説明

着色剤の添加による粘度損失の影響を低減する添加剤を含有する改良型塗料組成物

ベース塗料と、会合性増粘剤と、着色化合物と、少なくとも0.1乾燥重量%のブロック共重合体ABCBA組成物とを含む水性ラテックス塗料組成物。このABCBA重合体において、A成分は疎水性基A、B成分は親水性ポリマー、そしてC成分は疎水性低分子量基Cである。このABCBA型の重合体は、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を有するモノマーを含むA成分と、ポリ(エチレングリコール)を有するB成分と、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,2-ドデカンジオールよりなるジオールの群から選択されるC成分とを含む。このブロック共重合体は、会合性増粘剤の存在下で粘度安定剤として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良型の塗料組成物、より詳しくは、水性ラテックス塗料において使用される、着色剤の添加による会合性増粘剤網状組織の破壊を低減するための添加組成物と、この改良型の塗料組成物を製造する方法に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一態様において、本発明は、着色剤の添加による粘度損失の影響を低減する添加剤を含有する改良型塗料組成物に関する。
【0003】
本発明の一面は、ベース塗料と、会合性増粘剤と、着色化合物と、少なくとも0.1乾燥重量%のブロック共重合ABCBA組成物とを含有する水性ラテックス塗料組成物に関する。ブロック共重合体は、会合性増粘剤の存在下では、粘度安定剤として機能する。
【0004】
本発明の他の面は、会合性増粘剤と着色化合物とをベース塗料に添加し、さらに、少なくとも0.1乾燥重量%のブロック共重合ABCBA組成物を添加することを有する、水性ラテックス塗料組成物の調合方法に関する。一態様において、前記ABCBA共重合体は、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を含有する分子単位を有するA成分を含み、B成分はポリ(エチレングリコール)を含み、C成分は、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(カプロラクトン)ポリ(カーボネート)、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-ドデカンジオールよりなる群のジオールから選択される。
【0005】
本発明のまた別の面は、ポリ(エチレン)グリコールと、次の1つ又はそれ以上であるジオールと、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を有するモノマーとを反応させて作られる、ポリマー薬品に関する。ここで、前記ジオールは、ポリ(テトラヒドロフラノール)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-ドデカンジオールである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のよりよい理解のために含まれ、この明細書に取り入れられて明細書の一部をなす添付の図面は、開示されている発明の具体例を図示し、明細書の記載と共に開示されている発明の原理を説明する役割を担っている。
【0007】
水を基材とするある種の塗料組成物においては、塗料の中央剪断粘度(ストーマー粘度)を、その基礎となる値の+−10%差に維持するのが望ましい。ある態様においては、パステルベースに対してこれは2液量オンスまでの着色剤を含み、中間色調のベースに対して4液量オンスまでであり、深い色調のベースに対しては12液量オンスまでの着色剤を含有する。ある態様においては、粘度低下が、色調配合剤、即ち「着色剤」の色(ブルー対黒対赤など)に依存しないのが望ましい。着色剤の添加に伴って観察される粘度低下の程度は、会合性増粘剤の効率、即ち、所定の粘度に必要な増粘剤の量に依存しており、会合性増粘剤が効率的であればあるほど観察された粘度の低下が大きい。染色による中央剪断粘度低下の程度の例として、90〜100 KU塗料(クレプス単位−ストーマー粘度単位)において-30〜-40KUの低下を観察するのも珍しくない。この種の粘度低下の結果、塗工上の問題を生じる非常に流動性の高い塗料に帰着する。図1は、着色剤を添加することによって、ベース塗料の粘度が変化する様子を示している。
【0008】
粘度低下は、色調配合剤の色に関係している。これは、着色剤の中にある顔料を安定化させるのに使用される界面活性剤の量と種類とに起因するようである。多くの場合、カーボンブラックが最も多量の界面活性剤を必要とし、それ故に最も厄介な色である。
【0009】
一態様において、理想的な安定化添加剤が、活性材料の1重量%を超えないレベルで、ベース塗料に添加される。塗料中に安定剤があるので、いかなる色に対しても12液量オンス(深い色調のベース)までの着色剤の添加を通して、塗料の粘度はそのベース粘度の10%以内にある。図2は、この明細書に記載の本発明の組成物を0.75重量%添加した90〜100KUのベース塗料の粘度の変化を示している。
【0010】
本発明の一態様において、ポリマー組成物は、モノマー単位とポリ(エチレン)グリコールとヒドロキシル又はアミン官能価を有する直鎖状、分岐及び環状アルキル化合物とを反応させて作られる。他の態様においては、モノマー単位とポリ(エチレン)グリコールとジオールとを反応させてポリマー組成物が作られる。さらに別の態様においては、モノマー単位とポリ(エチレン)グリコールとジアミンとを反応させてポリマー組成物が作られる。
【0011】
一態様においては、製造されるポリマーはブロック共重合体を含んでいる。ブロック共重合体は、会合性増粘剤の存在下では、粘度安定剤として機能する。別の態様においては、このブロック共重合体はABCBAポリマーである。ここにおいて、A成分は疎水性基Aであり、B成分は親水性ポリマーBであり、C成分は低分子量疎水性C化合物である。
【0012】
一態様において、前記ABCBA共重合体のA成分は、疎水性のアルキル基、疎水性のアリールアルキル基、又はアリール基を有するモノマー単位を含んでいる。このアルキル基を有するモノマー単位は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、O、N又はS等の複素原子を有していてもよい。一態様において、このアルキル基は少なくとも8個の炭素原子を有している。別の態様において、A成分はC10〜C22アルコールを含む。また別の態様においては、A成分はC10〜C16アルコールを含む。さらにまた別の態様においては、A成分はC10〜C22アルコール同等物も含むことができ、同等物とは、同等の疎水性を有するアルキルアリールアルコールを意味する。別の態様においては、A成分の数平均分子量は約140〜350 g/モルの範囲にある。A成分の数平均分子量が大きいほど、塗料組成物の粘度を維持する添加剤の効果が高い。
【0013】
一態様において、A成分は疎水性のアルキルアリール基、又は疎水性のアリール基を含む。このアリール基はO、N又はS等の複素原子を有することもできる置換基を含んでいてもよい。アルキルアリール基又はアリール基の例としては、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、及びトリスチリルフェノールを挙げることができる。
【0014】
粘度安定剤は、部分的に、A成分の疎水性に依存する。A成分の疎水性はその分配係数(log P又はlog W)に関連する。高いlog P値を有するA成分を含む粘度安定剤は、低いlog P値を有するA成分を含む粘度安定剤に比べて大きい粘度安定化性を示す。
【0015】
一態様において、B成分はポリ(エチレングリコール)等の親水性化合物である。このB成分は約25〜150のエトキシ繰り返し単位を有することができる。好ましくは、B成分は約40〜60のエトキシ繰り返し単位を有する。一態様において、親水性B成分の数平均分子量は、完全に調合された塗料に材料が分散するように、ポリマーを水溶性にするのに十分なほど高くなくてはならない。数平均分子量が高いと、安定剤の効果が低減され、剪断粘度特性が変化してしまう。一態様において、B成分の数平均分子量は約1000〜6000である。
【0016】
一態様において、C成分は疎水性で低分子量の直鎖状、分岐及び環状アルキルジオールを含み、このアルキルジオールはO、N又はS等の複素原子を有していてもよい。一態様において、C成分は、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(テトラヒドロフランカーボネート)、ポリ(カーボネート)、ポリ(エチレン−1,2-ブチレン)、ポリ(プロピレンオキサイド)、及びポリ(メチレン)等の、水に不溶である疎水性低分子量のジオールポリマーを含む。別の態様においては、A成分とB成分とが水に自己分散することのできるポリマーを製造するように調整されている限り、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール等のジオールを用いてC成分を作ることもできる。C成分の分子量も重要であり、過剰に不溶又は過剰に可溶である材料を作らないように、B成分の分子量に対してバランスが取れているのがよい。一般に、C成分の数平均分子量が高いほど、粘度安定化添加剤の不溶性は高くなる。一態様において、C成分は約28〜1000の範囲の数平均分子量を有している。好ましい態様においては、C成分は約50〜1000の範囲の数平均分子量を有している。
【0017】
別の態様においては、ABCBAブロック共重合体は少なくとも二種類の連結単位を有している。この連結単位としては、ウレタン連結単位、エステル連結単位、アミド連結単位、及び/又は尿素連結単位を挙げることができる。一態様において、この連結単位は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及び/又は4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)という化合物から得られるウレタン連結単位を含む。好ましい態様においては、このウレタン連結単位はヘキサメチレンジイソシアネートから得られる。
【0018】
一態様において、ブロック共重合体は、ABブロック用のエトキシル化アルコールと、連結単位用のジイソシアネートと、Cブロック用のジオールとを用いて合成される。ある態様においては、これらの成分(エトキシル化アルコール、ジイソシアネート、及びジオール)の比が約2:2:0.9〜2:2:1.2の範囲にある。好ましい態様においては、これら成分の比は約2:2:1である。
【0019】
これらの安定剤は、R-O-(CH2CH2O)n-Hという形態のアルキルエトキシレート、アリールエトキシレート、又はアルキルアリールエトキシレートと、ジイソシアネートと、ジオールとから最も好適に合成され、ここにおいて、R-O-(CH2CH2O)n-HはA成分とB成分との両方に寄与する。ABCBAという構造を有する共重合体を製造する方法は多数ある。一態様において、アリールエトキシレート、アルキルエトキシレート、又はアリールアルキルエトキシレートとジイソシアネートとを以下に示すようにジオールの存在下で反応させることによってポリマーが製造される。
【0020】
【化1】

【0021】
本発明の一態様において、ABCBAブロック共重合体は、水性ラテックス塗料組成物の一部として使用される。水性ラテックス塗料組成物は、ベース塗料に、会合性増粘剤及び着色化合物、並びに少なくとも0.1乾燥重量%のブロック共重合体ABCBA組成物を添加することによって調合される。
【0022】
別の態様において、本発明の方法によって調合された水性ラテックス塗料組成物は、少なくとも一種の親水性モノマーと一種のみの疎水性モノマーとを含む第二のポリマーを
0.01重量%以上含有している。
【0023】
安定剤は、固体として、又は他の溶媒及び界面活性剤を有する液体の溶液として、塗料に添加することができる。ある態様においては、安定剤と他の界面活性剤との共溶液は、安定剤の効果を小さくする場合があり、それ故に、同じ性能を得るために、より多量の安定剤が必要とされることがある。固体の形態においては、一態様において、最後の段階で安定剤を塗料に添加して、安定剤を高速分散機又はレッドデビル振とう機で分散させる。液体の形態においては、ある態様において、塗料調製のいかなる段階でも安定剤を添加することができる。
【0024】
安定剤は、少なくとも一種の会合性増粘剤を含有する塗料の着色剤添加に対する粘度安定性を向上させることができる。ある態様においては、会合性増粘剤としては、ポリエーテル及び/若しくはポリウレタン会合性増粘剤等の非イオン性材料、又は疎水的に変性されたアルカリ膨潤性(若しくは可溶性)エマルジョン(HASE)及び疎水的に変性されたヒドロキシエチルセルロース等のイオン性会合増粘剤を含む。
【0025】
(安定剤の合成)
<溶媒を用いた、安定剤の一般的な調製>
窒素導入口、攪拌機、ディーンスターク型のトラップ、及びコンデンサを備えた反応ケトルに、0.03モルのエトキシレート(例えば、ラウリルエトキシレート(50))、0.015モルのジオール(例えば、ポリテトラヒドロフラン(650)ジオール)、及び350 mlのトルエンを入れ、エトキシレートが完全に溶解するまで、加熱して250 rpmで撹拌する。水が存在すれば、その水を110℃までの共沸によってディーンスタークのトラップを介して除去し、約100 mlの水分を含んだトルエンを反応から分離する。反応物を75℃に冷却し、0.03モルのジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)を10分かけてゆっくりと混合物に添加する。次いで、5x10-4モルのジブチル錫ジラウレートを混合物に添加し、透き通った溶液を75℃で一時間撹拌した。真空蒸留によってトルエンを除去した後に生成物を分離した。
【0026】
<溶媒を用いない、安定剤の一般的な調製>
窒素導入口、攪拌機、及び真空源を備えた反応ケトルに、0.03モルのエトキシレート(例えば、ラウリルエトキシレート(50))と0.015モルのジオール(例えば、ポリテトラヒドロフラン(650)ジオール)とを入れ、エトキシレートが完全に溶融するまで、90℃に加熱する。次いで、均一な溶液が得られるまで、溶液を250 rpmで撹拌した。水分が存在すれば、それを90℃、−29”Hgで2時間真空蒸留することによって除去する。反応物を75℃にまで冷却し、5x10-4モルのジブチル錫ジラウレートを混合物に添加する。そして、0.03モルのジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)を30分かけてゆっくりと混合物に添加し、透き通った溶液を75℃でさらに15分間撹拌した。生成物を溶融状態で流し出して冷却し、微細な粉末に粉砕した。
【0027】
この方法を用いて、表1に示す様々なA成分、B成分及びC成分を有する多数の安定剤を合成した。
【0028】
【表1】

【0029】
モデルとなる塗料におけるこれらの材料の効果を評価するために、体積濃度40の顔料を含むアクリルラテックスを有する外観が半光沢性の深い色調のベースを用いた。このベースの調合法を表2に示す。粘度調整段階で流動学的添加剤と安定剤を添加した。
【0030】
【表2】

【0031】
試験した塗料の全てにおいて、レオレート(Rheolate)(R)(エレメンティス・スペシャルティーズ)及びアクリゾル(Acrysol)(R)(ローム&ハース)という商品名の市販の会合増粘剤を使用した。増粘剤の濃度は、塗料を90〜110 KUのストーマー粘度にするように調整された。単一の測定比較のために、デグサ・カラートレンド(Degussa Colortrend)ランプブラック(Lampblack)(9907)着色剤を10重量%の配合量で使用した。段階的な研究のために、同じ着色剤を、その着色塗料調合剤における濃度を0〜10重量%に調節して使用した。色の比較のために、デグサ・カラートレンド 888赤(1045)とフタロブルー(7214)とを使用した。
【0032】
<例示塗料試料>
0.75重量%(固形分に基づく)のレオレート(Rheolate)(R) 255(エレメンティス・スペシャルティーズ、ハイツタウン、NJ)で増粘された上記表2におけるモデル塗料調合品において、流動学的添加剤に同時に0.75%の安定剤を添加し、ディスパーマットを用いて2000 rpmで10分間、流動学的添加剤と安定剤とを撹拌した。添加に続いて、塗料を一晩かけて平衡させ、ストーマー粘度を測定した。次いで、デグサ・カラートレンド(Degussa Colortrend)ランプブラック(Lampblack)(9907)を増粘された塗料に10重量%の割合で添加し、レッドデビル塗料シェーカーで10分間振とうした。着色剤濃度の段階的な研究のために、着色剤の濃度を変えて同じ方法を行った。
【0033】
表3は、0.75重量%(固形分に基づく)のレオレート(Rheolate)(R) 225と、表1に示されている様々な安定剤とによって増粘された塗料についての結果を示している。安定剤を含まない着色剤(対照)への塗料の応答についても比較した。
【0034】
【表3】

【0035】
共重合体の構造が、色のないベース塗料調合物の粘度変化に与える影響を明らかにするために、本発明の粘度安定剤を試験した。粘度安定剤は、ベース塗料調合物(即ち「対照」として記載した調合物)の粘度を増加も減少もさせないことが好ましい。塗料調合物は、ベース塗料の粘度が90〜110 KUになるように、流動学的添加剤を様々な量で配合して調製される。このベース粘度に必要な流動学的添加剤の量は、塗料の配合と流動学的添加剤の構造とに依存する。例えば、表3のベース塗料調合物には、0.1重量%〜2重量%のレオレート(Rheolate)225が必要になる。表3の例では、ベース塗料調合物に0.75重量%の粘度安定剤を添加して調製された。粘度安定剤は、着色されていないベース塗料調合物の粘度変化に、様々な程度に影響を与える。例えば、一態様においては、粘度安定剤は、ベース塗料調合物(即ち、「対照」として記載した調合物)の粘度を+−25%まで変化させる。別の態様においては、粘度安定剤は、ベース塗料調合物(即ち、「対照」として記載した調合物)の粘度を+−20%まで変化させる。また別の態様においては、粘度安定剤は、ベース塗料調合物(即ち、「対照」として記載した調合物)の粘度を+−15%まで変化させる。さらにまた別の態様においては、粘度安定剤は、ベース塗料調合物(即ち、「対照」として記載した調合物)の粘度を+−10%まで変化させる。表3に示されているように、試料「I」は対照調合物の粘度をわずか1KU(1%)しか増加させなかった。
【0036】
共重合体の構造が、着色されたベース塗料調合物の粘度変化に与える影響を明らかにするために、本発明の粘度安定剤を試験した。着色剤が存在すると、着色されていない安定化調合物に比べて、塗料調合物の粘度の低下を縮小することができる。例えば、一態様において、着色していない安定化調合物に比べて、着色した塗料調製物の一晩経過した後の粘度は最大で+−25%低下する。別の態様において、着色していない安定化調合物に比べて、着色した塗料調製物の一晩経過した後の粘度は最大で+−20%低下する。また別の態様において、着色していない安定化調合物に比べて、着色した塗料調製物の一晩経過した後の粘度は最大で+−10%低下する。さらにまた別の態様において、着色していない安定化調合物に比べて、着色した塗料調製物の一晩経過した後の粘度は最大で+−15%低下する。試料「I」について表3にさらに示されているように、一晩経過後の粘度が102 KUである着色していない安定化調合物に比べて、着色した安定化調合物の一晩経過後の粘度は96 KUであり、着色剤による減少はわずか6KU(6%)であった。これは安定化されていない調合物(「対照」として記載した調合物)と対照的なデータである。対照の調合物では、着色されていない調合物の一晩経過後の粘度は101 KUであり、着色された調合物の一晩経過後の粘度は67 KUであり、着色によって34%の粘度低下が見られた。
【0037】
表4は、本発明の粘度安定剤を含まない場合と含む場合とについて、市販の様々な流動学的添加剤を含んでいる調合品の粘度変化を示している。例えば、アクリゾル(Acrysol)RM-8Wによって増粘された塗料は、粘度安定化試料Iを含有しない場合は、-26.4 KUの粘度低下を示した。粘度安定化試料Iを0.35重量%添加することによって、ベース塗料調合物の粘度は12.9 KU低下した。図2及び3に示されているように、高濃度の粘度安定剤によって更に安定化することができる。
【0038】
【表4】

表に示された量の粘度安定剤が、着色剤の添加の有無に関わらず、ベース塗料調合物の粘度変化に影響する。試料Iの場合、図3に示されているように、0.75重量%の流動学的添加剤であるレオレート(Rheolate)(R) 255を用いると、粘度安定化効果は安定剤の濃度に関して直線的である。水性塗料組成物を安定化させるのに必要な安定剤の濃度は、塗料の成分と増粘剤の効率とに依存する。一態様において、安定剤の濃度は、0.1重量%(固形分に基づく)〜1重量%の範囲内にある。別の態様において、安定剤の濃度は、0.1重量%(固形分に基づく)〜5重量%の範囲内にある。また別の態様において、安定剤の濃度は、0.1重量%(固形分に基づく)〜1重量%の範囲内にある。
【0039】
着色剤の効果は表5に示されている。先に記載した深い色の着色剤のモデル調合物は、0.6重量%(固形分に基づく)のアクリゾル(R) RM-825と0,475%のアクリゾルRM-2020とによって増粘され、次いで、例「I」の安定剤が塗料に添加された。得られた塗料は、12液量オンスで、デグサ・カラートレンド(Degussa Colortrend)888ランプブラック(9907)、赤(1045)、フタロブルー(7214)によって着色され、着色前後のストーマー粘度が比較された。
【0040】
【表5】

【0041】
この組成物において、粘度安定剤は試験された三色全部について粘度を安定化する一方で、ベース塗料の粘度は7%未満しか低減させなかった。これに対して、対照の試料は、様々な着色剤で着色すると、10%〜22%と、大きく幅の広いストーマー粘度の減少を示した。
【0042】
ここに開示された事柄は、本発明の精神又は本質的な特質から離れることなく、他の具体的な形態で具体化することもできる。したがって、開示の範囲を示すものとしては、明細書のこれまでの記載よりは、添付の請求項を参照すべきである。ここまでの記載は開示された発明の好ましい態様に関するが、当業者には他の変形や変更も明らかであり、開示された発明の精神又は範囲から外れることなく、そのような変形や変更を行うことができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】市販の会合性増粘剤レオレート(Rheolate)(R)255(0.75重量%乾燥荷重)を、カラートレンド888ランプブラック(9907)着色剤濃度の関数として用いた、モデルとなる深い色調のベース配合剤のストーマー粘度をプロットしたものを示している。
【図2】市販の会合性増粘剤レオレート(Rheolate)(R)255(0.75重量%乾燥荷重)と本発明のカラー粘度安定剤(0.75重量%乾燥荷重)とを、カラートレンド888ランプブラック(Colortrend 888 Lampblack)(9907)着色剤濃度の関数として用いた、モデルとなる深い色調のベース配合剤のストーマー粘度をプロットしたものを示している。
【図3】市販の会合性増粘剤レオレート(Rheolate)(R)255(0.75重量%乾燥荷重)を10重量%のカラートレンド888ランプブラック(Colortrend 888 Lampblack)(9907)着色剤と共に、本発明によるカラー粘度安定剤の濃度の関数として用いた、モデルとなる深い色調のベース配合剤のストーマー粘度をプロットしたものを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ベース塗料と
(b) 会合性増粘剤と
(c) 着色化合物と
(d) 少なくとも0.1乾燥重量%のブロック共重合体ABCBA組成物と
を含むことを特徴とする、水性ラテックス塗料組成物。
【請求項2】
前記ABCBA型の重合体が、疎水性基Aを有するA成分と、親水性ポリマーBを有するB成分と、疎水性低分子量基Cを有するC成分とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記ABCBA型の重合体が、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を有するモノマーを含むA成分と、ポリ(エチレングリコール)を有するB成分と、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(カプロラクトン)及びポリ(カーボネート)よりなるジオールの群から選択されるC成分とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ABCBA型の重合体が、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を有するモノマーを含むA成分と、ポリ(エチレングリコール)を有するB成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,2-ドデカンジオールよりなるジオールの群から選択されるC成分とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記塗料組成物が、数平均分子量が少なくとも1000である親水性基と、唯一の疎水性基とを有する第二の重合体を、0.001重量%未満含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ABCBA共重合体が少なくとも2つの連結単位を有することを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記連結単位が、ウレタン連結単位、エステル連結単位、アミド連結単位、及び尿素連結単位の内の1つ以上を有していることを特徴とする、請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記連結単位が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及び4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)よりなる群から選択される化合物から得られるウレタン連結単位であることを特徴とする、請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項9】
(a) ベース塗料に、会合性増粘剤と着色化合物を添加し、
(b) 少なくとも0.1乾燥重量%のブロック共重合体ABCBA組成物をさらに添加することを特徴とする、
水性ラテックス塗料組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ABCBA型の重合体が、疎水性基Aを有するA成分と、親水性ポリマーBを有するB成分と、疎水性低分子量基Cを有するC成分とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ABCBA型の重合体が、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を有するモノマーを含むA成分と、ポリ(エチレングリコール)を有するB成分と、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(カプロラクトン)及びポリ(カーボネート)よりなるジオールの群から選択されるC成分とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ABCBA型の重合体が、アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基よりなる群から選択される分子部分を有するモノマーを含むA成分と、ポリ(エチレングリコール)を有するB成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,2-ドデカンジオールよりなるジオールの群から選択されるC成分とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記塗料組成物が、数平均分子量が少なくとも1000である親水性基と、唯一の疎水性基とを有する第二の重合体を、0.001重量%未満含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ABCBA共重合体が少なくとも2つの連結単位を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記連結単位が、ウレタン連結単位、エステル連結単位、アミド連結単位、及び尿素連結単位の内の1つ以上を有していることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記連結単位が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及び4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)よりなる群から選択される化合物から得られるウレタン連結単位であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(a) アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基よりなる群から選択される分子部分を含むモノマー単位と、
(b) ポリ(エチレン)グリコールと
(c) ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,2-ドデカンジオールのジオールの1つ以上と
を反応させることによって作られる、ポリマー薬品。
【請求項18】
前記ポリマー薬品が少なくとも2つの連結単位を有することを特徴とする、請求項17に記載のポリマー薬品。
【請求項19】
前記連結単位が、ウレタン連結単位、エステル連結単位、アミド連結単位、及び尿素連結単位の内の1つ以上を有していることを特徴とする、請求項18に記載のポリマー薬品。
【請求項20】
前記連結単位が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及び4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)よりなる群から選択される化合物から得られるウレタン連結単位であることを特徴とする、請求項18に記載のポリマー薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−507130(P2009−507130A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530200(P2008−530200)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/034870
【国際公開番号】WO2007/030626
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501121831)エレメンティス スペシャルティーズ,インコーポレイテッド., (4)
【住所又は居所原語表記】P.O.BOX 700,329 Wrckoffs Mill Road,Hightstown,NJ 08520 U.S.A.
【Fターム(参考)】