説明

着色樹脂成形物

【課題】有機顔料あるいはカーボンブラックである顔料が、熱可塑性樹脂中に、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく高濃度で含有されている着色樹脂成形物を提供すること。
【解決手段】融点又は軟化点が110℃以下である一種以上の熱可塑性樹脂と、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料を含む着色樹脂成形物であって、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記顔料を5〜100質量部含み、かつ、前記顔料が、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく含有されていることを特徴とする着色樹脂成形物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報技術関連色材及び熱可塑性樹脂用マスターバッチなどに使用される着色樹脂成形物であって、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる顔料が、熱可塑性樹脂中に、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく高濃度で含有されている着色樹脂成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料をベース樹脂に高濃度に分散した着色樹脂成形物(所謂マスターバッチ)は、顔料分散を一次粒子レベルにできるだけ近づけるために、ベース樹脂に顔料粉末を配合して、強力混練加工機械(バンバリーミキサー、インテンシブミキサー)、加圧ニーダー及び3本ロール等によって強力なせん断力を加えることが行われてきた。
バッチ式にあってチャンバー内でケーシングとローター間の間隙に生ずる強いせん断力を得るためには、混練時における配合品の粘度を高く制御することが不可欠とされ、配合する顔料の濃度を上げたり、チャンバーの温度を水冷ジャケット等でできるだけ下げたりする。
しかし、これらの顔料分散方法では、高粘度の状態で強いせん断力を顔料粒子に与えるため、顔料本来の有する色調が損なわれることが多い。例えば、カーボンブラック顔料においては漆黒で深みのある色調が高せん断力下の分散工程で赤味乃至は黄味の色調を帯びた不鮮明な色に仕上がる。また、有彩色の有機顔料では顔料の化学構造に由来する結晶の安定性から、強いせん断力を受けることによって結晶が伸びたり、全体が大きくなったりするものもあり、結果として不透明で鮮明な色調を失ったものとなる。
また、特許文献1には、顔料、水および熱可塑性樹脂をプレミックスし、あるいは、顔料水性ウェットケーキと熱可塑性樹脂をプレミックスして、これを二軸スクリュー押出機内で、熱可塑性樹脂の融点又は軟化点付近の温度で混練して相置換および脱水する顔料分散性に優れた着色用樹脂組成物の連続的な製造方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、顔料水性ウェットケーキなどが流動性に乏しいため、二軸押出混練機のホッパーへの供給作業が困難であるなど、実際には、作業性不良や設備等の汚染の問題があった。また、水を飽和状態で含んでいる顔料水性ウェットケーキと熱可塑性樹脂をプレミックスすると、ウェットケーキは樹脂との界面で樹脂に水をとられて、顔料が乾燥し、部分的に凝集が起こり、結果として分散不良の原因となった。
さらに、特許文献1に記載の方法では、顔料は終始熱可塑性樹脂と同じ熱履歴を受けるので、分散加工時の負荷に耐性を持たない有機顔料やカーボンブラックは結晶が変質して透明性や鮮明性が損なわれた。
以上、従来、有機顔料あるいはカーボンブラックを顔料とした着色樹脂成形物であって、熱可塑性樹脂中に、該顔料が非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく高濃度で含有されている着色樹脂成形物は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3146828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有機顔料あるいはカーボンブラックを顔料とした着色樹脂成形物であって、熱可塑性樹脂中に、該顔料が非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく高濃度で含有されている着色樹脂成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂を二軸押出混練機のホッパーより供給し、有機顔料あるいはカーボンブラックの顔料水性分散体を一軸偏心ネジポンプを用いて、二軸押出混練機のバレルの途中で定量注入し、樹脂の溶融温度以上の温度とした二軸押出混練機のバレル内で、溶融した樹脂と顔料水性分散体とを混合・混練して顔料を水相から樹脂相に転相させ、水分を分離することにより、熱可塑性樹脂中に、顔料が非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく高濃度で含有されている着色樹脂成形物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、融点又は軟化点が110℃以下である一種以上の熱可塑性樹脂と、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料を含む着色樹脂成形物であって、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記顔料を5〜100質量部含み、かつ、前記顔料が、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく含有されていることを特徴とする着色樹脂成形物を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の着色樹脂成形物は、熱可塑性樹脂中に有機顔料あるいはカーボンブラック顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料が、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく含有されているので、情報技術関連色材、熱可塑性樹脂用マスターバッチなどに使用したときに、十分な顔料濃度であるために目的を達する着色材として機能し、かつ、該顔料本来の色調が発現しているために従来よりも美麗な色調の成形物品等を得ることができるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の着色樹脂成形物を得るための連続式顔料・樹脂組成物製造プロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の着色樹脂成形物は、融点又は軟化点が110℃以下である一種以上の熱可塑性樹脂100質量部に対して、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料を5〜100質量部含み、かつ、該顔料が、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく含有されているものである。
【0009】
本発明で使用する熱可塑性樹脂としては、その融点又は軟化点が水の沸点より僅かに高い110℃以下のものであれば何れも使用することができる。樹脂の軟化点が90℃以下であれば、後述する本発明の着色樹脂成形物の好ましい製造方法において、顔料の転相と拮抗する沸騰の影響への配慮が要らないため好ましく使用することができる。
具体的には、低密度ポリエチレン、EPラバー、エチレン酢ビ共重合体、αオレフィン・エチレン共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、合成もしくは分解型ポリエチレンワックス、ポリエステル等が挙げられる。
【0010】
本発明で使用する顔料は、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料を必須成分として含むものである。有機顔料及びカーボンブラックは親油性であるため、後述する本発明の着色樹脂成形物の好ましい製造方法において、転相が起こり易い。
有機顔料の種類は限定されないが、例えば、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、イソインドリノン系、ジオキサン系、インジゴ系等の有機顔料が挙げられ、更に詳細には、ジスアゾイエロー、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントイエロー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の従来公知の顔料が使用できる。
【0011】
そして、本発明の着色樹脂成形物において、熱可塑性樹脂100質量部に対して、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料は5〜100質量部含まれる。
顔料が5質量部より少ないと、着色材としての役割を果たすことができず、100質量部より多いと樹脂中に良好に分散させることが困難になる。
【0012】
なお、本発明の着色樹脂成形物においては、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料の他に、無機顔料、光輝剤等を適宜の量で含有させることができる。
無機顔料としては、例えば、体質顔料 、酸化チタン系顔料 、酸化鉄系顔料 、スピンネル顔料等が挙げられ、更に詳細には、カーボンブラック、酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、フェライト、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化アンチモン、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、水酸化亜鉛、水酸化セリウム、水酸化ランタン、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化マンガン、酸化バナジウム、炭酸亜鉛、炭酸コバルト、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタンイエロー、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、コバルトアルミクロムブルー、コバルトクロムグリーン、セルリアンブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、銅クロムブラック、銅−鉄マンガンブラック、クロムスズピンク、クロムアルミナピンク、バナジウムブルー、プラセオジウムイエロー、バナジン酸ビスマスイエロー、ビクトリアグリーン、ケイ酸コバルト、ケイ酸ジルコニウム、タルク、カオリン、ゼオライト等を挙げることができる。
また、光輝剤は、成形物表面に再帰反射特性や光散乱性を与え、見る角度で色調が変化する材料として有効な顔料である。例えば、パールマイカ顔料として、天然雲母(マイカ)や合成マイカに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化すず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト等の金属酸化物等を被覆したものが使用できる。
更に、本発明においては、成形物外観の目的色微調整に応じた、染料の同時使用も可能である。例えば、直接染料、塩基性染料、カチオン染料、酸性染料、媒染染料、酸性媒染染料、硫化染料、ナフトール染料、分散染料、反応染料等の従来公知の染料が使用できる。
【0013】
本発明の着色樹脂成形物の好ましい製造方法は次のような方法である。
二軸押出混練機に、熱可塑性樹脂をホッパーから定量供給し、二軸押出混練機バレルの途中で一軸偏心ネジポンプを用いて顔料の水性物(顔料水性分散体)を注入し、樹脂の溶融温度以上の温度で両者を混合・混練して顔料を水相から樹脂相に転相させ、分離した水分を排出することで、溶融樹脂中に顔料を非凝集状態で高濃度に分散させた組成物を得、その後、顔料・樹脂組成物は押出機のダイスから押し出され、冷却ベルトなどで冷却し、ペレタイザーあるいは邂砕機でチップ化することにより本発明の着色樹脂成形物を得ることができる。
この製造方法によれば、比較的低温度のもと短時間で、弱いせん断力で顔料分散工程を完結することから、顔料そのものに与える負荷を著しく軽減することが可能になるため、漆黒のカーボンブラック、有彩色の有機顔料は高濃度で分散処理されているにもかかわらず、これら顔料が本来有する鮮明さと透明性を維持した着色樹脂成形物を得ることができる。
以下、この製造方法について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の着色樹脂成形物の好ましい製造方法において使用する顔料の水性物(顔料水性分散体)は、有機顔料合成のフィルタープレス工程から得られる顔料水性ウェットケーキはそのものを無処理で使うことができ、乾燥粉末で入手する顔料は水を予め入れた撹拌羽根付き混合槽に顔料を投入してよく撹拌して顔料水性分散体を調製する。後者の顔料水性分散体は、必要に応じて、界面活性剤を添加して、及び/又はビーズミルやボールミルを使用して、顔料分の高濃度化や顔料水性分散体の分散を確実なものにすることができる。
ウェットケーキ状の顔料水性分散体における水の含有量は、40〜95質量%(顔料固形分5〜60質量%)であることが好ましい。40質量%以下であると水が顔料に吸収されて顔料水性分散体は流動性が乏しくその取り扱いが困難であり、一軸偏心ネジポンプによってもその移送が難しく、95質量%以上では水分が多すぎて、樹脂との混練時の顔料の水相から樹脂相への転相が十分に起こらない。
【0015】
本発明の着色樹脂成形物の好ましい製造方法においては、二軸押出混練機としては、混練能力に優れ、加工途中での液体物の強制注入等への自由度があることから同方向回転二軸スクリュー押出機を使用する。該二軸押出混練機は、主に、樹脂を供給するためのホッパー、フィーダー、及び、二軸スクリューを収めたバレルからなる。バレルは、標準のセグメントバレルと、上流側から、顔料水性分散体を注入するためのノズル(注入口)、脱水した水を排出するためのサイドフィーダー、残余の水分を排出する開放ベント口、真空ポンプに連結された真空ベント口を備えたセグメントバレルとを順次組み合わせたものであり、バレル全体の長さは、その指標であるL/D値が30以上、好ましくは40以上である。
また、スクリュー回転数は、L/D値やスクリュー形状によっても異なるが、150〜450rpmに設定することが好ましい。
二軸押出混練機の設定温度(内部ヒーター加熱温度)は、熱可塑性樹脂を溶融し、顔料との溶融混練を行うために、70〜125℃が好ましい。顔料水性分散体の注入口の部分では熱可塑性樹脂を溶融状態にできる温度であることを要し、それ以後はより高温であることが溶融混練、顔料の樹脂相への転相の観点から好ましいが、密閉された状態であっても125℃程度に抑えないと顔料の転相よりも、水の蒸発の方が優先されるので好ましくない。
【0016】
本発明の着色樹脂成形物の好ましい製造方法において、二軸押出混練機バレルの途中で顔料水性分散体を注入するためには、定量性、無脈動、余分なせん断力がかからないという点から、一軸偏心ネジポンプを用いることが好ましい。
一軸偏心ネジポンプは、金属製のローターとゴム製のステーターからなるポンプ本体の部分と本体に材料を送り込む機能を有するケーシング部、スクリュー部並びにホッパー等の関連部品から構成される。上記の構成からなる標準的な一軸偏心ネジポンプであれば使用可能であるが、ポンプ本体の長さが二軸押出混練機に強制注入する際に被移送物に加えられる圧力に相関するため、水を移送する時の能力として少なくとも0.5MPa以上の圧力で入れることが可能な本体長さを有する一軸偏心ネジポンプが好ましい。この圧力以下の仕様の一軸偏心ネジポンプでは、硬くて粘調な顔料水性分散体を二軸押出混練機側からくる圧力抵抗に勝つことができず、確実な強制注入が難しい。
このような一軸偏心ネジポンプとしては、兵神装備(株)製のモーノポンプが好ましく使用できる。モーノポンプは、雌ねじ形ステーターと雄ねじ形ローターとを有し、該ローターが該ステーター内に嵌挿されており、該ステーターの中心軸線を中心にして該ローターが偏心回転することにより、両者間にできる空間容積に入った被移送物を、ローターの回転に従って移送する一軸偏心ネジポンプである。
【0017】
本製造方法は、次のように行う。
二軸押出混練機に、熱可塑性樹脂をホッパーから定量供給し、二軸押出混練機バレルの途中で一軸偏心ネジポンプにより顔料水性分散体を注入する。ここで、顔料水性分散体は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、顔料が5〜100質量部となるような量が供給される。二軸押出混練機の中で、常圧下、樹脂の溶融温度以上の温度で両者を混合・混練して顔料を水相から樹脂相に転相させ、分離した水分や水蒸気を二軸押出混練機のベント口から排出する。水分を除去した混練物は、二軸押出混練機の中でさらに混練し、顔料を樹脂の中に微分散させる。その後、顔料・樹脂組成物は押出機のダイスから押し出され、冷却ベルトなどで冷却し、ペレタイザーあるいは邂砕機でチップ化されて本発明の着色樹脂成形物を得る。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものではない。なお、「部」および「%」は質量基準である。
【0019】
[実施例1]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)40部とピグメントイエローPY.12水性ウェットケーキ(大日精化社製「DY728」、顔料合成のフィルタープレス工程で得られたもの、顔料固形分:22%)60部の混合割合で、両者の二軸押出混練機内での混合・混練を次のように行うことで顔料・樹脂組成物を製造した。
ポリエステル樹脂粉末を二軸押出混練機(東芝機械社製「TEM−26SS」、スクリュー径:26mm、L/D値:64、バレル数:16)に装備されたスクリュー式フィーダーより一定の供給速度で押出混練機ホッパーに投入した。二軸押出混練機のバレルの設定温度は図1に示す装置のホッパー下からバレル全体の中ほどまでは90℃とし、それ以後は110℃に設定し、スクリューの回転数は300rpmで運転した。顔料水性ウェットケーキを、一軸式偏心ネジ式ポンプ(兵神装備社製「モーノポンプ4NES20」)を用いて、樹脂が溶融状態になっている第4バレルに注入して、二軸押出混練機内で顔料の転相と脱水を連続的に行った。2本のスクリューが融けて出てくる樹脂を押し戻しながらサイドフィーダー下方から殆どの水を排出し、残余の水分はバレル下流部の開放ベント口から並びに真空吸引下の真空ベント口から除去された。
この後、当該顔料・樹脂組成物はスクリーンメッシュでろ過した後、ダイヘッドのノズルより融けた状態でストランド状に排出させた。このものを空冷のキャタピラー式冷却装置を経てペレタイザーでダイス状に成形して着色樹脂成形物を得た。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の色調で透明性を損なうことなく含有されていた。
【0020】
[実施例2]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)30部とピグメントイエローPY.12水性ウェットケーキ(大日精化社製「DY728」、顔料固形分:22%)70部の混合割合とした他は実施例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の色調で透明性を損なうことなく含有されていた。
【0021】
[実施例3]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)40部とフタロシアニンブルーPB.15.2水性ウェットケーキ(大日精化社製「SR5029」、顔料合成のフィルタープレス工程で得られたもの、顔料固形分:42%)60部の混合割合とした他は実施例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の色調で鮮明性を損なうことなく含有されていた。
【0022】
[実施例4]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)30部とフタロシアニンブルーPB.15.2水性ウェットケーキ(大日精化社製「SR5029」、顔料固形分:42%)70部の混合割合とした他は実施例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の色調で鮮明性を損なうことなく含有されていた。
【0023】
[実施例5]
ポリエチレンペレット(軟化点58℃)40部とピグメントイエローPY.12水性ウェットケーキ(大日精化社製「DY728」、顔料固形分:22%)60部の混合割合とした他は実施例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の色調で透明性を損なうことなく含有されていた。
【0024】
[実施例6]
実施例5で製造した着色樹脂成形物40部とピグメントイエローPY.12水性ウェットケーキ(大日精化社製「DY728」、顔料固形分:22%)60部の混合割合とした他は実施例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の色調で透明性を損なうことなく含有されていた。
【0025】
[実施例7]
アジテータとパドルの設置された混合槽に85部の水を入れ、カーボンブラック(ダイヤブラックHA、粒子径:32nm)15部を徐々に添加して、全て添加後約10分間混合して顔料水性分散体を得た。この顔料水性分散体とポリエチレンペレット(融点58℃)67部とを混合した他は実施例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の漆黒の色調で含有されていた。
【0026】
[実施例8]
カーボンブラックの種類をバルカン9(粒子径19nm)に代えた以外は実施例7と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、かつ、該顔料は、非凝集状態で、本来の漆黒の色調で含有されていた。
【0027】
[比較例1]
低密度ポリエチレン樹脂(融点110℃)とフタロシアニンブルーPB.15.2粉末(大日精化社製「SR5029」)を62部:38部の比率で1.5Lのバンバリーミキサーに入れて、樹脂がゲル化して顔料が混合され全体がひとつの塊になるまで約10分間高速回転(76rpm)し、更に水を水冷ジャケットに通してチャンバー全体を冷却しながら10分間低速回転(38rpm)で混練した。当該顔料・樹脂組成物は、熱いうちにバンバリーミキサーの前方ケーシングを開いて取り出し、2本ロールで均一にしてから、シーティングし、更に冷えないうちに角ペレタイザーによって前記シート状組成物をダイス状にカットして着色樹脂成形物を得た。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、凝集して分散状態は不良であり、かつ変質して本来の色調ではなく、樹脂成形物はブロンズ色であった。
【0028】
[比較例2]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)とピグメントイエローPY.12粉末(大日精化社製「DY728」)とを75部:25部の比率とした他は比較例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、凝集して分散状態は不良であり、かつ変質して本来の色調ではなく、樹脂成形物は不透明であった。
【0029】
[比較例3]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)とピグメントイエローPY.12水性ウェットケーキ(大日精化社製「DY728」、顔料固形分:22%)とを40部:60部の比率で3.5Lニーダーに仕込み、蒸気をジャケット内に通すことで加熱しながら20分間の混練、脱水を行って水を排出した。次に20分間蒸気を循環させて材料中の水分を蒸発させ、更に20分間装置内に水をジャケットに循環させて冷却しながら混練した。ここで取り出した塊を粉砕して着色樹脂成形物を得た。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、分散状態は良好であったが、変質して本来の色調ではなく、樹脂成形物は不透明であった。
【0030】
[比較例4]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)とピグメントイエローPY.12水性ウェットケーキ(大日精化社製「DY728」、顔料固形分:22%)との比率を30部:70部とした他は比較例3と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、分散状態は良好であったが、変質して本来の色調ではなく、樹脂成形物は不透明であった。
【0031】
[比較例5]
ポリエステル樹脂粉末(軟化点83℃)とピグメントイエローPY.12粉末(大日精化社製「DY728」)とを75部:25部の比率で配合した混合物を、二軸押出混練機(東芝機械社製「TEM−26SS」)のホッパーより供給して加工温度70〜100℃、スクリュー回転数300rpmで分散加工して、実施例1と同じ方法にてダイス状の着色樹脂成形物を得た。加工は顔料の嵩が大きいため、二軸押出混練機内部でのフィードネックを起し、不安定であった。更に、押出加工の最後の部分のスクリーニングの箇所で60メッシュ上の目詰まりも確認された。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、分散状態は不良であり、かつ、変質して本来の色調ではなく、樹脂成形物は不透明であった。
【0032】
[比較例6]
ポリエチレンペレット(軟化点110℃)とカーボンブラック(ダイヤブラックHA、粒子径:32nm)とを50部:50部の比率の混合物から比較例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、分散状態は良好であったが、カーボンブラック本来の漆黒さが失われて、樹脂成形物は赤味を帯びていた。
【0033】
[比較例7]
ポリエチレンペレット(軟化点110℃)とカーボンブラック(ダイヤブラックHA、粒子径:32nm)とを82部:18部の比率の混合物から比較例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含むが、該顔料は、分散状態は不良であり、かつ、カーボンブラック本来の漆黒さが失われて、樹脂成形物は赤味を帯びていた。
【0034】
[比較例8]
ポリエチレンペレット(軟化点110℃)とカーボンブラック(バルカン9、粒子径:19nm)とを50部:50部の比率の混合物から比較例1と同様にして着色樹脂成形物を製造した。
得られた着色樹脂成形物は、顔料を高濃度で含み、該顔料は、分散状態は良好であったが、カーボンブラック本来の漆黒さが失われて、樹脂成形物は黄味を帯びていた。
【0035】
【表1】

【0036】
PET:ポリエステル
PE:ポリエチレン
PY.12:ピグメントイエローPY.12(ジスアゾイエロー)
PB.15.2:フタロシアニンブルーPB.15.2
顔料濃度:得られた着色樹脂成形物中の顔料濃度
【符号の説明】
【0037】
1 ホッパー
2 バレル
3 注入口
4 サイドフィーダー
5 開放ベント口
6 真空ベント口
7 真空ライン
10 二軸押出混練機
20 一軸偏心ネジ式ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点又は軟化点が110℃以下である一種以上の熱可塑性樹脂と、有機顔料及びカーボンブラックから選ばれる一種以上の顔料を含む着色樹脂成形物であって、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記顔料を5〜100質量部含み、かつ、前記顔料が、非凝集状態で、透明性もしくは鮮明性を損なうことなく含有されていることを特徴とする着色樹脂成形物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144676(P2012−144676A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5905(P2011−5905)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】