説明

着香粘土ベースの治療用組成物

本発明の主題は、粘土を活性成分として含み、その粘土が2八面体スメクタイトであって、香味料がカプセル封入されていることを特徴とする、着香された治療用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、スメクタイトを活性成分として含む着香医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「ジオスメクタイト」として公知のスメクタイトをベースとする治療用組成物が存在して、商標スメクタ(Smecta)にて販売されている。しかし、独特の粘土の味のために、ある種の患者、特に子供は、ときに不快感を感じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記より、本発明の問題は、着香され、その味が粘土の味に対して優勢である新規な組成物を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、出願人は、スメクタイトベースの、下記に記載する新規な着香医薬組成物を提供する。
それ故、本発明の主題は、粘土を活性成分として含み、下記の特徴を有する、着香した治療用組成物である
− 粘土は、2八面体スメクタイトであり、
− 香味料は、カプセル封入されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明による組成物は、ある種の病状の防止及び/又は治療、例えば食道胃十二指腸及び結腸の状態、急性及び慢性的な下痢、腹腔の病気と関連した痛みの対症療法のために利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
スメクタイトは、モンモリロナイト及びバイデライト等の2八面体種、並びにヘクトライト及びサポナイト等の3八面体種を含む粘土の特定のファミリーを表す。
本発明で用いられる粘土は、2八面体スメクタイトである。好ましくは、この2八面体スメクタイトは、モンモリロナイト若しくはバイデライト、又は2つの結晶化学的対極(crystal-chemical poles)にあるモンモリロナイトとバイデライトとの間の結晶学的構造中間体である。この中間の結晶学的構造は、モンモリロナイト極に近くてよく、非常に近くてもよい;それは又、バイデライト極に近くてもよいし、非常に近くてもよい。好ましくは、本発明のスメクタイトは、モンモリロナイト又はモンモリロナイト極に近い中間構造であり、非常に好ましくは、モンモリロナイト極に非常に近い中間構造である。
【0007】
やはり好ましくは、使用する粘土は、「ジオスメクタイト」として公知で、商標スメクタ(Smecta)で販売されているスメクタイトである。
【0008】
本発明の治療用組成物は、「香味料(フレーバー)」と呼ばれる「着香成分又は組成物」を含む。本件明細書で用いられる用語「香味料」は、通常食品産業で用いられる天然起源の又は合成の着香成分又は組成物を含む。それは、単一の化合物又は混合物を含む。
【0009】
かかる化合物の特定例は、Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients, 1975, CRC Press; Synthetic Food Adjuncts, 1947, M.B. Jacobs(Van Nostrand刊);又はPerfume and Flavor Chemicals, 1969, S. Arctander, Montclair, New Jersey (米国)等の文献中に見出すことができる。
【0010】
これらの化合物は、着香又は付香消費製品、即ち、におい、香味若しくは風味が加えられた、通常の着香された消費製品、又は風味が改変された消費製品の分野の当業者に公知である。
【0011】
好ましくは、この香味料は、有機溶媒に可溶な疎水性の液体であるが、非常にわずかだけ水に溶ける。
【0012】
非常に好ましくは、この香味料は、ヒルデブランド溶解度パラメーターδが30MPa1/2未満の特性を有する。殆どの香味料及び香料の水との不相容性は、実際、一般にヒルデブランド溶解度パラメーターが25MPa1/2未満によって表すことができ、一方、水の同パラメーターは48MPa1/2でありアルカンでは15〜16MPa1/2である。このパラメーターは、これらの分子の凝集エネルギー密度と相関する有用な極性尺度を与える。混合が自発的に起きるためには、混合すべきこれらの分子の溶解度の差を最小に維持しなければならない。溶解度パラメーターのハンドブック(Handbook of Solubility Parameters, A. F. M. Barton, CRC Press, Bocca Raton, 1991)は、多数の化学生成物のδ値の一覧表を示すが、複雑な化学構造についてのδ値を計算することを可能にする推奨されるグループ寄与法(group-contribution methods)も示している。
【0013】
同様に、この香味料は、好ましくは−2〜7の範囲内に、非常に好ましくは、2〜6の範囲内に包含されるlogPを有する、液体の、揮発性の又は不安定な(labile)形態である。
【0014】
同様に、好ましい態様では、本発明の組成物は、香味料として、天然エキス、精油又はこれらの混合物を含む。
【0015】
適当な香味料として、伝統的な香味料例えば甘草、外来果実、赤色果実、ライム又はレモン等の柑橘類果実のエキス、オレンジ、グレープフルーツ若しくはマンダリン油、又はコーヒー、茶、ハッカ、ココア、バニラ/カラメル又は、ハーブ及びスパイス由来の精油を挙げることができ、「モダン」として知られる香味料例えばコカコーラ、緑茶、キャラメルカスタードも挙げることができる。
【0016】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも一のカプセル封入された、バニラと異なる香味料を含む。
【0017】
これらの香味料は、好ましくは、甘草、外来果実、赤色果実、柑橘類果実のエキス、バニラ/カラメル/チョコレート等の伝統的香味料から選択されるが、コカコーラ、緑茶、キャラメルカスタード等の「モダン」として知られる香味料からも選択される。
【0018】
好ましくは、この香味料は、バニラ/カラメル/チョコレート香味料及び柑橘類果実のエキスから選択され、非常に好ましくは、バニラ/カラメル/チョコレート及びオレンジ、レモン、グレープフルーツ又はクレメンタインから選択される。
【0019】
やはり、好ましい態様において、この香味料は、香味料の混合物であり、非常に好ましくは、バニラ及びオレンジ香味料の混合物である。
【0020】
この香味料は、溶媒、補助薬(adjuvants)、添加剤及び/又は他の物質、例えば通常香味料及び/又は食品産業において用いられる物質と混合することができる。
【0021】
本発明の香味料は、好ましくは、炭水化物のガラス質(glassy)マトリクス(カプセル化マトリクス)にカプセル封入される。
【0022】
押出し成形技術により加工処理することのできる任意の糖又は糖誘導体を、このカプセル化マトリクスの成分として利用して乾式押し出された固体を形成することができる。適当な成分の特定の例は、次の生成物から選択することができる:スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化澱粉加水分解物、マルトデキストリン、スタビライト(商品名;米国SPI Polyols社製)、寒天、カラゲニン、他のゴム類、ポリデキストロース並びにこれらの誘導体及び混合物。
【0023】
好ましくは、マルトデキストリン又はマルトデキストリンと次から選択される少なくとも一の生成物との混合物が用いられる:スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化澱粉加水分解物。非常に好ましくは、上記マトリクスは、マルトデキストリン又はマルトデキストリンと次より選択される少なくとも一の生成物との混合物により構成される:スクロース、マルトース、イソマルト、マルチトール及び水素化澱粉加水分解物。やはり非常に好ましくは、このマトリクスは、マルトデキストリン及びスクロースにより構成される。
【0024】
好ましくは、上記マルトデキストリンは、5より大きく、20より小さいデキストロース当量(DE)を有する。
【0025】
レシチンなどの乳化剤、及び/又は可塑剤典型的には水を、この混合物に、必要であれば、加えることができる。
【0026】
押し出し成形される本発明の着香生成物又は着香組成物は、任意の標準的方法によって製造することができる。例えば、米国特許第4,610,890号及び4,707,367号(その内容を、本件明細書の資料として使用する)に記載された方法は、本発明で使用するカプセル封入された香味料を供給するのに適している。
【0027】
やはり好ましくは、この香味料は、カプセル化マトリクスの全重量(乾燥物表示)に対して、乾燥物として少なくとも10重量%の割合で、好ましくは15〜35%の割合で存在する。
【0028】
本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、好ましくは70〜90重量%の活性成分を含み、非常に好ましくは75〜85%の活性成分を含む。
【0029】
又、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、好ましくは0.1〜3重量%のカプセル封入された香味料を含み、非常に好ましくは、0.3〜2.5%のカプセル封入された香味料を含む。やはり非常に好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して0.5〜2重量%のカプセル封入された香味料を含む。
【0030】
本発明の治療用組成物は、粉末、顆粒、錠剤又はカプセル等の種々の固体形態で与えることができる。適当な固体支持体は、例えば、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、ゼラチン、セルロース及びそのエステルであってよい。
【0031】
本発明の治療用組成物中には、着色剤、甘味料、潤滑剤、流動促進剤(glidant)等の他の添加剤も存在できる。本発明の組成物は、鉱物を含んでもよい。
【0032】
本発明で用いられる着色剤は、食品及び/又は製薬産業において通常用いられる任意の種類の着色剤であってよい。甘味料のうちで、次のものを挙げることができる:サッカリン、アスパルテーム、マルトデキストリン、フルクトース又はグルコース等の単糖類、スクロース等の二糖類。潤滑剤として、例えば、タルクを挙げることができる。グライダントのうちで、スクロースを挙げることができる。
【0033】
鉱物の寄与は、例えば、金属塩、例えば水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム等のアルミニウム塩又はマグネシウム塩の添加により生じてもよい。
【0034】
本発明の組成物の投与方法は、他のもののうちから、製薬形態及び治療すべき病状によって選択される。好ましくは、上記の組成物は、経口経路により投与される。
【0035】
日々の投与量は、この製品について通常推奨される投与量である。「ジオスメクタイト」として知られる特別なスメクタイトの場合には、最大で18g/日の投与量で投与できる。
【0036】
別途規定されないかぎり、ここで用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野における当業者によって普通に理解されているものと同じ意味を有する。
【実施例】
【0037】
実施例1:カプセル封入されたオレンジ(油)香味料の製造
シロップを、マルトデキストリン、スクロース、水及び香味料から製造する。この混合物を、次いで、シロップの水分を減少させるために123℃に加熱する。その後、乳化剤をこの濃縮したシロップと、高剪断条件下で混合して均質な溶融物を形成する。次いで、この溶融物を、2×105Paの圧力下で直径0.8mmの孔を有する押出し用ダイプレートを通して冷溶媒中に押し出して押出物を急冷(chilling)及び分解(breaking)する。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2:カプセル封入されたバニラ香味料の製造
オレンジ香味料の代わりにバニラエキス(Firmenich社製)を用いて、実施例1と同じ操作を行う。
【0040】
実施例3:カプセル封入されたカラメル香味料の製造
オレンジ香味料の代わりにカラメル香味料(Firmenich社製)を用いて、実施例1と同じ操作を行う。
【0041】
実施例4:着香した治療用組成物の製造
下記の組成物を、すべての物質を、それらが均質な仕方で分散されるまで、示した割合で一緒に穏やかに混合することにより製造する。下記の表において、すべての量は、mgで表されている。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例5:本発明による組成物の安定性
粘土は、本来安定な生成物であるので、本発明による組成物の安定性は、香味料の官能特性と粘土に対する非作用性の両方について測定される。
【0044】
この香味料の官能特性の安定性は、幾つかの基準(糖状質、果物の風味、酸味、苦味など)に基いて、少なくとも6ヶ月にわたって検査員(7検査員よりなる検査員団)によって確立された。
【0045】
更に、この香味料は、この同じ期間中、粘土の存在下で何らの劣化を示さない事実が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土を活性成分として含み、下記の特徴を有する、着香した治療用組成物
− 粘土は、2八面体スメクタイトであり、
− 香味料は、カプセル封入されている。
【請求項2】
2八面体スメクタイトが、モンモリロナイト若しくはバイデライト、又は2つの結晶化学的対極であるモンモリロナイトとバイデライトとの間の中間結晶学的構造であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2八面体スメクタイトが、モンモリロナイト、又はモンモリロナイト極に近い中間結晶学的構造である、請求項1〜2の一つに記載の組成物。
【請求項4】
2八面体スメクタイトが、モンモリロナイト、又はモンモリロナイト極に非常に近い中間結晶学的構造である、請求項1〜3の一つに記載の組成物。
【請求項5】
2八面体スメクタイトが、「ジオスメクタイト(diosmectite)」として知られるスメクタイトである、請求項1〜4の一つに記載の組成物。
【請求項6】
香味料が、疎水性の液体である、請求項1〜5の一つに記載の組成物。
【請求項7】
香味料が、30MPa1/2未満のヒルデブランド溶解度パラメーターを有する、請求項1〜6の一つに記載の組成物。
【請求項8】
香味料が、−2〜7の範囲内に包含されるlogPを有する、液体の形態である、請求項1〜5の一つに記載の組成物。
【請求項9】
香味料が、2〜6の範囲内に包含されるlogPを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
香味料が、天然エキス、精油又はこれらの混合物である、請求項1〜9の一つに記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一のカプセル封入された、バニラと異なる香味料を含む、請求項1〜10の一つに記載の組成物。
【請求項12】
香味料が、次の香味料から選択される、請求項1〜11の一つに記載の組成物:甘草、外来果実、赤色果実、柑橘類果実のエキス、バニラ、カラメル、チョコレート、コカコーラ、緑茶、キャラメルカスタード。
【請求項13】
香味料が、次の香味料から選択される、請求項1〜12の一つに記載の組成物:バニラ、カラメル、チョコレート及び柑橘類果実のエキス。
【請求項14】
香味料が、次の香味料から選択される、請求項1〜13の一つに記載の組成物:バニラ、カラメル、チョコレート、オレンジ、レモン、グレープフルーツ及びクレメンタイン。
【請求項15】
香味料が、香味料の混合物である、請求項1〜14の一つに記載の組成物。
【請求項16】
香味料が、バニラ及びオレンジ香味料の混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
香味料が、炭水化物のガラス質のマトリクスにカプセル封入される、請求項1〜16の一つに記載の組成物。
【請求項18】
マトリクスが、マルトデキストリン又はマルトデキストリンと次より選択される少なくとも一の生成物との混合物により構成される、請求項17に記載の組成物:スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化澱粉加水分解物。
【請求項19】
マトリクスが、マルトデキストリン又はマルトデキストリンと次より選択される少なくとも一の生成物との混合物により構成される、請求項17〜18の一つに記載の組成物:スクロース、マルトース、イソマルト、マルチトール及び水素化澱粉加水分解物。
【請求項20】
マトリクスが、マルトデキストリン及びスクロースにより構成される、請求項17〜19の一つに記載の組成物。
【請求項21】
マルトデキストリンが、5より大きく、20より小さいデキストロース当量を有する、請求項18〜20の一つに記載の組成物。
【請求項22】
香味料が、カプセル封入マトリクスの全重量(乾燥物として)に対して、少なくとも乾燥物として10重量%の割合で存在する、請求項1〜21の一つに記載の組成物。
【請求項23】
香味料が、カプセル封入マトリクスの全重量(乾燥物として)に対して、少なくとも乾燥物として15〜35重量%の割合で存在する、請求項1〜22の一つに記載の組成物。
【請求項24】
70〜90重量%の活性成分を含む、請求項1〜23の一つに記載の組成物。
【請求項25】
75〜85重量%の活性成分を含む、請求項1〜24の一つに記載の組成物。
【請求項26】
0.1〜3重量%のカプセル封入された香味料を含む、請求項1〜25の一つに記載の組成物。
【請求項27】
0.3〜2.5重量%のカプセル封入された香味料を含む、請求項1〜26の一つに記載の組成物。
【請求項28】
0.5〜2重量%のカプセル封入された香味料を含む、請求項1〜27の一つに記載の組成物。

【公表番号】特表2010−535852(P2010−535852A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520608(P2010−520608)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001185
【国際公開番号】WO2009/056703
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【出願人】(501087319)
【Fターム(参考)】