説明

着色コンクリート構造物の製造方法、および着色コンクリート構造物

【課題】 着色され、且つ着色した壁面が剥がれることがないコンクリート構造物を、色ムラ無く簡易に製造する方法を提供する。
【解決手段】 着色されたコンクリート構造物を製造する方法であって、着色材料はセメント中に均等に分散されており、この着色材料が分散されたセメントを、水及び骨材の少なくとも何れかと混練する工程を含むことを特徴とする着色コンクリート構造物の製造方法を提供し、さらにこの製造方法を実施する為に、無機質粉末に対して着色材料が均等に混ぜ合わさっているセメントを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色コンクリート構造物とその製造方法に関する。より具体的には、色ムラなく着色したコンクリート構造物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物は、セメント、骨材および水を混ぜ合わせて硬化させることにより製造されており、これを着色する場合には、その表面にペンキなどの塗料や顔料を塗っていた。
【0003】
その他にも従来では、コンクリートを着色する技術に関し、以下の特許文献において提案されている。
【0004】
特許文献1(特開平07-156114号公報)では、着色したコンクリートの施工方法が提案されている。この文献で提案されている着色コンクリート施工方法は、型枠を用いたコンクリートの着色において、予め型枠の表面に着色塗膜層を形成し、この型枠にコンクリートを打設するものである。
【0005】
また特許文献2(特開2006-095723号公報)では、カラーコンクリートパネルの製造方法が提案されている。この文献に記載されている方法は、色斑の発生しないカラーコンクリートパネルの製造方法に関するものであるが、セメントに対して骨材および顔料を加えて混合する第一工程に始まり、これに水を加えて混合する第二工程、更に収縮低減剤、モルタル接着増強剤を加えて混合する第三工程、混和剤を加えて混合する第四工程、消泡剤を加えて混合する第五工程、含水率2.0〜4.0重量%のガラス繊維を加えて混合する第六工程、そしてこれを所望形状の型で成形し、常温養生する第七工程と、数多くの工程を経て形成されるものである。
【0006】
また特許文献3(特開2001-151512号公報)では、セメント混合材中での分散性が優れた黒色複合酸化鉄粒子粉末からなるセメント着色用顔料が提案されている。この文献に記載されているセメント着色用顔料は、酸化鉄粒子粉末の粒子表面が有機ケイ素化合物によって被覆されていると共に該有機ケイ素化合物被覆にカーボンブラックが付着している平均粒子径0.08〜3.0μmの黒色複合酸化鉄粒子粉末からなり、前記カーボンブラックの付着量が前記酸化鉄粒子粉末100重量部に対して3〜30重量部であり、且つ、該黒色複合酸化鉄粒子粉末の密度が4.90g/cm3以下に調整されている。
【特許文献1】特開平07−156114号公報
【特許文献2】特開2006−095723号公報
【特許文献3】特開2001−151512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、打設したコンクリートの表面にペンキなどの塗料を塗ったとしても、塗ったペンキは、湿気や温度変化などの影響を受けてで時間の経過と共に剥がれ落ちてしまうことがある。特許文献1では型枠の表面に着色塗膜層を形成しているが、この着色塗膜層自体が時の経過と共に剥がれてしまう事も考えられる。
【0008】
よって本発明は、着色した壁面が剥がれることがないか、あるいは剥がれたとしても着色状態が変化しないようにした着色コンクリート構造物とその製造方法を提供することを第一の課題とする。
【0009】
また、色ムラを生じさせないようにする技術として、前記特許文献2および3が提案されているが、特許文献2では複数の工程を必要とし、特許文献3では特殊な黒色複合酸化鉄粒子粉末が必要となる。
【0010】
そこで本発明では、簡易な方法でかつ特殊な顔料や染料を用いることなく、色ムラを生じさせない着色コンクリート構造物を製造する方法を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記の課題を解決し、任意の色に着色することのできる着色コンクリート構造物とその製造方法を提供するため、セメントに対して着色材料を混合し、これを用いて着色コンクリート構造物を製造するようにした。
【0012】
即ち、本発明にかかる着色コンクリート構造物の製造方法では、構造物に着色を施すための着色材料が均等に分散されているセメントを使用し、この着色材料が分散されたセメントを、水及び骨材の少なくとも何れかと混練することを特徴としている。
【0013】
着色材料をセメントに混ぜ込む事により着色材料をムラ無く分散させることができ、これを使用することにより、製造されたコンクリート構造物に色ムラが生じる事は無い。またその使用方法に関しても、従来のセメントに代えて着色材料が混ぜ込まれたコンクリートを使用するだけである事から、コンクリート構造物の製造に際して何ら困難性を生じさせるものではない。
【0014】
ここで、本明細書における着色材料とは、ペンキ等の塗料の他、着色を施す為に使用されている各種の染料および顔料を含む。但し、粉状のセメントに混ぜ込む場合には、当該着色材料も粉状のものである事が望ましい。また運搬に際して、着色材料がセメント粉体内でかたよる事の無いように、セメントと略同等の粒径に形成されていることが望ましい。なお、着色材料が混ぜ込まれるセメントは、多くの場合、粉状であるが、セメントに水を加えたセメントミルクであっても良く、この場合には水性の塗料などの染料又は顔料、もしくは水分散性が高められた染料又は顔料が使用されることが望ましい。特に望ましい着色材料は、紫外線などによる退色性に優れた鉱物性の着色材料である。
【0015】
また、本明細書におけるコンクリート構造物とは、セメントを使用して形成される構造物であり、コンクリートの他、モルタル、セメントミルクで形成された構造物を含む。この構造物は、多くの場合、土木建築物であるが、室内装飾あるいは屋外装飾用の構造物であっても良い。
【0016】
上記本発明に係る着色コンクリート構造物の製造方法では、着色材料が混ぜ込まれたセメントに対して、砂や砂利などの骨材および水を加えて混ぜるか、骨材を加えて混ぜてから水を加えて更に混ぜるか、あるいは水を加えて混ぜて着色されたセメントミルクを製造し、その後に骨材を混ぜる事ができる。そしてこの様にして形成したコンクリートは、その後、型枠などを使用して打設し、これを硬化させる事によりセメント部分全体が着色されたコンクリート構造物を形成することができる。このようにセメント部分全体が着色されたコンクリート構造物では、着色材料がコンクリート内に練りこまれている結果、着色部分が剥離するといった従来の問題は生じることなく、また何らかの理由で表面が剥がれたり、削られたとしても、その中に存在するコンクリートも同じ色に着色されているので、その部分だけが違う色になってしまうという問題を無くすことができる。
【0017】
上記のような本発明を実施する為には、従来市販されている無機質粉末からなるセメントに対して、着色材料を均等に混ぜ合わせて形成した着色セメントが必要になる。
【0018】
また、意図的に2色以上に着色したい場合、例えばマーブル模様のコンクリート構造物を製造する場合には、2色以上のカラーセメントを混ぜて、これを打設・硬化させることにより製造する事もできる。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明に係る着色コンクリート構造物の製造方法によれば、従来のコンクリート構造物と同じ簡易な方法で、色ムラが生じないコンクリート構造物を任意の色で製造する事ができる。
【0020】
またこの製造方法で構築されたコンクリート構造物では、着色部分だけが剥がれ落ちるといった問題は無くなり、かつ一部が削り落とされたとしても、その部分だけが違う色になってしまうという問題を解決する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本実施の形態に係るコンクリート構造物80の製造手順を示す工程図である。この図に示すように、最初の工程Aでは、市販されている粉状のセメント10に対して、所望の色の着色材料20を混ぜ合わせる。このセメント10に混ぜ合わせる着色材料20は染料でも顔料でも良いが、望ましくはセメント10と略同様の粒径に調整された粉状体のものが使用される。これは両者の粒径を同じようにする事により、分散性を高める為である。なお、粉状体に形成されている着色材料20は、この図1に示すように使用に際してセメント10中に混ぜ込んでカラーセメント50を製造する他、予め着色材料20が混ぜ込まれたカラーセメント50を準備して使用することもできる。また、着色材料20は水溶性である事が望ましいが、水中における分散性が高められた水不溶性であっても良い。上記セメント10と着色材料20との配合割合は、特に限定されるものではなく、意図する色を発現できる程度に両者を混ぜ合わせればよい。
【0023】
セメント10に着色材料20を混ぜ合わせて形成されたカラーセメント50に対しては、本実施の形態では、水40および骨材30を加え(工程B)、これを十分に混ぜ合わせる(工程C)。即ち、この作業自体は、従前におけるコンクリートの撹拌作業と同じである。そして、カラーセメント50に水40や骨材30を加えて形成したカラーコンクリート60を型枠70内などに打設し(工程D)、これを硬化させる事により本実施の形態に係るカラーコンクリート構造物80を形成することができる。
【0024】
特に、本実施の形態では、セメント10に対して着色材料20を混ぜ合わせる事により、製造されたカラーコンクリート60における色ムラをなくし、かつ着色材料20の使用量を必要最小限に抑えることができる。この点、仮にセメント10に対して骨材30を投入するのと同じタイミングか、或いはその後の工程で着色材料20を添加したとすると、当該着色材料20の付着性の問題から、セメント10中に分散するよりも、骨材30に付着してしまう事も考えられる。その結果、コンクリート構造物80の表面に露出するセメント10の露出部分に対して意図する色を着ける為には、骨材30に付着する着色材料20を考慮した上で、多くの着色材料20を配合する必要が生じてしまう。また骨材30に着色材料20が付着した場合には、今度はセメント10との接着性において十分な強度が得られないおそれも生じる。
【0025】
そこで、着色コンクリート構造物(カラーコンクリート構造物と同じ)80の製造に際しては、本発明のように、セメント10に対して着色材料20を配合する事が重要である。セメント10に対して着色材料20を混ぜ込んでカラーセメント50を製造した後においては、これに水40を添加してセメントミルク(カラーセメントミルク)を製造する事もできるし、カラーセメント50に対して骨材30を加えて混ぜ合わせてから水40を加えてカラーコンクリート60を製造する事もできる。いずれの場合であっても、カラーセメント50を使用することにより、色ムラの生じない、且つ簡易にコンクリート構造物80を製造する事ができる。
【0026】
また、上記実施の形態に示したカラーコンクリート構造物80の製造方法において、例えばカラーコンクリート構造物80に、マーブル模様など、2色以上の色分け模様をつける場合には、工程Bで製造したカラーセメント50、又は工程Cで製造したカラーコンクリート60に対して、別の色又は同じ色の着色材料20を投入する事もできる。この場合、後から加えた第二の着色材料20の投入後は、あまり撹拌しない事が望ましい。
【0027】
尚、本発明の着色コンクリート構造物80及びその製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、セメント10に代えてアスファルトを使用し、アスファルトに対して着色材料20を混ぜ合わせてカラーアスファルトを製造し、これを用いてカラーアスファルト構造物を製造する事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンクリート構造物の製造手順を示す工程図
【符号の説明】
【0029】
10 セメント
20 着色材料
30 骨材
40 水
50 カラーセメント
60 カラーコンクリート
70 型枠
80 カラーコンクリート構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色されたコンクリート構造物を製造する方法であって、
着色材料はセメント中に均等に分散されており、この着色材料が分散されたセメントを、水及び骨材の少なくとも何れかと混練する工程を含むことを特徴とする着色コンクリート構造物の製造方法。
【請求項2】
着色されたコンクリート構造物を製造する方法であって、
着色材料が均等に分散されている着色セメントと、骨材と、水とを混ぜて形成したコンクリートを打設し、かつ硬化させたことを特徴とする着色コンクリート構造物の製造方法。
【請求項3】
無機質粉末に対して着色材料が均等に混ぜ合わさっていることを特徴とするセメント。
【請求項4】
セメントと骨材とからなるコンクリート構造物であって、
当該セメントには着色材料が均等に分散されていることを特徴とする着色コンクリート構造物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−46359(P2009−46359A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215170(P2007−215170)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(507277402)株式会社タケイ (2)
【Fターム(参考)】