説明

眼科用超音波診断装置

【課題】 超音波プローブの送波及び受波の特性を評価でき、装置のS/N比を好適に調整できる眼科用超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 被検眼に超音波を送波し、反射されたエコー信号を受波する超音波プローブであって,眼軸長、断層像、角膜厚の取得に用いられる3つの超音波プローブを備える眼科用超音波診断装置で、2つのプローブの先端を超音波媒体を介して対向させ、各プローブの組み合わせパターンにより各プローブの送波特性及び受波特性をテストするテストモードを選択するモード選択手段と、各プローブの組み合わせパターンを設定する組合せ設定手段と、組み合わせパターンに基づいて対向させた一方のプローブから超音波を送波させ、他方のプローブに超音波を受波させるように各プローブを駆動させ、プローブの受波感度を測定する測定制御手段と、測定結果を表示する表示手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送受波により被検眼の診断を行う眼科用超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブ内の超音波トランスデューサ(超音波探触子)から超音波を送波し、眼球等の生体内各組織からの反射エコーを受波、処理することで生体組織の情報を得る眼科用超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような装置には、取得したい生体情報に合わせて、数種類のプローブが用意されている。例えば、被検者眼の各内部組織からのエコー信号を波形として取得するAモード用プローブ、トランスデューサを走査することにより被検者眼の奥行方向の断層像を取得するBモード用プローブ、被検者眼の前眼部像及び角膜厚を取得するパキ用プローブが用意されており、検者が用途に合わせて適宜選択する。
【特許文献1】特開2001−187022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような超音波診断装置では、プローブの送波や受波の性能を確認、調整するために、テストピースと呼ばれる樹脂で成形された超音波を伝える媒体が用意されている。検者が、この媒体にプローブの先端を押し当てて超音波を送受波し、エコー信号を表示するモニタを見て、プローブの性能、状態を評価する。
【0005】
しかしながら、この方法ではプローブの送波及び受波のそれぞれの特性(性能や状態の変化)を評価することができなかった。送波、受波の特性のどちらかが低下している場合、超音波診断における画質や数値の精度の低下、つまり、S/N比の低下につながる。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、超音波プローブの送波及び受波の特性を評価でき、装置のS/N比を好適に調整できる眼科用超音波診断装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 被検眼に超音波を送波し被検眼にて反射されたエコー信号を受波する超音波プローブであって,被検眼の眼軸長、断層像及び角膜厚等の取得に用いられる第1,第2及び第3の3つの超音波プローブを備える眼科用超音波診断装置において、前記3つのプローブの内の2つの組み合わせにてそれぞれプローブの先端を超音波媒体を介して対向させ、各プローブの組み合わせパターンにより各プローブの送波特性及び受波特性をテストするテストモードを選択するモード選択手段と、前記テストモードにてテストする各プローブの組み合わせパターンを設定する組合せ設定手段と、該組み合わせ設定手段により設定された組み合わせパターンに基づいて、先端を対向させた一方のプローブから超音波を送波させ、他方のプローブに超音波を受波させるように各プローブを駆動させ、超音波を受波したプローブの受波感度を測定する測定制御手段と、該測定制御手段による測定結果を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科用超音波診断装置は、以前に校正された各プローブの組み合わせパターンにて得られた各プローブの送信強度及び受波感度を記憶する記憶手段を備え、前記測定制御手段は、前記記憶手段に記憶された各プローブの受波感度と前記テストモードで取得された各プローブの受波感度とを比較して、各プローブの送波強度及び受波感度の低下を求めることを特徴とする。
(3) (2)の眼科用超音波診断装置において、前記測定制御手段により求められた各プローブの送波強度及び受波感度の低下に基づいて各プローブの送波特性及び受波特性を調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波プローブの送波及び受波の特性をそれぞれ評価でき、装置のS/N比を好適に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は本実施形態に係る眼科用超音波診断装置の外観略図、図2は制御系の要部構成図である。
【0010】
装置本体1には、3種類の超音波プローブ3,4,5(第1、第2、第3プローブ)がケーブルを介して接続されている。3は、被検者眼の超音波断層像を取得するためのBモード用プローブであり、4は、被検者眼の眼軸長等を取得するためのAモード用プローブであり、5は、被検者眼の角膜厚や前眼部像を取得するためのパキ(角膜厚)モード用プローブである。各々のプローブ3,4,5には、チップ(先端部)3a、4a、5bが設けられており、このチップを介して超音波の送波、受波が行われる。チップ3a、4a、5aは被検者眼やサンプルに当接されて用いられる。2は、装置本体1の前面に設けられた液晶表示パネルである。液晶表示パネル2には、プローブ3によって取得されたエコー信号の強度データが超音波画像として表示される。また、液晶表示パネル2はタッチパネル式であり、検者は表示パネル2に表示される設定項目を選択操作することにより各種条件を設定することができる。タッチパネル式の表示パネル2上には、例えば、モード切換スイッチ50が配置(表示)されており、スイッチ50の入力に応じて、プローブ3を動作させて超音波画像を取得するための計測モードとプローブ3の動作を待機させる待機モードとが切換え可能な構成となっている。なお、測定・診断結果は図示なきプリンタにより出力することができる。
【0011】
また、表示パネル2の表示画面外には、計測モード時においてプローブ3、4,5によって受波されるエコー信号のゲイン(増幅度)を調整するための手段となるゲイン調整用回転ノブが設けられている。41は表示パネル2に表示される超音波画像全体のゲインを調整するためのゲイン調整用回転ノブである。42は表示パネル2に表示される超音波画像の一部(例えば、前眼部付近や網膜付近等)のゲイン(表示パネル2の所定範囲のみのゲイン)を調整するため手段となるTGC(Time Gain Control)用回転ノブであり、本実施形態では、前眼部付近のゲインを調整可能な構成となっている。なお、本実施形態におけるノブ41、42を用いるゲイン調整には、エコー信号の数値(信号強度)を増減させることにより、画像全体の数値や所定部位(所定範囲)のを調整する方法である。後述する本発明の実施形態では、エコー信号の信号強度を取得する増幅器18、28、38のオフセット値及び超音波を送波する送信器17,27、37の出力強度のオフセット値を調整する構成が装置本体1に備えられる。
【0012】
制御部10は装置本体1に内蔵され、各種回路等を制御する(例えば、表示パネル2の表示画面を表示制御する)。また、制御部10は、モード切換スイッチ50によるモード選択(切換)に応じて装置の動作を切換える。計測モードに設定される場合、制御部10はクロック発生回路11を駆動制御し、送信器17を介してプローブ3内に設けられたトランスデューサ12から超音波を発信(送波)させる。そして、被検眼の各組織からの反射エコーは、トランスデューサ12で受信(受波)され、増幅器18を介してA/D変換器13でデジタル信号に変換される。デジタル信号化された反射エコー情報は、サンプリングメモリ14に一旦記憶される。ここで、プローブ3(Bモード用プローブ)では、トランスデューサ12に設けられている走査手段であるモータ15が取り付けられている。制御部10は、モータ15を駆動制御することにより、トランシュデューサ12を順次走査させていき、1画面分の信号(画像データ)をサンプリングメモリ14に記憶させる。そして、制御部10は、サンプリングメモリ14に記憶された1画面分の画像データに基づいて断層画像を作成して表示パネル2に表示する。同様に、Aモード用のプローブ4は、トランスデューサ22を備え、このトランスデューサ22に、送信器27、増幅器28が接続さている。また、パキモード用プローブ5は、送信器37及び増幅器38が接続されるトランスデューサ32を備える。送信器27、37はクロック発生回路に、増幅器28、38はA/D変換器にそれぞれ接続される。なお、トランスデューサ22、32は、超音波の送受波において、走査をを必要としないため、プローブ4,5にモータ15は設けられていない。
【0013】
このように、各トランスデューサ12、22に専用の送信器17、27及び増幅器18、28が設けられている。また、説明の簡便のため図示は略したが、各送信器17、27、37及び増幅器18、28、38は、制御部10に接続されており、制御部10からの設定信号により、各ゲインのオフセット値を調整できる構成となっている。ゲインのオフセット値の調整(補正)については後述する。
【0014】
このとき、制御部10は、超音波プローブ3を繰り返し動作させることにより、1画面分の信号を随時サンプリングメモリ14に記憶していくと共に、表示パネル2の画面上の断層画像を随時更新して表示していく。より具体的には、制御部10は、プローブ3の動作によって新しい断層画像が得られる毎に、リアルタイムで新しい超音波画像を表示していく。
【0015】
次に、装置に取り付けられているの表示パネル2について説明する。図3は、計測モード時において、表示パネル2に断層画像Dが表示されているときの画面例である。この画面では、断層画像の他に、動画表示される断層画像をフリーズさせるためのフリーズスイッチや断層画像の距離や面積の計測に移行するための計測スイッチ等の操作スイッチ51及びモード切換スイッチ50がタッチパネルのボタンとして、測定方法(本実施形態では、画面に右上にあるように、Bモード法、眼軸長測定、角膜厚測定から測定モードの選択が可能)や測定範囲(例えば、走査エリア50mm)等の計測条件等が表示項目として各々表示されている。ここで、検者は随時表示される断層画像Dを観察しながら、所望する断層画像が得られるようにプローブ3の位置や角度を調整する。また、検者はゲイン調整用回転ノブ41を操作することにより、表示パネル2に表示される断層画像D全体の画質を調整する。この場合、制御部10は、ゲイン調整用回転ノブ41からの操作信号に基づいて増幅器18に対してゲインを増加もしくは減少させる指令信号を送ることで、A/D変換器13に入力されるエコー信号のゲインを調整する。なお、本実施形態におけるゲイン調整用回転ノブ41は、無制限に回転可能な回転ノブ方式であって、ロータリエンコーダによってゲイン調整用回転ノブ41の回転量が検出されるような構成となっている。そして、制御部10は、ゲイン調整用回転ノブ41の回転量に比例してエコー信号のゲインを増減させる。具体的には、時計回りに回転させると感度が増加し、反時計回りに回転させると感度が減少する。また、検者はノブ42を操作することにより、表示パネル2に表示される断層画像の一部(ここでは、断層画像Dの前眼部付近)の感度(ゲイン)を調整し、断層画像の画質を調整する。この場合、制御部10は、ノブ42からの操作信号に基づいて前眼部付近から検出されたエコー信号のゲインを調整する。
【0016】
検者は、上記のようにして表示パネル2に表示される断層画像Dの調整を行い、適正画像が得られるところで画像取り込みスイッチ(例えば、表示パネル2上のフリーズスイッチや図示なきフットスイッチ等)を使用する。ここで、フリーズされると、A/D変換器13とサンプリングメモリ14との接続が断たれ、直前の画像データがそのままサンプリングメモリ14に残り、画像データが固定される。また、制御部10は、プローブ3の動作を待機状態とする。これにより、表示パネル2の画面上で各種計測条件の選択が可能な待機モードに移行される。なお、モード切換スイッチ50によって待機モードに移行させるようにしてもよい。
【0017】
また、詳細な説明は略すが、待機モード中に、操作スイッチ51を押し、画面計測用マーカを移動させて、Bモード像上の距離や面積を測定することができる画面に切換る。なお、プローブ3で被検者眼や非検体の画像を取得する場合は、チップ3aに水や超音波測定用ジェルを塗布し、測定部にチップ3aを当接させる。
【0018】
以上のような構成を備える超音波診断装置において、トランシュデューサ12の有する超音波の送波特性、受波特性は、取得する超音波断層像Dに影響する。本実施形態では、増幅器18で取得するエコー信号のゲインを検者がノブ41でリアルタイムに調整できる構成としているが、トランスデューサ12が有するゲインのオフセット値は変更可能となっていない。トランスデューサ12の持つ超音波の受波や送波の特性は、別々に劣化していく場合があり、このような場合、先に挙げたゲイン調整(エコー信号だけのゲイン調整)だけでは、超音波画像のS/N比を高くすることが容易ではない。
【0019】
従来の超音波診断装置において、図4(c)に示すブロック(テストピース)40を用いて、プローブ3の機能をテスト(調整)する場合を例に挙げる。ブロック40は、超音波を伝達する特性を有する素材で作製された超音波の媒体であり、超音波の進行方向の長さL3が、テストするプローブの超音波出力等に適合するように決められている。このようなブロック40に、プローブ3の先端3aを当接させ、先に挙げた方法で、ブロック40のエコー信号に基づく超音波画像を取得する。検者は、表示された画像を見ながら、ノブ41にて、増幅器18のゲインを調節する。なお、プローブ4、5でテストをする場合は、ブロック40の長さL3が異なる。プローブ4、5のテストの場合は、検者がノブ41を操作し、Aモードやパキモードで取得されるエコー信号のピークを所定の出力レベルに調節する。このような方法では、プローブの持つ受波、送波特性の合さった特性、つまり、プローブの総合的な特性しか分からない。
【0020】
以下に、本実施形態の装置において、各プローブの受波及び送波特性を調整するテストモードについて説明する。図4は、テストモードにおけるプローブ3やプローブ4の状態を説明する図である。ここでは、Bモード用プローブ3とAモード用プローブを対向配置した状態の側面図とプローブ3のみをテストする状態の側面図を示す。図4(a)は、Bモード用プローブ3からAモード用プローブ4に超音波を送波する場合の配置を示し、図4(b)は、Aモード用プローブ4からBモード用プローブ3に超音波を送波する場合の配置を示している。説明の簡便のため、図中のテストプローブ60、80には、斜線を引いている。
【0021】
図4(a)において、テストプローブ(載置台)60は、超音波を伝送する素材で成型された超音波の媒体であり、プローブ3を載置し、プローブ3を所定の高さに配置するための載置部61、プローブ4を載置し、プローブ4を所定の高さに配置するための載置部62、載置部61、62に挟まれて設けられたプレート部63からなる。載置部61、62はそれぞれ高さHa、Hbで形成されており、これにより、プローブ3、4のそれぞれの中心軸が所定の高さとさる。このようにして、プローブ3、4に配置されているトランスデューサ12、22の中心軸が同軸とされる。また、プローブ3、4が対向して配置される。なお、載置部61及び62は、プローブ3、4に沿うような緩やかな曲面を有しており、プローブ3、4の対応配置がし易くなっている。これにより、プローブ3、4間での超音波の送受波が効率的に行われる。
【0022】
また、プローブ3とプローブ4の間に位置するプレート部63は所定の長さ(幅)L1で形成される。同様に、図4(b)において、載置台80は、載置部81、82及び長さL2にて形成されるプレート部83から構成される。ここで、長さL1及びL2は、超音波を送波するプローブの出力特性と超音波を受波するプローブの感度に応じて設定される。
【0023】
図4において、L1はL2よりも長く形成されている。これは、2つのプローブ3,4を比較すると、Bモード用であるプローブ3の送受波の出力、感度が高く、Aモード用であるプローブ4の送受波の出力、感度は低いことに依っている。プローブ3から送波し、プローブ4で受波する場合は、超音波の出力と感度を考慮し、プレート部63の長さをL2より長いL1としている。同様に、プローブ4が送波、プローブ3が受波の場合は、プレート部83の長さはL2となる。このように、対向させるプローブの特性に合わせて、テストピースのプレート部の長さ(幅)を適宜選択する。
【0024】
次に、テストモードにおける信号の流れ及びゲインの調整方法について説明する。図5は、図3のモード切替スイッチ50を操作することにより表示されるモート選択画面(図示せず)において、テストモードを選択することで表示される画面である。91は、プローブを対向して一方のプローブから送波される超音波を他方のプローブで受波した場合の感度(信号強度)を表示したプローブ間受波感度であり、92は、ブロック40等のより、プローブ単体でテストした場合の受波感度を表示した単体受波感度である。プローブ間受波感度91及び単体受波感度92は、パーセント表示される。このパーセント表示は、装置1の工場出荷時等で以前に行われる校正により得られた受波感度に対して、現在の受波感度がどれだけ変化したかを示す。この校正は、以下に説明するプローブ間の受波感度を取得する方法によって行う。プローブ間受波感度91では、3種類のプローブ3,4,5を用いて、それぞれを対向させて、送波、受波を行うため、3×2で6通りの組み合わせのテストパターンが表示される。同様に、プローブ単体受波感度92では、3通りのテストパターンが表示される。このときの6つの組合せパターンの設定は、制御部10により行われる。
【0025】
55は、テストモード用の操作スイッチであり、上記の6つのテストパターンを選択する上下キーやテスト(受波)を開始するスタートスイッチ等が設けられている。また、後述するゲインの設定を行う設定スイッチ等で構成される。90aは、現在テストを行うテストパターンを示すカーソルである。
【0026】
次に、図4(a)を一例にプローブ間受波感度91の取得を説明する。図示するように、プローブ3とプローブ4をそれぞれテストプローブ60に設置し、チップ3a、4aにジェルなどを塗布してプレート部63に当接させる。そして、表示パネル2を切換えて図5に示すテストモードとする。上下キーを操作し、「B→A」(プローブ3が送波/プローブ4が受波)を選択し、スタートスイッチを押す。スタートスイッチが押されると、制御部10は、前述のように、クロック発生回路11、送信器17を駆動し、トランスデューサ12より超音波を送波させる。また、制御部10は、テストモードの際はモータ15に指令信号を出して、トランスデューサ12の送受波の軸がプローブ3の中心軸となるように、モータ15の駆動を停止させる。これにより、トランスデューダ12の走査がは停止され、一定方向に超音波を送波する。これらの動作と同期して、制御部10は、増幅器28が取得する信号をA/D変換器13に取り込む準備をする。トランスデューサ22にて取得された超音波信号は増幅器28にて増幅され、A/D変換器14にてデジタル化された後、サンプルメモリ14に保存される。メモリ16には工場出荷時等で以前に適正に校正された各プローブの組み合わせテストパターンでの送波強度及び受波感度が記憶されている。制御部10は、サンプルメモリ14に取得された受波感度と、メモリ16に記憶されている保存されている工場出荷時等の受波感度とを比較し、取得された受波感度が工場出荷時の何パーセントであるかを算出して、表示パネル2のプローブ間受波感度91の現在選択中の欄に表示させる。また、算出結果は、メモリ16に保存しておく。そして、制御部10は、次のテストパターンにカーソル90aを移動させ、次にテストを待つ。このような一連の動作を繰り返して6通りあるテストパターンにおけるプローブ間受波感度を算出する。なお、制御部10は、必要に応じて、プローブ単体受波感度92の取得を促す。
【0027】
このようにして、制御部10が、一方のプローブから超音波を送波させ、他方のプローブに超音波を受波させるように各プローブを駆動させ、超音波を受波したプローブの受波感度を測定する測定制御を行うと共に、測定結果を表示パネル2に表示させる。
【0028】
次に、制御部10は、メモリ16に保存してある6つのプローブ間の受波感度に基づいて、プローブ3,4,5のいずれの受波感度、送波強度が低下しているかを求める。各プローブ(3つ)の送波強度を算出する。これら受波感度、送波強度は、メモリ16に保存される。算出方法の一つを以下に説明する。例えば、3本のプローブ3、4、5をB,A、P(それぞれのモード)とおく。送波強度をs、受波簡素をrと付記して、プローブAの送波強度をAs、プローブAの受波感度をArとします。説明の簡便のため、工場出荷時等で以前に適正に校正されたAs,Bs,Ps,Ar、Br,Prを100(%)とする。ここで、送波強度Asが以前の校正状態の100%から80%に落ちたとする。このときの対応表を図6(a)に示す。表では、行を送波、列を受波としており、表中の数値は、受波感度を示す。また、表中の括弧内の数値は、プローブ単体でのテストをした結果を示している。表から、送波強度Asの行に、100から低下した数値が見られる。これにより、送波強度Asに問題があることがわかる。従って、送波強度Asを100/80だけ補正(送信器27のゲインを上げる)する必要があることがわかる。
【0029】
また、6つのパラメータのうち、2つの機能が低下していても、どのプローブの送波、受波が低下しているかを確認できる。この場合の対応表を図6(b)に示す。ここでは、Aの送信性能Asが90%に落ち、Bの受信性能Brが60%に落ちているとする。
【0030】
図6(b)において、Asの横一列及びArの縦一列で数値が100%から低下していることがわかる。また、PsとArのパターン、BsとArのパターン、BsとPrのパターンがそれぞれ100%であるので、Ps,Pr,Ar,Bsについては性能の低下無いことが分かる。そして、PsとBrのパターンが60%であり、Psに低下が無いことから、Brが60%に低下したことが分かる。また、AsとPrのパターンが90%であり、Prに低下が無いことから、Asが90%に低下したことが分かる。
【0031】
従って、Aの送波強度Asと、Bの受波感度Brに劣化が見られるとわかる。ここでは、送波強度Asを100/90だけ補正(送信器27のゲインを上げる)し、受波感度Brを100/60だけ補正(増幅器18のゲインを上げる)すればよいことがわかる。
【0032】
なお、各プローブA,B、Pそれぞれの単体の特性をブロック40により確認した結果を用いても良い。上記の例の場合、Pプローブの送波及び受波が共に性能の低下が無いことが分かるので、このPプローブとセットにしたテストパターンの結果からBr、Asの低下とその程度を知ることができる。
【0033】
このようにして、3つのプローブ(A,B,P)を用いて、各プローブの送波、受波性能(送波強度、受波感度)を確認することができる。また、テストモードにおいて、3つのプローブのすべてで劣化が見られた場合は、制御部10は、エラーであることを表示パネル2に表示する。
【0034】
次に、上記の方法により、得られた各プローブの受波感度、送波強度の補正(送波特性及び受波特性の調整)方法について説明する。検者は、先のテストモードで、6つ又は9つのパラメータを取得する。このとき、制御部10は、各プローブの受波感度、送波強度の補正値を取得している。検者が操作スイッチ55のセットスイッチを押すと、制御部10は、取得した補正値となるように、各プローブの受波特性である受波感度のゲイン、送波特性である送波強度のゲインを設定する。例えば、Bモード用のプローブ3の送波出力を調整する場合は、制御部10が送信器17に指令信号を送り、先に取得した補正値(工場出荷時のゲイン/現在のゲイン)となるように、ゲインを調整する。同様に、Aモード用のプローブ4の受波感度を調整する場合は、制御部10が、増幅器28に指令信号を送り、先に取得した補正値となるように、ゲインを調整する。そして、調整後の各プローブの送波強度、受波感度は、メモリ16に保存される。このように、制御部10が、送波強度、受波感度の調整を行う。
【0035】
以上のようにして、各プローブの受波感度、送波強度が、2つの異なるプローブを対向させ、超音波信号を送受波することにより、取得できる。また、取得した各プローブの受波感度、送波強度と工場出荷時等で以前に校正された各プローブの受波感度、送波強度に基づいて、現在の各プローブの受波感度、送波強度のゲインが調整できる。これにより、各プローブを用いた超音波画像の取得や測定におけるS/N比の向上、維持ができる。
【0036】
なお、以上説明した本実施形態では、装置1に超音波プローブが3つ(Aモード用、Bモード用、パキモード用)ある場合での、各プローブの送波、受波の特性をテスト、調整する方法を説明したが、これに限らない。超音波プローブが3つ以上であってもよい。例えば、上記3つのプローブに加えて、パキモード用プローブの先端が45度になっているプローブを加えて、4つのプローブにてテスト等を行う構成としてもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、載置台は、2つのプローブを水平方向に対向させて配置させるものとしたが、これに限るものではない。2つのプローブを鉛直方向で対向させるように配置する構成としてもよい。これにより、プレート部に先端3a、4aが当接させ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る眼科用超音波診断装置の外観略図である。
【図2】本実施形態に係る眼科用超音波診断装置の制御系の要部構成図である。
【図3】計測モード時において、表示パネル2に断層画像Dが表示されているときの画面例を模式的に示した図である。
【図4】テストモードにおけるプローブ3やプローブ4の状態を説明する図である。
【図5】テストモードが表示パネル2に表示されたときの模式図である。
【図6】テストモードにおける送波強度と受波感度の対応表である。
【符号の説明】
【0039】
1 装置本体
2 表示パネル
3、4,5 超音波プローブ
3a、4a、5a チップ
10 制御部
12、22、32 トランスデューサ
17、27、37 送信器
18、28、38 増幅器
40 ブロック
60、80 テストピース
41 ゲイン調整用回転ノブ
42 TGC用回転ノブ
50 モード切換スイッチ
90a カーソル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に超音波を送波し被検眼にて反射されたエコー信号を受波する超音波プローブであって,被検眼の眼軸長、断層像及び角膜厚等の取得に用いられる第1,第2及び第3の3つの超音波プローブを備える眼科用超音波診断装置において、
前記3つのプローブの内の2つの組み合わせにてそれぞれプローブの先端を超音波媒体を介して対向させ、各プローブの組み合わせパターンにより各プローブの送波特性及び受波特性をテストするテストモードを選択するモード選択手段と、
前記テストモードにてテストする各プローブの組み合わせパターンを設定する組合せ設定手段と、
該組み合わせ設定手段により設定された組み合わせパターンに基づいて、先端を対向させた一方のプローブから超音波を送波させ、他方のプローブに超音波を受波させるように各プローブを駆動させ、超音波を受波したプローブの受波感度を測定する測定制御手段と、
該測定制御手段による測定結果を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1の眼科用超音波診断装置は、以前に校正された各プローブの組み合わせパターンにて得られた各プローブの送信強度及び受波感度を記憶する記憶手段を備え、前記測定制御手段は、前記記憶手段に記憶された各プローブの受波感度と前記テストモードで取得された各プローブの受波感度とを比較して、各プローブの送波強度及び受波感度の低下を求めることを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2の眼科用超音波診断装置において、前記測定制御手段により求められた各プローブの送波強度及び受波感度の低下に基づいて各プローブの送波特性及び受波特性を調整する調整手段を備えることを特徴とする眼科用超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−212235(P2008−212235A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50476(P2007−50476)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】