説明

着色用コーティング剤組成物

【課題】 プラスチック等の表面に透明で鮮映な着色皮膜を形成し、屋外でも長期にわたり耐候性を保持し、必要に応じ剥離性の容易なコーテイング組成物を提供する。
【解決手段】 ブチラール樹脂、アルコール系溶剤・グリコールエーテル系溶剤・着色剤・分散剤・レベリング剤を主成分とするコーティング剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のヘッドランプ、テールランプ、マーカーランプをはじめプラスチックレンズカバーなどの、主に透明プラスチック基材に塗布することにより各種色彩を着色し、装飾を兼ねたファッション性を高めるための着色用コーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の窓ガラス等への着色目的で使用するコーティング剤について、たとえばアルコキシシラン樹脂を用いた透明な着色コーティング剤が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかし、二液混合式でガラス着色用であり、プラスチックには密着性が悪いためにプライマーコート等の接着促進が必要で、なおかつアルカリ洗剤で擦り取る必要がある。
【0003】
そのほか、ガラス着色専用のコーティング組成物が提案されているが、樹脂としてポリビニルアセタール樹脂が記載されている程度で、詳細は開示されていない(たとえば、特許文献2参照)。このコーティング剤はガラス製の瓶の表面に着色するためのもので、プラスチック基材の着色には不向きである。
【0004】
また、着色コーティング剤について別の特許が開示されているが、目的が遮蔽剤のため含有される顔料の粒径が0.05〜10ミクロンと大きく透明な着色コーティング膜を形成することができない。また、同特許においてブチラール樹脂が使用できるとの記載はあるが、詳細は記載されていない(たとえば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−262065号公報(段落0004、0012)
【特許文献2】特開2000−303025号公報(段落0010、0011)
【特許文献3】特開2001−254054号公報(段落0006〜0008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みになされたもので、自動車のヘッドランプ、テールランプ、マーカーランプなどの透明プラスチック基材に対して接着性が良好で、塗布された皮膜が透明で鮮映性が良く耐候性に優れ、かつ剥離性が容易な着色用コーテイング組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために請求項1にかかる着色用コーテイング組成物は、(A)樹脂成分(いわゆる、バインダー)であるブチラール樹脂3〜10質量部、(B)溶剤成分であるアルコール系溶剤60〜80質量部およびグリコールエーテル系溶剤20〜30質量部ならびに(C)着色成分である粒径100〜500nmの有機顔料0.05〜0.5質量部を含有することを特徴し、請求項2に記載のように、さらに、(D)レベリング剤0.01〜2.0質量部および(E)分散剤0.2〜2.0質量部を含有することができる。
【0007】
上記の構成を有する着色用コーテイング組成物によれば、塗布する際のコーティング剤の乾燥性や造膜性を考慮して塗りむらができないように速乾性のアルコール系溶剤と遅乾性のグリコール系溶剤とが効果的に調合されている。また、耐候性に優れた有機溶剤を使用し、透明性を確保するために粒径を100〜500nmにしている。
【0008】
請求項3に記載のように、前記(A)樹脂成分のブチラール樹脂が、ブチラール基mo
l%65〜80の、(イ)高重合度樹脂と(ロ)中重合度樹脂または低重合度樹脂との組みあわせからなることが好ましく、また請求項4に記載のように、前記(B)溶剤成分が、(イ)アルコール系溶剤60〜80質量部および(ロ)グリコールエーテル20〜30質量部を含む2種以上からなることが好ましい。
【0009】
請求項3の構成によれば、野外を走行する自動車等に使用するので耐候性を満足し、一方でファッション性を高めるために好みに応じて塗布したコーティング剤を簡単に剥離して任意の色に着色できる。
【0010】
請求項5に記載のように、前記(C)着色剤成分が、粒径100〜500nmの、銅フタロシアニン(β)およびハロゲン化銅フタロシアニン・ジケトプロロピールの有機顔料からなっていてもよく、請求項6に記載のように、前記(D)レベリング剤が、アクリルポリマー系のレベリング剤であってもよく、請求項7に記載のように、前記(E)分散剤が、不飽和ポリカルボン酸系の分散剤であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング組成物は上記のような構成からなるので、次のような優れた効果がある。
【0012】
請求項1〜5に記載された透明着色コーティング剤は広い面積にむら無く塗布でき、特定なブチラール樹脂を組みあわせることにより長期にわたり透明で耐久性の良い塗膜が得られ、必要に応じて毒性の低い溶剤を用いて簡単に剥離できる。
【0013】
さらに、特定な微小有機顔料を用いることにより透明性が良く、長期にわたり退色の少ない皮膜が得られる。
【0014】
よって、本発明によれば、たとえばランプカバーに透明で鮮明性のある皮膜を容易に形成でき、長期間その特性を保持し、必要に応じて簡単に剥離ができ、好みの色彩を塗布できる透明着色コーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる着色用コーテイング組成物について、実施の形態を詳しく説明する。
【0016】
本発明にかかる着色用コーティング剤組成物は、(A)樹脂成分であるアルコール可溶の樹脂としては、アクリル樹脂・ポリビニルピロリドン・ナイロンがあげられるが、自動車の外板に使用される場合にはガソリン・洗剤等の耐溶剤性が要求されるので、好ましくない。
【0017】
また、ブチラール樹脂について、ブチラール化度・重合度等により大きく耐溶剤性が異なる。とくに、ブチラール化度の違いにより、耐水・耐ウインドウオッシャーが大きく異なる。本発明の着色用コーテイング組成物に関して、ブチラール化度において65〜80%が本用途に最適であることを見出した。65%未満では耐水・耐ウインドウオッシャー性が充分でなく、80%を超えると皮膜硬度・接着性で好ましくない。
【0018】
さらに、重合度については、高重合度の樹脂が耐候性・耐溶剤性の面では好ましいが、溶解粘度が高くなって塗布する際に問題になる。このため、中重合度・低重合度の樹脂を組みあわせることが必要になる。また、中重合度単独にすると、液粘度については最適であるが、接着性の面で好ましくない。
【0019】
本発明の着色用コーテイング組成物に用いるブチラール樹脂は、エスレックBL−1、BL−2、BL−3、BL−S、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BH−S、BX−2、BX−5、BX−55(以上 積水化成品工業社製)、デンカブチラール#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP(以上 電気化学工業社製)などが挙げられる。
【0020】
これらの中で高重合度品としては、BH-S、#6000−EPが好ましく、中重合度品としては、BM-2、BM-S、#3000−1、#3000−2、#3000−4、低重合度品としてBL-S、#2000−L、が好ましい。
【0021】
本発明の着色用コーテイング組成物に用いる溶剤成分Bは、一部ハードコートが未塗布なポリカーボネートを侵食しない溶剤を選定する必要があり、アルコール系・エチレングリコールのモノエーテル・プロピレングリコールのモノエーテル等のグリコールエーテル系が好ましい。たとえば、アルコール系ではメタノール・エタノール・イソプロパノール・イソブタノール・n−ブタノールが挙げられ、グリコール系ではエチレングリコールモノメチルエーテル・エチレングリコールモノエチルエーテル・エチレングリコールモノブチルエーテル・プロピレングリコールモノエチルエーテル・プロピレングリコールモノプロピロピレンエーテル・プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0022】
本発明の着色用コーテイング組成物に用いる顔料Cは、屋外で使用するのを主目的にしているため、耐候性の優れた有機顔料の中から選ばれる。本発明で用いる有機顔料としては、縮合アゾ系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、スレン系、ベンズイミダゾロン系、キナクドリン系、ハロゲン化銅フタロシアニン系、銅フタロシアニン(β)系等が使用できる。具体的には、Yellow 3G、Yellow 3R、DPP Red B、Blue 4G、Green G
、Magenta 5B(以上 長瀬産業社製)、クロモファイン6820、6823、6830、6886、6887、2080、2700L,4911、4940、5310、5308(以上 大日精化工業社製)が挙げられ、1種または2種以上の組みあわせにより任意の色彩に着色できる。これらの着色剤の含有量は、0.05〜0.5質量部が好ましい。0.
05重量部未満では着色度が弱く、0.5質量部を超えると自動車等のライトの光の透過
性が悪くなるからである。
【0023】
本発明の着色用コーテイング組成物に用いるレベリング剤には、シリコン樹脂・水酸基を有するシリコン樹脂・アクリルポリマー・特殊ビニル系重合物等が使用できる。具体的には、ディスパロン#1970・#230・L−1983−50・L−1984−50・
L−1985−50・LC−908・LC−900・#1751N・#1761・#1920N・#1925N・P−410(以上 楠本化成社製)、BYK−301・302・320・322・330・356・361(以上 ビッグ・ケミー社製)などが挙げられる。この中でアクリルポリマー系は、レベリング性が良好ではじきはないので好ましい。
【0024】
これらのレベリング剤の配合量は、0.01〜2.0質量部好ましくは0.05〜1.0質量部の範囲で用いることができる。
【0025】
本発明の着色用コーテイング組成物に用いる分散剤には、長鎖ポリアマイド燐酸塩・高分子量ポリカルボン酸の塩・ポリカルボン酸のアルキルアミン塩・長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩・水酸基含有カルボン酸エステル・アクリルポリマー・不飽和ポリカルボン酸・高分子共重合物等が使用できる。具体的には、ディスパロン2150・KS―860・1830・1850・1860・DN―400N(以上 楠本化成製)、Disperbyk101・103・110、BYK P―104・405・W980,W935(以上 ビッグ・ケミー社製)などが挙げられる。この中で乾燥後の皮膜の透明性を阻害することのな
い不飽和ポリカルボン酸系が好ましい。
【0026】
これらの分散剤の配合量は、0.2〜2.0質量%好ましくは0.5〜1.0質量%の範囲で用いることができる。
【0027】
上記の各成分を有するコーティング組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、老化防止剤などの添加剤を適宜混合させることができる。
【0028】
本発明の着色用コーティング剤組成物を製造するには、樹脂、溶剤、分散剤、レベリング剤、顔料を適宜撹拌・混合して得ることができる。また、これらの混合時にボールミル・ビーズミル用いて分散するのがより好ましい。
【0029】
本発明の着色コーティング剤は、自動車のヘッドランプ以外にオートバイのランプ・透明プラスチック基材(ポリカーボネート、アクリル、PET、PVC)・メガネ等において、着色透明皮膜の形成に有用である。
【実施例】
【0030】
ここで、本発明の実施例にかかるコーティング液(液状着色用コーテイング組成物)をヘッドランプに塗布する場合の準備作業について説明する。
〈準備作業内容〉
(レンズの前処理)
自動車のヘッドランプのレンズ面において油膜・水あか・虫の死骸・タール等の付着物を取るために、研磨剤が配合されているコンパウンドを用いレンズ面を磨く。次にエタノール等のアルコール系洗浄溶剤で、レンズ面を良く拭き、さらに乾いたクロスで洗浄剤を拭き取る。
【0031】
(コーティング液の塗布)
スポンジ・クロス・フェルト等に本例のコーティング液を十分に染みこませ、レンズ表面に均一に塗布する。この時、塗り重ねするとむらになるため、素早く一気に塗り広げることが望ましい。皮膜は10分後に脂触乾燥状態になり、24時間後に最終硬化皮膜が得られる。この状態で、必要により、剥離剤で剥離し、他の着色を行うこともできる。剥離剤については、レンズ表面を侵しにくいアルコール系・セロソルブ系の洗浄溶剤が好ましい。
【0032】
以下、本発明の着色コーティング剤について実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0033】
下記表1は本発明の実施例にかかる着色コーティング剤の成分構成を示すものである。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
デンカ#6000−EP 電気化学工業社製
デンカ#3000−2 電気化学工業社製
デンカ#2000−L 電気化学工業社製
エスレック BL−S 積水化成品工業社製
Blue 4G 長瀬産業社製
Red 4C−K 長瀬産業社製
Spilion Blue GNH 保土ヶ谷化学工業社製

これら実施例、比較例での下記の各試験結果を表4・表5に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
〈試験(評価)内容〉
(塗布)
透明なアクリル板に10μmのマスキングテープを貼り、着色コーティング液を滴下し、ガラス棒でスキージし、塗布することにより皮膜を形成した。乾燥後の皮膜の厚みは0.7μmとなった。
(透明性)
目視で皮膜のにごりを評価した。
(塗りむら)
目視で色の濃淡の有無を評価した。
(皮膜強度)
JISK5400に基づいて皮膜強度をエンピツ手かき法で評価した。
(耐水性)
40℃の温水に3時間浸漬後皮膜のアクリル板からの剥がれ・白化・ブリスターの有無を評価した。
(耐ウインドウオッシャー性)
40℃のウインドウオッシャー液に3時間浸漬後アクリル板からの剥がれ・白化・ブリスターの有無を評価した。ウインドウオッシャー液は株式会社サンテック製自動車ウイン
ドウオッシャー液を用いた。
(耐ウエザオ促進試験)
スーパーキセノンウエザオメーターで100時間照射後目視で色の退色性・皮膜の剥がれ・白化・ブリスターを評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂成分であるブチラール樹脂3〜10質量部、(B)溶剤成分であるアルコール系溶剤60〜80質量部およびグリコールエーテル系溶剤20〜30質量部ならびに(C)着色成分である粒径100〜500nmの有機顔料0.05〜0.5質量部を含有することを特徴とする透明着色コーティング剤。
【請求項2】
さらに、(D)レベリング剤0.01〜2.0質量部および(E)分散剤0.2〜2.0質量部を含有する請求項1記載の透明着色コーティング剤。
【請求項3】
前記(A)樹脂成分のブチラール樹脂が、ブチラール基mol%65〜80の、(イ)高重合度樹脂と(ロ)中重合度樹脂または低重合度樹脂との組みあわせからなる請求項1または2記載の透明着色コーティング剤。
【請求項4】
前記(B)溶剤成分が、(イ)アルコール系溶剤60〜80質量部および(ロ)グリコールエーテル20〜30質量部を含む2種以上からなる請求項1〜3のいずれか記載の透明着色コーティング剤。
【請求項5】
前記(C)着色剤成分が、粒径100〜500nmの、銅フタロシアニン(β)およびハロゲン化銅フタロシアニン・ジケトプロロピールの有機顔料からなる請求項1〜4のいずれか記載の透明着色コーティング剤。
【請求項6】
前記(D)レベリング剤が、アクリルポリマー系のレベリング剤である請求項2〜5のいずれか記載の透明着色コーティング剤。
【請求項7】
前記(E)分散剤が、不飽和ポリカルボン酸系の分散剤である請求項2〜6のいずれか透明着色コーティング剤。

【公開番号】特開2006−96794(P2006−96794A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281340(P2004−281340)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(500314382)株式会社ソーラー (5)
【Fターム(参考)】