眼疾患治療剤
【課題】 新規な眼疾患治療剤の提供。
【解決手段】 トリコスタチンAを有効成分として含有する眼疾患治療剤。
【解決手段】 トリコスタチンAを有効成分として含有する眼疾患治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な眼疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会や高齢化社会がより高度に進む中で、緑内障、白内障等の各種眼疾患が増加しており、これらの眼疾患の予防及び治療法の確立が急務である。しかしながら、従来の技術では、これらの眼疾患を効果的に治療することができなかった。
【0003】
トリコスタチンAは、抗真菌作用、抗原虫作用、抗癌作用、ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用があることが報告されており、皮膚炎、湿疹の治療剤、白血病の治療剤、甲状腺癌の治療剤、繊維症の治療剤としても知られている。
しかし、トリコスタチンAが眼疾患の治療に効果があるとの報告はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、各種眼疾患の治療に効果の高い、新規な眼疾患治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トリコスタチンAを有効成分として含有する眼疾患治療剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、各種の眼疾患を効果的に治療できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における有効成分は、7−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−N−ヒドロキシ−4,6−ジメチル−7−オキソ−2,4−ヘプタジエンアミドであるトリコスタチンAである。トリコスタチンAは、ストレプトミセス属の放線菌の代謝物であり、その培養物から精製単離することができる。また、例えば、和光純薬工業株式会社等から購入することもできる。
【0008】
トリコスタチンAは、水に溶解又は分散して用いることができるが、シクロデキストリン等の包接化剤との包接化物として用いることもできる。トリコスタチンAの治療剤中の含有量は、眼疾患の種類、投与経路、1回の投与量、患者により変化し得、当業者には適宜決定できる。点眼剤の場合、1Lの水に対して、0.01mg〜500mg、特に約0.1mg〜100mgのトリコスタチンAを含むことができ、好ましくは10mg〜50gのシクロデキストリンで包接化する。
【0009】
本発明は、各種の眼疾患の治療剤である。眼疾患として、緑内障、高眼圧の緑内障、正常眼圧緑内障、狭隅角緑内障、血管新生老人性黄斑変性症、老人性黄斑病変、中心性網脈絡膜炎、黄斑変性症、老人性黄斑変性症、黄斑円孔、白内障、老人性白内障、眼底出血、網膜中心動脈閉塞症、眼底動脈硬化症、光視症、糖尿病性網膜症、網脈絡膜萎縮、近視による眼底病変、網膜および脈絡膜の血管新生病変、網膜芽細胞腫、悪性黒色腫又はその他の悪性腫瘍、卵巣除去による白内障、TGFβによる白内障、黄斑線維増殖症(黄斑上膜)、網膜中心静脈(分枝)閉塞症、網膜裂孔,網膜剥離、増殖性網膜症、網膜色素変性症、角膜炎、角膜混濁、角膜ビラン、角膜上皮剥離、角膜潰瘍、モーレンズ角膜潰瘍、角膜内皮細胞変性や脱落、角膜変性症、流行性角結膜炎、霰粒腫、虹彩炎、ぶどう膜炎、自己免疫疾患、網脈絡膜炎、虹彩毛様体炎、眼精疲労、各種疾患による視野狭窄、視神経萎縮、視神経炎、虚血性視神経症、動体視力低下、色覚異常、老眼、近視、遠視、乱視などの屈折異常等の各種眼疾患がある。本発明は、特に、緑内障、正常眼圧緑内障、狭隅角緑内障、白内障、近視の治療効果が高い。
【0010】
本発明の治療剤の剤形は通常のものであり得、例えば、点眼剤、錠剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、注射剤、ハップ剤、軟膏、座薬などである。
【0011】
本発明の治療剤の投与経路は、局所投与(例えば、点眼、結膜下注射、眼内注射)、経口投与、非経口投与(注射等)であり得、局所投与、特に点眼が好ましい。
【実施例】
【0012】
本件発明の実施例を以下に示す。
【0013】
実施例1 眼疾患治療用の点眼液の調製
1mgのトリコスタチンA(和光純薬工業株式会社製)を1Lの蒸留水に溶かして、その溶液に1gのγ−シクロデキストリン(シグマ社製)を加えて攪拌し、点眼液を調製した。
【0014】
実施例2 正常眼圧緑内障の治療
正常眼圧緑内障と診断された88歳の女性患者の左眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)、10日間点眼した。点眼前と10日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図1に点眼前の静的視野を示し、図2に10日間の点眼後の静的視野を示す。図1及び2から、トリコスタチンAの点眼による視野の改善が確認された。トリコスタチンA点眼液の点眼により、正常眼圧緑内障による視野狭窄の治療効果が確認された。
【0015】
実施例3 狭隅角緑内障の治療
狭隅角緑内障と甲状腺機能低下症を合併している73歳の女性患者の眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)、10日間点眼した。点眼前と10日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図3及び4に点眼前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図5及び6に10日間の点眼後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図3〜6から、トリコスタチンAの点眼による視野の改善が確認された。トリコスタチンA点眼液の点眼により、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障による視野狭窄の治療効果が確認された。
【0016】
実施例4 白内障及び正常眼圧緑内障の治療
白内障と正常眼圧緑内障を併発している69歳の女性患者の眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)、10日間点眼し、視力と視野の経過を観察した。点眼前の矯正視力(右眼:0.7及び左眼:0.7)が、10日間の点眼後に右眼:0.8及び左眼:0.8の矯正視力に改善し、白内障の混濁が細隙灯顕微鏡による観察で軽快しているのが確認された。点眼前と10日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図7及び8に点眼前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図9及び10に10日間の点眼後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図7〜10から、トリコスタチンA点眼液の点眼により、白内障と緑内障による視野狭窄が改善された。
【0017】
実施例5 近視及び緑内障の治療
近視と緑内障を併発している23歳の男性患者(この患者は、近視を一時的に改善するためにオルソケーというコンタクトレンズを使用している)の眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日1回(午前8時)、14日間点眼した。点眼により視力が以下のように改善した。
点眼前 右眼:Vd=1.2(1.5x−0.5D)
左眼:Vs=1.0(1.5x−0.5D)
点眼後 右眼:Vd=1.5(n.c)
左眼:Vs=1.5(n.c)
【0018】
続けて、この患者に実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時及び午後5時)、10日間点眼したところ、図11〜14に示すように、角膜内皮細胞の数が以下のように増加した。
右眼 左眼
点眼前 2770 2808
点眼後 2857 2849
【0019】
また、点眼前と24日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図15及び16に点眼前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図17及び18に24日間の点眼後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図15〜18から、視野狭窄が改善されたことがわかる。
【0020】
トリコスタチンA点眼液の点眼により、視力の改善、内皮細胞の保護及び再生、緑内障による視野狭窄の改善が確認された。
【0021】
実施例6 正常眼圧緑内障の治療
正常眼圧緑内障の65歳の女性患者に対して、10日間、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)点眼し、赤ぶどうの葉を30%エタノールで抽出し乾燥したエキスの100mgを1日1回内服し併用させた。点眼及び内服前と10日間の点眼及び内服後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図19及び20に点眼及び内服前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図21及び22に10日間の点眼及び内服後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図19〜22から、トリコスタチンAの点眼と赤ブドウの葉の抽出エキスの内服との併用が正常眼圧緑内障による視野狭窄を改善することがわかり、正常眼圧緑内障の治療に有効であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、各種の眼疾患の治療効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例2における、正常眼圧緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図2】実施例2における、正常眼圧緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図3】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図4】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図5】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図6】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図7】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図8】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図9】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図10】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図11】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(点眼前の右眼)。
【図12】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(点眼前の左眼)。
【図13】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(10日間の点眼後の右眼)。
【図14】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(10日間の点眼後の左眼)。
【図15】実施例5における、患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図16】実施例5における、患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図17】実施例5における、患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の24日間の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図18】実施例5における、患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の24日間の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図19】実施例6における、点眼及び内服前の患者の右眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図20】実施例6における、点眼及び内服前の患者の左眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図21】実施例6における、点眼及び内服後の患者の右眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図22】実施例6における、点眼及び内服後の患者の左眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な眼疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会や高齢化社会がより高度に進む中で、緑内障、白内障等の各種眼疾患が増加しており、これらの眼疾患の予防及び治療法の確立が急務である。しかしながら、従来の技術では、これらの眼疾患を効果的に治療することができなかった。
【0003】
トリコスタチンAは、抗真菌作用、抗原虫作用、抗癌作用、ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用があることが報告されており、皮膚炎、湿疹の治療剤、白血病の治療剤、甲状腺癌の治療剤、繊維症の治療剤としても知られている。
しかし、トリコスタチンAが眼疾患の治療に効果があるとの報告はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、各種眼疾患の治療に効果の高い、新規な眼疾患治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トリコスタチンAを有効成分として含有する眼疾患治療剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、各種の眼疾患を効果的に治療できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における有効成分は、7−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−N−ヒドロキシ−4,6−ジメチル−7−オキソ−2,4−ヘプタジエンアミドであるトリコスタチンAである。トリコスタチンAは、ストレプトミセス属の放線菌の代謝物であり、その培養物から精製単離することができる。また、例えば、和光純薬工業株式会社等から購入することもできる。
【0008】
トリコスタチンAは、水に溶解又は分散して用いることができるが、シクロデキストリン等の包接化剤との包接化物として用いることもできる。トリコスタチンAの治療剤中の含有量は、眼疾患の種類、投与経路、1回の投与量、患者により変化し得、当業者には適宜決定できる。点眼剤の場合、1Lの水に対して、0.01mg〜500mg、特に約0.1mg〜100mgのトリコスタチンAを含むことができ、好ましくは10mg〜50gのシクロデキストリンで包接化する。
【0009】
本発明は、各種の眼疾患の治療剤である。眼疾患として、緑内障、高眼圧の緑内障、正常眼圧緑内障、狭隅角緑内障、血管新生老人性黄斑変性症、老人性黄斑病変、中心性網脈絡膜炎、黄斑変性症、老人性黄斑変性症、黄斑円孔、白内障、老人性白内障、眼底出血、網膜中心動脈閉塞症、眼底動脈硬化症、光視症、糖尿病性網膜症、網脈絡膜萎縮、近視による眼底病変、網膜および脈絡膜の血管新生病変、網膜芽細胞腫、悪性黒色腫又はその他の悪性腫瘍、卵巣除去による白内障、TGFβによる白内障、黄斑線維増殖症(黄斑上膜)、網膜中心静脈(分枝)閉塞症、網膜裂孔,網膜剥離、増殖性網膜症、網膜色素変性症、角膜炎、角膜混濁、角膜ビラン、角膜上皮剥離、角膜潰瘍、モーレンズ角膜潰瘍、角膜内皮細胞変性や脱落、角膜変性症、流行性角結膜炎、霰粒腫、虹彩炎、ぶどう膜炎、自己免疫疾患、網脈絡膜炎、虹彩毛様体炎、眼精疲労、各種疾患による視野狭窄、視神経萎縮、視神経炎、虚血性視神経症、動体視力低下、色覚異常、老眼、近視、遠視、乱視などの屈折異常等の各種眼疾患がある。本発明は、特に、緑内障、正常眼圧緑内障、狭隅角緑内障、白内障、近視の治療効果が高い。
【0010】
本発明の治療剤の剤形は通常のものであり得、例えば、点眼剤、錠剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、注射剤、ハップ剤、軟膏、座薬などである。
【0011】
本発明の治療剤の投与経路は、局所投与(例えば、点眼、結膜下注射、眼内注射)、経口投与、非経口投与(注射等)であり得、局所投与、特に点眼が好ましい。
【実施例】
【0012】
本件発明の実施例を以下に示す。
【0013】
実施例1 眼疾患治療用の点眼液の調製
1mgのトリコスタチンA(和光純薬工業株式会社製)を1Lの蒸留水に溶かして、その溶液に1gのγ−シクロデキストリン(シグマ社製)を加えて攪拌し、点眼液を調製した。
【0014】
実施例2 正常眼圧緑内障の治療
正常眼圧緑内障と診断された88歳の女性患者の左眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)、10日間点眼した。点眼前と10日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図1に点眼前の静的視野を示し、図2に10日間の点眼後の静的視野を示す。図1及び2から、トリコスタチンAの点眼による視野の改善が確認された。トリコスタチンA点眼液の点眼により、正常眼圧緑内障による視野狭窄の治療効果が確認された。
【0015】
実施例3 狭隅角緑内障の治療
狭隅角緑内障と甲状腺機能低下症を合併している73歳の女性患者の眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)、10日間点眼した。点眼前と10日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図3及び4に点眼前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図5及び6に10日間の点眼後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図3〜6から、トリコスタチンAの点眼による視野の改善が確認された。トリコスタチンA点眼液の点眼により、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障による視野狭窄の治療効果が確認された。
【0016】
実施例4 白内障及び正常眼圧緑内障の治療
白内障と正常眼圧緑内障を併発している69歳の女性患者の眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)、10日間点眼し、視力と視野の経過を観察した。点眼前の矯正視力(右眼:0.7及び左眼:0.7)が、10日間の点眼後に右眼:0.8及び左眼:0.8の矯正視力に改善し、白内障の混濁が細隙灯顕微鏡による観察で軽快しているのが確認された。点眼前と10日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図7及び8に点眼前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図9及び10に10日間の点眼後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図7〜10から、トリコスタチンA点眼液の点眼により、白内障と緑内障による視野狭窄が改善された。
【0017】
実施例5 近視及び緑内障の治療
近視と緑内障を併発している23歳の男性患者(この患者は、近視を一時的に改善するためにオルソケーというコンタクトレンズを使用している)の眼に、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日1回(午前8時)、14日間点眼した。点眼により視力が以下のように改善した。
点眼前 右眼:Vd=1.2(1.5x−0.5D)
左眼:Vs=1.0(1.5x−0.5D)
点眼後 右眼:Vd=1.5(n.c)
左眼:Vs=1.5(n.c)
【0018】
続けて、この患者に実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時及び午後5時)、10日間点眼したところ、図11〜14に示すように、角膜内皮細胞の数が以下のように増加した。
右眼 左眼
点眼前 2770 2808
点眼後 2857 2849
【0019】
また、点眼前と24日間の点眼後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図15及び16に点眼前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図17及び18に24日間の点眼後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図15〜18から、視野狭窄が改善されたことがわかる。
【0020】
トリコスタチンA点眼液の点眼により、視力の改善、内皮細胞の保護及び再生、緑内障による視野狭窄の改善が確認された。
【0021】
実施例6 正常眼圧緑内障の治療
正常眼圧緑内障の65歳の女性患者に対して、10日間、実施例1で調製したトリコスタチンA点眼液の1滴(約50μL)を1日2回(午前8時と午後5時)点眼し、赤ぶどうの葉を30%エタノールで抽出し乾燥したエキスの100mgを1日1回内服し併用させた。点眼及び内服前と10日間の点眼及び内服後の患者の視野の変化を静的視野計(オクトパス1−2−3)を用いて観察した。図19及び20に点眼及び内服前の右眼及び左眼の静的視野を示し、図21及び22に10日間の点眼及び内服後の右眼及び左眼の静的視野を示す。図19〜22から、トリコスタチンAの点眼と赤ブドウの葉の抽出エキスの内服との併用が正常眼圧緑内障による視野狭窄を改善することがわかり、正常眼圧緑内障の治療に有効であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、各種の眼疾患の治療効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例2における、正常眼圧緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図2】実施例2における、正常眼圧緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図3】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図4】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図5】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図6】実施例3における、甲状腺機能低下症を伴う狭隅角緑内障患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図7】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図8】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図9】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図10】実施例4における、白内障と正常眼圧緑内障を併発している患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図11】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(点眼前の右眼)。
【図12】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(点眼前の左眼)。
【図13】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(10日間の点眼後の右眼)。
【図14】実施例5における、スペキュラーマイクロスコープによる内皮細胞の写真及び内皮細胞数を示す(10日間の点眼後の左眼)。
【図15】実施例5における、患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図16】実施例5における、患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の点眼前のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図17】実施例5における、患者の右眼のトリコスタチンA点眼液の24日間の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図18】実施例5における、患者の左眼のトリコスタチンA点眼液の24日間の点眼後のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図19】実施例6における、点眼及び内服前の患者の右眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図20】実施例6における、点眼及び内服前の患者の左眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図21】実施例6における、点眼及び内服後の患者の右眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【図22】実施例6における、点眼及び内服後の患者の左眼のオクトパス1−2−3による静的視野を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリコスタチンAを有効成分として含有する眼疾患治療剤。
【請求項1】
トリコスタチンAを有効成分として含有する眼疾患治療剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−191398(P2007−191398A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8235(P2006−8235)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(599081820)株式会社最先端医学研究所 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(599081820)株式会社最先端医学研究所 (6)
【Fターム(参考)】
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