとめる。
【0170】
ミセルを作出するために使用される重合体の生分解性疎水性部分は、本明細書において記述のPEA、PEURまたはPEU重合体でできている。強疎水性のPEA、PEURまたはPEU重合体の場合、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトールのジ-L-ロイシンエステルまたはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカンのような硬い芳香族ジ酸などの成分を重合体反復単位の中に含めることができる。対照的に、重合体の水溶性部分はポリエチレングリコール、ポリグリコサミノグリカンまたは多糖および少なくとも一つのイオン性または極性アミノ酸の反復交互単位を含み、ここで反復交互単位は実質的に類似の分子量を有し、かつ重合体の分子量は約10 kDa〜約300 kDaの範囲である。反復交互単位は約300 Da〜約700 Daの範囲の実質的に類似の分子量を有しうる。重合体の分子量が10 kDaを超える一つの態様において、アミノ酸単位の少なくとも一つはセリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびアルギニンから選択されるイオン性または極性アミノ酸である。一つの態様において、イオン性アミノ酸の単位は、グルタメートまたはアスパルテートのようなイオン性ポリ(アミノ酸)の少なくとも一つのブロックを含み、重合体の中に含まれうる。本発明のミセル組成物は、重合体の水溶性部分におけるイオン性アミノ酸の少なくとも一部がイオン化されるpH値を有する、薬学的に許容される水性媒質をさらに含んでもよい。
【0171】
重合体の水溶性部分の分子量が高くなるほど、ミセルの多孔率はそれだけ大きくなり、水溶性生物活性剤および/またはタンパク質のような大きな生物活性剤のミセルへの負荷はそれだけ高くなる。それゆえ、一つの態様において、重合体の全水溶性部分の分子量は約5 kDa〜約100 kDaの範囲である。
【0172】
いったん形成されると、ミセルは保存および輸送のために凍結乾燥され、上述の水性媒質中で再構成されてもよい。しかしながら、凍結乾燥工程によって変性されうる、ある種のタンパク質のようなある種の生物活性剤を含有するミセルを凍結乾燥することは推奨されない。
【0173】
ミセル内の荷電部分は水中で互いに部分的に分離し、生物活性剤のような水溶性薬剤の吸収のための空間を作り出す。同じタイプの電荷を有するイオン化した鎖は互いに反発し、より大きな空間を作り出すであろう。イオン化した重合体は同様に、生物活性剤を誘引し、マトリックスに安定性を提供する。さらに、水溶性のミセル外部は、イオン化部位が治療用生物活性剤によって捕らえられた後、体液中のタンパク質へのミセルの付着を防ぐ。このタイプのミセルはミセル容積の最大95%までの非常に高い多孔率を有し、ポリペプチド、DNAおよび他の生物活性剤のような水溶性生物製剤の高負荷を可能にする。ミセルの粒径の範囲は約20 nm〜約200 nmであり、血中での循環には約20 nm〜約100 nmが好ましい。
【0174】
粒径は、例えば、ヘリウム-ネオンレーザーを組み込んでいる分光計を用い、例えば、レーザー光散乱によって測定することができる。一般に、粒径は室温で測定し、対象とするサンプルを複数回(例えば、5〜10回)分析して粒径の平均値を得る。粒径は同様に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて容易に測定される。そうするために、乾燥粒子を金/パラジウム混合物でおよそ100オングストロームの厚さにスパッターコーティングし、次いで走査電子顕微鏡を用いて検査する。あるいは、粒子またはそれ以外の形態の重合体を、当技術分野において周知のおよび後述のいくつかの方法のいずれかにより、活性薬剤を化学結合なしで重合体の中に取り込む(「負荷」する)のではなく、生物活性剤に直接的に共有結合することもできる。生物活性剤の含有量は一般に、重合体に対しておよそ0.1%〜約40% (w/w)の生物活性剤、より好ましくは約1%〜約25% (w/w)の生物活性剤、さらにより好ましくは約2%〜約20% (w/w)の生物活性剤に相当する量である。生物活性剤の割合は、以下により詳細に論じるように、所望の用量および治療中の状態に依るであろう。
【0175】
眼内用固体重合体送達組成物を作出する方法
眼科用薬剤の制御放出向けの本発明の眼内用固体重合体送達組成物を作成するため、以下の重合体層を固体基材にキャストまたはスプレイすることができる:
a) 少なくとも一つの生物活性剤および本明細書において記述の構造式(I)〜(IV〜VIII)により記述される構造式を有する生分解性の、生体適合性の重合体の第一溶媒中の溶液を含む少なくとも一つの担体層;
b) 生分解性の、生体適合性の重合体の第二溶媒中の溶液の少なくとも一つのコーティング層; ならびに
c) 第二溶媒に不溶性であるが、生理的条件下で溶解する液体重合体の少なくとも一つの、担体層と各コーティング層との間の障壁層。各層を、その上に次の層をキャストまたはスプレイする前に乾燥する。液体分散液として基材上にキャストまたはスプレイされる重合体層は、フィルム(例えば、対向する主表面および約0.1ミリメートル〜約20ミリメートル、例えば、5ミリメートルの主表面間の厚さを有する実質的に平面の物体)を形成する。
【0176】
あるいは、約0.1〜2.5 mm厚の厚さを有する構成物の場合、分散された眼科用薬剤を有する少なくとも一つの生分解性の、生体適合性の重合体の第一溶媒中の溶液を含む担体層を固体基材上にスプレイし、乾燥する。次いで、同じ溶媒中のまたは第二の溶媒中の生分解性の、生体適合性の重合体の溶液の単一のコーティング層を担体層の上にスプレイし、乾燥する。
【0177】
さまざまな層の乾燥は、その温度が、使用されるさまざまな重合体の化学構造または担体層中に分散された一つもしくは複数の生物活性剤の化学構造を分解するほど十分に高くない限り、当技術分野において公知の任意の方法を用いて達成することができる。典型的には、温度は80℃を超えない。例えば、組成物の各種層は本明細書中の実施例において例証されるように、約5時間〜約9時間の間40℃〜約50℃の温度で、例えば、約7時間50℃でオーブン中にて乾燥することができる。
【0178】
一つの態様において、担体層もコーティング層も同じように、構造式(I)および(IV)により記述される化学式を有する重合体の溶液を用いて適用する。本発明の実践に決して必要というわけではないが、便宜上、本発明の組成物の担体層におけるのと同じ組み合わせの溶媒および構造(I)〜(IV)の生分解性の、生体適合性の重合体をコーティング層において使用することが推奨される。例えば、コーティング層をキャストまたはスプレイするのに使用される重合体は、担体層をキャストまたはスプレイするのに使用されるものと同じであってもよく、この場合には第一溶媒および第二溶媒が同一であってもよい。
【0179】
本発明の固体重合体の眼内用送達組成物における障壁層の組成は、本発明の重要な局面である。障壁層において使用される重合体の選択は、被覆層の調製用の溶液を生成するために使用される溶媒によって決められる。障壁層の目的は、別の状態で接触する被覆層の蒸着時に、担体層の中から外への生物活性剤の無制御な溶媒和を防ぐことである。中間の障壁層のための重合体は、被覆層の形成において使用される溶媒に不溶性であるよう選択される。一つの態様において、障壁層は最終組成物において重合体の単層である。さらに、固体重合体送達組成物の各種層において使用される全ての重合体は、生体適合性であり、天然の酵素作用で身体により再吸収されるであろう。別の態様において、適用されるコーティング層は、生物活性剤を含んでおらず、本明細書において「純粋な重合体層」と呼ばれることができる。
【0180】
例えば、エタノールに溶解する重合体、例えば共重合体PEA (式(IV)で表される重合体の一形態)を、担体およびコーティング層の適用する時に、この溶媒の溶液中にて使用することができ、エタノールに不溶性であるポリビニルアルコールを、組成物における一つまたは複数の障壁層を作出するために使用することができる。一つの態様において、障壁層を形成する液体重合体を、重合体、例えば、ポリビニルアルコールの単層を形成するために適用する。
【0181】
本発明の固体重合体の眼内用送達組成物からの放出期間をさらに延ばすために、該組成物は三次元サンドイッチ構造を有する。組成物を作出する方法はひいては、担体層をキャストする前にコーティング層から始めて(次のものの蒸着の前にそれぞれを乾燥して)、複数セットのコーティング層および障壁層を基材上に最初にキャストすることによって改変することができる。次いで、サンドイッチ構造の内部を形成するために、担体層をキャストし、乾燥する。最後に、逆の順番で、複数セットの障壁層およびコーティング層を、乾燥した障壁層の上にキャストする。このように、コーティング層は蒸着されるのが最初と最後であり、組成物はサンドイッチ構造を持つようになり、その際に複数セットを二度適用して三次元サンドイッチ構造の二つの外側を形成し、その結果、コーティング層が該構造両側のどちらに対しても外部になり、担体層がサンドイッチ構造の中央になる。それゆえ、各組成物構成物は層のセットを含有しないか、または約1〜約10の障壁およびコーティング層のセット(例えば、障壁およびコーティング層の1〜約8セット)を含有することがある。
【0182】
より概略的な形式では、この態様の場合、以下の手順にしたがって、Nセットのコーティングおよび障壁層をサンドイッチ構造で有し、担体層をサンドイッチ構造の中央に有する組成物を作出することができる。
1. N番目のコーティング層を基材上にキャスト/スプレイし、乾燥し、
2. N番目の障壁層でコーティングし、乾燥し、
3. (N-1)番目のコーティング層をキャスト/スプレイし、乾燥し、
4. (N-1)番目の障壁層でコーティングし、乾燥し、
5. 必要に応じて段階3および4を繰り返し、
6. 一つまたは複数のマトリックス化された生物活性剤を含有する担体層をキャスト/スプレイし(担体層はサンドイッチの最も内側の層として終わる)、乾燥し、
7. 段階5〜1を逆の順番で繰り返し、コーティング層で終了する。蒸着される各液体層は前の層の縁を越えて、形成されている組成物の側面を密閉し、ディスクの側面からの、および表面積の他の部分からの溶離が制御されることが好ましい。基材は、その上に一つまたは二つの層がキャストされ乾燥された後に、本発明の組成物を作出する方法における任意の時点で乾燥済の層から除去されることができる。完成した組成物は保存のために包装されてもよく、またはすぐに使用できる。
【0183】
あるいは、上記の乾燥段階の間に組成物の各種層から溶媒が完全に除去されない場合には、組成物から溶媒を実質的に除去するための最後の乾燥の前に、例えば、回転、プリーツ加工、折り畳みなどにより、組成物を操作および圧縮して、いくつかの三次元形状のいずれかを形成させてもよい。例えば、ディスクを巻き上げ、圧縮して、円筒を形成させることができる。あるいは、円筒は上記の方法によって一層ずつ形成された完全乾燥材料のシートから金型(dye)で打抜きされてもよい。
【0184】
より薄い組成物構成物では、主に構成物の全厚さがおよそ2.5 mmを超えない場合、生物活性剤とともにマトリックス化された溶媒和重合体のエアロゾルが基材に蒸着される。あるいは、担体層は溶液鋳造物(solution cast)であってもよい。次いで、この担体層をc)に概説の手順により乾燥する。エアロゾルを用いたコーティング層の蒸着の場合、担体層の中から外へのおよび生成されている湿ったコーティング層への薬物または生物製剤の拡散は、三つの要因によって制限される。 1) 生分解性の、生体適合性の重合体溶液の濃度は、典型的には、エアロゾルが基材上の蒸着時にほぼ乾燥しているように、空気中で固体を形成することなしに可能な限り高い(約2%〜3%)、2) 基材および/またはその上の空隙を連続的に加熱して、素早い乾燥を促進する(重合体および濃度に応じて、典型的には30℃〜80℃)、ならびに3) 単一のコーティングを多くの「スプレイサイクル」に分ける。「スプレイサイクル」を用いることにより、エアロゾルの蒸着の期間は長さが1秒足らずから数秒までの、多くのもっと短い期間に分けられる。乾燥が迅速であり、かつ残存する溶媒が所与のコーティングのために最少化されるように、各スプレイ期間の後に短い乾燥期間(例えば、20〜60秒、連続的な加熱を各サイクルの中に組み込む)を続ける。加熱は、典型的には、スプレイサイクルのエアロゾル蒸着期間でさえ、連続的に適用されてもよい。新たに形成されたコーティング層の乾燥は、本明細書において記述のように行われる。どの単一のコーティングも典型的には、およそ80 μmを超えない。新たに形成されたコーティング層への生物製剤および/または薬物の移動は、障壁層を用いる態様のように完全にはなくせないが、移動は、最終生成物中の小分子の拡散が担体層しか含有していない態様におけるよりも遅い程度にまで限定される。眼科用薬剤および任意の生物活性分子の放出速度は、したがって制御される。
【0185】
PEA、PEURおよびPEU重合体を含む固体重合体の移植可能異物(solid polymer implantable)を作出する方法は、2006年9月21日付で出願された米国特許出願第11/525,491号にさらに開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0186】
本発明の生分解性の眼内用重合体送達組成物への任意の分散およびその組成物からの放出のための生物活性剤は同様に、抗増殖剤、ラパマイシンおよびその類似体または誘導体のいずれか、パクリタキセルまたはそのタキセン類似体もしくは誘導体のいずれか、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、またはその〜リムスという名称の薬物ファミリーのいずれか、ならびにシンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンのようなスタチン、17AAG (17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)のようなゲルダナマイシン; エポチロンDおよび他のエポチロン、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシンならびに熱ショックタンパク質90 (Hsp90)の他のポリケチド阻害剤、シロスタゾールなどを含む。
【0187】
以下の生物活性剤および小分子薬物は、生物活性剤の局所送達のための持続放出性の生分解性重合体貯蔵物を形成するよう製剤化かつサイズ調整されるか、または固体送達系として作成されるかにかかわらず、本発明の眼内用送達組成物のなかに任意で分散されてもよい。本発明の送達組成物および送達方法において使用される重合体中に分散される任意の生物活性剤は、関心対象の眼科用疾患、またはその症状の処置においてその適当な治療的または緩和的効果について選択することができる。
【0188】
一つの態様において、任意の生物活性剤は、持続放出性の様式で供与される場合に創傷治癒を促進するかまたはそれに寄与する種々のクラスの化合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0189】
小分子薬物は、本明細書において記述する本発明の眼内用重合体送達組成物での分散に適したさらなる生物活性剤の範疇である。そのような薬物は、例えば、抗菌剤および抗炎症剤、ならびに、例えば、ビタミンAおよび脂質過酸化の合成阻害剤のようなある種の治癒促進剤を含む。
【0190】
感染の阻止または制御によって自然な治癒過程を間接的に促進するため、さまざまな抗生物質を本発明の眼内用重合体送達組成物中に分散させてもよい。適当な抗生物質は、アミノグリコシド抗生物質もしくはキノロンまたはセファロスポリンのようなβ-ラクタム、例えば、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、エリスロマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、クロキサシリン、メチシリン、リンコマイシン、アンピシリン、およびコリスチンのような多くのクラスを含む。適当な抗生物質は文献に記述されている。
【0191】
適当な抗菌剤は、例えば、アドリアマイシンPFS/RDF(登録商標)(Pharmacia and Upjohn)、ブレノキサン(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、セルビジン(登録商標)(Bedford)、コスメゲン(登録商標)(Merck)、ダウノキソム(登録商標)(NeXstar)、ドキシル(登録商標)(Sequus)、ドキソルビシン塩酸塩(登録商標)(Astra)、イダマイシン(登録商標)PFS(Pharmacia and Upjohn)、ミトラシン(登録商標)(Bayer)、ミタマイシン(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ニペン(登録商標)(SuperGen)、ノバントロン(登録商標)(Immunex)およびルベックス(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)を含む。一つの態様において、ペプチドは糖ペプチドでありうる。「糖ペプチド」とは、バンコマイシンのような、糖基により置換されていてもよい多環ペプチドコアによって特徴付けられるオリゴペプチド(例えば、ヘプタペプチド)抗生物質を指す。
【0192】
この範疇の抗菌剤に含まれる糖ペプチドの例は、Raymond C. Rao and Louise W. Crandallによる「Glycopeptides Classification, Occurrence, and Discovery」(「Bioactive agents and the Pharmaceutical Sciences」第63巻、Ramakrishnan Nagarajan編、Marcal Dekker, Inc.出版)のなかで見出すことができる。糖ペプチドのさらなる例は、米国特許第4,639,433号; 同第4,643,987号; 同第4,497,802号; 同第4,698,327号、同第5,591,714号; 同第5,840,684号; および同第5,843,889号に; 欧州特許第0 802 199号; 欧州特許第0 801 075号; 欧州特許第0 667 353号; 国際公開公報第97/28812号; 国際公開公報第97/38702号; 国際公開公報第98/52589号; 国際公開公報第98/52592号に; ならびにJ. Amer. Chem. Soc., 1996, 118, 13107-13108; J. Amer. Chem. Soc., 1997, 119, 12041-12047; およびJ. Amer. Chem. Soc., 1994, 116, 4573-4590に開示されている。代表的な糖ペプチドは、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB-65、アクタプラニン、アクチノイジン、アルダシン、アボパルシン、アズレオマイシン、バルヒミエイン、クロロオリエンチエイン、クロロポリスポリン、デカプラニン、-デメチルバンコマイシン、エレモマイシン、ガラカルディン、ヘルベカルディン、イズペプチン、キブデリン、LL-AM374、マンノペプチン、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA-7653、オレンチシン、パルボディシン、リストセチン、リストマイシン、シンモニシン、テイコプラニン、UK-68597、UD-69542、UK-72051、バンコマイシンなどと特定されるものを含む。本明細書において用いられる「糖ペプチド」または「糖ペプチド抗生物質」という用語は同様に、糖部分がない上記に開示の一般的な糖ペプチド類、すなわちアグリコン系の糖ペプチドを含むよう意図される。例えば、バンコマイシンのフェノールに付加された二糖部分を穏やかな加水分解により除去することで、バンコマイシンアグリコンが得られる。同様に「糖ペプチド抗生物質」という用語の範囲内に含まれるのは、アルキル化およびアシル化誘導体が含められる、上記に開示の一般的な糖ペプチド類の合成誘導体である。さらに、バンコサミンと同様の様式で、さらなる糖残基、とりわけアミノグリコシドがさらに付加されている糖ペプチドも、この用語の範囲内である。
【0193】
「脂質化糖ペプチド」という用語は、具体的には脂質置換基を含有するよう合成的に修飾された糖ペプチド抗生物質を指す。本明細書において用いられる場合、「脂質置換基」という用語は、5個またはそれ以上の炭素原子、好ましくは10〜40個の炭素原子を含有する任意の置換基を指す。脂質置換基はハロ、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1〜6個のヘテロ原子を任意で含んでいてもよい。脂質化糖ペプチド抗生物質は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,840,684号、同第5,843,889号、同第5,916,873号、同第5,919,756号、同第5,952,310号、同第5,977,062号、同第5,977,063号、欧州特許出願第667,353号、国際公開公報第98/52589号、国際公開公報第99/56760号、国際公開公報第00/04044号、国際公開公報第00/39156号を参照されたく、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0194】
抗炎症性の生物活性剤は同様に、本発明の組成物および方法において使用される重合体粒子中での分散に有用である。処置される眼内部位および疾患に応じて、そのような抗炎症性の生物活性剤は、例えば、鎮痛剤(例えば、NSAIDSおよびサリチレート)、ステロイド、抗リウマチ薬、胃腸薬、痛風薬、ホルモン(グルココルチコイド)、点鼻薬、点眼薬、点耳薬(例えば、抗生物質およびステロイド併用薬)、呼吸薬、ならびに皮膚および粘膜剤を含む。Physician's Desk Reference, 2001 Editionを参照されたい。具体的には、抗炎症剤はデキサメタゾンを含むことができ、これは

と化学的に表される。あるいは、抗炎症性の生物活性剤はシロリムス(ラパマイシン)であってもまたはそれを含んでもよく、これはストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)から単離されたトリエンマクロライド抗生物質である。
【0195】
本発明の組成物および方法に含まれるポリペプチド生物活性剤は「ペプチド模倣体(peptide mimetics)」を含むこともできる。本明細書において「ペプチド模倣体」または「ペプチド模倣物(peptidomimetics)」といわれる、そのようなペプチド類似体は、鋳型ペプチドのものと類似の特性により製薬業界において使用されることが多く(Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29; Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392; およびEvans et al. (1987) J. Med. Chem., 30:1229)、通常はコンピュータによる分子モデリングを用いて開発される。一般に、ペプチド模倣物は典型的ポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似であるが、当技術分野において公知の方法により、--CH2NH--、--CH2S--、CH2-CH2--、--CH=CH-- (シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--ならびに--CH2SO--からなる群より選択される結合によって置き換えられていてもよい一つまたは複数のペプチド結合を有し、以下の参照文献: Spatola, A.F.「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins」, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983)中; Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, 「Peptide Backbone Modifications」(総説); Morley, J.S., Trends. Pharm. Sci., (1980) pp. 463-468 (総説); Hudson, D. et al., Int. J. Pept. Prot. Res., (1979) 14:177-185 (--CH2NH--, CH2CH2--); Spatola, A.F. et al., Life Sci., (1986) 38:1243-1249 (--CH2-S--); Harm, M. M., J. Chem. Soc. Perkin Trans I (1982) 307-314 (--CH=CH--, シスおよびトランス); Almquist, R.G. et al., J. Med. Chem., (1980) 23:2533 (--COCH2--); Jennings-Whie, C. et al., Tetrahedron Lett., (1982) 23:2533 (--COCH2--); Szelke, M. et al., 欧州特許出願第45665号(1982) CA: 97:39405 (1982) (--CH(OH)CH2--); Holladay, M. W. et al., Tetrahedron Lett., (1983) 24:4401-4404 (--C(OH)CH2--); およびHruby, V.J., Life Sci., (1982) 31:189-199 (--CH2-S--)にさらに記述されている。そのようなペプチド模倣体は天然ポリペプチドの態様に比べて、例えば、より経済的な生産、より大きい化学的安定性、薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性など)の増強、特異性の改変(例えば、広範囲の生物学的活性)、抗原性の低下などを含む、有意な利点を有することができる。
【0196】
さらに、ペプチド内での一つまたは複数のアミノ酸の置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を用いて、より安定なペプチドおよび内因性ペプチダーゼに抵抗性のあるペプチドを作出することができる。あるいは、生分解性重合体に共有結合される合成ポリペプチドをD-アミノ酸から調製してもよく、これらはインベルソペプチドといわれる。ペプチドが天然ペプチド配列の反対方向に組み立てられる場合、これはレトロペプチドといわれる。一般に、D-アミノ酸から調製されたポリペプチドは酵素加水分解に対して非常に安定である。多くの事例では、レトロ-インベルソまたは部分的レトロ-インベルソポリペプチドに関する生物学的活性の保存が報告されている(米国特許第6,261,569 B1号およびその中の参考文献; B. Fromme et al, Endocrinology (2003)144:3262-3269)。
【0197】
眼科用薬剤を負荷した重合体粒子組成物の調製の後、この組成物を凍結乾燥し、乾燥した組成物を投与の前に適切な媒質に懸濁してもよい。
【0198】
少なくとも一つの眼科用薬剤の任意の適当かつ有効な量は重合体粒子(インビボで形成された重合体貯蔵物中のものを含む)または固体重合体製剤から経時的に放出されることができ、典型的には、例えば、特定の重合体、粒子のタイプまたは存在する場合には重合体/生物活性剤の結合に依るであろう。典型的には、重合体粒子の約100%までが、血液循環を回避するようサイズ調整された粒子によりインビボにおいて形成された重合体貯蔵物から放出されうる。具体的には、その約90%まで、75%まで、50%まで、または25%までが重合体貯蔵物から放出されうる。重合体からの放出速度に典型的に影響を与える要因は、重合体/眼科用薬剤の性質および量、重合体/眼科用薬剤の結合のタイプ、ならびに製剤中に存在するさらなる物質の性質および量である。
【0199】
本発明の重合体粒子送達組成物が前述のように作出されると、組成物はその後の眼内のために製剤化する。粒子を含有する組成物は一般に、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどのような、眼の内部への移植に適した一つまたは複数の「薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル」を含む。さらに、湿潤剤、pH緩衝物質などのような補助物質が、そのようなビヒクル中に存在してもよい。
【0200】
特定の送達方法で用いるのに適したビヒクルのさらなる議論については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995を参照されたい。特定の生物活性剤/重合体粒子の組み合わせ、粒子のサイズおよび投与方法に用いるのに適したビヒクルを当業者は容易に判定することができる。
【0201】
本発明の方法において使用される組成物は任意で、PEA、PEURまたはPEU重合体の主鎖に組み込まれた眼科用ジオールのような、関心対象の眼科用薬剤の「有効量」を含んでもよい。すなわち、症状を予防する、軽減するまたは取り除くために被験者に十分な治療的または緩和的応答を起こさせる眼科用薬剤の量が組成物に含まれてもよい。必要とされる的確な量は、数ある要因の中でも特に、処置中の被験者; 処置される被験者の年齢および全身状態; 処置中の状態の重症度; 選択した特定の眼科用薬剤および製剤に応じて変化するであろう。当業者は適切な有効量を容易に判定することができる。したがって、「有効量」は、日常の試験により判定できる比較的広い範囲に入るであろう。例えば、本発明の目的のために、有効量は典型的には1用量あたりに送達される活性剤約1 μg〜約100 mg、例えば約5 μg〜約1 mg、または約10 μg〜約500 μgに及ぶ。
【0202】
製剤化されると、本発明の重合体粒子送達組成物は、眼の内部への移植により、例えば套管針もしくは注射針を通じた注射によりまたは外科的切開を介した挿入により投与することができる。投薬処置は本発明の重合体粒子送達組成物の単回用量、または当技術分野において公知のように複数回用量のスケジュールであってもよい。投薬計画はまた、少なくとも一部には、被験者の要望によって決定され、実践者の判断に依るであろう。さらに、疾患の予防が望まれる場合には、重合体粒子送達組成物は一般に、初期の疾患兆候、または関心対象の疾患の症状の前に投与される。処置、例えば、症状または再発の低減が望まれる場合には、重合体粒子送達組成物は一般に、初期の疾患兆候の後に投与される。
【0203】
以下の実施例は本発明を例示するよう意図されるが、本発明を限定するよう意図されない。
【0204】
実施例1
一重乳化法によるPEA-Ac-Bzナノ粒子および粒子の調製
アセチル化末端およびベンジル化カルボキシルペンダント基COOCH2C6H5を含有する構造(IV)のPEA重合体(PEA.Ac.Bzと表す) (25 mg)をDCM 1 mlに溶解し、0.1%の界面活性剤ジヘプタノイル-ホスファチジルコリン(DHPC)水溶液5 mlに撹拌しながら加えた。回転蒸発の後、20 nm〜100 μmに及ぶ粒径を有するPEA.Ac.Bz乳濁液を得た。撹拌速度が高くなるほど、粒子のサイズはそれだけ小さくなる。粒径は重合体の分子量、溶液濃度ならびにマイクロ流動化装置、超音波噴霧器、超音波処理器および機械的または磁気的撹拌器のような機器によって制御する。
【0205】
鎮痛剤を含有するPEA.Ac.Bz粒子の調製
PEA.Ac.Bz (25 mg)およびブピビケイン(Bupivicane) (5 mg)をDCM 1 mLに溶解し、溶液を0.1% DHPC水溶液5 mLにホモジナイズしながら加えた。回転蒸発器を用いて、0.5 μm〜1000 μm、優先的に1 μm〜約20 μmに及ぶ平均粒径を有するPEA.Ac.Bz乳濁液を作出した。
【0206】
実施例2
二重乳化法による重合体粒子の調製
粒子を二重乳化技術により二段階で調製した: 第一段階において、PEA.Ac.Bz (25 mg)をDCM 1 mLに溶解し、次いで10%の界面活性剤ジヘプタノイル-ホスファチジルコリン(DHPC) 50 μLを加えた。混合物を室温でボルテックスにかけて水/油(W/O)の一次乳濁液を生成した。第二段階において、一次乳濁液を0.5% DHPC溶液5 mLに混合溶液をホモジナイズしながらゆっくり加えた。1分間のホモジナイゼーションの後、乳濁液を回転蒸発にかけてDCMを除去し、水/油/水の二重乳濁液を得た。生成した二重乳濁液は、0.5 μm〜1000 μm、大部分は約1 μm〜10 μmに及ぶサイズの懸濁重合体粒子を有していた。界面活性剤の量、撹拌速度および水の容積のような因子の低減は、粒子のサイズを増大する傾向がある。
【0207】
実施例3
二重乳化法による抗体を封入しているPEA粒子の調製
粒子を二重乳化技術により二段階で調製した: 第一段階において、PEA.Ac.Bz (25 mg)をDCM 1 mLに溶解し、次いで抗Icam-1抗体60 μgを含有する水溶液50 μLおよびDHPC 4.0 mgを加えた。混合物を室温でボルテックスにかけて水/油の一次乳濁液を生成した。第二段階において、一次乳濁液を0.5% DHPC溶液5 mLにホモジナイズしながらゆっくり加えた。1分間のホモジナイゼーションの後、乳濁液を回転蒸発にかけてDCMを除去し、水/油/水(W/O/W)の二重乳化構造を有する粒子を得た。この二重乳化技術を用いることによって、抗体の約75%〜98%が封入された。
【0208】
実施例4
一つまたは複数の一次粒子が重合体被覆物内に一緒に封入されて二次微小粒子を形成している、三重乳化構造を有する粒子の調製
三重乳化構造を有する粒子を以下の二つの異なる経路によって調製した。
【0209】
多粒子封入
第一の経路により、一重相のための標準的方法を用いて一次粒子を調製し、PEA.Ac.H (アセチル化末端および遊離COOHペンダント基を含有する構造(IV)の重合体)ナノ粒子を調製して、約1.0 mg〜約10 mg/mL (水性単位あたりの重合体)に及ぶ保存サンプルを得た。さらに、(界面活性剤ミリグラム)/(PEA.Ac.Bzミリグラム + 界面活性剤ミリグラム)として計算された20重量%の界面活性剤を含む、PEA.Ac.Bz保存サンプルを調製した。さまざまな界面活性剤を探索し、その結果、最も有効なのは1,2-ジヘプタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであった。PEA.Ac.Hナノ粒子の保存サンプルをPEA.Ac.Bz重合体のDCM溶液に注入した。典型例は次の通りであった。

この第一の添加物を「一次乳濁液」といった。サンプルを振盪プレートにより5〜20分間撹拌させた。十分な均質性が見られたら、一次乳濁液を水性媒質中0.1%の表面安定剤(5〜10 mL)を含有するカノニカルバイアル(canonical vial)の中に移した。これらの内容物は「外側水相」と呼ばれる。ホモジナイザーを低速(5000〜6000 RPM)で用いて、一次乳濁液を外側水相の中に低速のホモジナイゼーションを行いながらゆっくりピペッティングした。6000 RPMで3〜5分後、全サンプル(「二次乳濁液」と呼ばれる)を真空で濃縮してDCMを除去し、その間にPEA.Ac.Hナノ粒子を連続的であるPEA.Ac.Bzマトリックス内に封入した。
【0210】
二次重合体コーティングの中に負荷される小分子の調製
三重乳化構造を有する粒子を調製するための第二の経路において、第一段階では一重乳濁液粒子を作出するための上述の方法に従った。最終段階において、一重乳濁液粒子を封入している重合体コーティング(すなわち、油中水相)を調製した。
【0211】
より詳しくは、油中水相(一次乳濁液)を作出した。この場合、最少量の水を用いて薬物(5 mg)および界面活性剤(DHPCなど)の濃縮混合物をまず調製した。次いで、濃縮混合物をPEA.Ac.BzのDCM溶液に加え、超音波浴に5〜10分間供した。十分な均質性が見られたら、内容物をホモジナイズしながら水5 mlに加えた。真空蒸発によるDCMの除去後、薬物の水性分散液を含有するPEA.Ac.Bzの三重乳濁液を得た。
【0212】
別の例において、薬物を含むPEA.Ac.Hナノ粒子の保存サンプルを調製した。PEA.Ac.H (25 mg)および薬物(5 mg)をDCM 2 mLに溶解し、水5 mLと5〜10分間超音波処理によって混合した。十分な均質性が見られたら、内容物を回転蒸発にかけてDCMを除去した。この方法を用いて作出された調製物の典型例は以下の内容物を有していた。

次いで、上記の調製物をテフロンディスク中で終夜蒸発に供して、水分をさらに減らし、およそ2 mLの量を得た。外側重合体コーティング、すなわち最大5 mLのDCM中のPEA.Ac.Bz 25 mgを一次乳濁液と混合し、この二次乳濁液全体を1分未満の間ボルテックスにかけることによって撹拌した。最後に、二次乳濁液を0.1%の表面安定剤を含有する水性媒質(10〜15 mL)に移し、6000 RPMで5分間ホモジナイズし、再び真空で濃縮してDCMの第二相を除去し、このようにして三重乳化構造を有する粒子を得た。
【0213】
実施例5
三重乳濁液による薬物捕捉(50%)
以下の例は重合体コーティング中の小分子薬物の負荷を例証する。高負荷のブピバカインHClを含有するPEA粒子を、二重乳化プロトコルに比べて最少量の、一次乳濁液中のH2Oを用い(およそ半分の水を用い)、三重乳化技術により作成した。水相の低減を可能にする構造を安定化するために、薬物を水滴中に可溶化するのを補助する表面安定剤を内部水相に溶解した後に、薬物を内部水相に加える。特に、DHPC (下記の量)をまずH2O 100 μLに溶解し; 次いで薬物50 mgを相に加えた。この技術により、同じサイズの二重乳化粒子を作出する際に使用された量よりもさらに少ない水で、粒子中のより高用量の薬物の負荷が可能となった。合成時には以下のパラメータに従った。

【0214】
実施例6
治療薬を含むトリブロック共重合体ミセルを作出する方法
まず、中心の疎水性PEAまたはPEUR重合体の鎖を、両端に、PEGの交互単位およびリジンまたはグルタミン酸のような、少なくとも一つのイオン性アミノ酸を含有する水溶性重合体鎖と結合させることにより、A-B-A型トリブロック共重合体分子を生成する。次いで、トリブロック共重合体を精製する。
【0215】
次いで、トリブロック共重合体を用いてミセルを作出する。トリブロック共重合体および小分子薬物、タンパク質、ペプチド、脂質、糖、DNA cDNAまたはRNAのような少なくとも一つの生物活性剤を、水性溶液、好ましくは水溶性鎖中のイオン性アミノ酸の少なくとも一部がイオン化型であるように選択された値にpHが調整されている生理食塩水溶液中に溶解して、水性溶液中のトリブロック重合体の分散液を生成する。界面活性剤または脂質のような表面安定剤を分散液に加えて、形成される粒子を分離かつ安定化する。次いで、混合溶液を機械的もしくは磁気的撹拌器、または超音波処理器で撹拌する。水溶性部分が主に殻上、および疎水性部分がコア中にあり、ミセル粒子の完全性を維持しているミセルがこのようにして形成される。ミセルは活性薬剤の負荷のために高い多孔率を有する。タンパク質および他の生物製剤は水溶性部分の荷電領域に誘引されうる。生成されたミセル粒子は約20 nm〜約200 nmのサイズ範囲にある。
【0216】
実施例7
薬物と混合された異なる重合体でできた粒子上の重合体コーティング
一重乳濁液の使用によって、粒子を非常に小さく(20 nm〜200 nm)することができるが、薬物が粒子中でマトリックス化され、あまりにも迅速に溶離しうるという問題が残る。二重および三重乳濁液粒子の場合、内部の水性溶液のため、一重乳化技術によって調製されるよりも粒子が大きい。しかしながら、薬物をマトリックス化するために使用されるものと同じ重合体が粒子のコーティングに使用される場合には、三次乳濁液(重合体コーティング)を作出する際に使用される溶媒が、マトリックス化した粒子を溶解し、コーティングがマトリックス(その中に薬物を含む)の一部になりうる。この問題を解決するために、薬物をマトリックス化するために使用されるものとは異なる重合体を用いて粒子のコーティングを作出し、重合体コーティングを作出する際に使用される溶媒は、マトリックス重合体が溶解しないものであるように選択する。
【0217】
例えば、PEAはエタノールに溶解しうるが、PLAは溶解しえない。それゆえ、薬物をマトリックス化するためにPEAを用いることができ、かつPLAをコーティング重合体として用いることができ、逆も同様である。別の例において、エタノールはPEAを溶解しうるが、PEURを溶解しえず、アセトンはPEURを溶解しうるが、PEAを溶解しえない。それゆえ、薬物をマトリックス化するためにPEURを用いることができ、かつPEAをコーティング重合体として用いることができ、逆も同様である。
【0218】
それゆえ、使用される一般法は次の通りである。重合体Aを用い、一重乳化法により溶液(重合体AがPEAまたはPEURであるなら水性溶液)中で粒子を調製して、薬物または他の生物活性剤を重合体粒子中でマトリックス化する。凍結乾燥により溶媒を乾燥して、乾燥粒子を得る。乾燥粒子を、重合体A粒子を溶解しない溶媒中の重合体Bの溶液の中に分散させる。混合物を水性溶液中で乳化する。得られる粒子は、マトリックス化した薬物を含有する重合体Aの粒子上に重合体Bのコーティングを有するナノ粒子となる。
【0219】
実施例8
本実施例において、PEA重合体主鎖中にβ-エストラジオールの残基を含有するPEA重合体を調製した。
【0220】
材料
17-β-エストラジオール(エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール)、L-リジン、ベンジルアルコール、塩化セバコイル、1,6-ヘキサンジオール、p-ニトロフェノール、トリエチルアミン、4-N,N-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、無水ジクロロメタン(DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、p-トルエンスルホン酸一水和物(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)、無水トルエン、Boc-L-ロイシン一水和物(Calbiochem-Novabiochem, San Diego, CA)はさらなる精製なしで使用した。他の溶媒、エーテルおよび酢酸エチル(Fisher Chemical, Pittsburgh, PA)。
【0221】
単量体および重合体の合成
生物活性PEAの合成は3つの基本的段階を伴った: (1) ビス-求電子体の合成: ジカルボン酸(ここではセバシン酸の、化合物1)のジ(p-ニトロフェニル)エステル; (2) ビス-求核体の合成: ビス(L-ロイシン)-ジオール-ジエステル(化合物3および5)およびL-リジンベンジルエステル(化合物2)のジ-p-トルエンスルホン酸塩(またはジ-TFA塩); ならびに(3) 段階(1)および(2)で得た単量体の溶液重縮合。
【0222】
セバシン酸のジ-p-ニトロフェニルエステル(化合物1)の合成
セバシン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルを既報(Katsarava et al. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. (1999) 37. 391-407)のように塩化セバコイルのp-ニトロフェノールとの反応により調製した(スキーム4)。

L-リジンベンジルエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩を前に述べたように(米国特許第6,503,538号)、生成した水の共沸除去を適用しながら、トルエン中のベンジルアルコール、トルエンスルホン酸一水和物およびL-リジン一塩酸塩の還流により調製した(スキーム5のスキーム)。

【0223】
ビス(α-アミノ酸)ジエステル(3), (5)の酸塩の合成
ビス(L-ロイシン)ヘキサン-1,6-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩(化合物3)をスキーム3に示す通り、既報の方法の変法によって調製した。
【0224】
トルエン250 mL中のL-ロイシン(0.132 mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.132 mol)および1,6-ヘキサンジオール(0.06 mol)を、Dean-Stark装置およびオーバーヘッド撹拌器を備えたフラスコに入れた。不均質な反応混合物を、4.3 mL (0.24 mol)の水が生じるまで、約12時間加熱還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、ろ過し、アセトンで洗浄し、メタノール/トルエン2:1混合物から二回再結晶した。収率およびMpは既報のデータと同じであった(Katsarava et al., 前記) (スキーム6参照)。

ビス-(L-ロイシン)-エストラジオール-3,17β-ジエステルのジ-TFA塩(化合物5)を二段階反応により調製した。まず、17β-エストラジオールをboc-保護L-ロイシンと、カルボジイミドによるエステル化を用いて反応させて、化合物4を生成した。第二段階において、boc基をTFAにより脱保護し、同時にジ-アミノ単量体のジ-TFA塩(化合物5)に変換した(スキーム7参照)。

【0225】
ビス(Boc-L-ロイシン)エストラジオール-3,17β-ジエステル(4)の調製
17β-エストラジオール1.5 g (5.51 mmol)、Boc-L-ロイシン一水和物3.43 g (13.77 mmol)およびp-トルエンスルホン酸一水和物0.055 g (0.28 mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド20 mLに窒素雰囲気下、室温で溶解した。この溶液に、モレキュラーシーブ10 gを加え、撹拌を24時間続けた。次いで、DMAP 0.067 gおよびDCC 5.4 g (26.17 mmol)を反応溶液に導入し、撹拌を続けた。6時間後(反応物の変色は見られなかった)、酢酸1 mLを加えて過剰のDCCを分解した。次いで、沈澱した尿素およびシーブをろ去し、ろ液を水80 mLに注いだ。生成物を酢酸エチル30 mLで三回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(7:3のヘキサン:酢酸エチル)に供した。純粋な化合物4の無色ガラス状固体が2.85 g、収率74%および純度100% (TLC)で得られ、これを化合物5にさらに変換した。
【0226】
ビス(L-ロイシン)エストラジオール-3,17β-ジエステルのジ-TFA塩(化合物5)
Boc-保護単量体(化合物4)の脱保護を、無水ジクロロメタン10 mL中、無水TFA 4 mLを加えることにより、実質的に定量的に行った。室温で2時間の撹拌後、均質溶液を無水エーテル300 mLで希釈し、低温室に終夜放置した。沈澱した白色結晶を回収し、エーテルで二回洗浄し、45℃の真空乾燥器で乾燥した。収量2.67 g (90%)。Mp = 187.5℃。
【0227】
重合体合成
治療用PEAの合成を緩和な条件(60℃)にてDMF中で行い: 活性化ジ酸単量体(化合物1) 4当量をジアミノ単量体(化合物2) 1.5当量、(化合物5) 1.5当量および(化合物3) 1当量と反応させた。
【0228】
トリエチルアミン1.46 mL (10.47 mmol)を無水DMF 3 mL中の単量体(化合物1) (4.986 mmol)、(化合物2) (1.246 mmol)、(化合物3) (1.869 mmol)、(化合物5) (1.869 mmol)の混合物に一度に加え、溶液を撹拌しながら60℃に加熱した。反応バイアルを同じ温度で16時間維持した。黄色の粘稠溶液が生じ、次いでこれを室温まで冷却し、無水DMF 9 mLで希釈し、無水酢酸0.2 mLを加え、3時間後、三回: 最初は水中で、次にエタノール溶液から酢酸エチルへ、および最後に、クロロホルムから酢酸エチル中で沈澱させた。無色の疎水性重合体をクロロホルム:エタノール(1:1)混合物からフィルムとしてキャストし、真空で乾燥した。収量: 1.74 g (70%)。
【0229】
材料の特徴付け
単量体および重合体の化学構造を標準的な化学的方法により特徴付けた。NMRスペクトルはBruker AMX-500分光計(Numega R. Labs Inc. San Diego, CA)により、1H NMR分光法では500 MHzで操作して記録した。重水素化溶媒CDCl3またはDMSO-d6 (Cambridge Isotope Laboratories, Inc., Andover, MA)を内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)とともに用いた。
【0230】
合成した単量体の融点は、自動Mettler-Toledo FP62 Melting Point Apparatus (Columbus, OH)にて測定した。合成した単量体および重合体の熱的特性は、Mettler-Toledo DSC 822e示差走査熱量計にて特徴付けた。サンプルはアルミ製の鍋に置いた。測定を窒素気流下、10℃/分の走査速度で行った。
【0231】
高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 2414屈折率検出器を備えたModel 515ゲル浸透クロマトグラフィー(Waters Associates Inc. Milford, MA)により、合成した重合体の数および重量平均分子量(MwおよびMn)ならびに分子量分布を測定した。N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中0.1%のLiCl溶液を溶離液として使用した(1.0 mL/分)。二つのStyragel (登録商標) HR 5E DMF型カラム(Waters)を接続し、ポリスチレン標準物質で較正した。
【0232】
引張り特性:
引張り強さ、破壊時の伸長およびヤング率を引張り強さ測定器(Chatillon TCD200、PC (Nexygen (商標) FMソフトウェア)を統合) (Chatillon, Largo, FL)にてクロスヘッド速度100 mm/分で測定した。負荷容量は50 lbsであった。フィルム(4×1.6 cm)はダンベル型および約0.125 mmの厚さであった。
【0233】
結果:
四つの異なる単量体を活性化単量体の重縮合により共重合し、重合体全重量に基づき17% w/wのステロイド-ジオール負荷を含有するコポリPEAを得た。17β-エストラジオール、L-ロイシン、L-リジン(OBn)、1,6-ヘキサンジオールおよびセバシン酸の断片を含有する、生成物の治療用重合体組成物の化学構造を式(XIX)に示している。

三つの単量体: L-リジン-ベンジルエステルのビス-p-トルエンスルホン酸塩(化合物2)、ビス(L-ロイシン)1,6-ヘキサンジエステル(化合物3)、およびセバシン酸ビス(p-ニトロフェニル) (化合物1)を文献にしたがって調製し、融点およびプロトンNMR分光法によって特徴付けた。結果は文献に報告されたものと一致した。
【0234】
本実施例において、ジオールステロイドのどちらのヒドロキシルもともにカルボジイミド技術を用いてエステル結合により単量体に組み込まれた、重合体主鎖中に17β-エストラジオールの残基を含有するPEA重合体を調製した。重合反応に導入される最終単量体はTFA塩であった。重縮合の後、高分子量共重合体を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによって、推定(PS)重量平均Mw = 82,000および多分散性PDI = 1.54になった。生成物の共重合体はエタノールに部分的に可溶性であり(乾燥時)、クロロホルム、クロロホルム:エタノール(1:1)混合物、ジクロロメタン、および極性非プロトン性有機溶媒:DMF、DMSO、DMAcには易溶性であった。
【0235】
ガラス転移温度をTg = 41°(中点、第二加熱曲線からとった)で検出し、急な融解吸熱を示差走査熱量測定(DSC)分析により220℃で検出した。この結果から、重合体は半晶質特性を有するとの結論が得られた。
【0236】
治療用重合体は、クロロホルム溶液からキャストした場合に、強いフィルムを生成した。引張り特性試験により、下記の結果が得られた: 破壊時の応力28.1 MPa、伸長173%、ヤング率715 MPa。
【0237】
実施例9
本実施例は、重合体主鎖中に治療用ジオールを含有する治療用PEUR重合体組成物(式V)の合成を例証する。合成に用いた第一の単量体は、式

によって示される一般化学構造を有する、治療用ジオールのジカルボネートで、公知の方法を用いて生成され(米国特許第6,503,538号に記述の化合物(X))、式中においてR5は独立して、一つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシで置換されてもよい、(C6〜C10)アリール(例えば、本実施例においてはp-ニトロフェノール); および少なくともいくつかのp-ニトロフェノールである。R6の少なくともいくつかは、望まれる薬物負荷に応じ、本明細書において記述の治療用ジオールの残基である。R6の全てが治療用ジオールの残基でない場合、各ジオールをまず調製し、別々の単量体として精製する。例えば、ジ-p-ニトロフェニル-3,17b-エストラジオール-ジカーボネート(化合物6)は下記のスキーム8の方法によって調製することができる。

米国特許第6,503,538号からの化合物X (本発明者らの実施例では化合物6)の、前述の単量体との重縮合により、エストラジオールを基本とするコポリ(エステルウレタン)PEUR (化合物11)が得られ:

ここで反応スキームは以下の通りである。

【0238】
実施例10
PEU重合体の調製のための単量体合成
ジアミン型単量体: L-リジンベンジルエステル(L-Lys(OBn)、化合物2)のジ-p-トルエンスルホン酸塩およびビス(L-ロイシン)-ヘキサン-1,6-ジエステルのジ-トルエンスルホン酸塩(化合物3)の調製は、前述の実施例8において記述した。
【0239】
ビス(L-ロイシン)-1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩(化合物7)の調製を既報のように行った(Z.Gomurashvili et al. J. Macromol. Sci. -Pure. Appl. Chem. (2000) A37: 215-227)。

ここでトルエン250 mL中のL-ロイシン(0.132 mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.135 mol)およびイソソルビド(0.06 mol)をDean-Stark装置およびオーバーヘッド撹拌器を備えたフラスコに入れた。不均質な反応混合物を、4.3 mL (0.24 mol)の水が生じるまで、約12時間加熱還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、ろ過し、アセトンで洗浄し、メタノール/トルエン2:1混合物から二回再結晶した。収率およびMpは既報のデータと同じであった(Z.Gomurashvili et al. 前記)。
【0240】
実施例11
PEU 1-L-Leu-6 (重合体登録番号2、表2)の調製
水150 mL中のビス(L-ロイシン)-1,□-ヘキサンジオール-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩6.89 g (10 mmol)の懸濁液に、無水炭酸ナトリウム4,24 g (40 mmol)を加え、室温で30分間撹拌し、2℃〜0℃まで冷却した。並行して、クロロホルム35 mL中のホスゲン0.9893 g (10 mmol)の溶液を15℃〜10℃まで冷却した。第一溶液を界面重縮合のための反応器に入れ、第二溶液を一度に速やかに加え、15分間激しく撹拌した。次いで、クロロホルム層を分離し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。得られた溶液を蒸発させ、重合体産出物を45℃にて真空で乾燥した。収率は82%であった。1Hおよび13C NMRについては図2および図3を参照されたい。元素分析: C19H34N2O5の場合、計算値: C: 61.60%、H: 9.25%、N: 7.56%; 実測値: C: 61.63%、H: 8.90%、N: 7.60。
【0241】
実施例12
PEU 1-L-Leu-DAS (重合体: 登録番号5、表2)の調製

水40 mL中のビス(L-ロイシン)-1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール-ジエステル(化合物7) 5 g (6.975 mmole)および炭酸ナトリウム2.4 gの冷溶液(氷浴)を調製した。この冷溶液に、クロロホルム70 mLを激しく撹拌しながら加え、次いでトルエン中20%のホスゲン溶液(Fluka) 3.7 mLを導入した。ポリ(エステル尿素)が発熱を伴って速やかに生成した。反応物を10分間撹拌した後、有機層を回転蒸発させ、残留重合体をろ過し、水で数回洗浄し、終夜真空で乾燥した。生成物の収量は1.6 g (57%)であった。重合体の特性は表2に要約した通りである。
【0242】
実施例13
本実施例は、PEU重合体1-L-Leu-4の経時的分解速度を比較するために行った分解試験について記述する。それぞれ直径4 cmおよび400〜500 mgの円形PEUフィルムを、α-キモトリプシンもしくはリパーゼのいずれかの酵素4 mgを含む、または酵素を含まない、pH 7.4の0.2 Mリン酸緩衝溶液10 mlを含有するガラスビーカーの中に入れた。ガラス容器を37℃に維持した。所定の時間の後、フィルムを酵素溶液から取り出し、一定重量になるまで乾燥し、秤量した。次いで、フィルムを酵素または純粋な緩衝液のいずれかの新しい溶液中に入れ、前述の全ての手順を繰り返した。サンプルの単位表面積あたりの重量変化を計算し、生分解時間に対してグラフに表した。試験の結果から、PEU重合体は、表面分解プロファイルに対応して、ほぼゼロ桁の分解プロファイルを有することが明らかとなった。
【0243】
全ての刊行物、特許および特許文献は、参照により個々に組み入れられるかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。本発明を種々の具体的なおよび好ましい態様および技術に関連して記述してきた。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内にとどめながら、多くの変形および変更を行えることが理解されるべきである。
【0244】
本発明を上記の実施例に関連して記述してきたが、変更および変形は本発明の趣旨および範囲内に包含されることが理解されると考えられる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の少なくとも一つを含む少なくとも一つの生分解性重合体の中に分散されている、少なくとも一つの眼科用薬剤(ophthalmologic agent)を含む、
眼内用重合体送達組成物:
構造式(I)により記述される化学式を有するポリ(エステルアミド) (PEA)、

式(I)中において、nが約5〜約150の範囲であり; R1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは治療用ジ酸の飽和もしくは不飽和残基およびその組み合わせから独立して選択され;

ここで式(III)中のR5およびR6が(C2〜C12)アルキレンまたは(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され; 個々のn単量体中のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; かつR4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジ酸残基およびその組み合わせからなる群より独立して選択される;
あるいは構造式(IV)により記述される化学式を有するPEA、

式(IV)中において、nが約5〜約150の範囲であり、mが約0.1〜0.9の範囲であり; pが約0.9〜0.1の範囲であり; 式中においてR1がα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1〜C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは治療用ジ酸の飽和もしくは不飽和残基およびその組み合わせから独立して選択され; ここで式(III)中のR5およびR6が(C2〜C12)アルキレンまたは(C2〜C12)アルケニレンより独立して選択され; 各R2が独立して水素、(C1〜C12)アルキル、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリールまたは保護基であり; 個々のm単量体中のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; かつR4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基およびその組み合わせからなる群より独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニル、例えば、(C3〜C6)アルキルまたは(C3〜C6)アルケニルである;
あるいは構造式(V)により記述される化学式を有するポリ(エステルウレタン) (PEUR)、

式(V)において、nが約5〜約150の範囲であり; 式中において個々のn単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; R4およびR6が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、および構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基、ならびにその混合物からなる群より選択される;
あるいは一般構造式(VI)により記述される化学構造を有するPEUR、

式(VI)中において、nが約5〜約150の範囲であり、mが約0.1〜約0.9の範囲であり; pが約0.9〜約0.1の範囲であり; R2が独立して水素、(C1〜C12)アルキル、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリールまたは保護基であり; 個々のm単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)からなる群より独立して選択され; R4およびR6が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレンまたは(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和または不飽和の治療用ジオール残基、およびその混合物から独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニル、例えば、(C3〜C6)アルキルまたは(C3〜C6)アルケニルである;
あるいは構造式(VII)により記述される化学式を有するポリ(エステル尿素) (PEU)、

式(VII)中において、nが約10〜約150であり; 個々のn単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立して選択され; R4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療用ジオール残基、または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片およびその混合物から独立して選択される;
あるいは構造式(VIII)により記述される化学式を有するPEU、

式(VIII)中において、mが約0.1〜約1.0であり; pが約0.9〜約0.1であり; nが約10〜約150であり; 各R2が独立して水素、(C1〜C12)アルキル、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリールまたは保護基であり; かつ個々のm単量体内のR3が水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C6〜C10)アリール (C1〜C6)アルキルおよび-(CH2)2S(CH3)から独立して選択され; R4が(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ (C2〜C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療用ジオール残基、または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、またはその混合物から独立して選択され; かつR13が独立して(C1〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニル、例えば、(C3〜C6)アルキルまたは(C3〜C6)アルケニルである。
【請求項2】
液体分散液の形態で眼内投与のために製剤化される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
液体分散液が重合体粒子の分散液である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
粒子が約10ナノメートル〜約1000マイクロメートルの範囲の平均直径を有する、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
粒子外部の重合体に結合された被覆水溶性分子をさらに含む、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
粒子が重合体分子鎖あたり約5〜約150分子の眼科用薬剤を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
凍結乾燥された重合体粒子として製剤化される、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
微粒子またはナノ粒子として製剤化される、請求項3記載の組成物。
【請求項9】
眼内に注射された場合に持続放出性重合体貯蔵物を形成する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
眼科用薬剤の残基が重合体の主鎖に組み込まれた治療用ジオールである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
重合体が構造式(I)、(V)または(VII)により記述される化学式を有し、少なくとも一つの単量体nにおけるR3がCH2Phである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールがD-グルシトール、D-マンニトールまたはL-イジトールから得られる、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
約24時間〜約3年間かけて生分解する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
粒子中の重合体分子が約5,000〜約300,000の範囲の平均分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
眼科用薬剤が重合体の少なくとも一つに結合される、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
重合体中に分散されている少なくとも一つの生物活性剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
薬学的に許容されるビヒクルをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
固体を形成する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
約0.1〜約2.5 mmの厚さを有する、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
生分解性の、生体適合性の重合体の少なくとも一つのコーティング層をさらに含む、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
コーティング層の重合体が構造式(I)および(IV〜VIII)により記述される化学式を有する、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
コーティング層が生物活性剤を含んでいない、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
コーティング層および担体層の重合体が同じものである、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
担体層およびコーティング層の重合体に対する溶媒に不溶性であるが、眼内の条件に溶解する重合体の少なくとも一つの、担体層とコーティング層との間にある障壁層をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項25】
複数セットのコーティング層および障壁層が存在し、コーティング層が各連続的であるセットにおいて外側にある、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
複数セットの層のうちの連続的である、外側に位置する層が全ての内部層を包含する、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
組成物の形状が、約1 mmの最小の寸法を有し、実質的に長方形または円筒形である、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
約18〜25ゲージの口径を有する薬学的注射針を介した注射のためにサイズ調整される、請求項21記載の組成物。
【請求項29】
ディスク、シート、フィルム、繊維または管の形状に作成される、請求項21記載の組成物。
【請求項30】
少なくとも一つの眼科用薬剤を被験者の眼の内部または外部に送達する方法であって、
請求項1〜34のいずれか一項記載の組成物を、その中の眼科用薬剤の徐放のために被験者の眼の内部または外部に投与する段階を含む、方法。
【請求項31】
組成物が結膜下に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
組成物が薬学的注射針を介して投与される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
組成物がテノン嚢下(subtenon)送達のために移植される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
組成物が局所的に適用される、請求項30記載の方法。

【公表番号】特表2009−545516(P2009−545516A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509693(P2009−509693)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/010667
【国際公開番号】WO2007/130477
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】