説明

眼科装置

【課題】 前眼部の所定部位の寸法を精度良く測定する。
【解決手段】 投影光軸を持ち,前眼部断面像を形成するための光源及び投影レンズを備える投影光学系と、投影光軸と所定の角度で交わる光軸を持ち,前眼部断面像を撮像するための撮像レンズ及び撮像素子を備え,投影光学系の下方に配置された撮像光学系と、光学系の各々を収納する本体部と、本体部が移動可能に載置された基台と、撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前眼部の輪郭情報を検出し,検出された輪郭情報に基づいて前眼部の所定部位の寸法を測定する演算制御部と、を有する眼科装置において、演算制御部は、撮像素子の出力画像に基づいて被検者眼の角膜からの反射光によって形成される第1光量分布と前記被検者眼の上瞼又は上睫からの反射光によって形成される第2光量分布とを判別し、第1光量分布に基づいて前眼部の輪郭情報を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前眼部の所定部位の寸法を測定する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者眼の前眼部(前眼部全体、角膜、水晶体、等)の断面像を撮像する眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。撮像された前眼部断面像は、前眼部の所定部位の寸法(角膜厚、前房深さ、等)測定に用いられる。
【特許文献1】特開昭63−197433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような眼科装置において、前眼部断面像を撮像する撮像光学系は、その撮像光軸が前眼部断面像を形成するための投影光学系の投影光軸に対して所定の角度で交わるように配置されている。この撮像光学系の配置位置が投影光学系の斜め上方向である場合、被検者の上睫によって前眼部からの反射光が遮光される虞があり、装置構成としては不適当である。また、投影光学系の斜め側方向である場合、被検者の鼻によって前眼部に投影される光が遮光される虞があり、これを解決するためには投影光学系の左右両方に撮像光学系が配置される必要があり、装置構成としては不十分である。また、投影光学系の斜め下方向である場合、被検者の上瞼又は上睫によって部屋の照明光(電灯光)等の外乱光が撮像光学系に入射する虞があり、このままではやはり装置構成としては不十分である。
【0004】
本発明は、上記問題点を鑑み、前眼部の所定部位の寸法を精度良く測定できる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を有することを特徴とする。
【0006】
(1) 投影光軸を持ち,被検者眼の前眼部断面像を形成するための光源及び投影レンズを備える投影光学系と、
前記投影光軸と所定の角度で交わる撮像光軸を持ち,前記前眼部断面像を撮像するための撮像レンズ及び撮像素子を備え,前記投影光学系の下方に配置された撮像光学系と、
前記光学系の各々を収納する本体部と、
前記本体部が移動可能に載置された基台と、
前記撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前記前眼部の輪郭情報を検出し,検出された輪郭情報に基づいて前記前眼部の所定部位の寸法を測定する演算制御部と、
を有する眼科装置において、
前記演算制御部は、前記撮像素子の出力画像に基づいて前記被検者眼の角膜からの反射光によって形成される第1光量分布と前記被検者眼の上瞼又は上睫からの反射光によって形成される第2光量分布とを判別し、前記第1光量分布に基づいて前記前眼部の輪郭情報を検出することを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置において、前記演算制御部は、前記撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前記角膜の前面及び後面の各輪郭情報を検出し、検出された各輪郭情報に基づいて前記角膜の厚さを測定する、又は、前記撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前記角膜と水晶体の前面との各輪郭情報を検出し、検出された各輪郭情報に基づいて前記被検者眼の前房の深さを測定することを特徴とする。
(3) (2)の眼科装置において、前記演算制御部は、前記第1光量分布と前記第2光量分布とを前記撮像素子上における相対的な位置関係によって判別することを特徴とする。
(4) (3)の眼科装置において、前記演算制御部は、前記第2光量分布が検出された場合、前記撮像素子の出力信号のゲインを下げて再度前記前眼部断面像の撮像を行うことを特徴とする。
(5) (4)の眼科装置において、
モニタを備え、
前記本体部は、さらに、測定軸を持ち、被検者眼の第2の眼特性を測定するための測定系を収納し、
前記演算制御部は、前記寸法の測定結果、前記測定系による測定結果、及び前記撮像素子の出力画像のサムネイルを前記モニタ上に表示する演算制御部であって、
前記撮像画像上に含まれる断面像の輪郭位置を検出し、
検出された前記輪郭位置に基づいて,前記モニタ上にサムネイル表示するための表示領域を前記撮像画像に対して設定し、
設定された表示領域に対応する画像データを切り取り、前記モニタ上に前記断面像のサムネイルを表示することを特徴とする。
(6) (5)の眼科装置において、
前記撮像光学系は、被検眼の角膜断面像を撮像する撮像光学系であって、
前記演算制御部は、角膜断面像における輪郭位置を基準として,前記表示領域の中心に角膜断面像が配置されるように表示領域を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前眼部の所定部位の寸法を精度良く測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る眼科装置の外観図であって、図1(a)は側面図であり、図1(b)は斜視図である。なお、本実施形態の装置は、被検者眼の眼圧を非接触で測定する眼圧計(トノメータ)と、前眼部断面像として角膜断面像を撮像して被検者眼の角膜厚を非接触で測定する角膜厚計(パキメータ)と、の複合装置である。また、以下の説明においては、被検者眼Eに対して装置(後述する本体部4)が前後移動される方向をZ方向(作動距離方向)とし、Z方向に対して垂直且つ水平な方向をX方向(左右方向)とし、Z方向に対して垂直且つ鉛直な方向をY方向(上下方向)として説明する。
【0009】
眼科装置は、基台1と、基台1に取り付けられた顔(頭部)支持ユニット2と、基台1上に移動可能に設けられた移動台3と、移動台3上に移動可能に設けられた本体部(測定ユニット)4と、を備える。顔支持ユニット2は、被検者の額が当接されてこれを支持する額当て2aと、被検者の顎が当接されてこれを支持する顎受け(顎台)2bと、を含む。本体部4は、眼圧を測定するための眼圧測定ユニット4aと、角膜断面像を撮像するための角膜断面像撮像ユニット4bと、を収納する。
【0010】
移動台3は、ジョイスティック5の傾倒操作により、基台1上をX及びZ方向に移動される。本体部4は、回転ノブ5aの回転操作により、図示無きY方向移動機構部の駆動によってY方向に移動される。移動台3及び本体部4が被検者眼Eに対して移動され、被検者眼Eに対する本体部4のアライメントが完了されると、測定ユニット4aは被検者眼Eに対して正面方向に配置された状態となり、撮像ユニット4bは被検者眼Eに対して斜め下方向に配置された状態となる。
【0011】
ジョイスティック5の頂部には、測定開始スイッチ5bが設けられている。また、本体部4の後方(ジョイスティック5側(検者側))には、被検者眼Eの観察用画像、測定結果、等を表示するモニタ40が設けられている。
【0012】
図2は測定ユニット4aの内部に配置(収納)された光学系の概略構成図である。図3は測定ユニット4aと撮像ユニット4bとの位置関係を示す図であるとともに撮像ユニット4bの内部に配置された光学系の概略構成図である。
【0013】
後述する流体(空気)噴射機構60のノズル6は、測定ユニット4aの前方(顔支持ユニット2側(被検者眼E側))に配置されている。ノズル6の先端部は、本体部4の前方側筺体面4fよりも前方に位置されている。また、撮像ユニット4bの先端部も、筺体面4fよりも前方に位置されている。これにより、被検者眼Eに対する撮像光学系90bの作動距離が短くなり、撮像光学系90bに配置されるレンズの径が小さくて済む。なお、ノズル6の中心軸L1は、測定ユニット4aの測定軸であって、略水平に配置されている。
【0014】
透明なガラス板7は、ノズル6を保持するとともに、前眼部を正面方向から観察するための光と、アライメント状態を検出するための光と、角膜の変形状態を検出するための光と、を透過させる。
【0015】
赤外照明光源30によって照明された被検者眼Eの前眼部正面像は、ハーフミラー31と対物レンズ32とダイクロイックミラー33と撮像レンズ37とフィルタ34とを介して二次元撮像素子35に結像する。ダイクロイックミラー33は、赤外光を透過して可視光を反射する特性を持つ。フィルタ34は、光源30の光とアライメント用赤外光源40の光とを透過して角膜変形状態検出用赤外光源50の光と可視光とを遮断する特性を持つ。なお、この光学系の光軸は、測定軸L1と同軸になっている。
【0016】
光源40からの光は、投影レンズ41を透過し、ハーフミラー31で反射され、被検者眼Eに正面から投影される。角膜頂点に形成された光源40の角膜反射像(輝点)は、ハーフミラー31とレンズ32とダイクロイックミラー33とレンズ37とフィルタ34とを透過し、二次元撮像素子35に結像する。この撮像素子35の出力信号に基づき、X及びY方向のアライメント状態が検出される。なお、この光学系の光軸は、測定軸L1と同軸になっている。また、レンズ32、レンズ37、撮像素子35は、前眼部正面像を撮像する撮像光学系38を形成する。
【0017】
固視標投影用可視光源45によって照明された固視標46の光は、ダイクロイックミラー94と投影レンズ47とを透過し、ダイクロイックミラー33で反射され、被検者眼Eに正面から投影される。被検者眼Eは、固視標46を固視した状態で眼圧測定及び角膜断面像撮像が行われる。ダイクロイックミラー94は、光源45の光を透過して角膜断面像撮像用可視光源91の光を反射する特性を持つ。なお、この光学系の光軸は、測定軸L1と同軸になっている。
【0018】
光源50からの光は、コリメータレンズ51によって略平行光束とされ、被検者眼Eに斜めから投影される。角膜で反射された光は、受光レンズ52とフィルタ53とを透過し、ハーフミラー54で反射され、ピンホール55を通過し、光検出器56で受光される。この角膜変形状態検出光学系は、被検者眼Eの角膜が所定の変形状態(偏平状態)になったときに光検出器56の受光量が最大になるように配置されている。なお、この光学系の光軸は、測定軸L1と所定の角度で交わっている。
【0019】
また、この角膜変形状態検出光学系は作動距離検出光学系の一部を兼ねており、光源50からの光は、角膜で反射され、レンズ52とフィルタ53とハーフミラー54とを通過し、PSD、ラインセンサ、等の一次元位置検出素子57で受光される。被検者眼EがZ方向に移動すると、光源50からの光の位置検出素子57での受光位置も変動するため、この位置検出素子57からの出力信号に基づき、Z方向のアライメント状態が検出される(作動距離情報が得られる)。
【0020】
角膜厚測定光学系は、角膜断面像を形成するための光をノズル6を介して被検者眼Eに投影する投影光学系90aと、投影光学系90aによって投影された光の角膜からの反射光を受光して角膜断面像を撮像する撮像光学系90bと、を含む。投影光学系90aは、光源91と集光レンズ92とX方向が長手方向であるスリット板93とダイクロイックミラー94と投影レンズ47とダイクロイックミラー33と対物レンズ32とを含む。スリット93は、前眼部(例えば、角膜頂点付近)と共役な位置に配置されている。また、光源91は、例えば、中心波長が略470nmで略460〜490nmの波長領域の光(青色光)を発する可視光源が使用される。また、レンズ47及び32は、光源91とノズル6との間に配置され、光源91からの光を角膜に集光させる。なお、投影光学系90aの光軸(投影光軸)は、測定軸L1と同軸になっている。
【0021】
撮像光学系90bは、二次元撮像素子97と投影光学系90aによる角膜からの反射光を撮像素子97に導く撮像レンズ96及び全反射ミラー98とを含み、シャインプルークの原理に基づいて角膜断面像を撮像する構成となっている。すなわち、撮像光学系90bは、その光軸(撮像光軸)が投影光学系90aの光軸と所定の角度で交わるように配置されており、投影光学系90aによる投影像の光断面と撮像レンズ96の主平面と撮像素子97の撮像面との各延長面が1本の交線(一軸)で交わるような光学配置となっている。なお、撮像光学系90bは、投影光学系90aの下方に配置されており、投影光学系90aによる光の被検者の鼻による蹴られが回避される構成となっている。
【0022】
なお、レンズ96の手前(被検者眼E側)には、光源91から出射され,角膜断面像を撮像するために用いられる光(青色光)のみを透過するフィルタ99が配置されている。これにより、光源30、光源50、光源40、光源45の各光源から出射され、眼圧測定及びアライメントに利用される光がフィルタ99によってカットされ、撮像素子97に入射されるのを防止できる。フィルタ99は、被検眼から撮像素子97までの撮像光路に配置されていればよい。
【0023】
光源91からの光は、集光レンズ92によって集光され、スリット93を通過してX方向が長手方向であるスリット光となる。スリット光は、ダイクロイックミラー94で反射され、レンズ47によって略平行光束とされ、ダイクロイックミラー33で反射され、対物レンズ32によって収束され、ハーフミラー31を透過し、ノズル6内側の中空部を通過し、角膜で集光される。これにより、ノズル6を通過したスリット光によって角膜にスリット断面像が形成される。
【0024】
角膜に形成されたスリット断面像は、フィルタ99とレンズ96とを透過し、ミラー98で反射され、撮像素子97によって撮像される。図4は、撮像素子97で撮像された角膜断面像Dを示す図である。aは角膜前面を示し、bは角膜後面を示す。演算制御部20は、撮像された角膜断面像Dを画像処理することにより、被検者眼Eの角膜厚を求める(詳しくは後述する)。この場合、角膜断面像Dのある軸方向での角膜厚(例えば、角膜中心を通過する軸方向での角膜厚)を求めるようにしてもよいし、角膜断面像D全体から角膜厚を求める(例えば、複数の軸方向での角膜厚の平均を得る)ようにしてもよい。なお、演算制御部20は、撮像された角膜断面像Dに基づいて角膜曲率を求め、角膜厚補正する。
【0025】
図5は測定ユニット4aに配置されている流体噴射機構60の概略構成と制御系の要部とを示す図である。流体吹付機構は、図示なきロータリソレノイドの駆動力によってシリンダ61内をピストン62が圧縮方向に移動されることにより、圧縮空気がノズル6を介して被検者眼Eに噴射される。シリンダ61内の圧力を検出する圧力センサ66からの検出信号は、演算制御部20に入力され、これに基づいて眼圧が求められる。透明なガラス板65は、シリンダ61の後壁を構成するとともに、各光を透過させる。
【0026】
装置全体の制御、測定値の算出、等を行う演算制御部20は、測定開始スイッチ4a、回転ノブ4b、モニタ40、各光源、撮像素子35、光検出器56、位置検出素子57、撮像素子97、圧力センサ66、メモリ24、等と接続されており、各種の制御を行う。
【0027】
次に、撮像光学系90bに入射する外乱光を遮光するために配置された遮光部について説明する。本体部4の前方には、第1遮光部100と第2遮光部110と第3遮光部120とが配置されている。何れの遮光部も、被検者眼Eに対して本体部4が所定の位置関係にアライメントされたときに外乱光を遮光するように設けられている。すなわち、遮光部は大きければ大きいほど遮光効果は高いが、その分測定の邪魔になる可能性も高くなる。したがって、本実施形態では、被検者眼Eに対して本体部4が所定の位置関係にアライメントされたときだけ外乱光が撮像光学系90bに入射しないように各遮光部の位置、形状及び大きさが決定されている。なお、本実施形態では、ノズル6が第2遮光部110を兼ねている。
【0028】
まず、第1遮光部100について説明する。第1遮光部100は、本体部4の上部の前方に凸部として設けられており、顔支持ユニット2で支持された被検者の頭部の斜め上前方から被検者の上瞼又は上睫に入射する外乱光G1を遮光する。また、第1遮光部100の前方の面は、本体部4の筐体面4fに沿って形成されている。このため、第1遮光部100の高さを比較的小さくでき、被検者眼Eと本体部4との間に空間を確保できる。
【0029】
もし、第1遮光部100が無い場合、装置が配置される環境(例えば、電灯が多く配置されている場所)によっては、外乱光G1による上瞼又は上睫からの反射光が撮像光路Pを介して撮像素子97で受光され、外乱光G1による反射像(以下、反射像GRと省略する)として撮像される(図4(b)参照)。したがって、撮像素子97の出力画像には、角膜断面像Dに加えて反射像GRが含まれる。一方、外乱光G1が第1遮光部100によって遮光されることにより、反射像GRのない(又は非常に少ない)良好な角膜断面像が撮像できる(図4(a)参照)。
【0030】
なお、第1遮光部100の高さ及び横幅(X方向の幅)は、例えば、被検者眼Eに対する本体部4のアライメント完了状態における反射像GRの発生度合を実験的に確認することによって決定されている。また、第1遮光部100の横幅(測定軸に直交する水平方向の幅)は、検者による被検者眼Eの瞼の開け易さを考慮して、本体部4の横幅より狭いことが好ましい。
【0031】
また、第1遮光部100の左右両端には、被検者眼Eの瞼の開け易さを向上させるための凹部105が形成されている。なお、凹部105は、検者の手又は指(例えば、親指)の形状に沿うような曲線形状となっている。これにより、凹部105を介して検者の手又は指が挿入できるため、被検者眼Eの瞼が開け易くなる。なお、凹部105は、第1遮光部100の左右両端の何れか一方に形成されていてもよい。
【0032】
なお、第1遮光部100については、上記構成に限るものではなく、外乱光G1を遮光するための種々の変容が考えられる。例えば、第1遮光部100が筺体面4fより前方に突き出たような形態であってもよい。ただし、第1遮光部100が額当て2aに当接しないようにする必要がある。また、第1遮光部100の前方側の面が筐体面4fより後方にあるような形態であってもよい。ただし、この場合、第1遮光部100の高さを大きくする必要がある。
次に、第2遮光部110について説明する。第2遮光部110は、本体部4の撮像ユニット4b上方に設けられており、撮像光学系90bに上方から入射する外乱光G2を遮光する。すなわち、第2遮光部110は、筺体面4fより前方に突き出たように形成されている。また、第2遮光部110は、撮像光路Pに干渉しないように設けられている。なお、本実施形態では、ノズル6が第2遮光部110を兼ねるものとしたが、ノズル6とは別に第2遮光部110が設けられてもよい。
【0033】
次に、第3遮光部120について説明する。第3遮光部120は、本体部4の撮像ユニット4b両側方に設けられており、撮像光学系90bに側方から入射する外乱光G3を遮光する。すなわち、第3遮光部120は、筺体面4fより前方に突き出たように形成されている。また、第3遮光部120は、左右一対の遮光部120Rと遮光部120Lとを含み、撮像光路Pに干渉しないように設けられている。
【0034】
なお、本実施形態では、撮像光学系90bの近傍に第2遮光部110及び第3遮光部120が配置されているため、各々の(遮光領域の)大きさが小さくでき、被検者眼Eと本体部4との間に空間を確保できる。
【0035】
なお、第1遮光部100、第2遮光部110及び第3遮光部120については、本体部4と一体的に形成された構成、本体部4に着脱可能に取り付けられた構成、等が考え得る。
【0036】
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。検者は、被検者の頭部を顔支持ユニット2に支持させた後、モニタ40上に表示されるアライメント情報に基づいてジョイスティック5を操作して被検者眼Eに対する本体部4のアライメントを行う。X及びY方向のアライメントは、光源40の角膜反射像とモニタ40上に表示される図示なきレチクルとが所定の位置関係になるように行われる。Z方向のアライメントは、位置検出素子57から得られるZ方向のアライメント状態(作動距離情報)に基づいてモニタ40上に表示される作動距離指標に従って行われる。なお、このようなアライメントの詳細については、本出願人による特開平7−23907号等を参照されたい。また、X、Y及びZ方向のアライメント状態の検出結果に基づいて本体部4が移動されることにより、被検者眼Eに対する本体部4のアライメントが自動的に行われてもよい。
【0037】
演算制御部20は、撮像素子35及び位置検出素子57から得られるX、Y及びZ方向のアライメント状態の検出結果に基づいてアライメントの完了が判定されると、測定開始のトリガ信号を自動的に発し(又はスイッチ5bによるトリガ信号の入力により)、眼圧測定及び角膜断面像撮像を開始する。
【0038】
測定開始のトリガ信号が発せられると、演算制御部20は、光源91を点灯させて撮像素子97で前眼部断面像を撮像し、メモリ24に記憶する。また、図示無きソレノイドを駆動させてシリンダ61内の空気をピストン62によって圧縮し、ノズル6を介して被検者眼Eに吹き付ける。被検者眼Eの角膜は、圧縮空気の吹き付けによって徐々に変形する。光源50からの光の角膜による反射光は光検出器56に受光され、演算制御部20は、光検出器56の出力信号に基づいて角膜の変形状態を検出し、角膜が圧平状態に達したときの圧力センサ66の出力信号に基づいて眼圧値を求める。
【0039】
また演算制御部20は、メモリ24に記憶された角膜断面像に基づいて被検者眼Eの角膜厚を求め、得られた角膜厚に基づいて眼圧値を補正する。
【0040】
ここで、撮像素子97から出力される撮像画像に基づいて被検者眼の角膜厚を測定する場合の詳細を説明する。図6は角膜断面像を取得してから角膜厚を算出するまでの動作を示すフローチャートであり、図4は取得された角膜断面像について説明する概略図である。図4(a)は反射像GRの無い良好な断面像が取得されたときの図である。図4(b)は前述の外乱光G1による上瞼又は上睫からの反射光が撮像素子97に入射されたときの角膜断面像を示す図である。図4(b)において、角膜断面像の前方(紙面上方)の反射像GR像は、外乱光G1が上瞼又は上睫にて反射されたときの反射光によるものである。なお、反射像GRは、前述の遮光部100により一定以上防止できるが、装置の配置環境等によっては発生し得る。
【0041】
演算制御部20は、撮像素子97の出力画像における光量分布に基づいて角膜の前面及び後面の各輪郭情報を検出し,検出された各輪郭情報に基づいて被検者眼の角膜厚を測定する。この場合、演算制御部20は、検出された輪郭情報に基づいて角膜前面と角膜後面の位置を検出し、前面と後面の位置関係から角膜厚を算出する。
【0042】
より具体的には、演算制御部20は、メモリ24に記憶された断面像に基づいて画像処理により角膜前面と角膜後面のエッジ(輪郭)を検出し、検出されたエッジの検出位置に基づいて角膜厚を算出する。
【0043】
まず、演算制御部20は、角膜前面の輪郭を取得する。演算制御部20は、断面画像データにおいて,深さ方向(Z方向)における輝度分布をX方向に並ぶ走査線(画素列)毎に算出する。そして、演算制御部20は、各走査線の輝度分布における傾きを各画素単位で検出し、急激な立ち上がりを持つ画素位置Gkを検出する(図7参照)。なお、輝度分布における急激な立ち上がりは、反射像GRがなければ、角膜前面からの反射光に対応する。そして、演算制御部20は、画素位置Gkを走査線毎に並べることにより角膜前面の輪郭の位置情報を取得できる。
【0044】
上記において、各画素位置における傾きは、隣接する画素の微分値の近似値を差分により算出することによって求められる。また、画素位置Gkは、所定の基準を満たす傾きを持つ画素位置(立ち上がり方向における傾きが最大であるときの画素位置、傾きが所定値を満たすときの画素位置)を特定することによって検出される。
【0045】
なお、図4(b)のような撮像画像に対して角膜前面の輪郭検出を行う場合、誤って反射像GRを角膜前面として抽出してしまう可能性がある。また、反射像GRの発生元である上瞼又は上睫上からの反射光(散乱光)によって角膜前面に対応する輝度分布の立ち上がり(角膜後面に対応する輝度分布の立ち下がり)が鈍くなってしまうため、角膜厚検出の精度が落ちてしまう。
【0046】
そこで、演算制御部20は、撮像素子97の出力画像に基づいて被検者眼の角膜からの反射光によって形成される第1光量分布と被検者眼の上瞼又は上睫からの反射光によって形成される第2光量分布とを判別し、第1光量分布に基づいての輪郭情報を検出する。
【0047】
ここで、演算制御部20は、角膜前面の輪郭を取得した後(同時でもよい)、演算制御部20は、撮像画像に対して反射像GRの有無(外乱光によるノイズの有無)を判定する。そして、演算制御部20は、反射像GR有りと判定された場合、反射像GR部分に相当する画像を抽出し、画像データから除去する。
【0048】
より具体的には、第1の判別処理として、演算制御部20は、X方向に並ぶ走査線毎に、Z方向における輝度分布が所定の閾値Rs以上か否かを判定し、その判定結果によって反射像GRの有無を検出する。ここで、輝度値が閾値Rs以上の画素位置があれば、反射像GR有りと判定され、輝度値が閾値RS以上の画素位置が無ければ、反射像GR無と判定される。
【0049】
この場合、例えば、輝度レベルを0〜255階調で表現し、閾値Rsを255階調に設定することによって、輝度レベルの飽和部分があるか否かを判定するような手法が考えられる。また、0〜255階調における比較的輝度レベルの高い領域にて閾値Rsを設定するようにしてもよい。
【0050】
上記判定基準において、反射像GR無と判定された場合、反射像GR無と判定された場合、反射像GR除去のステップがスキップされ、次のステップへと移行される。一方、反射像GR有りと判定された場合、演算制御部20は、閾値Rs以上の輝度値を持つ光量分布と,その光量分布より撮像光学系90b側に形成される光量分布と,に対応する深さ位置における画素の輝度値を0に変換する。すなわち、演算制御部20は、外乱光G1による光量分布を除去する。これにより、断面画像データから反射像GR成分が画像処理により除去される。その後、次のステップに移行される。この場合、演算制御部20は、閾値Rsより低い輝度値しか持たない光量分布を角膜反射像による山(光量分布)とみなし、閾値Rs以上の輝度値を持つ光量分布を外乱光による山とみなす。
【0051】
次に、演算制御部20は、前述の角膜前面の輪郭取得ステップにおいて、輪郭が適正に取得できたか否かを判定する。演算制御部20は、輪郭が適正に取得された走査線の数を計測し、計測された走査線の数が所定数(例えば、全走査線数の1/3)を超えているかを判定する。輪郭が取得された走査線の数が所定数を超えていた場合、OKと判定され、次のステップへと進む。
【0052】
一方、輪郭が取得された走査線の数が所定数以下だった場合、不十分と判定される。この場合、演算制御部20は、撮像素子97から出力される撮像信号に対する感度を低下させ、再度断面像の撮影を行い、撮像画像をメモリ24に記憶させる。この場合、演算制御部20は、最初の撮影時における設定に対して,次の撮影における設定では、撮像素子97から出力される撮像信号に対するゲインを下げる。なお、ゲインを下げる量は、予めメモリ24に記憶させておく。この場合、演算制御部20は、撮像画像が所定の基準を満たすまで、ゲインを逐次調整するようにしてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、測定光源(投影光源)から発せられる光量は、被検者にまぶしくないように比較的低い光量に設定し、撮像素子97のゲインを比較的高い設定としている。このため、外乱光による影響を受けやすい。
【0054】
そこで、撮像素子97上に外乱光が検出されたときに、撮像素子97のゲインを許容値まで下げることにより、角膜断面像のエッジを鈍くしていた外乱光成分が減少される。また、ゲインを下げたとき、角膜断面像の輝度レベルが所定値より低い場合、演算制御部20は、投影光源の出力レベルを増加させることにより、角膜断面像のみ輝度を上げることができる。
【0055】
なお、再撮影を行う場合、測定開始のトリガ信号が1回出力されたときに断面像を一枚撮影する単一撮影モードに設定されている場合には、演算制御部20は、2回目のトリガ信号が出力されたときに、第1回目の撮影におけるゲインより低いゲインにて断面像を取得する。また、測定開始のトリガ信号が1回出力されたときに断面像を複数枚撮影する連続撮影モードに設定されている場合には、演算制御部20は、2回目以降の撮影において、第1回目の撮影におけるゲインより低いゲインにて断面像を取得する。
【0056】
そして、演算制御部20は、再撮影にて得られた角膜断面像に対して、最初の角膜断面像と同様に、角膜前面の輪郭取得、反射像GRの有無の判定、及び輪郭取得の判定を順次行う。ここで、2回目以降においても、輪郭取得がNGだった場合、演算制御部80は、測定エラーの旨を示すメッセージ(例えば、ERROR)をモニタ40上に表示する。
【0057】
上記ステップにおいて、角膜前面の輪郭取得がOKと判定された場合、演算制御部20は、抽出された角膜前面の輪郭情報に対して最小二乗法などを用いてフィッティング処理(回帰分析)を行い、角膜前面カーブの回帰曲線を算出する。
【0058】
次に、演算制御部20は、前述の角膜前面の輪郭における個数をX方向に関して計測することによって、図8のような深さ方向における輪郭の個数を求める。図8において、横軸は深さ方向の画素位置、縦軸は各画素位置にて取得された輪郭の数を表す。
【0059】
ここで、演算制御部20は、第1光量分布と第2光量分布を判別する第2の判別処理として、第1光量分布と第2光量分布とを撮像素子97上における相対的な位置関係によって判別する。ここで、演算制御部20は、輪郭の個数による山を検出し、山の数によって断面像に対する反射像GRの有無を判定する。山を検出する場合、演算制御部20は、例えば、立ち上がり、ピーク(上昇から減少に転じる位置)、及び立ち下がりをそれぞれ検出することによって一つの山を検出できる。
【0060】
ここで、演算制御部20は、検出された山が1つの場合、この山を角膜反射像による山とみなし、反射像GR無と判定する。一方、演算制御部20は、図8に示すように、検出された山が2つの場合、撮像光学系90bに対して遠い方の山HG1を角膜反射像による山とみなし、撮像光学系90bに対して近い方の山HG2を反射像GRによる山とみなし、反射像GR有りと判定する。
【0061】
そして、演算制御部20は、反射像GR無と判定された場合、抽出された輪郭情報に基づいて回帰曲線を算出する。一方、反射像GR有りと判定された場合、演算制御部20は、角膜反射像による山とみなされた輪郭情報に基づいて回帰曲線を算出する。このとき、反射像GRによる山とみなされた輪郭情報については、回帰曲線の算出から除外される。
【0062】
次に、演算制御部20は、角膜後面の輪郭を取得する。この場合、演算制御部20は、各走査線の輝度分布における傾きを各画素単位で検出し、急激な立ち下がりを持つ画素位置Gbを検出する。なお、輝度分布における急激な立ち下がりは、角膜後面からの反射光に対応する。この場合、演算制御部20は、前述のように算出された角膜前面位置より眼内側(眼底側)の光量分布から画素位置Gbを検出すればよい。そして、演算制御部20は、画素位置Gbを走査線毎に並べることにより角膜後面位置の輪郭情報を取得する。なお、輪郭の取得手法については、角膜前面と同様の手法を用いることができるため、詳しい説明を省略する。
【0063】
次に、演算制御部20は、前述の角膜後面の輪郭取得ステップにおいて、輪郭が適正に取得できたか否かを判定する。なお、輪郭取得の判定においても、角膜前面に対する判定と同様の手法を用いることができるため、詳しい説明を省略する。ここで、輪郭が取得された走査線の数が所定数を超えていた場合、OKと判定され、次のステップへと進む。一方、輪郭が取得された走査線の数が所定数以下だった場合、不十分と判定される。この場合、演算制御部20は、測定エラーの旨を示すメッセージをモニタ40上に表示する。
【0064】
上記ステップにおいて、角膜後面の輪郭取得がOKと判定された場合、演算制御部20は、抽出された角膜後面の輪郭情報に対して最小二乗法などの回帰式を用いてフィッティング処理(回帰分析)を行い、角膜後面カーブの回帰曲線を算出する。
【0065】
その後、演算制御部20は、角膜中心付近(画像中心付近)を通過する走査線上において、角膜前面カーブと角膜後面カーブとの距離を算出し、算出結果に基づいて角膜厚値を算出する。この場合、角膜前面のカーブから角膜前面の曲率を算出し、その角膜曲率に基づいて角膜厚値を補正してもよい。そして、演算制御部20は、得られた角膜厚値をモニタ40上に表示する。
【0066】
以上のようにすれば、角膜断面像の前方に現れる上瞼又は上睫からの反射光によるノイズ光の影響を回避した状態で、角膜厚が測定される。また、被検者眼に対する本体部4の作動距離が変化した場合であっても、角膜断面像と反射像GR像との判別が可能であるため、精度よく角膜厚を測定できる。
【0067】
なお、上記構成において、演算制御部20は、反射像GR成分を画像処理により除去するものとしたが、角膜反射像による山に対応する深さ位置における画素の輝度分布から角膜前後面の輪郭を検出するようにしてもよい。
【0068】
また、角膜反射光による角膜断面像と外乱光による反射像GR像を判別する場合、上記手法に限るものではない。例えば、演算制御部20は、角膜中心付近における深さ方向の光量分布に対してピーク位置(上昇から減少に転じる位置)を検出する。そして、2つのピークが検出された場合、撮像光学系90bに対して遠い方のピークが角膜反射像によるピークと判別される。この場合、角膜反射像によるピークと判別されたピーク近傍の光量分布から角膜前後面の輪郭が検出される。また、他の手法としては、撮像素子97による撮像画像に対してエッジ抽出処理を行い、角膜の曲線形状に近似するカーブを持つエッジを角膜反射像によるもの、不均一な略楕円形の形状を持つエッジを外乱光によるもの、として判別する。そして、角膜反射像によるエッジと判別されたエッジが角膜前後面の輪郭として検出される。
【0069】
また、角膜前後面の輪郭を検出する場合、エッジ検出の他、所定の輝度値にて二値化処理を行うことによって、角膜前後面の輪郭を検出するようにしてもよい。
【0070】
なお、以上の説明においては、角膜厚を測定する場合を例にとって説明したが、前眼部の撮像画像に基づいて角膜前面と水晶体前面の各輪郭情報を検出し、検出された各輪郭情報に基づいて被検者眼の前房深度を測定する場合においても、適用可能である。
【0071】
その後、演算制御部20は、補正された眼圧値と角膜厚測定値を表示モニタ40に表示する。そして、測定エラーを除いた測定値が所定数(例えば3個)得られたら、眼圧測定を終了する。
【0072】
図9は角膜厚値の測定結果を示すモニタ40の表示画面について説明する図であり、図9(a)は撮像素子97による撮像画像、図9(b)はモニタ40の表示画面である。サムネイル表示SNは撮像光学系90bによって取得された角膜断面像Dがモニタ40の画面上に出力されたものである。第1の測定結果400は、前述のように測定された角膜厚値と平均値を並べたものである。第2の測定結果500は、前述のように測定された眼圧値と平均値を並べたものである。ここで、モニタ40の画面上におけるサムネイル表示SNと測定結果400と測定結果500の表示領域は予め決定されている。ここで、サムネイル表示SNの表示領域HR1はモニタ40の画面上部、測定結果400の表示領域HR2はモニタ40の画面中央部、測定結果500の表示領域HR3はモニタ40の画面下部、に設定されている。また、サムネイル表示SNと測定結果400と測定結果500は、撮像素子35から出力される前眼部観察像に対して重畳して表示される。
【0073】
サムネイル表示SNを行う場合、制御部20は、撮像素子97による撮像画像上に含まれる断面像の輪郭位置を検出し、検出された輪郭位置に基づいて,モニタ40上にサムネイル表示するための表示領域を撮像画像に対して設定する。そして、制御部20は、設定された表示領域に対応する画像データを切り取り、モニタ40上に断面像のサムネイルSNを表示する。
【0074】
より具体的には、制御部20は、メモリ24に記憶された撮像画像を解析し、角膜厚に加えて深さ方向における角膜位置を算出する。角膜位置は、例えば、角膜の輪郭を抽出する際、画像中心近傍(角膜頂点近傍)を通る深さ方向の走査線上で検出される角膜(例えば、角膜前後面)の位置から算出可能である。
【0075】
次に、制御部20は、メモリ23に記憶された撮像画像において、サムネイル表示SNとして表示する表示領域DRを設定し、表示領域DRに対応する画像データを切り取る(抽出する)。また、制御部20は、表示領域DRの中心に断面像Dが配置されるように、表示領域DRを設定する。
【0076】
この場合、制御部20は、前述のように取得される角膜断面像における輪郭位置を基準位置(中心位置)Kとして設定し、基準位置Kが表示領域DRの中心となるように領域DRを設定する。この場合、基準位置Kに対して前方(画面上方)に所定量Gu分加えた画素位置から、後方(画面下方)に所定量Gd分加えた画素位置までの間の,画像データが表示領域DRとして設定される。
【0077】
次に、制御部20は、表示領域HR1の大きさに対応すべく、抽出された画像データに対して縮小処理を行った後、縮小された画像データをサムネイル表示SNとしてモニタ40に出力する。
【0078】
これにより、被検者眼Eに対する本体部4のアライメントずれがあったときに取得された断面像であっても、良好なサムネイル表示が可能となる。また、角膜断面像のサムネイル表示の際に表示領域を小さくできるため、測定値との同時表示が可能となる。
【0079】
なお、以上の説明においては、角膜断面像のサムネイルを表示したが、前眼部断面像を撮像して前房深度が測定可能な眼科装置において、前房深度の測定結果の表示と共に、角膜及び水晶体前面を含む前眼部断面像をサムネイル表示するようにしてもよい。この場合、角膜の輪郭位置又は水晶体前面の輪郭位置の少なくともいずれかを検出し、その輪郭位置に基づいてサムネイル表示に用いる表示領域を撮像画像に対して設定する。この場合、被検者眼の前房深度による角膜と水晶体前面との距離の変化を考慮して表示領域を設定する必要がある。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は第2の実施形態に係る眼科装置の一部外観図であって、図10(a)は一部側面図であり、図10(b)は一部斜視図である。なお、第2実施形態に係る装置は、眼軸長計(バイオメータ)、眼屈折計(レフラクトメータ)、等の眼特性を測定する眼科装置と、前眼部断面像を撮影して被検者眼の前房深さを測定する前房深さ計と,の複合装置である。なお、図1と同一の番号を付したものについては、特段の説明がない限り、同一の機能・構成を有するものとする。
【0081】
額当て2aの上部には、遮光部200が配置されている。遮光部200は、被検者の上瞼又は上睫に斜め上前方から入射する外乱光G1と撮像光学系90bに上方から入射する外乱光G2とを遮光するために設けられている。すなわち、遮光部200は、外乱光G1を遮光するために両被検者眼の上瞼及び上睫を斜め前方から覆うように形成された第1遮光領域210と、外乱光G2を遮光するために撮像光学系90bを上方から覆うように形成された第2遮光領域220と、を含む。また、遮光部200は、主に左被検者眼測定時に用いられる左眼用遮光領域200Lと、主に右被検者眼測定時に用いられる右眼用遮光領域200Rと、を含む。
【0082】
遮光部200は、断面略L字状に屈曲された遮光板であって、短辺部(略鉛直板)200aと長辺部(略水平板)200bとを含む。遮光部200は、短辺部200aがXY平面に略平行に配置されるようにネジ等の図示無き取付部材で額当て2aに連結されており、これによって長辺部200bがXZ平面に略平行で後方に突き出るように配置される。すなわち、遮光部200は、額当て2aに着脱可能に設けられている。また、被検者眼Eの瞼の開け易さを考慮して、長辺部200bの横幅より短辺部200aの横幅の方が短くなっている(額当て2aと遮光部200による凹部が形成されている)。
【0083】
また、遮光部200は、被検者眼Eに対するアライメント完了状態において、遮光部200(長辺200b)の先端部が少なくとも本体部4の筐体面より本体部4側に配置されるように形成されている。この場合、長辺200の長さは、撮像素子97によって撮像される角膜断面像における反射像GRの有無を実験的に確認することにより求めることができる。この場合、モニタ側にいる検者からの被検者眼Eの見易さを考慮して、適正な長さに設定することが好ましい。
【0084】
また、遮光部200の横幅は、例えば、被検者眼Eに対する本体部4のアライメント完了状態における反射像GRの発生度合が実験的に確認されることによって決定されている。また、遮光部200の横幅は、両被検者眼の瞳孔間距離の違いに関わらず両被検者眼の前眼部断面像を良好に撮像するために、本体部4のX方向における両移動限界位置付近での反射像GRの発生度合が実験的に確認されることによって決定されている。また、検者による被検者眼Eの瞼の開け易さを考慮して、本体部4の横幅(又は額当て2aの横幅)より狭いことが好ましい。
【0085】
また、遮光部200は、本体部4がY方向の上限位置まで移動されたときに長辺200bが本体部4の上面より高い位置に配置されるようになっている。これにより、遮光部200と本体部4との接触が回避される。
【0086】
上記のような第2実施形態によれば、検者は、遮光部200と本体部4との間の空間を介して、被検者眼Eの状態を容易に確認できる。また、被検者眼Eの瞼を容易に開けることができる。
【0087】
また、額当て2aに遮光部200が着脱可能であるため、検者は、装置の使用環境に応じて遮光部200を用いるか否かを決定できる。なお、額当て2aに遮光部200を着脱可能とするための構成としては、前述の取付部材に限るものではなく、マグネット、着脱可能な接着剤、等の種々の構成であってもよい。
【0088】
なお、外乱光G1を遮光するための第1遮光部は、本体部4又は額当て2aの上部に配置されていればよいのであって、必ずしも本体部4又は額当て2aの上部に取り付けられている必要はない。例えば、第1遮光部が本体部4の左又は右側面に取り付けられて本体部4又は額当て2aの上部にまで延びているような構成であってもよい。また、外乱光G3を遮光するための第3遮光部が額当て2aに配置されていてもよい。この場合、本体部4のX方向における両移動限界位置において本体部4が接触しなければよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施形態に係る眼科装置の外観図である。
【図2】測定ユニットの内部に配置(収納)された光学系の概略構成図である。
【図3】測定ユニットと撮像ユニットとの位置関係を示す図であるとともに撮像ユニットの内部に配置された光学系の概略構成図である。
【図4】撮像素子で撮像された角膜断面像Dを示す図である。
【図5】測定ユニットに配置されている流体噴射機構の概略構成と制御系の要部とを示す図である。
【図6】角膜断面像を取得してから角膜厚を算出するまでの動作を示すフローチャートである。
【図7】深さ方向(Z方向)における輝度分布を示すグラフである。
【図8】深さ方向における輪郭の個数を示すグラフである。
【図9】角膜厚値の測定結果を示すモニタの表示画面について説明する図である。
【図10】第2の実施形態に係る眼科装置の一部外観図である。
【符号の説明】
【0090】
1 基台
2 顔支持ユニット
2a 額当て
2b 顎受け
4 本体部
4a 眼圧測定ユニット
4b 角膜断面像撮像ユニット
20 演算制御部
38 撮像光学系
40 表示モニタ
47 投影レンズ
90a 投影光学系
90b 撮像光学系
91 光源
96 撮像レンズ
97 二次元撮像素子
100 第1遮光部
110 第2遮光部
120 第3遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光軸を持ち,被検者眼の前眼部断面像を形成するための光源及び投影レンズを備える投影光学系と、
前記投影光軸と所定の角度で交わる撮像光軸を持ち,前記前眼部断面像を撮像するための撮像レンズ及び撮像素子を備え,前記投影光学系の下方に配置された撮像光学系と、
前記光学系の各々を収納する本体部と、
前記本体部が移動可能に載置された基台と、
前記撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前記前眼部の輪郭情報を検出し,検出された輪郭情報に基づいて前記前眼部の所定部位の寸法を測定する演算制御部と、
を有する眼科装置において、
前記演算制御部は、前記撮像素子の出力画像に基づいて前記被検者眼の角膜からの反射光によって形成される第1光量分布と前記被検者眼の上瞼又は上睫からの反射光によって形成される第2光量分布とを判別し、前記第1光量分布に基づいて前記前眼部の輪郭情報を検出することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、前記演算制御部は、前記撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前記角膜の前面及び後面の各輪郭情報を検出し、検出された各輪郭情報に基づいて前記角膜の厚さを測定する、又は、前記撮像素子の出力画像における光量分布に基づいて前記角膜と水晶体の前面との各輪郭情報を検出し、検出された各輪郭情報に基づいて前記被検者眼の前房の深さを測定することを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項2の眼科装置において、前記演算制御部は、前記第1光量分布と前記第2光量分布とを前記撮像素子上における相対的な位置関係によって判別することを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項3の眼科装置において、前記演算制御部は、前記第2光量分布が検出された場合、前記撮像素子の出力信号のゲインを下げて再度前記前眼部断面像の撮像を行うことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項4の眼科装置において、
モニタを備え、
前記本体部は、さらに、測定軸を持ち、被検者眼の第2の眼特性を測定するための測定系を収納し、
前記演算制御部は、前記寸法の測定結果、前記測定系による測定結果、及び前記撮像素子の出力画像のサムネイルを前記モニタ上に表示する演算制御部であって、
前記撮像画像上に含まれる断面像の輪郭位置を検出し、
検出された前記輪郭位置に基づいて,前記モニタ上にサムネイル表示するための表示領域を前記撮像画像に対して設定し、
設定された表示領域に対応する画像データを切り取り、前記モニタ上に前記断面像のサムネイルを表示することを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項5の眼科装置において、
前記撮像光学系は、被検眼の角膜断面像を撮像する撮像光学系であって、
前記演算制御部は、角膜断面像における輪郭位置を基準として,前記表示領域の中心に角膜断面像が配置されるように表示領域を設定することを特徴とする眼科装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−131333(P2010−131333A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312754(P2008−312754)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)