説明

石炭ガス化ガス供給プラント

【課題】製鉄所から副次的に発生する副生ガスを主要燃料とする汽力発電設備、及び増熱高炉ガスを主要燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備に補完用燃料として石炭ガス化ガスを供給する、使い勝手がよく実用的な石炭ガス化ガス供給プラントを提供する。
【解決手段】石炭ガス化炉12で生成した石炭ガス化ガスをガス精製装置14で精製した後、これを膨張タービン16に導き、膨張タービン16に連結する発電機18で発電し、これを本プラントの動力源として利用する。石炭ガス化ガスは、膨張タービン16を駆動することで断熱膨張し、圧力及び温度は高炉ガスとほぼ同じまで低下するのでこれをそのまま増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5及び/又は汽力発電設備3に補完用燃料として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所から副次的に発生する副生ガスを主要燃料とする汽力発電設備、及び前記副生ガスを所定の発熱量に増熱したガスである増熱高炉ガスを主要燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備に補完用燃料として石炭ガス化ガスを供給する石炭ガス化ガス供給プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所に設置され、副生ガスを主要燃料としている火力発電所は、製鉄所内の保安電源など重要な電源の供給源となっているため、副生ガスが減少した場合でも発電が継続できる重油混焼・専焼設備を持った複数機の汽力発電設備と、高炉ガスをコークス炉ガス、ミックスガスで増熱した増熱高炉ガスを燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備で構成されていることが多くなっている。ミックスガスは、高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガスのうち2種又は3種が混合されたガスである。このような火力発電所では、副生ガスのガス量及び発熱量の変動、低下に伴い以下のような問題が生じる。
【0003】
ガスタービンコンバインド発電設備は、製鉄所から供給される副生ガスを先取りして高出力・高効率を保つように運転しているが、重油などを混焼できないため高炉休風など高炉ガス量、増熱用のコークス炉ガス、ミックスガス量が減少する場合にはユニット出力低下やユニット停止となっている。また高炉ガスの発熱量の低下、又は増熱用高発熱量ガスであるコークス炉ガス、ミックスガスの発熱量が低下すると所定の発熱量に増熱した増熱高炉ガス量が減少するため発電出力が低下する。
【0004】
一方、汽力発電設備は、製鉄所から供給される副生ガス量に応じた発電を行う、いわゆるガス成り運転のため、副生ガス受入量の変動に伴い安定運転、高効率運転を行うことができない。また高炉休風などで副生ガスが減少して製鉄所保安電力が確保できないとき、又は最低出力が維持できないときは高価な重油を助燃している。重油の助燃は硫黄酸化物が発生するので環境上好ましくない。
【0005】
上記問題は、副生ガスを主要燃料としているガスタービンコンバインド発電設備又は汽力発電設備のいずれか一方の発電設備を有する火力発電所でも同じであり、本件出願人は、このような問題を解決する方法として、LNG又はガスハイドレートを副生ガスの補完用燃料として使用する発明を完成させ既に特許出願を行っている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
また、副生ガスを燃料とする複合発電システムにおいて、副生ガスの変動が大きく効率よく運転を行うことができないとし、ガス化炉で石炭等をガス化させ、このガス化ガスからメタノールを合成し、このメタノールを副生ガスの補完用燃料とする複合発電システムもある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−107401号公報
【特許文献2】特開2009−216334号公報
【特許文献3】特開2002−38971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載の技術は、ガス化ガスを一度メタノールとすることで、副生ガスの変動に対応しようとするものであるが、ガス化設備以外にメタノールを製造、貯蔵、供給するための設備が必要となる。さらにメタノールを燃焼させるためにはガスタービンの改造が必要であり、既設のガスタービン発電設備を備える火力発電所に適用することはコスト的にも、技術的にも容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、製鉄所から副次的に発生する副生ガスを主要燃料とする汽力発電設備、及び増熱高炉ガスを主要燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備に補完用燃料として石炭ガス化ガスを供給する、使い勝手がよく実用的な石炭ガス化ガス供給プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、製鉄所から副次的に発生する副生ガスを主要燃料とする汽力発電設備、及び前記副生ガスを所定の発熱量に増熱したガスである増熱高炉ガスを主要燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備に補完用燃料として石炭ガス化ガスを供給する石炭ガス化ガス供給プラントであって、石炭をガス化する石炭ガス化炉、石炭ガス化ガスを精製するガス精製装置、高温高圧のガスを作動流体とする膨張タービン及び膨張タービンに連結する発電機を含みなる石炭ガス化設備を備え、前記ガス精製装置で精製された高温高圧の石炭ガス化ガスで前記膨張タービンを駆動し、膨張タービンに連結する発電機で発電し、これを本プラントの動力源として利用し、前記膨張タービンを駆動した後の石炭ガス化ガスを前記増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び/又は汽力発電設備に補完用燃料として供給することを特徴とする石炭ガス化ガス供給プラントである。
【0011】
また本発明は、前記石炭ガス化ガス供給プラントにおいて、石炭ガス化に使用するガス化剤は空気であり、石炭ガス化ガスの発熱量が前記増熱高炉ガスの発熱量と略同一であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記石炭ガス化ガス供給プラントにおいて、さらに石炭ガス化ガスを燃料とする小型ボイラー、蒸気タービン及び蒸気タービンに連結する空気圧縮機を含み、前記小型ボイラーで発生させた蒸気を蒸気タービンに送り、空気圧縮機を駆動し、前記空気圧縮機で製造した高圧空気を石炭ガス化に使用することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記石炭ガス化ガス供給プラントにおいて、前記石炭ガス化設備は、前記増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び汽力発電設備に石炭ガス化ガスを全く供給しないときは保持運転を行い、生成する石炭ガス化ガスで前記膨張タービンを駆動し、膨張タービンを駆動した後の石炭ガス化ガスを前記小型ボイラーで燃焼させ、発生する蒸気で空気圧縮機を駆動することで自己完結的に運転することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る石炭ガス化ガス供給プラントは、石炭ガス化炉で生成されガス精製装置で精製された高温高圧の石炭ガス化ガスで膨張タービンを駆動し、膨張タービンに連結する発電機で発電し、これを本プラントの動力源として利用するので、外部から本プラントに供給する電力を削減又は停止することができる。また膨張タービンを駆動した後の石炭ガス化ガスは、断熱膨張により温度及び圧力を低下させているので、そのまま増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び/又は汽力発電設備に補完用燃料として供給することが可能であり効率的である。
【0015】
また本発明によれば、石炭ガス化ガスの発熱量が増熱高炉ガスの発熱量と略同一であるので、ほとんど熱量調節を行うことなく増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び/又は汽力発電設備の補完用燃料として使用することが可能であり、非常に使い勝手がよい。
【0016】
また本発明によれば、さらに石炭ガス化ガスを燃料とする小型ボイラー、蒸気タービン及び蒸気タービンに連結する空気圧縮機を備え、小型ボイラーで発生させた蒸気を蒸気タービンに送り、空気圧縮機を駆動し、製造した高圧空気を石炭ガス化に使用するので実用的である。
【0017】
また本発明によれば、本発明に係る石炭ガス化ガス供給プラントは、自己完結的に保持運転することが可能なので、増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び汽力発電設備に石炭ガス化ガスを全く供給しないときもプラントを停止させる必要がなく、起動時間、停止時間をなくすと共に起動停止に伴うプラントへの悪影響を回避することが可能であり、使い勝手のよい実用的なプラントと言える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の一形態としての石炭ガス化ガス供給プラント1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の一形態としての石炭ガス化ガス供給プラント1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【0020】
石炭ガス化ガス供給プラント1は、製鉄所から副次的に発生する副生ガスを主要燃料とする汽力発電設備3、及び前記副生ガスを所定の発熱量に増熱したガスである増熱高炉ガスを主要燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5に補完用燃料として石炭ガス化ガスを供給するプラントであり、石炭をガス化する石炭ガス化設備10、石炭ガス化の際に使用する高圧空気等を製造するためのユーティリティ設備60を主要設備として構成される。
【0021】
石炭ガス化設備10は、石炭をガス化する石炭ガス化炉12、石炭ガス化炉12で使用する微粉炭を製造する微粉炭機22、微粉炭を石炭ガス化炉12へ供給する微粉炭供給装置23、石炭ガス化炉12で生成された石炭ガス化ガス(生成ガス)を精製するガス精製装置14、ガス精製装置14で精製された高温高圧の石炭ガス化ガスを作動流体とする膨張タービン16、膨張タービン16に連結する発電機18及び石炭ガス化炉12の運転等を制御する石炭ガス化設備制御装置20を含む。
【0022】
石炭ガス化炉12は、空気吹き石炭ガス化炉であり、圧力容器(図示を省略)内にガス化炉(図示を省略)を収納し、ガス化炉内で微粉炭とガス化剤である空気とを反応させ、水素、一酸化炭素、メタンを含む可燃性ガスを生成する。石炭は微粉炭機22で微粉炭にされた後、微粉炭供給装置23を介してガス化炉に窒素ガスで気流搬送される。一方、ガス化剤である空気は、軸流式の空気圧縮機66から送られる。ガス化炉の温度は約1200〜1800℃、圧力は約2.0〜2.5MPaであり、高温高圧の生成ガスが得られる。この高温高圧の生成ガスは、ガス化炉の出口部に設けられたガス化炉冷却器24で冷却された後、ガス精製装置14に送られる。
【0023】
ガス精製装置14は、生成ガス中の不純物を除去するための装置であって、脱じん装置26及び脱硫装置28からなる。脱じん装置26は、ガス化炉冷却器24の下流側に設けられ、生成ガスに同伴して石炭ガス化炉12から排出されたチャーを分離、回収する。脱じん装置26としてはサイクロン又はフィルターが例示される。回収されたチャーは、返送ライン30を通じてガス化炉に返送され、未燃分はガス化炉でガス化される。脱じん後の生成ガスは、脱硫装置28に送られここで生成ガスに含まれる硫黄化合物が除去される。脱硫装置28は乾式の脱硫装置であり、脱硫剤としては酸化鉄系が例示される。
【0024】
ガス精製装置14で精製された生成ガスは、温度が約400〜500℃、圧力が約2.0〜2.5MPaであり、膨張タービン16に送られ膨張タービン16を駆動する。膨張タービン16は発電機18と連結しており、膨張タービン16が駆動されることにより発電される。ここで発電された電力は、微粉炭機22の動力など石炭ガス化設備10を含む本プラントの動力源として利用される。空気吹き石炭ガス化炉の場合、ガス化剤が空気であるため酸素を製造する必要はないが、酸素吹き石炭ガス化炉と同様、微粉炭をガス化炉に気流搬送する窒素ガス、パージ用の窒素ガスは必要であり、窒素ガス製造用の空気分離装置が設置されるのが一般的である。空気吹き石炭ガス化炉の場合、酸素吹き石炭ガス化炉に比較して空気分離装置を小型化できるので、使用する電力が少なく、発電機18で発電した電力を使用することで外部からの電力を大幅に削減又は停止することができる。なお、製鉄所には転炉で使用する酸素を製造するために多くの窒素ガスがある。製鉄所から気流搬送用の高圧窒素ガスを含め本プラントで使用する窒素ガスをもらい受けることができる場合には、緊急用の超小型空気分離装置を設置すればよく、確実に窒素ガスが供給される場合には空気分離装置を設置しなくてもよい。膨張タービン16を駆動した生成ガスは、ここで断熱膨張し温度を50〜80℃、圧力を高炉ガスよりも若干高い程度まで低下させる。
【0025】
膨張タービン16の出口部には、汽力発電設備3及び/又は増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5に生成ガスを供給するための生成ガス供給ライン40が接続し、膨張タービン16を駆動した生成ガスは、生成ガス供給ライン40を通じて汽力発電設備3及び/又は増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5に送られる。生成ガス供給ライン40には小型ボイラー62に生成ガスを供給する分岐ライン46が設けられている。さらに分岐ライン46には、生成ガス供給系統の圧力を制御するための圧力制御ライン48が接続する。分岐ライン46には圧力検出器50が取付けられており、分岐ライン46の圧力が所定の圧力を超えると、圧力調節器52が圧力制御ライン48に介装された系統圧力制御弁54を開き、生成ガスをフレアスタック56に導き、生成ガス供給系統の圧力を低下させる。また生成ガス供給ライン40には、膨張タービン16をバイパスする、バイパス弁42が介装された膨張タービンバイパスライン44が接続し、膨張タービン16にトラブルが発生した場合であっても膨張タービンバイパスライン44を介して生成ガスを供給することができる。
【0026】
ユーティリティ設備60は、主として石炭ガス化設備10で使用する高圧空気を製造するための設備であり、小型ボイラー62、小型ボイラー62で発生させた蒸気で駆動する蒸気タービン64、蒸気タービン64に連結する軸流式の空気圧縮機66、復水器68、発電電動機80を主要機器として構成される。ここでは、気流搬送用の窒素ガスを含め本プラントで使用する全ての窒素ガスが製鉄所から供給されるため、窒素ガス製造用の空気分離装置が設置されていない。窒素ガス製造用の空気分離装置を設置する場合は、空気圧縮機66で製造した高圧空気を空気分離装置に導き公知の方法で窒素ガスを製造すればよい。
【0027】
小型ボイラー62は、小型ボイラー燃料流量制御弁70及び遮断弁72が介装された分岐ライン46を通じて供給される生成ガスを燃料とし、発生させた蒸気を蒸気ライン74を通じて蒸気タービン64に送り蒸気タービン64を駆動する。小型ボイラー62は、基本的に蒸気タービン64に連結する空気圧縮機66が所定の空気を製造でき、蒸気タービン64が製鉄所用に工場送気を送る蒸気を発生させる能力を備えていればよい。
【0028】
蒸気タービン64は、蒸気止め弁76及び蒸気加減弁78が介装された蒸気ライン74から送られる蒸気で駆動し、連結する空気圧縮機66が高圧空気を製造する。製造された高圧空気は、ガス化剤として石炭ガス化炉12へ送られる。空気圧縮機66には、発電電動機80が連結し、石炭ガス化設備10を起動させる際に必要な高圧空気は、発電電動機80を駆動用電動機として使用して空気圧縮機66を駆動することで製造する。発電電動機80には空気圧縮機66が製造した高圧空気で駆動する膨張タービン81が連結されている。石炭ガス化炉12の負荷が低下して必要な空気量が減少しても軸流式の空気圧縮機66がサージング防止で製造する高圧空気を所定量以下に低下できないため、余剰となった高圧空気は余剰空気制御弁100により膨張タービン81に送られ膨張タービン81を駆動する。膨張タービン81は発電電動機80と連結しており、膨張タービン81が駆動されることにより発電される。発電された電力は、本プラントの動力源として利用される。膨張タービン81で圧力が低下した空気は押込通風機90から小型ボイラー62に燃焼用空気を送る燃焼用空気ライン91に送られ燃焼用空気として利用される。膨張タービン81で圧力の低下した空気を利用することで押込通風機90の運転台数削減や燃焼用空気流量制御ベーン92を絞ることで動力低減となる。なお、汽力発電用ボイラー130から蒸気タービン64にスタートアップ用の蒸気を導くことで、発電電動機80は発電機とすることもできる。
【0029】
蒸気タービン64から排気される蒸気は、復水器68で冷却され復水となった後、給水ポンプ82によりガス化炉冷却器24に冷却水として送られ、ここでガス化炉から排出される生成ガスと熱交換し加熱された後、小型ボイラー62に給水として送られる。このようにガス化炉冷却器24を給水加熱器として利用することで熱効率を高めることができる。また蒸気タービン抽気を製鉄所用の工場送気として供給することでも熱効率を高めることができる。
【0030】
増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5は、製鉄所から送出される高炉ガスに増熱用ガスであるコークス炉ガス及びミックスガスを混合した増熱高炉ガス又は増熱高炉ガスに石炭ガス化ガスを混合したガスを燃料とする発電設備であり、増熱高炉ガス等を燃料圧縮機102で昇圧し、空気圧縮機104から送られる高圧空気と混合、燃焼させ、燃焼器106から送出される燃焼ガスでガスタービン108を駆動する。ガスタービン108は、発電機110、燃料圧縮機102及び空気圧縮機104と連結しこれらを駆動する。ガスタービン108を駆動した燃焼ガスは排熱回収ボイラー(図示を省略)に送られ、排熱回収ボイラーで熱を回収し、蒸気タービン(図示を省略)を介して連結する発電機110を駆動し発電を行う。増熱高炉ガスは発熱量が約4200kJ/mNであり、高炉ガスを供給する高炉ガスライン120に介装された混合器122にミックスガス、混合器123にコークス炉ガスを混合することで得られる。また高炉ガスライン120には、混合器123の上流側に石炭ガス化ガスを混合するための混合器124が設けられ、混合器122の下流側には、高炉ガス等に含まれる煤じんなどの不純物を除去するための電気集じん器126が設けられている。
【0031】
汽力発電設備3は、製鉄所から供給される高炉ガスに増熱用ガスであるミックスガスを混合した増熱高炉ガス又は石炭ガス化設備10から送られる石炭ガス化ガス、保炎用燃料であるコークス炉ガス及び重油を燃料とする複数機の汽力発電用ボイラー130を備え、各燃料は高炉ガスライン132、コークス炉ガスライン134、重油ライン136を通じて汽力発電用ボイラー130に送られる。高炉ガスライン132には、上流側から下流側に向かって石炭ガス化ガスを混合するための混合器138、ミックスガスを混合するための混合器142が設けられている。汽力発電用ボイラー130で発生した蒸気は、蒸気タービン(図示を省略)に送られ、蒸気タービンに連結する発電機(図示を省略)で発電する。
【0032】
生成ガス供給ライン40は、膨張タービン16を駆動し温度50〜80℃、高炉ガスより若干高い圧力の生成ガスを汽力発電設備3及び/又は増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5に供給するためのラインであり、一端を膨張タービン16の出口部に他端は2つに分岐し、一方の生成ガス供給ライン40aは燃料圧縮機102に高炉ガスを送る高炉ガスライン120に介装された混合器124に接続し、他方の生成ガス供給ライン40bは、汽力発電用ボイラー130に高炉ガスを送る高炉ガスライン132に介装された混合器138に接続する。2つの生成ガス供給ライン40a、40bは、各々混合流量制御弁41a、41bを備える。
【0033】
次に石炭ガス化ガス供給プラント1の運転要領の一例を示す。
石炭ガス化ガス供給プラント1、汽力発電設備3及び増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5を含む全体の運転制御は、マスタ制御装置7が行う。マスタ制御装置7は、汽力発電設備3及び増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5をそれぞれ制御する制御装置(図示を省略)からの信号により、製鉄所から高炉ガス、コークス炉ガス又はミックスガスが十分に送られ生成ガスの供給が不要であると判断すると、石炭ガス化設備制御装置20には、待機指令を発する。増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5及び/又は汽力発電設備3は、従来と同様に、製鉄所からの高炉ガス、コークス炉ガス又はミックスガスを燃料として発電を行う。
【0034】
待機状態の石炭ガス化設備10は、石炭ガス化炉12の負荷を最低とし、膨張タービン16を介して発電機18を駆動、発電し、膨張タービン16を通過した後の生成ガスでユーティリティ設備60を運転し、これらにより自己完結的に運転を継続する。待機状態となったユーティリティ設備60での生成ガス使用量は軸流式の空気圧縮機66がサージング防止で必要量以上の高圧空気を製造し、蒸気タービン抽気を製鉄所用の工場送気として供給する量と石炭ガス化炉12の最低負荷時の生成ガス量とほぼ同量にバランスさせてある。このバランスも僅かな生成ガス発生量の変動、海水温度の変動、工場送気量の変動などにより分岐ライン46の生成ガス圧力が上昇又は降下するので圧力調節器52からの信号により石炭ガス化設備制御装置20が生成ガス圧力降下時には石炭ガス化炉12の生成ガスを増加させ、分岐ライン46の生成ガス圧力が上昇すれば系統圧力制御弁54が開く前に空気圧縮機66が製造する高圧空気を増加させ小型ボイラー62への生成ガス供給量を増やして可能な限り系統圧力制御弁54を作動させないようにする。石炭ガス化炉12で使用されない高圧空気は膨張タービン81に送られ膨張タービン81を駆動し、連結された発電電動機80により発電して電力として回収される。本プラントの動力源となる膨張タービン16を駆動して発電機18により得られる電力は、石炭ガス化炉12が最低負荷で運転されると減少するが膨張タービン81に送られた高圧空気により膨張タービン81を駆動し、連結された発電電動機80により得られる電力が増加するため待機状態となっても外部からの電力を抑える事ができる。また膨張タービン81の排気は小型ボイラー62の燃焼用空気として利用されるので押込通風機90の運転台数削減などで動力低減となる。本プラントを完全に停止すると、再スタートアップに時間がかかり、また石炭ガス化炉12は温度変化により熱的影響を受けるが、石炭ガス化炉12を最低負荷で継続運転することでこのような問題を回避することができる。
【0035】
マスタ制御装置7は、汽力発電設備3及び増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5をそれぞれ制御する制御装置(図示を省略)からの信号により、製鉄所から送られている高炉ガス、コークス炉ガス又はミックスガスが不足して生成ガスの供給が有効であると判断すると、石炭ガス化設備制御装置20に供給指令を発する。供給指令を受けた石炭ガス化設備制御装置20は石炭ガス化設備10の微粉炭を増加させると共にガス化剤である高圧空気を増加するため蒸気加減弁78を開く。蒸気加減弁78の開度が増加すると蒸気タービン64を駆動する蒸気圧力が低下するため小型ボイラー燃料流量制御弁70及び燃焼用空気流量制御ベーン92を余剰空気制御弁100と連携をとりながら開くように制御する。所定量の生成ガスを生成し生成ガス供給ライン40を通じて高炉ガスライン120、132に供給する。このときマスタ制御装置7は、発電効率の高い増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5に優先的に生成ガスを送るように、混合流量制御弁41a及び/又は41bを制御する。
【0036】
増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5に送る生成ガスは、ガス冷却器43で温度を高炉ガス程度まで下げ、混合器124で高炉ガスと混合された後、燃料圧縮機102に送られる。ガス冷却器43は直冷式の熱交換器であり燃料圧縮機102の戻りガスを冷却し燃料圧縮機102の入口、より詳細には電気集じん器126の下流側に戻すための直冷式ガス冷却器(図示を省略)の冷却水を共用する。直冷式ガス冷却器(図示を省略)を通過する燃料圧縮機102の戻りガス量は増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5の出力が高いと少なく出力が低下すると循環する戻りガスが増加するので生成ガスを供給することで高出力が保たれれば冷却水を共用しても直冷式ガス冷却器(図示を省略)の冷却水量で十分である。なお、ガス冷却器43は燃料圧縮機102の圧縮効率が低下するのを抑えるためのものであり増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5トリップ時などで一時的に冷却水が不足しても大きな問題とはならない。
【0037】
製鉄所から送られる高炉ガスの温度は、大気温度に比例して変動し、冬季で約15℃、夏季で約40℃弱である。一方、膨張タービン16を駆動した後の生成ガス温度は、50〜80℃であり、高炉ガス温度に比較して温度が若干高い。燃料圧縮機102の入口ガス温度が高くなると、ガス密度が低下し燃料圧縮機102の動力が増加する。このため本実施形態では、ガス冷却器43を設け、生成ガス温度を高炉ガス温度程度まで下げている。このようにガス冷却器43を設け、生成ガス温度を高炉ガス温度程度まで低下させ、高炉ガスライン120に供給することが好ましいが、生成ガス供給量が少ない場合、生成ガスを冷却することなく供給したとしても燃料圧縮機102の入口ガス温度の上昇も僅かであるため、必ずしもガス冷却器43は必要ない。一方、汽力発電用ボイラー130は、燃料ガスが加熱されるとボイラー効率が上昇するため、生成ガスは冷却しない方がよい。このため汽力発電設備3に生成ガスを送る生成ガス供給ライン40bには、ガス冷却器は設けられていない。
【0038】
同様に汽力発電設備3に送る生成ガスは、混合器138で高炉ガスと混合された後、汽力発電用ボイラー130に送られる。混合器138の下流の高炉ガスライン132には製鉄所から指定された量のミックスガスを混合する混合器142が設置されている。増熱高炉ガスの発熱量は増熱高炉ガスバーナーで許容される発熱量の範囲内に生成ガス及びミックスガスを混合する必要があるため高炉ガスライン132の増熱高炉ガス発熱量を検出する発熱量検出器135が設けられ、増熱高炉ガス発熱量が所定の発熱量を超えないように発熱量調節器139は混合流量制御弁41bを調節する。混合流量制御弁41bにはマスタ制御装置7からの調節信号と発熱量検出器135からの調節信号のうち低いほうを選択する低信号選択器144が設置されている。ミックスガス流量制御弁146は製鉄所から指定された量のミックスガスを消費する必要があるため流量・発熱量調節器148で発熱量調節器139よりも若干高い発熱量で調節している。なお、石炭ガス炉12は空気吹きのガス化炉であるので、生成ガスの発熱量は約4200kJ/mN、高炉ガスは約3400kJ/mN、ミックスガスは約11000kJ/mNであり増熱高炉ガスの上限発熱量は5000kJ/mNであるので最終的な発熱量調節はミックスガスで行うのが好ましい。
【0039】
石炭ガス化設備10から生成ガスを増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5及び/又は汽力発電設備3に送出している状態において、製鉄所から送られる高炉ガス、コークス炉ガス又はミックスガスが増加し生成ガスの供給が不要であると判断すると、マスタ制御装置7は、石炭ガス化設備制御装置20に負荷を下げるように指令を発する。また生成ガス供給系統の圧力検出器50が検出する圧力が上昇すれば石炭ガス化設備制御装置20は石炭ガス化設備10の負荷を下げ圧力が低下すれば負荷を上げる調節を行うが、所定の圧力を超えると圧力調節器52は系統圧力制御弁54を開くように制御し、生成ガスの一部をフレアスタック56に逃がし、生成ガス供給系統の圧力を所定の圧力に維持する。
【0040】
なお、上記実施形態では、増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5及び/又は汽力発電設備3の出力を高出力に維持できるように石炭ガス化設備10を運転し、生成ガスを供給する例を示したが、石炭ガス化設備10を一定の負荷で運転し、増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5及び/又は汽力発電設備3をこれに合わせて運転することもできる。さらには、増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備5、汽力発電設備3及び石炭ガス化設備10全体で運転が容易となるようにそれぞれの設備の負荷を変動させながら運転することもできる。以上のように石炭ガス化ガス供給プラント1は、製鉄所から副次的に発生する副生ガスのガス量、発熱量が変動しても柔軟に対応することが可能であり実用的なプラントと言える。
【0041】
また上記実施形態では、ガス化剤に空気を使用する空気吹き石炭ガス化炉の例を示したが、ガス化剤に酸素又は酸素と空気とを混合した酸素富化空気を使用することもできる。ガス化剤に酸素又は酸素富化空気を使用すると空気をガス化剤とする場合に比較して生成ガスの発熱量が高く、ガス化剤に酸素を使用すると発熱量は、10000〜11000kJ/mNであるので、増熱用ガスとして使用することができる。また本発明で使用可能な石炭ガス化設備は、少なくとも増熱高炉ガスと同等以上の発熱量を有する生成ガスを製造できればよく、石炭ガス化炉の種類も特に限定されない。またガス精製装置の下流側に一酸化炭素を二酸化炭素に変換するシフト反応器、さらにその下流側に二酸化炭素除去装置を備える石炭ガス化設備であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 石炭ガス化ガス供給プラント
3 汽力発電設備
5 増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備
10 石炭ガス化設備
12 石炭ガス化炉
14 ガス精製装置
16 膨張タービン
18 発電機
40 生成ガス供給ライン
40a、40b 生成ガス供給ライン
60 ユーティリティ設備
62 小型ボイラー
64 蒸気タービン
66 空気圧縮機
102 燃料圧縮機
104 空気圧縮機
106 燃焼器
108 ガスタービン
110 発電機
120 高炉ガスライン
124 混合器
130 汽力発電用ボイラー
132 高炉ガスライン
134 コークス炉ガスライン
136 重油ライン
138 混合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄所から副次的に発生する副生ガスを主要燃料とする汽力発電設備、及び前記副生ガスを所定の発熱量に増熱したガスである増熱高炉ガスを主要燃料とする増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備に補完用燃料として石炭ガス化ガスを供給する石炭ガス化ガス供給プラントであって、
石炭をガス化する石炭ガス化炉、石炭ガス化ガスを精製するガス精製装置、高温高圧のガスを作動流体とする膨張タービン及び膨張タービンに連結する発電機を含みなる石炭ガス化設備を備え、
前記ガス精製装置で精製された高温高圧の石炭ガス化ガスで前記膨張タービンを駆動し、膨張タービンに連結する発電機で発電し、これを本プラントの動力源として利用し、
前記膨張タービンを駆動した後の石炭ガス化ガスを前記増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び/又は汽力発電設備に補完用燃料として供給することを特徴とする石炭ガス化ガス供給プラント。
【請求項2】
石炭ガス化に使用するガス化剤は空気であり、石炭ガス化ガスの発熱量が前記増熱高炉ガスの発熱量と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化ガス供給プラント。
【請求項3】
さらに石炭ガス化ガスを燃料とする小型ボイラー、蒸気タービン及び蒸気タービンに連結する空気圧縮機を含み、
前記小型ボイラーで発生させた蒸気を蒸気タービンに送り、空気圧縮機を駆動し、前記空気圧縮機で製造した高圧空気を石炭ガス化に使用することを特徴とする請求項2に記載の石炭ガス化ガス供給プラント。
【請求項4】
前記石炭ガス化設備は、前記増熱高炉ガス焚ガスタービンコンバインド発電設備及び汽力発電設備に石炭ガス化ガスを全く供給しないときは保持運転を行い、生成する石炭ガス化ガスで前記膨張タービンを駆動し、膨張タービンを駆動した後の石炭ガス化ガスを前記小型ボイラーで燃焼させ、発生する蒸気で空気圧縮機を駆動することで自己完結的に運転することができることを特徴とする請求項3に記載の石炭ガス化ガス供給プラント。

【図1】
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【公開番号】特開2011−163294(P2011−163294A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29415(P2010−29415)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)