説明

眼科用電気刺激装置

【課題】 適切に治療できる装置を提供する。
【解決手段】 患者眼に装着する電極と、電極から電気刺激パルスを発生させるパルス発生手段と、を備える眼科用電気刺激装置において、パルス発生手段によって発生させるパルスの電流値及び刺激時間を含む刺激条件の各値を設定する刺激条件設定手段を持つコントロール部と、設定された刺激条件のパルスを発生する治療モードとパルスをテスト的に発生するテストモードとを選択するモード選択手段と、治療モードが選択されたときには刺激条件設定手段により設定された条件に従ってパルス発生手段を動作させ、テストモードが選択されたときには設定された刺激条件に従い、刺激時間については設定値に拘わらずに所定のパルス数だけパルスを発生するようにパルス発生手段を動作させる制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者眼の眼球に電気刺激を与える眼科用電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障等の網膜、視神経疾患を治療するために、眼球に接触させた電極から電気刺激パルスを与える装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、眼底を刺激する電流を出力するための電極が設けられたコンタクトレンズ電極を使用し、眼球に装着したコンタクトレンズ電極から電気刺激が眼球に出力される。電気刺激条件である刺激パラメータとしては、電気刺激パルスの電流値、パルス幅、周波数、刺激時間(治療時間)等があり、患者眼の疾患やその程度等に応じて治療に適したそれぞれの値が設定される。治療効果を果たす刺激時間には、数十分から数時間が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−210513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各刺激パラメータの設定に際しては、患者眼に光覚(フォスフェン、眼内閃光)が感じられ、痛覚等の不快感が感じられないように、特に電流値の設定に配慮する必要があるが、治療をスタートして電気刺激を与え続けながら患者の反応を得て各設定値を変えるのでは、患者眼に余分な負担を与えてしまう。各刺激パラメータの設定に時間が掛かると、予定した刺激時間で適切な電気刺激を与えることができない。また、患者眼に装着されるコンタクトレンズと患者眼角膜との形状のずれが大きいと、眼球に対して電極がきちんと接触しないことがあり、各刺激パラメータの設定に際して患者からの的確な応答が得られず、患者眼に不快感を伴わない適切な電気刺激を与えることができなくなってしまう。電気刺激は長時間与えられるため、途中で電極が外れたことに気が付かずに処置が取られていないと、設定時間通りの適切な電気刺激を与えることができない。
【0005】
本件発明は、上記従技術に鑑み、各刺激パラメータの設定を的確に行え、適切に治療を行える眼科用電気刺激装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために以下の構成を備えることを特徴とする。
(1) 患者眼角膜上に装着する本体に設けられた電極と、該電極から電気刺激パルスを発生させる電気刺激パルス発生手段と、を備える眼科用電気刺激装置において、前記電気刺激パルス発生手段によって発生させる電気刺激パルスの電流値及び刺激時間を含む刺激条件の各値を設定する刺激条件設定手段を持つコントロール部と、設定された刺激条件の電気刺激パルスを発生する治療モードと電気刺激パルスをテスト的に発生するテストモードとを選択するモード選択手段と、治療モードが選択されたときには前記刺激条件設定手段により設定された刺激条件に従って前記電気刺激パルス発生手段を動作させ、テストモードが選択されたときには刺激時間以外は前記刺激条件設定手段により設定された刺激条件に従い、刺激時間については設定値に拘わらずに所定の時間又は所定のパルス数だけ電気刺激パルスを発生するように前記電気刺激パルス発生手段を動作させる制御手段と、
前記電極の通電状態をモニタする通電モニタ手段と、前記コントロール部に配置され、テストモード時及び治療モード時に前記通電モニタ手段でモニタされた通電状態を時間軸に沿った電流値の波形として表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科用電気刺激装置は、前記電気刺激パルス発生手段によって発生された電気刺激パルスの刺激時間を計測するタイマ手段であって、前記通電モニタ手段により前記電極の通電が絶たれたことが検出されたときに刺激時間の計測を停止し、前記電極の通電が回復されたことが検出されたときに刺激時間の計測を再開するタイマ手段を備え、前記制御手段は、前記通電モニタ手段により前記電極の通電が絶たれたことが検出されたときには電気刺激パルスの発生を停止させると共に、前記タイマ手段で計測されたトータルの刺激時間が前記刺激条件設定手段により設定された刺激時間に達したときに電気刺激パルスの発生を停止させるように前記電気刺激パルス発生手段を動作させることを特徴とする。
(3) (1)の眼科用電気刺激装置は、治療モードの選択によって電気刺激パルスの発生が開始されたときには、設定された刺激時間が終了するまで各刺激条件の設定を変更不能に固定する条件設定固定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各刺激パラメータの設定を的確に行え、適切に治療を行える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明に係る眼科用電気刺激装置の外観略図である。図2は電気刺激装置の画面表示を説明する図である。図3は電気刺激装置の制御ブロック図である。本実施形態の電気刺激装置は、電極を患者眼の眼球に当て、電極から微弱な電流を流すことによって網膜を構成する細胞を興奮(発火)させ、これによって細胞の死滅を抑制させるものである。
【0009】
図1において、電気刺激装置100は、電極部10と本体部20を備える。電極部10は、角膜上に装着される本体であるベース13と、一対の電極11及び12から構成されている。ベース13はその形状をコンタクトレンズとし、その内壁面が眼球Eの表面に略沿うような形状に形成されている。ベース13は絶縁性を有する素材で形成される。本実施形態では、電極11は、ベース13の下端の周囲に円環状に配置されている。電極12は、電極11と頂部の間の内壁面周囲(角膜表面に接する側)に円環状に配置され、電極11と離されている。これら電極11、12の素材は白金、金、銀等の一般的に使用される導体が使用される。電極11,12には導線15a、15bが接続され、導線15a、15bは絶縁チューブである接続ケーブル15を通って本体部20の端子21a、21bに接続されている。
【0010】
なお、電極部10としては、角膜上に置く電極を1つとし、対となるもう一方の電極を頭部等の別の部位に位置する構成としてもよい。また、電極部10はシートタイプの電極形状や円柱状のスティックタイプの電極形状であってもよい。
【0011】
本体部20は電気刺激パルスを発生させるための電気刺激パルス発生手段とされ、電気刺激パルスの条件である刺激パラメータを設定したり、電気刺激の開始/停止等を制御するコントロール部30と、刺激パラメータの設定情報及び刺激状態を表示するディスプレイ40を備える。コントロール部30によって電気刺激の条件(電気刺激パルスの電流値、周波数、電気刺激パルスのパルス幅(電流の持続時間)、刺激時間)を種々設定可能となっている。なお、電気刺激パルスの電流値等により、電気刺激パルスのパルス波形が設定される。
【0012】
コントロール部30は、電源スイッチ31、設定ダイアル32、テストスイッチ33、スタート/ストップ(開始/停止)スイッチ34、電極部10の通電状態を表示する通電表示灯35、緊急停止スイッチ36を備える。電源スイッチ31は、オン/オフにより装置100を起動/終了させるスイッチである。刺激パラメータの入力手段である設定ダイアル32は、左右にダイアル回転させることにより選択された刺激パラメータの数値を増減させる信号を入力する機能と、押し込むことによりディスプレイ40の設定項目を選択する信号を入力する機能と、を備える。テストスイッチ33は後述するテストモードの選択信号を入力する手段であり、押されることによりテストを開始するトリガ信号を制御部70へと送る。スタート/ストップスイッチ34は後述する治療モードの選択信号を入力する手段であり、押されることにより治療の開始/停止のトリガ信号を制御部70へと送る。通電表示灯35は、LED等の発光素子で形成され、電極部10の通電状態を、LEDの点灯や点滅で治療者(操作者)に報知する役割を持つ。緊急停止スイッチ36は、刺激用電源82を強制的に遮断(停止)させるスイッチであり、刺激回路81からの電気刺激パルスの出力を強制終了させるための入力手段である。
【0013】
ディスプレイ40の表示画面は、左側に刺激パラメータの設定表示画面41、右側に電気刺激パルス状態の波形を表示する状態表示画面45に分割されている。ディスプレイ40には、LCD等の表示手段が用いられる。設定表示画面41には、電流値(Current)、刺激周波数(Frequency)、パルス幅(Duration)、刺激時間(Time)の4つの刺激パラメータと、治療モードにて計測される刺激時間(治療時間)の残りを表示する刺激残り時間(Time Left)の表示欄がコラム状に配置されている。数値が変更可能とされる刺激パラメータの欄には、点滅するカーソル41aが表示される。カーソル41aは設定ダイアル32の押し込み信号が入力される毎に次の刺激パラメータ項目に移動され、カーソル41aが位置したパラメータ項目の設定値が設定ダイアル32の回転信号により変更可能にされる。
【0014】
状態表示画面45には、横軸が時間、縦軸が電流値の座標が表示され、電極部10の電極11、12で通電された電気刺激パルスの時間軸に沿った波形46として表示される。波形46は、後述する検出回路85によりモニタされた電極11、12の通電状態に基づいて表示される。状態表示画面45には、電気刺激パルスの一例が示されている。電気刺激パルスは、正と負の単相パルスが対となった双極性(両極性、ニ相性)のパルスとされ、正負の電荷が略一致するように、正と負の単相パルスが組合せられている。図示するように、単相パルスの幅Dを電気刺激パルスのパルス幅とする。単相パルスの振幅を電流値Aとする。正の単相パルスから次の正の単相パルスまでの間隔(周期)Tは周波数Fの逆数であり、言い換えると周波数Fは間隔Tの逆数である。本実施形態では、電流値Aは0μA〜3mAの間で50μAステップで設定可能とされ、周波数は1〜50Hzの間で5Hzステップで設定可能とされ、パルス幅は5、10、20msで設定可能とされている。また、刺激時間は5〜60分の間で5分ステップで設定可能とされている。
【0015】
次に、装置100の制御系を説明する。制御部70には、メモリ71、報知手段であるブザー22、設定ダイアル32、テストスイッチ33、スタート/ストップスイッチ34、通電表示灯35、ディスプレイ40、刺激回路81、検出回路85が接続されている。なお、電源スイッチ31は図示を略した。また、制御部70は、電極11、12から出力された電気刺激パルスの刺激時間を計測するタイマ機能70aを持つ。メモリ71には装置を制御するプログラムや刺激パラメータの設定値が記憶される。刺激回路81には、刺激用電源82が接続され刺激用電源82には緊急停止スイッチ36が接続される。刺激用電源82は、電気刺激パルスを発生するための電力源であり、刺激回路81に一定の電流を供給する機能を有する。刺激回路81は、刺激用電源82から電力を受け取り、制御部70からの指令信号に基づいて設定された刺激パラメータに対応する電気刺激パルスを生成し、電極11、12から出力させる。
【0016】
検出回路85は、電極11と電極12との間に流れる電流(電気刺激パルス)の通電状態をモニタする役割を持つ。具体的には、電極11と刺激回路81との間に抵抗Rを配置し、抵抗Rの電圧を検出回路85でモニタする構成とする。検出回路85が、抵抗Rの電圧変化を検出すれば通電の有無を検出したこととなる。また、抵抗Rの電圧の変化を時間軸に沿って検出(モニタ)することで、電極11、12で通電される電気刺激パルスの波形を検出できる。
【0017】
検出回路85の検出結果は、制御部70へと送られる。制御部70は、検出回路85の検出結果に基づいて、ディスプレイ40に電気刺激パルスの波形を表示させる。また、電極11、12が通電状態(通電が維持された状態)であれば、通電表示灯35を連続点灯させる。電極11、12が通電状態でない(不通の)場合、制御部70は通電表示灯35を点滅させる。また、制御部70は、電極11、12の通電状態をモニタし、刺激時間の途中で通電状態がある閾値以下となった場合、又は、不通となった場合、刺激回路81による電気刺激パルスの出力を停止させると共に、タイマ機能70aは刺激時間の計測を一時停止する。
【0018】
次に、装置100による治療動作を説明する。治療者は、患者を仰向けに寝かせ、患者眼に電極部10を装着して治療を行う。治療に際して、治療者は患者眼の疾患に応じて各刺激パラメータをコントール部30の設定ダイアル32を操作して設定する。各刺激パラメータは疾患内容とその程度に応じて治療効果を果たす値に設定されるが、特に電流値の設定については、患者に痛覚等の不快感が感じられないように(気にならないように)配慮する必要がある。そこで、本装置には、設定された刺激パラメータ通りに電気刺激を与える治療モードと、的確な刺激パラメータを設定するためにテスト的に電気刺激を与えるテストモードと、が用意されている。テストモードはスイッチ33により開始され、治療モードはスイッチ34により開始される。
【0019】
テストモードを説明する。テストスイッチ33が押されると、制御部70は、刺激パラメータの内の電流値、刺激周波数及びパルス幅については画面41で設定された値で電気刺激パルスを出力させ、刺激時間については設定値に拘わりなく、テストに適するように定められた一定時間(又は一定のパルス数)だけ電気刺激パルスを出力させる。テストモードで電気刺激パルスが出力される一定時間は、患者に負担が少なく、患者が電気刺激パルスを認識できる程度とされ、例えば、1〜5秒ほどである。パルス数として出力される場合は、5〜50パルス程度とされる。本装置では、20パルスに設定されている。
【0020】
テストモードによる一定時間(又は一定パルス数)での電気刺激パルスのテスト出力により、治療者は患者が痛覚等の不快感を感じないか、患者が光覚を感じるかを患者の応答を得て確認する。電流値が大きい場合、患者には光覚が感じられ易いが痛覚も感じる。治療者は患者が光覚を感じ、痛みを感じないように電流値の設定を変更する。仮に電流値が高すぎ、患者が痛みを感じるような場合であっても、テストモードでは短く設定された一定期間のみ電気刺激パルスが出力されて停止されるため、患者へ与える不快感は少ない。また、患者の応答が即座に得られなくても、患者に与える不快感は短い時間のみで終了する。これに対して、いきなり治療モードで電気刺激パルスを出力してその的確性を確認しようとすると、患者の応答が得られるまで、あるいは治療者がスイッチ34により停止信号を入力するまで、電気刺激パルスが与え続けられるので、長時間に亘って患者に苦痛を与えかねない。患者に適する電気刺激パラメータの値を設定する上では、患者の応答を得ながら何度も設定値を変更する場合があるが、このテストモードを使用すれば、患者に与える負担を少なくできると共に、治療者も電気刺激パルスを停止するためのスイッチを押す手間も軽減され、効率的な治療を行える。
【0021】
テストモードによって各刺激パラメータの設定値が患者に適するように設定された後、スイッチ34が押されることにより、治療モードが開始される。制御部70は、設定された刺激時間で電気刺激パルスを電極部10より出力させると共に、タイマ機能70aにより電気刺激パルスを出力した経過時間の計測を行う。刺激時間の残り時間は、画面41の「Time Left」の表示欄に表示される。治療モードの途中でスイッチ34が押されると、制御部70は電気刺激パルスの出力を停止すると共に経過時間の計測を一旦停止する。再び、スイッチ34が押されれば経過時間の計測も再開する。これにより、設定された刺激時間の治療が適切に行われる。
【0022】
なお、本装置の治療モードでは、治療モードが一旦開始されると、制御部70は、刺激パラメータの設定をロックし、設定された刺激時間が終了するまで各刺激パラメータの値の変更を不可とする。スイッチ34によるストップ信号が入力され、電気刺激パルスの出力が一時停止されている場合も、この刺激パラメータの設定をロックは継続される。これは、設定された刺激パラメータが治療中に誤って変更されることを防止し、一貫した条件の下で電気刺激パルスを与える治療を行うためである。
【0023】
このような治療モードで各刺激パラメータの設定値がロックされる構成においては、特に、前述のようなテストモードが設けられていることにより、各刺激パラメータを効率的に設定できる。すなわち、一旦、治療をスタートしてしまうと、設定値を変更する場合には、スイッチ34を押して電気刺激パルスの出力を停止しても設定値の変更ができないので、さらに治療モードの解除を別の操作で行う必要があり、手前である。何度も各刺激パラメータの設定値を変更する必要がある場合には、さらに煩雑さが増す。これに対して、短く設定された一定時間のテストモードが終了すれば、各刺激パラメータの設定値の変更が可能にされるので、設定値の決定する際の作業の効率化が図られる。
【0024】
上記のテストモード時及び治療モード時のいずれにおいても、検出回路85により電極部10が持つ電極11、12の通電状態がモニタされる。電極11及び電極12が眼球に適切に接触されている場合、電極11と電極12との間で電流が流れるため、検出回路85によってその通電がモニタされた電気刺激パルスの波形46が制御部70に表示制御によって画面45に表示される。波形46は、時間軸に沿って逐次更新表示される。ここで、患者眼の眼球に対して電極11、12の少なくとも一方が接触していな場合には、画面45には電気刺激パルスの波形46が表示されない。また、眼球に対して電極11、12の接触が不安定の場合には、波形46の表示が乱れ、安定しない。画面45上の波形46が表示されることにより、治療者は電極11、12の通電状態の適否を視覚的に把握し易く、通電状態の悪化に気付きやすい。
【0025】
テストモード時においても検出回路85により電極11、12の通電状態がモニタされ、波形46が画面45に表示されるので、治療者は電流値等の設定を適切に行うことができる。すなわち、電極部10のベース13と眼球の形状が合わずに電極11、12の通電が無いことに気が付かずに電流値を高く設定したまま治療モードを実施し、電極11、12の通電が回復されたときには、高い値の電流が患者眼に出力されてしまう。このような問題に対して、テストモード時にも電極11、12の通電状態の波形46が表示されることにより、テストモード時点で眼球の形状に合った電極部10に取り替える等の処置を適切にとることができる。
【0026】
また、治療モードでの電気刺激治療は長時間に亘って行われるため、患者眼が動く等で電極部10が途中で外れる場合がある。この場合、検出回路85の通電状態のモニタ結果により電極11、12の通電が絶たれたことが検出されると(設定電流値に対して通電の電流値が大きく変動したことが検出されることも含む)、制御部70は、電位気刺激パルスの出力を停止させると共にブザー22を鳴らし、また、通電表示灯35を点滅させて、治療者に通電状態の悪化を報知する。同時に、タイマ機能70aによる治療時間の計測を停止する。電極11、12の通電が絶たれると、画面45には電気刺激パルスの波形46も表示されなくなる。このような報知により、治療者は通電状態の悪化に気付き、これを回復する処置を容易に取ることができる。スイッチ34の信号が入力されると、制御部70は再び電気刺激パルスの出力を開始すると共にタイマ機能70aによる治療時間の計測を再開させる。そして、制御部70は、タイマ機能70aにより計測されたトータルの時間が設定された刺激時間に達したときに電気刺激パルスの出力を停止させる。これにより、通電が停止されていた間の経過時間が除かれ、設定された刺激時間通りに患者眼に電気刺激パルスを出力でき、適切な治療ができる。
【0027】
以上の実施の形態では電気刺激装置100を単独で用いて網膜神経節細胞の死滅の抑制を行ったが、例えばその他の治療手段と併用することにより、相乗効果を得ることが期待できる。その他の治療手段としては副交感神経作動薬や交感神経作動薬等の緑内障の治療薬が挙げられるが、本発明の眼科用電気刺激装置を使用しながら治療薬の投与を行うことにより、治療薬の効果が増す。このようにして、装置と治療薬の併用効果が望める。
【0028】
また、本実施の形態では網膜神経節細胞の死滅を抑制することができるものとしているが、視細胞等、その他の網膜を構成する細胞(例えば、視細胞)の死滅を抑制することも期待できる。
【0029】
なお、以上説明した実施形態では、テストモードと治療モードのモード選択手段(各モードの開始信号の入力手段)としてスイッチ33、34で使用するものとしたが、ディスプレイ40上でモード選択を可能にしてもよいし、1つのスイッチでモード選択を可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る眼科用電気刺激装置の外観略図である。
【図2】電気刺激装置の画面表示を説明する図である。
【図3】電気刺激装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
10 電極部
30 コントロール部
33 テストスイッチ
34 スタート/ストップスイッチ
35 通電表示灯
40 ディスプレイ
81 刺激回路
82 刺激用電源
85 検出回路
100 眼科用電気刺激装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者眼角膜上に装着する本体に設けられた電極と、該電極から電気刺激パルスを発生させる電気刺激パルス発生手段と、を備える眼科用電気刺激装置において、
前記電気刺激パルス発生手段によって発生させる電気刺激パルスの電流値及び刺激時間を含む刺激条件の各値を設定する刺激条件設定手段を持つコントロール部と、
設定された刺激条件の電気刺激パルスを発生する治療モードと電気刺激パルスをテスト的に発生するテストモードとを選択するモード選択手段と、
治療モードが選択されたときには前記刺激条件設定手段により設定された刺激条件に従って前記電気刺激パルス発生手段を動作させ、テストモードが選択されたときには刺激時間以外は前記刺激条件設定手段により設定された刺激条件に従い、刺激時間については設定値に拘わらずに所定の時間又は所定のパルス数だけ電気刺激パルスを発生するように前記電気刺激パルス発生手段を動作させる制御手段と、
前記電極の通電状態をモニタする通電モニタ手段と、
前記コントロール部に配置され、テストモード時及び治療モード時に前記通電モニタ手段でモニタされた通電状態を時間軸に沿った電流値の波形として表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする眼科用電気刺激装置。
【請求項2】
請求項1の眼科用電気刺激装置は、
前記電気刺激パルス発生手段によって発生された電気刺激パルスの刺激時間を計測するタイマ手段であって、前記通電モニタ手段により前記電極の通電が絶たれたことが検出されたときに刺激時間の計測を停止し、前記電極の通電が回復されたことが検出されたときに刺激時間の計測を再開するタイマ手段を備え、
前記制御手段は、前記通電モニタ手段により前記電極の通電が絶たれたことが検出されたときには電気刺激パルスの発生を停止させると共に、前記タイマ手段で計測されたトータルの刺激時間が前記刺激条件設定手段により設定された刺激時間に達したときに電気刺激パルスの発生を停止させるように前記電気刺激パルス発生手段を動作させることを特徴とする眼科用電気刺激装置。
【請求項3】
請求項1の眼科用電気刺激装置は、治療モードの選択によって電気刺激パルスの発生が開始されたときには、設定された刺激時間が終了するまで各刺激条件の設定を変更不能に固定する条件設定固定手段を備えることを特徴とする眼科用電気刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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