説明

眼窩底骨補填材

【課題】眼球の動きを阻害することなく、眼球のずれを防止する。
【解決手段】リン酸カルシウム多孔体からなる多孔質層2と、生体親和性のある緻密層3とを積層してなり、緻密層3側が、眼球Aの曲面と略相補的な凹面となるように湾曲して成形された眼窩底骨補填材1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼窩底骨補填材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨補填材として、特許文献1に開示された骨補填材が知られている。
この骨補填材は、頭蓋骨の眼窩上縁と頬骨と蝶形骨の間の部分にわたって形成された開頭部の閉頭手術の際にその部分に補填される骨補填材である。
【0003】
【特許文献1】特開平10−33578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、眼窩底骨骨折の場合、単に平坦な骨補填材を補填しただけでは、骨折により眼球がずれ、視野の焦点が合わなくなったり、視力が低下したりする不都合が発生する。また、頻繁に移動する眼球に近接配置される骨であるため、眼球の動きを阻害しないようにする必要がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、眼球の動きを阻害することなく、眼球のずれを防止することができる眼窩底骨補填材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、リン酸カルシウム多孔体からなる多孔質層と、生体親和性のある緻密層とを積層してなり、緻密層側が、眼球の曲面と略相補的な凹面となるように湾曲して成形された眼窩底骨補填材を提供する。
【0006】
本発明によれば、多孔質層と緻密層とを積層した眼窩底骨補填材が、補填されると、凹面となっている緻密層が眼球に対向するように配置される。凹面からなる緻密層は眼球の曲面と略相補的に形成されているので、眼球の動きを阻害することなく、円滑に支持することができる。その結果、眼球のずれが防止され、視力の低下や焦点のブレを防止することができる。
【0007】
上記発明においては、前記緻密層が、リン酸カルシウム多孔体からなることとしてもよい。
このようにすることで、単一の材料により緻密層と多孔質層とを形成することができ製造を容易にすることができる。また、緻密層により眼球の動きを円滑にすることができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記緻密層が、コラーゲン、ポリ乳酸あるいはポリグリコール酸のような生体高分子材料からなることとしてもよい。
このようにすることで、生体高分子材料が眼球との間の摩擦を低減し、眼球の動きをさら円滑にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る眼窩底骨補填材によれば、眼球の動きを阻害することなく、眼球のずれを防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る眼窩底骨補填材1について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る眼窩底骨補填材1は、図1に示されるように、リン酸カルシウム多孔体、例えば、βーTCP多孔体からなる多孔質層2と、リン酸カルシウム、例えばβーTCPからなる緻密層3とを積層して構成されている。
【0011】
多孔質層2は、例えば、多数のマクロ気孔を有し気孔率約70%である。一方、緻密層3は、マクロ気孔を有していない。
積層された多孔質層2および緻密層3は、緻密層3側が凹面となるように湾曲した形態を有している。凹面の曲率は、図2に示されるように、眼球Aの球面の曲率とほぼ同等となるように設定されている。
【0012】
これにより、本実施形態に係る眼窩底骨補填材1が図2に示される眼窩底骨Bの骨折部位Cに補填されると、眼球A側に配置される緻密層3の凹面が、眼球Aの曲面と略相補的な位置関係に配置される。そして、これによって、本実施形態に係る眼窩底骨補填材1は、矢印Dに沿う方向の眼球Aの動きを阻害することなく、かつ、眼球Aがずれないように支持するようになっている。
【0013】
このように構成された本実施形態に係る眼窩底骨補填材1によれば、単一のβーTCPにより緻密層3と多孔質層2とを構成しているので、製造が容易であるという利点がある。
また、本実施形態に係る眼窩底骨補填材1が眼窩底骨Bの骨折部位Cに補填されることにより、多孔質層2が骨形成を促進して、経時的に自家骨化し、骨折部位Cが治癒される。また、緻密層3が眼球Aの曲面に沿うようにして眼球Aを支持するので、眼球Aのずれが防止され、視力の低下や焦点のブレを防止することができる。
【0014】
なお、本実施形態においては、緻密層3を多孔質層2と同じβーTCPにより製造することとしたが、これに代えて、コラーゲン、ポリ乳酸あるいはポリグリコール酸等の生体高分子材料により構成することにしてもよい。このようにすることで、眼球Aとの間の摩擦を低減し、眼球Aの動きをより円滑にすることができるという利点がある。
【0015】
また、本実施形態に係る眼窩底骨補填材1の曲率は、補填する患者の個人差に適合するように、曲率半径略30〜200mmの範囲で任意に決定することができる。
また、眼窩底骨補填材1の厚さ寸法は、約1〜10mmの範囲で任意に決定することができる。
また、図3に示されるように、角部を丸めた構造にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る眼窩底骨補填材を示す斜視図である。
【図2】図1の眼窩底骨補填材を骨折部位に補填した状態の眼球との位置関係を示す模式図である。
【図3】図1の眼窩底骨補填材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 眼窩底骨補填材
2 多孔質層
3 緻密層
A 眼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム多孔体からなる多孔質層と、生体親和性のある緻密層とを積層してなり、
緻密層側が、眼球の曲面と略相補的な凹面となるように湾曲して成形された眼窩底骨補填材。
【請求項2】
前記緻密層が、リン酸カルシウム多孔体からなる請求項1に記載の眼窩底骨補填材。
【請求項3】
前記緻密層が、コラーゲン、ポリ乳酸あるいはポリグリコール酸のような生体高分子材料からなる請求項1に記載の眼窩底骨補填材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−79683(P2008−79683A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260341(P2006−260341)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(304050912)オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 (99)
【Fターム(参考)】