睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース
【課題】歯列に装着するマウスピースの必要最小の所定部位を陰圧(負圧)にして発生させる吸着作用を利用し、それにより、使用性、取扱い性に優れ、かつ長時間の装着でも不快感や疲労感が少ない気道確保用の簡易な補助器具を提供すること。
【解決手段】略馬蹄形を有する本体ピース部A,の前面に封止機能を有する吸引部5,6を設けるとともに左右両奥側内面及び又は両前側内面に吸着口3a,4aを開口し、それら吸着口を前記吸引部に内通路3,4を介して連通させ、前記吸引部5,6を吸気して吸着口3a,4aを陰圧にすることにより舌の両側面を吸着保持させる。さらに、差込口を通して組み付ける舌押えピース10と併用するようにする。
【解決手段】略馬蹄形を有する本体ピース部A,の前面に封止機能を有する吸引部5,6を設けるとともに左右両奥側内面及び又は両前側内面に吸着口3a,4aを開口し、それら吸着口を前記吸引部に内通路3,4を介して連通させ、前記吸引部5,6を吸気して吸着口3a,4aを陰圧にすることにより舌の両側面を吸着保持させる。さらに、差込口を通して組み付ける舌押えピース10と併用するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時無呼吸等の防止用マウスピースに関し、詳しくはイビキや無呼吸症候群の症状である気道閉塞を抑制して気道確保を目的としたマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
最近急増しているイビキや無呼吸症候群は、肥満や老化が要因である口腔内の舌の位置が大きな影響を与えている。具体的には、就寝時に舌が喉奥へ後退する状態、つまり舌根や軟口蓋が気道に垂れ下がって気道を狭め、さらに閉塞することにより発生することが知られている。
そのようなイビキや無呼吸症候群を防止するため、気道確保を目的として舌の持上げ、引上げ機能を付与した従来技術には、特許文献1に、舌を安定して保持するための形状・構造的な改良を加えた歯列マウスピースが提案されている。また、特許文献2には、減圧ユニットを用いて口腔内全体を陰圧にし、ユーザーの軟口蓋及び周囲軟組織を口腔に向かって引張り、且つ舌を上口蓋に向かって引上げることにより気道を開放状態に維持する装置も提案されている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−275311号公報
【特許文献2】特開2007−319680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のマウスピースにおいては、舌保持用くぼみ44が設けられるが、仰向け状において脱力した舌の咽頭への落ち込みを防止し得るのか疑問であり、また舌を安定して保持するための延伸部28が、下側凹溝部24の鞍形壁における内側に延伸して舌の下面に狭入される装着状態となるために、口腔内における異物感や痒み、痛みなどの不快感や疲労感を伴うことがあり長時間の装着使用としては難しい。
その点で特許文献2は、口腔内を陰圧にすることにより舌を上口蓋に向かって引上げるので、異物感、不快感などの前記不具合はないものの口腔内全体を陰圧にするために減圧ユニットを装備するなど大掛かりな装置が必須であって、簡易な補助器具としての利用は不可能である。また、この装置を装着して呼吸を行う場合、吸気した一部が口腔を通じて吸われて逃げてしまい、自然呼吸を阻害する可能性が有る。
【0005】
本発明は、上記従来事情に鑑みて、歯列に装着するマウスピースの必要最小の所定部位を陰圧(負圧)にして発生させる吸着作用を利用し、それにより、使用性、取扱い性に優れ、かつ長時間の装着でも不快感や疲労感が少ない気道確保用の簡易な補助器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯る本発明の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピースは、略馬蹄形を有する本体ピース部の前面に封止機能を有する吸引部を設けるとともに左右両奥側内面及び又は両前側内面に吸着口を開口し、それら吸着口を前記吸引部に内通路を介して連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の両側面を吸着保持させるようにしたことを特徴とする(請求項1)。
本発明によれば、使用者が就寝の直前にマウスピースを歯列に装着した状態で、注射シリンジなどハンディタイプの吸入器を用いて本体ピース部の吸引部から吸気することにより、内通路を介して本体ピース部に開口した吸着口に吸着作用を生起させ、その吸着作用で舌根部及び又は舌前部の両側面を吸着保持させた後に吸入器を取り外す。好ましくは、気道を拡開するために舌根部を前方へ押出す状態で該舌根部及び又は舌前部の両側面を本体ピース部に吸着保持させ、それにより、就寝時に気道側への舌根部の垂れ下がりを抑制して気道を確実に開放させた状態で就寝できるようにする。
【0007】
すなわち、本発明のマウスピースは、舌根部の前方押出し姿勢を吸着作用により確保するために本体ピース部の内面に吸着口を配置させたものであり、その吸着口は、舌を吸着して舌根部を前方へ押出し易い部位に形成する。具体的には、本体ピース部の左右両側内面であって、奥歯近傍に対向する奥側内面が舌根部に近接していて最も好ましいが、それだけに限らず、舌前部を吸着して舌根部を前方より引き出す部位、つまり本体ピース部の左右両側内面であって、前歯近傍に対向する両前側内面に配置させることもよい。その場合には、吸着口を両奥側内面だけ、または両前側内面だけに形成する態様、或いはそれらを併用する態様とすることも任意である(請求項1)。
【0008】
本発明における前記本体ピース部は、上顎ピース部と下顎ピース部とを一体に形成した一体型(ワンピース型)、あるいは、上顎ピース部又は下顎ピース部だけを使用する半片型(分離型)のいずれの形態を採用することも可能である。
その一方の形態である一体型を採用する場合には、舌の吸着保持作用を確実にするために上下顎ピース部何れか一方又は両方に前記吸引部、内通路及び吸着口を形成するようにする(請求項2)。
そして、上記吸引部は、左右の内通路に共用される一箇所に配設される態様、或いは各内通路に個別に分離した二箇所に配設される態様の何れであってもよいが、何れの態様であっても吸着作用を高めるために、吸着口は各側それぞれ2個以上の複数口が形成されていることが好ましい(請求項3、4)
また、上記吸引部が左右間隔をおいて二箇所に配設される態様においては、下顎ピース部と上顎ピース部とに跨る前面中央に舌押えピースを挿着する差込口を設け、舌押えピースには、底面に吸着口を開口するとともに前面に封止機能を有する吸引部を設けて前記吸着口と連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにする(請求項5)。
それによれば、舌根部の左右両側面の吸着保持と併せて舌上面を吸着して舌の保持力を強化させる。
さらに重症なイビキ症状、又は無呼吸症候群に対応するために、上記吸着口に吸着作用を生起させる構成に併せて、上記下顎ピース部に上顎ピース部が一体に形成され、その下顎ピース部が上顎ピース部に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成した態様とすることもよい(請求項6)。
【0009】
一方、上記本体ピース部が半片型の場合には、舌の吸着保持作用、特に持上げ作用を確保することから、下顎ピース部を使用するよりも上顎ピース部を使用するようにする。すなわち、上記本体ピース部が上顎ピース部だけの半片型であって、その上顎ピース部に前記吸引部、内通路及び吸着口を形成するようにする(請求項7)。
また、その半片型の上顎ピース部に舌押えピースを設ける場合は、上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押えピースを設け、該舌押えピースには、底面に吸着口を開口して前記吸引部と連通させ、その吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにする(請求項8)。
さらに、より柔軟な素材で舌への密着度を高めるため、上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押さえピースを着脱自在に形成し、該ピース部と異なる硬さの素材を使用できるようにしたことを特徴とする請求項8記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。(請求項9)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、舌を安定保持させる吸引保持方式からなる気道確保用の補助器具、すなわち歯列に装着するマウスピースに発生させる吸着作用によって、舌根部を前方へ押出す状態で該舌根部の両側面を本体ピース部(下顎ピース部または上顎ピース部)に吸着保持させ、就寝時に気道を確実に開放させた状態が得られるので、舌の下面にマウスピースの延伸部分などを挟入する場合に比べて、装着時における異物感、不快感などがなく長時間にわたり快眠することができる。
また、就寝前に歯列に装着したマウスピースに吸引器を用いて吸気する操作をするだけであるから、取扱いが簡便であるとともにコンパクトにして簡易な補助器具として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すれば、図1〜図5は第1実施例のマウスピースAを開示する。
マウスピースAは、本体ピース部が平面視で略馬蹄形を呈する下顎ピース部1と上顎ピース部2を一体に形成した一体型の場合を例示し、下顎ピース部1の底面に使用者の下顎歯列を受容れる下顎歯列溝1aを凹設し、上顎ピース部2の上面には使用者の上顎歯列を受容れる上顎歯列溝2aを凹設する。
また、マウスピースAは、その下顎ピース部1が上顎ピース部2に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成しており、それにより、使用者の上顎に対する下顎の位置が通常よりわずかに持上げられた状態で装着されるようにする。
【0012】
このマウスピースAは、毒性のないモールド材料であればプラスチック、ウレタン、金属その他どのような材料からも製作できるが、具体例として提示すれば、柔軟シリコン、酢酸セルロース、アクリルレジン、ポリアミド、ポリオレフィン系可塑性エラストなどである。
【0013】
上記マウスピースAの下顎ピース部1には、前面の左右対称位置より両側片部の各奥側まで延びる内通路3,4を形成するとともに各内通路3,4の奥側内面、詳しくは装着時に奧歯の近傍に対向する部位に吸着口3a,4aを開口させる。
この吸着口3a,4aは、各側にそれぞれ一つ宛て形成することもよいが、吸着作用を高めるために間隔をおいて2個以上の複数個を形成すること、あるいは開口部を長孔形状とすること、さらに上下高さを違えて配置することもよい。図示では、左右各側にそれぞれ上下にわずかにずらした位置に丸孔形状の2個の吸着口3a,4aを形成した場合を例示している。
【0014】
そして、下顎ピース部1の前面には、左右間隔をおいた対称位置に前記内通路3,4の前端を開口させ、その各開口部にそれぞれ吸引部5,6を設ける。
吸引部5,6は、封止(逆止)機能を有する構造を備え、注射シリンジ等の吸入器を用いて前記内通路3,4に適時に陰圧をかけるようにするものである。詳しくは、内通路3,4の前端側へ抜ける空気流れを許容し、前端から内通路3,4へ入る空気流れを規制する逆止弁を設けた構造、又は、陰圧をかける注射シリンジの吸気口管を抜き差し可能な挿入口5a,6aを有し前記吸気口管を抜いた状態で挿入口を閉鎖させる封止構造とするなど、周知の封止(逆止)手段を採用する。
なお、図8には吸引器の一例として注射シリンジBを示し、図中の符号20が吸気口管である。
【0015】
図6〜図7は第2実施例のマウスピースA’を示す、
マウスピースA’は、平面視で略馬蹄形を呈する下顎ピース部1と上顎ピース部2を一体とした一体型であること、及び下顎ピース部1の前面に吸引部5,6を設けたことは第1実施例のマウスピースAと同一であるが、前面中央部の下顎ピース部1と上顎ピース部2にわたって矩形状の差込口8を形成し、その差込口に舌押えピース10を抜き差し可能に挿着した態様、すなわち、第1実施例のマウスピースAを変形させて舌押えピース10を組み合せたものである。
【0016】
舌押えピース10は、前記マウスピースA’の差込口8に嵌め合う支持部11とそれに連結して延びる細帯状の作用部12により構成され、その支持部11はマウスピースA’と同一材料で形成し、作用部12も支持部11と同一材料またはそれよりも柔軟材料により形成する。
この舌押えピース10には、作用部12に内通路13を形成し、内通路13の前端を支持部11の前面に開口するとともに後端を作用部12の後部まで延伸させ、その後端部分に一つ又は複数個の吸着口14を形成する。
支持部11の前面には、内通路13の前端開口部に吸引部15を形成し、その吸引部15は前記吸引部5,6と同様に封止機能を有する構造である。
【0017】
上記舌押えピース10は、その作用部12に3個以上の吸着口14を直列に配列し、あるいは二つの内通路13を並設して吸着口14を千鳥状に配列することもよく、また、支持部11の前面に二つの吸引部15を設けて各内通路13へ個別に連通させるなど、吸着口14の吸着作用を高めるために適宜の変形例を採用することも任意である。
【0018】
而して、上記マウスピースA’の使用法を説明すると、マウスピースA’の差込口8の前面より舌押えピース10の作用部12を差し込みながら支持部11を差込口8に嵌め込み組み付け状態にする(図7参照)。
そのマウスピースA’を使用者が就寝前に口腔内に入れ、その下顎ピース部1の下顎歯列溝1aを使用者の下顎歯列21に嵌め合わせ、上顎ピース部2の上顎歯列溝2aに上顎歯列22を嵌め合わせるが、その際に、マウスピースA’内に突出する舌押えピース10の作用部12を使用者の舌23の上面に沿わせて接触させる(図10参照)。
【0019】
その状態で使用者は、舌先を丸めるようにして舌根部23aをわずかに前方へ押出す状態をしながら、図8に例示する注射シリンジBの吸気口管20を一方の吸引部5に差し込み該シリンジBにより吸気して吸気口3aに吸気作用を生起させ、それにより、舌根部23aの一側面(左側面)を下顎ピース部1に吸着保持させる。
同様に、注射シリンジBの吸気口管20を他方の吸引部5に差し込み、該シリンジBにより吸気することにより吸気口4aに吸気作用を生起させて、舌根部23aの他側面(右側面)を下顎ピース部1に吸着保持させる。
さらに、注射シリンジBの吸気口管20を舌押えピース10吸引部15に差し込み、該シリンジBにより吸気することにより吸気口14に吸気作用を生起させて、舌根部23aの上面を舌押えピース10に吸着保持させる。
【0020】
上記操作によれば、図10に示すように、マウスピースA’の装着によって使用者の舌根部が前方へ出た状態、つまり気道24が開放した状態が保持される。すなわち、図9にはマウスピースA’を装着しない就寝状態を示すが、その状態では舌根部23aが気道24側へ垂れ下がり気道24を狭めてイビキや無呼吸症候群の症状となっており、それに対して、マウスピースA’を装着した場合には気道24が確保された状態の就寝が可能となる。
したがって、就寝時におけるイビキの発生や無呼吸症候群の症状を改善することができるとともに舌を吸着作用により気道確保状態に保持するので特に不快感や疲労感を感じることなく快眠することができる。
【0021】
上述した実施例においては、マウスピースA’の使用法について説明したが、マウスピースAの場合には舌押えピース10がない構成であるから、その舌押えピース10の操作が不要なこと以外は同様に操作すればよいので、重複を避けるためにマウスピースAの使用法については説明を省略する。なお、マウスピースAの場合は、マウスピースA’に比べて舌押えピース10の操作が不要な分だけ簡易に使用することができる。
また、マウスピースA’の場合であっても舌押えピース10を取付けない使用法、つまりマウスピースAと同様の使用法を採用することも自由であり、その場合には、開放している差込口8を口腔内へ通じる空気孔として使用することも可能である。勿論、マウスピースA’、マウスピースAの何れにおいても別途に空気孔を形成しておくことも任意である。
【0022】
そして、上記実施例において、マウスピースは、その下顎ピース部1が上顎ピース部2に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成した場合を説明したが、それによれば、上顎に対する下顎の位置が通常よりも持上げられた姿勢、つまり下顎を上方へ持上げて気道を開く状態に保持されるので気道の圧迫が抑制される。
したがって、特に限定されるものではないが、上記マウスピースAおよびA’は、イビキの症状に対応できることは当然ながら、無呼吸症候群の症状に適用して有効である。
【0023】
次に、図11〜図13は第3実施例であって、本体ピース部が上顎ピース部だけである半片型のマウスピース2Aを開示する。
このマウスピース(上顎ピース部)2Aは、前述した第1実施例の上顎ピース部2と同一の材料で成形され、その上面に使用者の上顎歯列を受容れる上顎歯列溝2aを凹設したものであり、その前面中央部に略鼻形を呈する突隆縁30を形成し、該突隆縁30の底面に封止機能を有する吸引部35を下向き開口状に配設するとともに、突隆縁30と対向する内面側には舌押えピース40を形成する。
【0024】
また、マウスピース2Aには、前記吸引部35から舌押えピース40へ延びる内通路31を形成し、その内通路31の途中から分岐して両側片部の各奥側まで延びる内通路32,33を形成するとともに各内通路32,33の奥側内面、詳しくは装着時に奥歯の近傍に対向する部位に吸着口32a,33aを開口させる。
舌押えピース40は、図13に示すように、マウスピース2Aの中央内底面部より滑らかに立ち上り奥側上辺へ水平に延びた円形薄盤とし、その底面に円形穴からなる吸着口34を形成して該吸着口34を前記内通路31の先端に連通させる。
上記吸着口32a,33aは、マウスピース2Aを装着した状態で舌の左右各側面に対向し、また、吸着口34は舌の上面に対向するように配置する。
【0025】
上記マウスピース2Aの使用法も前述したマウスピースA’の使用法と略同様である。すなわち、上顎ピース部だけのマウスピース2Aを使用者が就寝前に口腔内に入れ、その上顎歯列溝2aに上顎歯列を嵌め合わせることにより舌押えピース40を使用者の舌上面に沿わせて接触させる。
その状態で使用者は、注射シリンジBの吸気口管20を突隆縁30底面の吸引部35に差し込み該シリンジBにより吸気して舌押えピース40の吸気口34に吸気作用を生起させそれにより、舌根部の上面が持上がるようにして舌押えピース40に吸着保持され、同時に、注射シリンジBの吸気により吸気作用を生起している吸気口32a,33aにより舌根部の両側面がマウスピース2Aに吸着保持される。それにより、使用者の気道24が確保された状態の就寝が可能となる。
【0026】
なお、上記第3実施例においては、内通路32,33を内通路31から分岐させた構造を例示したが、それらを各独立にして夫々に吸引部を設ける構造とすることもよい。
また、上記実施例においては舌押えピース40を付設した場合を例示したが、この舌押えピース40のないマウスピースを採用することも自由である。
さらに、上記実施例においては、舌押えピース40をマウスピース2Aに一体に形成した形態を例示するが、マウスピース2Aと別体に成形してマウスピース2Aに着脱可能に取り付けることも任意である。例えば、図14に例示するように、図中の接続部位45で、舌押えピース40’をマウスピース2Aに抜き差し可能に装着するものである。
それによれば、舌押えピース40’をマウスピース2Aよりも柔軟な材料、例えば柔軟シリコン等で形成することができるので、舌押えピースの舌の吸着作用を強化することができ、あるいは、舌押えピースまでを必要としない症状の場合に舌押えピース40’を外して使用することも可能となる。
【0027】
上述した実施例においては、何れも吸着口を下顎ピース部1又は上顎ピース部(マウスピース)2Aの左右両奥側内面に開口した場合を説明したが、それに限定されるものではなく、前述したように下顎ピース部1又はマウスピース部2Aの左右両前側内面に併設または独立して配置することもよい。
例えば、図3、図4に二点鎖線で付記するように、吸着口53a,54aを吸着口3a,4aと共に併設または吸着口3a,4aに代えて配設する如くである。
また、図15及び図16に例示するように、上記第3実施例(図12及び図13)の吸着口32a,33aに代えて吸着口55a,56aを形成する如くである。その場合には、図示のように、マウスピース2Aの中央底面部に舌受け片58を突出させ、その舌受け片58上に舌先部分を載せるようにすることが好ましい。それにより、吸着口55a,56aの吸引作用により前方へ引き寄せた舌前部を安定して保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明の第1実施例のマウスピースを斜め前方より視た斜視図である。
【図2】 同後方より視た斜視図である。
【図3】 同平面図である。
【図4】 図3における(4)−(4)線に沿う断面図である。
【図5】 同(4)−(4)線に沿う断面図である。
【図6】 本発明の第2実施例のマウスピースを説明する分離斜視図であって、(1)がマウスピースを斜め前方より視た斜視図、(2)が舌押えピースの斜視図である。
【図7】 舌押えピースを組み付けた状態のマウスピースの断面図である。
【図8】 吸引器と例示する注射シリンジの斜視図である。
【図9】 本発明のマウスピースを装着する前の状態を示す咽喉部の説明図である。
【図10】 マウスピースを装着した状態を示す咽喉部の説明図である。
【図11】 本発明の第3実施例のマウスピースを斜め前方より視た斜視図である。
【図12】 同平面図である。
【図13】 図12における中央断面側面図である。
【図14】 第3実施例の一部を変更した変形例の平面図である。
【図15】 第3実施例の一部をさらに変更した変形例の平面図である。
【図16】 図15における中央断面側面図である。
【符号の説明】
【0029】
A:マウスピース 1:下顎ピース部 2:上顎ピース部
3,4:内通路 3a,4a:吸着口 5,6:吸引部
A’:マウスピース 8:差込口
10:舌押えピース 11:支持部 12:作用部
13:内通路 14:吸着口 15:吸引部
23:舌 23a:舌根部 24:気道
2A:マウスピース 31,32,33:内通路
32a,33a:吸着口 34:吸着口 35:吸引部
40:舌押えピース 53a,54a:吸着口
55a,56a:吸着口
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時無呼吸等の防止用マウスピースに関し、詳しくはイビキや無呼吸症候群の症状である気道閉塞を抑制して気道確保を目的としたマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
最近急増しているイビキや無呼吸症候群は、肥満や老化が要因である口腔内の舌の位置が大きな影響を与えている。具体的には、就寝時に舌が喉奥へ後退する状態、つまり舌根や軟口蓋が気道に垂れ下がって気道を狭め、さらに閉塞することにより発生することが知られている。
そのようなイビキや無呼吸症候群を防止するため、気道確保を目的として舌の持上げ、引上げ機能を付与した従来技術には、特許文献1に、舌を安定して保持するための形状・構造的な改良を加えた歯列マウスピースが提案されている。また、特許文献2には、減圧ユニットを用いて口腔内全体を陰圧にし、ユーザーの軟口蓋及び周囲軟組織を口腔に向かって引張り、且つ舌を上口蓋に向かって引上げることにより気道を開放状態に維持する装置も提案されている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−275311号公報
【特許文献2】特開2007−319680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のマウスピースにおいては、舌保持用くぼみ44が設けられるが、仰向け状において脱力した舌の咽頭への落ち込みを防止し得るのか疑問であり、また舌を安定して保持するための延伸部28が、下側凹溝部24の鞍形壁における内側に延伸して舌の下面に狭入される装着状態となるために、口腔内における異物感や痒み、痛みなどの不快感や疲労感を伴うことがあり長時間の装着使用としては難しい。
その点で特許文献2は、口腔内を陰圧にすることにより舌を上口蓋に向かって引上げるので、異物感、不快感などの前記不具合はないものの口腔内全体を陰圧にするために減圧ユニットを装備するなど大掛かりな装置が必須であって、簡易な補助器具としての利用は不可能である。また、この装置を装着して呼吸を行う場合、吸気した一部が口腔を通じて吸われて逃げてしまい、自然呼吸を阻害する可能性が有る。
【0005】
本発明は、上記従来事情に鑑みて、歯列に装着するマウスピースの必要最小の所定部位を陰圧(負圧)にして発生させる吸着作用を利用し、それにより、使用性、取扱い性に優れ、かつ長時間の装着でも不快感や疲労感が少ない気道確保用の簡易な補助器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯る本発明の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピースは、略馬蹄形を有する本体ピース部の前面に封止機能を有する吸引部を設けるとともに左右両奥側内面及び又は両前側内面に吸着口を開口し、それら吸着口を前記吸引部に内通路を介して連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の両側面を吸着保持させるようにしたことを特徴とする(請求項1)。
本発明によれば、使用者が就寝の直前にマウスピースを歯列に装着した状態で、注射シリンジなどハンディタイプの吸入器を用いて本体ピース部の吸引部から吸気することにより、内通路を介して本体ピース部に開口した吸着口に吸着作用を生起させ、その吸着作用で舌根部及び又は舌前部の両側面を吸着保持させた後に吸入器を取り外す。好ましくは、気道を拡開するために舌根部を前方へ押出す状態で該舌根部及び又は舌前部の両側面を本体ピース部に吸着保持させ、それにより、就寝時に気道側への舌根部の垂れ下がりを抑制して気道を確実に開放させた状態で就寝できるようにする。
【0007】
すなわち、本発明のマウスピースは、舌根部の前方押出し姿勢を吸着作用により確保するために本体ピース部の内面に吸着口を配置させたものであり、その吸着口は、舌を吸着して舌根部を前方へ押出し易い部位に形成する。具体的には、本体ピース部の左右両側内面であって、奥歯近傍に対向する奥側内面が舌根部に近接していて最も好ましいが、それだけに限らず、舌前部を吸着して舌根部を前方より引き出す部位、つまり本体ピース部の左右両側内面であって、前歯近傍に対向する両前側内面に配置させることもよい。その場合には、吸着口を両奥側内面だけ、または両前側内面だけに形成する態様、或いはそれらを併用する態様とすることも任意である(請求項1)。
【0008】
本発明における前記本体ピース部は、上顎ピース部と下顎ピース部とを一体に形成した一体型(ワンピース型)、あるいは、上顎ピース部又は下顎ピース部だけを使用する半片型(分離型)のいずれの形態を採用することも可能である。
その一方の形態である一体型を採用する場合には、舌の吸着保持作用を確実にするために上下顎ピース部何れか一方又は両方に前記吸引部、内通路及び吸着口を形成するようにする(請求項2)。
そして、上記吸引部は、左右の内通路に共用される一箇所に配設される態様、或いは各内通路に個別に分離した二箇所に配設される態様の何れであってもよいが、何れの態様であっても吸着作用を高めるために、吸着口は各側それぞれ2個以上の複数口が形成されていることが好ましい(請求項3、4)
また、上記吸引部が左右間隔をおいて二箇所に配設される態様においては、下顎ピース部と上顎ピース部とに跨る前面中央に舌押えピースを挿着する差込口を設け、舌押えピースには、底面に吸着口を開口するとともに前面に封止機能を有する吸引部を設けて前記吸着口と連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにする(請求項5)。
それによれば、舌根部の左右両側面の吸着保持と併せて舌上面を吸着して舌の保持力を強化させる。
さらに重症なイビキ症状、又は無呼吸症候群に対応するために、上記吸着口に吸着作用を生起させる構成に併せて、上記下顎ピース部に上顎ピース部が一体に形成され、その下顎ピース部が上顎ピース部に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成した態様とすることもよい(請求項6)。
【0009】
一方、上記本体ピース部が半片型の場合には、舌の吸着保持作用、特に持上げ作用を確保することから、下顎ピース部を使用するよりも上顎ピース部を使用するようにする。すなわち、上記本体ピース部が上顎ピース部だけの半片型であって、その上顎ピース部に前記吸引部、内通路及び吸着口を形成するようにする(請求項7)。
また、その半片型の上顎ピース部に舌押えピースを設ける場合は、上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押えピースを設け、該舌押えピースには、底面に吸着口を開口して前記吸引部と連通させ、その吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにする(請求項8)。
さらに、より柔軟な素材で舌への密着度を高めるため、上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押さえピースを着脱自在に形成し、該ピース部と異なる硬さの素材を使用できるようにしたことを特徴とする請求項8記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。(請求項9)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、舌を安定保持させる吸引保持方式からなる気道確保用の補助器具、すなわち歯列に装着するマウスピースに発生させる吸着作用によって、舌根部を前方へ押出す状態で該舌根部の両側面を本体ピース部(下顎ピース部または上顎ピース部)に吸着保持させ、就寝時に気道を確実に開放させた状態が得られるので、舌の下面にマウスピースの延伸部分などを挟入する場合に比べて、装着時における異物感、不快感などがなく長時間にわたり快眠することができる。
また、就寝前に歯列に装着したマウスピースに吸引器を用いて吸気する操作をするだけであるから、取扱いが簡便であるとともにコンパクトにして簡易な補助器具として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すれば、図1〜図5は第1実施例のマウスピースAを開示する。
マウスピースAは、本体ピース部が平面視で略馬蹄形を呈する下顎ピース部1と上顎ピース部2を一体に形成した一体型の場合を例示し、下顎ピース部1の底面に使用者の下顎歯列を受容れる下顎歯列溝1aを凹設し、上顎ピース部2の上面には使用者の上顎歯列を受容れる上顎歯列溝2aを凹設する。
また、マウスピースAは、その下顎ピース部1が上顎ピース部2に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成しており、それにより、使用者の上顎に対する下顎の位置が通常よりわずかに持上げられた状態で装着されるようにする。
【0012】
このマウスピースAは、毒性のないモールド材料であればプラスチック、ウレタン、金属その他どのような材料からも製作できるが、具体例として提示すれば、柔軟シリコン、酢酸セルロース、アクリルレジン、ポリアミド、ポリオレフィン系可塑性エラストなどである。
【0013】
上記マウスピースAの下顎ピース部1には、前面の左右対称位置より両側片部の各奥側まで延びる内通路3,4を形成するとともに各内通路3,4の奥側内面、詳しくは装着時に奧歯の近傍に対向する部位に吸着口3a,4aを開口させる。
この吸着口3a,4aは、各側にそれぞれ一つ宛て形成することもよいが、吸着作用を高めるために間隔をおいて2個以上の複数個を形成すること、あるいは開口部を長孔形状とすること、さらに上下高さを違えて配置することもよい。図示では、左右各側にそれぞれ上下にわずかにずらした位置に丸孔形状の2個の吸着口3a,4aを形成した場合を例示している。
【0014】
そして、下顎ピース部1の前面には、左右間隔をおいた対称位置に前記内通路3,4の前端を開口させ、その各開口部にそれぞれ吸引部5,6を設ける。
吸引部5,6は、封止(逆止)機能を有する構造を備え、注射シリンジ等の吸入器を用いて前記内通路3,4に適時に陰圧をかけるようにするものである。詳しくは、内通路3,4の前端側へ抜ける空気流れを許容し、前端から内通路3,4へ入る空気流れを規制する逆止弁を設けた構造、又は、陰圧をかける注射シリンジの吸気口管を抜き差し可能な挿入口5a,6aを有し前記吸気口管を抜いた状態で挿入口を閉鎖させる封止構造とするなど、周知の封止(逆止)手段を採用する。
なお、図8には吸引器の一例として注射シリンジBを示し、図中の符号20が吸気口管である。
【0015】
図6〜図7は第2実施例のマウスピースA’を示す、
マウスピースA’は、平面視で略馬蹄形を呈する下顎ピース部1と上顎ピース部2を一体とした一体型であること、及び下顎ピース部1の前面に吸引部5,6を設けたことは第1実施例のマウスピースAと同一であるが、前面中央部の下顎ピース部1と上顎ピース部2にわたって矩形状の差込口8を形成し、その差込口に舌押えピース10を抜き差し可能に挿着した態様、すなわち、第1実施例のマウスピースAを変形させて舌押えピース10を組み合せたものである。
【0016】
舌押えピース10は、前記マウスピースA’の差込口8に嵌め合う支持部11とそれに連結して延びる細帯状の作用部12により構成され、その支持部11はマウスピースA’と同一材料で形成し、作用部12も支持部11と同一材料またはそれよりも柔軟材料により形成する。
この舌押えピース10には、作用部12に内通路13を形成し、内通路13の前端を支持部11の前面に開口するとともに後端を作用部12の後部まで延伸させ、その後端部分に一つ又は複数個の吸着口14を形成する。
支持部11の前面には、内通路13の前端開口部に吸引部15を形成し、その吸引部15は前記吸引部5,6と同様に封止機能を有する構造である。
【0017】
上記舌押えピース10は、その作用部12に3個以上の吸着口14を直列に配列し、あるいは二つの内通路13を並設して吸着口14を千鳥状に配列することもよく、また、支持部11の前面に二つの吸引部15を設けて各内通路13へ個別に連通させるなど、吸着口14の吸着作用を高めるために適宜の変形例を採用することも任意である。
【0018】
而して、上記マウスピースA’の使用法を説明すると、マウスピースA’の差込口8の前面より舌押えピース10の作用部12を差し込みながら支持部11を差込口8に嵌め込み組み付け状態にする(図7参照)。
そのマウスピースA’を使用者が就寝前に口腔内に入れ、その下顎ピース部1の下顎歯列溝1aを使用者の下顎歯列21に嵌め合わせ、上顎ピース部2の上顎歯列溝2aに上顎歯列22を嵌め合わせるが、その際に、マウスピースA’内に突出する舌押えピース10の作用部12を使用者の舌23の上面に沿わせて接触させる(図10参照)。
【0019】
その状態で使用者は、舌先を丸めるようにして舌根部23aをわずかに前方へ押出す状態をしながら、図8に例示する注射シリンジBの吸気口管20を一方の吸引部5に差し込み該シリンジBにより吸気して吸気口3aに吸気作用を生起させ、それにより、舌根部23aの一側面(左側面)を下顎ピース部1に吸着保持させる。
同様に、注射シリンジBの吸気口管20を他方の吸引部5に差し込み、該シリンジBにより吸気することにより吸気口4aに吸気作用を生起させて、舌根部23aの他側面(右側面)を下顎ピース部1に吸着保持させる。
さらに、注射シリンジBの吸気口管20を舌押えピース10吸引部15に差し込み、該シリンジBにより吸気することにより吸気口14に吸気作用を生起させて、舌根部23aの上面を舌押えピース10に吸着保持させる。
【0020】
上記操作によれば、図10に示すように、マウスピースA’の装着によって使用者の舌根部が前方へ出た状態、つまり気道24が開放した状態が保持される。すなわち、図9にはマウスピースA’を装着しない就寝状態を示すが、その状態では舌根部23aが気道24側へ垂れ下がり気道24を狭めてイビキや無呼吸症候群の症状となっており、それに対して、マウスピースA’を装着した場合には気道24が確保された状態の就寝が可能となる。
したがって、就寝時におけるイビキの発生や無呼吸症候群の症状を改善することができるとともに舌を吸着作用により気道確保状態に保持するので特に不快感や疲労感を感じることなく快眠することができる。
【0021】
上述した実施例においては、マウスピースA’の使用法について説明したが、マウスピースAの場合には舌押えピース10がない構成であるから、その舌押えピース10の操作が不要なこと以外は同様に操作すればよいので、重複を避けるためにマウスピースAの使用法については説明を省略する。なお、マウスピースAの場合は、マウスピースA’に比べて舌押えピース10の操作が不要な分だけ簡易に使用することができる。
また、マウスピースA’の場合であっても舌押えピース10を取付けない使用法、つまりマウスピースAと同様の使用法を採用することも自由であり、その場合には、開放している差込口8を口腔内へ通じる空気孔として使用することも可能である。勿論、マウスピースA’、マウスピースAの何れにおいても別途に空気孔を形成しておくことも任意である。
【0022】
そして、上記実施例において、マウスピースは、その下顎ピース部1が上顎ピース部2に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成した場合を説明したが、それによれば、上顎に対する下顎の位置が通常よりも持上げられた姿勢、つまり下顎を上方へ持上げて気道を開く状態に保持されるので気道の圧迫が抑制される。
したがって、特に限定されるものではないが、上記マウスピースAおよびA’は、イビキの症状に対応できることは当然ながら、無呼吸症候群の症状に適用して有効である。
【0023】
次に、図11〜図13は第3実施例であって、本体ピース部が上顎ピース部だけである半片型のマウスピース2Aを開示する。
このマウスピース(上顎ピース部)2Aは、前述した第1実施例の上顎ピース部2と同一の材料で成形され、その上面に使用者の上顎歯列を受容れる上顎歯列溝2aを凹設したものであり、その前面中央部に略鼻形を呈する突隆縁30を形成し、該突隆縁30の底面に封止機能を有する吸引部35を下向き開口状に配設するとともに、突隆縁30と対向する内面側には舌押えピース40を形成する。
【0024】
また、マウスピース2Aには、前記吸引部35から舌押えピース40へ延びる内通路31を形成し、その内通路31の途中から分岐して両側片部の各奥側まで延びる内通路32,33を形成するとともに各内通路32,33の奥側内面、詳しくは装着時に奥歯の近傍に対向する部位に吸着口32a,33aを開口させる。
舌押えピース40は、図13に示すように、マウスピース2Aの中央内底面部より滑らかに立ち上り奥側上辺へ水平に延びた円形薄盤とし、その底面に円形穴からなる吸着口34を形成して該吸着口34を前記内通路31の先端に連通させる。
上記吸着口32a,33aは、マウスピース2Aを装着した状態で舌の左右各側面に対向し、また、吸着口34は舌の上面に対向するように配置する。
【0025】
上記マウスピース2Aの使用法も前述したマウスピースA’の使用法と略同様である。すなわち、上顎ピース部だけのマウスピース2Aを使用者が就寝前に口腔内に入れ、その上顎歯列溝2aに上顎歯列を嵌め合わせることにより舌押えピース40を使用者の舌上面に沿わせて接触させる。
その状態で使用者は、注射シリンジBの吸気口管20を突隆縁30底面の吸引部35に差し込み該シリンジBにより吸気して舌押えピース40の吸気口34に吸気作用を生起させそれにより、舌根部の上面が持上がるようにして舌押えピース40に吸着保持され、同時に、注射シリンジBの吸気により吸気作用を生起している吸気口32a,33aにより舌根部の両側面がマウスピース2Aに吸着保持される。それにより、使用者の気道24が確保された状態の就寝が可能となる。
【0026】
なお、上記第3実施例においては、内通路32,33を内通路31から分岐させた構造を例示したが、それらを各独立にして夫々に吸引部を設ける構造とすることもよい。
また、上記実施例においては舌押えピース40を付設した場合を例示したが、この舌押えピース40のないマウスピースを採用することも自由である。
さらに、上記実施例においては、舌押えピース40をマウスピース2Aに一体に形成した形態を例示するが、マウスピース2Aと別体に成形してマウスピース2Aに着脱可能に取り付けることも任意である。例えば、図14に例示するように、図中の接続部位45で、舌押えピース40’をマウスピース2Aに抜き差し可能に装着するものである。
それによれば、舌押えピース40’をマウスピース2Aよりも柔軟な材料、例えば柔軟シリコン等で形成することができるので、舌押えピースの舌の吸着作用を強化することができ、あるいは、舌押えピースまでを必要としない症状の場合に舌押えピース40’を外して使用することも可能となる。
【0027】
上述した実施例においては、何れも吸着口を下顎ピース部1又は上顎ピース部(マウスピース)2Aの左右両奥側内面に開口した場合を説明したが、それに限定されるものではなく、前述したように下顎ピース部1又はマウスピース部2Aの左右両前側内面に併設または独立して配置することもよい。
例えば、図3、図4に二点鎖線で付記するように、吸着口53a,54aを吸着口3a,4aと共に併設または吸着口3a,4aに代えて配設する如くである。
また、図15及び図16に例示するように、上記第3実施例(図12及び図13)の吸着口32a,33aに代えて吸着口55a,56aを形成する如くである。その場合には、図示のように、マウスピース2Aの中央底面部に舌受け片58を突出させ、その舌受け片58上に舌先部分を載せるようにすることが好ましい。それにより、吸着口55a,56aの吸引作用により前方へ引き寄せた舌前部を安定して保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明の第1実施例のマウスピースを斜め前方より視た斜視図である。
【図2】 同後方より視た斜視図である。
【図3】 同平面図である。
【図4】 図3における(4)−(4)線に沿う断面図である。
【図5】 同(4)−(4)線に沿う断面図である。
【図6】 本発明の第2実施例のマウスピースを説明する分離斜視図であって、(1)がマウスピースを斜め前方より視た斜視図、(2)が舌押えピースの斜視図である。
【図7】 舌押えピースを組み付けた状態のマウスピースの断面図である。
【図8】 吸引器と例示する注射シリンジの斜視図である。
【図9】 本発明のマウスピースを装着する前の状態を示す咽喉部の説明図である。
【図10】 マウスピースを装着した状態を示す咽喉部の説明図である。
【図11】 本発明の第3実施例のマウスピースを斜め前方より視た斜視図である。
【図12】 同平面図である。
【図13】 図12における中央断面側面図である。
【図14】 第3実施例の一部を変更した変形例の平面図である。
【図15】 第3実施例の一部をさらに変更した変形例の平面図である。
【図16】 図15における中央断面側面図である。
【符号の説明】
【0029】
A:マウスピース 1:下顎ピース部 2:上顎ピース部
3,4:内通路 3a,4a:吸着口 5,6:吸引部
A’:マウスピース 8:差込口
10:舌押えピース 11:支持部 12:作用部
13:内通路 14:吸着口 15:吸引部
23:舌 23a:舌根部 24:気道
2A:マウスピース 31,32,33:内通路
32a,33a:吸着口 34:吸着口 35:吸引部
40:舌押えピース 53a,54a:吸着口
55a,56a:吸着口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略馬蹄形を有する本体ピース部の前面に封止機能を有する吸引部を設けるとともに左右両奥側内面及び又は両前側内面に吸着口を開口し、それら吸着口を前記吸引部に内通路を介して連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の両側面を吸着保持させるようにした睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項2】
上記本体ピース部が上顎ピース部と下顎ピース部との一体型であり、その上下顎ピース部何れか一方又は両方に前記吸引部、内通路及び吸着口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項3】
上記吸引部が下顎ピース部の前面中央に一つ形成され、その吸引部から左右の内通路が分岐して形成されており、各内通路には前記吸着口が奥歯近傍及び又は前歯近傍に対向する箇所に各側それぞれ複数口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項4】
上記吸引部が上顎及び又は下顎ピース部の前面に左右間隔をおいて二つ形成され、その吸引部ごとに左右の内通路が各別に連通しており、各内通路には前記吸着口が奥歯近傍に対向する箇所に各側それぞれ複数口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項5】
上記下顎ピース部と上顎ピース部とに跨る前面中央に舌押えピースを挿着する差込口を設け、舌押えピースには、底面に吸着口を開口するとともに前面に封止機能を有する吸引部を設けて前記吸着口と連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにしたことを特徴とする請求項4記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項6】
上記下顎ピース部が上顎ピース部に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項7】
上記本体ピース部が上顎ピース部だけの半片型であり、その上顎ピース部に前記吸引部、内通路及び吸着口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項8】
上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押えピースを設け、該舌押えピースには、底面に吸着口を開口して前記吸引部と連通させ、その吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにしたことを特徴とする請求項7記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項9】
上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押さえピースを着脱自在に形成し、該ピース部と異なる硬さの素材を使用できるようにしたことを特徴とする請求項8記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項1】
略馬蹄形を有する本体ピース部の前面に封止機能を有する吸引部を設けるとともに左右両奥側内面及び又は両前側内面に吸着口を開口し、それら吸着口を前記吸引部に内通路を介して連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の両側面を吸着保持させるようにした睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項2】
上記本体ピース部が上顎ピース部と下顎ピース部との一体型であり、その上下顎ピース部何れか一方又は両方に前記吸引部、内通路及び吸着口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項3】
上記吸引部が下顎ピース部の前面中央に一つ形成され、その吸引部から左右の内通路が分岐して形成されており、各内通路には前記吸着口が奥歯近傍及び又は前歯近傍に対向する箇所に各側それぞれ複数口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項4】
上記吸引部が上顎及び又は下顎ピース部の前面に左右間隔をおいて二つ形成され、その吸引部ごとに左右の内通路が各別に連通しており、各内通路には前記吸着口が奥歯近傍に対向する箇所に各側それぞれ複数口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項5】
上記下顎ピース部と上顎ピース部とに跨る前面中央に舌押えピースを挿着する差込口を設け、舌押えピースには、底面に吸着口を開口するとともに前面に封止機能を有する吸引部を設けて前記吸着口と連通させ、前記吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにしたことを特徴とする請求項4記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項6】
上記下顎ピース部が上顎ピース部に対して、通常の噛み合わせ位置よりも前面側にずらして形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項7】
上記本体ピース部が上顎ピース部だけの半片型であり、その上顎ピース部に前記吸引部、内通路及び吸着口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項8】
上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押えピースを設け、該舌押えピースには、底面に吸着口を開口して前記吸引部と連通させ、その吸引部を吸気して吸着口を陰圧にすることにより舌の上面を吸着保持させるようにしたことを特徴とする請求項7記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【請求項9】
上記上顎ピース部の中央内面より奥側上辺へ延びる舌押さえピースを着脱自在に形成し、該ピース部と異なる硬さの素材を使用できるようにしたことを特徴とする請求項8記載の睡眠時無呼吸等の防止用マウスピース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−29615(P2010−29615A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214659(P2008−214659)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(595090668)有限会社ニューウェーブメディカル (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(595090668)有限会社ニューウェーブメディカル (4)
【Fターム(参考)】
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