説明

眼球内レンズ装置

2つ又は3つの部品の眼球内レンズ装置。第1の部品(12)は、白内障の手術に伴い水晶体嚢内に埋め込まれるリング状の支持部品である。第1の部品(12)は、光学部品ではなく、屈折誤差を補正しないが、後部被膜混濁(PCO)の減少あるいは除去を助ける特徴を含んでよい。第2の部品(14)は、光学部品であり、レンズ装置の光学的補正能力の全てを含んでよい。それは、第2の部品(14)を第1の部品(12)の内部に固定するための一対の触覚萼(24)を有する。第3の部品(16)は、第2の部品(14)と同様の部品であり、第2の部品(14)で補正されない残りの光学的誤差を補正するために使われてもよい。第2、第3の部品はお互いに相対的に移動していくらかの遠近調節を提供するように埋め込まれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にいえば眼球内レンズの分野に関し、特に複数レンズ、極小切り口の眼球内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目は、最も簡単に言うと、光を角膜と呼ばれる透明な外側の部分を通して伝え、水晶体を通して網膜上に像を結ばせることにより、映像を提供するために機能する。結ばれる像の特質は、目の寸法、形状や、角膜や水晶体の透明度を含む多くの要因によって決まる。
【0003】
加齢や病気により水晶体の透明度が落ちると、網膜に伝えられる光が減少するため映像は悪化する。この目の水晶体における減少は、医学的に白内障として知られている。この病気の一般に認められた治療法は、水晶体の外科的な除去及び人口の眼球内レンズ(IOL)によるレンズ機能の交換である。
【0004】
米国では、白内障の水晶体の大多数が水晶体超音波乳化吸引術と呼ばれる外科手術によって除去される。この手順の間、水晶体前嚢が切り開かれ、水晶体超音波乳化吸引術の切断用チップが病気の水晶体に挿入され、超音波により振動させられる。振動する切断用チップは、水晶体を目の外部から吸引できるように液化あるいは乳化する。除去されたこの病気の水晶体は人口のレンズに交換される。
【0005】
本発明より前は、白内障又はその他の病気により人間の水晶体の除去及び人口の眼球内レンズへの交換が要求された場合、眼球内レンズは単一焦点レンズであった。ほとんどの眼球内レンズは、視度±0.5度毎の解像力増加で売られており、最大の解像力はレンズが光軸に沿って置かれる場所に依存していた。レンズの固定された視度増加分と、レンズ設置位置による微調整では、決して最適な映像をもたらすことはできない。この状況は比較的まれに起こるものであり、一般的に厳しいものではないが、何人かの患者は最適な映像のために最終的に眼鏡やコンタクトレンズの使用を必要とする。もし埋め込まれたレンズの解像力が正しくないと、被膜嚢内のレンズの触覚萼(がく)の線維化により、除去及び新しいレンズへの交換は困難である。
【0006】
本願に先行していくつかの解像力が調節できる眼球内レンズが提案されたが、商業化が可能なものは紹介されなかった。例えば、米国特許公報第5,222,981号(Werblin)及び第5,358,520号(Patel)には、その参考例と共に全体的内容として、マルチレンズ装置全体としての解像力を調節するために、埋め込んで、先に埋め込まれた主要な目に取付けることができる第2の、あるいは第3の目の使用までもが提案されている。米国特許公報第5,628,798号及び第5,800,533号(Eggleston、他)には、その参考例と共に全体的内容として、視軸に沿って目の位置が調節できるネジ調節式の眼球内レンズが開示されている。米国特許公報第4,575,373号(Johnson)には、その参考例と共に全体的内容として、熱収縮性プラスチックで作られた目と、外部リングと、目と外部リングとの連結具を有する眼球内レンズが開示されている。上記連結具は眼球内レンズの解像力を調節するためにレーザーによって加熱される。米国特許公報第4,919,151号及び第5,026,783号(Grubbs、他)には、その参考例と共に全体的内容として、膨らむ、さもなければ変形する高分子化合物で作られたレンズが開示されている。レンズは水晶体嚢に埋め込まれ、あるいは注入されて、目の解像力を調節するために選択的に重合される。米国特許公報第5,571,177号(Deacon、他)には、その参考例と共に全体的内容として、壊れやすい補強材を持つ触覚萼を有する眼球内レンズが開示されている。一端目の中に埋め込まれると、上記補強材は選択的に切断され、あるいはそれらのt上でレーザー放射により加熱され、触覚萼の補強材が変化し、水晶体嚢の内部のレンズの位置を調節する。上記マルチレンズ方式及び上記ネジ式調節方式は、後部被膜混濁(PCO)の減少あるいは除去に関して最適化されない。付け加えるなら、これらのレンズの多くは極小(2mmより小さい)の切り口を通って埋め込まれることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、解像力を調節できる安全で安定した眼球内レンズ装置へのニーズは依然として存在する。そのようなレンズ装置は、白内障の水晶体と透明なレンズとの交換手術に用いられるであろう。
【0008】
それゆえに、本発明の一つの目的は、安全で生体適合性のある眼球内レンズを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、後眼房に容易に埋め込むことができる、安全で生体適合性のある眼球内レンズを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、後眼房で安定する、安全で生体適合性のある眼球内レンズを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、安全で生体適合性のある調節可能なレンズ装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、小さな切り口を通して埋め込むことができる、安全で生体適合性のあるレンズ装置を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、PCOの発生率の減少を助ける、安全で生体適合性のあるレンズ装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、白内障の水晶体、及び/又は、透明なレンズの交換手術に用いられる、安全で生体適合性のあるレンズ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、2、3のレンズ装置の部品を提供することで、先行技術に改良を加える。第1の部品は、以下の外科手術の被膜嚢内に埋め込まれるリング状の支持部品である。第1の部品は非光学部品であり、屈折の誤差を補正するものではない。第1の部品にはPCOの減少あるいは除去を助ける特性を持たせることができる。第2の部品は光学部品であり、レンズ装置の解像力の補正をすべてこれで行うことができる。第2の部品は第2の部品を第1の部品内に固定するつまみを有している。第3の部品はオプションの、第2の部品と同様の部品であり、第2の部品で補正されなかった残りの光学的誤差を全て補正する光学的能力を持っている。第2、第3の部品もまた、お互いに相対的に移動してそれにより遠近調節ができるように埋め込まれることができる。
【0016】
本発明のこれらの、及び他の利点や目的は、以下の詳しい説明及び特許請求の範囲で明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1、4及び7に最もよく示されているように、本発明のレンズ装置10は、一般的に第1の、もしくは基本部品12と、第2の、もしくは光学部品14とを含み、オプションで第3の、もしくは第2の光学部品16を含むことができる。第1の部品12は、概略リング状であって、図3によく示されるように、概略「I」形の断面形状である。この「I」形は部品12の内径の内側に、円周状の前部通路19と後部通路18を形成する。このような構造は鋳造しやすく、また、2mm以下の切り口を通して目の中に部品12を挿入するために必要な可撓性を提供する。部品12はPCO防止を助けるために、その端部は鋭い直角で構成される。部品12は、全体径が例えば約8.0mmから12.0mmの間、内径が例えば約6.0mmから8.5mmの間の各々適切な寸法で形成され、軟質アクリルのような軟らかく折り曲げることのできる材質で作られることが望ましい。もう一つの方法として、部品12は、光学部品14と比較して硬いか、少し軟らかい材料から作ることができる。一例として、部品12はブチルゴム、ラテックスゴム、天然ゴム、生ゴム、ネオプレンゴム、アクリロニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエン単量体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ゴム、エピクロロヒドレンゴム、ハイパロンゴム(登録商標)、シリコーンゴムのようなゴムエラストマー、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタンゴム、ヴィトンゴム(登録商標)、エチレン−ブチレンゴム、イソブチレンゴムのようなシロキサンエラストマー、及びポリ(ビストリフルオレソキシホスファゼン)、ポリ(ジメチルホスファゼン)、ポリ(フェニルメチルホスファゼン)のようなポリホスファゼンのエラストマーで作ることができる。基盤部品12は、基盤部品12の前面及び/又は後面の表面をつや消しまたは織り込みを行うことで不透明にするか、あるいは、基盤部品12を比較的透明に形成することが望ましい。基盤部品12は、紫外線及び/又は青色光及び/又は緑色光を遮断するために、当技術分野でよく知られた発色団を含むことができる。
【0018】
図4〜6に最もよく示されているように、第2の部品14は、例えば直径約4.0mmから7.0mmの目15を有する概略円形である。目15は、比較的厚い中央部から、比較的薄い、あるいは鋭い端部まで、徐々に薄くなっており、端部は、目15と一体的に形成され、光学部品14の全長を約8.0mmから10.0mmとする複数個の触覚萼24に接続されており、軟質アクリルのような軟らかい折りたためる材料で形成されることが望ましい。第2の部品14もまた、紫外線及び/又は青色光を遮断するために、当技術分野でよく知られた発色団を含むことができるが、基盤部品12と異なり、第2の部品14は、光学的に透明である。触覚萼24は、平面図では比較的幅広に、断面図では比較的薄く示される結合部26で目15に結合される。付け加えると、触覚萼24は外向きに突片32を含んでいる。このような構造は、第2の部品14の第1の部品12内部での回転を防止するのを助け、光軸28に垂直な面における光学部分14の安定性を維持することを助けるが、光軸28の方向には幾分の可撓性を与える。結合部26もまた、位置決めあるいは操作用の孔30を含むことができる。
【0019】
図7〜8に最もよく示されているように、第3の部品16は、例えば直径約4.0mmから7.0mmの目34を有する概略円形である。第3の部品16は、目34と一体的に形成された複数の触覚萼36を含み、全長約8.0mmから10.0mmであり、軟質アクリルのような軟らかく折り曲げることのできる材質で作られることが望ましい。第3の部品16もまた、紫外線及び/又は青色光を遮断するために、当技術分野でよく知られた発色団を含むことができるが、基盤部品12と異なり、第3の部品16は、光学的に透明である。触覚萼36は、平面図では比較的幅広に、断面図では比較的薄く示される結合部38で目34に結合される。付け加えると、触覚萼36は外向きに突片40を含んでいる。このような構造は、第3の部品16の第1の部品12内部での回転を防止するのを助け、光軸28に垂直な面における第3の部品16の安定性を維持することを助けるが、光軸28の方向には幾分の可撓性を与える。第3の部品16は、概して第2の部品14と同じ構造であるが、図6及び8に最もよく示されるように、第3の部品16は、第2の部品14よりも解像力が小さく、したがって通常第2の部品14よりも薄い点で異なる。第2の部品14と第3の部品16のどちらが乱視(円環状の)、老眼(調節性の、擬似調節性の又は多焦点の)のような可能な屈折誤差のどの種類を補正するように構成されてもよく、どちらがより高い等級の収差を補正するために特別に注文されたものであってもよい。上記屈折誤差や光学的補正は、当技術分野でよく知られたものである。
【0020】
図9に最もよく示されているように、レンズ装置10は、第2の部品14又は第3の部品16の突片32又は40を第1の部品の後部通路18の中に各々設置し、そして結合部26及び38を各々押し込んで、触覚萼24及び36を通路18の中にはめ込むことで組立てられる。第3の部品16は、第2の部品14で補正されなかった残りの屈折誤差を補正するために上記方法で取付けられる。第3の部品16は、第2の部品14に対して約90度回転していることが望ましい。
【0021】
この記述は図と発明の説明の目的のためになされている。上述の発明に、その範囲または精神から離れずに変更又は改良を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本装置のレンズ装置の第1の部品の拡大された斜視図である。
【図2】本装置のレンズ装置の第1の部品の拡大された平面図である。
【図3】図2の線分3−3における本装置のレンズ装置の第1の部品の拡大された断面図である。
【図4】本装置のレンズ装置の第2の部品の拡大された斜視図である。
【図5】本装置のレンズ装置の第2の部品の拡大された平面図である。
【図6】図5の線分6−6における本装置のレンズ装置の第2の部品の拡大された断面図である。
【図7】本装置のレンズ装置の第3の部品の拡大された平面図である。
【図8】図7の線分8−8における本装置のレンズ装置の第3の部品の拡大された断面図である。
【図9】第2の部品が第1の部品に組み込まれた本装置のレンズ装置の拡大された断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)前部円周溝と後部円周溝を有し、概略「I」形の断面形状をもつリング状の第1の部品と、
b)上記後部円周溝の内部に適合する大きさの複数の触覚萼をもつ第2の部品であって、光学的機能を持つ第2の部品と、
を具備する眼球内レンズ装置。
【請求項2】
上記第1の部品は不透明である請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
上記第1の部品は上記第2の部品よりも硬い請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
上記第1の部品はゴムエラストマーから作られる請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
上記第2の部品は紫外線、及び/又は青色光、及び/又は緑色光を遮断する発色団を含む請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項6】
上記第1の部品は軟質アクリルから作られる請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項7】
上記第1の部品は、ブチルゴム、ラテックスゴム、天然ゴム、生ゴム、ネオプレンゴム、アクリロニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエン単量体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ゴム、エピクロロヒドレンゴム、ハイパロンゴム(登録商標)、シリコーンゴムや、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタンゴム、ヴィトンゴム(登録商標)、エチレン−ブチレンゴム、イソブチレンゴムのようなシロキサンエラストマー、及びポリ(ビストリフルオレソキシホスファゼン)、ポリ(ジメチルホスファゼン)、ポリ(フェニルメチルホスファゼン)のようなポリホスファゼンのエラストマーから作られる請求項4に記載のレンズ装置。
【請求項8】
a)前部円周溝と後部円周溝を有し、概略「I」形の断面形状をもつリング状の第1の部品と、
b)上記後部円周溝の内部に適合する大きさの複数の触覚萼をもつ第2の部品であって、光学的機能を持つ第2の部品と、
c)上記後部円周溝の内部に適合する大きさの複数の触覚萼をもつ第3の部品であって、光学的機能を持つ第3の部品と、
を具備する眼球内レンズ装置。
【請求項9】
上記第1の部品は不透明である請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項10】
上記第1の部品は上記第2の部品よりも硬い請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項11】
上記第1の部品はゴムエラストマーから作られる請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項12】
上記第2の部品は紫外線、及び/又は青色光、及び/又は緑色光を遮断する発色団を含む請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項13】
上記第1の部品は軟質アクリルから作られる請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項14】
上記第1の部品は、ブチルゴム、ラテックスゴム、天然ゴム、生ゴム、ネオプレンゴム、アクリロニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエン単量体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ゴム、エピクロロヒドレンゴム、ハイパロンゴム(登録商標)、シリコーンゴムや、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタンゴム、ヴィトンゴム(登録商標)、エチレン−ブチレンゴム、イソブチレンゴムのようなシロキサンエラストマー、及びポリ(ビストリフルオレソキシホスファゼン)、ポリ(ジメチルホスファゼン)、ポリ(フェニルメチルホスファゼン)のようなポリホスファゼンのエラストマーから作られる請求項11に記載のレンズ装置。
【請求項15】
上記第3の部品は紫外線、及び/又は青色光、及び/又は緑色光を遮断する発色団を含む請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項16】
上記第3の部品は、乱視又は老眼を補正するために構成される請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項17】
上記第3の部品は、より高い等級の収差を補正するために特注生産される請求項8に記載のレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−515022(P2008−515022A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534583(P2007−534583)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/028389
【国際公開番号】WO2006/038982
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)
【Fターム(参考)】