説明

眼鏡レンズ選定用説明補助具

【課題】少なくとも複数の累進屈折力レンズを含む複数の老視用眼鏡レンズから装用者に適した眼鏡レンズを選定する際に、レンズ光学設計の種類の違いについて分かり易く説明することができるようにする。
【解決手段】眼鏡レンズ選定用説明補助具1は、化粧板3と、複数の表示部11〜15と、明視域調整部55,56を備える。化粧板3に、複数の表示窓21〜23と、目盛27を設ける。複数の表示部11〜15は、複数の表示窓21〜23から視認可能に配置されている。そして、この複数の表示部11〜15には、複数の種類の眼鏡を装着した際の明視域を示す明視域表示領域53を有している。この明視域表示領域54の範囲は、表示窓21〜23の長手方向に沿って変更可能とする。そして、複数の表示部11〜15は、複数の種類の累進屈折力レンズを装着した際の明視域をそれぞれ表示する複数の累進屈折力レンズ用表示部12〜14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの選定を視覚的に説明するために用いられる表示装置としての眼鏡レンズ選定用説明補助具に関し、特に老視用眼鏡レンズを選定する際の説明に用いられる眼鏡レンズ選定用説明補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老視用眼鏡レンズとしては、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ(以下、「累進レンズ」ともいう)、及び近方視用に用いられる単焦点レンズ(以下、「近用単焦点レンズ」ともいう)が知られている。この累進レンズには、近方視を重視したものや遠方視を重視したものなど、目的に応じて多様な種類のレンズが存在している。
【0003】
図6を参照して累進レンズの光学設計の違いによるはっきりと見える範囲(以下、「明視域」という。)の違いについて説明する。
図6(a)は近方視を重視した近近累進レンズを装着した際の明視域を示す概念図、図6(b)は近方視および中間視を重視した中近累進レンズを装着した際の明視域を示す概念図、図6(c)は、近方視及び遠方視を重視した遠近累進レンズを装着した際の明視域を示す概念図である。
【0004】
図6(a)に示すように、近近累進レンズを装着した場合の明視域Q1は、装用者Pの机Dの周りが良く見えるが、遠方視には向いていないことが分かる。そのため、この近近累進レンズは、一般的に、本を読んだり、パーソナルコンピュータで仕事をしたりするなどのデスクワークに向いているといえる。また、図6(b)に示すように、中近累進レンズを装着した場合の明視域Q2は、装用者Pの机Dから室内かけて良く見えることが分かる。そのため、この中近累進レンズは、一般的に、室内での仕事に向いているといえる。
【0005】
そして、図6(c)に示すように、遠近累進レンズを装着した場合の明視域Q3は、装用者Pの手元から遠くまで見えることが分かる。しかしながら、遠近累進レンズを装着した際の近方視の視野は、近近累進レンズの視野に比べて、装用者Pの周囲である、机D周りで狭くなっている。
【0006】
このように、レンズの種類によって、明視域や視野の広さが異なっている。そのため、眼鏡店などでは、多種類のレンズから顧客、すなわち眼鏡装用者の目的に応じたレンズを選定する必要性がある。
【0007】
多種類のレンズから顧客の目的に応じたレンズを選定する方法としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているような技術がある。この特許文献1や特許文献2には、眼鏡装用者の年齢や、眼鏡を装着する状況等の各種データから適正なレンズを選択する技術が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−206417号公報
【特許文献2】特開平10−115808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された技術では、個人データや装着する状況等のデータからレンズの選定を行うだけである。そのため、顧客に、レンズの違い、例えば、装着した際にはっきり見える範囲の違いについて簡単に説明を行うことが難しい、という問題を有していた。
【0010】
また、眼鏡店等では、販売員がレンズの種類の違いを顧客に分かり易く説明して対話を図るためのコミュニケーションツールが求められている。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された技術では、選定を行うためのデータが格納されたコンピュータ等の大掛かりな装置が必要であった。そのため、特許文献1や特許文献2に記載された装置を、眼鏡店に来店した顧客に対してコミュニケーションツールとして気軽に使用することは、困難であった。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、光学設計の異なる複数の累進レンズを含む老視用眼鏡レンズの中から眼鏡装用者の装用環境や目的に適した眼鏡レンズを選定する際に、レンズ光学設計の種類の違いについて分かり易く説明することができる眼鏡レンズ選定用説明補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具は、細長の複数の表示窓及び該複数の表示窓の長手方向に沿って形成された目盛を有する化粧板と、を備えている。更に、複数の表示窓から視認可能に設けられ、複数の種類の眼鏡レンズを装着した際の明視域を示す明視域表示領域を有し、且つ明視域表示領域の範囲が複数の表示窓の長手方向に沿って変更可能な複数の表示部と、明視域表示領域の範囲を変更する明視域調整部と、を備えている。更に、複数の表示部は、複数の種類の累進屈折力レンズを装着した際の明視域をそれぞれ表示する複数の累進屈折力レンズ用表示部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具によれば、眼鏡レンズの光学設計の種類ごとの明視域を変更可能に示す複数の表示部を備えたことで、顧客等の眼鏡装用者に眼鏡を装着した際の明視域の範囲を視覚に訴えることができる。その結果、眼鏡選定の際に、眼鏡店等の販売員は、眼鏡装用者に対してレンズ光学設計の種類を分かり易く説明することができる。また、構成が簡単であるため、持ち運び易く軽量に形成することができ、本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具を携帯することができる。
【0014】
更に、レンズ光学設計の種類の違いによる装用時の明視域の違いを分かり易く説明することができるため、眼鏡店等の販売員が眼鏡装用者である顧客との対話を図るためのコミュニケーションツールとしても使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具の実施の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具の実施の形態例を示す正面図である。
【図3】本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具の実施の形態例を示す図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具に係る中間板を示す正面図である。
【図5】本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具の第2の実施の形態例を示す正面図である。
【図6】累進レンズの種類における見え方の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の眼鏡レンズ選定用説明補助具の実施形態例について、図1〜図4を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.眼鏡レンズ選定用説明補助具の構成例
2.眼鏡レンズ選定用説明補助具の使用例
【0017】
1.眼鏡レンズ選定用説明補助具の構成例
まず、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる眼鏡レンズ選定用説明補助具の構成について説明する。
図1は本例の眼鏡レンズ選定用説明補助具を示す斜視図、図2は本例の眼鏡レンズ選定用説明補助具を示す正面図である。図3は、図2に示すA−A線で断面した断面図、図4は、本例の眼鏡レンズ選定用説明補助具に係る中間板を示す正面図である。
【0018】
本例の眼鏡レンズ選定用説明補助具は、例えば眼鏡店や眼科医院等で販売員や眼科医が顧客に眼鏡を選定する際に説明するための補助具として用いられるものである。図1に示すように、眼鏡レンズ選定用説明補助具1は、5つの表示部11,12,13,14,15が設けられた本体2から構成されている。
【0019】
5つの表示部11,12,13,14,15は、後述する表示窓と明視域可変表示部とから構成されている。この5つの表示部11〜15は、以下、本体2の短手方向の一側、すなわち左から順番に、第1の表示部11、第2の表示部12、第3の表示部13、第4の表示部14、第5の表示部15という。
【0020】
本例では、第1及び第5の表示部11,15は、単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「単焦点レンズ用表示部」あるいは「累進レンズ用表示部」という)に設定されている。そして、第1の表示部11が近用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「近用表示部」ともいう)、第5の表示部15が遠用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「遠用表示部」ともいう)となっている。
【0021】
また、第2〜第4の表示部12〜14は、累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「累進屈折力レンズ用表示部」ともいう)に設定されている。そして、第2の表示部12が近近累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「近近用表示部」ともいう)、第3の表示部13が中近累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「中近用表示部」ともいう)となっている。更に、第4の表示部14が、遠近累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する表示部(以下「遠近用表示部」ともいう)となっている。
【0022】
なお、近用、近近用、中近用、遠近用、及び、遠用の表示部の並び順は任意に設定可能である。しかしながら、本例のように、明視域の上限値が大きい順あるいは小さい順に並べると、レンズ種類の違いを比較しやすいので好ましい。
【0023】
この本体2は、略長方形を略平板状(薄い略直方体)に形成されている。そして、この本体2は、同じ外形状の化粧板3と、2つのスペーサ板4,6と、中間板7と、背面板8とを重ね合わせて構成されている。
【0024】
化粧板3は、本例では縦長の略長方形をなす略平板状に形成されている。化粧板3には、所定の幅で細長(帯状)に開口した5つの表示窓21,22,23,24,25と、この5つの表示窓21〜25の長手方向に沿って形成された目盛27と、表示窓21〜25の長手の方向の一端側にそれぞれ形成された5つのレンズ種類表示部28が設けられている。
【0025】
図2に示すように、細長に開口された5つの表示窓21〜25は、本例においては細長の略長方形状に形成されており、化粧板3の長手方向、すなわち上下方向に延在し、それぞれ平行に並んで配置されている。また、この5つの表示窓21〜25の長手方向の一端は、それぞれ化粧板3の上下方向における略同一の位置に揃えられている。そして、第1の表示窓21は、化粧板3の短手方向、すなわち左右方向の一側に配置されており、この第1の表示窓21から化粧板3の左右方向の他側に向けて第2の表示窓22〜第5の表示窓25が所定の間隔を開けて順番に配置されている。
【0026】
第1の表示窓21は、第1の表示部11である近用表示部の表示窓(以下、「近用表示窓」ともいう)であり、第2の表示窓22は、第2の表示部12である近近用表示部の表示窓(以下、「近近用表示窓」ともいう)である。また、第3の表示窓23は、第3の表示部13である中近用表示部の表示窓(以下、「中近用表示窓」ともいう)であり、第4の表示窓24は、第4の表示部14である遠近用表示部の表示窓(以下、「遠近用表示窓」ともいう)である。そして、第5の表示部25は、第5の表示部15である遠用表示部15の表示窓(以下、「遠用表示窓」ともいう)である。
【0027】
本例では、近用表示窓21の長手方向の長さは、他の表示窓22〜25の長手方向の長さよりも短く設定されている。また、近近用表示窓22の長手方向の長さは、中近用、遠近用、及び遠用の表示窓23〜25の長手方向の長さよりも短く設定されている。
【0028】
そして、中近用、遠近用、及び、遠用の表示窓23〜25の長手方向の長さは同じに設定されている。なお、近用表示窓21と近近用表示窓22の長手方向の長さを同じでかつ他の表示窓23〜25の長手方向の長さより短く設定してもよい(図5参照)し、中近用表示窓23の長手方向の長さを近用表示窓21及び近近用表示窓22の長手方向の長さより長く、かつ、遠近用表示窓24及び遠用表示窓25より短く設定してもよい。これによりレンズ種類の違いをより明確に表現することができる。
【0029】
また、5つの表示窓21〜25の短手方向の両側には、眼鏡装用者からの距離を表す目盛27が設けられている。この目盛27は、両端に位置する第1の表示窓21及び第5の表示窓25の外側にその長手方向に沿って記載されている。そして、この目盛27から5つの表示窓21〜25の短手方向に沿って同じ目盛の値を示す複数の罫線29が5つの表示窓21〜25を横切るように記載されている。
【0030】
目盛27の値は、5つの表示窓21〜25の長手方向の一側から順に、25cm、書類、ノートPC、デスクトップPC、80cm、1m、5mと、遠方を示す山の絵を記載している。なお、この目盛27の値は、上述したものに限定されるものではなく、眼鏡装用者である顧客が分かり易い値や眼鏡使用目的等に適宜変更されるものである。
【0031】
更に、5つの表示窓21〜25の長手方向の一側には、レンズ光学設計の種類や使用目的などのレンズ種類を特定する名称が記入されたレンズ種類表示部28が設けられている。本例では、レンズ光学設計種類や使用目的の名称として、第1の表示窓21から順に、近用、デスクワーク用、室内用、遠近両用、遠用と、記載している。しかしながら、レンズ種類表示部28に記入される名称は、上述したものに限定されるものでない。例えば、例えば、デスクワーク用を近近用累進レンズ、室内用を中近用累進レンズ、遠近両用を遠近用累進レンズ等のように、眼鏡装用者である顧客が分かり易い名称に適宜変更してもよい。
【0032】
化粧板3の材質としては、紙や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂等を用いることができる。また、化粧板3の全体または一部をホワイトボードで形成してもよい。化粧板3をホワイトボードで形成することで、例えば目盛27やレンズ種類表示部28が記載されている部分がホワイトボードで形成されている場合には、目盛27の値やレンズ種類表示部28に記載されるレンズ種類の名称を書き換えることができ、眼鏡選定の説明を眼鏡装用者に対して分かり易く説明することができる。
【0033】
更に、化粧板3をホワイトボードで形成することで、ホワイトボードで形成された化粧板3の空いたスペースに、目盛やその罫線を追加したり、眼鏡装用者の裸眼時の明視域や、眼鏡装用者が要望する明視域等のメモを記入したりすることができる。その結果、眼鏡選定の説明を顧客に対して、より分かり易く行うことが可能である。なお、目盛の領域やレンズ種類表示部の領域をホワイトボードで形成した場合は、目盛の値やレンズ種類名称の値をブランクにしたり、薄い色で表示したり、小さい文字で表示したりして書き込み易いようにしてもよい。
【0034】
化粧板3の背面側には、第1のスペーサ板4が配置されている。第1のスペーサ板4と第2のスペーサ板6は、化粧板3と同様の外形状(本例では縦長の略長方形)をなす略平板状に形成されている。また、図3に示すように、第1のスペーサ板4及び第2のスペーサ板6には、化粧板3の5つの表示窓21〜25と厚さ方向で対応する位置に、開口部17が形成されている。この開口部17の開口面積は、化粧板3の表示窓21〜25の開口面積よりも大きく設定されている。
【0035】
また、第1のスペーサ板4と第2のスペーサ板6の間には、中間板7が介在されている。更に、第2のスペーサ板6の背面側には、開口部17を閉じるように化粧板3と同様の外形状(本例では縦長の略長方形)をなす略平板状の背面板8が配置されている。そして、化粧板3、第1のスペーサ板4、中間板7、第2のスペーサ板6及び背面板8は、それぞれ接着剤による接着等の固定方法によって一体に固定されている。
【0036】
図4に示すように、中間板7は、薄い平板状に形成されている。この中間板7における化粧板3の5つの表示窓21〜25と対応する位置には、それぞれ3つの軸受部31,32,33が設けられている。すなわち、中間板7には、全体で15の軸受部31,32,33が形成されている。
【0037】
3つの軸受部31,32,33は、中間板7の長手方向に所定の間隔を開けて配置されている。中間板7の長手方向の一側には、第1の軸受部31が配置されており、長手方向の他側には、第2の軸受部32が配置されている。そして、第1の軸受部31と第2の軸受部32の間には、第3の軸受部33が配置されている。
【0038】
第1の軸受部31、第2の軸受部32及び第3の軸受部33は、それぞれ略四角形状に開口されている。そして、第1の軸受部31には、一対の第1突起片34,34が設けられており、第2の軸受部32には、一対の第2突起片35,35が設けられている。また、第3の軸受部33には、一対の第3突起片36,36と一対の第4突起片37,37が設けられている。そして、一対の第3突起片36,36は、第3の軸受部33における第1の軸受部31側に配置され、一対の第4突起片37,37は、第3の軸受部33における第2の軸受部32側に配置されている。
【0039】
次に、5つの表示部11〜15の構成について説明する。
表示部11〜15は、それぞれ表示窓21〜25と、明視域可変表示部71〜75とから構成されている。明視域可変表示部71〜75は、下限側可変表示部71a〜75aと、上限側可変表示部71b〜75bとからなる。なお、5つの表示部11〜15は、それぞれ同様の構造からなる構成を有しているため、ここでは、第5の表示部15について説明する。
【0040】
図3に示すように、第5の表示部15は、表示窓25と、明視域可変表示部75とからなり、明視域可変表示部75は、下限側可変表示部75aと上限側可変表示部75bとから構成されている。下限側表示部75aは、下限側表示帯41と、2つの下限側軸部44,46と2対の突起片34,36を備えた軸受部31,33とを有している。また、上限側表示部75bは、上限側表示帯42と、2つの上限側軸部45,47と2対の突起片35,37を備えた軸受部32,33とから構成されている。そして、下限側可変表示部75aと上限側可変表示部75bは、表示窓25の長手方向に直線状に並んで配置されている。
【0041】
4対の突起片34〜37は、前述のとおり中間板7に形成された軸受部31〜33に設けられている。4つの軸部44〜47は、それぞれ円筒状に形成されており、その中央の孔を軸受部31〜33の突起片34〜37によって両端から軸支さえて回転可能に支持されている。そして、図4に示すように、第1の下限側軸部44は、第1の軸受部31の第1突起片34に取り付けられており、第2の下限側軸部46は、第3の軸受部33の第3突起片36に取り付けられている。また、第1の上限側軸部46は、第2の軸受部32の第2突起片35に取り付けられており、第2の上限側軸部47は、第3の軸受部33の第4突起片37に取り付けられている。
【0042】
下限側表示帯41及び上限側表示帯42は、帯状部材の長手方向の一端と他端を接続して輪状の部材に形成されている。下限側表示帯41には、明視域の近点側の領域を表示する下限側表示領域51と、空白領域50が設けられている(図2参照)。そして、この下限側表示帯41は、第1の下限側軸部44と第2の下限側軸部46に掛け渡されることによって回転可能に支持されている。
【0043】
また、下限側表示帯41における下限側表示領域51と空白領域50の境界には、下限側表示帯41を回転させるための下限側レバー55が設けられている。下限側可変表示部75aは、下限側表示帯41が表示窓25の下側の裏面に近接しながら回転するとともに、下限側レバー55が、表示窓23から外に突出するように取り付けられている。また、下限側レバー55の下側に空白領域50、上側に下限側表示領域51がくるように取り付けられている。そして、この明視域調整部である下限側レバー55を表示窓25の長手方向に沿って移動させるように操作することで、下限側表示領域51を第5の表示窓25から視認できる範囲が変更される。
【0044】
なお、下限側レバー55の移動可能範囲は表示窓25の下端と上限側可変表示部75bの下端により制限されるため、下限側レバー55の下側に空白領域50、上側に下限側表示領域51が表示窓25内に表示される。そして、下限側レバー55を移動させることによりそれぞれの領域の割合が変化する。
【0045】
また、上限側表示帯42には、明視域の遠点側の上限領域を表示する上限側表示領域52と、空白領域50が設けられている。そして、この上限側表示帯42は、第2の軸部45と第4の軸部47に掛け渡されることによって回転可能に支持されている。
【0046】
また、この上限側表示帯42における上限側表示領域52と空白領域50の境界には、上限側表示帯42を回転させるための上限側レバー56が設けられている。上限側可変表示部75bは、上限側表示帯42が表示窓25の上側の裏面に近接しながら回転するとともに、上限側レバー56が、表示窓23から外に突出するように取り付けられている。また上限側レバー56の上側に空白領域50、下側に上限側表示領域52がくるように取り付けられている。そして、この明視域調整部である上限側レバー56を表示窓25の長手方向に沿って移動させるように操作することで、上限側表示領域52を第5の表示窓25から視認できる範囲が変更される。
【0047】
なお、上限側レバー56の移動可能範囲は表示窓25の上端と下限側可変表示部75aの上端により制限されるため、上限側レバー56の上側に空白領域50、下側に下限側表示領域52が表示窓25内に表示され、上限側レバー55を移動させることによりそれぞれの領域の割合が変化する。
【0048】
また、下限側表示帯41の下限側レバー55は、眼鏡装用者がものをはっきりと見ることができる近点距離の下限を示し、上限側表示帯42の上限側レバー56は、遠点距離の上限を示す。そして、下限側表示帯41の下限側表示領域51と上限側表示帯42の上限側表示領域52によって、明視域の範囲を示す明視域表示領域54を構成している。これにより、下限側レバー55及び上限側レバー56を操作することで、明視域表示領域54の範囲を変更することができる。
【0049】
更に、この第5の表示部15は、第1のスペーサ板4及び第2のスペーサ板6の開口部17に収納される。これにより、第5の表示部15は、化粧板3の第5の表示窓25から明視域表示領域54及び空白領域50が視認可能に配置される(図2参照)。
【0050】
ここで、下限側表示帯41及び上限側表示帯42の空白領域50は、第5の表示窓25の長手方向の両側に表示される。そのため、明視域表示領域54は、2つの空白領域50に挟まれて第5の表示窓25に表示される。
【0051】
なお、第1の表示部11は、第1の表示窓21から視認可能に配置されており、第2の表示部12は、第2の表示窓22から視認可能に配置されている。同様に、第3の表示部13及び第4の表示部14も、それぞれ化粧板3の第3の表示窓23及び第4の表示窓24から視認可能に配置されている。
【0052】
本例では、第1の表示部11が近用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示し、第2の表示部12が例えばデスクワーク用に用いられる近近用累進レンズを装着した際の明視域を表示する。また、第3の表示部13が例えば室内用に用いられる中近用累進レンズを装着した際の明視域を表示し、第4の表示部14が遠近用累進レンズを装着した際の明視域を表示する。そして、第5の表示部15が遠用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する。
【0053】
ここで、近用単焦点レンズの第1の表示部11における上限側表示帯42の可動範囲は、他の表示部12〜15の上限側表示帯42の可動範囲よりも狭く設定されている。更に、第1の表示部11では、上限側表示帯42と下限側表示帯41が接近する中間点を、他の表示部12〜15よりも眼鏡装用者に近い位置(例えば、40cm前後)に設けている。これより、他の表示部12〜15に比べて、明視域の範囲を眼鏡装用者から近い位置で細かく調整することができる。このように、第1の表示部11は、近用単焦点レンズに特化した表示部としている。
【0054】
上述したように、レンズの種類ごとに表示部を設けることで、レンズの種類ごとの明視域の違いを眼鏡装用者である顧客の視覚に訴えることができる。そのため、眼鏡の選定を行う際に、顧客に対してレンズの種類の違いについて分かり易く説明することができる。
【0055】
更に、本例の眼鏡レンズ選定用説明補助具1は、構成が極めて簡単なため、眼鏡店等の販売員が携帯できるように小型に形成することができる。このように、眼鏡店等の販売員が携帯できると共に、レンズの違いを簡単に説明することができるため、眼鏡店に来店した顧客と対話を図るためのコミュニケーションツールとして用いることができる。
【0056】
なお、本例では、表示部の数を5つとしたが、表示部の数は、これに限定されるものではない。例えば、表示部の数を4つ以下としてもよく、或いは表示部を6つ以上設けてもよい。
【0057】
また、第1の表示部11又は第5の表示部15の隣りに、眼鏡装用者の裸眼時の明視域を表示するための裸眼時表示部や、眼鏡装用者が求める明視域を表示する所望表示部を設けてもよい。なお、遠用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する第5の表示部15を、裸眼時表示部や所望表示部として用いてもよい。このように、眼鏡装用者が求める明視域をレンズの明視域と一緒に表示することで、眼鏡の選定をスムーズに行うことができる。
【0058】
更に、本例における「明視域」は、快適明視域であってもよい。また、本例では、表示部を正面から見た形状が細長の長方形の例を説明したが、これに限定されるものではない。表示部の形状を例えば、正方形や横長の長方形でもよいし、任意の形状に形成してもよい。更に、表示部は、本体の上下方向を長手方向とするように配置した例を説明したが、表示部を本体の左右方向に長手方向を有するように配置してもよく、あるいは本体の上下方向に対して傾斜させてもよい。また、本例では、表示窓の形状を矩形に形成した例を説明したが、表示窓の形状を長円や細長の楕円に形成してもよい。
【0059】
図6は、第2の実施の形態例を示す眼鏡レンズ選定用説明補助具1Aを示す正面図である。
図6に示すこの眼鏡レンズ選定用説明補助具1Aは、化粧板3Aの右側、すなわち第5の表示窓25の隣りに、ホワイトボード60を設けている。そして、近用及び近近用の表示部11、12の長手方向の長さを同じに設定している。
【0060】
ホワイトボード60には、例えば裸眼時の明視域や所望の明視域を書き込んだり、目盛を書き込んだりですることができる。これにより、顧客に対してより分かり易くレンズ光学設計の種類の違いについて説明することが可能である。更に、近用及び近近用の表示部を同じ形状にしたため、表示帯等の部材の共有化を図ることができる。
【0061】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる眼鏡レンズ選定用説明補助具1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する眼鏡レンズ選定用説明補助具1Aによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる眼鏡レンズ選定用説明補助具1と同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
2.眼鏡レンズ選定用説明補助具の使用例
次に、上述したような構成を有する眼鏡レンズ選定用説明補助具1の使用方法の一例について図2を参照して説明する。
【0063】
まず、眼鏡装着者である顧客の明視域を確認する。その方法は、必要とする遠用度数を装着して(正視の場合が裸眼で良い)近点距離を測定する。そして、この近点距離から顧客の目の調節力を求める。次に、顧客の目的距離を見出し、各レンズ種の各表示部11〜15の下限側レバー55及び/又は上限側レバー56を操作して、明視域表示領域54の範囲を調整し、顧客の生活習慣に応じたレンズを装着した際の明視域を表示する。これにより、眼鏡を装着した際の明視域を顧客の視覚に訴えることができるため、レンズの明視域を分かり易く説明することができる。
【0064】
また、顧客の生活習慣に応じた眼鏡のレンズだけでなく、他のレンズの眼鏡を装着した際の明視域を表示することで、顧客に対して新たな眼鏡を提案することもできる。
【0065】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態例では、第2の表示部の表示範囲を第3の表示部や第4の表示部の表示範囲よりも狭く設定した例を説明したが、これに限定されるものではなく、第2の表示部の表示範囲を第3の表示部の表示範囲と同じにしてもよい。
【0066】
また、輪状の表示帯を2つの軸部で回転可能に支持させて、表示帯を回転させることで明視域表示領域の範囲を調整した例を説明したが、明視域表示領域の範囲を調整する調整手段は、これに限定されるものではない。例えば、明視域表示領域が記載されたテープを軸部に巻回させて、この軸部からテープを引き出すことで明視域表示領域の範囲を調整してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A…眼鏡レンズ選定用説明補助具、 2…本体、 3…化粧板、 4…第1のスペーサ板、 6…第2のスペーサ板、 7…中間板、 8…背面板、 11…第1の表示部(単焦点レンズ用表示部)、 12…第2の表示部(累進屈折力レンズ用表示部)、 13…第3の表示部(累進屈折力レンズ用表示部)、 14…第4の表示部(累進屈折力レンズ用表示部)、 5…第5の表示部(単焦点レンズ用表示部)、 17…開口部、 21…第1の表示窓、 22…第2の表示窓、 23…第3の表示窓、 24…第4の表示窓、 25…第5の表示窓、 27…目盛、 28…レンズ種類表示部、 29…罫線、 31…第1の軸受部、 32…第2の軸受部、 33…第3の軸受部、 41…下限側表示帯(表示帯)、 42…上限側表示帯(表示帯)、 44…第1の軸部、 45…第2の軸部、 46…第3の軸部、 47…第4の軸部、 50…空白領域、 51…下限側表示領域、 52…上限側表示領域、 54…明視域表示領域、 55…下限側レバー(明視域調整部)、 56…上限側レバー(明視域調整部)、 60…ホワイトボード、 75…明視域可変表示部、 75a…下限側可変表示部、 75b…上限側可変表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の複数の表示窓及び該複数の表示窓の長手方向に沿って形成された目盛を有する化粧板と、
前記複数の表示窓から視認可能に設けられ、複数の種類の眼鏡レンズを装着した際の明視域を示す明視域表示領域を有し、且つ前記明視域表示領域の範囲が前記複数の表示窓の長手方向に沿って変更可能な複数の表示部と、
前記明視域表示領域の範囲を変更する明視域調整部と、を備え、
前記複数の表示部は、複数の種類の累進屈折力レンズを装着した際の明視域をそれぞれ表示する複数の累進屈折力レンズ用表示部を有する
ことを特徴とする眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項2】
前記複数の累進屈折力レンズ用表示部は、
近近累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する近近用表示部と、
中近累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する中近用表示部と、
遠近累進屈折力レンズを装着した際の明視域を表示する遠近用表示部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項3】
前記近近用表示部における前記明視域表示領域の表示可能な範囲は、前記中近用表示部、前記遠近用表示部における前記明視域表示領域の表示可能な範囲よりも狭く設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項4】
前記複数の表示部は、
更に近用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する近用表示部及び/又は遠用単焦点レンズを装着した際の明視域を表示する遠用表示部を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項5】
前記近用表示部における前記明視域表示領域の表示可能な範囲は、前記累進屈折力レンズ用表示部の前記明視域表示領域の表示可能な範囲よりも狭く設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項6】
更に、眼鏡装用者の裸眼時の明視域を表示する裸眼時表示部及び/又は前記眼鏡装用者が所望する明視域を表示する所望表示部を備えた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項7】
前記明視域表示領域は、前記明視域の近点側の下限を表示する下限側表示領域と、
前記明視域の遠点側の上限を表示する上限側表示領域と、を有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項8】
前記化粧板に設けた前記目盛は、書き換え可能である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項9】
前記化粧板は、ホワイトボードからなる部分を有する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。
【請求項10】
前記複数の表示部は、
前記明視域表示領域のうち下限側を示す下限側表示領域を前記表示窓の長手方向に沿って変更可能な下限側可変表示部と、前記明視域表示領域のうち上限側を示す上限側表示領域を前記表示窓の長手方向に沿って変更可能な上限側可変表示部とを有し、
前記下限側可変表示部及び前記上限側可変表示部は、前記表示窓の長手方向に並んで配置されており、
前記複数の表示窓の長手方向に沿って所定の間隔を開けて設けられた2つの軸部と、前記2つの軸部の間に掛け渡されて回転可能に支持された輪からなる表示帯と、から構成されている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の眼鏡レンズ選定用説明補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−107622(P2011−107622A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265298(P2009−265298)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】