説明

着火剤付き線香束

【課題】線香束の先端側に付着させる着火剤の付着仕様に工夫を加え、効率よくかつ確実に着火させると共に先端の線香群を均一に着火できる着火剤付き線香束を提供する。
【解決手段】線香束の一端面に少なくとも中央部を含まず端面の外周縁付近の角部を包むように着火剤を付着させる。この付着仕様は、着火剤を連続状に繋げて周回させ、一端側の線香先端部と一体化させる構成、または外周縁部の一部に着火剤を付着させずに不連続に周回させる構成としても良い。なお、着火剤の付着は、予めその先端面を含む一端側付近に酸化剤を含浸又は塗布した後に行う。着火剤は外周縁部への配置の他、一端面の中央部へ付着させても良く、この場合、中央部の厚さは外周縁部よりも薄くさせる。外周縁部及び中央部へ付着させた場合には、線香束内側又は外側へ通気させた小孔や亀裂を形成することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多数本の線香を束ねた線香束の一端側に着火剤を付着させてなる着火剤付き線香束に関し、特に、その着火剤の付着により着火性を高めた着火剤付き線香束に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、仏壇や墓前に供える線香は、約50〜70本前後を束ねて帯封で固定して販売されている。仏壇等で焼香する場合は、この線香束を解いて一本ずつ、又は2、3本ずつマッチやローソクで点火して使用するが、屋外にある墓前で大量に使用する場合は、束の状態で着火させることは困難であるため、束の結束を解いて、紙や木っ端を燃やして付け火とし、これをもって多数本を同時に点火させていた。
【0003】
しかし、このような多数本を束ねた状態での同時点火は屋外であるため、雨や風の影響でなかなか巧く着火できないことがあり、燃えた紙が飛び火する恐れもあった。
【0004】
また、巧く着火できた場合でも、外周縁部が着火して発火することにより上昇気流が発生して、中央部に酸素が十分に供給されない、いわゆる酸欠状態が発生し、外側に位置した線香のみが早く燃えて、中央部の線香は着火できずに残ってしまうこともあり、多数本を同時に均一に着火させることは難しいものであった。
【0005】
さらに、肝心のマッチやライターを忘れてきたり、手近に付け火に使えるような紙や木っ端が見つからなかったりして、点火に手間取ることも多々あった。
【0006】
これらを考慮して、束ねた線香の先端部に着火剤を付加して点火を容易にした線香や線香束の技術的思想は、従来から何件か開示されている。
【0007】
例えば、特許文献1に開示されている考案「線香」は、束状の線香の上端に着火剤を設けて着火部を形成する構成を特徴とするものである。このように線香の先端部に引火性や燃焼促進性のある化学剤を付着させたり、含浸させたりする構成のものとしては、他に特許文献2の「着火し易い線香類及びその製造方法並びに線香着火剤」や特許文献3の「着火剤付着線香」があった。
【0008】
しかし、これらの特許文献1〜3の開示技術においても、先端部を同時に点火することを配慮してはいるが、着火剤の配置は先端面に均一であるため、実際の使用においてはやはり上記した中央部が着火し難いという問題が解決してはいなかった。
【0009】
また、線香束の先端部の均一な着火を目的として、線香束の端面の形態や着火剤の配設に工夫を凝らしたものとしては、例えば、特許文献4や特許文献5として開示されている。特許文献4に開示されている「線香束」は、束ねた線香束の一端面の中央部を突出させ、その突出面に着火剤を設けた構成をとったものである。
【0010】
しかし、かかる構成の線香束は、中央部を所定量突出させて、その僅かに突出させた部分のみに着火剤を付着させるという煩雑な作業が要求されるため、作業性が悪く製造コストの上昇を招いていた。また、着火剤の付着部分が突出しているため搬送時や包装時に擦れて着火剤が脱落する恐れもあり、実現性に乏しいものであった。
【0011】
さらにまた、特許文献5に開示されている「易着火性線香及びその束」の構成は、線香の一端を先細り状に形成し、その先細り状部に着火剤を含浸させて成るものである。この発明は、先細り状部を揃えて多数本を纏めて束状に形成し、その束の先細り状部に火をかざすとすぐに着火温度になって容易に着火し、かつ各先端部間のすきまにより酸素が供給され、悪条件下でも線香束の先端部にむらなく火を付けることを目的としたものである。
【0012】
しかしながら、かかる構成においては、線香の先端を鋭利に加工する煩雑な工程が必要であることに加え、線香は一般に脆い材質であるためその先端部が欠け易く着火剤が脱落する問題があり、やはり実現性の乏しいものであった。
【特許文献1】実開平07−40741(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−38330(第1−2頁、図1)
【特許文献3】特開2003−52526(第2頁、図1)
【特許文献4】実開平02−22333(第1頁、図1)
【特許文献5】実開平07−19337(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記列挙した特許文献の各開示技術には、特許文献1〜3においては、線香束の一端面部への着火剤付着により着火性を向上させるものではあるが、中央部が着火し難いという問題があった。また、特許文献4、5においては、線香束の一端面側の線香束や線香自体に特定の加工を施すものであるために、付加加工によるコストアップと先端部の保形性に課題があった。
【0014】
そこで、本願発明はこれら課題に着目してなされたもので、線香束の先端側の線香自体には何らの加工を加えることなく、着火剤の付着仕様に工夫を加えることによって、少量の着火剤で効率よくかつ確実に着火させると共に、束にした状態でも先端に位置する線香群の各先端を均一に着火させることを目的とした着火剤付き線香束を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本願発明にかかる着火剤付き線香束は、以下のように構成している。
【0016】
まず、基本的な本願発明の構成は、多数の線香を束ねた線香束の一端面の外周縁部を囲むように、着火剤を付着させたことを特徴としている。外周縁部を囲むように着火剤を付着させるとは、少なくとも中央部を含まず端面の外周縁付近の角部を包むように付着させることである。その付着においては、着火剤を連続状に繋げて周回させることによって当該一端側の線香先端部を分離できないように一体化させる構成としても良く、または連続させずに外周縁部の一部に着火剤を付着させないで周回状に所々付着させる不連続状に構成しても良い。着火剤の付着においては、予めその先端面を含む一端側付近に酸化剤を含浸又は塗布した後に、着火剤の付着を行うことが好ましいものである。
【0017】
また、着火剤は外周縁部への配置の他、その端面の中央部へも付着させるようにしても良い。この場合、中央部へ付着させた着火剤の厚さは外周縁部の厚さよりも薄く付着させるようにするのが好適である。
【0018】
さらに、上記したように外周縁部又は選択的に行う中央部へ付着させた着火剤には、線香束の内側又は外側へ通気させた小孔や亀裂を形成する構成としても良い。
【発明の効果】
【0019】
本願発明は上記のように構成しているため、以下の効果を奏する。
着火剤の付着において、特に、線香束の一端面の外周縁部を囲むように着火剤を付着させているため、着火が確実であると共に、中央部付近は着火剤で塞がれていないため、線香束の内部から空気が中央部に向かって流入し、線香への延焼がスムーズに行われる効果がある。特に、予め酸化剤を塗布している場合は、延焼がよりスムーズに行われる効果を奏する。
【0020】
また、中央部に薄く着火剤を付着させた場合は、着火がスムーズになると共に、周縁部より早く着火剤が燃え尽きて、着火剤による中央部の閉塞が解かれ、空気の流入が速やかに行われる効果を有する。一見、着火剤がある方が点火し易いように思われるが、周縁部が先に着火して発火することにより、外周縁に上昇気流が発生して、中央部付近に空気が流入しない、いわゆる酸欠状態になっていた。このため、中央部はなかなか着火し難い状態になっていた。
【0021】
そこで、着火剤の付着面に通気性を有する小孔や亀裂を形成することにより、線香束の内側や外側から空気が端面中央部へ流入し、外周縁部とほぼ同時に中央部の着火が起き、線香束の先端群を均一に着火させる効果を奏することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明にかかる着火剤付き線香束(以下、「本線香束」と称する。)の具体的実施形態例について、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は本線香束の全体外観を示す斜視図であり、図2は本線香束の着火剤付着の他の構成を示す一部拡大斜視図であり、図3、4は本線香束の着火剤付着のさらに他の構成を示す一部拡大断面斜視図であり、図5は本線香束の着火方法の一例を示す斜視図である。
【0024】
本線香束1は、約60〜70本前後の線香10を一纏めにし、その胴部分の適宜の箇所(例えば、他端側付近の1箇所または両端付近の2箇所)を紙などの帯封11で結束したものである。
【0025】
本線香束1の一端側(図面では、上端)12の端面側には着火剤2を付着させている。この着火剤2の付着仕様は、端面の縁部の角部を包むようにして外周縁部12eを連続して囲むようにして付着させている。その中央部12cには着火剤2を付着させていない。この着火剤2の材質としては、例えば、既存の安全マッチにおける軸木の頭部に付着させた頭薬(例えば、塩素酸カリウム・二酸化マンガン・硫黄など)と同様なものを用いている。これと、マッチ箱の側面などに配設されている側薬(例えば、赤燐・硫化アンチモンなど)との擦り合わせることにより、摩擦熱により発火させるものである。また、着火剤2は遅燃性を考慮して黒色火薬にしても良い。
【0026】
着火剤2の製造においては、着火剤2を付着させる前に、本線香束1の一端側を酸化剤3(例えば、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、等の無機過酸化物)の液体に含浸又は塗布した後に液体化した着火剤2を付着して、乾燥固形化する手法をとっている。
【0027】
この着火剤2の付着は、図1に示すように、外周縁の角部を連続的に、別言すると、リング状に付着しているが、図2に示すように不連続状態に付着しても良い。
【0028】
かかる構成にすることにより、着火剤2が節約できると共に、着火剤2が切れている部分から空気が導入されて、より中央部に酸素が供給され易くなる利点がある。また、本線香束1の一束全部への着火を必要としない場合は、適宜、小分けして使用することができる効果も期待できる。
【0029】
また、上記の他に、別な着火剤2の付着仕様としては、外周縁部12eのみの付着の他に中央部12cへも着火剤2を付着させるようにしても良い。この場合、中央部12cの付着厚さは、図3に示すように、外周縁部12eより薄くするのが好ましい。そして、この場合、図4に示すように、着火剤2の表面に通気性を持った多数の小孔21や亀裂22を形成することがより好ましい構成である。これにより、束ねただけで着火剤2の付着が無い束内側と通気性があるため、本線香束1の内部から端面へ空気が流入し、より燃焼し易くなる効果がある。そして、多数の小孔21や亀裂22が本線香束1の外側まで通じている場合は、より空気の流入がし易くなる。併せて、上記した着火剤2の不連続付着仕様と同様に、亀裂22を目安に本線香束1を縦割りして、それぞれに着火剤2を付着させたままの状態で小分けした束とすることができる効果も期待できる。
【0030】
以上のように構成した本線香束1は、図5にその例を示すにように、図示しない保護袋や収納ケースから取り出して、着火剤2を付着させた側を前方にして基部を把持する。そして、この状態で本線香束1の着火剤2を適宜な擦り紙4の面と擦り合わせて、発火させる。この擦り紙4は通称のマッチ箱の側面にある擦り面で代用可能である。また、これが無い場合は、ライターやローソクの炎で発火させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本線香束の全体外観を示す斜視図である。
【図2】本線香束の着火剤付着の他の構成を示す一部拡大斜視図である。
【図3】本線香束の着火剤付着のさらに他の構成を示す一部拡大断面斜視図である。
【図4】本線香束の着火剤付着のさらに他の構成を示す一部拡大断面斜視図である。
【図5】本線香束の着火方法の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 本線香束
10 線香
11 帯封
12 一端側
12c 中央部
12e 外周縁部
2 着火剤
21 小孔
22 亀裂
3 酸化剤
4 擦り紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の線香を束ねた線香束の一端面の外周縁部を囲むように、着火剤を付着させたことを特徴とする着火剤付き線香束。
【請求項2】
線香束の一端面を含む一端側に酸化剤を含浸又は塗布させた部分に、着火剤を付着させたこと特徴とする請求項1記載の着火剤付き線香束。
【請求項3】
着火剤を連続状に、又は不連続状に付着させたことを特徴とする請求項1、又は2記載の着火剤付き線香束。
【請求項4】
着火剤を付着させた端面の中央部に、その外周縁部より薄い厚さに着火剤を付着させたことを特徴とする請求項1、2、又は3記載の着火剤付き線香束。
【請求項5】
付着させた着火剤に、線香束の内側と外側の何れか又は両方へ通気した小孔と亀裂の何れかを、又は両方を形成したことを特徴とする請求項1、2、3、又は4記載の着火剤付き線香束。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−273903(P2008−273903A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121753(P2007−121753)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【特許番号】特許第4104643号(P4104643)
【特許公報発行日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(506350171)
【Fターム(参考)】