説明

石炭灰充填材の配合設計方法

【課題】 石炭灰、特にフライアッシュの種類を問わず、石炭灰の原粉を用いることができ、所望の流動性数値を有する石炭灰充填材スラリーに配合する各材料の配合量を簡易に決定することができる、石炭灰充填材の配合設計方法を提供する。
【解決手段】 フライアッシュと水とを所定の混合比で含む石炭灰スラリー1の流動性を示す流動性数値1と、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰セメント混合スラリー2が所定の流動性を示す場合の該石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W3との相関式を求め、該相関式に基づき、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰充填材スラリー中の配合量を簡易に決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰充填材の配合設計方法に関し、特に土木構造物の空洞充填、埋立ならびに滞水箇所の埋め戻し等に用いることができる石炭灰充填材の配合設計法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュは、石炭を燃焼原料として火力発電所で燃焼させる際に副産物として発生するもので、ボイラの煙道で集塵装置により大量に採取されている。
このフライアッシュの有効利用については、多くの分野で種々検討されており、例えば、土木学会平成15年度全国大会研究討論会 研−16 資料「石炭灰有効利用技術について―循環型社会を目指して―」(非特許文献1)には、多用途への参考事例が記載されている。
【0003】
特に代表的には、フライアッシュをセメントと混合したフライアッシュセメントがあり、またフライアッシュを多量に含むスラリーを用いた充填材、埋め戻し材、裏込め材等への有効利用も提案されている。
特に例えば土木や建築分野における充填材、埋め戻し財、裏込め材等の土木建築材料として、フライアッシュを有効利用した材料を用いる場合には、石炭灰スラリーのフロー値、固化後の材料の一軸圧縮強度やブリーディング率等が所定範囲であることが必要とされる。
これらの所望される性状の調整は、各材料の配合量の増減で行なわれ、通常、配合される単位水量により、流動性を調整している。
しかし、配合する単位水量が多いとスラリー調製後の流動性を保持できる時間が短くなり施工性に劣ったり、固化後にブリーディングが発生し易くなる等の問題が生じる。
【0004】
このフライアッシュを含むスラリーに関しては、物性改善などのために、多数の研究例が提示されており、特に各材料の配合量による調整のほかに、種々の添加剤の提案がなされている。
例えば、特開2003−267763号公報(特許文献1)には、灰スラリーの安定的な流動性改善に対し、水溶性のカチオン系高分子化合物を、灰スラリーに含有させることが提案されている。
【0005】
また、石炭灰は、原料となる石炭の産地によりその特性が異なり、この原料石炭の成分等によって石炭灰の物性も影響を受けることは明白である。
従って、フライアッシュを用いた充填材等の土木、建築材料などの配合を決定するには、事前にフライアッシュを取り寄せ、事前に配合試験を実施して、実際の現場での施工に備えなければならないのが現状であり、極めて煩雑である。
さらに、事前配合試験で使用したフライアッシュと、工事現場に搬入されたフライアッシュとの物性が同一であるケースは少なく、使用するフライアッシュの物性変動により、得られる石炭灰充填材スラリーの物性が変化し影響を受け、かかる場合、石炭灰充填材スラリーの所望する品質管理基準から外れ、使用できないこともある。
このように、土木・建築材料等として、石炭灰充填材スラリーを使用しようとする場合、特に多量に石炭灰を使用した場合には、フライアッシュの性状が得られる石炭灰スラリーの物性変動の主因子となり、大きな問題である。
【0006】
通常、充填材等の土木、建築材料等に使用するフライアッシュは、石炭をボイラで燃焼した後、集塵装置で収集されたフライアッシュを、分級処理した微粉を用いることが多い。
従って、石炭火力発電所で発生したフライアッシュの集塵装置での収集の後に、更に、フライアッシュ原粉から微粉部分を分級する分級工程が別途必要になり、フライアッシュ原粉の有効利用が図れないとともに、分級工程の付加によるコストアップにより経済的な利点を図ることができない。
【0007】
一方、特許3993914号公報(特許文献2)には、石炭灰微粉体を多量に用いた硬化体を構成する各材料の配合比率の決定方法が開示されており、具体的には、セメントと石炭灰等の微粉体と水とを練り混ぜて混練物を生成し、該混練物についてフロー試験を行って所定のフロー値を示す水粉体比を求め、該水粉体比から、硬化体の圧縮強度が最大となる水粉体比の推定値を演算により求め、水粉体比の該推定値から硬化体の圧縮強度の推定値を演算により求め、圧縮強度の該推定値と、硬化体の所要圧縮強度とからセメント添加率を演算により求めることで、従来のように土の締固め試験等の煩雑な試験をすること無く、生成した混練物についてフロー試験を行って所定のフロー値を示す水粉体比を求めれば、演算により硬化体の圧縮強度を最大にする水粉体比やセメント添加率を求めて配合比率を決定することができる、硬化体の材料の配合比率決定方法が開示されている。
【0008】
しかし、上記方法は、配合比率を決定する方法が煩雑であり、所定のフロー値を示すまでは配合試験を実施しなければならない。かかる場合に目安となるようなものはなく、配合試験の担当者の経験等に依存しているのが現状である。
また、施工現場に納入された石炭灰が事前配合試験と物性が異なった場合、施工現場での対応は、前記所定フロー値を示す試験、すなわち、室内配合試験から実施しなければならず、このような状況では実施工を考慮すると、煩雑で汎用的ではない。
【非特許文献1】土木学会平成15年度全国大会研究討論会 研−16 資料「石炭灰有効利用技術について―循環型社会を目指して―」(非特許文献1)
【特許文献1】特開2003−267763号公報
【特許文献2】特許第3993914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、石炭灰などの灰を土木建築材料等として有効利用するために、石炭灰、特にフライアッシュの種類を問わず、所望の流動性数値を有する石炭灰充填材スラリーに配合する各材料の配合量を簡易に決定することができる、石炭灰充填材の配合設計方法を提供することを目的とする。
特に石炭灰を分級処理することなく、石炭灰の原粉を用いることができ、従って石炭灰の多量の有効利用を図ることができる、石炭灰充填材の配合設計方法を提供することを目的とする。
また更に、施工現場に納入された石炭灰の物性変化による、石炭灰充填材の配合修正も現場にて簡便に実施可能となり、広範囲に渡る石炭灰の使用が可能となる、石炭灰充填材の配合設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フライアッシュと水を含む石炭灰スラリーの流動性数値と、フライアッシュと水とセメントを混入した石炭灰セメント混合スラリーの単位水量との相関式を用いることで、実際に使用する石炭灰であるフライアッシュの種類を問わず、現場で使用するフライアッシュと水を含む石炭灰スラリーの流動性数値を測定することで、所望する流動性を有する石炭灰充填材スラリーの配合材料の配合量の決定が簡易にできることを見出すことにより、本発明に達したものである。
【0011】
即ち、本発明の石炭灰充填材の配合設計方法は、フライアッシュと水とを所定の混合比で含む石炭灰スラリー1の流動性を示す流動性数値1と、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰セメント混合スラリー2が所定の流動性を示す場合の該石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W3との相関式を求め、該相関式に基づき、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰充填材スラリー中の配合量を決定することを特徴とする、石炭灰充填材の配合設計方法である。
【0012】
好適には、本発明の石炭灰充填材の配合設計方法は、フライアッシュと水とを所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー1を生成し、該スラリー1について流動性試験を行って流動性数値1を測定する、流動性数値1の測定工程と、
セメントとフライアッシュと水を含む石炭灰セメント混合スラリー2を生成し、該スラリー2に配合する水の単位水量W2を変化させて、得られた該各スラリー2について流動性試験を行って流動性数値2を測定し、変化させた各単位水量W2に対する流動性数値2に関する相関式1を導出する、相関式1の導出工程と、
該相関式1を用いて、所望する石炭灰充填材スラリーの所定の流動性数値3から単位水量W3を決定し、当該単位水量W3と前記流動性数値1とを対応させる、単位水量W3と流動性数値1との対応工程と、
前記フライアッシュの種類を変えて、前記流動性数値1の測定工程、前記流動性数値2の相関式1の導出工程、及び前記単位水量W3と流動性数値1との対応工程とを繰り返して行い、フライアッシュの種類によって変化する単位水量W3と流動性数値1との複数の対応関係から、単位水量W3に対する流動性数値1に関する相関式2を導出する、相関式2の導出工程とを有し、
該相関式2を用いて、所定の流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーの配合量を決定することを特徴とする、石炭灰充填材中の配合設計方法である。
【0013】
更に好適には、本発明の石炭灰充填材の配合設計方法は、前記相関式2を用いて石炭灰充填材スラリーの配合量を決定するにあたり、石炭灰充填材スラリーに用いるフライアッシュと水とを前記所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー3を生成し、得られた該石炭灰スラリー3について前記流動性試験を行って測定した流動性数値4を測定するとともに、該フライアッシュの密度を決定し、該流動性数値4を前記相関式2に導入することにより、該石炭灰充填材スラリーに配合する単位水量W4を決定し、配合するセメント量、決定した単位水量W4及び前記フライアッシュの密度から、該石炭灰充填材スラリーに配合するフライアッシュ量を決定することを特徴とする、請求項2記載の石炭灰充填材の配合設計方法である。
【0014】
より、好適には、本発明の石炭灰充填材の配合設計方法は、更に、前記石炭灰セメント混合スラリー2の前記流動性数値2の変化量に対する前記単位水量W2の変化量との相関式3を導出し、石炭灰充填材スラリーについて前記流動性試験を行って流動性数値5を測定し、前記流動性数値5と前記所定の流動性数値3との差異(Δx)を算出し、当該相関式3を用いて、前記算出された流動性数値の差異(Δx)から単位水量の増減量(ΔW4)を算出し、所定の流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーが得られるように、配合する前記単位水量W4を得られたΔW4量増減させて、石炭灰充填材の配合量を決定することを特徴とする、請求項3記載の石炭灰充填材の配合設計方法である。
【0015】
ここで、本発明において、「石炭灰」とは、石炭をボイラで燃焼した後、集塵装置で収集されたフライアッシュのことを意味する。この場合、集塵装置で収集された後に、分級処理されて粒度調整されたものかどうかは問わない。
「原粉」とは、ボイラから発生し、集塵装置で捕集された状態のフライアッシュを意味する。従って、フライアッシュを分級装置で分級処理したり、粒度調整等をおこなっていないものである。
「石炭灰スラリー」とは、フライアッシュ及び水を含み、セメントを含まないスラリーを意味する。
「石炭灰セメント混合スラリー」とは、フライアッシュ、セメント及び水を含むスラリーを意味する。
「石炭灰充填材スラリー」とは、実際に現場で石炭灰充填材として使用する、フライアッシュ、セメント及び水を含むスラリーを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の石炭灰充填材の配合設計方法によれば、フライアッシュの種類を問わず、所望の流動性数値を有する石炭灰充填材スラリーに配合する各材料の配合を簡易に決定することが可能となる。
即ち、石炭灰であるフライアッシュと水を含むスラリーの流動性数値を測定することのみで、工事現場での材料搬入時にも簡易に、所望する石炭灰充填材スラリーの材料配合量を判定することができる。
また、施工現場に納入された石炭灰の物性変化による、石炭灰充填材の配合修正も現場にて簡便に実施可能となり、広範囲に渡る石炭灰の使用が可能となる。
従って、所望する流動性数値を有する石炭灰充填材スラリーを得ることが簡単にできる。
特に本発明においては、従来行っていたフライアッシュの分級等の処理を施すことなく、フライアッシュの原粉を用いることができるため、石炭灰の多量の有効利用を促進することが可能となる。
また、フライアッシュと水との混練後の状態を確認することで、当該フライアッシュ原粉を石炭灰充填材配合材料として使用可能かどうかの判定も容易に行うことが可能となり、出荷前での確認が容易にできることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を以下の好適な実施形態を例示しながら説明する。
本発明の石炭灰充填材の配合設計方法は、フライアッシュと水とを所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー1の流動性を示す流動性数値1と、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰セメント混合スラリー2が所定の流動性を示す場合の該石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W3との相関式を求め、該相関式に基づき、石炭灰充填材スラリーに配合する各材料の配合量を決定するものである。
【0018】
具体的には、フライアッシュと水とを所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー1を生成し、該スラリー1について流動性試験を行って流動性数値1を測定する、流動性数値1の測定工程と、
セメントとフライアッシュと水を含む石炭灰セメント混合スラリー2を生成し、該スラリー2に配合する水の単位水量W2を変化させ、得られた該各スラリー2について流動性試験を行って流動性数値2を測定し、変化させた各単位水量W2に対する流動性数値2に関する相関式1を導出する、相関式1の導出工程と、
該相関式1を用いて、所望する石炭灰充填材スラリーの所定の流動性数値3から単位水量W3を決定し、当該単位水量W3と前記流動性数値1とを対応させる、単位水量W3と流動性数値1との対応工程と、
前記フライアッシュの種類を変えて、前記流動性数値1の測定工程、前記相関式1の導出工程、及び前記単位水量W3と流動性数値1との対応工程とを繰り返して行い、フライアッシュの種類によって変化する単位水量W3と流動性数値1との複数の対応関係から、単位水量W3に対する流動性数値1に関する相関式2を導出する、相関式2の導出工程とを有し、
該相関式2を用いて、所定の流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーに配合する各材料の配合量を決定する、石炭灰充填材の配合設計方法である。
【0019】
以下、詳細に説明する。
まず、相関式2を導出するまでの方法の一例を、図1にフローチャートとして示す。
フライアッシュと水とを所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー1を生成し、該スラリー1について流動性試験を行って流動性数値1を測定する、流動性数値1の測定工程においては、まず、フライアッシュと水とを所定の重量比で含む石炭灰スラリー1を調製する。
前記フライアッシュは、フライアッシュ原粉でも、フライアッシュ原粉を分級処理した後のフライアッシュ微分でも粗粉でも、いずれのものも適用することができるが、フライアッシュを多量に安価に再利用することができる点から、フライアッシュ原粉が好適に適用される。
また、石炭灰スラリー1は、フライアッシュと水のみのスラリーのみならず、フライアッシュと水と、充填材等に通常添加される添加剤を含むスラリーとすることも可能である。
石炭灰スラリー1中のフライアッシュと水とは一定の重量比で混合されるが、通常フライアッシュ:水は重量比で1:0.4〜0.6の配合割合範囲から選定された一定の重量比、例えば1:0.5で混合される。
【0020】
かかる配合割合でフライアッシュと水とを配合した場合に、その状態がバサバサの状態で、混練容器を傾けてもスラリーとして流れ出る状態でない場合、即ち石炭灰スラリーとはならない場合には、当該フライアッシュは、本発明における石炭灰としては使用することができない。
【0021】
次いで該石炭灰スラリー1について、流動性試験を行って流動性数値1を測定する。
かかる流動性試験としては、公知の流動性試験を適用することができ、フロー試験やロート試験等が例示される。
例えば、上記石炭灰スラリー1について、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、JHS−313((旧)日本道路公団試験方法)に準じてフロー試験を行い、フロー値1(mm)を測定する。
【0022】
次いで、前記相関式1の導出工程においては、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰セメント混合スラリー2を調製する。
但し、使用するフライアッシュは上記石炭灰スラリー1を調製する際に用いたフライアッシュと同一のものを用いる。
例えば、該石炭灰セメント混合スラリー2におけるそれぞれの配合量は、単位容量(1m)あたり混練する単位セメント量を一定にし、混練する単位水量W2を適当に設定し、残部をフライアッシュ量として決定する。
このようにして決定したセメント、水及びフライアッシュの配合量をそれぞれ計量し、十分に混練して石炭灰セメント混合スラリー2を調製する。この際、前記混練する単位水量W2を適当に変化させて配合した石炭灰セメント混合スラリー2を複数調製する。
当該各石炭灰セメント混合スラリー2は、フライアッシュと水とセメントからなるスラリーのみならず、フライアッシュと水とセメントと、充填材等に通常添加される添加剤を含むスラリーとすることも可能である。
【0023】
得られた各石炭灰セメント混合スラリー2について、それぞれ流動性試験を行って流動性数値2を測定する。
かかる流動性試験は、公知の流動性試験を適用することができ、例えば、フロー試験やロート試験等が例示されるが、上記石炭灰スラリー1の流動性数値1を測定する際に適用した流動性試験と同一の流動性試験を適用する。
従って、上記流動性数値1の測定工程において、石炭灰スラリー1について、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、JHS−313に準じてフロー試験を行ってフロー値1(mm)を測定した場合には、次の、各石炭灰セメント混合スラリー2に適用する流動性試験も、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、JHS−313に準じたフロー試験であり、これにより流動性数値2であるフロー値2を測定しなければならない。
また上記したように、石炭灰セメント混合スラリー中の単位水量W2を適当に変化させ調製した複数の石炭灰セメント混合スラリーについて、それぞれ上記流動性試験を適用してフロー値2を測定することで、同一のフライアッシュを用いた際の、変化する単位水量W2に対するフロー値2に関する相関式1が導出される。
【0024】
該導出された相関式1を用いて、最終的に所望される石炭灰充填材スラリーの所定の流動性数値3であるフロー値3を同じ値のフロー値2に対応させ、該フロー値3に相当する単位水量W3を、対応させたフロー値2に相当する単位水量W2として決定し、当該単位水量W3と上記流動性数値1とを対応させる。
なお、当該当該単位水量W3と上記流動性数値1とを対応させる際に用いた上記石炭灰スラリー1及び石炭灰セメント混合スラリー2に使用したフライアッシュの種類は、上記したように同一のものである。
これにより、ある種のフライアッシュに対する上記単位水量W3と上記流動性数値1との対応関係が得られる。
【0025】
前記フライアッシュの種類を変えて、前記流動性数値1の測定工程、前記流動性数値2の相関式1の導出工程、及び前記単位水量W3と流動性数値1との対応工程とを繰り返して行い、フライアッシュの種類によって変化する単位水量W3と流動性数値1との複数の対応関係を求め、得られた複数の対応関係から、単位水量W3と流動性数値1との相関式2を導出する。その際、各前記対応関係値を用いて、最小二乗法等の公知の方法により相関式2を導出する。
【0026】
このようにして、単位水量W3と、フライアッシュ及び水を含む石炭灰スラリー1の流動性数値1であるフロー値1との関係式である相関式2を予め求めて当該相関式2を利用することで、使用するフライアッシュの種類に関係なく、現場でフライアッシュと水を含む石炭灰スラリー3を調製して、当該現場で調製した石炭灰スラリー3の流動性試験を行うだけで、所望する流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーの配合量を決定することが可能となる。
【0027】
図2に、相関式2を用いた石炭灰充填材スラリーの配合量を決定する方法の一例をフローチャートに示す。
具体的には、まず、現場で使用する石炭灰充填材スラリーに用いるフライアッシュと水とを一定重量比で配合して、石炭灰スラリー3を調製する。
その際の、現場での石炭灰スラリー3のフライアッシュと水との上記一定の配合重量比は、使用する上記相関式2を導く際の上記流動性数値1の測定工程で適用したフライアッシュと水を含む石炭灰スラリー1のフライアッシュと水との配合重量比と同じ重量比で配合するようにする。次いで、該石炭灰スラリー3の流動性数値4を、使用する上記相関式2を導く際の上記流動性数値1の測定工程で適用したフライアッシュと水を含む石炭灰スラリー1の流動性数値1を測定する際に適用した流動性試験と同様の流動性試験を適用して、測定する。
【0028】
また、当該フライアッシュの密度を測定する。その測定方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、体積が明白な容器に当該石炭灰スラリー3を入れ、スラリー3の空気を振動などで排出した後、質量を測定し、その質量を体積で除して石炭灰スラリー3の密度(M1)を求め、以下のようにして使用するフライアッシュの密度MFを求めることができる。
MF=(配合した水の重量)/((実測した石炭灰スラリーの重量)/M1−(配合したフライアッシュの重量)
【0029】
このようにして測定した該流動性数値4を、前記相関式2の流動性値として導入することにより、該石炭灰充填材スラリーに配合する単位水量W4が決定される。かかる単位水量W4は、所望する流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーに現場で配合する単位水量W4である。
従って、石炭灰充填材スラリーに配合するセメント量を一定とした場合には、前記相関式2より決定された単位水量W4及び前記フライアッシュの密度から、該石炭灰充填材スラリーに配合するフライアッシュ量を決定することが可能となり、現場での石炭灰充填材スラリーの配合設計を簡易な方法で決定することができる。
【0030】
なお、上記のようにして、所望する流動性数値を有する石炭灰充填材スラリーに配合する単位水量を決定することができるが、相関式2は最小二乗法等により導出された式であるので、上記のように相関式2を用いて石炭灰充填材スラリーの配合量を決定しても、実際現場で使用するフライアッシュの種類によっては、得られる石炭灰充填材スラリーの流動性数値が所望する流動性数値よりも若干ずれる場合があり、この場合には、以下の方法により単位水量W4を補正することができる。図3に、配合する単位水量4を補正する方法の一例について、フローチャートで示す。
【0031】
まず、前記石炭灰セメント混合スラリー2の前記流動性数値2の変化量に対する前記単位水量W2の変化量の相関式3を導出する。
該相関式3は、前記相関式1を導出する際に得られた、石炭灰セメント混合スラリー2に関する流動性数値2の変化量に対する単位水量W2の変化量の関係式である。
上記したように、単位水量W2を変化させて調製した複数の石炭灰セメント混合スラリーについて、単位水量W2を変化させて調製した複数の石炭灰セメント混合スラリー2それぞれについて、前記流動性数値2の変化量(Δx)に対する前記単位水量W2(ΔW)の変化量との相関式3を導出する。
この際の前記流動性数値2の変化量(Δx)に対する前記単位水量W2の変化量(ΔW)は、各石炭灰セメント混合スラリー2に関する流動性数値2に対する単位水量W2の関係式の傾き係数に相当するが、各関係式の傾き係数は、フライアッシュの種類に関係なくほぼ一定であることにより、流動性数値2の変化量(Δx)に対する前記単位水量W2の変化量(ΔW)の相関式3が導出できる。
この際、各石炭灰セメント混合スラリー2の前記関係式の傾き係数の平均値を相関式3の傾きとすることが好ましい。
【0032】
実際には、現場で使用する石炭灰充填材スラリーについて、前記と同様の流動性試験を行って流動性数値5を測定し、当該流動性数値5と前記所望する流動性数値3とが若干ずれている場合には、その流動性数値5と流動性数値3との差異(Δx5−3)を算出し、前記算出された流動性数値の差異(Δx5−3)を当該相関式3に適用することで、単位水量W4の増減量(ΔW)が算出できる。
このように、所定の流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーが得られるように単位水量W4を補正することにより、所望する流動性数値3を有する石炭灰充填材の配合を精密に決定することが可能となる。
従って、配合するセメント量が一定の場合には、上記補正を反映して決定された単位水量W4±ΔWから、配合するフライアッシュ量(密度は測定)を決定し、石炭灰充填材の材料の精密な配合設計が可能となる。
【0033】
かかる単位水量の補正に関しては、実際に、上記相関式2から決定されたフライアッシュ、セメント及び水の配合割合で配合された石炭灰充填材スラリーを調製して混練し、目標フロー値3と異なるフロー値となった場合の補正方法として、または、最初から石炭灰スラリー3のフロー値が目標フロー値3でない場合の単位水量を求める場合の計算方法として利用することができる。
【0034】
このように、本発明の方法は、フライアッシュの種類を問わず利用することができる簡便な石炭灰充填材の簡易配合設計方法である。
【実施例】
【0035】
以下の表1に示す20種類のフライアッシュ原粉A〜Rについて、各フライアッシュ原粉と水(水道水)とを一定の重量比である1:0.5(100g:50g)となるようにフライアッシュ原粉と水とを計量して配合し、十分に混練して、各石炭灰スラリー1を調製した。
次いで得られた各石炭灰スラリー1について、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、JHS−313に準じてフロー試験を行い、それぞれフロー値1(mm)を測定し、その結果を表1に示す。
また、各石炭灰スラリー1の密度を測定した。これは、体積が明白な容器にスラリー1を入れ、スラリー1の空気を振動などで排出した後、質量を測定した。その質量を体積で除したものが石炭灰スラリー1の密度であり、M1とし、以下の式でフライアッシュの密度MFを求めた。
MF=100/((100+50)/M1−50)
例えば、スラリー密度が1.5g/cmの場合、
MF=100/(150/1.5−50)=100/(100−50)=100/50=2.0(t/cm3)
となった。
各フライアッシュA〜Rの密度を上記のようにして求め、その結果も、表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
次いで、各石炭灰セメント混合スラリーを調製する。配合する材料としては、上記表1のフライアッシュ原粉A〜Rを各種、高炉セメントB種(密度3.05kg/m)及び水道水を用いた。
まず、上記表1のフライアッシュ原粉Aを用いて、配合する前記高炉セメントを100kg/mとし、配合する単位水量W2(kg/m)を適当に設定して、フライアッシュ原粉Aと前記高炉セメントと水との石炭灰セメント混合スラリー2を調製した。
【0038】
即ち、例えば、上記高炉セメントB種を100kg/mの量、単位水量W2(水の密度は1.0g/cmとする)を500kgとすると、使用するフライアッシュ原粉Aの密度は表1よりMF2.12t/mであるから、石炭灰セメント混合スラリーに配合するフライアッシュ量を、以下のようにして求めた。
フライアッシュ量(kg/m3)
=(1000−100/3.05−500/1.0)×2.12
=990kg
【0039】
従って、高炉セメントB種100kgと水500kgとフライアッシュ原粉Aを990kg配合して混練し、石炭灰セメント混合スラリー2を得、該得られた石炭灰セメント混合スラリー2のフロー値2(mm)を、JHS=313に準じた上記フロー試験により測定した。
同一のフライアッシュ原粉Aに対して、配合する単位水量W2を変化させて、得られた複数の石炭灰セメント混合スラリー2について、それぞれフロー値2を求め、フライアッシュ原粉Aに関する石炭灰セメント混合スラリー2の変化する単位水量W2に対するフロー値2との関係を図4に示す。
図4に示すように、フライアッシュ原粉Aに関する、変化する単位水量W2に対するフロー値2に関する相関式1を導出した。
【0040】
また、フライアッシュ原粉として上記フライアッシュ原粉B〜Rをそれぞれ用い、各フライアッシュについて、上記と同様にして石炭灰セメント混合スラリー2を調製し、上記と同様に配合する単位水量W2を変化させて、それぞれの石炭灰セメント混合スラリー2について前記と同様のフロー試験を行って、フロー値2を測定し、各フライアッシュ原粉B〜Rに関する石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W2に対するフロー値2に関する相関式1をそれぞれ導出した。
導出された各相関式1に相当する直線を、それぞれ図4に示す。
【0041】
次いで、最終的に所望する石炭灰充填材に用いる石炭灰充填材スラリーの目標とする所定のフロー値3を決定し、相関式1を用いてフロー値3に相当する単位水量W3を決定した。
即ち、該導出された相関式1を用いて、最終的に所望される石炭灰充填材スラリーの所定の流動性数値3であるフロー値3を同じ値のフロー値2に対応させ、該フロー値3に相当する単位水量W3を、対応させたフロー値2に相当する単位水量W2として決定した。
具体的には、図4のフロー値(縦軸)のフロー値3に相当するフロー値を有する各相関式1における単位水量W3(横軸)として求めた。
【0042】
このようにして決定された、各石炭灰セメント混合スラリーの複数の単位水量W3値と、上記各フライアッシュ原粉と水との石炭灰スラリー1から測定された上記複数のフロー値1との関係を、横軸に石炭灰スラリーのフロー値1、縦軸に単位水量W3として、各フライアッシュの種類ごとにプロットし、単位水量W3とフロー値1との相関式2を求めた。
この際、相関式2は、各フライアッシュの種類ごとの単位水量W3とフロー値1との複数の対応値(プロットされた複数の対応値)から最小二乗法等の公知の方法により導出した(図5)。
なお、上記のように当該当該単位水量W3と上記流動性数値1とを対応させる際には、石炭灰スラリー1及び石炭灰セメント混合スラリー2に使用したフライアッシュの種類は、同一のものとした。
【0043】
例えば、目標とする石炭灰充填材スラリーの上記フロー値3が200mmの場合には、図4の相関式1よりフロー値が200mmの場合の石炭灰セメント混合スラリー2(フライアッシュ原粉A使用)の単位水量W2を求め、当該単位水量W2は単位水量W3に相当するものであり、フライアッシュ原粉Aと水との前記石炭灰スラリー1から測定された前記フロー値1(表1)と当該単位水量W3との関係を対応させて得られた対応値をプロットした(図5)。
次いで、同様に、フライアッシュ原粉B〜Rについても、図4の各相関式1より前記フロー値3が200mmの場合の単位水量W2をそれぞれ求め、フライアッシュ原粉Aと同様にして、各フライアッシュ原粉B〜Rと水との各石炭灰スラリー1から測定された前記各フロー値1(表1)と当該単位水量W3との関係を対応させて得られた対応値をプロットした。図5及び表2にその対応関係を示す。
但し、表2中の単位水量W3は、石炭灰充填材スラリーのフロー値が200mmとなる場合の単位水量W3を各相関式1(図4)より求めたものである。
【0044】
【表2】

【0045】
これらの各相関対応値を用いて最小二乗法により、相関式2を導出した。
図5より、単位水量W3とフロー値1との関係は、以下の相関式2として表された。
W3=―0.46・FL(フロー値1)+600・・・相関式2
【0046】
上記相関式2を用いて、現場で使用する石炭灰充填材用の石炭灰充填材スラリー(所望するフロー値3は200mm)の配合の実施例1〜3を以下に示す。
【0047】
実施例1
(使用材料)
・水道水
・フライアッシュ原粉X(密度:2.05t/m
・高炉セメントB種(密度3.05t/m
【0048】
上記フライアッシュ原粉Xと水道水を重量比で1:0.5(100g:50g)の配合割合で配合して石炭灰スラリー3を調製し、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じたフロー試験と密度測定を行い、フロー値380(mm)を得た。また、得られた当該石炭灰スラリー3の前記密度より、上記方法にてフライアッシュXの密度MF2.05t/cmを得た。
なお、フライアッシュXの密度は、上記したように、まず、当該石炭灰スラリー3の密度を測定した。これは、体積が明白な容器にスラリー3を入れ、スラリー3の空気を振動などで排出した後、質量を測定した。その質量を体積で除したものが石炭灰スラリー3の密度M1であり、以下の式でフライアッシュの密度MF2.05t/cmを求めた。
MF=100/((100+50)/M1−50)
【0049】
得られた当該フロー値380mmを、上記相関式2:W3=−0.46・FL+600のFLに適用することにより、W3=−0.46×380+600=425(kg/m)となり、単位水量W3は425kg/mであることを算出した。
次いで、単位容量(1m)あたりに配合する上記高炉セメントB種を100kg/m
とし、配合する水(密度は1.0g/cm)を上記算出した単位水量425kg/mとすると、配合するフライアッシュ量は以下のようにして決定される。
配合するフライアッシュX量
=(1000−100/3.05−425/1.0)×2.05
=938kg/m
【0050】
このようにして石炭灰充填材スラリーの配合量の比率を決定し、実際に高炉セメントB種100kg/m、水道水425g/m、フライアッシュ938kg/mの配合割合で、これらの材料を配合して、石炭灰充填材スラリーを得た。
得られた石炭灰充填材スラリーのフロー値を、上記と同様の、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じてフロー試験を行ってフロー値を求めたところ、200mmであり、所望するフロー値を有する石炭灰充填材スラリーが得られていることを確認した。
【0051】
実施例2
(使用材料)
・水道水
・フライアッシュ原粉Y(密度:1.98t/m
・高炉セメントB種(密度3.05t/m
【0052】
上記フライアッシュ原粉Yと水道水を重量比で1:0.5(100g:50g)の配合割合で配合して石炭灰スラリー3を調製し、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じたフロー試験と密度測定を行い、フロー値440(mm)を得た。また、得られた当該石炭灰スラリー3の前記密度より、上記実施例1と同様の方法にてフライアッシュYの密度1.98t/cmを得た。
得られた当該フロー値440mmを、上記相関式2:W3=−0.46・FL+600のFLに適用することにより、単位水量W3は398kg/mであることを算出した。
次いで、単位容量(1m)あたりに配合する上記高炉セメントB種を100kgとし、配合する水(密度は1.0g/cm)は、上記算出した単位水量398kg/mとすると、配合するフライアッシュ量は以下のようにして決定される。
配合するフライアッシュ量
=(1000−100/3.05−398/1.0)×1.98
=1126kg/m
【0053】
このようにして石炭灰充填材スラリーの配合比率決定し、実際に高炉セメントB種100kg/m、水道水398kg/m、フライアッシュ1126kg/mの配合割合で、これらの材料を配合して、石炭灰充填材スラリーを得た。
得られた石炭灰充填材スラリーのフロー値を、上記と同様の、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じてフロー試験を行ってフロー値を求めたところ、200mmであり、所望するフロー値を有する石炭灰充填材スラリーが得られていることを確認した。
【0054】
実施例3
(使用材料)
・水道水
・フライアッシュ原粉Z(密度:2.08t/m
・高炉セメントB種(密度3.05t/m
【0055】
上記フライアッシュ原粉Zと水道水を重量比で1:0.5の配合割合で配合して石炭灰スラリー3を調製し、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じたフロー試験と密度測定を行い、フロー値251(mm)を得た。また、得られた当該石炭灰スラリーの前記密度より、上記実施例1と同様の方法にてフライアッシュZの密度2.12t/cmを得た。
得られた当該フロー値251mmを、上記相関式2:W3=−0.46・FL+600のFLに適用することにより、単位水量W3は485kg/mであることを算出した。
【0056】
次いで、単位容量(1m)あたりに配合する上記高炉セメントB種を100kgとし、配合する水(密度は1.0g/cm)は、上記算出した単位水量485kg/mとすると、配合するフライアッシュ量は以下のようにして決定される。
配合するフライアッシュ量
=(1000−100/3.05−485/1.0)×2.08
=1003kg/m
【0057】
このようにして石炭灰充填材スラリーの配合量の比率を決定し、実際に高炉セメントB種100kg/m、水道水485kg/m、フライアッシュ1003kg/mの配合割合で、これらの材料を配合して、石炭灰充填材スラリーを得た。
得られた石炭灰充填材スラリーのフロー値を、上記と同様の、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じてフロー試験を行ってフロー値を求めたところ、140mmであり、所望するフロー値(200mm)と比較すると、その差異は
60mmであり、所望する石炭灰充填材スラリーのフロー値よりも、当該差異フロー値分低かった。
【0058】
このようにして、配合されたセメント、フライアッシュ及び水の石炭灰充填材スラリーを実際に混練して、フロー値を上記フロー試験により測定し、目標とするフロー値(200mm)よりその値が若干外れている場合には、目標のフロー値を得るために、単位水量を補正する。
【0059】
具体的には、前記図4に示された石炭灰スラリーの単位水量W2と該スラリー2のフロー値2との関係を、図6に、フロー値2に対する単位水量W2の関係として図示する。
図6より、各石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W2(kg/m)の変化量(ΔW)とフロー値2(x(mm))との関係は、調製した石炭灰セメント混合スラリーの種類に関係なく(フライアッシュの種類に関係なく)、一定の相関関係があることがわかる。
即ち、図6に示される各関係式より、石炭灰セメント混合スラリー2のフロー値2の変化量(Δx)に対する単位水量W2の関係の増減量は、各関係式の傾き係数に相当し、図6より各関係式の傾き係数の平均値を求めると、0.5となった。
従って、石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W2(kg/m)の変化量(ΔW)とフロー値2の変化量(Δx)との関係は、調製した石炭灰スラリーの種類にかかわらず、次の相関式3で示された。
ΔW=0.5Δx・・・相関式3
ΔW:増減させる単位水量(kg/m
Δx:増減させたいフロー値(mm)
【0060】
前記相関式3であるΔW=0.5Δxに、補正したい差異の変化量のフロー値分の値を導入することで、増減させる単位水量(ΔW4)を決定することが可能となり、これにより、更に正確に所望するフロー値(200mm)を有する石炭灰充填材を得ることが可能となる。
【0061】
そこで、上記したように、所望するフロー値(200mm)と実際の石炭灰充填材スラリーのフロー値の差異が60mmで、石炭灰充填材スラリーのフロー値を、当該差異フロー分である60mm増加させたい場合には、上記相関式3のΔxに当該差異値60mmを適用することで、増大させる単位水量ΔW30kg/mを算出する。
【0062】
次いで、単位容量(1m)あたりに配合する上記高炉セメントB種を100kgとし、配合する水は、上記補正で算出した単位水量を加えた515kg/mとすると、配合するフライアッシュ量は以下のようにして決定される。
配合するフライアッシュ量
=(1000−100/3.05−515/1.0)×2.08
=940kg/m
【0063】
このようにして石炭灰充填材スラリーの配合比率決定し、実際に高炉セメントB種100kg/m、水道水515kg/m、フライアッシュ940kg/mの配合割合で、これらの材料を配合して、石炭灰充填材スラリーを得た。
得られた石炭灰充填材スラリーのフロー値を、上記と同様の、Φ80×80mmの円筒フローコーンを用い、上記JHS−313に準じてフロー試験を行ってフロー値を求めたところ、200mmであり、所望するフロー値を有する石炭灰充填材スラリーが得られていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の石炭灰充填材の配合設計方法は、特に土木構造物の空洞充填、埋立ならびに滞水箇所の埋め戻し等に用いることができる石炭灰充填材スラリーの現場での簡易な配合設計方法として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】相関式2を導出するまでの方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】相関式2を用いた石炭灰充填材スラリーの配合量を決定する方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】石炭灰充填材スラリーに配合する単位水量4を補正する方法の一例を示すフローチャートで示す。
【図4】石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W2(kg/m)に対する該スラリー2のフロー値2の関係を示す相関式1を示す線図(フライアッシュの種類を変化させて調製した各石炭灰セメント混合スラリーの相関式1を表示)である。
【図5】フライアッシュと水の石炭灰スラリーのフロー値1に対する、所定のフロー値3に相当する石炭灰セメント混合スラリー2(フライアッシュの種類はフロー値1の測定時に使用したものと同一)の単位水量W3との相関式2を示す線図である。
【図6】図4に示された石炭灰セメント混合スラリーの単位水量W2と該スラリー2のフロー値2との関係を、該フロー値2に対する単位水量W2の関係として図示した線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュと水とを所定の混合比で含む石炭灰スラリー1の流動性を示す流動性数値1と、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰セメント混合スラリー2が所定の流動性を示す場合の該石炭灰セメント混合スラリー2の単位水量W3との相関式を求め、該相関式に基づき、セメントとフライアッシュと水とを含む石炭灰充填材スラリー中の配合量を決定することを特徴とする、石炭灰充填材の配合設計方法。
【請求項2】
フライアッシュと水とを所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー1を生成し、該スラリー1について流動性試験を行って流動性数値1を測定する、流動性数値1の測定工程と、
セメントとフライアッシュと水を含む石炭灰セメント混合スラリー2を生成し、該スラリー2に配合する水の単位水量W2を変化させて、得られた該各スラリー2について流動性試験を行って流動性数値2を測定し、変化させた各単位水量W2に対する流動性数値2に関する相関式1を導出する、相関式1の導出工程と、
該相関式1を用いて、所望する石炭灰充填材スラリーの所定の流動性数値3から単位水量W3を決定し、当該単位水量W3と前記流動性数値1とを対応させる、単位水量W3と流動性数値1との対応工程と、
前記フライアッシュの種類を変えて、前記流動性数値1の測定工程、前記流動性数値2の相関式1の導出工程、及び前記単位水量W3と流動性数値1との対応工程とを繰り返して行い、フライアッシュの種類によって変化する単位水量W3と流動性数値1との複数の対応関係から、単位水量W3に対する流動性数値1に関する相関式2を導出する、相関式2の導出工程とを有し、
該相関式2を用いて、所定の流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーの配合量を決定することを特徴とする、石炭灰充填材中の配合設計方法。
【請求項3】
前記相関式2を用いて石炭灰充填材スラリーの配合量を決定するにあたり、石炭灰充填材スラリーに用いるフライアッシュと水とを前記所定の重量混合比で含む石炭灰スラリー3を生成し、得られた該石炭灰スラリー3について前記流動性試験を行って測定した流動性数値4を測定するとともに、該フライアッシュの密度を決定し、該流動性数値4を前記相関式2に導入することにより、該石炭灰充填材スラリーに配合する単位水量W4を決定し、配合するセメント量、決定した単位水量W4及び前記フライアッシュの密度から、該石炭灰充填材スラリーに配合するフライアッシュ量を決定することを特徴とする、請求項2記載の石炭灰充填材の配合設計方法。
【請求項4】
更に、前記石炭灰セメント混合スラリー2の前記流動性数値2の変化量に対する前記単位水量W2の変化量との相関式3を導出し、石炭灰充填材スラリーについて前記流動性試験を行って流動性数値5を測定し、前記流動性数値5と前記所定の流動性数値3との差異(Δx)を算出し、当該相関式3を用いて、前記算出された流動性数値の差異(Δx)から単位水量の増減量(ΔW4)を算出し、所定の流動性数値3を有する石炭灰充填材スラリーが得られるように、配合する前記単位水量W4を得られたΔW4量増減させて、石炭灰充填材の配合量を決定することを特徴とする、請求項3記載の石炭灰充填材の配合設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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