説明

眼科用の弁付きトロカールカニューレ

様々な実施形態において、トロカールカニューレ(101)を、手術の際の手術器具の挿入と取り出しとが円滑に行えるように、眼に挿入するように構成する。カニューレを、オーバーキャップ(103)(封止体(111)を含む)に取り付け、カニューレに対してオーバーキャップが回転しないように構成する。ある実施形態においては、封止体を、オーバーキャップ内にオーバーモールドするか、又は、カニューレとオーバーキャップとの間に固定された薄膜を備えるように構成し、カニューレ及びオーバーキャップに対して回転しないように構成する。ある実施形態においては、カニューレとオーバーキャップとは、タブとスロットとの結合(107、109)によって恒久的な方式でスナップ結合させ、カニューレやオーバーキャップを損傷しなければカニューレとオーバーキャップとを分離することができないようにする。ある実施形態においては、ベントカニューレ(ベントと摩擦係合するための窪みを備えてもよい)を、封止体のスリット内に受け入れられるように構成し、カニューレを通して流体を眼から排出することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、Jose Luis Lopez、Anil K. Patnala、及びMichael M. Martinを発明者とする2009年12月23日付けで出願された「OPHTHALMIC VALVED TROCAR CANNULA」という名称の米国仮特許出願第61/289,449号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の内容は、本引用により、本明細書に十分に、完全に記載されているものとして、そのすべてが本明細書に包含される。
【0002】
本発明は、一般に、眼科手術に関する。特に、本発明は、眼科用のトロカールカニューレ及びベントに関するが、これに限定するものではない。
【背景技術】
【0003】
例えば、(硝子体、血液、瘢痕組織、又は水晶体を除去する手術のような)眼の手術においては、人体の、傷つき易く、狭い場所から組織を除去するために、外科医は、微細手術器具を使用する場合がある。このような器具には、制御端末と、手術用ハンドピースと、が含まれ、外科医はこれらを用いて組織を切断、除去する。後眼部手術に関しては、ハンドピースには、硝子質切除器プローブや、レーザープローブや、組織を切断又は断片化する超音波破砕器が含まれ、長い空気圧力(空圧)ラインや電源ケーブル、光学ケーブル、又は、注入流体を手術部位に供給したり手術部位から流体や切断又は断片化された組織を回収したり吸引したりする可撓性のチューブ、によって、制御端末に接続される。ハンドピースの、切断、注入、吸引機能は、遠隔制御端末によって制御することもでき、この遠隔制御端末は、1つ又は複数の手術用ハンドピース(例えば、往復運動式又は回転式の切断ブレード又は超音波振動式の針)に電力を供給するだけでなく、注入流体の流れを制御し、流体や、切断又は断片化された組織の、吸引用の(大気圧に関しての)負圧源を与えることもできる。端末の機能は、(例えば、足で操作するスイッチ又は比例制御を利用して)外科医が手動で制御してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後眼部手術の際に、外科医は、手術中に、いくつかのハンドピース又は器具を使用する。このような手術では、これらの器具を切開部に挿入すると共に切開部から取り出す必要がある。この取り出しと挿入の反復は、眼の切開部位に外傷を生じる。この課題に取り組むために、少なくとも1980年代半ばまでに、ハブ付きカニューレが開発されている。これらの器具には、ハブが取り付けられた細いチューブも含まれる。このチューブは、眼の切開部にハブまで挿入することができ、ハブは、止め具として機能し、これにより、チューブが眼の内部に完全に進入することを防止する。ハブは、不注意による脱落を防止するために、眼に縫合することもできる。手術用器具は、チューブを通して、眼に挿入することができ、チューブは、切開部の側壁を、手術器具によって繰り返し接触することから保護する。更に、外科医は、手術器具をチューブを通して眼に挿入する際に、手術器具を操作することによって、手術中の眼の位置決めを補助するように手術器具を利用することができる。従来技術によるカニューレの欠点には、眼の表面上の突出部が高いことと、手術器具を交換したり除去したりする際の、眼内圧の低下を制御する手段がないこと、が含まれる。加圧された球体である眼は、手術用の器具を取り去ると、開放状態にあるカニューレから房水又は硝子体液を排出する可能性がある。従来技術によるカニューレでは、チューブにプラグ又はキャップを挿入してカニューレを封止し、流体及び組織の滲出を防止することにより、眼内圧の低下を防止している。これは、時間を要するプロセスであり、更なる器具と、別の手術室要員の支援と、を必要とし、また、術後感染のリスクを増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
様々な実施形態において、トロカールカニューレは、手術中の器具の挿入及び取り出しを円滑に行うために、眼内に挿入するように構成されている。カニューレは、オーバーキャップにしっかり取付ける(オーバーキャップがカニューレに対して回転するのを妨げるように取付ける)ことができる。オーバーキャップは、カニューレが眼に挿入されている間の(手術器具が挿入されていない場合の)、カニューレからの流体の流出を妨げる封止体を備えることができる。ある実施形態においては、封止体は、オーバーキャップ内に成形することができ、又は、封止体がカニューレ及びオーバーキャップに対して回転しないようにカニューレとオーバーキャップとの間に固定された、薄膜を備えることができる。ある実施形態においては、カニューレとオーバーキャップとは、カニューレ又はオーバーキャップの少なくとも一部を壊さずにはカニューレとオーバーキャップとを分離することができないように、恒久的なタブとスロットとの接合によって、相互にスナップ結合させてもよい。ある実施形態においては、ベントカニューレを、封止体のスリット内に、摺動自在に収容できるようにして、流体を、カニューレを通して眼から排出することができるようにする。ある実施形態においては、カニューレは、少なくとも1つの窪みを備え、ベントがカニューレに挿入された場合に、ベントの一部に摩擦係合することができる。
【0006】
本発明について更に十分に理解するために、添付図面とともに以下の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態による、カニューレ及びオーバーキャップを示す。
【図2】本発明の一実施形態による、オーバーキャップに取り付けられたカニューレを示す。
【図3a】本発明の一実施形態による、オーバーキャップの封止体のスリットを示す平面図である。
【図3b】本発明の一実施形態による、カニューレ及びオーバーキャップの側面図を示し、寸法例を示す。
【図4a】オーバーキャップ及び封止体の実施形態の断面図である。
【図4b】オーバーキャップ及び封止体の実施形態の断面図である。
【図4c】オーバーキャップ及び封止体の実施形態の断面図である。
【図4d】オーバーキャップ及び封止体の実施形態の断面図である。
【図5a】本発明の一実施形態による、トロカール挿入器上のカニューレを示す。
【図5b】本発明の一実施形態による、出荷用キャップを有するトロカール挿入器上のカニューレを示す。
【図6a】本発明の一実施形態によるベントを示す。
【図6b】本発明の一実施形態によるベントを示す。
【図7】本発明の一実施形態による、弁付きトロカールカニューレのベントを示す。
【図8】本発明の一実施形態による、弁付きトロカールカニューレのベントの断面を示す。
【図9a】ベントの第2の実施形態を示す。
【図9b】ベントの第2の実施形態を示す。
【図10a】ベントの第3の実施形態を示す。
【図10b】ベントの第3の実施形態を示す。
【図10c】ベントの第3の実施形態を示す。
【図11】本発明の一実施形態による、弁付きトロカールカニューレを形成する方法の、フローチャートを示す。
【図12】本発明の別の実施形態による、弁付きトロカールカニューレを形成する方法の、フローチャートを示す。
【図13】本発明の一実施形態による、弁付きトロカールカニューレを有するベントを使用する方法の、フローチャートを示す。
【図14】本発明の一実施形態による、眼に挿入された弁付きトロカールカニューレを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以上の簡単な説明と以下の詳細な説明とは、いずれも、例示及び説明を目的としたものに過ぎず、特許請求の範囲に記載した本発明を更に説明するものであると理解されたい。
【0009】
図1は、トロカールカニューレ101とオーバーキャップ103との一実施形態を示している。トロカールカニューレ101は、手術中の手術器具の挿入と取り出しとを円滑に行うために、眼に挿入するように構成する。カニューレ101は、(例えば、強膜や結膜などを通して)眼の内部に延びることができるシャフト105を備えている。ある実施形態においては、カニューレ101は、オーバーキャップ103に取り付けられる。例えば、カニューレ101は、カニューレ101上の対応するスロット109に係合するように構成された、1つ又は複数のタブ107を備える(例えば、図1に示されているカニューレ101は、オーバーキャップ103上の4つの対応するスロット109に係合する、4つのタブ107を備えている)。その他の取り付け方法も考えられる。例えば、カニューレ101が、スロットを備え、オーバーキャップが、タブを備えるようにすることができる。ある実施形態においては、カニューレ101は、接着や熱接合などにより、オーバーキャップ103に取り付けることができる。ある実施形態においては、封止体111は、オーバーキャップ103に結合され、オーバーモールドされた弁を形成する(例えば、封止体111は、シャフト105とオーバーキャップ109との間に少なくとも部分的に配置することができる)。図1に示すように、封止体111の表面は、オーバーキャップ109上に露出している。ある実施形態においては、封止体111の露出した表面は、1つ又は複数のスリット113を備え、手術ツールがカニューレ101内に通過することができるようにする。手術器具がない状態においては、封止体111は、封止体111を通る流体の流れを妨げることができる。
【0010】
図2は、オーバーキャップ103に取り付けられたカニューレ101の(例えば、個々のスロット109内にタブ107が係合した後の)一実施形態を示している。ある実施形態においては、タブとスロットとの結合は、オーバーキャップ103が、カニューレ101に対して(例えば、眼にカニューレ101を挿入する際に)回転することを、防止することができる。ある実施形態においては、タブ107は、(カニューレ101又はオーバーキャップ103の一部を壊さずには、オーバーキャップ103をカニューレ101から取り外すことができないように)オーバーキャップ103をカニューレ101に対して恒久的に保持するように構成されている。例えば、タブ107(及びカニューレ101)は、ステンレススチール製としてもよく、オーバーキャップ103は、プラスチック(例えば、ポリカーボネート)製としてもよいし、その他の材料でもよい。オーバーキャップ103とカニューレ101との間を恒久的に保持することにより、手術(例えば、硝子体網膜手術)の際に、不注意によってカニューレ101からオーバーキャップ103が外れることを防止することができるであろう。
【0011】
図3aは、オーバーキャップ103上の封止体111内のスリット113の一実施形態の平面図を示している。図3bは、カニューレ101とオーバーキャップ103との一実施形態の側面図を、例示用のいくつかの寸法(単位:ミリメートルとインチ)とともにしている。その他の寸法であることも考えられる。例えば、カニューレ101の外径は、0.737ミリメートル(0.029インチ)(23ゲージのカニューレに対応する)として示されているが、別の実施形態においては、カニューレの外径は、0.617ミリメートル(0.0243インチ)(25ゲージのカニューレに対応する)である。その他の外径寸法であることも考えられる。
【0012】
図4a〜図4cは、オーバーキャップ103と封止体111との一実施形態の断面を示している。封止体111は、エラストマ(例えば、シリコーン)製とすることができる。ある実施形態においては、封止体111は、オーバーキャップ103に対する封止体111の回転を防止するように、オーバーキャップ103に取り付けることができる。例えば、封止体111は、オーバーキャップ103内の凹部403及び1つ又は複数の孔401内に対してオーバーモールドしてもよい。ある実施形態においては、封止体111は、オーバーキャップ103とは別個に形成され、カニューレ101にオーバーキャップ103を組み立てる際に、オーバーキャップ103とカニューレ101との間に挿入される、シリコーン薄膜405でもよい。このような場合には、封止体111は、摩擦接合によってオーバーキャップ103及びカニューレ101に取り付けることができる。その他の取り付け方法(例えば、接着)も考えられる。
【0013】
図5aは、トロカール挿入器501上のカニューレ101の一実施形態を示している。ある実施形態においては、トロカール挿入器501は、ハンドル505に取り付けられたトロカールブレード503とすることができる。ある実施形態においては、ハンドル505は、プラスチック製とすることができ、ブレード503は、ステンレススチール製とすることができる。その他の材料も考えられる。トロカールブレード503は、シャフト105の端部を過ぎて延びてもよく、カニューレ101の挿入のために眼1401を穿刺するための(例えば、強膜1403を通して突き刺し、硝子体1405内に入れるための)1つ又は複数の鋭い刃を備えることができる。ある実施形態においては、ガイド部507が、ガイドスロット115に嵌合するようにして、カニューレ101を眼1401に挿入する際に、ハンドル505に対してオーバーキャップ103とカニューレ101とが回転することを防止することができる。ある実施形態においては、ガイド部507を、ガイドスロット115に対して解放自在に係合するようにして、トロカール挿入器501がオーバーキャップ103とカニューレ101とから引き戻される際に、ガイド部507がオーバーキャップ103とカニューレ101とを眼1401から引き出さないようにすることができる。例えば、ガイド部507は、カニューレ101が眼内にある場合に、カニューレ101の外側部に対して眼によって作用する摩擦力よりも小さい摩擦力によって、ガイドスロット115に摩擦係合させることができる。
【0014】
ガイド部507は、ガイドスロット115内に受け入れられるタブとして示されているが、その他の相互結合構造も考えられる。例えば、ガイド部507とガイドスロット115とは、別の相互結合構造(リングとロッドなど)を備えることができ、又は、その他の相互結合部品を備えてもよい(例えば、相互結合磁石(それぞれ、一方をハンドルに、他方をオーバーキャップ103に)を備えてもよく、係合Oリング(それぞれ、一方をハンドルに、他方をオーバーキャップ103に)等を備えてもよい)。ある実施形態においては、ガイド部507とガイドスロット115との相互作用は、カニューレ101とオーバーキャップ103との間の回転を防止することができ、ハンドルの軸周りのトロカールハンドル505の角度の移動は、オーバーキャップ103に伝達され、次にカニューレ101に伝達される。この相互作用は、硝子体網膜手術をする外科医に対して、カニューレ101を強膜1403に挿入する際に、トロカールハンドル505に対するカニューレ101の角度を制御することを可能にする。図5bは、出荷用キャップ511を有するトロカール挿入器501上のカニューレ101の一実施形態を示している(出荷用キャップは、カニューレ101上とトロカール挿入器501上にスナップ結合して、カニューレ101とトロカール挿入器501とを保護することができる)。
【0015】
図6a及び図6bは、ベント601の一実施形態を示している。弁付きトロカールカニューレの封止体111は、例えば、手術器具がカニューレを塞いでいる場合に、カニューレの内部への又はカニューレの外部への流体の流れに対してカニューレを閉鎖することができるが、ベントカニューレ603は、封止体111のスリット113内に摺動するように構成して、流体を、眼から、カニューレ101を通して排出することができる(図7参照)。ある実施形態においては、封止体111を開放位置に保持して、ベント601が、流体(例えば、気体又は液体)を、カニューレ101を通して排出できるようにしてもよい。例えば、気体を別の流体と置換する手術において、気体(又は、別の流体)は、カニューレ101を通して、ベント601から流出してもよい。ベント601は、更にリム609を備えて、ベントが封止体111に完全に滑り込むことを防止する止め具としてもよい。ベントカニューレ603は、トロカールカニューレ101の内径よりも小さな外径を有するようにして、ベントカニューレ603が、封止体111を通過して、トロカールカニューレ101の内部に、摺動することができるようにしてもよい。ベントカニューレ603は、十分に大きな少なくとも1つの寸法を有するリム609を更に備えて(例えば、リム609の直径を、トロカールカニューレ101の内径よりも大きくして)、ベント601が、トロカールカニューレ101に、完全に滑り込むことを防止するようにしてもよい。
【0016】
ある実施形態においては、ベント601は、カニューレとは別個の器具として、カニューレ101の部品の追加又は取り外しをしないで(例えば、カニューレ101のオーバーキャップ103の取り外しをしないで)、ベント601を挿入及び取り外しすることができるようにしてもよい。又、ベント601のサイズは、ベント601の挿入及び取り外しの際に、ユーザー(例えば、外科医)が指によって(又は、例えば、鉗子によって)ベント601を取り扱うことができるようなものとしてもよい。
【0017】
ある実施形態においては、ベント601は、ベントカニューレ603に摩擦係合する可撓性のチューブ605(例えば、シリコーンチューブ)を備えることができる。チューブ605は、排出プロセスの視覚的なインジケータ(例えば、少なくとも部分的に透明なインジケータ)を備えることができる(例えば、物質(粘性流体制御注入手術におけるシリコーンなど)が眼から溢れ出ている場合に、シリコーンがチューブ605内に流入し、ユーザーから見えるようにすることができる)。ある実施形態においては、チューブ605は、カニューレ101からベントを取り外すための把持面(例えば、指や鉗子による把持を支援するための把持面)として使用してもよい。ベントカニューレ603は、チューブ部分607を備えることができ、チューブ607は、(例えば、ステンレススチール製の)チューブ607の外周に沿って可撓性チューブ605を受け入れるように、構成されている。ある実施形態においては、チューブ607とベントカニューレ603とは、一体の部品で形成してもよい。図6bは、一実施形態によって、例示用の寸法(単位:ミリメートルとインチ)をいくつか示している。その他の寸法も考えられる。ある実施形態においては、ベント601の寸法は、ベント601が封止体111内にある場合に、手術器具が、ベント601を通って通過できる寸法にしてもよい。
【0018】
図8は、カニューレ101内におけるベント601の一実施形態の断面を示している。ある実施形態おいて、カニューレ101は、少なくとも1つの窪み801を備えることができ、ベント601がカニューレ101に挿入された際に、ベントカニューレ603の一部に摩擦係合することができる。窪み801は、手術中にベント601を定位置に維持するために、ベント601に対して十分な抵抗力を与えるように寸法設定することができる。ある実施形態においては、カニューレ101からベント601を引き戻す際の窪み801とベント601との間の抵抗力は、(カニューレ101が眼の内部に位置した状態においてベント601をカニューレ101から引き出した場合に、カニューレ101が眼から引き出されないように)眼からカニューレ101を引き出すのに必要な力よりも小さくすることができる。
【0019】
ベントの、他の実施形態も考えられる。例えば、ベント901の一実施形態が、図9a及び図9bに示されている。図9a及び図9bに示すように、ベント901は、チューブ605を備えずに、単一の部品であってもよい。ベント901は、深絞りしたものであってもよく、カニューレ101の保持機構と嵌合するための、保持機構を備えることができる。その他の形成法も考えられる(例えば、ベント901を型成形してもよい)。ある実施形態においては、ベントは、保持機構を含まなくてもよい。更に別の実施形態が図10a〜図10cに、ベント1001として示されている。ベント1001は、ベント1001がカニューレ101に挿入された場合に、ベント1001を通した手術ツールの挿入と取り出しとを容易にする、大きな釣鐘形状の入口を備えることができる。ベント1001は、また、ベント1001がカニューレ101に挿入された場合に、ベント1001とカニューレ101との間の把持力を増大させるように、1つ又は複数の保持機構1003を備えることができる。
【0020】
図11は、一実施形態による、弁付きトロカールカニューレを形成する方法の、フローチャートを示している。フローチャートに示す要素は、例示を目的としたものに過ぎない。示した要素のいくつかは、省略してもよく、更なる要素を追加してもよく、要素のいくつかは、以下に示す順序とは異なった順序で実施してもよい。
【0021】
1101では、オーバーキャップ103を形成する。例えば、オーバーキャップ103は、シリコーン封止体111を受け入れるための貫通孔401を備えるように成形してもよい。オーバーキャップ103用の成形プロセスは、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、回転成形などを含む。オーバーキャップ103を形成するその他の技術(例えば、鋳造)も考えられる。
【0022】
1103では、封止体111をオーバーキャップ103上にオーバーモールドする。例えば、封止体111は、オーバーキャップ103の凹部403内に型成形されたエラストマ(シリコーンなど)とすることができ、孔401内に流入して、封止体111をオーバーキャップ103に固定するものとすることもできる。ある実施形態においては、オーバーキャップ103は、オーバーキャップ103を通る、封止体111用の空間を形成する、型内に配置してもよい。エラストマを、次に、型内に注入し、エラストマは、形成された空間と、オーバーキャップ103と、を通って流入し、オーバーキャップ103内に封止体111を形成することができる。その他の製造プロセスも考えられる。例えば、封止体111とオーバーキャップ103とは、(例えば、単一の型内で、オーバーキャップ103と封止体111との両方に同一材料を使用することによって)一体に成形してもよい。ある実施形態においては、封止体111をオーバーキャップ103とは別個に形成してもよい(例えば、図10参照)。ある実施形態においては、封止体を、スリット113を有するように形成してもよく、又は、封止体が形成された後に、スリット113を、封止体111内に形成してもよい(例えば、スリット113を、鋭い刃を使用することによって、封止体111に切り込んでもよい)。
【0023】
1105では、カニューレ101を形成する。例えば、カニューレ101は、深絞りしてもよい。カニューレ101を深絞りするステップは、円板状の材料から出発し、円板状の材料をオス金型とメス金型との1つ又は複数の組の間で押圧して、カニューレ101を深絞りすることができる。カニューレの形成における最後のステップは、過剰な材料を除去したり、カニューレ101を磨いたりするステップを備えることができる。ある実施形態においては、タブ107の間の材料は、オス金型とメス金型との間でせん断して除去してもよく、又は、その他の方法で除去してもよい(例えば、切り離してもよい)。ある実施形態においては、カニューレ101は、型成形してもよい(例えば、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、回転成形、押出成形など)。その他のカニューレ形成技術も考えられる。ある実施形態においては、カニューレ101は、ステンレススチール製又はプラスチック製とすることができる。その他の材料を使用してもよい。ある実施形態においては、カニューレ101は、スナップタブ107を備えるように形成してもよい。例えば、カニューレ101用の金型又は成形型が、タブを形成するための空間を備えていてもよく、又は、タブを、機械加工によって、カニューレ101に形成してもよい。その他のタブ形成技術も考えられる。
【0024】
1107では、オーバーキャップ103を、カニューレ101に取り付ける。例えば、タブ107を、対応するスロット109内に、スナップ結合させてもよい。ある実施形態においては、オーバーキャップ103は、タブ107を受け入れるために、わずかに変形してもよく、又は、タブ107は、オーバーキャップ103がカニューレ101に押圧されるのに伴って、わずかに変形し、次に、オーバーキャップ103の対応するスロット109がタブ107を越えて通過したら、元の状態に戻るようにしてもよい。タブ107は、カニューレ101やオーバーキャップ103の一部を壊さないと、オーバーキャップ103をカニューレ101から取り外すことができないように、十分な剛性を有してもよい(例えば、ステンレススチール製とすることができる)。
【0025】
図12は、別の実施形態による、弁付きトロカールカニューレを形成する方法の、フローチャートを示している。フローチャートに示す要素は、例示を目的としたものに過ぎない。示した要素のいくつかは、省略してもよく、更なる要素を追加してもよく、要素のいくつかは、以下に示す順序とは異なった順序で実施してもよい。
【0026】
1201では、オーバーキャップ1103を(例えば、型成形によって)形成する。ある実施形態においては、オーバーキャップ1103は、受入スロット109を有するように形成してもよい。
【0027】
1203では、封止体111(シリコーン薄膜405など)を形成する。ある実施形態においては、シリコーン薄膜405は、スリット113を有するように成形してもよく、成形した後に、スリット113を、シリコーン薄膜405内に形成してもよい(例えば、スリット113を、鋭利な刃を使用して、シリコーン薄膜内に切り込んでもよい)。
【0028】
1205では、カニューレ110を形成する。例えば、カニューレ101は、ステンレススチール製で、タブ107を備えるようにしてもよい。
【0029】
1207では、シリコーン薄膜405を、カニューレ101とオーバーキャップ103との間に挿入し、オーバーキャップ103を、カニューレ101に取り付ける(例えば、オーバーキャップ103は、スロット109がタブ107を受け入れるようにして、カニューレ101に対してスナップ結合してもよい)。
【0030】
図13は、一実施形態による、弁付きトロカールカニューレと共にベントを使用する方法の、フローチャートを示している。フローチャートに示す要素は、例示を目的としたものに過ぎない。示した要素のいくつかは、省略してもよく、更なる要素を追加してもよく、要素のいくつかは、以下に示す順序とは異なった順序で実施してもよい。
【0031】
1301では、トロカールブレード503を、封止体111のスリット113を通して、カニューレ101を通して、挿入する。1303では、眼1401を、トロカールブレード503で突き刺し、カニューレ101を、眼に押し込む。1305では、挿入の際に、必要に応じて、トロカールブレード503とカニューレ101とを回転させてもよい。1307では、カニューレ101を眼1401の内部に残して、トロカールブレード503を引き戻す。1309では、必要に応じて、ベント601を挿入して、封止体111を開放し、流体や気体を、カニューレ101を通して、眼1401から排出できるようにする。ベント601は、手術中に、必要に応じて、カニューレ101を眼から引き戻さずに、取り外したり、封止体111とカニューレ101とに再挿入することもできる。ベント601の挿入と取り外しとは、例えば、ユーザーの指又は一対の鉗子を使用することによって行うことができる。
【0032】
当業者であれば、提示した実施形態に対して様々な変更を実施することができよう。本発明の、他の実施形態は、以上に開示した本明細書と本発明の実施形態とを考慮することにより、当業者にとって明らかとなろう。以上の内容及び実施例は、例示を目的としたものに過ぎず、添付の請求項及びその均等物によって示された本発明の真の範囲及び精神に関する典型例として、解釈されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に挿入するように構成したカニューレと、
前記カニューレに取り付けられたオーバーキャップであって、前記カニューレに対して回転しないように構成したオーバーキャップと、
前記カニューレと前記オーバーキャップとの間の封止体であって、手術ツールが前記封止体内にない場合には、前記封止体を通って流体が流れるのを防止する一方、前記封止体内のスリットを通って前記カニューレ内へ、手術ツールが通過することができるように構成した、封止体と、
を有する器具。
【請求項2】
前記封止体が、前記オーバーキャップの凹部内にオーバーモールドされたシリコーンを備える、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記シリコーンが、前記オーバーキャップの孔内に成形され、前記オーバーキャップに対して前記封止体が回転するのを防止する、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記封止体が、シリコーン薄膜を備える、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記カニューレが、少なくとも1つのタブを備え、
前記オーバーキャップが、少なくとも1つのスロットを備え、
前記オーバーキャップが、前記少なくとも1つのスロット内に前記少なくとも1つのタブを受け入れることによって、前記カニューレに取り付けられる、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記封止体の前記スリット内に摺動するように構成したベントカニューレを更に備え、流体を、眼から、前記カニューレを通して排出することができる、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記カニューレが、少なくとも1つの窪みを有し、ベントが前記カニューレに挿入された場合に、前記ベントの一部に摩擦係合する、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記オーバーキャップが、ガイドスロットを備え、前記ガイドスロットが、トロカールハンドルからガイド部を受け入れるように構成されており、前記ガイドスロットと前記ガイド部との間の相互作用が、前記カニューレを眼に挿入する場合に、前記トロカールハンドルに対する前記オーバーキャップの回転を防止する、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
ハンドルと、
前記ハンドルに結合されたトロカールブレードと、
前記オーバーキャップに成形された封止体を備えるオーバーキャップに取り付けられたトロカールカニューレであって、前記封止体が、前記トロカールブレードを受け入れるように構成されたスロットを備え、前記トロカールブレードが、眼を突き刺して前記トロカールカニューレを眼に押し込むように構成されている、トロカールカニューレと、
を備え、
前記オーバーキャップが、前記トロカールカニューレに対して回転しないように構成されており、
前記封止体が、手術ツールが前記封止体内にない場合には、前記封止体を通る流体の流れを防止するが、前記封止体内のスリットを通って前記トロカールカニューレ内へ、手術ツールが通過することができるように構成されており、
前記ハンドルが、更にガイド部を備え、前記オーバーキャップが、更にガイドスロットを備え、前記ガイドスロットが、前記ハンドルから前記ガイド部を受け入れるように構成されており、前記ガイドスロットと前記ガイド部との間の相互作用が、前記トロカールカニューレを眼に挿入する際の、前記ハンドルに対する前記オーバーキャップの回転を防止する、器具。
【請求項10】
前記封止体が、前記オーバーキャップの凹部内にオーバーモールドされたシリコーンを備える、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記シリコーンが、前記オーバーキャップに対する前記封止体の回転を妨げるように、前記オーバーキャップの孔内に成形される、請求項10に記載の器具。
【請求項12】
前記封止体が、シリコーン薄膜を備える、請求項9に記載の器具。
【請求項13】
前記トロカールカニューレが、少なくとも1つのタブを備え、
前記オーバーキャップが、少なくとも1つのスロットを備え、
前記オーバーキャップが、前記少なくとも1つのタブを前記少なくとも1つのスロット内に受け入れることによって、前記トロカールカニューレに取り付けられる、請求項9に記載の器具。
【請求項14】
前記トロカールカニューレが、少なくとも1つの窪みを備え、ベントが前記トロカールカニューレに挿入された場合に、前記ベントの一部に摩擦係合する、請求項9に記載の器具。
【請求項15】
オーバーキャップを形成するステップと、
カニューレを形成するステップと、
前記オーバーキャップに封止体を固定するステップと、
前記オーバーキャップを前記カニューレに取り付けるステップと、
を備える方法。
【請求項16】
前記封止体を前記オーバーキャップに固定するステップが、シリコーンを前記オーバーキャップの凹部内に成形するステップを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記封止体が、シリコーン薄膜を備え、前記封止体を前記オーバーキャップに固定するステップが、前記オーバーキャップを前記カニューレに取り付ける前に前記シリコーン薄膜を前記オーバーキャップとカニューレとの間に配置するステップを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記オーバーキャップを形成するステップが、少なくとも1つのスロットを前記オーバーキャップ内に形成するステップを備え、
前記カニューレを形成するステップが、少なくとも1つのタブを前記カニューレ内に形成するステップを備え、
前記オーバーキャップを前記カニューレに取り付けるステップが、前記少なくとも1つのタブを前記少なくとも1つのスロット内に受け入れるステップを備える、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−515563(P2013−515563A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545960(P2012−545960)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057582
【国際公開番号】WO2011/087577
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】