説明

着色硬質ポリウレタンフォーム及び断熱パネルの施工方法

【課題】イソシアネート成分として粗製MDIを使用し、超低温断熱材として使用した時の強度の低下を抑制しつつ密度ごとに異なる色に着色した硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法並びに誤った密度の硬質ポリウレタンフォームパネルを積層することのない硬質ポリウレタンフォームパネルを使用した断熱施工方法を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分と混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成する方法であって、ポリオール組成物は、ポリオール化合物100重量部に対して顔料を0.01〜0.2重量部を含有し、密度の異なる硬質ポリウレタンフォームについて異なる色とする着色硬質ポリウレタンフォームの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色硬質ポリウレタンフォーム及び該着色硬質ポリウレタンフォームを使用する断熱パネルの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。係る硬質ポリウレタンフォームの一つとして、スラブストックフォームが公知である(特許文献1、2)。断熱パネルとしては、硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルが多く使用されるが、LNGタンクの断熱には、スラブストックフォームを裁断して得られる硬質ポリウレタンフォームパネルも使用され、LNGタンクの断熱用のガラス繊維強化硬質ポリウレタンフォームも公知である(特許文献3、4など)。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、フロンの使用量を削減した硬質ポリウレタンスラブストックフォームの製造方法であり、ポリオール化合物としてアジピン酸のエステルポリオールを使用することを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2に開示された硬質ポリウレタンスラブストックフォームは、自動車の構成部材として使用するものであり、発泡剤として水を使用し、連続気泡を有し、機械的特性に優れたものであって、分子中にジフェニルメタンジイソシアネートのベンゼン環を3以上有する多核縮合体を31〜55重量%含有するポリイソシアネート成分を使用することを特徴とするものである。
【0005】
特許文献3、4に開示された硬質ポリウレタンフォームは、いずれもポリオール組成物を構成するポリオール化合物や架橋剤の組成に特徴を有するものである。
【0006】
【特許文献1】特開平8−155970号公報
【特許文献2】特開2004−352835号公報
【特許文献3】特開2004−124421号公報
【特許文献4】特開2004−124427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液体窒素やLNGなどの超低温の保存タンクにおいては、金属製のタンク本体の周囲に硬質ポリウレタンフォームパネルを施工して保温する断熱工事が行われる。係る施工においては、タンクの下部から上方に硬質ポリウレタンフォームパネルが長さ方向端部を突き合わせて積み上げると共に幅方向端部を突き合わせて縦横に配列することにより施工される。このような断熱パネルの施工においては、下部の硬質ポリウレタンフォームパネルが上部の硬質ポリウレタンフォームパネルの重量を支える必要があり、破損防止のために下部に使用する硬質ポリウレタンフォームパネルほど段階的に密度を高くして圧縮強度を高める技術が採用されている。
【0008】
しかるに、係る断熱工事に使用する硬質ポリウレタンフォームパネルは、形状・サイズがほぼ同じであり、色調も淡褐色であって密度の相違は外観上区別がつかないものである。そのために、工事作業者が誤って密度の低い硬質ポリウレタンフォームパネルを下部側に施工するミスが発生し、その結果誤って下部に施工された密度の低い硬質ポリウレタンフォームパネルが上部のパネルの荷重により座屈して高さを減じ、断熱パネルに空隙を生じて断熱不良が発生するという問題が引き起こされる場合がある。
【0009】
樹脂材料を着色することは、硬質ポリウレタンフォームの技術分野以外ではよく行われることである。しかし、硬質ポリウレタンフォームは、イソシアネート成分として濃褐色の液状MDI、特に粗製MDIを使用するためにフォームが淡褐色ないし黄褐色であり、着色しても意匠的な効果は生じず、着色を目立たせるには一般的な無色ないし白色の樹脂と比較して多くの顔料の添加が必要である。しかるに、硬質ポリウレタンフォームを着色するために顔料を添加すると、得られる硬質ポリウレタンフォームパネルがLNGの液化温度などの超低温に接した場合に強度が低下する場合があること、特に硬質ポリウレタンフォームは、識別を容易にするために、多くの顔料を添加すると、顔料によっては、添加量を多くするほど硬質ポリウレタンフォームの低温強度が低下するものがあることが判明した。係る低温強度の低下は、例えばLNG貯蔵タンクにおいては、施工が完了してLNGを貯蔵し、硬質ポリウレタンフォームに内外の大きな温度差が発生して初めて発生するために極めて大きな問題を引き起こす原因となる。
【0010】
本発明は、上記公知技術の問題点に鑑みて、イソシアネート成分として粗製MDIを使用し、超低温断熱材として使用した時の強度の低下を抑制しつつ密度ごとに異なる色に着色した硬質ポリウレタンフォームパネル並びに誤った密度の硬質ポリウレタンフォームパネルを積層することのない硬質ポリウレタンフォームパネルを使用した断熱施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の着色硬質ポリウレタンフォームは、密度の異なる硬質ポリウレタンフォームごとに、ジスアゾ系黄色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、シアニン系緑色顔料、シアニン系青色顔料、ジオキサジン系紫色顔料、カーボンブラック、モノアゾ系赤色顔料から選択される1種の顔料を添加して異なる色に着色されており、前記顔料の添加量が前記硬質ポリウレタンフォームの構成材料であるポリオール化合物100重量部に対して0.01〜0.2重量部であることを特徴とする。
【0012】
係る着色硬質ポリウレタンフォームは、イソシアネート成分として粗製MDIを使用し、強度の低下を抑制しつつ密度ごとに識別可能な異なる色に着色した硬質ポリウレタンフォームである。顔料の添加量が0.01重量部未満の場合には、色合いが識別しにくくなり、0.2重量部を超えると得られる硬質ポリウレタンフォームの低温強度が低下する場合が発生する。
【0013】
ジスアゾ系黄色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、シアニン系緑色顔料、シアニン系青色顔料、ジオキサジン系紫色顔料、カーボンブラック、モノアゾ系赤色顔料から選択される顔料は、淡褐色ないし黄褐色の硬質ポリウレタンフォームに添加した場合に少量の添加で密度の異なるフォームの識別が可能であって、かつ超低温断熱材として使用した時に強度の低下を起こしにくいものである。
【0014】
別の本発明は、断熱対象物に硬質ポリウレタンフォームパネルを施工して断熱する断熱パネルの施工方法であって、
前記断熱対象物の上部ほど密度の低い硬質ポリウレタンフォームを施工する工程を有し、
前記断熱パネルを構成する前記硬質ポリウレタンフォームは構成材料であるポリオール化合物100重量部に対して顔料を0.01〜0.2重量部を添加して形成され、密度の異なる硬質ポリウレタンフォームが異なる色に着色されていることを特徴とする。
【0015】
係る構成の硬質ポリウレタンフォームパネルを使用した断熱パネルの施工方法は、硬質ポリウレタンフォームは低温時の強度低下が防止されたものであり、しかも施工作業者が誤った密度の硬質ポリウレタンフォームパネルを選択して施工することを防止でき、かつ工事の監督者も容易に施工の誤りを発見することができる。
【0016】
上述の断熱パネルの施工方法においては、下方に密度の高い硬質ポリウレタンフォームパネルを配設し、上方ほど密度の低い硬質ポリウレタンフォームパネルを配設し、前記顔料が、ジスアゾ系黄色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、シアニン系緑色顔料、シアニン系青色顔料、ジオキサジン系紫色顔料、カーボンブラック、モノアゾ系赤色顔料であり、密度の異なるものに異なる顔料が使用されていることが好ましい。
【0017】
係る施工方法によれば、淡褐色ないし黄褐色の硬質ポリウレタンフォームに添加した場合に、少量の添加で密度の異なるフォームの識別が可能であり、かつ低温強度の低下を起こしにくいフォームであるために超低温条件の使用において断熱不良を起こさない断熱層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の硬質ポリウレタンフォームはポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、反応させて製造する。使用するポリオール組成物は、公知のポリオール組成物を使用することができ、市販品を使用してもよい。ポリオール組成物は、少なくとも1種のポリオール化合物、発泡剤、整泡剤、触媒、難燃剤を含有し、必要に応じて架橋剤、鎖延長剤を含有する。これらは、硬質ポリウレタンフォームの分野における公知の材料を使用することができる。発泡剤としては、水、n−ペンタン、イソペンタンなどの低沸点脂肪族炭化水素、HFC−245faやHFC−365mfcなどのHFC化合物、その他の有機発泡剤を限定なく使用することができる。
【0019】
触媒としては、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属触媒、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の第3級アミン触媒等のウレタン化反応促進触媒並びに該ウレタン化反応促進触媒に加えて第4級アンモニウム触媒、酢酸カリウム等のイソシアヌレート化促進触媒を使用してもよい。即ち、本発明の硬質ポリウレタンフォームは、イソシアヌレート基を含有するイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームであってもよい。
【0020】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、ガラス繊維により強化されたものであってもよい。ガラス繊維強化硬質ポリウレタンフォームに使用されるガラス繊維は、通常コンティニュアスストランドマットである。コンティニュアスストランドマットは、製造する硬質ポリウレタンフォームの厚さに応じて複数枚を重ねて使用することも可能である。
【0021】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルード(粗製)MDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)等が使用される。これらの中でも、特に粗製MDIを使用することが性能上好ましい。これらの液状MDIはいずれも褐色ないし濃褐色であり、形成される硬質ポリウレタンフォームは黄褐色ないし褐色である。
【0022】
ポリオール組成物に顔料を添加する方法としては特に限定されるものではないが、顔料をポリオール組成物を構成する成分と混合分散したペーストとして混合することが好ましい。顔料ペーストの製造に使用するポリオール組成物構成成分としては、ポリオール化合物、リン酸エステル系の難燃剤を使用することができる。係るペーストは、顔料の含有率が10〜60重量%とすることが好ましい。
【0023】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造は、連続生産法により製造することが好ましい。公知の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法は、ロール状の原反から下面材(一般にはクラフト紙)を巻き戻して供給する下面材供給工程、該下面材上にポリオール組成物とポリイソシアネート成分をミキサーにて撹拌・混合した発泡原液組成物を供給する原液供給工程、前記発泡原液組成物の上にロール状の原反から上面材(一般にはクラフト紙)を巻き戻して供給する上面材供給工程、上面材と下面材の間の発泡原液組成物を押さえて幅方向に均一な厚さの原液積層体とするニップ工程、前記原液積層体を加熱して発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームとする加熱工程、前記硬質ポリウレタンフォームを裁断する裁断工程を備える。厚さが均一なサンドイッチパネルの製造においては、加熱工程はダブルコンベアを使用して上下面材を一定の間隔に規制する工程として製造する。
【0024】
ガラス繊維強化硬質ポリウレタンフォームの製造においては、上記の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、通常、下面材供給工程の次に、ロール状にて供給されるコンティニュアスストランドマットを巻き戻してシート状に下面材上に供給するガラス繊維供給工程を設ける。
【0025】
断熱対象物への硬質ポリウレタンフォームパネルの施工は、接着剤による貼着が一般的である。また硬質ポリウレタンフォームの密度の変更は発泡剤の添加量の変更により行うことができる。
【実施例】
【0026】
(実施例)
芳香族ポリエーテルポリオール20重量部、脂肪族高アルコールを開始剤とする脂肪族ポリエーテルポリオール70重量部及びジプロピレングリコール10重量部(ポリオール化合物を含む水酸基含有化合物合計100重量部)に対して、リン酸エステル系難燃剤TMCPP(大八化学工業)15重量部、整泡剤4重量部、第3級アミン触媒0.2重量部、発泡剤である水2重量部からなるポリオール組成物に表1に記載の顔料を、脂肪族ポリエーテルポリオールを使用したペースト状にて添加した。顔料の添加量は、顔料自体の重量部である。
【0027】
上記ポリオール組成物(全量121.1重量部)に対して市販の粗製MDIをNCO/OH当量比(水1モルに対して消費される2当量のNCOを除外して計算)1.10となるようにミキサーに供給し、厚さ500mmの硬質ポリウレタンスラブストックフォームを製造した。得られたスラブストックフォームは密度が70kg/mであった。
【0028】
得られた硬質ポリウレタンフォームについて−170℃での引張り強度を測定し、表1の引張り強度(1)に示した。また、顔料を一律に0.5重量部を添加した場合の引張り強度を表1の引張り強度(2)に示した。引張り強度は、常温での引張り強度と比較してLNGタンクの断熱材として許容できる場合を合格、許容できない場合を不合格として示した。
【0029】
【表1】

【0030】
上記の結果より、酸化鉄、シアニン系緑色顔料、モノアゾ系赤色顔料は、添加量を本発明の範囲より多くすると低温強度が低下するが、添加量が本発明の範囲内であれば、低温強度の低下が問題ない程度に抑制することができることが分かる。そしてこれらの7色を使用すると、密度が7段階に分けて色分けによる識別が可能となり、施工ミスによる不良発生を防止することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度の異なる硬質ポリウレタンフォームごとに、ジスアゾ系黄色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、シアニン系緑色顔料、シアニン系青色顔料、ジオキサジン系紫色顔料、カーボンブラック、モノアゾ系赤色顔料から選択される1種の顔料を添加して異なる色に着色されており、前記顔料の添加量が前記硬質ポリウレタンフォームの構成材料であるポリオール化合物100重量部に対して0.01〜0.2重量部であることを特徴とする着色硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
断熱対象物に硬質ポリウレタンフォームパネルを施工して断熱する断熱パネルの施工方法であって、
前記断熱対象物の上部ほど密度の低い硬質ポリウレタンフォームを施工する工程を有し、
前記硬質ポリウレタンフォームは構成材料であるポリオール化合物100重量部に対して顔料を0.01〜0.2重量部を添加して形成され、密度の異なる硬質ポリウレタンフォームが異なる色に着色されていることを特徴とする断熱パネルの施工方法。
【請求項3】
前記顔料が、ジスアゾ系黄色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、シアニン系緑色顔料、シアニン系青色顔料、ジオキサジン系紫色顔料、カーボンブラック、モノアゾ系赤色顔料であり、密度の異なるものに異なる顔料が使用されていることを特徴とする請求項2に記載の断熱パネルの施工方法。

【公開番号】特開2009−275139(P2009−275139A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128608(P2008−128608)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】