説明

眼科装置および方法

【課題】検査時の患者の眼の位置ずれ問題を解決する方法および測定装置を提供する。
【解決手段】第1光投影システム1により照射された前眼房Eの断面の画像を、正しい捕捉位置で観察するように適応された捕捉システム2と、前記正しい捕捉位置の参照として、前記患者の前記眼Eに対する固視点を決定する固定光ビームを生成するように適応された第2光投影システム3と、を含み、少なくとも前記照明ビームおよびその動きに干渉して、前記ビームをずらすように適応された可動光学部材7と、前記正しい位置決めに対する前記眼の動きを検出するように適応されたセンサ4と、前記センサ4による前記検出への応答として、前記可動光学部材7の動作を制御して、前記ビームを前記正しい捕捉位置に向けてずらすように適応された制御ユニット5と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置および方法の分野に関し、特に角膜および/または眼の前眼部を分析するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年に亘って、角膜の断片のスリット照明、および、適切な観察システムによるこの様な照射された断片の記録に基づく、上記するタイプの一連の眼科装置が開発されている。この様な装置の多くは、眼の光軸を中心とする捕捉装置の回転により眼の様々な断片の画像を捕捉および記録し、適切な処理により、同一の眼の前眼房の3次元構築を取得する。
【0003】
この種の装置を使用する際に生じている主な問題の1つは、装置により提示された固視点に眼を正確に固定することに患者がどれほど協力し集中したとしても、患者の眼は完全に静止した状態を維持することができないことである。一方で、眼のスキャンは、完了するために一定の時間を要する。従って、回転スキャン中に眼を捕捉するための理想的な位置が捕捉装置の回転軸に対して位置ずれてしまう。この位置ずれは、単一断片を互いに対して位置決めし、これによる前眼房の3次元構築段階において、人為的結果および多数のエラーを引き起こす可能性がある。
【0004】
この問題を解決するために、様々な「後天的」補正方法が提案され、現在市場に存在する装置で実施されている。問題に取り組むためのこの様な方法の例は、欧州特許第1430829号に記載される装置により提供される。実際、特定の機能上の解決策は、この様な特許の目的、つまり、時間Tで捕捉された断片を実際に照射された領域に割り当てることを可能にする様に、断片画像および正面画像を同時に記録し、後者は角膜の照射された断片部の画像を示すこと、を構成する。
【0005】
この第2の解決策は、次の欠点を有する。
・ 画像を2回(正面からおよび側面から)保存することは、検査の余分な機能上の作業負荷および計算コストの増加を意味し、
・ 補償は、いかなる場合も完全に満足のいくような解決策を提供しない。これは、後天的補償において、データを再び位置に割り当てる際に、データの数学的補間が必要であり、補間は当然直接のデータ測定よりも確実性が低くなるためである。
【0006】
能動的補正の解決策も周知である。例えば、米国特許第7712899号は、眼の2つの断片を同時に記録するための2つの垂直なチャネル、および、第3映像観察チャネルを有し、これは眼の潜在的な位置ずれを検出し、断片の2つの記録システムのかなりの部分の動きにより結果として生じる補償を可能にする、解決策を記載する。
【0007】
しかし、この種のシステムは構造上および動作上複雑であるため、実際の適用では、構造上の問題、制御の困難性、および結果の不正確さに直面する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、例えば上述するような後天的手法を用いる周知のシステム、または汎用手法の範囲内で代替の解決策を適用する他のシステムに対して、簡易化、検査コストの低減、および結果の正確さの点において、より満足のいく方法で、検査時の患者の眼の位置ずれ問題を解決する方法および測定装置を提供することである。
【0009】
本発明の1つの特定の目的は、確実性があり、構造上および機能上簡易である、能動または先制補正システムを適用する上述するタイプの方法および装置を提供することである。
【0010】
本発明によると、これらおよび他の目的は、添付する特許請求の範囲の第1および第8の請求項による本質的な特性を有する装置および方法により達成される。
【0011】
第1光投影システムは、検査中の眼の前眼房の断面を通過する光の平らなブレードを作り出す。この光は、光が交わる眼の構造により拡散され、光のブレードの平面に対して特定の角度で配置された捕捉または取得システムにより観察される。捕捉システムは、光のブレードが横断した前眼房の断片を記録するセンサ上に集められた画像を形成する。
【0012】
患者は、第2照明および投影システムにより生成された平行ビームからなる固視点に固定するように要求される。上述する第1光投影システムの光のブレードは、固定ビームと平行である。
【0013】
眼の動きは、電子光学検出素子により、角膜により反射された平行固定ビームの画像を読み込むことにより検出される。
【0014】
第1光投影システムの光のブレード、第2光投影システムの平行ビーム、および角膜の反射した画像の共通路に挿入された可動光学部材は、同一のブレードおよび他のビームの、同一のビームの水平面に垂直な方向での制御された移動を可能にする。
【0015】
装置に対する患者の眼球の潜在的な動きは、光のブレードが角膜頂を通過する、理想的な位置からのずれを引き起こす。測定システムは、この様な動きの量を量的に規定する。この測定に応じて、ビームが横切った可動光学部材は、光のブレードを角膜頂を通る位置にずらすために適切な量動く。この様な状態では、角膜の反射した画像も角膜頂上に再び位置合わせされる。
【0016】
本発明によると、フレームを捕捉する際に患者の位置が正しくない場合、患者の眼の位置ずれは、光のブレードを角膜頂に戻すことにより能動的に補正される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明による眼科装置および方法の更なる特徴および利点は、添付する図面を参照し、例として提示され、限定を目的としない実施形態の1つの以下の記載からより明確になるであろう。
【0018】
【図1a】図1aおよび図1bは、眼の前眼部を分析するための装置の例示図を表し、図1aでは照明の光路は光源から眼へと示される。
【図1b】図1aおよび図1bは、眼の前眼部を分析するための装置の例示図を表し、図1bでは、光源から眼への固視点の光路、および、角膜により反射された画像の逆の路の光路が示される。
【図2】(2a)、(3a)、(2b)、(3b)、(2c)、および(3c)は、検査中の眼の対の図を表し、各対は、眼の位置合わせ(位置ずれ)および同一の眼を照射するための光のブレードの移動の3つの異なる状態の、正面図および断面図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1aおよび図1bを参照すると、本発明による装置の実施形態では、照明装置11は、参照符号1で全体を示す第1光投影システム内で中心として定義することができ、患者の眼E、特に断面に光を当てるために関連する前眼房を正面から照射する。
【0020】
中央光学システムは、周知の光学原理により決められる正しい捕捉距離で、照明装置11の発光、つまり光のブレードL(図1a)を作り出すように光学群12を含む。
【0021】
捕捉システム2は、通常CCDセンサである画像捕捉装置21上に、中央光学システム1、特に照明装置11により照射された断面を集めるように、中央投影ビームの外に配置される。センサ21は、照明装置11により生成された光のブレードの外の位置から角膜の断面を観察し、シャインプルーフ構成で好都合に配置され得る。
【0022】
光源311は、発光固視点を生成して、第2光投影システムにより眼Eに向かって投影して、患者が無限遠まで見られるように、平行光ビームFを得る。参照符号3で全体が示されるこの様なシステムは、絞り312、レンズ群313を含み、これらは、従来技術と解されるように、固定装置31の光源311と一体化する。固定装置31は、第1システムの投影と平行な投影を得るように配置される。
【0023】
第2光投影システム3は、一対のビーム偏向器またはビームスプリッタ32、33を更に含み、参照符号32で示される1つ目の偏向器は、固定装置の投影を第2光投影システムの光軸上に、横向きに、または、例にあるように第1光軸に垂直に偏向する。2つ目のビームスプリッタ33は、この様な第1光軸に沿って固定装置31の投影を上述する光学素子12の下流へ偏向するように、第1システムの光軸上に配置され、所望の視準を達成するのに適切な、更に下流に、すなわち、眼Eに向かって配置された他の光学素子34と協働する(図1b)。
【0024】
構造上の固定パラメータとして、第1中央システムの照明装置11により生成された光のブレードは、固定装置31により生成された平行固定ビームの方向に平行な平面上に存在する。結果として、眼Eが平面xy(すなわち、中央光軸の入射点で眼との接平面、図1aに示すデカルト座標系を参照)上で画像捕捉に対して正しく位置付けされた場合、角膜により反射されたこの様な固定ビームの像点は、光のブレードの面に存在する。
【0025】
検出器4は、通常電気光学センサ4のマトリックス形式であり、関連する縦光軸に沿って第2光投影システムと関連付けられ、固定装置31により上述するように生成されて、次に上述する構成要素により偏向される、平行固定ビームの角膜により反射された画像の位置を検出するように適応するようにする。反射したビームは、図1bで、平行ビームに対してより細い線で示される。
【0026】
処理および制御ユニット5は、検出器4により検出器されたデジタル信号、すなわち、眼Eの角膜上の偏向ビームの反射された画像の位置を表す信号を受け取り、処理するのに適切な処理手段を含む。当業者であれば、この様な結果は、デジタルベースの処理およびアナログ制御手段の両方により得られることが理解されよう。処理ユニット5は、アクチュエータ6の制御信号を発することにも適しており、アクチュエータの作動は、光のブレード、平行固定ビーム、および対応する角膜の平行画像を交差させるように配置された可動光学部材7を駆動し、光のブレードをずらし、角膜頂の中央の位置に維持し、自発的な、または、非自発的な患者の眼の動きを能動的に補償することができるようにしている。
【0027】
可能な実施形態では、この様な可動光学部材7は第1および第2光投影システム1、3と眼Eとの間に配置され、平面xyおよび光Lのブレードの水平面と平行な軸を中心として(矢印で示すように)旋回する、簡易で平行であり、平らで透明な薄層からなり得る。従って、実際には、この回転軸は、図1aにおいてyで示される軸により規定された方向に従っている。薄層は、その表面が光のブレードに垂直であると(規定位置)、光路を変えない。一方で、薄層7を規定位置に対して傾斜させることにより、眼を照射する光のブレードは、傾斜角度によって決まる量だけ移動させられる(再び図1aの矢印を参照)。更に、薄層7のこの様な傾斜は、固定装置31により投影された平行固定ビームの方向を変更せず、従って、この方向は患者には常に同じ方向で認識されることを更に留意されたい。一方で、センサ4の観点から、薄層7の傾斜により引き起こされた光のブレードの動きは、平行固定ビームの反射の画像の反対の動きとして認識される(図1bの反射F’)。この様な反射が光のブレードの平面上に存在する場合、センサ4上の画像は、一意的に決定された位置にあり、正しい位置合わせの位置を表す。
【0028】
処理および制御ユニット5は、センサ4により検出されたエラーに基づいて、エラーがゼロになり、上述する位置合わせが得られるように、薄層7の傾斜を駆動する。実際に、薄層7のプリズム効果により、固視点F’の反射がセンサ4の中心に戻り、光のブレードが戻り、角膜の頂点に当たる際にエラーはゼロになる。このような制御処置は、当然、ユニット5で明らかに実施されるソフトウェアにより行うことができる。
【0029】
本発明による装置がどのように作動するかをよりよく、更に理解するために、図2の2および3(a、b、c)に示す状態を参照する。
【0030】
(2a)および(3a)では、眼が位置合わせされ、固視点の反射が角膜頂と位置合わせされ、光のブレードの平面が角膜頂を通る、といった理想的な状態が示される。この場合、処理および制御ユニット5は、薄層7を規定状態に維持することができる。
【0031】
(2b)および(3b)では、眼が適切に位置合わせされず、固視点の反射が一定量角膜頂からずれて、薄層7が規定位置に位置される場合でも、光のブレードの平面が角膜頂を通過しない、といった非理想的な状態が示される。この様な状態は、センサ4により検出され、ユニット5により取得される。それに応じて、光のブレードをずらして、角膜頂に戻るようにするために、ユニット5が一定角度薄層7を傾斜させる必要がある。(2c)および(3c)では、この状態が発生した状態が示される。この段階では、眼が位置ずれする場合でも(図に表され、参照されるデカルト系の原点に対するずれから表される位置ずれ)、照射された眼の断片、つまり角膜頂を通過する断片が望ましい。
【0032】
例えば、欧州特許第1430829号に開示されるような装置といった、類似する周知の装置に対する相違点および利点は、本発明が、後天的または受動的補正方法ではなく、むしろ能動的補正処置を達成することを考慮すれば、明らかである。
【0033】
米国特許第7712899号で既に提案されている能動的補正システムに対してさえ、位置ずれの補正動作が、単に、記録されるべき断片を生成させる照明の動きからなり、構造および動作における抜本的な簡易化を伴っており、これによりコストの低下と確実性の増加を意味する、ということをだけを考慮しても、相当の明確な利点が達成されている。
【0034】
本発明は、可能な例示的実施形態を参照して記述されている。他の実施形態は、本明細書に示すものとは異なって配置され、追加の構成要素/機能と一体化する、光学構成を使用することができ、以下の特許請求の範囲の保護範囲内であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼、すなわち前記眼の前眼房の特徴を捕捉および/または測定するための眼科装置であって、
検査中の前記前眼房の断面を、関連する光軸に沿って照明光ビームで照射するように適応された第1光投影システムと、
前記第1光投影システムにより照射された前記前眼房の前記断面の画像を、正しい捕捉位置で観察するように適応された捕捉システムと、
前記正しい捕捉位置の参照として、前記患者の前記眼に対する固視点を決定する固定光ビームを生成するように適応された第2光投影システムと、を含み、
前記装置は、
少なくとも前記照明ビームおよびその動きに干渉して、前記ビームをずらすように適応された可動光学部材と、
前記正しい位置決めに対する前記眼の動きを検出するように適応されたセンサ手段と、
前記センサ手段による前記検出への応答として、前記可動光学部材の動作を制御して、前記ビームを前記正しい捕捉位置に向けてずらすように適応された制御ユニットと、
を含む、検出および制御手段を更に含む、眼科装置。
【請求項2】
前記検出および制御手段の前記センサ手段は、前記前眼房により前記固定ビームの反射を検出するように適応されており、前記制御ユニットは、前記センサ手段により検出された前記反射のずれに基づいて、前記可動光学部材の動作を制御するように適応される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動光学部材は、透明で実質的に平面の薄層であり、旋回的に支持され、前記制御ユニットにより制御されたアクチュエータ手段により駆動される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記薄層は、前記第1光投影システムの前記光軸の入射点で、前記眼との接平面に平行な回転軸を中心として傾斜するように適応される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1光投影システムは、薄層状の照明ビームを生成するように適応され、前記薄層の前記回転軸は、前記薄層状ビームの水平面と平行である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2光投影システムは、前記第1光投影システムの前記光軸に沿って平行光ビームを生成するように適応され、前記第1システムの前記光軸と前記センサ手段に干渉する側光軸との間に配置された光学偏向手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記捕捉システムは、前記第1光投影システムに対してシャインプルーフ構成で配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
患者の眼、すなわち前記眼の前眼房の画像を捕捉、および/または、特徴を測定するための方法であって、
検査中の前記前眼房の断面を、関連する光軸に沿って第1光投影システムの照明光ビーム(L)で照射することと、
前記照明光ビームにより照射された前記前眼房の前記断面の画像を、正しい捕捉位置で捕捉システムを用いて観察することと、
前記正しい捕捉位置の参照として、前記患者の前記眼に対する固視点を決定する固定ビームを、第2光投影システムを用いて生成することと、を含み、
可動光学部材は少なくとも前記照明ビームに干渉し、前記正しい位置に対する前記眼の動きが検出され、前記検出に応じて前記可動光学部材の動作が制御されて前記ビームを正しい捕捉位置に向けてずらす、方法。
【請求項9】
少なくとも前記眼の前記前眼房による前記固定ビームの反射が検出され、前記可動光学部材の前記動作は、前記反射のずれの前記検出に基づいて制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記可動光学部材は透明で、実質的に平面の薄層であり、旋回的に支持される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記薄層は、前記第1光投影システムの前記光軸の入射点で、前記眼への接線に平行な回転軸を中心として旋回するように適応される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1光投影システムは、薄層状の照明ビームを生成し、前記薄層の前記回転軸は、前記薄層状ビームの水平面と平行である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2光投影システムは、前記第1光投影システムの前記光軸に沿って平行光ビームを生成し、光学偏向は前記第1システムの前記光軸と、前記検出が実行される側光軸との間に配置される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉システムは、前記第1光投影システムに対してシャインプルーフ構成で配置される、請求項8に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35078(P2012−35078A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−170232(P2011−170232)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(507002181)コストルツィオーニ ストルメンチ オフタルミチ シー.エス.オー. エス.アール.エル. (2)