説明

短冊形耳標

【課題】動物の耳殻に耳標と共に取り付けられ、無線で個体識別を行うRFIDタグの外部からの読み取り精度を向上させる。
【解決手段】短冊形耳標10を、その本体1の一端に矢尻部2Eを備えた軸部2を突設し、他端には矢尻部2Eの係止部3を設けて合成樹脂で構成し、本体1の折り曲げられて内側となる部分には、幅が本体1の短手方向の幅よりも狭くマイクロチップ4とアンテナ5とを内蔵する合成樹脂製のRFIDタグ6を保持するためのフック状部材11又はブリッジ状部材を設けると共に、RFIDタグ6と短冊状本体1との間に空隙部を持たせる台座部13を配して構成する。この短冊形耳標10は動物の耳殻の根元部分の上端部分に、耳殻端部を跨いで取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は短冊形耳標に関し、特に、無線式個体識別タグ(Radio Frequency-Identification tagのことであり、以下RFIDタグと記載)を保持して牛などの家畜の耳に取り付けられる短冊形耳標に関する。
【背景技術】
【0002】
牧場等で牛や馬等の家畜を識別するために、家畜の耳を貫通させて取り付ける耳標が知られている。耳標には1ピース型と2ピース型があり、1ピース型は一体物であって、軸部の一端に形成された札部と、他端に形成された抜止用のアンカー部とから構成され、2ピース型は二体物であって、軸部の一端に形成された札部(雄札)と、軸部の軸先に取り付けられる別体の札部(雌札)とから構成される。耳標は軸部を家畜の耳の耳殻部を貫通させて家畜に取り付けられ、札部には家畜登録番号等の家畜の個体識別番号や、牧場で家畜を遠くから識別するために使用する数字が拡大されて印刷されたり、手書きで書き込まれている。更に、耳標の札部には、家畜個体識別番号を示すバーコードや二次元バーコードが印刷されることもある。
【0003】
一方、近年、RFIDタグを耳標に組み込み、無線を用いて耳標に記録された動物登録番号のような個体識別番号を読み取るRFIDシステムの開発が、日本及び牧畜の盛んな国々で急ピッチで進められている。
【0004】
RFIDシステムは、リーダライタ(アンテナ+デコーダ+コントローラ)と、情報を電子回路に記憶可能なRFIDタグ(マイクロチップ+アンテナ)とで構成され、無線通信により相互間のデータ通信が可能な自動個体認識技術である。RFIDタグには少なくとも1つの識別記号が書き込まれている。リーダライタ側からの非接触電力電送技術により、RFIDタグには電池は内蔵されていない。RFIDタグは無線を使用しているために、リーダライタにかざすだけで通信ができる。無線周波数には長波帯の周波数から極超短波帯(UHF)までの周波数が使用される。
【0005】
このようなRFIDタグを牛、馬、羊等の家畜、更には鹿等の動物に使用する耳標に応用する場合には、マイクロチップに動物の個体識別番号を記憶させたRFIDタグが、軸部と札部からなる耳標の札部分に埋め込まれる。また、2ピース型の耳標の雌札の孔の周囲の補強した硬い部分にRFIDタグが埋め込まれたり、軸部と札部からなる耳標の軸部分にRFIDタグが埋め込まれたりする方法もあるが、何れの方法にも一長一短がある。
【0006】
そこで、本発明者は、柔軟性を有する耳標の軸部に、適度な硬さを備えたRFIDタグに設けた貫通孔を挿入し、RFIDタグを所定の遊びを持たせて耳標に取り付けることにより、RFIDタグが破損することなく耳標と共存できる動物用の耳標(個体識別具)を提案した(特許文献1参照)。本発明者が提案した動物用の耳標は、耳標に取り付けたRFIDタグを再利用することができ、更には家畜以外の動物にも使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4498013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、耳標は一般に動物の片方の耳、または両方の耳に取り付けられ、札部が耳から垂れ下がっているので、耳標にRFIDタグを取り付けた場合、動物の横に設置されたリーダライタのアンテナから耳標を見て、RFIDタグが無線電波の死角に入ると読み取りが上手く行かない場合があった。特に、RFIDタグの無線周波数の電波にUHFが使用されると、RFIDタグが死角に入った時の読み取りができなかった。
【0009】
そこで、本発明者は、耳から垂れ下がる耳標ではなく、欧米において普及している動物の耳殻の上側部分に取り付けられる金属製の短冊形耳標、特に、牛の耳殻の上部に取り付けられる耳標は、常に動物の耳の上側に位置するので、牛の上方向からは死角になり難いことを見出し、本発明を成すに至った。即ち、本発明は、欧米において普及している短冊形耳標の材質を電波を通す合成樹脂で構成すると共に、折り曲げて耳殻に取り付けられる短冊形耳標の内側に空隙部を介してRFIDタグを組み込むことにより、動物の上側方向から情報を読み取り易い短冊形耳標を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明の短冊形耳標は、動物の耳殻の基部の上端部に、上端部を跨いだ状態で耳殻を貫通させて取り付けられる短冊形耳標であって、合成樹脂で構成された短冊状の本体と、短冊状の本体の一方の端部に突設された矢尻状の軸先を備えた軸部と、短冊状の本体の他方の端部に設けられて、本体が中央部で折り曲げられた時に軸先を受け入れて抜けないようにする係止部と、本体の軸部と同じ側の面に設けられ、マイクロチップとアンテナとを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグをスライド可能に保持する保持手段と、本体の保持手段と同じ側の面に設けられ、RFIDタグと本体との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
保持手段としては、RFIDタグが保持手段に対してスライド可能にするために、短冊状の本体の長手方向の側面側から反対側の側面側に掛け渡されたブリッジ状部材、短冊状の本体の長手方向の対向する部分に突設されて先端部が鉤状に内側に折れ曲がるフック状部材、或いは短冊状の本体の長手方向の中央部を除く部分に対向して突設されて上端部には短冊状の本体の内側に突出する庇部が設けられた壁状部とすることができる。
【0012】
また、空隙部形成手段としては、ブリッジ状部材、フック状部材、または壁状部と短冊状の本体の上面との間に設けた台座部、短冊状の本体の保持手段が形成された側の面上に突設された複数個の孤立型突起、或いは複数の突条とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の短冊形耳標によれば、耳標本体が中央部で折り曲げられて動物の耳殻の根元部上端に耳殻を挟んで取り付けられるので、短冊形耳標の内側に保持されたRFIDタグのアンテナが常に動物の上側に位置することになり、動物の上側に配置したリーダライタのアンテナで確実にRFIDタグを読み取ることができるという効果がある。また、短冊形耳標の内側に保持されたRFIDタグは、保持手段に対して微小移動が可能であり、耳標本体の内側に空隙を挟んで保持されるので、耳標本体に想定外の外力が加わっても、RFIDにはその外力がそのまま伝わることがないので破損する可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の短冊形耳標の第1の実施例の斜視図、(b)は(a)のA‐A線における局部断面図である。
【図2】(a)は図1(a)に示したRFIDタグを短冊形耳標に保持させた状態を示す斜視図、(b)は(a)に示した短冊形耳標を折り曲げて牛の耳殻を貫通させて係止した状態を示す断面図である。
【図3】(a)は図2(a)に示した短冊形耳標を折り曲げて牛の耳殻の根元部上部に取り付ける様子を示す説明図、(b)、(c)は(a)の状態の後に短冊形耳標が牛の耳殻の根元部上部に取り付けられた状態を示す説明図である。
【図4】牛の耳殻の上部の根元部に取り付けられたRFIDタグを保持する短冊状とリーダとの通信の様子を示す説明図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施例の短冊形耳標の一部分を示す斜視図、(b)は本発明の第3の実施例の短冊形耳標の一部分を示す斜視図である。
【図6】(a)は本発明の第1の実施例の短冊形耳標の変形実施例の一部分を示す斜視図、(b)は本発明の第2の実施例の短冊形耳標の変形実施例の一部分を示す斜視図、(c)は本発明の第3の実施例の短冊形耳標の変形実施例の一部分を示す斜視図である。
【図7】図1(a)に示した本発明の第1の実施例の別の変形実施例の構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示した本発明の実施例の変形実施例の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いて本発明の短冊形耳標の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、短冊形耳標は、耳殻から垂れ下がるように取り付けられる一般の耳標とは異なり、動物の頭部から直立する耳の根元部の上部(耳殻の上部)を挟むように取り付けられる再確認用のものであり、耳標に記載された文字や番号を遠方から読み取ることはしない。従って、短冊形耳標は、その本体が中央部でU字状に折り曲げられた時に、耳標の内側部分に本体からはみ出さないRFIDタグを保持することができる構造となっており、以下の実施例では、RFIDタグの具体的な保持構造について説明する。
【0016】
図1(a)は本発明の第1の実施例の短冊形耳標10を示すものである。第1の実施例の短冊形耳標10は基本的に、合成樹脂で構成された短冊状の本体1と、本体1の一方の端部に突設された矢尻状の軸先2Eを備えた軸部2と、本体1の他方の端部に設けられた係止部3とから構成される。係止部3は、本体1が中央部でU字状に折り曲げられた時に、矢尻状の軸先1Eを受け入れて抜けないようにするものであり、係止孔3Hと軸先収納部3Cがある。即ち、軸部2と係止部3の係止孔3Hとは本体1の同じ側の面1Aに設けられている。
【0017】
第1の実施例の短冊形耳標10には、マイクロチップ4とアンテナ5とを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグ6を保持する保持手段として、フック状部材11が本体1の面1Aの上に設けられている。RFIDタグ6の形状は一例であり、アンテナ5の形状も一例である。フック状部材11は本体1の縁部の対向した位置に所定間隔で設けられている。本体1の中央部は折り曲げられるので、フック状部材11は本体1の中央部には設けられていない。
【0018】
フック状部材11は、第1の実施例では、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段としての台座部13の上に突設され、上端に鍵部12を有する。そして、図1(b)に示すように、鍵部12と台座部13との間に形成された溝部14の中に、板状のRFIDタグ6が挿入されるようになっている。溝部14の幅は、RFIDタグ6の厚さよりも僅かに大きく形成されている。RFIDタグ6は柔軟な合成樹脂製であるので、折り曲げた後にその両端部を図1(a)に示すように、本体1の中央部側に位置するフック部材11から溝部14に挿入していけば、図2(a)に示す状態となる。
【0019】
第1の実施例では、軸部2の本体側の部分に、軸部2より直径の大きい膨出部2Sが設けられている。膨出部2Sの上面の本体1の面1Aからの高さは、フック状部材11に設けられた溝部14の本体1の面1Aからの高さよりも高くなっている。また、係止部3の係止孔3Hの周囲にはリング部3Sが形成されている。リング部3Sの上面の本体1の面1Aからの高さは、フック状部材11に設けられた溝部14の本体1の面1Aからの高さよりも高くなっている。フック部材11に保持されたRFIDタグ6は、フック部材11に対してスライド可能である。よって、膨出部2Sとリング部3Sは、フック状部材11によって保持されたRFIDタグ6が、本体1の長手方向にスライドしても、本体1から抜けないようにするストッパ部材として機能する。
【0020】
なお、膨出部2Sとリング部3Sの形状は円柱状でなくても良い。また、フック状部材11によって保持されたRFIDタグ6は、軸部2によって軸部側からは抜け難いので、膨出部2Sは省略することも可能である。更に、リング部3Sの代わりに、係止孔3Hとフック状部材11との間の本体1の面1Aの上に、別のストッパ突起を突設することも可能である。
【0021】
RFIDタグ6をフック状部材11によって保持した図2(a)に示される短冊形耳標10は、軸先2Eを係止孔3Hに挿通させるべく、軸部2を内側にして中央部でU字状に折り曲げられる。この時、短冊形耳標10の内側は縮み、RFIDタグ6は本体1の両端部側に押し出されるが、RFIDタグ6はフック部材11にスライド可能に保持されているので、本体1の内側を移動することができる。また、台座部13によって本体1の面1Aとの間に空隙部を有する。軸先2Eは、図2(b)に二点鎖線で示した牛の耳殻51を挿通した後に、係止部3の係止孔3Hを通過して軸先収納部3C内に挿入される。軸先収納部3C内に挿入された軸先2Eは、軸先収納部3Cから抜けることはない。
【0022】
そして、短冊形耳標10の内側に保持されたRFIDタグ6は、フック部材11に対して微小移動が可能であり、耳標本体1の内側に空隙を挟んで保持されるので、耳標本体1に想定外の外力が加わっても、空隙部とスライドによってRFIDタグ6にはその外力がそのまま伝わることがないので破損する可能性が低い。
【0023】
図3(a)は、図2(a)に示した短冊形耳標10を、その中央部分でU字状に折り曲げて、牛50の耳殻51に取り付ける様子を示すものである。牛50の両側の耳殻51には、既に通常の耳標55が取り付けられている。通常の耳標55は一般に、耳殻51の中央部、あるいは中央部からやや下方に取り付けられている。一方、本発明の短冊形耳標10は、耳殻51の根元部52の上側部分53に取り付けられる。×印が短冊形耳標10の取付部54である。
【0024】
牛50の耳殻51の根元部52の上側部分53は、図3(b)に示すように牛50の前側に湾曲している。本発明の短冊形耳標10は、耳殻51の上側の端部から耳殻51を挟んで耳殻51に取り付けられる。このとき、軸部2を上側に、係止部3を下側にして短冊形耳標10は折り曲げられ、耳殻51の上側から軸先2Eが耳殻51に挿通されて係止部3に係止される。図3(c)が短冊形耳標10が牛50の耳殻51に装着された状態を示している。
【0025】
図4は、牛50の耳殻51の根元部52の上側部分53に取り付けられたRFIDタグ6を保持する短冊形耳標10と、リーダ60との通信の様子を示すものである。リーダ60には送信用のアンテナ61と受信用のアンテナ62があり、送信用のアンテナ61には電力伝送源63とデータを送信するための変調器64が接続されており、受信用のアンテナ62には復調器65が接続されている。変調器64と復調器65は共に制御回路66に接続されている。制御回路66は外部と通信可能になっており、電話回線等により外部の通信回路網、例えばインターネットに接続されている。使用される電波は、例えばUHFの電波である。
【0026】
リーダ60からは送信用のアンテナ61から電力供給のための電磁波が放射されるが、この電磁波はデータ伝送のための搬送波としても使用される。この搬送波には変調器64を介してデータが重畳される。送信用のアンテナ61から放射された電磁波はRFIDタグ10のアンテナ(図示せず)で受信され、変調された搬送波から、マイクロチップ(図示せず)内で符号化されたデータが復調される。RFIDタグ10からリーダ60へのデータ送信も仕組みは同様である。従って、RFIDタグ10のマイクロチップ内にあるメモリに記憶された個体識別データは、リーダ60側からの要請によって読み出され、変調器で符号化されてアンテナから放射される電磁波に重畳される。
【0027】
リーダ60側では、このRFIDタグ10のアンテナから放射される電磁波を受信用のアンテナ62で受信し、電磁波に含まれる個体識別データを復調器65で復調して制御回路66に送る。制御回路66は、この復調されたデータをリーダ60に接続されたデータ処理装置、或いはインターネットを介して所定の機関、例えば、インターネットデータセンターや家畜の登録機関等に送る。リーダ60と送信用のアンテナ61と受信用のアンテナ62は離して設置することができる。そして、短冊形耳標10が耳殻51の上側部分53に取り付けられていて、アンテナもほぼ水平方向を向いているので、送信用のアンテナ61と受信用のアンテナ62は、牛50の上方に設置しておけば、牛50がどの方向を向いていても、短冊形耳標10に対して上方から確実に読み取りを行うことができる。
【0028】
図5(a)は、本発明の第2の実施例の短冊形耳標20の構成を示すものであるが、第2の実施例の短冊形耳標20が第1の実施例の短冊形耳標10と異なる点は、保持部材の構成のみであるので、第2の実施例の短冊形耳標20は相違点が把握できる一部分のみを示し、相違点のみを説明する。第1の実施例の短冊形耳標10では、マイクロチップ4とアンテナ5とを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグ6を保持する保持手段として、フック状部材11が本体1の面1Aの上に設けられていた。フック状部材11は本体1の縁部の対向した位置に所定間隔で設けられており、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段としての台座部13の上に突設されていた。
【0029】
一方、第2の実施例の短冊型耳標20では、フック状部材11が横方向に連結され、壁状部材21となっている。本体1の中央部は折り曲げられるので、壁状部材21は本体1の中央部には設けられていない。壁状部材21は、第2の実施例では、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段としての台座部23の上に突設され、上端に庇部22を有する。そして、庇22と台座部23との間に形成された溝部24の中に、板状のRFIDタグ6が挿入されるようになっている。RFIDタグ6の壁状部材21への挿入は、第1の実施例と同様に行うことができ、壁状部材21に挿入されたRFIDタグ6は、壁状部材21に対してスライド可能である。
【0030】
図5(b)は、本発明の第3の実施例の短冊形耳標30の構成を示すものであるが、第3の実施例の短冊形耳標30が第1の実施例の短冊形耳標10と異なる点は、保持部材の構成のみであるので、第3の実施例の短冊形耳標30は相違点が把握できる一部分のみを示し、相違点のみを説明する。第1の実施例の短冊形耳標10では、マイクロチップ4とアンテナ5とを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグ6を保持する保持手段として、フック状部材11が本体1の面1Aの上に設けられていた。フック状部材11は本体1の縁部の対向した位置に所定間隔で設けられており、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段としての台座部13の上に突設されていた。
【0031】
一方、第3の実施例の短冊型耳標30では、本体1の幅方向に対向するフック状部材11の鈎部12が相手方側に延長され、結合されてブリッジ32となったブリッジ状部材31となっている。本体1の中央部は折り曲げられるので、ブリッジ状部材31は本体1の中央部には設けられていない。ブリッジ状部材31は、第3の実施例では、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段として、ブリッジ32に平行に本体1の上に突設された台座部33を備えている。そして、ブリッジ32と台座部33との間に形成されたスリット34の中に、板状のRFIDタグ6が挿入されるようになっている。RFIDタグ6のブリッジ状部材31への挿入は、第1の実施例と同様に行うことができ、ブリッジ状部材31に挿入されたRFIDタグ6は、ブリッジ状部材31に対してスライド可能である。
【0032】
以上説明した第1から第3の実施例の短冊形耳標10,20,30では、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段として、それぞれ台座部13,23,33が用いられてきた。一方、本体1の上に台座部13,23,33を形成しない変形例が第1から第3の実施例の短冊形耳標10,20,30において可能である。これを図6(a)から(c)を用いて説明する。
【0033】
図6(a)は、本発明の第1の実施例の短冊形耳標10の変形実施例の短冊形耳標10Aの構成を示すものである。第1の実施例の変形例の短冊形耳標10Aが第1の実施例の短冊形耳標10と異なる点は、保持部材と空隙部形成手段の構成のみであるので、第1の実施例の変形例の短冊形耳標10Aは相違点が把握できる一部分のみを示し、相違点のみを説明する。第1の実施例の短冊形耳標10では、マイクロチップ4とアンテナ5とを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグ6を保持する保持手段として、フック状部材11が本体1の面1Aの上に設けられていた。フック状部材11は本体1の縁部の対向した位置に所定間隔で設けられており、RFIDタグ6と本体1との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段としての台座部13の上に突設されていた。
【0034】
一方、第1の実施例の変形例の短冊形耳標10Aでは、台座部13がなく、フック状部材11が本体1の面1Aの上に直接設けられている。但し、鈎部12の本体1の面1Aからの高さは同じであり、溝部14の高さ方向の幅が大きくなっている。そして、空隙部形成手段として、本体1の面1Aの上に、複数個の孤立突起であるドーム型突起15が突設されている。ドーム型突起15の個数は特に限定されるものではない。また、ドーム状でなく、円柱状や角柱状であっても良い。第1の実施例の変形例の短冊形耳標10Aでは、溝部14の高さ方向の幅が大きいので、フック状部材11にRFIDタグ6を挿入し易い。
【0035】
図6(b)は、本発明の第2の実施例の短冊形耳標20の変形実施例の短冊形耳標20Aの構成を示すものである。第2の実施例の変形例の短冊形耳標20Aが第2の実施例の短冊形耳標20と異なる点は、保持部材と空隙部形成手段の構成のみであるので、第2の実施例の変形例の短冊形耳標20Aは相違点が把握できる一部分のみを示し、相違点のみを説明する。第2の実施例の短冊形耳標20では、第1の実施例の短冊型耳標10におけるフック状部材11が横方向に連結された壁状部材21が台座部23の上に突設され、上端に庇部22が設けられていた。
【0036】
一方、第2の実施例の変形例の短冊形耳標20Aでは、台座部23がなく、壁状部材21が本体1の面1Aの上に直接設けられている。但し、庇部22の本体1の面1Aからの高さは同じであり、溝部24の高さ方向の幅が大きくなっている。そして、本体1の面1Aの上に、空隙部形成手段として、複数の突条25が突設されている。突条25は本体1の短手方向に、本体1の両端部を結ぶように設けられている。第2の実施例の変形例の短冊形耳標20Aにおける突条25の断面は半円であるが、断面は三角形状でも、四角形状でも良い。また、突条25は直線状でなくても良く、波状、ジグザグ状、メアンダ状などとすることができる。第2の実施例の変形例の短冊形耳標20Aでは、溝部24の高さ方向の幅が大きいので、壁状部材21にRFIDタグ6を挿入し易い。
【0037】
図6(c)は、本発明の第3の実施例の短冊形耳標30の変形実施例の短冊形耳標30Aの構成を示すものである。第3の実施例の変形例の短冊形耳標30Aが第3の実施例の短冊形耳標30と異なる点は、保持部材と空隙部形成手段の構成のみであるので、第3の実施例の変形例の短冊形耳標30Aは相違点が把握できる一部分のみを示し、相違点のみを説明する。第3の実施例の短冊形耳標30では、第1の実施例の短冊型耳標10における本体1の幅方向に対向するフック状部材11の鈎部12が相手方側に延長され、結合されてブリッジ32となったブリッジ状部材31となっていた。そして、ブリッジ状部材31は、第3の実施例では、ブリッジ32に平行に本体1の上に突設された台座部33を備えていた。
【0038】
一方、第3の実施例の変形例の短冊形耳標30Aでは、台座部33がなく、ブリッジ状部材31が本体1の面1Aの上に直接設けられている。但し、ブリッジ32の本体1の面1Aからの高さは同じであり、スリット34の高さ方向の幅が大きくなっている。そして、本体1の面1Aの上に、空隙部形成手段として、複数の突条35が突設されている。突条35は本体1の長手方向に、平行に設けられている。第3の実施例の変形例の短冊形耳標30Aにおける突条35の断面は半円であるが、断面は三角形状でも、四角形状でも良い。
【0039】
以上のように、第1から第3の変形実施例の短冊形耳標10A,20A,30Aにおいては、台座部13,23,33の代わりの空隙部形成手段として、それぞれドーム状突起15、突条25及び突条35を説明した。しかしながら、ドーム状突起15、突条25及び突条35は、台座部13,23,33の代わりの空隙部形成手段としてどの変形実施例に使用しても良いものである。即ち、図6(a)に示したドーム状突起15の代わりに、図6(b)に示した突条25を使用しても良く、また、図6(c)に示した突条35を使用しても良い。よって、ドーム状突起15、突条25及び突条35の組み合わせにより、9通りの変形実施例が可能である。
【0040】
また、図6(a)から図6(c)で説明した第1から第3の変形実施例の短冊形耳標10A,20A,30Aにおいては、台座部13,23,33の代わりの空隙部形成手段として、それぞれドーム状突起15、突条25及び突条35を説明したが、ドーム状突起15、突条25及び突条35の代わりに本体1の面1Aに溝部を設けても良い。溝部は、本体1の長手方向、短手方向の何れに設けても良く、交差させて長手方向と短手方向の両方向に設けることもできる。なお、本体1の面1Aに溝部を設ける場合は、鉤部11、庇部22、及びブリッジ32の本体1の面1Aからの高さを、台座部13,23,33の高さ分だけ低くすることが可能である。
【0041】
図7は、図1(a)に示した本発明の第1の実施例の短冊形耳標10の別の変形実施例の短冊形耳標10Bの構成を示すものである。第1の実施例の短冊形耳標10では、マイクロチップ4とアンテナ5とを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグ6が、フック状部材11のみと係合していた。一方、別の変形実施例の短冊形耳標10Bでは、延長部分6Eを備えたRFIDタグ6Aが使用されている。延長部分6Eは軸部2側にあり、延長部分6Eに貫通孔6Hが設けられている。貫通孔6Hは、RFIDタグ6Aをフック状部材11に保持させる前、或いは保持させた後に、軸部2に挿通される。
【0042】
この構成では、軸部2の膨出部2Sの高さが台座部13の本体1の面1Aからの高さと同じ高さになっており、係止部3側の本体1の面1A上に設けられていたリング部3Sが除去されている。これは、RFIDタグ6Aが貫通孔6Hによって軸部2に係止されているので、RFIDタグ6Aが本体1から外れることがなく、ストッパ部材に対応する膨出部2Sとリング部3Sが不要になるからである。また、RFIDタグ6Aが取り付けられた短冊形耳標10Bを中央部でU字状に折り曲げた場合も、RFIDタグ6Aはフック状部材11内をスライドできるので、破損する虞はない。
【0043】
図8は、図7に示した短冊形耳標10Bの変形実施例の短冊形耳標30B構成を示すものである。この変形実施例の短冊形耳標30Bも、延長部分6Eに貫通孔6Hが設けられたRFIDタグ6Aを保持するものであり、図7で説明した短冊形耳標10Bと同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。短冊形耳標30Bには、係止孔3H側にただ1つのブリッジ状部材31Aが設けられている。ブリッジ状部材31Aのブリッジ32Aの本体1の面1Aからの高さは、図6(c)に示したブリッジ32の本体1の面1Aからの高さと同じであり、本体1の面1Aの上には図6(c)に示した突条35が設けられている。ブリッジ状部材31Aの本体1の長手方向の長さは、図6(c)に示したブリッジ状部材31の長さよりも長く形成されており、両方の開口部の端面は斜めにカットされている。
【0044】
更に、本体1の両端部は角部を無くして円形状になっており、耳殻に傷をつけないようになっている。なお、本体1の両端部の角部を無くして湾曲させる構成や、角部を円形状にする構成は、全ての実施例の本体1に対して実施することができることは言うまでもない。また、本体1のブリッジ状部材31Aが設けられていない部分の両端部に、破線で示すように、RFIDタグ6Aの本体1からのはみ出しを防止するガード36を設けても良い。以上のように構成された短冊形耳標30BにRFIDタグ6Aを保持させる場合は、RFIDタグ6Aの貫通孔6Hを軸部2に挿通させた後に、反対側の端部をブリッジ状部材31Aのスリット34Aに挿通すれば良い。
【0045】
また、貫通孔6Hを備えたRFIDタグ6Aの、貫通孔6Hを軸部2に挿通させてRFIDタグ6Aを保持する構成の短冊形耳標30Bでは、ブリッジ状部材31Aを設けずにガード36のみを係止孔3H側の本体1に突設する構成でも良い。この場合のガード36は壁状に連続させても良い。即ち、短冊形耳標30Bの本体1の短手方向の断面をコ字状に形成するだけでも良い。
【0046】
以上、本発明のRFIDタグを内側に保持可能な短冊形耳標を牛の耳殻に取り付ける実施例を説明したが、本発明のRFIDタグを内側に保持可能な短冊形耳標は、牛に限らず耳殻が頭部から直立している動物の耳殻に対して取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 本体
1A 本体の一面
2 軸部
2E 軸先
2S 膨出部
3 係止部
3C 軸先収納部
3S リング部
4 マイクロチップ
5 アンテナ
6、6A RFIDタグ
10 第1の実施例の短冊形耳標
10A,10B 第1の実施例の変形例の短冊形耳標
11 フック状部材
12 鈎部
13,23,33 台座部
14、24 溝部
15 ドーム状突起
20 第2の実施例の短冊形耳標
20A 第2の実施例の変形例の短冊形耳標
21 壁状部材
22 庇部
25,35 突条
30 第3の実施例の短冊形耳標
30A、30B 第3の実施例の変形例の短冊形耳標
31,31A ブリッジ状部材
32,32A ブリッジ
34,34A スリット
51 耳殻
52 根元部
53 上側部分
60 リーダ
61 送信用のアンテナ
62 受信用のアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の耳殻の基部の上端部に、前記上端部を跨いだ状態で前記耳殻を貫通させて取り付けられる短冊形耳標であって、
合成樹脂で構成された短冊状の本体と、
前記短冊状の本体の一方の端部に突設された矢尻状の軸先を備えた軸部と、
前記短冊状の本体の他方の端部に設けられて、前記本体が中央部で折り曲げられた時に前記軸先を受け入れて抜けないようにする係止部と、
前記本体の前記軸部と同じ側の面に設けられ、マイクロチップとアンテナとを内蔵する合成樹脂製の板状のRFIDタグをスライド可能に保持する保持手段と、
前記本体の前記保持手段と同じ側の面に設けられ、前記RFIDタグと前記本体との間に空隙部を存在させる空隙部形成手段とを備えることを特徴とする短冊形耳標。
【請求項2】
前記保持手段が前記短冊状の本体の長手方向の側面側から反対側の側面側に掛け渡された複数のブリッジ状部材であることを特徴とする請求項1に記載の短冊形耳標。
【請求項3】
前記保持手段が前記短冊状の本体の長手方向の対向する部分に複数組突設されて、先端部が鉤状に内側に折れ曲がるフック状部材であることを特徴とする請求項1に記載の短冊形耳標。
【請求項4】
前記保持手段が前記短冊状の本体の長手方向の中央部を除く部分に対向して突設された壁状部であり、壁状部の上端部には前記短冊状の本体の内側に突出する庇部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の短冊形耳標。
【請求項5】
前記空隙部形成手段が、前記ブリッジ状部材、フック状部材、または壁状部と前記短冊状の本体の上面との間に設けられた台座部であることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の短冊形耳標。
【請求項6】
前記空隙部形成手段が、前記短冊状の本体の前記保持手段が形成された側の面上に突設された複数個の孤立突起であることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の短冊形耳標。
【請求項7】
前記空隙部形成手段が、前記短冊状の本体の前記保持手段が形成された側の面上に突設された複数の突条であることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の短冊形耳標。
【請求項8】
前記空隙部形成手段が、前記短冊状の本体の前記保持手段が形成された側の面上に、前記本体の長手方向、短手方向、或いは長手方向と短手方向の両方向に設けられた複数の溝であることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の短冊形耳標。
【請求項9】
前記短冊状の本体の前記保持手段が形成された側の面上に、前記保持手段によってスライド可能に保持されたRFIDタグが、前記本体から抜けないようにするストッパ部材が設けられていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の短冊形耳標。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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