説明

着用物品

【課題】離隔シートと着用者の肌との間に隙間が生じるのを防止することができる着用物品を提供する。
【解決手段】おむつ1は、シャーシ10と、シャーシ10の身体側に位置する吸液構造体20と、離隔シート30と、一対の漏れバリアカフ40とを含む。離隔シート30の前後端縁31,32は、前後ウエスト域11,12において身体側ライナ22に接合され、それ以外の部分では、ライナ22から離間可能にされている。離隔シート30には、中間部分34を介して離間される前後連通部35,36が形成され、縦方向Yに延びる離隔シート弾性体38が取り付けられている。離隔シート弾性体38が収縮すると、離隔シート30が吸液構造体20から離間して、これらの間には空間が形成され、離隔シート30と吸液構造体20との間には、空間を前後に仕切る仕切りシート70が形成されている。仕切りシート70の他端72には、可変形部材80が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用物品に関し、さらに詳しくは使い捨てのおむつ、排泄トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てのおむつにおいて、便および尿を通過させる開口部が形成されたシートをトップシートの上にさらに有するものが公知である。例えば、特開2007−105298号公報(特許文献1)によれば、おむつはトップシートと、バックシートと、これらシート間に位置する吸収体と、トップシートの上部に配置されるスキンコンタクトシートとを有している。スキンコンタクトシートには、便通過用開口部と尿通過用開口部とを形成し、これら開口部間には中央領域が形成されている。スキンコンタクトシートには開口部伸縮材が伸長状態で取り付けられ、この開口部伸縮材の収縮力によってスキンコンタクトシートがトップシートから離間して、着用者の肌に接触するようにしている。スキンコンタクトシートを着用者の肌に接触させることによって、着用者に便等が付着するのを防止している。
【特許文献1】特開2007−105298号公報(JP2007−105298 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スキンコンタクトシートは、平面的に着用者の肌に接触するので、これらスキンコンタクトシートと曲線を有する着用者の肌との間にはどうしても隙間が生じてしまう。隙間を介してスキンコンタクトシート上に排泄物が載置された場合には、排泄物の重さでスキンコンタクトシートが押し下げられ、着用者の肌との離間距離をより大きくしてしまう。また、スキンコンタクトシート上の排泄物は、便通過用開口部または尿通過用開口部のいずれに流入するか確定されず、所望の開口部に流入されない可能性がある。この場合には、尿便分離の機能を発揮することができない。
【0004】
この発明は、離隔シートと着用者の肌との間に隙間が生じるのを防止することができる着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記シャーシから離間可能に形成された離隔シートとを含む着用物品の改良に関わる。
【0006】
この発明は、前記着用物品において、前記離隔シートは、前記シャーシの前記前後ウエスト域に接合される前後端縁と、前記縦方向に離間して形成され前記離隔シートの身体側およびその反対側を連通させる前後連通部と、前記前後連通部の前記横方向外側に位置する両側部分と、前記両側部分の間に連なるとともに前記前後連通部の間に形成された中間部分と、前記離隔シートを前記縦方向に弾性化する離隔シート弾性体と、前記中間部分に対して前記厚さ方向への可撓性を付与する可変形手段とを含み、前記中間部分が前記身体に沿って変形可能とされることを特徴とする。
【0007】
この発明の好ましい実施態様のひとつとして、前記可変形手段は、前記中間部分の前記身体側およびその反対側の少なくともいずれか一方に位置し、前記横方向外側からの押圧によって変形可能な可変形部材を含む。
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記可変形手段は、前記離隔シート弾性体と、前記離隔シート弾性体を前記離隔シートに直接または間接的に接合する第1接合部とを含み、前記第1接合部は、前記縦方向に間欠的に複数形成される。
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記離隔シートは、前記身体側に位置する第1シートと、前記反対側に位置する第2シートとを含み、前記離隔シート弾性体は、前記第1および第2シート間に取り付けられ、前記第1接合部は、前記離隔シート弾性体と前記第1および第2シートの少なくともいずれか一方との間に形成される。
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記可変形手段は、前記離隔シートの身体側に位置する可変形シートと、前記離隔シートおよび前記可変形シートを接合する第2接合部とを含み、前記第2接合部は、前記縦方向において間欠的に複数形成される。
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記離隔シートと前記吸液構造体との間には、前記離隔シートの離間によって空間が形成されるとともに、前記空間を前記縦方向に仕切る仕切りシートが形成される。
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記可変形部材は、前記仕切りシートで覆われるとともに、前記仕切りシートを介して前記離隔シートに接合される。
【発明の効果】
【0008】
この発明において、離隔シートの両側部分の間に連なる中間部分に、中間部分に厚さ方向への可撓性を付与する可変形手段を形成することとした。可変形手段によって、離隔シートと着用者の身体との空隙を解消することができるので、排泄物が離隔シート上に排泄されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のおむつの斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1の展開平面図。
【図4】図3の分解組立図。
【図5】図3の部分図。
【図6】図3のVI−VI線断面図。
【図7】図6に対応する説明図。
【図8】第2の実施形態の部分斜視図。
【図9】第2の実施形態の図6と同様の図。
【図10】第3の実施形態の一部平面図。
【図11】図10のXI−XI線断面図。
【図12】図11に対応する説明図。
【図13】第4の実施形態の一部平面図。
【図14】第5の実施形態の部分破断平面図。
【図15】図14のXV−XV線断面の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
着用物品として使い捨ておむつを用い、本発明の一例を説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1〜7は本発明の第1の実施形態を示したものである。図1はおむつ1のウエスト開口およびレッグ開口が環状に保たれた状態の斜視図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1の展開平面図であっておむつ1の各弾性体をその収縮力に抗して伸長させ、おむつ1を平面に保った状態を示した図、図4は図3の分解組立図、図5は図3の部分図であって各弾性体が収縮したときの図、図6は図3のVI−VI線断面図、図7は着用時における説明図である。なお、以下の説明において、「身体側」、「着衣側」とは、着用物品の着用時における位置を意味する。
【0012】
おむつ1は、シャーシ10と、シャーシ10の身体側に位置する吸液構造体20と、さらに着用時に吸液構造体から身体側へ離間する離隔シート30と、一対の漏れバリアカフ40とを含む。
【0013】
シャーシ10は、前ウエスト域11、後ウエスト域12および前記前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13を有する。前ウエスト域11からクロッチ域13を通って後ウエスト域12へと向かう方向を縦方向Yとし、これに直交する方向を横方向Xとしている。おむつ1は、シャーシ10の横方向Xの長さ寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pと、縦方向Yの長さ寸法を二等分する仮想横中心線Q−Qとを有し、仮想縦中心線P−Pに対してほぼ対称に形成されている。
【0014】
図3に示したように、シャーシ10は、それぞれ縦方向Yに延びるとともに前ウエスト域11に位置する前ウエスト側縁14と、後ウエスト域12に位置する後ウエスト側縁15と、縦方向Yに斜めに交差する方向へほぼV字形に延びるとともにクロッチ域13に位置するクロッチ側縁16とを有し、前後ウエスト域14,15を互いに接合することによって、図1に示したパンツ形状を形成している。シャーシ10は、着用者の身体側に位置する内面シート17と、その反対側である着衣側に位置する外面シート18と、これら内外面シート17,18の間に位置する漏れ防止シート19とを含む。内外面シート17,18は、通気性かつ疎水性の不織布等で形成され、吸液構造体20の少なくとも底部を覆う漏れ防止シート19を介して互いに接合されている。
【0015】
内外面シート17,18の間には、前後ウエスト弾性体51,52と、前後レッグ弾性体53,54とが取り付けられている。図4に示したように、前後ウエスト弾性体51,52は、前後ウエスト域11,12にそれぞれ位置し、複数本の弾性糸が縦方向Yに離間して、横方向Xに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。これら前後ウエスト弾性体51,52は、それらの一部が、吸液構造体20に重なっている。前後ウエスト弾性体51,52が、吸液構造体20に重なって取り付けられることによって、吸液構造体20を身体側に密着させることができ、尿漏れ等を防止可能である。
【0016】
前レッグ弾性体53は、前ウエスト側縁14からクロッチ側縁16に向かって延びるとともに、これらクロッチ側縁16に沿って伸長状態で収縮可能に取り付けられ、横方向Xにおいて離間されている。後レッグ弾性体54は、後ウエスト側縁15からクロッチ側縁16に向かって延びるとともに、一方の側縁16から他方の側縁16に向かって仮想縦中心線P−Pを横断して横方向Xに連続して取り付けられている。後レッグ弾性体54の横方向Xに連続している部分は、仮想横中心線Q−Qの近傍であって、これよりも前ウエスト域11側において、横方向Xに延びている。このような後レッグ弾性体54によってクロッチ域13が横方向Xに収縮されると、後レッグ弾性体54の後ウエスト域12側で、ポケット55が形成される。ポケット55では、特に便を捕集することによって、これが肌に付着したり、漏れたりするのを防止することができる(図1および図2参照)。
【0017】
吸液構造体20は、ティッシュペーパ等の吸液拡散シートで包まれる吸液性芯材21と、吸液性芯材を覆う身体側ライナ22とを含む。吸液構造体20は、クロッチ域13から縦方向Yに延びるとともに、その底面側が内面シート17に接合されている。
【0018】
離隔シート30は、横方向Xに延びる前後端縁31,32と、縦方向Yに延びる両側縁33とを有し、前後端縁31,32は、前後ウエスト域11,12において吸液構造体20の身体側ライナ22に接合されている。前後端縁31,32以外の部分では、身体側ライナ22に接合されることなく、ライナ22から離間可能にされている。離隔シート30は、縦方向Yに中間部分34を介して離間される前後連通部35,36が形成されている。中間部分34は、両側縁33を有する両側部分37の間に連なって形成されている。前後連通部35,36は、前後端縁31,32において開口し、中間部分34において閉口し、全体としてほぼU字形に形成されている。これら前後連通部35,36を介して、身体側と吸液構造体20側とが連通されている。
【0019】
離隔シート30は、身体側に位置する第1シート30aと、その反対側である着衣側に位置する第2シート30bとを含み、これら第1および第2シート30a,30b間において、縦方向Yに延びる離隔シート弾性体38が取り付けられている。離隔シート弾性体38は、前端縁31から中間部分34を介して後端縁32へと延び、中間部分34においては、仮想縦中心線P−Pに向かって互いの離間距離を小さくするように湾曲されている。離隔シート弾性体38は、第1および第2シート30a,30bの少なくともいずれか一方に接合され、伸長状態で収縮可能に取り付けられている。
【0020】
図5は、おむつ1のシャーシ10を省略し、各弾性体が収縮した状態を示したものである。図5および6に示したように、離隔シート弾性体38が収縮すると、離隔シート30が吸液構造体20から離間して、これらの間には空間60が形成される。離隔シート30と吸液構造体20との間には、空間60を前後に仕切る仕切りシート70が形成されている。仕切りシート70は、一端71が吸液構造体20の身体側ライナ22に接合され、他端72が中間部分34の着衣側に接合されている。仕切りシート70は、横方向Xの長さ寸法が離隔シート30の同方向の長さ寸法とほぼ等しくされているので、離隔シート30が吸液構造体20から離間された場合には、空間60を前後に仕切ることができる。
【0021】
仕切りシート70の他端72には、本発明における可変形手段としての可変形部材80が形成されている。可変形部材80は、複数枚の繊維不織布の積層体を含み、仕切りシート70で積層体を包むことによって形成されている。可変形部材80の横方向Xの長さ寸法は、仕切りシート70の同方向の長さ寸法とほぼ等しくされている。このような可変形部材80は、離隔シート30よりも剛性が高く、離隔シート30の特に中間部分34が、吸液構造体20側へと妄りに落ち込むのを防止することができる。また、可変形部材80は、繊維不織布の積層体を有することによって、それ自体が可撓性を有し、変形可能とされている。可変形部材80を中間部分34に接合することによって、中間部分34にも可撓性を付与することができ、可変形部材80に追従して変形可能とすることができる。また、可変形部材80を構成する繊維不織布を透液性とすることによって、可変形部材80全体を透液性とすることができる。
【0022】
漏れバリアカフ40は、横方向Xに離間して一対形成され、吸液構造体20の外側に接合されるカフ近位縁41と、吸液構造体20の身体側に位置するカフ遠位縁42と、縦方向Y前後に位置するカフ前後端縁43,44とを有する。カフ遠位縁42では、カフ前後端縁43,44の近傍のみが吸液構造体20に接合され、他の部分では接合されることなく、吸液構造体20から離間可能とされている。カフ遠位縁42には、カフ弾性体45が取り付けられている。カフ弾性体45は、縦方向Yに延びるとともに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。
カフ弾性体45が収縮すると、吸液構造体20と接合されていないカフ遠位縁42が、起立するように吸液構造体20から離間して、尿等の排泄物が漏れ防止カフ40の横方向X外側に漏れるのを防止することができる。
【0023】
図7は、図6の状態からおむつ1を着用した状態を示した図であり、着用者の股部を鎖線で示している。図示したように、離隔シート30が吸液構造体20から離間して、その中間部分34が着用者の股下に当接する。中間部分34の着衣側には可変形部材80が横方向Xに延びているから、この可変形部材80が着用者の大腿部によって横方向X内側へと押し付けられる。押し付けられた可変形部材80は、撓んで身体側へと隆起し、中間部分34を身体へと密着させることができる。すなわち、中間部分34を身体側へと押し付けることによって、身体の曲線に沿って中間部分34を変形させ、これを着用者の身体に密着させて、隙間が生じるのを防止することができる。着用者の身体と離隔シート30との間に隙間が生じないので、排泄された尿は前連通部35を介して空間60に流入され、便は後連通部36を介して空間60に流入される。排泄物が離隔シート30上に排泄されることなく、確実に前後連通部35,36に排泄されるので、離隔シート30が着用者の肌から離れてしまうのを防止することができる。離隔シート30が、着用者の肌に密着することによって、空間60に流入された排泄物が肌に付着するのを防止することができる。
【0024】
空間60は、仕切りシート70によって前後に仕切られているので、前後連通部35,36を介して空間60に流入した尿および便を分離することができる。
可変形部材80は、仕切りシート70によって包まれ、仕切りシート70を介して中間部分34に接合されているので、他の部材で別途包んで接合する場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、製造コストの増大を抑制することができる。ただし、必ずしも可変形部材80は仕切りシート70を介して中間部分34に接合される必要はなく、可変形部材80のみで中間部分34に接合されていてもよい。この実施形態において、可変形部材80が変形手段を構成している。
【0025】
可変形部材80が中間部分34に接合される際、その横方向Xの全面で接合されてもよいし、間欠的に接合されてもよい。全面で接合された場合であって、ホットメルト接着剤を使用した場合には、接合部分を撥水性とすることができ、そこに尿が留まるのを防止することができる。また、間欠的に接合された場合には、接合部分の剛性がその他の部分よりも高くなり、これら剛性差によって可変形部材80を身体側に向かって折れ曲がりやすくすることができる。
【0026】
可変形部材80は、離隔シート30の着衣側、すなわち離隔シート30と吸液構造体20との間に形成されているが、離隔シート30の身体側に形成されるようにしてもよい。この場合には、可変形部材80が直接身体に密着することによって、結果的に離隔シート30との隙間を解消することができる。また、離隔シート30の第1および第2シート30a,30bの間に可変形部材80を形成することとしてもよい。
可変形部材80は、中間部分34に対して完全に一致して重なるように形成されているが、前後連通部35,36へと延出してもよい。ただし、可変形部材80が着用者の肛門を塞ぐことは好ましくないので、少なくとも肛門とは重ならないように取り付けることの望ましい。可変形部材80の横方向Xの長さ寸法は、仕切りシート70の同方向の長さ寸法とほぼ等しくしているが、これよりも短くてもよい。ただし、中間部分34の横方向Xの長さ寸法よりも長いほうが、横方向X外側からの押圧を受けやすく、身体側に向かって隆起しやすいので好ましい。
【0027】
可変形部材80には、仮想縦中心P−Pに沿って折曲誘導部を形成することもできる。折曲誘導部としては、例えば、可変形部材80の身体側またはその反対側に、加熱加圧処理によって凹部を形成することができる。凹部を形成することによって、折曲誘導部が薄くなり折れ曲がりやすくなる。また、加熱加圧処理によって剛性が大きくなり、周囲との剛性差によって折れ曲がりやすくなるということもある。可変形部材80としては、繊維不織布の積層体のほか、可撓性を有する発泡性ウレタン等を用いることができる。
【0028】
<第2の実施形態>
図8および9は、本発明の第2の実施形態を示したものである。図8は離隔シート30と本発明の可変形手段としての可変形部材81との斜視図、図9は図6と同様の図であって、この第2の実施形態のおむつ1の断面図である。この実施形態では、可変形部材を離隔シート30の身体側に形成したことを特徴とするものであり、他の構成要素は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0029】
離隔シート30の身体側には、発泡性ウレタン等の柔軟性発泡材料によって形成された可変形部材81を接合している。可変形部材81は、中間部分34に取り付けられ、仮想縦中心線P−Pにおいて最も厚さ寸法が大きくされ、身体側に向かって先細りに形成された先端81aと、中間部分34に取り付けられる底面81bとを有している。先端81aは、身体側に向かって湾曲し弧を画いている。
【0030】
このようなおむつ1において、その着用時には、可変形部材81の先端81aが着用者の臀列部に入り込み、さらに、両臀部によって横方向Xに押し付けられて、可変形部材81の全体が着用者の体に沿って変形し、密着する。可変形部材81が着用者に密着することによって、排泄物が確実に前後連通部35,36に流入される。ただし、可変形部材81は、着用者の肛門よりも前方に位置し、肛門を塞がないようにしている。
また、離隔シート30の身体側に可変形部材81を形成しているので、着用者の身体には可変形部材81が接触し、離隔シート30は直接身体に接触しないので、この離隔シート30による肌への刺激を低減することができる。
【0031】
この実施形態において、可変形部材81が変形手段を構成している。
可変形部材81として、発泡性ウレタン等の柔軟性発泡材料を用いているが、繊維不織布の集合体等、他の可撓性の部材を用いることができる。
【0032】
<第3の実施形態>
図10〜12は、本発明の第3の実施形態を示したものである。図10は離隔シート30の平面図であって、その一部を破断させたもの、図11は図10のXI−XI線断面図、図12は離隔シート弾性体38が収縮したときの説明図である。この実施形態では、可変形手段としての離隔シート弾性体38と、第1および第2シート30a,30b間に位置する第1接合部82とを含むことを特徴とするものであり、他の構成要素は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0033】
離隔シート弾性体38は、離隔シート30の第1シート30aおよび第2シート30bの間に伸長状態で収縮可能に取り付けられている。離隔シート弾性体38は、中間部分34の近傍においては、仮想縦中心線P−Pに向かって離間距離を縮めるように湾曲している。このように湾曲した部分において、第1および第2シート30a,30bおよび離隔シート弾性体38を互いに接合する第1接合部82を形成している。第1接合部82は、ホットメルト接着剤等の接着手段によって構成されている。
【0034】
第1接合部82は、縦方向Yに離間して複数形成されるとともに、離隔シート弾性体38を横方向Xに横切って延びている。したがって、第1接合部82によって、第1および第2シート30a,30bと、離隔シート弾性体38とが互いに接合される。第1および第2シート30a,30bは、少なくとも中間部分34近傍では、第1接合部82以外の接合手段で接合されることはなく、互いに離間可能とされている。
【0035】
図11は、離隔シート弾性体38を収縮させない状態を示したものであり、図12は、離隔シート弾性体38が収縮した状態を示したものである。離隔シート弾性体38が収縮すると、第1接合部82以外の部分において、第1および第2シート30a,30bが撓んで、それらの対向面とは反対側に突出するように皺を形成する。皺が形成されることによって、離隔シート30の中間部分34においては、厚さ方向の嵩高が大きくなり、その分、着用者との隙間を減少させることができる。また、第1および第2シート30a,30bを繊維不織布等の柔軟なシートで形成することによって、皺は着用者の体のラインに沿って密着することが可能であり、かつ、着用者の肌に対する刺激を抑えることができる。また、皺は、横方向Xに複数延びるので、排泄物の縦方向Yへの流動を規制することができ、尿便分離の機能を発揮することができる。
【0036】
離隔シート弾性体38が湾曲する中央部分34において、これを第1および第2シート30a,30bに対して接合する第1接合部82を形成することによって、離隔シート弾性体38を確実に固定することができ、この弾性体の抜けや位置ずれを防止することができる。
第1接合部82は、第1および第2シート30a,30bを少なくとも中間部分34において縦方向Yに間欠的に接合するものであればよいので、離隔シート弾性体38に重なって形成される必要はない。ただし、離隔シート弾性体38の抜けや位置ずれを防止するためには、これに重なって形成されることが好ましい。位置ずれの防止が達成できるものとして、例えば、第1接合部82が、離隔シート弾性体38の横方向X近傍に形成されるものであればよい。この実施形態では、中間部分34において離隔シート弾性体38が伸長状態で仮想縦中心線P−Pへと湾曲されているので、少なくとも、離隔シート弾性体38の横方向X外側に第1接合部82が形成されることによって、位置ずれを防止することができる。
【0037】
<第4の実施形態>
図13は、本発明の第4の実施形態を示したものである。図13は離隔シート30の平面図であって、その一部を破断させている。この実施形態では、変形手段として離隔シート弾性体38と、第1および第2シート30a,30b間に位置する第1接合部83とを含むことを特徴とするものであり、他の構成要素は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0038】
第1接合部83は、離隔シート30の中央部分34近傍に形成されるものであって、例えば加熱加圧処理によって第1および第2シート30a,30bを互いに溶着させることによって形成されるものである。このような第1接合部83は、離隔シート弾性体38の横方向X両側に位置するものを一対として形成されるものであって、これら対が縦方向Yに離間して複数形成されている。
【0039】
上記のように第1接合部83を形成することによって、図12に示したのと同様に、離隔シート弾性体38の収縮によって、第1および第2シート30a,30bに皺が形成される。皺が形成されることによって、着用時における着用者と隙間を解消することができる。
また、第1接合部83を点状に形成することができるので、第1接合部83の形成によって第1および第2シート30a,30bの剛性が大きくなった場合であっても、肌への刺激を抑制することができる。第1接合部83を離隔シート弾性体38の横方向X両側に形成することとしたので、離隔シート弾性体38の横方向Xにおける位置ずれを防止することができる。
【0040】
この実施形態において、第1接合部83を離隔シート弾性体38の横方向X両側に形成することとしているが、少なくともその外側にあればよい。また、離隔シート弾性体38を介して横方向Xに並ぶ2つの第1接合部83を一組の対として説明しているが、必ずしも対をなしている必要はなく、2つの接合部が縦方向Yにずれているような場合であってもよい。
【0041】
<第5の実施形態>
図14および15は、本発明の第5の実施形態を示したものである。図14は離隔シート30の部分破断平面図、図15は離隔シート弾性体38の収縮時における図14のXV−XV線断面図である。この実施形態では、可変形手段としての可変形シート90と、離隔シート30および可変形シート90間に位置する第2接合部84と、離隔シート弾性体38とを含むことを特徴とするものであり、他の構成要素は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0042】
離隔シート30の第1シート30aの身体側には、一対の可変形シート90を第2接合部84を介して接合している。可変形シート90は、透液性の繊維不織布等を用いることができ、中間部分34の近傍であって、離隔シート弾性体38と重なる位置において形成されている。第2接合部84は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着手段によって形成されている。第2接合部84は、可変形シート90の全域であって、横方向Xに延びるとともに、縦方向Yに離間して形成されている。
【0043】
上記のような構成において、離隔シート弾性体38が収縮すると、可変形シート90が撓んで、第2接合部84の間では、身体側に向かって突出するように皺が形成される。皺が形成されることによって、着用時における着用者との隙間を解消することができる。
第1および第2シート30a,30bとは別部材の可変形シート90を備えることとしているので、第1および第2シート30a,30bはそれらの全域で互いに接合されるようにすることができ、これら両シートを強固に接合することができる。また、強固な接合によって第1および第2シート30a,30bの間に取り付けた離隔シート弾性体38の抜けや位置ずれを防止することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 おむつ(着用物品)
10 シャーシ
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
30 離隔シート
30a 第1シート
30b 第2シート
31 前端縁
32 後端縁
34 中間部分
35 前連通部
36 後連通部
37 両側部分
38 離隔シート弾性体
70 仕切りシート
80 可変形部材
81 可変形部材
82 第1接合部
83 第1接合部
84 第2接合部
90 可変形シート
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向、横方向および厚さ方向と、身体側およびその反対側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記シャーシから離間可能に形成された離隔シートとを含む着用物品において、
前記離隔シートは、前記シャーシの前記前後ウエスト域に接合される前後端縁と、前記縦方向に離間して形成され前記離隔シートの身体側およびその反対側を連通させる前後連通部と、前記前後連通部の前記横方向外側に位置する両側部分と、前記両側部分の間に連なるとともに前記前後連通部の間に形成された中間部分と、前記離隔シートを前記縦方向に弾性化する離隔シート弾性体と、前記中間部分に対して前記厚さ方向への可撓性を付与する可変形手段とを含み、前記中間部分が前記身体に沿って変形可能とされることを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記可変形手段は、前記中間部分の前記身体側およびその反対側の少なくともいずれか一方に位置し、前記横方向外側からの押圧によって変形可能な可変形部材を含む請求項1記載の着用物品。
【請求項3】
前記可変形手段は、前記離隔シート弾性体と、前記離隔シート弾性体を前記離隔シートに直接または間接的に接合する第1接合部とを含み、前記第1接合部は、前記縦方向に間欠的に複数形成される請求項1記載の着用物品。
【請求項4】
前記離隔シートは、前記身体側に位置する第1シートと、前記反対側に位置する第2シートとを含み、前記離隔シート弾性体は、前記第1および第2シート間に取り付けられ、
前記第1接合部は、前記離隔シート弾性体と前記第1および第2シートの少なくともいずれか一方との間に形成される請求項3記載の着用物品。
【請求項5】
前記可変形手段は、前記離隔シートの身体側に位置する可変形シートと、前記離隔シートおよび前記可変形シートを接合する第2接合部とを含み、前記第2接合部は、前記縦方向において間欠的に複数形成される請求項1記載の着用物品。
【請求項6】
前記離隔シートと前記吸液構造体との間には、前記離隔シートの離間によって空間が形成されるとともに、前記空間を前記縦方向に仕切る仕切りシートが形成される請求項1〜5記載のいずれかに記載の着用物品。
【請求項7】
前記可変形部材は、前記仕切りシートで覆われるとともに、前記仕切りシートを介して前記離隔シートに接合される請求項6記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−264134(P2010−264134A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119270(P2009−119270)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】