説明

着色塗料粒子分散物の製造方法

【課題】
水性多彩模様塗料に適用可能な着色塗料粒子分散物を工業的に安定に生産するのに適する製造方法を提供する。
【解決手段】
水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)とを接触させることにより着色塗料粒子が水性媒体中に分散されてなる着色塗料粒子分散物(I)を製造する製造方法であって、該水性樹脂組成物(A)が、水性樹脂(a1)、金属化合物(a2)及び水を含み、水性樹脂(a1)の酸価が2〜20mgKOH/gの範囲内にあることを特徴とする着色塗料粒子分散物(I)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性多彩模様塗料に適用可能な着色塗料粒子分散物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多彩模様塗料とは、一回の塗装で2色以上の多彩な模様をもつ塗膜を形成することができる塗料であり、例えば、分散媒体中に複数の着色粒状ゲルを安定に分散させてなる塗料が挙げられ、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、エマルジョン樹脂等の塗膜形成成分を水溶性高分子化合物のゲル化膜でカプセル化した液状着色粒子を含有する着色塗料組成物が開示されており、特許文献2には、水性媒体中に分散した着色骨材として鱗片状ゲル着色粒子及び有色又は着色された球状微細粒子の組み合わせを使用した水性多彩被覆組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、化学的安定性が3重量%以下である合成樹脂エマルションを含む着色水性塗料を多価金属塩を含有する水性媒体に分散することによって着色ゲル粒子を製造する方法が記載されている。
【0005】
これら特許文献記載の多彩模様塗料の模様粒子として含まれる着色粒状ゲルは、液状の着色塗料を塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、酢酸ジルコニウム等の化合物を水に溶解した金属イオン含有水溶液中に滴下して粒状ゲル化することによって製造されるものである。
【0006】
しかしながら、上記文献記載の製造方法によれば、着色粒状ゲルの製造段階において金属イオン含有水溶液が廃水として多量に発生すること、合成樹脂エマルションの化学的安定性が低いと、塗料製造の工程において合成樹脂エマルションの凝集等が起こることがあるなど、工業的に安定な生産を行うために解決しなければならない問題点を多く有しているのが現状である。
【0007】
また、特許文献4には、水性樹脂、及び屈折率1.4〜1.7の体質顔料を含有する透明艶消し塗料中に、少なくとも1種の扁平状着色ゲル粒子が分散してなり、前記扁平状着色ゲル粒子が、反応性官能基を有する水性樹脂、着色顔料、水、及び水存在下で反応可能な反応性化合物に由来するゲル化物であることを特徴とする水中水型多彩模様塗料について記載がされており、透明艶消し塗料の存在下で反応性官能基を有する水性樹脂、着色顔料及び水を含む水性塗料にゲル化剤としての該反応性化合物を混合することによってゲル化物を製造する方法について記載がされている。
【0008】
上記方法によれば、扁平状の着色ゲル粒子を容易に製造でき、得られる多彩模様塗膜は平滑性があって鮮映性にも優れるものであるが、着色ゲル粒子の安定性が必ずしもよくなく、貯蔵や輸送で着色ゲル粒子が崩壊することがあり、より安定に着色ゲル粒子を製造する手法の開発が必要とされている。
【0009】
【特許文献1】特開平1−16879号公報
【特許文献2】特開平07−247450号公報
【特許文献3】特開2004−182788号公報
【特許文献4】特開2005−15645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水性多彩模様塗料に適用可能な着色塗料粒子分散物を工業的に安定に生産するのに適する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記した課題について鋭意検討した結果、水性樹脂組成物と水性着色塗料組成物とを接触させ着色塗料粒子が水性媒体中に分散してなる着色塗料粒子分散物を製造するにあたって、該水性樹脂組成物に特定の酸価を有する水性樹脂を含ませることによって、製造装置や環境に与える負荷を少なくでき、且つ貯蔵安定性の良好な着色塗料粒子分散物を容易に安定に生産することができることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、
1. 水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)とを接触させることにより着色塗料粒子が水性媒体中に分散されてなる着色塗料粒子分散物(I)を製造する製造方法であって、該水性樹脂組成物(A)が、水性樹脂(a1)、金属化合物(a2)及び水を含み、水性樹脂(a1)の酸価が2〜20mgKOH/gの範囲内にあることを特徴とする着色塗料粒子分散物(I)の製造方法、
2. 水性樹脂(a1)が、塩化カルシウムによる凝集率が3.0%以下にある1項に記載の製造方法、
3. 水性樹脂(a1)が、マロン式機械安定性試験機による凝集率が3.0%以下にある1項または2項に記載の製造方法、
4. 水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有する1項ないし3項のいずれか1項に記載の製造方法、
5. 金属化合物(a2)が、その成分の一部として金属水酸化物及び/又は有機酸金属塩を含む1項ないし4項のいずれか1項に記載の製造方法、
6.水性樹脂組成物(A)が、ポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含むことを特徴とする1項ないし5項のいずれか1項に記載の製造方法、
7. 水性樹脂組成物(A)が、体質顔料をさらに含む1項ないし6項のいずれか1項に記載の製造方法、
8. 水性樹脂組成物(A)が、固形分が20〜70%の範囲内にある1項ないし7項のいずれか1項に記載の製造方法、
9. 水性着色塗料組成物(B)が、水性樹脂(b1)、着色剤(b2)及び水溶性多糖類(b3)を含む1項ないし8項のいずれか1項に記載の製造方法、
10.水性着色塗料組成物(B)が、ポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含むことを特徴とする1項ないし9項のいずれか1項に記載の製造方法、
11. 1種の水性樹脂組成物(A)に対して、色調が互いに異なる2種以上の水性着色塗料組成物(B)を順次接触させることを特徴とする1項ないし10項のいずれか1項に記載の製造方法、
12. 水性樹脂組成物(A)中の金属化合物(a2)の量が、水性着色塗料組成物(B)中の水溶性多糖類(b3)のカルボキシル基に由来する基1molに対して0.2〜3molの範囲内にある9項ないし11項のいずれか1項に記載の製造方法、
13. 1項ないし12項のいずれか1項に記載の製造方法により得られる着色塗料粒子分散物(I)を用いることを特徴とする水性多彩模様塗料の製造方法、
14. 1項ないし12項のいずれか1項に記載の製造方法により得られる着色塗料粒子分散物(I)に、塗膜形成成分(II)をさらに加えてなる水性多彩模様塗料の製造方法、
15. 着色塗料粒子分散物(I)と塗膜形成成分(II)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(m)及び(n)を含有する14項に記載の水性多彩模様塗料の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、製造段階で発生する廃液の量や配管等に詰まる残渣等を最小限にすることができ、貯蔵安定性の良好な着色塗料粒子分散物を容易に安定に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の製造方法に用いられる水性樹脂組成物(A)は、後述の水性着色塗料組成物(B)を粒状化させるために用いられるものであり、水性樹脂(a1)、金属化合物(a2)及び水を含有する。
【0014】
水性樹脂(a1):
本発明の製造方法において使用される水性樹脂(a1)は、酸価が2〜20mgKOH/gの範囲内にあることを特徴とする。水性樹脂(a1)の酸価が2mgKOH/g未満では、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性が悪くなり、一方20mgKOH/gを超えると、水性樹脂組成物(A)と接触した際における水性着色塗料組成物(B)の粒状化がしにくくなり好ましくない。本発明において上記水性樹脂(a1)の好ましい酸価としては、2〜20mgKOH/g、特に2〜16mgKOH/gの範囲内を挙げることができる。
【0015】
本明細書において酸価は、樹脂固形分質量1gに含まれる酸基のモル量を同じモル量に相当する水酸化カリウムのmg数で表したものである。ここで水酸化カリウムの分子量は56.1とする。
【0016】
本発明において上記水性樹脂(a1)は、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用され酸価が上記範囲にあればその樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0017】
上記水性樹脂(a1)は塗膜形成能を有するものであることが望ましい。これにより、着色塗料粒子分散物(I)自体に塗膜形成能を付与させ、これを含む組成物のハイソリッド化に寄与することができる。
【0018】
上記水性樹脂(a1)は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。
【0019】
また、上記水性樹脂(a1)中の酸基は中和したものであってもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類;アンモニア等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
また、上記水性樹脂(a1)は、着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0021】
かかるアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを必須モノマー成分とし、該モノマーを適宜他の重合性不飽和モノマーと(共)重合させることにより得られるものが挙げられ、該(共)重合に供し得るモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
水性樹脂(a1)としてのアクリル系樹脂は、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性などの観点から、酸基としてカルボキシル基含有アクリル系樹脂であることが望ましく、そのようなカルボキシル基含有樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することにより製造することができる。かかるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は水性樹脂(a1)の酸価が上記範囲にあれば適宜調整できるものであるが、例えば(共)重合に供される全重合性不飽和モノマーの質量を基準にして、通常0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜4質量%の範囲内であることが着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性と貯蔵安定性の点から適している。
【0023】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0024】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを挙げることができる。
【0025】
アニオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
両イオン性乳化剤としては、例えば、ジメチルアルキルベダイン類、ジメチルアルキルラウリルベダイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0028】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であると水性樹脂(a1)の重合安定性、水性樹脂組成物(A)の貯蔵安定性、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性の点から適している。
【0029】
本発明の製造方法において上記水性樹脂(a1)としては、塩化カルシウムによる凝集率が3.0%以下、特に1.5%以下、さらに特に1.0%以下にあることが着色塗料粒子分散物(I)を用いて水性多彩模様塗料を製造するときの製造安定性の点から適している。
【0030】
本明細書において、塩化カルシウムによる凝集率(%)は以下のようにして測定する。
【0031】
予め150メッシュの金網を通して凝固物を除去した水性樹脂(a1)を約100g秤量し、10%塩化カルシウム水溶液を100gを加え、20℃に調整しながら30分間攪拌した後、全量を150メッシュ金網にて濾過し、金網上に残った凝集物を130℃で3時間乾燥する。乾燥後の質量を凝集物量とし、下記の式(1)に従う値を塩化カルシウムによる凝集率(%)とする。
【0032】
【数1】

【0033】
また、上記水性樹脂(a1)は、マロン式機械安定性試験機による凝集率が3.0%以下、特に2.0%以下、更に特に1.0%以下であることが、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性と貯蔵安定性の点から適している。
【0034】
本明細書において、マロン式機械安定性試験機による凝集率(%)は以下のようにして測定する。
【0035】
予め150メッシュの金網を通して凝固物を除去した水性樹脂(a1)約50gを20℃に調整した後、マロン式機械安定性試験機を用いて、10kgの荷重下1000rpmの条件下で、5分間回転させた後、試験容器内に残った凝集物を150メッシュの金網にて濾過し、金網上に残った凝集物を130℃で3時間乾燥する。乾燥後の質量を凝集物量とし、上記式(1)に従う値をマロン式機械安定性試験機による凝集率(%)とする。
【0036】
尚、本明細書における固形分率は、試料約2gをブリキ皿に秤量し、105℃、3時間乾燥させた時の残存物の質量の乾燥前質量に対する割合であり、下記式(2)で算出する。
【0037】
【数2】

【0038】
また、上記着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の耐水性等の点から、水性樹脂組成物(A)と後述の水性着色塗料組成物(B)は、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有することが望ましく、水性樹脂組成物(A)が、反応性官能基(x)を含有してなり、且つ水性着色塗料組成物(B)が、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を有するものであることが望ましい。
【0039】
上記水性樹脂組成物(A)に含まれる反応性官能基(x)と水性着色塗料組成物(B)中に含まれる反応性官能基(y)の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、カルボニル基とヒドラジド基の組み合わせであると、常温一液架橋することができ、好適である。
【0040】
本発明において、着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の耐水性、耐候性、貯蔵安定性などを両立させるためには、水性樹脂組成物(A)が、カルボニル基含有水性樹脂を含み、水性着色塗料組成物(B)が、カルボニル基含有水性樹脂を含んでなり、水性樹脂組成物(A)及び/又は水性着色塗料組成物(B)が、ヒドラジン誘導体を含有することが望ましい。
【0041】
水性樹脂組成物(A)又は水性着色塗料組成物(B)に含まれ得るカルボニル基と反応するためのヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
金属化合物(a2):
本発明の製造方法において、水性着色塗料組成物(B)を粒状化せしめる際に用いられる金属イオンの供給源となる金属化合物(a2)における金属種としては、着色塗料粒子の強度などの観点から、多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2属元素、特にカルシウムが好適である。
【0043】
一方、上記例示のごとき金属に対する塩としては、水酸化物、酸化物、炭酸塩、塩化物、硫化物、有機酸塩等を挙げることができる。
【0044】
上記有機酸塩を形成しうる有機酸の具体例としては例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0045】
本発明において、金属化合物(a2)が、その成分の一部として金属水酸化物及び/又は有機酸金属塩を含むと、上記水性樹脂組成物(A)の貯蔵安定性と着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性、さらには着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の仕上がり性が良好であることができ、好適である。
【0046】
上記金属化合物(a2)が、金属水酸化物及び有機酸金属塩を併用する場合、その使用割合がとしては、金属水酸化物/有機酸金属塩のモル比で1/99〜90/10、特に10/90〜85/15の範囲内にあることが、着色塗料粒子分散物(I)の貯蔵安定性と該着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の鮮映性が良好であること、さらには着色塗料粒子分散物(I)の製造において生成する廃液や着色塗料粒子分散物(I)が製造装置や環境に与える負荷を少なくさせることもでき、適している。
【0047】
上記金属化合物(a2)は、水性樹脂組成物(A)に含まれる水などの水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させればよい。その際、金属化合物(a2)は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。
【0048】
上記金属化合物(a2)の量としては金属化合物(a2)の種類や水性樹脂組成物(A)の組成に応じて適宜調整することができるが一般に、上記水性樹脂(a2)固形分質量を基準にして0.1〜30質量%、特に0.2〜20質量%の割合にあると、水性樹脂組成物(A)の貯蔵安定性、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性の点から適している。
【0049】
水性樹脂組成物(A)
本発明の製造方法において、水性樹脂組成物(A)の貯蔵安定性を良好なものとさせ、且つ着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性、貯蔵安定性を良好なものとさせるために水性樹脂組成物(A)が、ポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含有することが望ましい。
【0050】
水性樹脂組成物(A)がその成分の一部としてポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含むことによって、ポリオキシアルキレン基の立体障害により水性樹脂(a1)と金属化合物(a2)との反応や、着色塗料粒子分散物(I)の製造における水性樹脂組成物(A)の凝集を抑制することができ、また、得られる着色塗料粒子分散物(I)の貯蔵安定性を向上させる効果がある。
【0051】
かかるポリオキシアルキレン単位を有する化合物としては上記水性樹脂(a1)の説明で列記したごときポリオキシアルキレン単位を有する乳化剤に加えて、ポリオキシアルキレン単位を有する顔料分散剤を挙げることができる。
【0052】
ポリオキシアルキレン単位を有する乳化剤の具体例としては、ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
一方、ポリオキシアルキレン単位を有する顔料分散剤としては、ポリオキシエチレン単位及び/又はポリオキシプロピレン単位を有し、且つアニオン性基を有する化合物であることが適している。
【0054】
上記ポリオキシアルキレン単位を有する化合物は、水性樹脂(a1)の重合時の乳化剤として、あるいは水性樹脂組成物(A)の製造段階でそのまま配合することによって水性樹脂組成物(A)中に含ませることができ、そのトータルの含有量としては、水性樹脂(a1)の固形分質量を基準にして通常0.5〜8質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲内に調整されることが着色塗料粒子分散物(I)及び着色塗料粒子分散物(I)を用いて製造される水性多彩模様塗料の製造安定性、これらから形成される塗膜の耐水性の点から適している。
【0055】
上記水性樹脂組成物(A)は、水性樹脂(a1)、金属化合物(a2)及び水を含んでなるものであり、それ以外に必要に応じてさらに、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料、バルーン等の比重調整材、増粘剤、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、水性撥水剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の難燃化剤、香料、表面調整剤などを含有することができる。
【0056】
上記水性樹脂組成物(A)は、得られる着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の仕上がり性の点から体質顔料を含むことが望ましく、その含有量としては水性樹脂(a1)固形分質量に対して10〜200質量%、特に20〜150質量%の範囲内にあることが着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性の点から適している。
【0057】
また、上記水性樹脂組成物(A)は、pHが6.0〜13.5、特に7.5〜13.0の範囲内にあることが、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性及び該着色塗料粒子分散物(II)を用いて形成される塗膜の仕上がり性の点から適している。
【0058】
上記の通り得られる水性樹脂組成物(A)は固形分が20〜70%、特に30〜60%の範囲内となるように調整されることが、着色塗料粒子分散物(I)の高固形分化に寄与でき、また製造安定性の点から適している。
【0059】
本明細書において固形分(%)は、上記固形分率と同様の方法で測定できるものであり、固形分率に100を乗じた値である。
【0060】
水性着色塗料組成物(B):
本発明の製造方法において、水性着色塗料組成物(B)は、粒状化されることによって着色塗料粒子となりうる組成物であり、着色剤を含む水性塗料組成物であって、従来公知のものを制限なく使用することができ、固形分が20〜60%、特に25〜50%のものを使用することが適している。
【0061】
特に上記水性着色塗料組成物(B)としては、水性樹脂(b1)、着色剤(b2)及び水溶性多糖類(b3)を含むものであることが望ましい。
【0062】
上記水性樹脂(b1)としては、水に溶解または分散可能な樹脂であって、従来公知の水性樹脂を制限なく使用することができ、例えば上記水性樹脂(a1)の説明で列記したごとき樹脂を使用することができる。
【0063】
着色剤(b2)としては、顔料及び染料を使用することができ、特に顔料が好適である。顔料としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0064】
他方、染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾ−ルアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アゾメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフトキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記着色剤(b2)の配合量は、着色塗料粒子分散物(I)による着色性、比重、耐久性、耐水性などの観点から、水性樹脂(b1)の質量を基準にして、通常0.01〜500質量%、好ましくは0.05〜400質量%、さらに好ましくは0.1〜300質量%の範囲内であることが好適である。
【0066】
上記水溶性多糖類(b3)は、水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)が接触し、水溶性多糖類(b3)が金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、一般に約3,000〜約2,000,000、特に約5,000〜約1,000,000の範囲内の数平均分子量を有し且つ約5g/l(25℃水)以上の溶解度を示すものが好適であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
水溶性多糖類(b3)は、着色塗料粒子分散物(I)の貯蔵安定性、着色塗料粒子を作製する際の取扱性、着色塗料粒子分散物(I)を用いて形成される塗膜の耐水性などの観点から、水性樹脂(b1)、着色剤(b2)及び水溶性多糖類(b3)の合計質量を基準として、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜9質量%、さらに好ましくは1.0〜7.0質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0068】
また、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性、貯蔵安定性を良好にする目的で、上記水性着色塗料組成物(B)はポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含むことが適している。
【0069】
かかるポリオキシアルキレン単位を有する化合物としては、上記水性樹脂組成物(A)の説明で列記したごとき化合物を挙げることができ、適宜選んで使用することができる。
【0070】
該ポリオキシアルキレン単位を有する化合物は、水性樹脂(b1)の重合時の乳化剤として、着色剤(b2)の顔料分散剤として、または水性着色塗料組成物(B)の製造段階でそのまま配合することによって水性着色塗料組成物(B)中に含ませることができるものであり、そのトータルの配合量としては、水性樹脂(b1)の固形分質量を基準にして通常0.5〜8質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲内に調整されることが着色塗料粒子分散物(I)及びそれを用いて製造される水性多彩模様塗料の製造安定性、形成される塗膜の耐水性の点から適している。
【0071】
また着色塗料粒子分散物(I)の製造において着色塗料粒子中の着色剤(b2)の均一分布を容易にするため、水性着色塗料組成物(B)は増粘剤を含むことが適している。
【0072】
該増粘剤としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。該増粘剤の使用量は、水性樹脂(b)の固形分質量を基準にして、通常0.01〜20質量%、好ましくは0.02〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%の範囲内であることができる。
【0073】
上記水性着色塗料組成物(B)は、さらに、必要に応じて、バルーン等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の難燃化剤、香料、表面調整剤などを含有することができる。
【0074】
着色塗料粒子分散物(I)の調製
本発明の製造方法においては金属化合物(a2)由来の金属イオンを含有する上記水性樹脂組成物(A)と、水性着色塗料組成物(B)とを接触させることにより着色塗料粒子が形成され、該粒子が分散されてなる着色塗料粒子分散物(I)を製造することができる。この接触は、例えば、注射器の先端から水性着色塗料組成物(B)を水性樹脂組成物(A)中に滴下する方法;水性着色塗料組成物(B)を遠心力を利用して飛散させ、水性樹脂組成物(A)中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から水性着色塗料組成物(B)を霧化させ、水性樹脂組成物(A)中に滴下する方法;水性着色塗料組成物(B)を水性樹脂組成物(A)中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行うことができる。
【0075】
また、本発明の製造方法によれば、水性樹脂組成物(A)と、水性着色塗料組成物(B)とを接触させる際、一種の水性樹脂組成物(A)に対して1種の水性着色塗料組成物(B)を接触させてもよいし、あるいは1種の水性樹脂組成物(A)に対して、色調が互いに異なる2種以上の水性着色塗料組成物(B)を順次接触させることによって、水性媒体中に色調の異なる複数の着色塗料粒子が分散されてなる着色塗料粒子分散物を製造することで工程を省略することも可能である。
【0076】
水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)は、水性着色塗料組成物(B)中に水溶性多糖類(b3)が含まれている場合、水性樹脂組成物(A)中の金属化合物(a2)が、水性着色塗料組成物(B)中の水溶性多糖類(b3)のカルボキシル基に由来する基1molに対して0.2〜3mol、好ましくは0.5〜2molの範囲内となるような割合で使用することが、着色塗料粒子分散物(I)の製造安定性、水性樹脂組成物(A)の貯蔵安定性、水性多彩模様塗料から形成される塗膜の耐水性の観点から好ましい。
【0077】
上記カルボキシル基に由来する基としては、カルボキシル基、カルボン酸金属塩基及びカルボン酸イオン性基(−COO)を挙げることができる。
【0078】
また、水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)は、(A)/(B)の質量比が通常5/1〜1/10、好ましくは3/1〜1/5、さらに好ましくは2/1〜1/3の範囲内となるような割合で使用することができる。
【0079】
上記の如くして形成される着色塗料粒子の大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、その用途などに応じて適宜変えることができ、例えば、水性樹脂組成物(A)及び水性着色塗料組成物(B)の組成、攪拌速度、水性着色塗料組成物(B)の水性樹脂組成物(A)への滴下の仕方等により調整することができる。
【0080】
上記製造方法により得られる着色塗料粒子分散物(I)は、水性着色塗料組成物(B)に由来する水性樹脂(b1)以外に水性樹脂組成物(A)に由来する水性樹脂(a1)を含んでいるので高固形分であることができる。着色塗料粒子分散物(I)の固形分としては具体的には30%以上であることができる。
【0081】
水性多彩模様塗料:
以上に述べた本発明の製造方法によれば、製造途中の各段階における中間原料の貯蔵安定性が良好でありながら着色塗料粒子を安定に製造でき、しかも最終的に得られる着色塗料粒子分散物(I)中における着色塗料粒子の貯蔵安定性が良好となり得る。
【0082】
本発明においては得られる着色塗料粒子分散物(I)を用いて、色調の異なった複数の着色塗料粒子分散物を組み合わせることにより、あるいは水性樹脂組成物(A)に対して色調の異なる複数の水性着色塗料組成物(B)を順次接触させることにより得られる色調の異なる複数の着色塗料粒子が分散されてなる着色塗料粒子分散物を用いることによって、水性多彩模様塗料を製造することができる。
【0083】
また、上記水性多彩模様塗料の製造方法においては、形成される塗膜の耐水性を向上させるために必要に応じて上記着色塗料粒子分散物(I)に加えて塗膜形成成分(II)をさらに加えることも可能である。
【0084】
上記塗膜形成成分(II)は、それ自体成膜性を有するものであり、非架橋型及び架橋型のいずれであってもよく、また、水性型、粉体型、有機溶剤型等のいずれであってもよいが、着色塗料粒子との親和性や塗料組成物としての貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂(c)を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
【0085】
上記水性樹脂(c)としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを同様に使用することができ、例えば、水性樹脂(a1)について前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0086】
また、上記水性多彩模様塗料から形成される塗膜の耐水性等の点から、着色塗料粒子分散物(I)と上記塗膜形成成分(II)は、それぞれ、互いに反応し得る官能基(m)及び(n)を含有することができ、着色塗料粒子分散物(I)が、反応性官能基(m)を含有してなり、且つ塗膜形成成分(n)が、反応性官能基(m)と反応し得る反応性官能基(n)を有するものであることが望ましい。
【0087】
上記着色塗料粒子内部に含まれる反応性官能基(m)と塗膜形成成分(II)中に含まれる反応性官能基(n)の組み合わせとしては、反応性官能基(x)及び反応性官能基(y)について前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0088】
例えば、着色塗料粒子分散物(I)が、カルボニル基含有水性樹脂を含み、塗膜形成成分(II)がカルボニル基含有水性樹脂を含んでなり、着色塗料粒子分散物(I)及び/又は塗膜形成成分(II)がヒドラジン誘導体を含むことができる。
【0089】
上記ヒドラジン誘導体としては前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0090】
本発明において塗膜形成成分(II)は、着色塗膜を形成するものであっても或いはクリヤー塗膜を形成するものであってもよく、着色塗膜を形成する場合には必要に応じて着色剤を含むことができる。
【0091】
塗膜形成成分(II)に含ませることができる着色剤としては、水性着色塗料組成物(B)における着色剤(b2)として前記で例示したものの中から適宜選択して使用することができる。また、塗膜の乾燥性向上、適度な艶、触感向上などの観点から、該塗膜形成成分(II)に前述の如き体質顔料を配合することができる。
【0092】
塗膜形成成分(II)に着色剤及び/又は体質顔料を配合する場合、その合計配合量は、塗膜形成成分(II)中に含まれる水性樹脂(c)固形分質量に対して、通常5〜300質量%、好ましくは10〜200質量%、さらに好ましくは15〜150質量%の範囲内であることができる。
【0093】
水性多彩模様塗料の製造において、着色塗料粒子分散物(I)以外に上記塗膜形成成分(II)を配合する場合、その配合割合は、水性樹脂組成物(A)の固形分質量100質量部を基準として塗膜形成成分(II)の固形分質量が0.5〜100質量部、特に1〜50質量部の範囲内にすることができる。
【0094】
上記水性多彩模様塗料は、必要に応じて塗料用添加剤を含ませることができ、該塗料用添加剤としては、中和剤、粘性調整剤、バルーン粒子、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0095】
上記本発明の製造方法により得られる水性多彩模様塗料は固形分を高くすることができ、具体的には30%以上の固形分を有することができ、肉持ち感があり且つ耐水性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成することができる。
【0096】
上記水性多彩模様塗料が適用される被塗面としては、例えば、石膏ボード、コンクリート壁、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗膜面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面などを挙げることができる。
【0097】
上記水性多彩模様塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。また、ローラーを使用する場合は、ウールローラー、砂骨ローラー等を使用することができ、その塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、1回あたり通常100〜1,000g/m、好ましくは150〜700g/mの範囲内とすることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0098】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0099】
また、水性多彩模様塗料を塗装する前に下塗り塗料を塗装し、乾燥させる工程を設けてもよい。
【0100】
ここで用いられる下塗り塗料としては、基材表面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、シーラー、下地調整材等の下塗り塗料を使用することができる。また、通常の上塗り塗料を本発明の塗料組成物の下地形成用塗料として塗装することも可能である。
【0101】
かかる下地形成用の上塗り塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。
【0102】
下塗り塗料を塗装する場合、必要に応じて、2種以上の下塗り塗装を重ねて行うこともできる。
【0103】
上記下塗り塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。
【0104】
上記下塗り塗料の塗布量は、塗装する基材の種類などに応じて変えることができるが、通常1回あたり50〜2,000g/m2、好ましくは70〜1,000g/mの範囲内とすることができる。
【0105】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0107】
エマルションの製造
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記の組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 375部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 155部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 40部
アクリル酸 20部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の固形分酸価は15mgKOH/g、平均粒子径は180nm、pHは8.3であり、塩化カルシウムによる凝集率は0.1%、マロン式機械安定性試験機による凝集率は0.2%であった。
(注1) 「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0108】
製造例2
上記製造例1におけるプレエマルションの代わりに下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションを用いる以外は製造例1と同様にして、固形分が55%のエマルション(a2)を得た。エマルション(a2)の固形分酸価は1mgKOH/g、平均粒子径は245nm、pHは8.2であり、塩化カルシウムによる凝集率は18%、マロン式機械安定性試験機による凝集率は10%であった。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 430部
n−ブチルアクリレート 259部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
アクリル酸 1部
「ニューコール707SF」(注1) 66部。
【0109】
水性樹脂組成物の製造
製造例3〜8
500ミリリットルのステンレス容器に、下記表1に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、水性樹脂組成物(A−1)〜(A−6)を得た。
【0110】
【表1】

【0111】
(注2)「タルクSS」:商品名、日本タルク社製、タルク、
(注3)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤、
(注5)「アデカノールUH−438」:商品名、アデカ社製、増粘剤。
【0112】
白顔料ペーストの製造
製造例9
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、白顔料ペースト(b1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注6) 15部
「DISPER BYK−190」(注7) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「TITANIX JR−605」(注8) 500部
(注6)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤、
(注7)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、スチレンマレイン酸共重合体のポリオキシエチレン変性物、顔料分散剤、
(注8)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白。
【0113】
赤錆顔料ペーストの製造
製造例10
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて60分間攪拌混合することにより、赤錆顔料ペースト(b2)を得た。
水 400部
「スラオフ72N」(注6) 15部
「DISPER BYK−190」(注7) 48部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
酸化鉄 240部。
【0114】
着色塗料粒子用水性着色塗料組成物の製造
製造例11
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、着色塗料粒子用水性着色塗料組成物(B−1)を得た。
55%エマルション(a1) 175部
白顔料ペースト(b1) 50部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 2部
「TEXANOL」(注3) 11部
「SNデフォーマー380」(注4) 1部
「アデカノールUH−438」(注5) 1部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 105部。
【0115】
製造例12
上記製造例11における白顔料ペースト(b1)の代わりに赤錆顔料ペースト(b2)を用いる以外は製造例11と同様にして、着色塗料粒子用水性着色塗料組成物(B−2)を得た。
【0116】
着色塗料粒子分散物の製造
実施例1
1リットルステンレス容器に、上記製造例3で得られた水性樹脂組成物(A−1)を280部仕込み、50mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数1500rpmで攪拌しながら、上記製造例11で得られた水性着色塗料組成物(B−1)345部を徐々に容器内に滴下し、着色塗料粒子を生成させ、ついで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌し、着色塗料粒子分散物(C−1)を得た。
【0117】
実施例2〜3
上記実施例1において、水性樹脂組成物と滴下する水性着色塗料組成物の配合を表2の通りとする以外は上記実施例1と同様にして着色塗料粒子分散物(C−2)〜(C−3)を製造した。
【0118】
色調の異なる複数の着色塗料粒子を含有する着色塗料粒子分散物の製造
実施例4
1リットルステンレス容器に、上記製造例3で得られた水性樹脂組成物(A−1)を280部仕込み、50mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数1500rpmで攪拌しながら、上記製造例11で得られた水性着色塗料組成物(B−1)245部を徐々に容器内に滴下し、白色塗料粒子を生成させた後、製造例12で得られた水性着色塗料組成物(B−2)100部を徐々に容器内に滴下し、赤錆色塗料粒子を生成させた後、容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌し、白色塗料粒子と赤錆色塗料粒子が分散されてなる着色塗料粒子分散物(C−4)を得た。
【0119】
実施例5〜9および比較例1
上記実施例4において、水性樹脂組成物と滴下する水性着色塗料組成物を表2の通りとする以外は上記実施例4と同様にして着色塗料粒子分散物(C−5)〜(C−10)を製造した。
【0120】
上記実施例1〜9及び比較例1で得た着色塗料粒子分散物について製造安定性を評価した。評価結果を表2に併せて示す。
【0121】
【表2】

【0122】
(*1)着色塗料粒子分散物の製造安定性
攪拌中の容器の中を目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:着色塗料粒子が崩壊することなく容易に製造でき、容器壁面に凝集物の付着がない、
○△:着色塗料粒子が崩壊することなく容易に製造でき、容器壁面に凝集物の付着が若干あるが実用レベル、
△:着色塗料粒子の崩壊が一部認められる、または容器壁面に凝集物の付着が認められる、
×:容器内液全体が凝集し、攪拌できない。
【0123】
水性多彩模様塗料の製造
実施例10〜18および比較例2
1リットルのステンレス容器に、下記表3に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、水性多彩模様塗料(D−1)〜(D−10)を得た。得られた塗料の塗膜性能評価も併せて表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
(注9)水性クリヤー(c1):
2リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料(c1)を得た。
55%エマルション(a1) 750部
「TEXANOL」(注3) 50部
水 279部
「タルク SS」(注2) 250部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注5) 6部。
【0126】
試験塗板の作製
スレート板(150×70×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し乾燥させた後、「ビニデラックス300」(関西ペイント社製、JIS K5663 1種適合アクリルエマルション系塗料)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させたものを被塗板とし、この上に各多彩模様塗料を塗布量が300g/mになるようにスプレーで塗装した。その後、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥して、各試験板を得、各試験塗板を下記性能試験に供した。
(*2)肉持ち感
各試験塗板の塗膜を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:肉持ち感が十分にある、
○△:肉持ち感がややある、
△: 肉持ち感がやや乏しい、
×:肉持ち感が乏しい。
(*3)耐水性
各試験塗板を23℃の上水に2日間浸漬し、引き上げた後、目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:良好、
○△:艶引けが若干認められる、
△:艶引け、白化、フクレが認められる、
×:著しいフクレが認められる、又は塗膜が軟化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)とを接触させることにより着色塗料粒子が水性媒体中に分散されてなる着色塗料粒子分散物(I)を製造する製造方法であって、該水性樹脂組成物(A)が、水性樹脂(a1)、金属化合物(a2)及び水を含み、水性樹脂(a1)の酸価が2〜20mgKOH/gの範囲内にあることを特徴とする着色塗料粒子分散物(I)の製造方法。
【請求項2】
水性樹脂(a1)が、塩化カルシウムによる凝集率が3.0%以下にある請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水性樹脂(a1)が、マロン式機械安定性試験機による凝集率が3.0%以下にある請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
水性樹脂組成物(A)と水性着色塗料組成物(B)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
金属化合物(a2)が、その成分の一部として金属水酸化物及び/又は有機酸金属塩を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
水性樹脂組成物(A)が、ポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
水性樹脂組成物(A)が、体質顔料をさらに含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
水性樹脂組成物(A)が、固形分が20〜70%の範囲内にある請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
水性着色塗料組成物(B)が、水性樹脂(b1)、着色剤(b2)及び水溶性多糖類(b3)を含む請求項1ないし8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
水性着色塗料組成物(B)が、ポリオキシアルキレン単位を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
1種の水性樹脂組成物(A)に対して、色調が互いに異なる2種以上の水性着色塗料組成物(B)を順次接触させることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
水性樹脂組成物(A)中の金属化合物(a2)の量が、水性着色塗料組成物(B)中の水溶性多糖類(b3)のカルボキシル基に由来する基1molに対して0.2〜3molの範囲内にある請求項9ないし11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる着色塗料粒子分散物(I)を用いることを特徴とする水性多彩模様塗料の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる着色塗料粒子分散物(I)に、塗膜形成成分(II)をさらに加えてなる水性多彩模様塗料の製造方法。
【請求項15】
着色塗料粒子分散物(I)と塗膜形成成分(II)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(m)及び(n)を含有する請求項14に記載の水性多彩模様塗料の製造方法。

【公開番号】特開2008−214385(P2008−214385A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49725(P2007−49725)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】