説明

眼の長さの成長を制限するための方法および装置

本発明のいくつかの実施形態では、眼の長さに関する障害の症状を防ぐ、改善する、または、治療するための眼の長さに関する障害の患者への治療的介入に適用できる方法をめざした。本発明の実施形態は、眼の長さに関する障害患者の早期発見のための方法と、眼の長さに関する障害患者のさらなる視力低下を抑制し、眼の長さに関する障害を極力治療し、かつ、眼の長さに関する障害を防ぐための治療方法とを含む。本発明の追加の実施形態では、眼の長さに関する障害患者への治療的介入に用いられる特別な装置をめざした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2008年12月22日に出願された、(米国)仮出願第61/139,938号の利益を主張する。
【0002】
権利に関する政府声明
米国政府は、米国国立衛生研究所(NIH)が付与したGrant No.EY009620OLDのもとで政府による支援を受けた研究である本願に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、近視を含む眼の長さに関する障害の治療、眼の長さに関する障害のある患者を治療するために採用される種々の治療デバイス、および、生物機能である眼の成長をほぼ制御するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
眼は、非常に複雑で素晴らしい光学センサーであり、水晶体によって、波長依存の感光装置の列である網膜の表面上に、外部源からの光の焦点を合わせる。レンズ方式の光学装置と同様に、水晶体がとり得る種々の各形状は焦点距離に関連しており、網膜の表面上に眼で見た外部の像に対する逆像を生成するように、最適にまたはほぼ最適に外部光線が焦点を結ぶ。水晶体は、そのとり得る種々の形状において、眼から所定の距離範囲内にある外部の物体から放出されたまたは該物体から反射された光の焦点を最適またはほぼ最適に合わせ、また、該距離範囲外にある物体については、低最適度で焦点を合わせ、または焦点を合わせ損なう。
【0005】
健常者の、眼軸長、または、水晶体から網膜までの距離は、遠方の物体にほぼ最適に焦点を合わせるための焦点距離に相当する。健常者の眼は、遠近調節と称されるプロセスによって、水晶体の形状を変形させるために力を加えるための筋肉への神経入力なしで遠方の物体に焦点を合わせる。遠近調節の結果として健常者は、より近い近傍の物体に焦点を合わせる。多くの人は、近視などの眼の長さに関する障害をもっており、彼らの眼軸長は遠近調節なしで遠方の物体に焦点を合わせるために必要とされる眼軸長よりも長い。近視の人は、標準的な距離にある物体よりも近い範囲内において調整をすることなくより近い物体を見る。その距離の範囲は、眼軸長、眼の形状、眼のすべての寸法及びその他の要因による。近視の患者は、眼軸長その他の要因に応じて異なる程度のぼやけで遠方の物体を見る。一般的に、近視の患者は遠近調節が可能であるが、近視の人が焦点を合わせられる物体までの平均距離は、健常者よりも短い。近視の人に加えて、遠方の物体に焦点を合わせるために遠近調整、すなわち水晶体の形状を変える必要のある遠視の人がいる。
【0006】
概して、乳児は遠視であり、遠近調整なしで最適またはほぼ最適に遠方の物体に焦点を合わせるために必要とされるよりも眼の長さが短い。正視化と称される、眼の正常な発育期間中に、眼軸長は、眼の他の寸法に比例して、遠近調整せずに遠方の物体にほぼ最適に焦点を合わせることができる長さまで伸びる。健常者は、生体内作用により、眼が最終的な大人の大きさになるまでの間、ほぼ最適に眼の大きさに比例した眼の長さが保たれる。しかしながら、近視の人は、発育期間に、全体的な眼の寸法に対して眼軸長が、遠方の物体にほぼ最適に焦点を合わせることを提供する長さを超えて伸び続け、次第にはっきりとした近視に到る。
【0007】
近視の発生率は、世界各地で、驚くべき速度で増加し続けている。遺伝要因も疑われていたが、子供時代の過度な読書が近視の発症に関連する特定可能な環境上または行動上のただ一つの要因であると最近まで信じられていた。読書時間の制限は、子供時代に眼軸長が伸びることを防ぐための唯一の実践的方法であり、メガネやコンタクトレンズを含む矯正用のレンズは、近視を含む眼の長さに関する障害を改善するための代表的な基本的手段である。医学界及び眼の長さに関する障害のある人々は、のよりよい理解を求め、眼の長さに関する障害を予防し、改善しまたは治療するための方法を求め続けている。
【発明の概要】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、眼の長さ関連の障害の症状を防ぎ、改善し、または、治療するための眼の長さに関する障害の患者への治療に適用できる方法を指向している。本発明の実施形態は、眼の長さに関する障害患者の早期発見のための方法と、眼の長さ関連の障害をもつ患者のさらなる視力低下を抑制し、眼の長さ関連の障害を極力治療し、かつ、眼の長さ関連の障害を防ぐための治療方法とを含む。本発明の追加の実施形態では、眼の長さに関する障害をもつ患者への治療に用いられる特別な装置を指向している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】人間の眼の断面図を提供する。
【図2】眼の網膜内の光学式検知構造を示す。
【図3】神経回路の上位層を通る光受容体神経細胞の相互連絡を示す。
【図4】オプシン光受容体蛋白質を示す。
【図5】生体の受容体と生体内画像処理の下位レベルを概略的に示す。
【図6】図5に示す光受容体神経細胞の一部を上から見た図を示す。
【図7A】光受容体神経細胞信号の下位層の神経系の処理の一例を示す。
【図7B】光受容体神経細胞信号の下位層の神経系の処理の一例を示す。
【図8A】比較的遠方を見ているときの、眼軸長に対する網膜への画像入力の空間周波数のグラフを示す。
【図8B】それぞれの眼軸長に対して、遠方の景色が網膜に入った時の遠方の景色の画像を示す。
【図9A】状態遷移図を用いて、健常者の眼の長さのコントロール、近視の人の眼の長さの成長のコントロールの欠如および、様々なタイプの眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または治療するための本発明のいくつかの実施形態による治療方法を示す。
【図9B】状態遷移図を用いて、健常者の眼の長さのコントロール、近視の人の眼の長さの成長のコントロールの欠如および、様々なタイプの眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または治療するための本発明のいくつかの実施形態による治療方法を示す。
【図9C】状態遷移図を用いて、健常者の眼の長さのコントロール、近視の人の眼の長さの成長のコントロールの欠如および、様々なタイプの眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または治療するための本発明のいくつかの実施形態による治療方法を示す。
【図10】発明の一実施形態を表す、一般的な治療法の発明を表す制御流れ図を提供する。
【図11】過度な読書およびその他の行動上、環境上の近視の発症に関連している特定可能な環境上のまたは遺伝的要因によって引き起こされる近視を防ぎ、改善し、または治療するために使用される、本発明の一実施形態の例示的な治療デバイスを示す。
【図12】健常者、近視の人及び、本発明の実施例による治療的介入が施されている近視の人の年齢に対する眼軸長の曲線を示す。
【図13】図10、図11と関連付けて論じられる、本発明の実施例の治療デバイスと、治療的介入の効果を裏付ける実験結果とを示す。
【図14A】Lオプシン及びMオプシンをコードする遺伝子を特徴付ける超可変性の原因を示す。
【図14B】Lオプシン及びMオプシンをコードする遺伝子を特徴付ける超可変性の原因を示す。
【図14C】Lオプシン及びMオプシンをコードする遺伝子を特徴付ける超可変性の原因を示す。
【図14D】Lオプシン及びMオプシンをコードする遺伝子を特徴付ける超可変性の原因を示す。
【図15】Lオプシン及びMオプシンをコードする遺伝子を特徴付ける超可変性の原因を示す。
【図16】オプシン遺伝子における遺伝的変異の影響オプシン(光受容体蛋白質)を示す。
【図17】オプシン光受容体蛋白質変異体のいくつかのタイプにより成る網膜への画像入力の平均空間周波数への影響を示す。
【図18】本発明の一実施形態による、さまざまなタイプの突然変異オプシン光受容体蛋白質を有する人の近視の程度の予見可能性を示す。
【図19A】突然変異の光受容体蛋白質により引き起こされる近視眼と同様に、その他の要因、環境上の要因、行動上の要因、または遺伝子要因の組み合わせにより引き起こされる近視眼を治療するために用いられる、本発明のいくつかの実施形態による治療デバイスで採用されたフィルターの特徴を示す。
【図19B】突然変異の光受容体蛋白質により引き起こされる近視眼と同様に、その他の要因、環境上の要因、行動上の要因、または遺伝子要因の組み合わせにより引き起こされる近視眼を治療するために用いられる、本発明のいくつかの実施形態による治療デバイスで採用されたフィルターの特徴を示す。
【図20A】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20B】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20C】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20D】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20E】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20F】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20G】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20H】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【図20I】典型的なf(x)とg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)とg(x)の畳み込み演算f(x)・g(x)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、人間の眼の断面図を提供する。眼102は、形状がほぼ球体であり、強膜と称される丈夫な白い外側の層104で包まれており、外部光源からの光は透明な角膜106を通って瞳孔108に入る。瞳孔を通過する光は、水晶体110によって、眼の液体で満たされた114球体の内側表面の大部分を形成している半球体状の網膜112上に焦点を結ぶ。網膜は、光受容ニューロン、視神経116に最終的に接続する高水準の神経細胞構造を通じて階層的に相互接続された光受容ニューロンを含み、網膜によって収集され高水準の神経細胞によって処理された光データが視神経を通って中枢神経系に送られる。虹彩118は、瞳孔の直径を変えるシャッターとして作用し、これにより、瞳孔に入る光束を変える。調節プロセスは、さまざまな距離にある物体を網膜上に焦点を合わせるように水晶体の形状を変え、毛様筋120の神経興奮を引き起こす。
【0011】
図2は、眼の網膜内の光検出構造を図示している。図2中で、断面図内の、網膜の小さな一部分202が高水準の拡大図により表されている。光受容ニューロン206のような光受容ニューロンは、眼208の内層の細胞に沿った網膜の比較的厚い層を形成する。光受容ニューロン206のような光受容神経細胞は、神経のシナプスを介して双極細胞210のような双極細胞と接続し(インターフェイスし)、双極細胞210は、水平神経細胞212および最終的に光受容ニューロンと視神経214とを相互接続させる神経細胞の上位層に接続(インターフェイス)する。光受容ニューロンは、網膜の光子検出要素であり、例えばシナプス216のようなシナプスを介して、衝突した光子を、双極細胞210に伝えられる神経信号に変換する。
【0012】
図3は、神経回路の上位層を通る光受容体神経細胞の相互接続を図示する。図3中、光受容ニューロン302などを含む光受容ニューロンの密林が、眼の外側の網膜層(outer retina layer)の一部を形成する。光受容ニューロンは、神経相互連絡層304によって集合体として表される双極神経細胞、水平神経細胞および上位神経細胞を介して相互接続される。高レベルの相互接続レベル304は、生の光受容体信号の神経処理の初期層を提供する。各異なる種類の光受容ニューロンは、対応する1種類の光受容蛋白質を含み、桿体光受容ニューロンはロドプシンを含み、異なる3種類の錐体光受容ニューロンの場合、異なる3種類の光受容蛋白質の内の一つを含む。光受容体蛋白質は、オプシン光受容体が感受するエネルギー範囲内のエネルギーを有する光量子の、レチナール補因子による吸収に起因するレチナール補因子色素分子のシス構造からトランス構造への構造変化に構造的に影響を与える。光受容体蛋白質の構造変化は、隣接する伝達物質との光受容体蛋白質の相互作用を変え、伝達物質を活性化させ、次に、cGMP特異的ホスホジエステラーゼを活性化させる。cGMP特異的ホスホジエステラーゼは、cGMPを加水分解し、cGMPの細胞内濃度を減少させ、次に、光受容体細胞膜の依存性のイオンチャネルを閉じる。依存性のイオンチャネルを閉じることは、光受容体細胞膜の過分極をもたらし、次に、光受容ニューロンと網膜神経回路の上位層とを結合しているシナプスへの神経伝達物質グルタミン酸の放出率を変える。実質的に、しきい値レベルでグルタミン酸の放出が変わり、双極細胞は、網膜の神経回路内に電気化学的信号を放出する。しかしながら、網膜の神経回路は、単純には、個々の光受容体神経細胞初期化信号を統合せず、代わりに、初期レベルの神経処理を行う。該神経処理は、隣接した光受容ニューロンの時間的、空間的状態、エッジ検出、特徴検出、コントラスト変調などのタスクを含む、コンピュータによる様々な画像処理システムで行われる下位レベルの画像処理作業タスクに類似した、たくさんの下位レベルの画像処理タスクに基づく、光受容体神経細胞のフィードバック抑制を含む。
【0013】
図4は、オプシン光受容体蛋白質を図示する。オプシンは、膜貫通蛋白質ファミリー、特に膜結合型Gタンパク質共役受容体のメンバーである。図4では、オプシン光受容体蛋白質が、一連のビーズ402として図示され、ビーズはそれぞれアミノ酸モノマーを表している。円筒状構造体404のような円筒状の構造体は、光受容体神経細胞膜を補う膜貫通αヘリックスのセグメントを表す。上記の通り、下記に参照されるSオプシン、Mオプシン、Lオプシンのような、異なる3タイプのオプシンがある。MオプシンとLオプシンは相同性があり、98%のアミノ酸配列が同一性を有する。始原の(primordinal)MオプシンとLオプシンにおいて、図4中で通し番号が表示されたオプシンのアミノ酸配列内の11箇所のアミノ酸モノマーは異なる。以下で詳細に記載するように、MオプシンおよびLオプシンをコードする遺伝子は、超可変である。結果として、現代人には、LおよびMオプシン光受容体蛋白質の多くの変異があり、この変異の多くは、図4中で通し番号で表示された11のアミノ酸を含む。
【0014】
図5は、生物学的光受容の生物学および生物学的画像処理の下位レベルのいくつかの側面を概略的に示す。図5において、人間の網膜の外側部分の光受容体の小さな一部分または矩形領域502が概略的に示されている。該網膜は、言うまでもなく膨大な数の光受容ニューロンを含む。光受容ニューロン504のような、光受容ニューロンが楕円体で表されており、それらの端部は光受容ニューロンのタイプを示すために、陰影による符号化がなされている。図5には錐体光受容ニューロンだけが示されている。網膜もたくさんの桿体光受容ニューロンを含む。光受容ニューロンは、反対側の端部で、矩形基質として表された高レベルの神経回路506または配列に接続されており、そこから最終の光信号508が出される。図5に概略的に示された構造は、多くの電子的な光レセプター装置と類似性を示す。図5において、510から512の3つのグラフは、3つの異なるタイプの光受容ニューロンの吸光度スペクトルを示す。各グラフにおいて、グラフ510の垂直軸516のような垂直軸は、正規化した吸光度値を表す。形式的に単位のない量の、波長λでの吸光度は次に式で定義される。
【数1】


ここで、Iは、サンプルを通過した波長λの光の強さであり、Iは、波長λの入射光の強さである。グラフ510の水平軸518のような、水平軸は、入射光の波長を表す。グラフ510は、Sオプシンの吸光度スペクトルを示し、光の波長λ=420mmで最大吸光度520となる。SオプシンのSは、短波長を表す。ここで留意すべきは、Sオプシンを含む、S光受容ニューロンの陰影付け記号524が、グラフの右手に示されていることである。グラフ511は、M光受容ニューロンまたは中波長光受容ニューロンの吸光度スペクトルを示し、また、グラフ512はL光受容ニューロンまたは長波長光受容ニューロンの吸光度スペクトルを示す。異なる3タイプの光受容ニューロンのそれぞれの、異なるタイプのオプシン分子は、異なる3タイプの光受容ニューロンの異なる吸収特性を決定する。3タイプの異なる光受容ニューロンの異なる吸収特性は、人間の三次元の色覚を提供する。
【0015】
図6は、図5に示された光受容体の一部を上から見た図を示す。上から見ると、光受容ニューロンは、陰影記号付きの円盤に見える。陰影記号は図5に使用される陰影記号と同じである。図6に示されるように、L光受容体とM光受容体を合わせると、光受容体の総計のほぼ95%となる。図6に示されたように、異なるタイプの光受容ニューロンの分布は、少し不規則に見えるがランダムではない。
【0016】
図7A、Bに、光受容ニューロン信号の下位レベル神経細胞処理の一例を示す。下位レベル神経細胞処理の一例を示すのに、光受容ニューロンのタイプは重要ではないので、図7A、Bには陰影記号付きで示していない。図7A、Bは、図6に示されたのと同じ部分または同じ範囲の光受容ニューロンを示す。図7Aにおいて、はっきりした照射境界が一部の光受容ニューロンを斜めに縦断している。より明るく照射された光受容ニューロン702には、陰影を付けず、より低い照射度で照射された光受容ニューロン704には陰影を付けた。線706は、より明るく照射された光受容ニューロンとより低い照射度で照射された光受容ニューロンとの境界線を表す。このような境界または境界線は、空に対するビルの輪郭または白ページ上に印刷された文字の縁のようなイメージで頻繁に生じる。図7Bでは、光受容ニューロンの信号応答を陰影付けによって示しており、最高レベルの応答を発する細胞には濃く陰影を付け、最低レベルの応答を放出する光受容ニューロンは陰影を付けていない。図7に見られるように、光受容ニューロンは、明暗境界線706に隣接する光の入射に対してもっとも活発に応答する。低照射の光受容ニューロン708のような、境界線から遠い場所にある、低照射の光受容ニューロンは、低い信号応答を示す。一方、光受容ニューロン710のような、明暗境界線から遠い場所にある、照射された光受容ニューロンは、明暗境界線から遠い場所にある、低照射の光受容ニューロンよりは、ほんの少し高い信号応答を示すが、明暗境界沿いの細胞よりは大幅に低い信号応答を示す。このタイプの信号応答は、同じように応答するか、または同じように照射された隣接する光受容ニューロンによる光受容ニューロンの負のフィードバックを介して、神経回路(図5の506)の層において達成される。対照的に、明暗境界線(図7Bの706)近傍の光受容ニューロンのような、大幅に異なる信号応答を示す隣接する光受容ニューロンは、正のフィードバックを受け取り信号応答を発生する。これは、エッジの近く、またはエッジに沿った画素の画素値を高めるため、および比較的一定の画素値または低コントラストの範囲内にある画素の画素値を下げるために、ラプラス演算子その他の特異的演算子が画像の画素に畳み込まれるコンピュータによるエッジ検出に類似している。網膜内の光受容ニューロンの領域にある光受容ニューロンから集まる信号応答は、明らかに、水晶体によって網膜の光受容ニューロンの範囲上に焦点を合わせられる画像の空間周波数またはコントラスト粒状度に比例している。概して、網膜に映る焦点を合わせられた遠方の景色の画像は、ぼけた画像または焦点外の画像に比べて、かなり高い空間周波数、またはエッジネス(edginess)を生み出す。眼の網膜内の高レベル神経回路は、網膜への画像入力の空間周波数またはエッジネスを直接検知し応答することができ、よって、画像の焦点が合う度合いを間接的に検知し応答することができる。
【0017】
本願の発明者は、相当な研究努力を経て成長期間に眼軸長をコントロールする仕組みを明らかにしてきた。図8Aは、眼軸長に対する、比較的遠くの景色を見ているときに網膜への画像入力の空間周波数のグラフを示す。図8Bは、それぞれの眼軸長ごとに、網膜に映る遠くの景色の画像を示す。図8Aに示すように、眼軸長に対する空間周波数の曲線は、22mmと24mmの間804で変曲点を示し、空間周波数は、眼軸長が21mmと24mmの間で急激に減少する。図8Bに示されたように、810では、16mmの眼軸長812で網膜上に焦点が合い、竹がはっきりと見え、814では、24.5mmの眼軸長816で、著しくぼける。上記のように、画像のぼけは、網膜内の神経回路の下位層によって直接、検知し応答できる。これにより、眼軸長が、発達段階で眼を伸ばす正の信号、負のフィードバック信号、または網膜内の神経回路により生成される眼を伸ばす正の信号および負のフィードバック信号の両方によって、コントロールされることがわかる。眼を伸ばす正の信号は、網膜への画像入力の平均空間周波数がしきい値の空間周波数より低く減少することに応答してオフになり、一方、負のフィードバック信号は、網膜への画像入力の平均空間周波数がしきい値の空間周波数より低く減少することに応答してオンになる。上記のように、乳児は一般的に遠視である。遠視の状態では、遠方の物体に焦点を合わせるのに適切な状態まで眼を伸ばすために、眼を伸ばす正の信号が、網膜の神経回路により生成されうる。眼が、遠方の物体に焦点が合わなくなるポイントを超えて伸び、空間周波数がしきい値より低く減少し、思春期直前の子供の成長途中の眼である約24.5mmになり眼を伸ばす正の信号がオフになるので、眼はさらに伸びることはなく、遠方の画像もさらにぼけることはなくなる。また、網膜への画像入力の平均空間周波数が、しきい値の空間周波数を通り過ぎて低下することにより開始される負のフィードバック信号の結果として、眼を伸ばす信号が停止することもある。
【0018】
図9AからCは、状態遷移図を用いて、正常に発育している人の眼の伸びのコントロールと、近視の人の眼のコントロールの欠如と、種々のタイプの眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または、治療するために使用される本発明のいくつかの実施形態を図示する。もちろん、生物学的システムにおいて、概念状態の生物学的状態への割り当ては任意であり、生物学的状態のいくつかの側面を強調するために用いる。例えば、特定の生物学的システムにさまざまな異なる状態を割り当てるたくさんの方法がありうる。状態遷移図は、システム全体の詳細な説明を提供するというよりもむしろシステムのいくつかの側面のダイナミックスを図示するために用いる。
ここで留意すべきは、図9AからCにおいて、正の眼を伸ばす信号が仮定されていることである。類似の状態遷移図が、さらなる眼の伸びを防ぐ負のフィードバック信号のために容易に作成される。図9Aは、成長期間中の眼の伸びの正常なコントロールを表す状態遷移図を提供する。人間の大半が生まれる、初期状態902においては、網膜への画像入力の空間周波数は高く、画像は、調節なしで焦点があっているか、調節によって焦点を合わすことができるかのどちらかである。眼は、第1の状態902から第2の状態904へと変移することができ、ここで、平均して、より低い空間周波数の画像が網膜に映り、画像の焦点は極めてわずかに外れる。網膜内の神経回路の上位レベルにより生成される、りょう線で表される眼を伸ばす信号906の結果として、眼は状態902から状態904に移行する。追加の眼を伸ばす信号910の結果として、眼は第3の状態908に移行することができ、第3の状態908では、平均的に、網膜への画像入力の空間周波数の閾値より低く、かつ、遠方の景色や物体の網膜への画像入力は焦点が外れている。一旦、空間周波数しきい値が過ぎると、眼は、眼を伸ばす信号を受け取らないか、眼を伸ばす信号に応答しない。これは、状態908から描かれる眼を伸ばす信号の弧がないことにより、図9Aに示されている。
眼が第3の状態に属すると、眼はさらに伸びることはできない。しかしながら、眼は発育し、かつ、成長し続けるので、眼は状態908から904に移行して戻ることができる。成長期間に、眼が第2の状態904と第3の状態908との間を断続的に移行して、眼軸長が眼の全体的な成長および他の眼の特徴において成長によってもたらされる変化に適合するレートで成長する。最終的に、青年期後期または成人早期に、眼は眼を伸ばす信号に応答しなくなり、成長および発育し続けなくなる。それゆえ、結局眼は、第3の状態908に安定して属すようになる。
【0019】
図9Aの下部において、グラフ920に示したように、垂直軸が示す眼の成長率は、水平軸が示す網膜への画像入力の空間周波数またはぼけに依存する。眼の成長は、空間周波数しきい値924に達するまで高いレート922で続き、その後、眼の成長は急速に衰え、眼の軸長を、網膜への画像入力の平均的なぼけが、眼を伸ばす信号の禁止をトリガーするぼけしきい値よりわずかに大きくなる軸長に少なくとも一時的に修正する。
【0020】
図9Bは、図9Aに使用された図解規則を用いて、近視の人および、眼の長さに関する他の障害をもつ人の状態遷移図を示している。この場合は、最初の2つの状態930と932は、図9Aに示された最初の2つの状態(図9A中の902および904)と同じである。しかしながら、新しい第3の状態934は、網膜への画像入力の平均空間周波数が、状態932の空間周波数レベルより減少しているが、該平均周波数は、眼を伸ばす信号の不活化、および/または眼の伸びを止めるための負のフィードバック信号の活性化をトリガーする空間周波数しきい値より大きい。正常な状態遷移の状態遷移図の第3の状態(図9A中の908)とは異なるこの第3の状態において、眼は眼を伸ばす信号936に応答して成長し続ける。この第3の状態は、環境上の要因、行動上の要因、遺伝的要因、追加の要因、またはさまざまなタイプの要因の組み合わせに起因しうる。ここで留意すべきは最終状態であり、ここで、入力画像の平均空間周波数は空間周波数しきい値よりも下がって眼はもはやそこから伸びず940、弧によって他の状態にも接続されず、それゆえ他の状態から到達不可能となる。図9Bの下部のグラフ942に示されたように、眼の伸びの停止をトリガーする空間周波数しきい値を超えて、高いレートで、眼の成長は続く。
【0021】
図9Cは、本発明の実施形態の基礎となる、過剰な眼の伸びを防ぐための方法を示す。図9Cは、図9Bの状態遷移図に現れる状態930、932、934と同じ状態を含む。しかしながら、図9Bに示す状態遷移図と異なり、図9Cに示す状態遷移図は、第3の状態934から眼がそれ以上伸びることができない、状態940への変遷を提供する追加の線または弧950を含む。本発明の実施形態を表す、網膜に映る平均空間周波数を減少させることのできるいくつかの治療方法または装置は、矢印950で示される、眼がそれ以上もう伸びることができない図9A中の状態908と同一の最終状態940への状態変化をさせる。本発明のこれらの実施形態は、特別なメガネ、コンタクトレンズおよび、他の装置、薬物療法、行動修正療法などの装置や治療技術を含みうる。一般的に、この変遷950は眼の網膜への画像入力の人工的なぼけを導入するための方法といえ、画像の平均空間周波数は、継続中の眼の伸びの抑制をもたらす空間周波数しきい値より低くなる。もちろん、人工的なぼけを中止すれば、矢印952で表されるように、眼は、変遷して状態934にもどる。図9A中の状態908のように、状態940に眼を維持するためには人工的なぼけの適用が不十分なまま発育して、眼の特徴が変化する時、または、人工的なぼけがあたえられなくなった時には、眼は、状態940から状態932か934のどちらかに変遷して戻ることもできる。状態934への眼の変遷の前に、眼の長さに関する障害とみとめられるか或いは、診断された時、曲線962によって表される、正常な発育における、さらなる眼の伸びを抑制する、空間周波数しきい値を超えた空間周波数の減少と、同時点、または、同様の時点で、眼の伸びを抑制するための人工的なぼけを適用することができる。これは、眼の長さに関する障害を防ぐ、治療的介入の適用を表す。しかし、曲線964で示すように、眼が適切な眼軸長を超えて成長する時でも、人工的なぼけに基づく治療法の適用は、眼の長さに関する障害の影響を改善することができる。以下にさらに述べるように、この改善は、場合によっては、眼が発育し続ける子供時代の、眼の長さに関する障害の治療に変えることができる。
【0022】
図10は、本発明の一実施形態を示す、汎用の治療法発明を表す制御流れ図を提供する。ステップ1002では、患者の情報を得る。ステップ1004においては、患者が眼の長さに関する障害をもっているか否かを判定する。この判断は、様々な異なる方法によって、下すことができる。例えば、いくつかの視力検査は、思春期直前あるいは青年期の子供の、初期の近視を明らかにする場合がある。あるいは、眼軸長を直接はかるためや、計測された眼軸長または、眼のほかの特徴に対する計測された眼軸長の比率と、標準の眼軸長または、同年齢または同じ大きさの人のその比率とを、比較するために、さまざまな機器を使用することができる。もし、ステップ1006で定めているような障害が現れたら、ステップ1008から1012のwhileループによって表された治療的介入が、眼が、眼を伸ばす信号に応答しなくなるまで、あるいは、眼の長さに関する障害が現れなくなるまで続く。whileループが繰り返す間、毎回ステップ1009で、特定の患者の現在の眼の長さと、適切な眼の長さの相違の判定が下される。次に、ステップ1010において、ステップ1009で判定された相違に相応するレベルの、人工的なぼけを引き起こすために、装置または処置が患者に適用される。適用される人工的なぼけのレベルは、ステップ1009で判定された相違に比例する場合、ステップ1009で判定された相違に反比例する場合、あるいは、眼の長さに関する障害の現在のステージや、眼の長さに関する障害のタイプや、他の要因次第で相違の範囲にわたって一定となる場合がある。ステップ1011で表された一定期間が経過したあとも、依然として眼の伸びが潜在的な問題であるときは、人工的なぼけの追加の適用に関する患者の再評価のためにステップ1009に戻る。上記のように、子供による過度の朗読は近視の一因となる。
【0023】
人間の眼は、印刷された文字のような細かい近接した物体に焦点を合わせるというよりも、比較的遠方の景色や物体を見るために進化している。継続的に、近くの印刷された文字に焦点を合わせていると、眼の伸びに起因して引き起こされる遠方の景色や物体のぼけを越える比較的高い空間周波数の画像が網膜に映る。図11は、過度の朗読、および/またはその他の行動、環境、あるいは、遺伝子によって引き起こされる近視の防止、改善、あるいは治療のために使用される本発明の一実施形態である治療デバイスの一例を示す。この装置は、メガネ1102より成り、その両方のレンズには、小さな隆起またはへこみ、レンズの材料の屈折率と異なる屈折率を有する半透明の含有物および透明な含有物、あるいは図11中でメガネのレンズ全域に小さな黒い点で表されている特徴(フィーチャ)のような他の特徴がメガネをかけている患者が見る画像をぼけさせるために導入される。メガネを装着している人が、朗読および他の通常の行動を実施できるように、一つのレンズは、はっきりと焦点を合わせられるクリア領域1104を含む。補足的なメガネ1106は、反対側のレンズにあるクリア領域1108を特徴とする。それぞれのメガネを交互に装着することによって、メガネを装着している人の網膜への画像入力の平均空間周波数を空間周波数しきい値よりも下げるような人工的なぼけが導入され、眼のさらなる伸びを少なくとも一時的に防ぐ。図11において、それぞれのメガネは、隔週で装着されるように示されているが、本発明の他の実施例では、2つのメガネの内の1つが装着される期間は、図11に示されるような1週間ではない場合があり、同様に、交互に装着しない場合もある。図11中で、1110および1111は、レンズの縁からの距離に対するドット/mmを表し、レンズの中央からのドット密度の径方向の分布を示す。レンズの中央領域のドット密度を減少させることは、視軸と軸方向に並んだ景色の一部の比較的正常な画像取得を促進する。それは、概して観察者が集中して見ている風景の一部であり、一方で光軸と軸方向に並んでいない風景の一部は次第にぼける。本発明のいくつかの実施形態において、治療デバイスによって生成される人工的なぼけの量は、ドット密度の変更、ドット直径の変更、含有物の材料の変更、あるいは治療デバイスの付加的または複合的な特徴の変更により、視力を20/20から約25/20の範囲まで減らすようにコントロールできる。
【0024】
本発明の他の実施形態において、人工的なぼけは、レンズを通して伝えられる光の波長より小さい粒子の取り込みにより引き起こされる光散乱か、レンズの表面に適用されたフィルムまたはコーティングによって生成される。遠近調節のほとんどを水晶体がする正視眼で見る典型的な風景において生成されるぼけを厳密にまねるように、レンズの異なる領域で生成される光散乱の量を変えることができる。
【0025】
本発明の更に別の実施形態では、回折が、ぼけを提供するために使用されている。治療デバイスレンズを通して伝えられる光の波長より大きいか、あるいは、その波長と同じ大きさである、粒子を吸収している、不透明もしくは半不透明な光が、治療デバイスレンズを通して伝えられ、その治療デバイスレンズは、レンズに内蔵されるか、レンズの表面に適用されるか、あるいは、フィルムまたはコーティングとして付加されている。本発明の更に別の実施形態では、レンズにぼけを与えるために、拡散器を使用することができる。
【0026】
本発明の別の実施形態によると、人工的なぼけを導入するためにさまざまなタイプの進歩的なレンズが採用されている。現在利用できる進歩的なレンズは、レンズの上部に特に強い負の補正を提供し、また、レンズの下部にはより弱い負の補正を提供するように働く。これらの補正は、遠くの物体と、すぐ近くの物体の両方の視野に焦点を合わせることを促進する。レンズの上部で最小の負の補正を提供し、下部で最大の負の補正を提供する、進歩的でないレンズは、視野全体にわたって人工的なぼけを提供し、これにより、本発明の追加の実施形態を構成する。本発明のさらに追加の実施形態を表す、高次収差を含むことによりぼけを導入するメガネまたはコンタクトレンズは、焦点が合った視覚中心点を残す、周辺収差を生成するメガネまたはコンタクトレンズを含む。
【0027】
図12は、健常者、近視の人および、本発明の代表的な実施形態による治療的介入がなされている近視の人に関して、年齢に対する眼軸長の曲線を表している。曲線1202で表された健常者は青年期後期または成人早期に到るまで一定の眼の伸びを示し、眼の長さは通常24mmと25mmとの間の長さで安定して維持される。上記のように、図9B中の状態932と934との間での眼の頻繁な変遷によって、一定のレートはコントロールされる。一方、図12の曲線1204によって表された、近視の人には、眼の成長がより高いレートで起こり、健常者1202の曲線に対する曲線1204の線形部分の急傾斜によって表されている。上記のように、このより高いレートでの眼の伸びは、図9B中の状態934を眼が維持し続けることに対応しており、状態934において、眼は眼を伸ばす信号に応答し続けるか、あるいは、過度の朗読、他の環境上の要因または、遺伝的要因による、負のフィードバック信号に応答しない。曲線1206で示されたように、5年間の人工的なぼけの適用が、眼の伸びのレートを増加させ、かつ、最終的には、眼の長さを少し伸ばすか、あるいは、健常者の眼の長さにすることができる。このように、曲線1206は、眼の長さに関する障害の影響が治療的介入によって治療されるケースを表す。
【0028】
図13は、本発明の実施形態を表す図10および図11を参照して検討された、治療デバイスおよび治療的介入の、有効性を確認する実験結果を示す。このデータは、進行中の近視を有し、かつ、近視の進行の一因となるオプシン突然変異体を有する、11歳から16歳までの子供の20の眼から得た。該結果は、該治療的介入が近視を防ぎながら、眼軸長成長率を正常範囲内に至らせることを示す。グラフ1302に示されたように、曲線1306で表された通常のコントロールレンズを装着している人とは対照的に、曲線1304で表された、図11中に示された治療デバイスを採用している人は、眼の伸びのレートが、著しく減少する。グラフ1310は、コントロールレンズ1312を装着している人の眼軸長の成長率に対する、図11中に示された治療デバイス1310を装着している人の眼軸長の成長率を、um/dayで示している。
【0029】
図14Aから15は、LオプシンおよびMオプシンをコードする遺伝子を特徴付ける超可変性のソースを示す。図14Aに概略的に示されたように、X染色体1402の端部に向かって、LオプシンおよびMオプシンをコードする遺伝子がお互い近接して配置されている。図14Aおよび以下の図14Bから14Dにおいて、それぞれのDNAの逆平行鎖の極性を示す矢印1404および1406と共に、X染色体を表す、2つのDNAの逆平行鎖が、上下に示されている。図14Bには、減数分裂のプロセスが示されており、ここで、4つの配偶子細胞を生成するために1つの細胞が2回細胞分裂する。X染色体の端部に対してのみ、プロセスを示す。X染色体に対する図示されたプロセスは女性にのみ起こる。女性において、2つの異なるX染色体1410および1412は各々、染色体1414および1416各々の2番目のコピーをそれぞれ生成するために複製される。最初の細胞分裂の間、2つのX染色体の2つのコピーは、面1420に対して、整合している。矢印1434から1437で示されたように、最初の細胞分裂において、娘細胞1430および1432は各々、各X染色体の1つのコピーを受け取る。2つの娘細胞は、4つの生殖細胞1440から1443を生成するために再び分裂し、4つの生殖細胞1440から1443は各々、1つのX染色体のみを受け取る。図14Cに示されたように、内部の組み替えプロセスは、1つのX染色体の配列の一部と他のX染色体の配列の一部とを交換させることができる。このプロセスは、面1420に対して整合している、どちらか一方の対の染色体の間で起こり得る。本質的に、二本鎖切断は、第1のX染色体1446の1つのコピーおよび第2のX染色体の1つのコピー内の同じ位置で起こり、図14Cに示したように、2つの壊れた染色体の右側部分は交換され、二本鎖切断は、第1のX染色体および第2のX染色体の両方の元の遺伝子の一部を含む、結果として生じる遺伝子を生成するために修復される。このような交差する事象が単一遺伝子内で繰り返し起こる場合があり、減数分裂の間、遺伝子内の遺伝情報を混ぜるか、あるいは、組み替えることができる。残念ながら、L遺伝子およびM遺伝子は、順に、ほぼ同一であり、減数分裂の間、面をはさんだ各対の染色体の整合または記録は、ふるいにかけられる場合があり、図14Dに示されたように、結局は、1つの染色体のL遺伝子1460は、他の染色体のM遺伝子1462と整合する。交差事象は、交差事象の他の生成物1474のM遺伝子の完全欠失と並んで、交差事象は、M遺伝子1466内のL遺伝子1464の一部またはそれ以上の部分、および、交差事象の1つの生成物における、追加の、余分なM遺伝子1468、および、L遺伝子1472におけるM遺伝子の一部の取り込みへとつながることができる。図15では、二本鎖染色体が単一体1480によって表され、繰り返される整合されていない組み替え事象は、それぞれがL遺伝子またはM遺伝子のいずれか一方にのみ、いったん配置された多重領域を含む、たくさんの異なる、キメラのL遺伝子およびM遺伝子変異体につながる可能性がある。2つのX染色体を有する女性においては、L遺伝子およびM遺伝子の超可変性の影響がX染色体の余剰性によって改善される。しかし、単一のX染色体のみ有する男性においては、L遺伝子およびM遺伝子の超可変性の影響は、深刻である。男性の12パーセントは、色盲である。
【0030】
図16は、オプシン光受容体蛋白質の吸光度特性に関するオプシン遺伝子における遺伝的変異の影響を示す。グラフ1602は、正常な始源のオプシン光受容体蛋白質に関する吸収曲線を示す。グラフ1604は、オプシン光受容体蛋白質変異体に関する吸収曲線を示す。オプシン光受容体蛋白質のアミノ酸配列の突然変異体または変種は、さまざまな異なる形で、吸収曲線に影響をおよぼす可能性がある。例えば、最大吸収の波長は、変えられる1606場合があり、かつ、曲線1608の形状は正常な曲線に対して変えられる場合がある。多くの場合、最大吸収のレベルは、最大吸収の正常なレベルに対して大幅に減少する1610かもしれない。以下にさらに述べるように、眼に入る前の光に対するフィルターの適用は、正常なオプシン光受容体蛋白質に見られる最大吸収の相対的な変位および大きさを修復するため、正常または異なるオプシン光受容体蛋白質変異体に対するオプシン光受容体蛋白質変異体の効果的な吸光度スペクトルを調節するために利用することができる。
【0031】
図17は、いくつかのタイプのオプシン光受容体蛋白質変異体によって生成された、網膜への画像入力の平均空間周波数への影響を示す。図5中に示されたように、グラフ511および512において、2つのタイプのオプシン光受容体蛋白質の最大吸収の波長の間が、30nm異なることを除いて、Mオプシン光受容体蛋白質およびLオプシン光受容体蛋白質はよく似ている。しかしながら、最大吸収が著しく少ない、オプシン光受容体蛋白質突然変異体を生成するM遺伝子またはL遺伝子への突然変異体について言えば、正常なL光受容体およびM光受容体を含む網膜に映った時、拡散画像が低い空間周波数を生成するが、例えば、正常なLオプシン光吸収受容体蛋白質および低吸収の突然変異Mオプシン光吸収受容体蛋白質を含む網膜は、比較的高い周波数が生成される。図17は、図6で使用されたものと同様な図的表現が使用されている。しかしながら、M光受容ニューロンおよびL光受容ニューロンがそれぞれの最大吸収波長で同様な最大吸収を有する図6とは異なり、図17の場合には、M光受容体蛋白質は、最大吸収波長で著しくより小さな最大吸収を示す、突然変異体である。この場合、赤および緑の波長が比較的同様の強度で起こる、拡散入射光は、突然変異M光受容体蛋白質および正常なL光受容体蛋白質の最大吸収における差異に起因する比較的高い空間周波数を生成する代わりに、正常な網膜上に低い空間周波数を生成するだろう。図17において、境界1702のような境界が、M光受容ニューロンとL光受容ニューロンとの間に描かれている。図6に示されたような、正常な網膜においては、散光によって境界は生成されないだろうが、突然変異M光受容体蛋白質を含む網膜においては、近接するL光受容ニューロンとM光受容ニューロンとの間で、網膜全体を通じて境界が生じる。従って、低吸収の突然変異M光吸収ニューロンを含む網膜により知覚された空間周波数は、拡散画像またはぼけ画像によって正常な網膜で知覚される空間周波数よりかなり高い。それゆえ、低吸収の突然変異光受容体蛋白質を有するたくさんの人においては、上記で図9Aを参照して述べたように、結果として正常な人のさらなる眼の成長を抑制する、空間周波数しきい値を超える空間周波数の減少は、起こらず、代わりに、眼は、図9Bに示す状態934を維持し、眼軸長が適切な発育および焦点のための眼軸長を超えているという事実にもかかわらず、眼を伸ばす信号に応答し続ける。
【0032】
図18は、本発明の一実施形態による、さまざまなタイプの突然変異オプシン光受容体蛋白質を有する人の、近視の程度の予測可能性を示す。測定された近視の程度が、水平軸1802に示されており、垂直軸1804に示された、さまざまな光受容体蛋白質突然変異体またはハプロタイプについて予測された近視の程度と深く関連していることが示されている。X線結晶学、分子力学により提供され光受容体蛋白質の詳細な構造に基づいて、予測でき、かつ、予測は、光受容体蛋白質の配列および構造における変化によって、光吸収上の効果の理解のための、定量的な、分子基礎を提供する、追加のコンピュータによる、物理的な技術の適用によってもたらすこともできる。従って、患者のLオプシン遺伝子およびMオプシン遺伝子のシーケンシングは、突然変異光受容体によって誘発される近視、または、初期の突然変異光受容体によって誘発される近視を明らかにし、更に突然変異光受容体誘発性の近視と思われる近視の程度を明らかにすることができ、人工的なぼけの適用期間中の各時点で、順々に、患者に適用する必要がある人工的なぼけの程度を知らせることができる。
【0033】
突然変異光受容体蛋白質遺伝子から生じる眼の長さに関する障害のある人において、異なるタイプの光受容体蛋白質の相対的な吸収特性を修復できる波長フィルターを組み込んだ、メガネまたはコンタクトレンズの使用により、突然変異光受容体蛋白質誘発性の空間周波数の増加を取り除き、図9C中の状態934によって表された、抑制されない眼の伸びから、眼は正の眼を伸ばす信号の欠如または負のフィードバック信号に応答する、状態940へと変遷させる。図19A、19Bは、本発明のいくつかの実施形態による、他の要因あるいは、他の要因、環境上の要因、行動上の要因、または、遺伝子要因の組み合わせにより誘発される近視と同様に、突然変異光受容体蛋白質誘発性の近視の治療にも使用される、治療デバイスに採用されたフィルターの特徴を示す。図19Aに示したように、M光受容体蛋白質突然変異体は正常なM光受容体蛋白質より光を吸収する効率が低く、領域1904の波長を優先的に伝えるフィルターは、L光受容体遺伝子吸収よりもM光受容体遺伝子吸収を増加させる傾向があり、それゆえ、正常なL光受容体蛋白質による光受容と突然変異M光受容体蛋白質による光受容との間のバランスを修復する。一方、図19Bに示されたように、L光受容体遺伝子に異常があり、かつ、正常なL光受容体蛋白質より吸収しないとき、波長範囲1906内の光を優先的に通すフィルターは、M光受容体蛋白質による吸収より、突然変異L光受容体蛋白質による吸収を増加させ、これにより、2つの異なるタイプの光受容体蛋白質の間の吸収バランスを修復する。
【0034】
図20AからIは、典型的なf(x)およびg(x)関数を用いた、2つの関数f(x)およびg(x)の畳み込み演算f(x)*g(x)を示す。畳み込み演算は、次式で定義される。ここでαは、積分のダミー変数である。
【数2】


図20Aおよび20Bは、2ステップ関数f(α)およびg(α)を示す。関数f(α)は、αの値が0と1の間で値1を有し、その範囲外では値0を有す。同様に、関数g(α)は、アルファの値が0と1の間で値1/2を有し、その範囲外では値0を有す。図20Cは、垂直軸を介して関数g(α)の左右対称の像である関数g(−α)を示す。図20Dは、α軸に関して示された特別なx2002の関数を示す。図20Eから20Hは、xの値が異なる積f(α)g(x−α)を図示する。最後に、図20Iは上記の表現による関数f(x)とg(x)とのコンボリューションを示す。関数f(x)*g(x)は、xの各値で、図20FからH中の陰影領域2006から2008によって示されたような関数f(α)と関数g(x−α)の間の重複に等しい値を有する。言い換えれば、コンボリューションは、関数g(x)の鏡像の生成および、関数f(α)と関数g(x−α)の間の重複のようなコンボリューションの値を計算する各ポイントでの、関数f(α)に対するα軸に沿った、−∞から∞への変換と考えることができる。関数f(x)が関数g(x)と同等か関数g(x)を含むとき、与えられた関数g(x)は、f(x)*g(x)のカーブの下の領域は、最大となる。これにより、次式で表すように、−∞から∞までの2つの関数のコンボリューションの積分は、2つの関数の間の重複の測定を提供する。
f(x)およびg(x)の重複は
【数3】

に関係する

これにより、上記の積分または離散間隔に関する合計を用いた、フィルターの吸光度スペクトルおよび光受容体蛋白質の吸光度スペクトルのコンボリューションは、吸収フィルターおよび光受容体蛋白質の重複の手段を提供する。これにより、Mブースティング吸光度スペクトルT(λ)を用いて、以下の比率により、Mブースティング距離は、与えられたフィルターから計算することができる。ここで、A(λ)とA(λ)は、それぞれ、Mオプシンの吸光度スペクトルとLオプシンの吸光度スペクトルである。
【数4】

1より著しく大きいMブースティング距離を有するフィルターは、低吸収のM突然変異光受容体蛋白質を有する人の近視を矯正するのに有効な場合があり、一方、1よりかなり下のMブースティング距離をもつフィルターは、低吸収の突然変異L光受容体蛋白質を有する人の近視を治療するのに有効でありうる。Mブースティング距離は、積分でというよりもむしろ、可視スペクトル内の、離散波長の合計を用いて計算しても良い。一般的に、LオプシンおよびMオプシンの吸光度スペクトルのさまざまな閉形式または数式が使用される場合がある。畳み込み演算は、フーリエ変換された関数f(x)およびg(x)と、F(x)およびG(x)のそれぞれの乗算となる。通常f(x)およびg(x)のフーリエ変換により効果的なのは、F(x)とG(x)の積を計算し、f(x)*g(x)を生成するためにF(x)G(x)に逆フーリエ変換することである。
【0035】
本発明の実施形態を表す治療デバイスは、ぼけを生じさせるコーティング、含有物、隆起、または、隆起と同様に、フィルターを含む場合がある。フィルターに基づくアプローチは、様々なタイプのオプシン光受容体蛋白質の吸収特性の間の正常なバランスを修復するために、最大吸収、吸収の減少および、吸収光度曲線の複雑な変化の、波長の変化を示す突然変異体を含む、さまざまな異なるタイプの突然変異体に適用される場合がある。たくさんの異なる技術および材料が、特別で、複雑な吸収特性を有するレンズ材料を生成するために採用される。
【0036】
本発明を特定の実施例について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。改良は当業者には明らかであろう。例えば、人工的なぼけよりもむしろ人工的な焦点調節を採用した発明が、眼軸長が正常な眼軸長より短く、かつ眼が高空間周波数に応答して成長することができなかった、眼の長さに関する障害を矯正することがありうる。ぼけを生じるメガネおよびコンタクトレンズと、波長依存フィルタリングメガネおよびコンタクトレンズとは、近視または近視の傾向がある人の眼の伸びを止めるための人工的なぼけを生じさせる、たくさんの異なる方法の内の2つの例であり、眼の伸びの障害のある人または、眼の伸びの障害がある傾向のある人を特定するために使用される方法は、現在利用できる、眼科医および検眼医により使用される視力評価技術、眼軸長を正確に図るための器具類、正確なオプシン光受容体蛋白質分散を判定するための遺伝子技術または、患者のアミノ酸配列その他の技術を含みうる。
注目すべきは、本発明により、考案することができる様々な治療デバイスのすべては、基本的な環境上の原因、行動上の原因または、遺伝子の原因は何であれ、様々なタイプの眼の長さに関する障害のそれぞれに役立つアプリケーションがありうることである。レンズに組み込まれた波長フィルターは、例えば、低吸収光受容体蛋白質変異体を有する人だけでなく、過度の読書によって誘発された近視の人にも効果を与えうる。人が装着する治療デバイスを記載したが、上記のような人工的ぼけを生じさせる手法は、眼が負のフィードバック信号に応答しない、あるいは、正の眼の成長信号を生成し続ける、および/または正の眼の成長信号に応答し続ける状態から、眼の伸びが止められる状態まで眼の変遷をもたらし、本発明の潜在的な実施形態となる。例えば、毛様体を縮小させ、それによって眼の焦点を、遠方の物体は十分に焦点を合わせることができないより短い焦点距離に調節する、ムスカリン受容体作動薬を含む薬は、本発明による人工的なぼけを生じさせるための薬物治療の対象である。ほとんどの現在使用可能な、ムスカリン受容体作動薬は、瞳孔を収縮させ、被写界深度を変える。本発明の実施形態による、治療法の適用に関して、特別に役立つ薬は、瞳孔を収縮または拡張しないであろう。瞳孔が、周囲照明状態に対して、正常な大きさを維持し続け、被写界深度は十分に小さいままであると、比較的狭い視野は良く焦点が合う。説明の目的で、前述の記載は、本発明の詳細な理解を提供するために具体的な特定の用語体系が使用される。しかしながら、具体的な詳細が、本発明を実施するために必要でないことは、当業者にとって明らかである。本発明の具体的な実施形態の前述した説明は、図解および説明の目的で提示されたものである。それらは、本発明を開示された正確な形に余すことなく表現あるいは限定することを意図するものではなく、上記教示を考慮することにより多様な改良および変形が可能である。実施形態は、本発明の原理および実際的応用の最良の説明のために示され、記載されており、それによって、当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適するように様々な修正を行って最大限に利用できるようにする。本発明の範囲は、以下の請求項の範囲および相当する範囲内で規定されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または治療するための方法であって、該方法は、
患者について、眼の長さに関する障害を同定することと、
空間周波数しきい値を超えた、眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を低減させるため患者の視覚に人工的なぼけを生じさせ、患者の眼のさらなる伸びを止めことと、
含む方法。
【請求項2】
患者の眼軸長が、リラックスした眼に正常な焦点距離を提供する眼軸長を超える程度を判定することと、
該患者の眼のさらなる伸びを抑制するため、空間周波数しきい値を超える眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を低減させるよう、該患者の該眼軸長がリラックスした眼に正常な焦点距離を提供する眼軸長を超える前記判定された程度に相応の人工的なぼけを該患者の視覚に生じさせることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の眼の長さに関する障害のタイプを判定することと、
患者の眼のさらなる伸びを止めため、空間周波数しきい値を超える眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を低減させるよう、患者の眼の長さに関する障害の前記判定されたタイプに相応の人工的なぼけを患者の視覚に生じさせることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の眼の長さに関する障害のタイプを判定することは、
眼軸長を測定することと、
標準的な視力検査を実施することと、
患者のオプシン遺伝子を並べ、患者に起きるオプシン突然変異のタイプを判定することと、
の1つまたは複数をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の眼のさらなる伸びを止めるため、空間周波数しきい値を超える眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を低減させるよう、患者の視覚に人工的なぼけを生じさせることは、
ぼけを生じさせるメガネ、
ぼけを生じさせるコンタクトレンズ、または、
波長依存のフィルターを組み込んだメガネ、
の中から選択された治療デバイスを患者に提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ぼけを生じさせるメガネは、
片方または両方のレンズ表面の小さな隆起またはへこみと、
レンズの材料とは異なる材料のレンズ内含有物と、
周辺視野に大きな影響を与えるレンズの上位レベルの収差(光行差)をレンズに組み込むことと、
片側または両側のレンズに上部から下部への進行的な負の矯正を含めることと、
片方または両方のレンズの表面にコーティングまたはフィルムを適用することと、
の1つまたは複数によりぼけを生じさせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ぼけを生じさせるコンタクトレンズは、
レンズの材料とは異なる材料のレンズ内含有物と、
周辺視野に大きな影響を与えるレンズの上位レベルの収差(光行差)をレンズに組み込むことと、
片側または両側のレンズに中央から下部内への進行的な負の矯正を含めることと、
片方または両方のレンズの表面にコーティングまたはフィルムを適用することと、
の1つまたは複数によりぼけを生じさせる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の眼のさらなる伸びを止めるため、空間周波数しきい値を超える眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を減少させるよう、患者の視覚に人工的なぼけを生じさせることは、
異常な拡張または瞳孔の収縮を引き起こすことなく、眼の焦点距離を狭める治療薬を患者に適用すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬は、ムスカリン受容体作動薬である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または治療するための方法であって、該方法は、
患者において、体内の異なるオプシン光受容体蛋白質に関連する目の長さに関する障害のタイプを同定することと、
患者の眼のさらなる伸びを止めるため、空間周波数しきい値を超えた眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を低減させるよう、患者の異なるオプシン光受容体蛋白質の吸収特性の間に正常なバランスをもたらす修復と、
を含む方法。
【請求項11】
前記患者の眼の長さに関する障害のタイプを判定することは、
眼軸長を測定することと、
標準的な視力検査を実施することと、
患者のオプシン遺伝子を並べ、患者に起きるオプシン突然変異のタイプを判定することと、
の1つまたは複数をさらに含む、請求項10に記載の処置療法。
【請求項12】
前記患者の眼のさらなる伸びを止めるため、空間周波数しきい値を超える眼の網膜への画像入力の平均空間周波数を低減させるよう、患者の異なるオプシン光受容体蛋白質の吸収特性の間に正常なバランスをもたらす修復は、
波長依存のフィルターが組み込まれたメガネ、波長依存のフィルターが組み込まれたコンタクトレンズ、波長依存のフィルターが組み込まれたぼけを生じさせるメガネ、および波長依存のフィルターが組み込まれたぼけを生じさせるコンタクトレンズ、の内から選択された治療デバイスを患者に提供すること、
をさらに含む、請求項10に記載の処置療法。
【請求項13】
前記ぼけを生じさせるメガネは、
片方または両方のレンズ表面の小さな隆起またはへこみと、
レンズの材料とは異なる材料のレンズ内含有物と、
周辺視力により大きな影響を与えるレンズの上位レベルの収差(光行差)の組み込みと、
片側または両側のレンズの上部から下部内の進歩的な負の矯正の提供と、
片方または両方のレンズの表面に適用されたコーティングまたはフィルムと、
の1つまたは複数によりぼけを生じさせる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ぼけを生じさせるコンタクトレンズは、
レンズの材料とは異なる材料のレンズ内含有物と、
周辺視力により大きな影響を与えるレンズの上位レベルの収差(光行差)の組み込みと、
片側または両側のレンズの中央から下部内の進歩的な負の矯正の提供と、
片方または両方のレンズの表面に適用されたコーティングまたはフィルムと、
の1つまたは複数によりぼけを生じさせる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記波長依存のフィルターは、
他の光受容体と比べて低光吸収性の光受容体突然変異体により吸収を増加させる吸収特性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記波長依存のフィルターは、
他の光受容体と比べて光受容体突然変異体により光吸収を減少させる吸収特性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
眼の長さに関する障害を防ぎ、改善し、または治療するための治療デバイスであって、
該治療デバイスは、
ぼけを生じさせるメガネと、
ぼけを生じさせるコンタクトレンズと、
波長依存のフィルターが組み込まれたぼけを生じさせるメガネと、
波長依存のフィルターが組み込まれたぼけを生じさせるコンタクトレンズと、
波長依存のフィルターが組み込まれたメガネと、
波長依存のフィルターが組み込まれたコンタクトレンズと、
のうちの一つである、治療デバイス。
【請求項18】
前記ぼけを生じさせるメガネは、
レンズの片側または両側の表面の小さな隆起またはへこみと、
該レンズの材料とは異なる材料の該レンズ内の含有物と、
周辺視野に大きな影響を与える高いレベルの収差を含む収差を該レンズに組み込むことと、
片側または両側の該レンズにおいて上部から下部に進行的な負の矯正をすることと、
該レンズの片側または両側の表面に適用されたコーティングまたはフィルムと、
の1つまたは複数により、ぼけを生じさせる、請求項17に記載の治療デバイス。
【請求項19】
前記隆起またはへこみ、前記含有物、前記コーティングまたは、前記フィルムは、
ぼけ誘発領域のない中央から外方に向かって、ぼけ誘発性が増加する、
請求項18に記載の治療デバイス。
【請求項20】
前記治療デバイスの一つのレンズは、中央に、ぼけを誘発しない領域を有し、もう一方のレンズは、中央に、極小のぼけ誘発領域を有する、
請求項19に記載の治療デバイス。
【請求項21】
ぼけを生じさせるコンタクトレンズは、
該レンズの材料とは異なる材料の該レンズ内の含有物と、
周辺視野に大きな影響を与えるより高いレベルの収差を含む収差の組み込みと、
片側または両側の該レンズの中央から下部までに、進行的な負の矯正を提供することと、
該レンズの片側または両側の表面に適用されたコーティングまたはフィルムと、
の1つまたは複数によりぼけを生じさせる、請求項17に記載の治療デバイス。
【請求項22】
前記含有物、前記コーティングまたは、前記フィルムは、ぼけ誘発領域のない中央から外方に向かって、ぼけ誘発性が増加する、請求項21に記載の治療デバイス。
【請求項23】
前記含有物、前記前記コーティングまたは、前記フィルムは、極小のぼけ誘発領域がある中央から外方に向かって、ぼけ誘発性が増加する、請求項21に記載の治療デバイス。
【請求項24】
前記波長依存のフィルターは、他の光受容体と比べて低い光吸収性の光受容体突然変異体による吸収を増加させる吸収特性を有する、請求項17に記載の治療デバイス。
【請求項25】
前記波長依存のフィルターは、他の光受容体と比べて光受容体突然変異体による光吸収を減少させる吸収特性を有する、請求項17に記載の治療デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図13】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図20E】
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【図20F】
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【図20G】
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【図20H】
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【図20I】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図11】
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【図12】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【公表番号】特表2012−513252(P2012−513252A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542553(P2011−542553)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/069078
【国際公開番号】WO2010/075319
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511148204)ザ メディカル カレッジ オブ ウィスコンシン インク (1)
【氏名又は名称原語表記】THE MEDICAL COLLEGE OF WISCONSIN, INC.