説明

短絡接地工具

【課題】ロードブレークエルボ型のケーブル終端部に取り付けた状態で地上機器内部に収納できかつ確実に短絡接地することができる短絡接地工具を提供すること。
【解決手段】ケーブル終端部に接続する終端嵌合部材110と前記終端嵌合部材110に接続されたケーブル121と前記ケーブル121に接続され接地端を把持する接地金具130を備え前記終端勘合部材110は前記ケーブル終端部に嵌合する形状を有することを特徴とする短絡接地工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡接地工具、特に、ロードブレークエルボ型のケーブル終端部に嵌合して用いる短絡接地工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市における景観への配慮の観点から電力ケーブルの地中化が図られ、この地中化された電力ケーブルは、地上用変圧器や多回路開閉器等の機器(以下、地上機器と呼ぶ)に接続されている。図8に示すように、電力ケーブル810、820で接続された地上機器830を取替える場合、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、地上機器830と電力ケーブル810,820で接続された隣接する地上機器840,850において、電力ケーブル810,820を確実に短絡接地する必要がある。この際、地上機器が舗道上に設置されており、公衆の安全を図るため扉を閉め施錠する必要がある。
【0003】
ここで、地上機器840,850(特に、地上用変圧器)と接続される電力ケーブル810,820の終端部の形状としてはロードブレークエルボ型のケーブル終端部(以下、エルボ型終端部と呼ぶ)が用いられることがあり、他の型のケーブル終端部よりもコストが安いことが特徴である。
【0004】
図7にエルボ型終端部200の構造図を示す。図7に示すように、エルボ型終端部200は、内側に電流を流す導体部210、その外側に内部半導電層220、さらに外側に絶縁層230、最も外側に外部半導電層240を有する。背面には、エルボ型終端部200を地上機器側から引き抜くための操作棒を装着するための操作用金具250の孔を有する。エルボ型終端部200の嵌合孔の内周面にある突起部221は、エルボ型終端部200が地上機器の接続部に嵌合されているとき、この突起部221と対応する地上機器の接続部の溝と嵌合することにより、エルボ型終端部200と地上機器の接続部とを確実に固定するためのものである。
【0005】
このエルボ型終端部を接地する短絡接地工具として、「短絡接地金具」(特許文献1)がある。この発明は、高圧電線側に接続する高圧電線クリップと、その高圧電線クリップを接続するコードと、コードに接続された接地クリップとからなり、高圧電線クリップの電線路把持面が連続した滑らかな凹凸状に形成され、高圧電線クリップの端部にフックを設けたことにより電線路を確実に把持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−61958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この「短絡接地金具」の高圧電線クリップでエルボ型終端部200の導体部210を把持しても嵩張るため、短絡接地金具を取り付けたエルボ型終端部200を地上機器内部に設置されている変圧器や開閉器、ケーブル等の隙間に収納出来ないおそれがあった。また、たとえ収納できたとしても地上機器内部の隙間に押し込む必要があり、高圧電線クリップがエルボ型終端部200の導体部210より脱落するおそれがあった。
【0008】
したがって、本発明は、エルボ型終端部に取り付けた状態で地上機器内部に収納でき、かつ、確実に短絡接地することができる短絡接地工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る短絡接地工具は、ロードブレイクエルボ型のケーブル終端部に嵌合させる終端嵌合部材と、前記終端嵌合部材に接続されたケーブルと、前記ケーブルに接続され接地端を把持する接地金具とを備えたことを特徴とする。
【0010】
これによれば、終端嵌合部材をケーブル終端部に嵌合させることにより、終端嵌合部材とケーブル終端部との接続部分がコンパクトとなり、かつ、接続が脱落しにくくなる。
【0011】
請求項2の発明に係る短絡接地工具は、請求項1に記載の短絡接地工具において、前記終端嵌合部材を前記ケーブル終端部に嵌合させた場合、前記終端嵌合部材の嵌合部の先端が前記ケーブル終端部の嵌合孔の内周面にある突起部に達しないことを特徴とする。
【0012】
これによれば、終端嵌合部材の嵌合部の先端がケーブル終端部の嵌合孔の内周面にある突起部に達しないことより、終端嵌合部材の着脱が容易となる。
【0013】
請求項3の発明に係る短絡接地工具は、請求項1又は請求項2に記載の短絡接地工具において、前記終端嵌合部材を前記ケーブル終端部に固定する鉤形の固定金具が、蝶番により前記終端嵌合部材に結合されたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、終端嵌合部材をケーブル終端部に確実に固定することができる。
【0015】
請求項4の発明に係る短絡接地工具は、請求項3に記載の短絡接地工具において、外側に孔の空いた凸部を有する前記固定金具と、前記凸部の孔および前記ケーブル終端部の操作用金具の孔に挿通し前記固定金具を前記ケーブル終端部に固定する固定ピンとを有することを特徴とする。
【0016】
これによれば、鉤形の固定金具とケーブル終端部とをより確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、終端嵌合部材をケーブル終端部に嵌合させることにより、終端嵌合部材とケーブル終端部との接続部分がコンパクトとなり、かつ、接続が脱落しにくくなる。そのため、エルボ型終端部に取り付けた状態で短絡接地工具を地上機器内部に収納をでき、かつ、確実に短絡接地することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る短絡接地工具の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る終端嵌合部材とエルボ型終端部の嵌合断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る終端嵌合部材の(a)平面図と(b)側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る終端嵌合部材とエルボ型終端部が嵌合した場合の(a)平面図と(b)背面図である。
【図5】本発明の実施例に係る短絡接地工具の全体図である。
【図6】本発明の実施例に係る終端嵌合部材の(a)平面図と(b)側面図である。
【図7】エルボ型終端部の構造図である。
【図8】短絡接地工具を使用する地上機器の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る短絡接地工具の全体図である。図1に示すように、エルボ型終端部に嵌合させる3個の終端嵌合部材110が、ケーブル120で接続されている。これらの終端嵌合部材110の1個からケーブル121が伸び、接地端を把持する接地金具130に接続されている。
【0021】
この短絡接地工具を使用する場合、まず、短絡接地工具の接地金具130で地上機器内部の接地端を把持する。次に、終端嵌合部材110を、地上機器から引き抜いたエルボ型終端部に嵌合させる。その後、短絡接地工具全体を地上機器内部に収納し、扉を閉め施錠する。
【0022】
ここで、短絡接地工具は限られた地上機器内部の隙間に収納するため、変形可能なケーブルを使用するのが望ましい。
【0023】
図2は本発明の実施形態に係る終端嵌合部材とエルボ型終端部の嵌合断面図である。図2に示すように、終端嵌合部材110はエルボ型終端部の機器側に対応する既存のプラグユニットと同様の構造をしており、エルボ型終端部200に嵌合させる。嵌合させることにより終端嵌合部材110がエルボ型終端部200に収納される形となるため、終端嵌合部材110とエルボ型終端部200との接続部分がコンパクトとなり、かつ、接続が脱落しにくくなる。その結果、エルボ型終端部200に短絡接地工具を取り付けた状態で地上機器内部に収納をでき、かつ、確実に短絡接地することができる。
【0024】
また、終端嵌合部材110をエルボ型終端部200に嵌合させた場合、終端嵌合部材110の嵌合部の先端がエルボ型終端部200の嵌合孔の内周面にある突起部221に達しない。このため、この突起部221と嵌合する終端嵌合部材110の嵌合部の溝が存在しえず、終端嵌合部材110の着脱が容易となる。
【0025】
図3は本発明の実施形態に係る終端嵌合部材の(a)平面図と(b)側面図、図4は本発明の実施形態に係る終端嵌合部材とエルボ型終端部が嵌合した場合の(a)平面図と(b)背面図である。
【0026】
図3に示すように、鉤形の固定金具140が、蝶番150により終端嵌合部材110に結合されている。この固定金具140は二股に分かれており、二股のそれぞれの外側には固定金具の凸部141の孔があり、その孔に挿通される固定ピン160を有している。エルボ型終端部200を終端嵌合部材110に嵌合させる場合、図4に示すように、まず固定金具140を持ち上げて終端嵌合部材110をエルボ型終端部200に嵌合させた後、固定金具140をエルボ型終端部200に被せる。これにより、固定金具140がエルボ型終端部200の背面を支持するため、エルボ型終端部200が引っ張られても終端嵌合部材110から脱落するのを防止できる。次に、固定ピン160をエルボ型終端部200の操作用金具250の孔と固定金具の凸部141の孔に挿通する。これにより、固定金具140がエルボ型終端部200に固定され、エルボ型終端部200と終端嵌合部材110との接続がより確実となる。
【0027】
なお、固定金具140は二股に分かれる必要はなく、固定ピン160をエルボ型終端部の操作用金具250の孔と固定金具の凸部141の孔に挿通できればよい。
【0028】
このように、終端嵌合部材110をエルボ型終端部200に嵌合させることにより、終端嵌合部材110とエルボ型終端部200との接続部分がコンパクトとなり、かつ、接続が脱落しにくくなる。終端嵌合部材110の嵌合部の先端がエルボ型終端部200の嵌合孔の内周面にある突起部221に達しないため、終端嵌合部材110の着脱が容易となる。固定金具140と固定ピン160により、エルボ型終端部200と終端嵌合部材110との接続がより確実となる。
【0029】
その結果、エルボ型終端部200に短絡接地工具を取り付けた状態で地上機器内部に収納をでき、かつ、確実に短絡接地することができる。
【実施例】
【0030】
本発明に係る短絡接地工具を試作し、エルボ型終端部に短絡接地工具を取り付けた状態で、地上機器内部に収納でき、かつ確実に短絡接地できるか検証した。
【0031】
図5は本発明の実施例に係る短絡接地工具の全体図である。図5に示すように、3本のケーブル171を分岐端子170で1本の接地側ケーブル172にまとめている。
【0032】
図6は本発明の実施例に係る終端嵌合部材の(a)平面図と(b)側面図である。図6に示すように、第1の固定金具142が終端嵌合部材110に固定され、第1の固定金具142と第2の固定金具143が蝶番150により結合されている。これにより、エルボ型終端部に被せるために回動させる固定金具の可動部分が小さくなるため、終端嵌合部材110の着脱がより容易となる。
【0033】
この試作した短絡接地工具を、実際に地上機器のエルボ型終端部に取り付けて検証した結果、地上機器内部に収納し、扉開閉、施錠ができることを確認した。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0035】
100 短絡接地工具
110 終端嵌合部材
120、121 ケーブル
130 接地金具
140 固定金具
141 固定金具の凸部
142 第1の固定金具
143 第2の固定金具
150 蝶番
160 固定ピン
170 分岐端子
171、172 ケーブル
200 エルボ型終端部
210 導体部
220 内部半導電層
230 絶縁層
240 外部半導電層
221 突起部
250 操作用金具
810、820 電力ケーブル
830、840、850 地上機器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードブレイクエルボ型のケーブル終端部に嵌合させる終端嵌合部材と
前記終端嵌合部材に接続されたケーブルと
前記ケーブルに接続され接地端を把持する接地金具と、
を備えたことを特徴とする短絡接地工具。
【請求項2】
前記終端嵌合部材を前記ケーブル終端部に嵌合させた場合前記終端嵌合部材の嵌合部の先端が前記ケーブル終端部の嵌合孔の内周面にある突起部に達しないことを特徴とする請求項1に記載の短絡接地工具。
【請求項3】
前記終端嵌合部材を前記ケーブル終端部に固定する鉤形の固定金具が蝶番により前記終端嵌合部材に結合されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の短絡接地工具。
【請求項4】
外側に孔の空いた凸部を有する前記固定金具と
前記凸部の孔および前記ケーブル終端部の操作用金具の孔に挿通し前記固定金具を前記ケーブル終端部に固定する固定ピンと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の短絡接地工具。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46422(P2013−46422A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180050(P2011−180050)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】