説明

眼内レンズの計算に好適な、眼の軸方向長さ及び/又は角膜の曲率及び/又は前房深さを非接触的に測定するためのシステム及び方法

【課題】眼内レンズの計算に好適な、眼の軸方向長さ及び/又は角膜の曲率及び/又は前房深さを非接触的に測定するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】移植する眼内レンズの計算及び選択を行うために、眼の軸方向長さAL、前房の深さVKT、及び角膜の曲率を非接触的に測定するための一体化装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、移植する眼内レンズ(IOL)の計算及び選択を行うために、眼の軸方向長さ(AL)、前房の深さ(VKT)、及び角膜の曲率(HHK)を非接触的に測定するための一体化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼における縦断面図の略図を図1に示す。ヒトの眼の軸方向長さALは、通常、接触的な超音波法によって測定される。別の測定方法が、ドイツ特許第3201801号、米国特許第5673096号及びドイツ特許出願第4446183号の中で説明されている。角膜−角膜半径HHRの曲率は、周知の角膜計/角膜曲率計によって測定される(ドイツ特許第251497号、米国特許第4572628号、米国特許第4660946号、米国特許第5212507号、及び米国特許第5325134号)。前房深さVKTの測定は、超音波によって又は細隙灯に付加されたユニット(前房深さゲージ、細隙灯イメージによる調整)によって行うことができる。
【0003】
これらの測定値は、移植すべき眼内レンズIOLを選択するためにも重要であり、特に白内障の手術の前だけでなく、学童の近視の進行をモニタするため及び不等像視症を検出するためにも行う必要がある。臨床作業では、少なくとも2つのデバイス(例えば、超音波のa−スキャン及び自動角膜計)によって、これらの数量を測定することが一般的である。測定された数量は、IOLの光学出力を計算するための式に使用される。IOLの選択に影響する種々の誤差が、使用するデバイスのタイプにより発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、これらのデバイス依存の測定誤差を最小にすることである。
この目的は、本発明によれば、独立クレームの機能によって達成される。好ましいさらなる発展が、従属クレームの中で示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、眼の全ての必要なパラメータは、デバイス装置及び対応する測定方法によって都合よく決定される。
デバイスを患者に対して調整することができる必要な位置合わせも同様に、この装置の中で実現される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ヒトの眼における縦断面図の略図。
【図2】デバイスの構成の略図。
【図3】デバイスの観察方向の正面図。
【図4】眼14からCCDカメラ23へのビーム経路A〜Dの略図。
【図5】全ての調整可能なユニット及び光学エレメントを調整しコントロールする集中管理を示す線図。
【図6a】波長範囲に対するスプリッタ層の透過率のグラフ。
【図6b】波長範囲に対するスプリッタ層の透過率のグラフ。
【図7】CCDマトリックス上のイメージに基づく、VKTの測定方法を示す略図。
【図8a】照明方向にVKTを決定する装置の略図。
【図8b】検出方向にVKTを決定する装置の略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
IOLの計算も、このデバイス装置によって実行される。従って、種々のデバイスからIOLの計算を実行するコンピュータへ測定値を転送する上で、データが失われたり変造されたりすることはない。本発明及びその利点を、概略図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0008】
デバイスの構成を、概略的に図2に示す。軸方向長さを測定するために、レーザダイオード1の光はマイケルソン干渉計(3〜5)を経由して、患者の眼14上に結像する。このマイケルソン干渉計は、リフレクタ4(この場合は、三角形のプリズム)を有する固定式参照アームR1、異なった位置の別のリフレクタ5(三角形のプリズム)に関連して示した調整可能な参照アームR2、R1及びR2で反射されたビーム成分を重ね合わせるためのビームスプリッタキューブ3、スプリッタキューブ8、及び回折光学素子DOE9から構成される。ダイオード7は、レーザダイオード1の光出力をモニタする。眼14の角膜及び網膜によって反射された一部のビームは互いに重ね合わされ、DOE9、偏光プレーンを回転させるための4分の1波長板P1を有するスプリッタキューブ8、2分の1波長板P2を有するスプリッタキューブ15によって、集束素子(この場合は色消しレンズ16)を経由して、アバランシェフォトダイオードAPD17上に結像する。この構成において、軸方向長さは、例えば米国特許第5673096号の中で説明されているような周知の方法に基づいて測定される。
【0009】
眼及び発生する反射光を観察するために、反射光(眼から来る光)の一部は、ミラー20を経由し色消しレンズ22によって、CCDカメラ23上に結像する。色消しレンズ18,19は、この場合は、回転されて光路から外される。この構成では、ダイアフラム21は、オフに設定されている。
【0010】
角膜の曲率HHKを測定するために、6個の好ましくは赤外のLED10によって、光軸A1に対してほぼ18゜の角度で、ドイツ特許第251497号に類似した方法で、眼14を照明する。そのうちの2個のLED10が、図1の図面の中で例として示されている。ピンホールのダイアフラム10aが、LEDの下流側に配置されて、点状の照明イメージを発生する。
【0011】
6個のレンズ11が、ダイオードの光をコリメートするために、照明方向内のLEDの下流側に配置されている。眼の中に(角膜の反射によって)形成されたこれらの光源のイメージは、スプリッタキューブ8及び15並びに色消しレンズ18及び19を経由して、CCDカメラ上に結像する。DOE9は、好ましくは回転させて光路から外されているが、ビーム経路内に留まってもよい。色消しレンズ22は、回転されて光軸から外されている。
【0012】
VKTを測定するために、それぞれの眼は、LED12、スライドダイアフラム12a及びシリンドリカルレンズ13によって、ほぼ33゜の角度でスリット状に照明される。角膜及び前部レンズ面の結果として生ずる散乱像は、スプリッタキューブ8及び15並びに色消しレンズ18及び19を経由して、CCDカメラ上に結像する。DOEは、好ましくは回転されて光軸から外されている。色消しレンズ22は、回転されて光軸から外されている。
【0013】
図3は、デバイスの観察方向の正面図を示している。X−Y−Z調整用の周知の細隙灯用横送り台は、図示していない。
この図面は、DOE9(この中心点A1が、デバイス内の光軸の位置を確認する)、角
膜の曲率を測定するためのレンズ11、LED10(レンズ11の後に配置されているため見ることができない)、VKTを測定するためのスリット結像用のシリンドリカルレンズ13、及び眼14を照明すると共にアライメントを取るための6個の赤外ダイオード24を示している。
【0014】
眼14からCCDカメラ23へのビーム経路A〜Dに基づいた図4を参照して、測定作業をより詳細に説明する。
ビーム経路C:眼に対するデバイスのアライメント
眼は色消しレンズ18の焦点距離内にあり、無限大に結像され、また色消しレンズ22を経由して、CCDカメラの平面の中に結像される。色消しレンズ19は、回転されて光軸から外されている。患者はレーザダイオード(LD)又はLED1を使用する固定用の光を見るように要求されるため、患者は瞳孔を光軸の方向に向ける。眼14のより大きな部分(例えば、15mm)を、CCDカメラ上に結像させる必要がある。DOEの効率が低いため(集束部分で約5%)、DOEは光彩構造のイメージングにはあまり適していない。このため、色消しレンズ18及び22から成る固定イメージスケールの光学システムが、イメージングを行う。DOEは、回転されて光軸から外されることが好ましい。
【0015】
患者に対して何らかの付加的な固定した刺激を与えることを避けるために、IRダイオード24(図2)(例えば、880nm)により眼14は照明される。これらのIRダイオードは、広い放射特性(大きな電力半値角)によって特徴付けられることが好ましい。X−Y−Z方向に移動可能な周知の細隙灯用横送り台によって、デバイスを患者に対して位置合わせする。CCDカメラは、例えば、フィリップス社のVCM 3405とすることができる。眼を照明することは、暗くした室内でも患者をデバイスに対して位置合わせすることができるようにするために必要である。この照明は、15mmのフィールドに対してできるだけ拡散させる必要がある。しかしながら、光源が角膜を通過して結像することは、(角膜が凸面鏡として働くため)避けることができない。
【0016】
この場合の基本的な考え方は、患者の眼を位置合わせするための照明手段を同時に使用することである。
比較的大きな電力半値角を持つ6個の赤外LED24が、円の周囲(恐らく、角膜計の測定の場合と同じ円の周囲)上に配置されている。これらのLED24は6個のポイントを角膜上に作り、これらのポイントはCCDカメラ上に結像される。患者の眼は生でLCディスプレイ又はモニタに表示される。さらに、円又は十字線が、中心をマークするためにLCD又はモニタ上に示される。眼を位置決めするために、6個のポイントを表示された円に関して中心に置く必要がある。このことは、横送り台を移動することによって行われる。ポイントが中心に置かれて鮮明である場合、患者は高さ、横及び深さに関して正しく位置合わせされることになる。患者自身は、調整用のレーザ1又はLED1aが投影されるデバイスを覗き込む。そして、患者は眼の焦点をレーザ1又はLED1aに合わせる必要がある。レーザの反射は、瞳孔の中心に見られる。
【0017】
別の調整手段が、LCディスプレイ/モニタ上に表示される。アバランシェフォトダイオードAPDを設けて、軸方向長さを測定するデバイスの干渉信号を検出する。
患者の眼が測定デバイスの光軸上にある場合、調整用のレーザ1又はLED1aは角膜の前面によって反射され、反射光はAPD上に結像される。このように、(相対)高さが患者の眼のセンタリングについての目安となる直流電圧信号を、APDが発生する。この直流電圧信号はA/D変換器を介して内部のコンピュータに送られ、A/D変換器から、適当な方法(例えば、バー又は円)でLCD上に表示される。従って、患者の眼の位置合わせの状態についてのさらなる情報が、様々な寸法のバー又は円を通してユーザに送られる。
ビーム経路D:ALM
レーザダイオード1(例えば、780nm)の反射光は、平行なビーム経路としてDOE及び色消しレンズ22を経由して、CCDカメラ23上に結像する。ここでは、光学素子18,19が回転されて光路から外され、約5mmの眼の部分が観察及び反射調整のために表示される。最大のエネルギーをAPD17に送るために、APD上のエネルギー全体の大きな部分、好ましくは約80〜95%以上が、図2に示したスプリッタキューブ15内で結合から外される。このため、光の約20〜5%しかCCDカメラに入射しない。ビーム経路B:角膜計
LD1又はLED1aの固定用の光上で患者の眼14を固定することを妨げないようにするために、6個のIRダイオード10(例えば、880nm)によって、ドイツ特許第251497号に類似した方法で、照明を行うことが好ましい。
【0018】
0.05mmの測定精度を達成するために、CCDカメラ23の所定の分解能は、眼14上で約6mm以下のフィールドのイメージングを必要とする。DOEの動作は、好ましくは、それを回転させて外すことによって再度キャンセルして、色消しレンズ18及び19が6個の角膜反射イメージのイメージングを実行する。
【0019】
測定精度を向上させるために、以下のものが使用される。この測定精度は、患者の眼からデバイスまでの距離に対して広範囲にわたって無関係である。
・測定用孔を0.05未満に好適に制限するテレセントリックダイアフラム21
・LEDと患者の眼との間に配置されて、患者の眼の軸方向の位置とは無関係に入射角を一定に保つコリメータ11
LED光のイメージングは、ピンホールのダイアフラム10aを経由して都合よく実行される。このピンホールのダイアフラムによって、角膜計測定ポイントの正確なアライメントが可能になる。位置とは無関係に径方向の測定について所望の精度を得るためには、コリメータの焦点距離は、光源の有効的な広がりの50倍よりも大きな距離が必要である。
ビーム経路A:VKT
光の散乱は、ヒトの眼の中の光部分を観察する場合の決定的な要因であるという事実に基づいて、眼14を照明するためには、最も短い可能な波長(例えば、400〜600nm)を有する光源を選択する必要がある。また、VKTを測定する場合、眼14において約6mm以下のフィールドをCCDカメラ23上に結像して、0.1mmの要求される測定精度を得ることができる。これは、DOE効果を使用しないで、すなわち、DOEを回転させて光路から外して、色消しレンズ18及び19によって行われる。色消しレンズ22は、回転させて光路から外す。VKTの測定の中で起こる低い光散乱イメージの光量を最低にまで減少させるために、回転させて光路に入れた又は調整されたテレセントリックダイアフラム21は、より大きな直径(好ましくは0.07よりも大きい、例えば、13mmの孔に対して)を備える必要がある。このため、そのダイアフラムは少なくとも2つの位置に調整可能であるか、又は第2のダイアフラムと交換することができる。
【0020】
被験者の眼は、輝いた光スリットを通して固定角度で側面から照明される。眼で生じる光部分は、光学システム18,19,21によってCCDカメラ上に結像される。照明と観察とでは固定角度は好ましくは約33゜である。
【0021】
図8a,bは、図8aでは照明方向に、図8bでは検出方向に、VKTを決定する装置の略図を示す。光スリットは、幅が固定されたスリット12aから規定の距離にある光を強めるLED12のラインによって形成される。この方法で照明されるスリットは、シリンドリカルレンズ13を通過して、スリット像Sとして被験者の眼上に結像する。使用が終わるまでに、LEDは一般に少なくとも10000時間の寿命を有する(対照的に、ハロゲン球は100〜200時間)。ハロゲン球の場合のように高い温度で外観が疲労することはない。
【0022】
略図で示されたレンズ18,19を経由する関連するイメージの部分を用いて、被験者の眼のイメージが、主としてCCDセンサ23上に生じる。被験者のアライメントの影響を最小にするために、イメージングはテレセントリック絞り21を通じてテレセントリック的に実行される。ビデオ信号がモニタ又はLCディスプレイ上に表示されるので、ユーザは自然体で被験者の適合や測定を行うことができる。
【0023】
測定手順は、フィールドの測定可能な移動に基づいていないため、瞳孔の分割(teilung)は省略することができる。CCDカメラ23の信号はフレームグラッバーFGによりコンピュータCのメモリに転送される。VKT(精度0.1mm)を計算するイメージ部分内の距離を求めるために、適当なイメージ処理用ソフトウェアが使用される。関連するイメージ内容の改良(例えば、周辺光を取り除くことによる)は、適当な形状の照明用LEDを、ビデオのフィールドに同期して周期的にオンおよびオフに切り換えることによって達成される。
【0024】
CCDカメラ上の眼のイメージは、色消しレンズの定義された焦点距離を満たす。焦点距離の決定は、複製する眼における所望のイメージの部分に従って行われる。色消しレンズの焦点距離内に、絞り23が配列され、テレセントリックな条件が満たされる。このイメージングシステムの簡単な構造により、別のシステムでの単純な一体化能が確保される。固定用の光1,1a(LED)の挿入は、図8bでビームスプリッタ8によって行われる。
【0025】
被験者が凝視を続ける光源(例えば、LED1a又はレーザダイオード1)は、観察システムの中に一体化される。カメラのビデオ信号は、モニタ又はLCディスプレイ上に表示される。ユーザは、被験者を調整及び測定する間に、被験者の凝視が正しく固定され、このため測定結果に間違いがないことを確認することができる。
【0026】
光スリットは、幅が固定されたスリット12aから規定の距離にある光を強めるLED12のラインによって形成される。この方法で照明されるスリットは、シリンドリカルレンズを通過して、被験者の眼(4)上に結像する。幅が0.3mmで孔が0.1より大きいスリットの、白色光のLEDを用いた場合のイメージング−1:1のイメージングからわずかに外れたイメージング−は、特に好適であることが証明されている。
【0027】
被験者の眼のイメージングは、イメージング光学素子18,19を経由する関連するイメージ部分を用いて、好ましくはCCDセンサ8上で行うことが好ましい。被験者のアライメントの影響を最小にするために、このイメージングはテレセントリック的に実行される。ビデオ信号がモニタ又はLCディスプレイ上に表示されるので、ユーザは自然体で被験者の適合や測定を行うことができる。
【0028】
CCDカメラの信号は、例えば、フレームグラッバーによって、コンピュータのメモリに送られる。VKT(精度0.1mm)を計算するイメージ部分内の距離を求めるために、適当なイメージ処理用ソフトウェアが使用される。関連するイメージ内容の改良(例えば、周辺光を取り除くことによる)は、適当な形状の照明用LEDを、ビデオのフィールドに同期して周期的にオンおよびオフに切り換えることによって達成される。
【0029】
下記の事項では、CCDマトリックス上のイメージに基づく、VKTの測定方法を図7を参照して示す。この図面には、調整用レーザ及び固定用のLEDの反射イメージFI、及び照明1をオンに切り換えたときの角膜及びレンズSLの散乱光SHに関する、CCDカメラによって検出された眼のイメージが示されている。
ディジタル化記録内の角膜及びレンズの散乱イメージの前縁の距離の決定
イメージ処理の開始点は、直接連続して記録された一対のイメージ(n回)である。ここで、イメージ1はスリット照明をオンに切り換えたときのイメージ(「明イメージ」)であり、イメージ2はスリット照明なしの、固定ランプのイメージが付いたイメージ(「暗イメージ」)である。処理は、以下の本質的なステップによって実行される。
【0030】
・暗イメージ内の瞳孔の検出:境界の制約を考慮した、2値化するためのスレショルド値のヒストグラムベースの選択;バイナリイメージの共分散マトリックスを評価することによる、瞳孔に外接する楕円の決定
・暗イメージ内の瞳孔の中の固定ポイントの決定:グレイ値が暗イメージ内のグレー値分布の0.9−分位以上である全ての隣接領域の決定;表面、形状、及び瞳孔の中心点からの距離に依存する全ての領域に対する確率量の決定;固定ポイントとして最も類似した領域の中心軌跡の選択
・差分イメージ(明イメージから暗イメージを引いたイメージ)の計算、及びメジアンフィルタリングによる差分イメージ内のノイズ抑制
・差分イメージ内のスリット照明の散乱イメージのエッジ形状の決定:境界の制約を考慮した、2値化するためのスレショルド値のヒストグラムベースの選択;固定ポイントの回りの所定の領域内でスレショルド値を超えている位置として、エッジの概略決定;概略的に検出した位置に最も近いラインプロフィール内のグレー値形状の反転ポイントの位置として、エッジの微調整した検出;エッジ形状内の異端値又は異常値の検出による、反射エッジの除去(平均エッジ形状から最も離れたポイントの所定の比率の距離)
・角膜の散乱イメージ及びレンズの散乱イメージSH,SL(ピクセル内)の前縁の距離Xの決定:楕円によるエッジ形状の近似(平方エラー累積を限定的に最小化すること);固定ポイントを通過する水平線とこれらの楕円との交点の距離の計算
前述した距離からの前房深さの計算
ピクセル内の距離Kのミリメートル(mm)への変換(光学素子のイメージングスケール及びCCDマトリックスの寸法を含む)
r=角膜半径
n=房水の屈折率
ω=照明と観察との間の角度
【0031】
【数1】

【0032】
この式は、固定用ランプのイメージが図7に示したように、レンズ散乱イメージの前縁に配置される場合にちょうど当てはまる。そうでない場合は、レンズ散乱イメージの前縁からの固定ランプイメージの距離を決定することができ、また周知のイメージング公式に基づいて、この「偏心」の量から前房深さについての補正値を決定することができる。角膜の半径は、前述した角膜計装置によって測定することが好ましい。
【0033】
次の表は、3つの必要な測定と調整プロセスとを結合する場合に考慮すべき特性設定の概要である。
【0034】
【表1】

【0035】
この概要が示すように、種々の波長範囲が異なった測定タスクに使用される。スプリッタキューブ8及び15は、照明用ビーム経路、観察用ビーム経路、及び測定用ビーム経路が互いに分離されているため、この構成では極めて重要である。
【0036】
このタスクは、レーザダイオード1の直線偏光を考慮した特別なスプリッタ層によって実行される。
スプリッタキューブ8:
干渉計から入射するレーザ光は、眼14の方向に最大限に反射させる必要がある。眼14から入るレーザ光は、最大限透過させる必要がある。さらに、キューブ8内のスプリッタ層は、角膜計測定及びVKT測定用の赤色光成分及びVIS光成分を最大に透過させる必要がある。LD1(例えば、LT023、シャープ社)は直線偏光を含んでいるので、偏光効果を有する誘電体の多重層を都合よく使用することができる。特性伝送経路が図4に示されている。レーザダイオード1から入る垂直偏光(s−偏光、780nm)は、できるだけ反射される(約98%)。
【0037】
4分の1波長板によって、円形の偏光が発生する。このため、眼14によって反射された光は、4分の1波長板を通過した後、再度直線偏光される。しかしながら、偏光方向は90゜回転される(平行偏光、p−偏光)。この振動方向のために、スプリッタ層は、780nmの波長を約100%透過する。IR及びVIS用LEDは、非偏光を放射する。図6から分かるように、420〜580nmの範囲及び870〜1000nmの範囲の波長のスプリッタ層の透過率は、非偏光については90%以上である。
層の構成:スプリッタキューブ8
その一般的な機能−定義された波長範囲内の偏光スプリッタ効果が高いこと−のほかに、この偏光スプリッタキューブは、可視の波長範囲(420〜560nm)及び近赤外の波長範囲(870〜1000nm)において透過率が高いという別の要求事項を満足する。層の設計は、46゜の狭い入射角の範囲に対してこれらの要求事項を満足している。使用される材料は、基板、接着剤、及びコーティング物質の屈折率に関して互いに適合している。以下の材料が、この特別な用途のために選択された。
基板:SF2、n=1.64
接着剤 n=1.64
H n=1.93
L n=1.48 設計は、17のHLの交互の層から形成される。
【0038】
HFO2はHであり、SiO2はLである。
これらに匹敵するスプリッタに関しては、基板及びコーディング物質の屈折率並びに入射角を適当に選択することによって、適当なスプリッタを製造することができる。
パラメータ:420〜560nmの高透過率、非偏光
870〜1000nmの高透過率、非偏光
偏光のスプリッティング780±20nm
例:
1.HFO2 156.8nm
2.SiO2 118.1nm
3.HFO2 166.4nm
4.SiO2 95.8nm
5.HFO2 160.2nm
6.SiO2 147.3nm
7.HFO2 145.6nm
8.SiO2 151.0nm
9.HFO2 144.9nm
10.SiO2 148.2nm
11.HFO2 149.2nm
12.SiO2 139.9nm
13.HFO2 161.3nm
14.SiO2 103.9nm
15.HFO2 179.5nm
16.SiO2 64.9nm
17.HFO2 170.9nm
スプリッタキューブ15:
スプリッタキューブ8から入射するレーザ光は、IR及びVISの光成分についてほぼ最大の透過率で反射する必要がある。この層は、その特性がスプリッタキューブ8のスプリッタ層に類似した偏光スプリッタによって、同様に実現される。スプリッタキューブ15に配置された2分の1波長板は、入射光の偏光方向を90゜回転させるので、s−偏光成分が再度スプリッタキューブ15に衝突する。前述したスプリッタ比率は、層8を変更することによって調整される。IR及びVIS範囲の非偏光に対しては、透過率は90%よりも大きい。
層の構成:スプリッタ15
波長が780nm±20nmで、s−偏光反射が80〜95%という要求事項のほかに、このスプリッタキューブは、可視波長範囲(420〜560nm)及び近赤外の波長範囲(870〜1000nm)において透過率が高いという別の要求事項に適合している(図6a)。層の設計は、46゜の狭い入射角範囲に対してこれらの要求事項を満足している。使用される材料は、基板、接着剤、及びコーティング物質の屈折率に関して互いに適合している。以下の材料が、この特別な用途のために選択された。
基板:BK7 n=1.52
接着剤 n=1.52
H n=1.93
L n=1.48
設計は、13のHLの交互の層から形成される。
【0039】
これらに匹敵するスプリッタに関しては、基板及びコーディング物質の屈折率並びに入射角を適当に選択することによって、適当なスプリッタを製造することができる。
パラメータ:420〜560nmの高透過率、非偏光
870〜1000nmの高透過率、非偏光
反射s−偏光、約80〜95%、780±20nm
例:1.HFO2 130.2nm
2.SiO2 215.4nm
3.HFO2 130.6nm
4.SiO2 17.8nm
5.HFO2 160.7nm
6.SiO2 241.6nm
7.HFO2 136.6nm
8.SiO2 240.0nm
9.HFO2 156.4nm
10.SiO2 18.0nm
11.HFO2 135.1nm
12.SiO2 214.1nm
13.HFO2 131.3nm
図5によれば、光学素子18,19,22、ダイアフラム21などの全ての調整可能なユニット及び光学エレメントを調整しコントロールする集中管理が行われる。
【0040】
DOEの動作を考慮した種々のイメージングスケールは、デバイス内で反転プロセスを必要とする。これらの反転プロセスは、モータによってまたプログラムコントロールされた方法で実行することが好ましい。
【0041】
本質的なエレクトロニクスの構成単位を一体化した、コンパクトなデバイスが実現されている。このデバイスの核心は、埋め込みペンティアムコントローラCである。このコントローラCに、ディスプレイD(検査すべき眼14及びユーザに対するメニューを表示する)、キーパッド、マウス、フットスイッチ及び周辺機器としてのプリンタが接続されている。
ALM
レーザダイオード1及び干渉計のスライドIS(測定システムに接続された、移動可能なプリズム5)のコントロールは、コントローラCによって実行される。眼の動きの影響を減らすために、測定時間を短く(0.5秒以下)する必要がある。APD17が発生した信号は、信号処理ユニットSEに入力され、信号の大きさに基づいて増幅され、次に、周波数を選択した方法で増幅されて、有用な信号の周波数の約4倍に相当するサンプリング周波数で、アナログからディジタルに変換される。ディジタルのサンプリング値は、ペンティアムプラットフォームの高速ポートに入力される。ディジタル信号の処理が、外部で発生した基準周波数なしで、ペンティアムプラットフォームの中でフーリエ変換によって実行される。この信号は、ディスプレイ上に表示される。経路測定システムは、それぞれの軸長の値を表示する。
角膜計
コントローラCは、CCDカメラ23のコントロール部及びダイオード10に接続されている。角膜の曲率を測定する調整プロセスでは、LCD上に示された角膜反射のイメージのちらつきを防ぐために、連続光モードで動作することが好ましい。測定プロセスの間、これらのダイオードはイメージ毎にオンおよびオフに切り換えられる。この目的のために、コントローラCはCCDカメラ23のイメージパルスに同期して、ダイオード10をコントロールする。すなわち、ダイオードはあるイメージでオンに切り換えられ、次のイメージでオフに切り換えられる。2つの連続したイメージを減算した後は、LED10が発生した角膜の反射のみがイメージ対の中に得られ、周囲光の妨害反射は取り除かれる。カメラ23に生じた反射イメージは、フレームグラッバーFGによってディジタル化され、ペンティアムプラットフォーム(コントローラC)のワーキングメモリ内に記憶される。
【0042】
続いて、ダイオードの反射イメージの中心軌跡の位置が、イメージ処理及びドイツ特許第251497号の中で説明された近似式による角膜半径の計算によって決定される。測定結果の再現性を向上させるために、約5つの連続したイメージ(それぞれ、2つのフィールドすなわち、同期したLEDによって照明されたイメージ及び照明されないイメージのハーフイメージから成る)が、測定プロセス毎に記録される。
VKT
さらに、コントローラCはダイオード12にも接続されている。調整プロセス(アライメント)の間、ダイオード12は、角膜計に類似した方法で連続光モードで動作することが好ましい。
【0043】
測定プロセスの間、左右の眼を照明するダイオードは、コントローラによって(角膜計と同様に)選択的にオンオフを繰り返す。ユーザのプリセットによって、デバイスは左又は右に表示され、以下の事項によって、すなわち、散乱イメージのエッジ位置がイメージ処理によって決定され、VKTが、すでに説明したように、角膜とレンズの散乱イメージとの距離から計算されることによって、センタと整列する。
【0044】
再度、約5つの連続したイメージが、測定プロセス毎に記録される。
照明
コントローラCは、ダイオード24に接続されている。眼を照明するIRダイオード24は、(プログラムの中で又はユーザによってコントロールされるように)コントローラによって所望の時間にオンに切り換えることができる。さらに、コントローラは、DOE9、レンズ18,19,22及びダイアフラム21を回転させて光路に入れたり外したりする又は調整するためのコントロール部(図示せず)と接続されている。
【0045】
決定された測定値AL,HHR,VKTからのIOLの計算は、検索することができるようにデバイスのメモリ内に記憶された国際的に認められた計算公式によって行われて、プリンタによりプリントされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の軸方向長さ(AL)及び前房深さ(VKT)、又は
軸方向長さ及び角膜の曲率(HHK)、又は
角膜の曲率及び前房深さ、又は
軸方向長さ及び前房深さ及び角膜の曲率
を非接触的に決定するための一体化されたデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の一体化デバイスであって、固定用ランプにより眼が固定され、及び/又は中心からずれた方法で観察軸の回りのグループ化光源により照明されることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2の少なくとも1つに記載の装置であって、ビーム経路から好ましくは回転して外すことができるイメージング用光学素子を、カメラ上に眼をイメージングするためにかつ異なったイメージングスケールを生成するために前記ビーム経路の中に設けたことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の少なくとも1つに記載の装置であって、種々のサイズのテレセントリックダイアフラムを、回転して光軸から外すか又は調整することができるように、前記ビーム経路の中に設けたことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の少なくとも1つに記載の装置であって、経路長の差を調整可能な干渉計装置をAL測定用に設けたことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、好ましくは回転して光軸から外すことができるDOEを前記干渉計装置内に設けたことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の装置であって、AL測定用の前記干渉計の光源又は前記干渉計の中に組み込まれる別の光源がVKT又はHHKの測定時に眼を固定する働きをすることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項5乃至7の1つに記載の装置であって、AL測定用の前記装置の検出素子を、前記眼のアライメント状態を検出するためにかつ前記眼の前記アライメント状態を表示するために設けることを特徴とする装置。
【請求項9】
VKTを測定するための、好ましくは請求項1から8に記載の一体化デバイス内の装置であって、前記眼に対してイメージング光学素子を介してある角度で横方向に放射されるスリット形状の照明を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、アナモルフィックイメージング光学素子、好ましくはシリンドリカルレンズを照明用に設けたことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置であって、照明角度が前記観察用光学素子に対して好ましくは33゜の範囲内であることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9乃至11の1つに記載の装置であって、前記眼の種々の層によって拡散された光がカメラで検出され、かつ前記カメラの信号が評価されることを特徴とする装置。
【請求項13】
HHKを測定するための、好ましくは請求項1乃至12のいずれかに記載の一体化されたデバイス内の装置であって、6つの同心円状にかつ対称的に構成された光源を備えるこ
とを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置が赤外範囲の光源を備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の装置であって、前記光源からの放射が光学素子によってコリメートされることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項13乃至15の1つに記載の装置であって、照明角度が前記観察軸に対して、好ましくは18゜の範囲内であることを特徴とする装置。
【請求項17】
前記デバイスに対して前記患者の眼をアライメントするための、好ましくは請求項1乃至16の1つに記載の一体化されたデバイス内の装置であって、好ましくは6つの同心円状に配置された光源を備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項13乃至17の1つに記載の装置であって、前記光源がHHK用の光源の間に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1乃至18の1つに記載の一体化されたデバイス内のビームスプリッタキューブであって、可視及び/又は近赤外範囲において高い透過率を有し、かつ、AL測定用の前記干渉計から入射するレーザ光内に結合するために、前記偏光されたレーザ光に対して前記眼の方向への高い反射率及び検出方向に前記眼によって反射された前記レーザ光に対して高い透過率を有することを特徴とするビームスプリッタキューブ。
【請求項20】
請求項19に記載のビームスプリッタキューブであって、円形の偏光を発生するために4分の1波長板を有することを特徴とするビームスプリッタキューブ。
【請求項21】
請求項1乃至20の1つに記載の一体化されたデバイス内のビームスプリッタキューブであって、可視及び/又は近赤外範囲に対して高い反射率及び高い透過率で、検出器の方向に前記眼から入射する偏光されたレーザ光を結合から外すことを特徴とするビームスプリッタキューブ。
【請求項22】
請求項21に記載のビームスプリッタキューブであって、偏光されたレーザ光の偏光方向を回転させるために、2分の1波長板を有することを特徴とするビームスプリッタキューブ。
【請求項23】
請求項19乃至22の1つに記載のビームスプリッタキューブであって、高い屈折率の層H及び低い屈折率の層Lの交互の構造を備えることを特徴とするビームスプリッタキューブ。
【請求項24】
請求項1乃至23の1つに記載の装置であって、共用カメラの後ろに、VKT測定手段及びHHK測定手段の光源イメージの位置を検出及び処理するため、かつアライニング用光源を表示及び検出するための評価ユニットが続くことを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項1乃至24の1つに記載の装置であって、前記照明された眼及びユーザの表面がモニタ上に表示されることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項1乃至25の1つに記載の装置であって、
VKT及び/又はHHKの測定
及び/又はアライメント及び/又はAL測定
のために、
DOE及び/又はイメージング用光学素子及び/又はダイアフラムの回転
及び/又は干渉計の調整
及び/又は光源のオンおよびオフへの切換え
のための集中管理部を備えることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項1から26の少なくとも1つに記載の一体化されたデバイスを動作させる方法であって、以下の測定シーケンス、すなわち、AL,HHK,VKT、又はHHK,VKT,AL、又はHHK,AL,VKTの測定シーケンスを備えることを特徴とする方法。
【請求項28】
HHK及び/又はVKTを測定するための方法であって、CCDカメラのイメージの発生に同期した方法で、前記照明がオンおよびオフに切り換えられることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記オンおよびオフへの切換えがフレーム毎に実行されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28又は29の1つに記載の方法であって、照明が付いたイメージ及び照明なしのイメージの対が発生され、さらに処理されることを特徴とする方法。
【請求項31】
VKTを測定するための、特に、請求項1から30の1つに記載の方法であって、以下のステップ、すなわち、
前記暗イメージ内の瞳孔を検出するステップ、
前記暗イメージ内の前記瞳孔内の前記固定用ポイントを検出するステップ、
差分イメージ(明イメージから暗イメージを引く)を計算し、前記差分イメージ内でノイズの抑制を行うステップ、
前記差分イメージ内のスリット照明の前記散乱イメージの前記エッジ形状を測定するステップ、
前記角膜及び前記レンズ散乱イメージSH,SL(ピクセル)の前記前縁の距離Xを測定するステップ、
前記距離Xから前記前房深さを計算するステップから成ることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2013−6068(P2013−6068A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201426(P2012−201426)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2011−12236(P2011−12236)の分割
【原出願日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ペンティアム
【出願人】(597141922)カール ツァイス イェナ ゲーエムベーハー (12)