説明

眼内レンズの挿入器具

【課題】簡易な構成をもって、押し出し工程の全体に亘って略一定の速度で眼内レンズの押し出しを行なうことの出来る、新規な構造の眼内レンズの挿入器具を提供すること。
【解決手段】器具本体12の軸方向先端に設けられた挿入筒部76の先端開口部を、該挿入筒部76の中心軸に対して傾斜して開口した傾斜開口部94とする一方、該器具本体12への押出部材16の押し込みにより眼内レンズ14を該傾斜開口部94から次第に露出されるに従って該押出部材16に設けられた摺接部106への当接力を増大させることにより該押出部材16の操作抵抗力を次第に増大せしめる抵抗力漸変機構35,108を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズを眼内に挿入するために用いられる眼内レンズの挿入器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、白内障等の手術においては、角膜(鞏膜)や水晶体前嚢部分などの眼組織に設けた切開創を通じて、嚢内の水晶体を摘出、除去せしめた後、その水晶体に代替する眼内レンズを、前記切開創より眼内に挿入して嚢内に配する手法が採用されている。
【0003】
特に近年においては、特許文献1(特許第3412103号公報)や特許文献2(特許第3420724号公報)に記載の如き眼内レンズの挿入器具を用いた手法が広く採用されている。一般的には、器具本体の先端部に設けられた挿入筒部の先端開口を切開創を通じて眼内に挿し入れると共に、眼内レンズを器具本体内で小さく変形せしめた状態で挿入筒部の先端開口から押し出すことによって、眼内レンズが眼内に挿入される。このような挿入器具を用いれば、水晶体の摘出除去のために形成した切開創を広げることなく眼内レンズを挿入出来ることから、施術に要する手間を軽減出来ると共に、術後乱視の発生や感染の危険を低減することも出来る。
【0004】
ところで、このような眼内レンズの挿入器具においては、その施術に際して細かな作業を安定して精度良く行なうために、施術者による優れた操作性が要求される。この操作性とは、施術者の意図するようなレンズの眼内挿入の作動が実現されることであり、意図する位置、状態、および速さで眼内レンズが眼内に押し出されて挿入されることが要求される。
【0005】
このような要求に応えるために、例えば特許文献3(特許第2053738号公報)には、挿入器具内において、眼内レンズが挿入器具外に押し出される若干手前まで高速で押し進める一段目駆動機構と、その後眼内レンズを低速で押し進める二段目駆動機構とを備えた挿入器具が提案されている。このような挿入器具によれば、一段目駆動機構によって眼内レンズを高速で押し進めることによって押し出し工程の全体的な作業時間を短縮せしめつつ、眼内レンズを挿入器具外に押し出す際には二段目駆動機構によって眼内レンズを低速で押し進めることによって挿入の慎重さを確保することが出来ると記載されている。
【0006】
しかし、特許文献3に記載の如き挿入器具は、単にアプローチ領域の押出部材の押し込み速度を高速化したものに過ぎず、レンズの挿入操作に関して特に有利なものではなく、施術者の意図するようなレンズの眼内挿入の作動を実現し得るものとは言い難い。即ち、施術者は自分の意図した速度でレンズを眼内に挿入することを要求するものであり、レンズの押し出しの体感速度を押し出しの直前で変化させることは好ましいものではない。要するに、施術者の意図するレンズの眼内挿入作動を実現するためには、施術者が一定の押込み力を作用させることで、最後まで一定の速度で押出部材が動き、一定の速度で眼内レンズが眼内に挿入されることが望ましいのである。
【0007】
このような観点から従来構造の挿入器具を検討すると、未だ満足の出来る挿入器具は存しなかった。
【0008】
前述のように、眼内レンズは、挿入時の切開創を小さくするために弾性材料で形成されており、挿入器具の挿入筒部で湾曲状態や巻回状態等で小さくされて眼内に挿入される。それ故、眼内で挿入筒部の先端開口部から眼内レンズが押し出される際に、眼内レンズは、部分的に先端開口部から出されるに従ってそれ自体の弾性によって自ら広がろうと復元作用し、その復元力が先端開口部に作用する結果、その反力によって自ら挿入筒部から吐出する方向に作用する。
【0009】
そのために、施術者が一定の力で押出部材を操作していても、眼内レンズはその弾性によってそれ自体が吐出作用を発揮する結果、眼内レンズの挿入筒部に対する摺接抵抗の減少と弾性復元力が相加的に作用することで、押出部材の押圧に対する抵抗力が次第に小さくなってしまう。その結果、施術者が無意識のうちに眼内レンズを加速度的に押し出してしまい、最終的に眼内に飛び出させてしまうおそれがある。これでは、施術者の意図する挿入は実現され難く、施術者の意図する挿入作動の実現に対して大きな問題となっているのである。
【0010】
なお、このような問題は、たとえ前記特許文献3に記載の如き挿入器具のように、所定距離以前の段階で押し出し速度を低速に切り換えたとしても、所定ストロークに亘って一定の力で押し出す操作を採用する以上は、眼内レンズが先端開口部から出されるに従って加速度的に抵抗力が小さくなることによって、施術者が無意識の内に眼内レンズを飛び出させてしまう傾向になることに変わりはない。
【0011】
また、このような問題に対処するために、例えば特許文献4(米国特許第4765329号明細書)に記載の如き挿入器具のように、コイルスプリングを組み込んで、押出部材の操作力を漸変させることも検討され得る。しかし、特許文献4に記載の如き挿入器具においては、部品点数の増加と組付工数の増加が避けられず、何よりもコイルスプリングの組み付けスペースが必要となって挿入器具が大型化したり、重量が増加することによって操作性が低下したりする等の問題があり、実用性に乏しいのである。
【0012】
【特許文献1】特許第3412103号公報
【特許文献2】特許第3420724号公報
【特許文献3】特許第2053738号公報
【特許文献4】米国特許第4765329号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、簡易な構成をもって、押し出し工程の全体に亘って略一定の速度で眼内レンズの押し出しを行なうことの出来る、新規な構造の眼内レンズの挿入器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0015】
すなわち、本発明の第一の態様は、眼内レンズを収容する略筒形状を有する器具本体を備えており、該器具本体内に軸方向の後方から挿入された押出部材で該眼内レンズを軸方向前方に移動させつつ小さく変形せしめて該器具本体の軸方向先端部に設けられた挿入筒部を通じて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部の先端開口部が該挿入筒部の中心軸に対して傾斜して開口した傾斜開口部とされていると共に、前記押出部材には前記器具本体への押込方向への移動に際して該器具本体に摺接する摺接部を設ける一方、該器具本体への該押出部材の押し込みにより前記眼内レンズが該傾斜開口部から次第に露出されるに従って、該摺接部に及ぼされる当接力を次第に増大させることにより該押出部材の操作抵抗力を次第に増大させる抵抗力漸変機構を設けたことを、特徴とする。
【0016】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズの押し出し工程の略全体に亘って、略一定の速度で眼内レンズを押し出すことが出来る。即ち、本態様においては挿入筒部の先端開口部が傾斜した傾斜開口部とされていることから、押出部材の押し込み量の増大に伴って、眼内レンズが傾斜開口部から次第に露出せしめられる。これにより、先端開口部が挿入筒部の中心軸に直交して切断された単純な円形開口のように、眼内レンズの弾性による吐出作用が急激に開放されて、眼内レンズが先端開口部から飛び出されることを抑えることが出来る。
【0017】
ここにおいて、眼内レンズは挿入筒部の先端開口部から次第に露出されるに従って、挿入筒部に対する摺接抵抗の減少と自身の弾性復元力が相加的に作用することによって吐出作用が次第に大きく生ぜしめられることとなるが、本態様に従う構造とされた挿入器具においては、押出部材に設けられた摺接部に及ぼされる当接力を次第に増大せしめる抵抗力漸変機構を設けたことによって、眼内レンズが露出されるに従って押出部材の操作抵抗力を次第に増大せしめて、押出部材によって及ぼされる吐出作用を次第に減少せしめることが出来る。これにより、施術者が無意識の内に眼内レンズに加速度的な吐出作用を及ぼすことも回避され得て、押出工程の全体に亘って略一定の速度で眼内レンズを押し出すことが可能とされるのである。換言すれば、傾斜開口部における眼内レンズの露出に伴う押出部材の操作抵抗の漸変的な減少を、抵抗力漸変機構で補うことが可能とされており、これら傾斜開口部および抵抗力漸変機構を組み合わせて用いることによって、押出工程の全体に亘って略一定の操作抵抗を施術者に与えることが可能とされている。そして、施術者が一定の押し込み力を作用させることで、最後まで一定の速度で押出部材を動かすことが出来、その結果、一定の速度で眼内レンズを挿入することが可能とされるのである。
【0018】
さらに、本態様に従う構造とされた挿入器具においては、押出部材に設けられた摺接部への当接力を次第に増大させるという簡易な構成で抵抗力漸変機構を実現することが可能とされている。これにより、例えば前述の特許文献4に記載の如き挿入器具のように、コイルスプリングなどの特別な部材を組み込む必要も無いことから、挿入器具をよりコンパクト且つ軽量に構成することが出来て、取り扱い性や操作性の向上を図ることも出来る。
【0019】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記押出部材における前記摺接部と、該押出部材の押し込みに際して該摺接部に摺接される前記器具本体の当接部との少なくとも一方を、該押出部材の押し込み方向に対して傾斜した傾斜面とすることによって前記抵抗力漸変機構を構成したことを、特徴とする。
【0020】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、傾斜面の高さの漸次の増大に連れて、傾斜面に当接せしめられる摺接部乃至は当接部の変形量が漸次に増大せしめられる。そして、かかる変形によって発生する弾性力の増大、延いては反力として傾斜面を介して摺接部に及ぼされる当接荷重の大きさが増大せしめられることとなる。ここにおいて、押出部材の操作抵抗力は接触抵抗であることから、摩擦力は変化することなく、垂直抗力のみが変化する。その結果、押出部材の操作抵抗力が次第に増大せしめられることとなる。このようにすれば、何等別途に部材を必要とすること無く、簡易な構成で抵抗力漸変機構を実現することが出来る。
【0021】
それと共に、摺接部乃至は当接部の弾性変形を利用することによって、押出部材の押し込み量の増大に伴って弾性力を次第に大きく出来ることから、器具本体と押出部材との間に及ぼされる当接荷重を滑らかに増大せしめることが出来て、操作抵抗力を滑らかに変化させることも出来る。また、傾斜面と傾斜面に当接せしめられる摺接部乃至は当接部の形状を適当に調節することによって、押出部材の操作抵抗力を精度良く調節することも出来る。
【0022】
本発明の第三の態様は、前記第一又は二の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記器具本体において前記押出部材の押し込みに際して前記摺接部に摺接される当接部を設けて、該当接部が該摺接部に押し付けられることにより該押出部材を軸方向の所定長さの部分において弾性変形せしめる撓み領域を形成すると共に、該押出部材の断面積を該撓み領域において該押出部材の押し込み方向で次第に大きくする断面積漸変部を形成することによって前記抵抗力漸変機構を構成したことを、特徴とする。
【0023】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、撓み領域における押出部材の断面積の増大に伴って、押出部材の撓みの反力として作用する撓み領域への垂直反力が漸変せしめられ、延いては当接部の摩擦抵抗力が次第に増大せしめられる。その結果、摺接部にして及ぼされる当接力が次第に大きくされて、押出部材の操作抵抗力が次第に増大せしめられる。このようにすれば、押出部材それ自身の撓み反力を巧く用いることによって、簡易な構成で抵抗力漸変機構を実現することが出来る。それと共に、押出部材の撓みを利用することによって、押出部材の押し込み量の増大に伴う摩擦抵抗力の増大を滑らかにすることが出来て、操作抵抗力を滑らかに変化させることも出来る。
【0024】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至三の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部が光透過性を有する部材で形成されていると共に、該挿入筒部において前記先端開口部から軸方向後方の所定の位置には、該挿入筒部の周方向に延びる視認可能な目印線が形成されていることを、特徴とする。
【0025】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズを押し出す際に、目印線を空気抜き孔として使用することが出来る。これにより、眼内レンズの押し出しをより円滑に行なうことが出来る。更に、挿入筒部が光透過性を有する部材で形成されて、目印線が外部から視認可能とされていることから、目印線を適当な位置に形成することによって、挿入作業に際するマークとして用いることも可能となる。例えば、目印線を形成する所定位置として、挿入筒部が切開創に挿入された状態で、切開創と重なり合う位置に目印線を形成することによって、切開創内への挿入位置を示すマークとして用いることが出来る。なお、本態様における目印線は、それら空気抜きおよび挿入位置の両方の目印用マークに共通して用いても良いし、何れか一方のみに用いても良い。また、目印線を複数形成することも可能である。
【0026】
本発明の第五の態様は、前記第一乃至四の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記眼内レンズが両側に延びる一対の保持部を備えており、これら保持部が前記器具本体の軸方向に向けられてセットされると共に、軸方向後方に位置する保持部が前記押出部材の先端部に設けられた切欠内に入るようにされていることを、特徴とする。
【0027】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、押出部材側に位置する保持部を押出部材の切欠に入れることによって、かかる保持部を眼内レンズの本体部分と押出部材の間から逃がすことが可能とされており、眼内レンズの本体部分と押出部材を直接に対向せしめることが可能とされている。これにより、押し出しの開始時において、押出部材を眼内レンズの本体部分に直接に当接せしめることが出来ることから、保持部を巻き込むことも回避され得て、より安定した押し出しを行なうことが出来る。
【0028】
本発明の第六の態様は、前記第一乃至五の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記器具本体に前記挿入筒部の基端部と連通せしめられた載置部が設けられており、該載置部には前記眼内レンズを載置せしめる載置面及び該器具本体の外側に開口せしめられた開口部が形成されている一方、該器具本体には該開口部を覆蓋せしめる蓋体が設けられており、該蓋体によって前記押出部材が該載置面に向けて押圧せしめられるようになっていることを、特徴とする。
【0029】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、蓋体によって押出部材を押圧せしめることによって、押出部材の不要な変形、特に、載置面からの不要な浮き上がりを有効に抑えることが出来て、より安定した押出操作を行なうことが出来る。
【0030】
本発明の第七の態様は、前記第六の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記器具本体における前記載置面の軸方向前方の底面には、軸方向に延びる一対の導入突部が形成されており、前記押出部材がこれら導入突部の間で案内されるようになっていることを、特徴とする。
【0031】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、導入突部で押出部材を挟んで器具本体の軸方向に案内出来ることから、押出部材の不要な変形、特に、載置面の軸直方向の不要な変位を有効に抑えることが出来て、より安定した押出操作を行なうことが出来る。
【0032】
本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記器具本体における前記押出部材の押出領域内に該押出部材に接触する段差が設けられていることを、特徴とする。
【0033】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、押出部材を段差に当接せしめることによって、施術者に押出操作における節度感を与えることが出来る。そして、かかる節度感により、眼内レンズの位置を施術者に知らせることが出来ることから、節度感を感じた時点からより慎重な操作が必要である等の作業意識を喚起させることが出来る。なお、段差は、押出部材の押出領域内で複数形成されていても良い。
【0034】
本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記眼内レンズが載置せしめられる載置面に貫通孔が形成されると共に、該載置面には外側から前記器具本体と別体形成された担持部材が組み付けられており、該担持部材に突設された支持部が該貫通孔を通じて該載置面上に突出せしめられることによって該眼内レンズの外周部分を支持する外周支持部が構成されていると共に、該支持部には、該載置面に係止せしめられて該支持部の該載置面からの抜けを防止して該支持部の該載置面からの突出状態を保持する係止爪が形成されていることを、特徴とする。
【0035】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズの外周部分を支持することによって、眼内レンズを光学特性に影響する中央部分に対して非接触状態で支持することが出来る。これにより、眼内レンズの中央部分を損傷するおそれを低減することが出来る。そして、眼内レンズを載置面上に載置する際には、担持部材を取り外して載置面上に突出せしめられた外周支持部を載置面から後退せしめるという簡易な操作によって眼内レンズを載置面上に載置することが出来て、施術に際する眼内レンズのセットを容易に行うことが出来る。
【0036】
さらに、本態様においては、係止爪によって支持部の載置面からの突出状態、換言すれば、担持部材の器具本体への組み付け状態を安定して保持することが可能とされている。そこにおいて、特に本態様においては、係止爪が支持部に形成されていることから、支持部を載置面に直接的に係止せしめることが出来て、支持部のガタツキを抑えることが可能となり、眼内レンズの保持状態での位置安定性を向上せしめることが出来る。更にまた、係止爪を支持部に形成したことによって、担持部材を器具本体へ組み付けるロック機構を優れたスペース効率および製造効率をもって構成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0038】
先ず、図1および図2に、本発明の第一の実施形態としての眼内レンズの挿入器具10を示す。挿入器具10は、全長に亘ってその内部が貫通せしめられて前後端縁部が開口せしめられた略筒形状を有する器具本体12の内部に眼内レンズ14を収容せしめると共に、押出部材としてのプランジャ16が挿入されて構成されている。なお、以下の説明において、前方とは、プランジャ16の押出方向(図1中、左方向)を言うものとし、上方とは、図2中、上方向を言うものとする。また、左右方向とは、挿入器具10の背面視における左右方向(図1中、上方が右、下方が左)を言うものとする。
【0039】
より詳細には、器具本体12は、図3乃至図6に示すように、略筒形状とされた本体筒部18を有している。本体筒部18の内部には、略矩形断面形状をもって軸方向に貫通する貫通孔20が形成されている。また、本体筒部18の後端部からやや前方の部位には、本体筒部18の延出方向と直交する向きに広がる板状部22が一体的に形成されている。
【0040】
さらに、器具本体12における本体筒部18の前方には、載置部としてのステージ24が形成されている。図7に、ステージ24を示す。ステージ24には、眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きな幅寸法をもって軸方向に延びる凹状溝28が形成されている。凹状溝28は、眼内レンズ14の両側に延びる保持部30、30を含む最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりもやや大きな軸方向長さ寸法をもって形成されている。
【0041】
ここにおいて、凹状溝28は上方に開口せしめらた開口部29を有する一方、その底面には載置面32が形成されている。載置面32は、眼内レンズ14の最小幅寸法(図1における上下方向寸法)よりも僅かに大きな幅寸法を有すると共に、眼内レンズ14の最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりも大きな軸方向長さ寸法を有する平坦面とされている。なお、載置面32の高さ位置は、本体筒部18における貫通孔20の底面の高さ位置よりも上方に位置せしめられており、本体筒部18における貫通孔20の前端縁部には、貫通孔20の底面から上方に延び出して載置面32の後端縁部に接続する下壁部34(図4参照)が形成されている。このようにして、凹状溝28は貫通孔20と連通せしめられており、凹状溝28の幅寸法が貫通孔20の幅寸法と略等しくされている。また、貫通孔20の前端縁部の上方には、貫通孔20の上面から前方に向けて下方に傾斜して延び出す当接部としての上壁部35が形成されている。更に、載置面32の幅方向両端縁部には、下方に突出する下方突出壁37,37が形成されている。
【0042】
そして、凹状溝28の側方(本実施形態においては、右側)には、蓋体としてのカバー部36が器具本体12と一体形成されている。カバー部36は、凹状溝28の軸方向寸法と略等しい軸方向寸法を有すると共に、凹状溝28の幅寸法よりもやや大きな幅寸法をもって形成されている。更に、カバー部36は、ステージ24の上端縁部が側方(本実施形態においては、右側)に延び出して形成された略薄板形状の連結部38によって器具本体12と連結されている。連結部38は、幅方向略中央部分を器具本体12の軸方向に延びる屈曲部40において最も薄肉とされており、屈曲部40で折り曲げ可能とされている。これにより、カバー部36は、連結部38を折り曲げて凹状溝28に重ね合わせ、開口部29を覆蓋することが出来るようにされている。
【0043】
ここにおいて、カバー部36において載置面32と対向せしめられる対向面42には、器具本体12の軸方向に延びる一対の案内突部としての左右案内板部44a,44bが突出して一体形成されている。これら左右案内板部44a,44bは凹状溝28の幅寸法よりもやや小さな対向面間距離をもって、カバー部36の軸方向の全体に亘って形成されている。なお、対向面42の外周縁部は、全周に亘ってやや肉厚に形成されており、左右案内板部44a,44bは、かかる対向面42の外周縁部よりも更に突出せしめられている。
【0044】
また、対向面42における左右案内板部44a,44bの対向面間の略中央位置には、左右案内板部44a,44bと平行に器具本体12の軸方向に延びる案内突部としての中央案内板部46が一体形成されている。中央案内板部46は、肉厚に形成された対向面42の外周縁部から僅かに突出する高さ寸法とされており、対向面42の軸方向の全長に亘って外周縁部から延びるように一体形成されている。更に、対向面42の外周縁部と中央案内板部46の軸方向後端縁部との接続部位には、中央案内板部46を挟んで一対の案内突起48,48が形成されている。案内突起48は、略三角の断面形状をもって対向面42の外周縁部から突出せしめられて一体形成されており、その突出寸法は、左右案内板部44a,44bの突出寸法と等しくされている。
【0045】
さらに、カバー部36における連結部38と反対側の縁部には、係合片50が突出形成されている一方、ステージ24におけるカバー部36と反対側の端部には、外側に突出する突出縁部52が形成されており、かかる突出縁部52における係合片50と対応する位置には、係合切欠54が形成されている。
【0046】
このような構造とされたステージ24の載置面32の下側には、担持部材56が取外し可能に設けられている。図8および図9に示すように、担持部材56は器具本体12と別体として構成されており、一対の側壁部58,58が対向面間に一体形成された連結板部60で連結された構造とされている。ここにおいて、側壁部58における外側面の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法と略等しくされている。また、それぞれの側壁部58の下端縁部には、外側に向けて突出して広がる脚板部62が一体形成されている。なお、脚板部62は、上面視において軸方向の中央部分が僅かに凹んだ形状とされている。
【0047】
そして、それぞれの側壁部58、58の上端部には、上面視において略円弧形状をもって上方に突出する支持部としての第一支持部64が一体形成されている。更に、第一支持部64の上端面における外側部分で、担持部材56の内方側には、周壁66が一体的に突出形成されている。ここにおいて、周壁66の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。
【0048】
また、連結板部60の軸方向両端部には、上面視において矩形状をもって上方に突出する支持部としての一対の第二支持部68,68が一体形成されている。ここにおいて、第二支持部68の上端面の高さ位置は、第一支持部64の上端面の高さ位置と等しくされている。更に、第二支持部68の上端面における担持部材56の外方側には、第二支持部68の幅方向の全体に亘って上方に突出する周壁70が一体形成されており、かかる周壁70の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。それと共に、第二支持部68の上端部には幅方向の全体に亘って外側に僅かに突出せしめられた係止爪72が一体形成されている。
【0049】
このような構造とされた担持部材56が、器具本体12の載置面32の下側から組み付けられるようになっている。具体的には、器具本体12の載置面32には、厚さ方向に貫通する貫通孔74が形成されている。かかる貫通孔74は、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68の上面視よりも僅かに大きな略相似形状をもって形成されている。そして、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68が、載置面32の下側から貫通孔74に挿通せしめられて、載置面32上に突出せしめられる。これにより、第二支持部68に設けられた係止爪72が載置面32上に突出せしめられて、載置面32の上面に係止せしめられることによって、第一支持部64および第二支持部68の抜けを防止して、担持部材56が器具本体12の外側から組み付けられ、第一支持部64および第二支持部68が載置面32から突出せしめられた状態が保持されることとなる。このように、本実施形態においては、係止爪72を含んで担持部材56を器具本体12に組み付けるロック機構が構成されている。
【0050】
さらに、ステージ24の前方で、器具本体12の軸方向先端部には、挿入筒部としてのノズル部76が一体形成されている。図10および図11に、ノズル部76を示す。ノズル部76は、全体としてステージ24側の基端部から延出方向の先端部に行くに連れて次第に先細となる外形形状をもって形成されていると共に、延出方向の全長に亘って貫通する通孔78が形成されている。
【0051】
通孔78は、ステージ24側に開口せしめられた基端開口部80が載置面32と接続されることによってステージ24と連通せしめられている。基端開口部80は、全体として、底面82が平坦面とされて、上面が略円弧形状とされた扁平な略楕円形状断面とされている。ここにおいて、通孔78には、底面82が載置面32と段差無く接続された導入部84が形成されている。導入部84は、扁平な略楕円形状断面とされて、基端開口部80から略一定の幅寸法および高さ寸法をもって器具本体12の軸方向に延び出されている。
【0052】
さらに、通孔78には、導入部84の前方において導入部84と連通せしめられて断面積が次第に小さくされた縮径部86が形成されている。縮径部90は、先端に行くに連れて底面82および上面の幅寸法が小さくされることによって断面積が小さくされている。ここにおいて、縮径部86の後端部分の底面82には、軸方向前方に行くに連れて次第に上方に傾斜せしめられた傾斜面88が形成されており、通孔78の底面82には、かかる傾斜面88によって段差が設けられている。なお、通孔78の上面は軸方向の全長に亘って段差の無い平坦面とされており、通孔78の上面の高さ位置は、軸方向の全長に亘って略一定とされている。
【0053】
さらに、導入部84および縮径部86の底面82には、底面82の幅方向中央部分を挟んで器具本体12の軸方向に延びる一対の導入突部90が形成されている。導入突部90は、軸方向の前端縁部が傾斜面88の前側端縁部と等しい位置とされると共に、軸方向の後端縁部が基端開口部80から僅かに軸方向後方に突出する軸方向長さ寸法をもって、底面82から僅かに上方に突出して互いに平行に延びる線形状とされている。ここにおいて、傾斜面88上に形成された導入突部90の軸方向前端部分は、傾斜面88が軸方向前方に行くに連れて次第に高くされていることによって、傾斜面88の軸方向前端縁部において傾斜面88と等しい高さ位置となるようにされている。
【0054】
更にまた、導入突部90は、底面82の幅方向の中央を挟んで器具本体12の軸直角方向で互いに所定距離を隔てて略平行に配設されており、かかる導入突部90の離隔距離は、押出部材の先端部の幅寸法よりも僅かに大きい寸法とされることが好ましく、特に本態様においては、後述するプランジャ16の棒状部100の幅寸法よりも僅かに大きくされている。
【0055】
そして、ノズル部76における縮径部86の軸方向前方には、略一定の断面積をもってストレートに延びる先端部92が形成されていると共に、かかる先端部92の先端縁部に、先端開口部94が形成されている。ここにおいて、先端部92の内周面における先端開口部94から軸方向後方の所定位置には、目印線としての凹状線96が形成されている。凹状線96は、先端部92の内周面の全周に亘って連続して延びると共に、先端部92の内方に向けて開口する凹溝とされている。また、凹状線96は、上部分が下部分よりも前方に形成された側面視において斜め形状とされていると共に、上面視において上部分と下部分がそれぞれ先端部92の軸直角方向に延びる形状とされている。そして、特に本実施形態においては、凹状線96は、上部分が先端開口部94から軸方向後方に6mmの位置に形成されている。なお、本実施形態における器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、先端部92の内周面に形成された凹状線96は、外部から視認可能とされている。また、ノズル部76の軸方向先端縁部に形成された先端開口部94は、上面が底面よりも前方に延び出されて、側面視においてノズル部76の中心軸:Lに対して傾斜した傾斜開口部とされている。特に、本実施形態では、前述のとおり、ノズル部76と本体部26を含む器具本体12が一体形成品で構成されているのであり、その成形材料として可視光線の透過率の大きい合成樹脂材料が採用されていることに加えて、ノズル部76の周壁と本体部26のステージ24が、充分に薄肉とされることによって、器具本体12の外部から、器具本体12の内部に収容された眼内レンズ14を、少なくとも外形線において目視にて視認することが出来るようになっている。そこにおいて、特にノズル部76の周壁と本体部26のステージ24においては、外部からの眼内レンズ14の視認性を向上させるために、それらの部分を形成する成形面を鏡面に近い精度に設定した樹脂成形金型を採用することが望ましい。
【0056】
なお、上記の凹状線96は、外部から視認可能であれば具体的構造は限定されるものでない。例えば、かかる凹状線96に代えて、目印線として、先端部92の内周面に僅かに突出する突条からなる凸状線を採用しても良いし、かかる位置よりも先端側の肉厚を薄肉とすることで段差を形成して凹状線96の代わりとしても良い。また、それら凹状線96や凸状線,段差等を、先端部92の外周面に形成しても良い。更に、先端部92の外周面に形成する場合には、凸状線に代えて、印刷等で着色した線等を設けても良い。更にまた、このような凹状線96や凸状線,段差,着色線等は、ノズル部76の全周に亘って連続して環状に形成されている必要はなく、周上で部分的に形成されていても良い。勿論、本実施形態の如く、ノズル部76の中心軸に対して傾斜していることは、必須でない。
【0057】
また、本実施形態では、先端部92が可視光線透過性の樹脂材料で形成されていることから、ノズル部76の内部で押し出される眼内レンズ14を外部から視認することが出来るのであり、その際、前述の如く、凹状線96が側面視でノズル中心軸に対して傾斜していることから、ノズル部76の内部で丸められた状態で押し出される眼内レンズ14の先端部の外形線に対して凹状線96が略沿うこととなる。それ故、ノズル部76の内部で押し出される眼内レンズ14の位置に関して、凹状線96に対する符合状態に至ったことを一層容易に視認することが可能である。
【0058】
以上のように、本実施形態における器具本体12は、本体筒部18、ステージ24、カバー部36、およびノズル部76が一体成形されて、単一の部材として構成されており、かかる器具本体12とは別体として構成された担持部材56が載置面32の下方から組み付けられるようになっている。なお、前述のように器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、ステージ24の開口部29がカバー部36で覆蓋せしめられた状態においても、カバー部36を通して、器具本体12に収容された眼内レンズ14が視認可能とされている。
【0059】
そして、このような構造とされた器具本体12の後方から、押出部材としてのプランジャ16が貫通孔20に挿し入れられている。図12および図13に、プランジャ16を示す。プランジャ16は、器具本体12の軸方向長さ寸法よりもやや大きな軸方向長さ寸法を有する略ロッド形状とされており、略円柱形状とされた作用部97と、略矩形ロッド形状とされた挿通部98が一体形成されている。
【0060】
作用部97は、プランジャ16の中心軸上を延びる略円柱形状とされた棒状部100と、棒状部100の幅方向両側に広がる薄板状の扁平部102とを含んで構成されている。扁平部102は、棒状部100の後端部から挿通部98と等しい幅寸法をもって先端方向に向けて延び出すと共に、棒状部100の長さ方向略中間部分から、棒状部100の先端部からやや後方の部位に行くに連れて次第に幅寸法が小さくされた先鋭部104が形成されている。ここにおいて、先鋭部104の上面視形状は、器具本体12のノズル部76における縮径部86の水平方向断面形状に沿う形状とされている。
【0061】
さらに、作用部97の軸方向先端部分には、切欠105が形成されている。本実施形態においては、切欠105は、上方および幅方向両側に開口せしめられると共に、軸方向後端側の内周面は上面視において作用部97の軸方向に対して斜めに延びると共に作用部97の軸直方向に広がって形成されている一方、軸方向先端側の内周面は上面視において作用部97の軸直方向に延びると共に作用部97の先端に行くに連れて上方に向かう傾斜面とされている。
【0062】
更にまた、作用部97の軸方向中間部分には、上方に突出する摺接部としての上方突出部106が形成されている。上方突出部106は、棒状部100の幅寸法と等しい幅寸法とされており、棒状部100の軸方向先端部分からやや後方において、後方に行くに連れて上方に傾斜せしめられた傾斜面としてのテーパ面108が軸方向の所定寸法に亘って形成されている。特に本実施形態においては、テーパ面108の前方端縁部は、先鋭部104の前方端縁部と同じ軸方向位置に形成されており、テーパ面108の後方端縁部は、棒状部100の軸方向後端縁部に位置せしめられている。
【0063】
このように、本実施形態におけるプランジャ16は、扁平部102における先鋭部104の軸方向前端縁部から軸方向後端縁部およびテーパ面108の軸方向前端縁部から軸方向後端縁部にかけて、軸方向後方に行くに連れて次第に断面積が大きくされている。
【0064】
一方、挿通部98は、貫通孔20の軸方向寸法よりも僅かに大きな軸方向寸法をもって形成されている。かかる挿通部98は略全体が略H字状の横断面形状とされており、その幅寸法および高さ寸法が、貫通孔20の幅寸法および高さ寸法よりも僅かに小さくされている。また、挿通部98の後端縁部には、軸直角方向に広がる円板状の押圧板部111が一体形成されている。
【0065】
さらに、挿通部98の軸方向中間部分からやや前方には、保持手段としての係止部112が形成されている。係止部112には、挿通部98の軸直方向に貫通する貫通孔114内に突出すると共に、挿通部98の上方に向けて突出する爪部116が形成されている。そして、プランジャ16が器具本体12の本体筒部18に挿通された状態で、本体筒部18の上面において厚さ方向に貫設された係止孔118とプランジャ16の爪部116が係合せしめられることによって、プランジャ16の器具本体12に対する相対位置が位置決めされた挿通状態で保持されるようになっている。なお、爪部116と係止孔118の形成位置は、係合状態において、作用部97の先端部が器具本体12の貫通孔20から突出せしめられて、切欠105が後述するステージ24内に収容せしめられた眼内レンズ14の軸方向後方に位置する保持部30を下方から支持せしめる位置となるように設定されている。なお、係止部112や係止孔118は、例えば、挿入器具10の下面や側面に形成しても良い。
【0066】
このような構造とされた眼内レンズの挿入器具10においては、先ず、プランジャ16の先端部分が器具本体12の本体筒部18に後方から挿入されて、爪部116が係止孔118に係止せしめれらた初期位置に位置せしめられる。それと共に、担持部材56が、前述のように、載置面32の下方から器具本体12に取り付けられる。これにより、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68が載置面32上に突出せしめらた状態に保持される。
【0067】
そして、図14に示すように、眼内レンズ14の本体部26が保持部30,30を器具本体12の軸方向に向けた状態で第一支持部64および第二支持部68の上端面に載置せしめられる。なお、図14においては、理解を容易とするために、器具本体12の必要部分と眼内レンズ14、載置面32から突出せしめられた第一および第二支持部64,68、およびステージ24内に臨むプランジャ16の先端部分のみを示す。かかる載置状態において、眼内レンズ14は、本体部26の外周部分が第一及び第二支持部64,68に接触状態とされており、中央部分はこれら第一及び第二支持部材64,68に対して非接触状態で支持されている。このように、本実施形態においては、第一及び第二支持部64,68を含んで外周支持部が構成されている。また、かかる載置状態において、眼内レンズ14において器具本体12の軸方向後方に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の切欠105の底面によって支持せしめられる。更にまた、プランジャ16の初期位置において、プランジャ16の軸方向前方(図14中、左方向)には、載置面32から突出せしめられた第二支持部68が位置せしめられている。これにより、プランジャ16側(図14中、右側)に位置せしめられた第二支持部68によって、プランジャ16の前進を阻止するストッパが構成されており、プランジャ16は、後述するように第二支持部68が載置面32上から後退せしめられない限り、前進が不可能とされている。
【0068】
さらに、第一支持部64および第二支持部68に形成された周壁66、70が、眼内レンズ14における本体部26の外側に位置せしめられるようになっており、特に本実施形態においては、第一支持部64に形成された周壁66が眼内レンズ14を器具本体12の軸方向に対する斜め方向の両側を挟んで位置せしめられると共に、第二支持部68に形成された周壁70が、眼内レンズ14を器具本体12の軸方向の両側を挟んで位置せしめられるようになっている。これにより、眼内レンズ14の器具本体12に対する軸方向および軸直方向の変位量を制限せしめて、眼内レンズ14を安定して保持出来るようになっている。加えて、第一及び第二支持部64,68への載置状態において、眼内レンズ14の本体部26は、載置面32から所定距離を隔てて位置せしめられており、載置面32に対して非接触状態で支持せしめられるようになっている。
【0069】
そして、屈曲部40が屈曲せしめれられて、カバー部36によってステージ24の開口部29が覆蓋せしめられることによって、眼内レンズ14が器具本体12内に収容状態でセットされる。なお、カバー部36は、係合片50が係合切欠54に係合せしめられることによって、閉状態に維持される。
【0070】
以上のようにして、眼内レンズ14が挿入器具10内に収容される。そして、本実施形態における挿入器具10は、眼内レンズ14を収容した状態で殺菌処理等がなされた後に、梱包されて配送される。
【0071】
そして、本実施形態における挿入器具10を用いて眼内レンズ14を眼内に挿入する場合には、先ず、担持部材56を器具本体12の下方に引き抜いて、器具本体12から取り外す。これにより、眼内レンズ14を支持せしめていた第一及び第二支持部64,68が載置面32から下方に引き抜かれて載置面32上から後退せしめられ、眼内レンズ14が載置面32上に載置せしめられる。ここにおいて、本実施形態における載置面32は平坦面とされていることから、眼内レンズ14を安定して載置せしめることが出来ると共に、凹状溝28の幅寸法が眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きい程度とされていることから、載置面32上での眼内レンズ14の周方向の回転も阻止されるようになっている。
【0072】
続いて、図15に示すように、眼組織に設けた切開創119にノズル部76の先端開口部94を挿入する。ここにおいて、ノズル部76には、凹状線96が形成されていることから、かかる凹状線96を挿入位置を確認する際の指標として用いることが出来て、凹状線96が切開創119に重なる位置まで先端開口部94を挿し込むことによって、先端開口部94を好適な挿入位置に位置決めすることが出来る。
【0073】
そして、ノズル部76を切開創119に挿入した状態で、プランジャ16の押圧板部111を器具本体12側に押し込む。これにより、載置面32に載置せしめられた眼内レンズ14における本体部26の外周縁部にプランジャ16の先端が当接せしめられて、プランジャ16によって眼内レンズ14が基端開口部80に向けて案内される。ここにおいて、眼内レンズ14におけるプランジャ16側の保持部30は、プランジャ16の切欠105内に載置されていることから、プランジャ16の先端が眼内レンズ14の本体部26の外周面とレンズ径方向一方向で直接に対向せしめられており、プランジャ16を本体部26に当接せしめるに際して、保持部30を巻き込むようなことも回避されている。
【0074】
しかも、保持部30がプランジャ16の切欠105に入り込んでいることで、プランジャ16の先端面で眼内レンズ14の本体部26を押し出す際に、保持部30の変形態様が或る程度制限されることとなる。これにより、眼内レンズ14をプランジャ16で押し出すに際して、保持部26の予期しない変形や、特に保持部26の本体部26への被着、保持部26のノズル部76内への引っ掛かり、更には眼内レンズ14の変形や回転などのトラブルの防止が図られ得るのである。
【0075】
なお、特に本実施形態では、かかる切欠105が、プランジャ16の上面を略軸直角方向に延びる一つの凹溝形状とされていると共に、そのプランジャ16の押出方向前方側の溝壁面が、凹溝の開口側に向かって拡開する傾斜面とされていることにより、眼内レンズ14の保持部30を凹溝である切欠105に対して容易に且つ確実に入れることが出来るようになっている。また、かかる凹溝である切欠105におけるプランジャ16の押出方向後方側の溝壁面は、溝の開口側に向かって溝底面から略垂直に立ち上がる垂直面とされており、切欠105に入り込んだ保持部30が、プランジャ16の押し出し操作に際しても、凹溝(切欠105)の前方側の傾斜面で切欠105内に確実に導き入れられた後、凹溝(切欠105)からの外れ出しが効果的に防止されて、凹溝(切欠105)内に入り込んだ状態に安定して保持され得るようになっている。
【0076】
なお、眼内レンズ14の押し出しの前に、必要に応じて、適当な潤滑剤をステージ24やノズル部76の内部に注入することが望ましい。特に本実施形態においては、カバー部36に厚さ方向に貫通する注入孔120が形成されており、かかる注入孔120を通じて、カバー部36を閉じた状態で潤滑剤が注入出来るようになっているが、潤滑剤の注入は、例えば、ノズル部76の先端開口部94から注入したり、一旦カバー部36を開いて、ステージ24の開口部29から注入したり、或いは、一旦プランジャ16を器具本体12から引き抜いて、貫通孔20の後端の開口部から注入するなどしても良い。
【0077】
そして、プランジャ16の押し込みに際して、プランジャ16の棒状部100は、カバー部36に形成された案内突起48、48で挟まれることによって、左右方向の変位量が制限される。これにより、プランジャ16を軸方向に安定して押し出すことが可能とされている。また、中央案内板部46および左右案内板部44a,44bが載置面32に向けて突出せしめられていることによって、眼内レンズ14の上方への過大な変位量も制限されており、眼内レンズ14を基端開口部84内に滑らかに案内することが可能とされている。
【0078】
さらに、特に本実施形態においては、プランジャ16に上方に突出する上方突出部106が形成されていると共に、かかる上方突出部106の上面にはテーパ面108が形成されている。そして、図16にモデル的に示すように、プランジャ16を押し込む過程において、上方突出部106がテーパ面108を介して貫通孔20の上壁部35に摺接せしめられる。そこにおいて、テーパ面108は、棒状部100の軸方向後方に向けて次第に上方に突出する傾斜面とされていることから、プランジャ16を押し込んで行くに連れて、テーパ面108を介して上方突出部106に及ぼされる上壁部35との当接力が増大せしめられる。これにより、本実施形態におけるプランジャ16は、器具本体12に押し込むに連れて次第に操作抵抗力が大きくなるようにされており、本実施形態においては、器具本体12の上壁部35と、かかる上壁部35に当接せしめられるプランジャ16のテーパ面108とを含んで抵抗力漸変機構が構成されている。
【0079】
それと共に、プランジャ16の上面には、カバー部36に形成された中央案内突部46が当接せしめられる。これにより、プランジャ16が載置面32に向けて押圧せしめられて上方への変位や変形が阻止されており、プランジャ16を載置面32から大きく離隔することなく案内して、基端開口部80に円滑に押し込まれるようにすることが可能とされている。
【0080】
そして、プランジャ16によって基端開口部80から導入部84内に案内された眼内レンズ14は、導入部84の底面82に形成された導入突部90、90によって、本体部26の中央部分を下方へ突出せしめた凹形状に初期変形が加えられつつ、縮径部90内に押し込まれる。更に、プランジャ16の棒状部100が導入突部90、90で挟まれることによって、軸直方向の変形や変位が抑えられて、軸方向に安定した押し出しを行なうことが可能とされている。
【0081】
更にまた、プランジャ16の先端部が縮径部86に差し掛かると、縮径部86の軸方向後端部に形成された傾斜面88に当接せしめられることによって、プランジャ16を通じて施術者に節度感が与えられる。これにより、プランジャ16の先端部が縮径部86に差し掛かったこと、換言すれば、眼内レンズ14が縮径部86内に押し込まれて、眼内レンズ14の湾曲変形が開始されたことを施術者に知らせることが可能とされている。
【0082】
続いて、プランジャ16が更に押し込まれることによって、眼内レンズ14は、縮径部86内を先端方向に向けて案内されて、更に小さく湾曲変形せしめられた後に、ノズル部76の先端部92に案内される。そこにおいて、本実施形態においては、先端部92の内周面に溝状の凹状線96が形成されていることによって、凹状線96が空気抜き孔として作用することから、眼内レンズ14の押し出しをより円滑に行なうことが出来る。要するに、かかる凹状線96を目印として、眼内レンズ14の先端縁部がノズル部76内で凹状線96にまで達する位置までプランジャ16で押し出すことによって、ノズル部76内の残留空気を速やかに排出操作することが可能となる。
【0083】
そして、更にプランジャ16が押し込まれることによって、眼内レンズ14が、ノズル部76の先端開口部94に案内される。そこにおいて、特に本実施形態においては、先端開口部94が斜めの開口形状とされていることから、プランジャ16の押し込み量の増大に伴って、眼内レンズ14を少しずつ挿入器具10の外部に露出せしめてゆくことが可能とされている。これにより、眼内レンズ14自体の弾性による復元力が徐々に発揮せしめられるようになっており、復元力が急激に開放されて眼内レンズ14が飛び出すおそれも軽減されている。それと共に、眼内レンズ14が先端開口部94に案内されて次第に外部に露出せしめられることによって、眼内レンズ14のプランジャ16の押圧力に対する抵抗力が軽減せしめられるに従って、前述の如きプランジャ16の上方突出部106に及ぼされる当接力が次第に増大せしめられてプランジャ16の操作抵抗力が増大せしめられることによって、施術者に対して略一定の操作抵抗力を与えることが可能とされている。なお、抵抗力漸変機構によるプランジャ16の操作抵抗力の増大は、少なくとも眼内レンズ14が先端開口部94から次第に露出せしめられる時点を含んで発現せしめられれば良いのであって、例えば本実施形態のように、プランジャ16の押圧操作の開始直後から操作抵抗力が次第に増加せしめられるようにされても良い。そして、眼内レンズ14が先端開口部94から挿入器具10の外部に押し出されて、眼内に挿入されることとなる。
【0084】
なお、特に本実施形態においては、眼内レンズ14においてプランジャ16の押込方向の後方側に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の先端部に形成された切欠105内に通された状態で押し出しが行なわれるようになっている。それ故、切欠105内に通された保持部30を完全に離脱させるために、プランジャ16は、図17に示すように、切欠105が先端開口部94から完全に突出せしめられる位置が器具本体12への最大押し込み位置とされており、かかる最大押し込み位置は、プランジャ16の挿通部98の先端面が貫通孔20の上下壁部35、34で係止されることで制限されるようになっており、本実施形態においては、これら上下壁部35,34を含んで、プランジャ16のストッパ機構が構成されている。そして、かかるストッパ機構によって、プランジャ16の先端開口部94からの過渡の突出が抑えられており、挿入に際する安全性も向上せしめられている。また、このことから明らかなように、本実施形態におけるプランジャ16の押出領域は、載置面32の軸方向後端部から、先端開口部94に至る範囲とされている。
【0085】
このような構造とされた挿入器具10においては、眼内レンズ14の本体部26の外周部分のみが第一及び第二支持部64,68によって支持されると共に、載置面32の上方に離隔した非接触状態で支持されていることから、本体部26の中央部分を傷つけるおそれを軽減することが出来る。そして、第一及び第二支持部64、68に設けられた周壁66、70によって眼内レンズ14の変位量が制限されることによって、眼内レンズ14を安定して支持せしめると共に、載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが出来る。
【0086】
さらに、本実施形態においては、担持部材56の器具本体12への組み付け状態を保持して、第一及び第二支持部64,68の載置面32からの突出状態を保持する係止爪72が、第二支持部68に一体的に形成されている。これにより、第二支持部68を載置面32に対して直接的に係合せしめることが可能とされており、第一および第二支持部64、68を載置面32から所期の位置に精度良く突出せしめることが出来ると共に、かかる突出状態を有利に保持することが出来る。また、担持部材56を器具本体12へ組み付けるロック機構を、優れたスペース効率をもって形成することが出来ると共に、担持部材56を器具本体12に組み付ける際に、係止爪72が載置面32上に突出せしめられた際の節度感を与えることが出来て、担持部材56の組み付けが正しく行われたことを知らせることも出来る。
【0087】
そして、本実施形態における挿入器具10を使用する際には、担持部材56を器具本体12から取り外すという非常に簡易な操作によって眼内レンズ14を載置面32上に載置することが可能とされている。そこにおいて、本実施形態における挿入器具10においては、前述の如き第一及び第二支持部64,68によって安定した位置決め精度を得られることから、このような簡易な操作にも関わらず、眼内レンズ14を載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが可能とされている。更にまた、カバー部36によってステージ24の開口部29を覆蓋せしめた状態を維持して眼内レンズ14の載置を行えることから、眼内レンズ14の挿入器具10からの脱落を抑えることが出来ると共に、眼内レンズ14の外界との接触の機会も軽減されて、衛生面上も優れた効果を得ることが出来る。
【0088】
加えて、本実施形態における挿入器具10においては、先端開口部94がノズル部76の中心軸に対して斜めに開口せしめられた傾斜開口部とされている。これにより、眼内レンズ14の弾性による吐出効果を少しずつ発揮せしめることが出来て、眼内レンズ14が先端開口部94から飛び出すおそれを軽減することが出来る。
【0089】
それと共に、本実施形態においては、器具本体12の上壁部35と、かかる上壁部35に当接せしめられるプランジャ16のテーパ面108とを含んで、プランジャ16の上方突出部106に及ぼされる当接力を次第に増大せしめる抵抗力漸変機構が構成されており、プランジャ16を押し込むに従って、プランジャ16の操作抵抗力が増大せしめられるようになっている。これにより、施術者が無意識の内に眼内レンズに加速度的な吐出作用を及ぼすことも回避され得て、押出工程の全体に亘って略一定の速度で眼内レンズを押し出すことが可能とされる。
【0090】
すなわち、先端開口部94に案内された眼内レンズ14は、先端開口部94が斜め形状とされていることによって次第に外部に露出せしめられるようになっており、自身の弾性による吐出作用が次第に増大せしめられる。換言すれば、眼内レンズ14が先端開口部94に案内されると、眼内レンズ14のプランジャ16の押圧力に対する抵抗が次第に減少せしめられる。にも関わらず、施術者が一定の押圧力でプランジャ16を操作してしまうと、眼内レンズ14に加速度的な吐出作用が及ぼされて、眼内レンズ14を飛び出させてしまうおそれがある。そこにおいて、本実施形態においては、抵抗力漸変機構によって眼内レンズ14が先端開口部94から次第に露出せしめられるに従って、プランジャ16の操作抵抗力を次第に増大せしめることが可能とされている。これにより、先端開口部94によるプランジャ16の押圧力に対する抵抗力の漸変的な減少と、抵抗力漸変機構によるプランジャ16の操作抵抗力の漸変的な増加を組み合わせることによって、初めて、プランジャ16に略一定の操作抵抗力を与えることが可能とされたのであり、施術者の意図する略一定の速さで眼内レンズ14を眼内に挿入することが可能とされたのである。
【0091】
加えて、本態様に従う構造とされた挿入器具においては、抵抗力漸変機構が、器具本体12の上壁部35と、プランジャ16のテーパ面108という簡易な構造で構成されていることから、挿入器具10を小さく軽量にすることが出来て、挿入器具10の取り扱い性や操作性も向上せしめられる。
【0092】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0093】
例えば、押出部材の操作抵抗力を次第に増大せしめる抵抗力漸変機構の具体的な構造は、前記第一の実施形態の如き形状に限定されない。図18および図19に、本発明の第二の実施形態に係る押出部材としてのプランジャ130を示す。なお、本実施形態は、前述の第一の実施形態における押出部材の形状が異ならされているのみであることから、プランジャ130のみを示す。また、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部材乃至は部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0094】
プランジャ130は、前記第一の実施形態におけるプランジャ16におけるテーパ面108の軸方向長さ寸法が異ならされたものである。具体的には、プランジャ130において棒状部100の上面に突出して形成されるテーパ面132は、その軸方向前端縁部が、扁平部102における先鋭部104の後端縁部より僅かに後方に位置せしめられると共に、軸方向後端縁部が、かかる軸方向前端縁部より僅かに後方に位置せしめられている。これにより、プランジャ130におけるテーパ面132は、前述の第一の実施形態としてのプランジャ16におけるテーパ面108に比して、その軸方向長さ寸法が充分に小さくされて、より急峻な傾斜角度が与えられている。そして、テーパ面132の後端縁部から作用部96の後端縁部には、一定の高さ寸法をもって軸方向に延びる平坦部134が形成されている。これにより、本実施形態におけるプランジャ16は、扁平部102における先鋭部104の軸方向前端縁部から軸方向後端縁部およびテーパ面132の軸方向前端縁部から軸方向後端縁部にかけて、軸方向後方に行くに連れて次第に断面積が大きくされている。
【0095】
このような構造とされたプランジャ130は、前述の第一の実施形態と同様の構造とされた器具本体12に挿入される。そして、本実施形態におけるプランジャ130を押し込んだ場合には、図20にモデル的に示すように、先ず棒状部100における底面133の先端部が導入突部90に摺接せしめられて上方に変位せしめられる。そして、プランジャ130を更に押し込むことによって、プランジャ130の上方突出部106がテーパ面132を介して器具本体12の貫通孔20の前端面に形成された上壁部35に摺接せしめられて、プランジャ130が上壁部35で下方に変位せしめられる。これにより、導入突部90と上壁部35によって底面133と上方突出部106が押さえ付けられて、導入突部90と上壁部35との間で、プランジャ130が上方に凹に撓んだ状態で全体的に弾性変形せしめられる。このように、本実施形態においては、プランジャ130における棒状部100の底面133と上方突出部106が摺接部とされており、これらに当接せしめられる導入突部99と上壁部35が当接部とされている。そして、導入突部99と上壁部35との間に撓み領域134が形成されている。
【0096】
ここにおいて、プランジャ130は、先鋭部104によって軸方向後方に行くに連れて幅寸法が増大せしめられていると共に、テーパ面132によって軸方向後方に行くに連れて高さ寸法が増大せしめられている。これにより、先鋭部104およびテーパ面132を含んでプランジャ130の軸方向の中間部分に断面積漸変部が形成されており、プランジャ130を押し込むに従って、撓み領域134に位置せしめられるプランジャ130の断面積の大きな部分が長くされる。その結果、撓みの反力が増大せしめられて、撓みの反力として作用する導入突部90および上壁部35への垂直反力が漸変せしめられ、延いてはそれに伴って底面133および上方突出部106の導入突部90および上壁部35に対する摩擦抵抗力が次第に大きくされることとなる。これにより、プランジャ130の操作抵抗力が次第に増大せしめられる。このように、本実施形態においては、当接部を構成する導入突部99と上壁部35、撓み領域134、およびプランジャ130の断面積漸変部を構成する先鋭部104、テーパ面132を含んで、抵抗力漸変機構が構成されている。
【0097】
なお、前記第一および第二の実施形態におけるプランジャ16、130に形成されるテーパ面108,130は何れも一定の傾斜角度とされていたが、例えば、これらテーパ面108,130の傾斜角度をプランジャ16,130の軸方向で変化せしめるなどしても良い。このようにすれば、テーパ面108、130を介して及ぼされる上方突出部106への当接力をより高度に調節することが出来て、プランジャ16,130の操作抵抗力をより高度に調節することが出来る。
【0098】
更にまた、押出部材の摺接部に摺接される傾斜面を、器具本体側に設けることも可能である。例えば、前述の第一の実施形態において、プランジャ16の摺接部としての上方突出部106の軸方向前方の端面を、テーパ面108を形成せずに軸直方向に立ち上がる垂直面とする一方、器具本体12に形成された当接部としての上壁部35の下端面に、軸方向の前方に行くに連れて上方突出部106に次第に接近する傾斜面を形成することによって抵抗力漸変機構を構成する等しても良い。
【0099】
また、担持部材56を器具本体12に固定するロック機構としては、必ずしも前述の第二支持部68に形成された係止爪72のように、第二支持部68に形成されている必要は無い。例えば、係止爪72に代えて、第一支持部64および第二支持部68を、脚板部62側へ行くに連れて上面視寸法が次第に大きくなる形状として、これら第一支持部64および第二支持部68が載置面32の貫通孔74に押し込まれることによって、貫通孔74の復元力および互いの部材間の摩擦力によって担持部材56を載置面32の裏側に固定するようにしても良いし、或いは、担持部材56の側壁部58を、器具本体12において載置面32の幅方向両端部から下方に突出する下方突出壁37(図5参照)で挟持せしめることによって固定するなどしても良い。
【0100】
また、本発明における眼内レンズの挿入器具は、前述の実施形態の如き、予め眼内レンズを内蔵した状態で提供されるものに限定されるものではなく、眼内レンズとは別個に提供されて、施術時に眼内レンズがセットされるものであっても良い。
【0101】
更にまた、前記実施形態において挿入器具10に収容される眼内レンズ14は、本体部26と保持部30が別体として形成されていたが、本体部26と保持部30が同一部材で一体成形されたものを採用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第一の実施形態としての眼内レンズの挿入器具の上面図。
【図2】同挿入器具の側面図。
【図3】同挿入器具を構成する本体筒部の上面図。
【図4】同本体筒部の側面図。
【図5】同本体筒部の正面図。
【図6】同本体筒部の背面図。
【図7】同本体筒部の要部拡大上面図。
【図8】図1に示した挿入器具を構成する担持部材の上面図。
【図9】同担持部材の側面図。
【図10】図1に示した挿入器具の挿入筒部の上面図。
【図11】同挿入筒部の側面図。
【図12】図1に示した挿入器具を構成する押出部材の上面図。
【図13】同押出部材の側面図。
【図14】図1に示した挿入器具の要部を拡大して示す上面説明図。
【図15】図1に示した挿入器具の使用状態を説明するための説明図。
【図16】同挿入器具の使用状態を説明するための断面説明図。
【図17】押出部材の突出位置を説明するための上面説明図。
【図18】本発明の第二の実施形態としての押出部材の上面図。
【図19】同押出部材の側面図。
【図20】本発明の第二の実施形態としての押出部材の使用状態を説明するための断面説明図。
【符号の説明】
【0103】
10:挿入器具、12:器具本体、14:眼内レンズ、16:プランジャ、26:本体部、30:保持部、35:上壁部、76:ノズル部、94:先端開口部、106:上方突出部、108:テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを収容する略筒形状を有する器具本体を備えており、該器具本体内に軸方向の後方から挿入された押出部材で該眼内レンズを軸方向前方に移動させつつ小さく変形せしめて該器具本体の軸方向先端部に設けられた挿入筒部を通じて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具において、
前記挿入筒部の先端開口部が該挿入筒部の中心軸に対して傾斜して開口した傾斜開口部とされていると共に、前記押出部材には前記器具本体への押込方向への移動に際して該器具本体に摺接する摺接部を設ける一方、該器具本体への該押出部材の押し込みにより前記眼内レンズが該傾斜開口部から次第に露出されるに従って、該摺接部に及ぼされる当接力を次第に増大させることにより該押出部材の操作抵抗力を次第に増大させる抵抗力漸変機構を設けたことを特徴とする眼内レンズの挿入器具。
【請求項2】
前記押出部材における前記摺接部と、該押出部材の押し込みに際して該摺接部に摺接される前記器具本体の当接部との少なくとも一方を、該押出部材の押し込み方向に対して傾斜した傾斜面とすることによって前記抵抗力漸変機構を構成した請求項1に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項3】
前記器具本体において前記押出部材の押し込みに際して前記摺接部に摺接される当接部を設けて、該当接部が該摺接部に押し付けられることにより該押出部材を軸方向の所定長さの部分において弾性変形せしめる撓み領域を形成すると共に、該押出部材の断面積を該撓み領域において該押出部材の押し込み方向で次第に大きくする断面積漸変部を形成することによって前記抵抗力漸変機構を構成した請求項1又は2に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項4】
前記挿入筒部が光透過性を有する部材で形成されていると共に、該挿入筒部において前記先端開口部から軸方向後方の所定の位置には、該挿入筒部の周方向に延びる視認可能な目印線が形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項5】
前記眼内レンズが両側に延びる一対の保持部を備えており、これら保持部が前記器具本体の軸方向に向けられてセットされると共に、軸方向後方に位置する保持部が前記押出部材の先端部に設けられた切欠内に入るようにされている請求項1乃至4の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項6】
前記器具本体に前記挿入筒部の基端部と連通せしめられた載置部が設けられており、該載置部には前記眼内レンズを載置せしめる載置面及び該器具本体の外側に開口せしめられた開口部が形成されている一方、該器具本体には該開口部を覆蓋せしめる蓋体が設けられており、該蓋体によって前記押出部材が該載置面に向けて押圧せしめられるようになっている請求項1乃至5の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項7】
前記器具本体における前記載置面の軸方向前方の底面には、軸方向に延びる一対の導入突部が形成されており、前記押出部材がこれら導入突部の間で案内されるようになっている請求項6に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項8】
前記器具本体における前記押出部材の押出領域内に該押出部材に接触する段差が設けられている請求項1乃至7の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項9】
前記眼内レンズが載置せしめられる載置面に貫通孔が形成されると共に、該載置面には外側から前記器具本体と別体形成された担持部材が組み付けられており、該担持部材に突設された支持部が該貫通孔を通じて該載置面上に突出せしめられることによって該眼内レンズの外周部分を支持する外周支持部が構成されていると共に、該支持部には、該載置面に係止せしめられて該支持部の該載置面からの抜けを防止して該支持部の該載置面からの突出状態を保持する係止爪が形成されている請求項1乃至8の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図15】
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