説明

石目地用シーリング材組成物

【課題】石目地に適用した場合、石材に対する汚染性が低く、かつ十分な伸びを示すシーリング材組成物を提供すること。
【解決手段】(a)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有する数平均分子量2,000以上のポリマーと、
(b)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、
(c)数平均分子量2,000未満のビスアルコキシシリル化合物と
を含んでなる、石目地用シーリング材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーリング材組成物、詳しくは、石目地に適用した場合、石材に対する汚染が少ないシーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変成シリコーンポリマーなどの加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする建築用シーリング材においては、一般に、組成物の低粘度化による良好な作業性を確保し、および硬化物における柔軟性を付与する目的で、各種の可塑剤が配合されている。このため、このようなシーリング材を石目地に適用した場合、可塑剤が石材へ移行し、石目地に沿って濡れ色汚染を引き起こすという問題があった。一方、この濡れ色汚染を防ぐために可塑剤を抜いたシーリング材では、石材を汚染しないもののシーリング材に必要とされる伸びを示すことができなかった。
【0003】
また、可塑剤の移行によるシーリング材表面へのブリードやシーリング目地周辺の汚染を防止することを目的として、分子中に平均して1.2以上の加水分解性珪素基を有する分子量8,000以上50,000以下の高分子重合体(I)と、分子中に平均して0.5以上1.5未満の加水分解性珪素基を有する分子量300〜8,000未満の主鎖がポリエーテルである低分子化合物(II)を含有する硬化性組成物(特許文献1)、および(A)末端に反応性ケイ素基を少なくとも1個有するポリオキシアルキレン系重合体、および(B)末端に反応性ケイ素基を1分子あたり1個有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる硬化性組成物(特許文献2)が提案されている。しかしながら、これらの組成物では、石目地の濡れ色汚染を十分に低下させることができなかった。
【0004】
一方、変成シリコーン樹脂に、ポリサルファイドポリエーテル重合体、および特定のシランカップリング剤を添加することにより、耐紫外線劣化性、特に薄層部における耐候性が向上することが知られている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3には、可塑剤の移行によるシーリング目地周辺の汚染性については、何ら教示されていない。
【特許文献1】特開平5−59267号公報
【特許文献2】特開2004−244528号公報
【特許文献3】特開2002−265928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、石目地に適用した場合、石材に対する汚染性が低く、かつ十分な伸びを示すシーリング材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とするシーリング材組成物において、当該加水分解性シリル基含有ポリマーと反応する特定の反応性可塑剤および特定の改質剤を使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる:
〔1〕 (a)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有する数平均分子量2,000以上のポリマーと、
(b)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、
(c)数平均分子量2,000未満のビスアルコキシシリル化合物と
を含んでなる、石目地用シーリング材組成物。
〔2〕 ポリマー(a)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、上記〔1〕に記載の石目地用シーリング材組成物。
〔3〕 ポリマー(b)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、上記〔1〕または〔2〕に記載の石目地用シーリング材組成物。
〔4〕 化合物(c)は、ビス(アルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の石目地用シーリング材組成物。
〔5〕 JIS−A−5758による引張試験において、伸び率150%以上、および最大引張強度0.8N/mm以下である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の石目地用シーリング材組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシーリング材組成物は、石目地に適用した場合、石材に対する汚染性が低く、かつ十分な伸びを示すので、石目地用のシーリング材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の石目地用シーリング材組成物(以下、「本発明のシーリング材組成物」と称する)が適用される「石目地」とは、石材同士、あるいは、石材と他の部材の継ぎ目部分のことをいう。本発明における「石材」としては、例えば、大理石(ビアンコカララ、タソスホワイト、ジュライエローなど)、石灰岩(モカクリームなど)、御影石(ジンバブエブラック、山西黒、グレイミスト、G684、G261、G364、G365など)、砂岩(インド砂岩)などの従来既知の建築資材が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明における石材には、各種のタイル材も含まれる。
【0009】
本発明のシーリング材組成物は、主成分として、(a)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有する数平均分子量2,000以上のポリマーを含む。なかでも、主鎖がポリアルキレンエーテルであるものが好ましい。
前記ポリマー(a)の数平均分子量は、2,000以上、好ましくは3,000以上であり、より好ましくは8,000以上100,000以下、特に好ましくは1,0000以上60,000以下である。数平均分子量が2,000未満の場合、硬化物の伸びが低くなる。一方、数平均分子量の上限は、特に限定されないが、60,000を超える場合、高粘度のために作業性が悪化するため好ましくない。
また、前記ポリマー(a)の加水分解性シリル基の数は、分子中に平均して1.2以上であり、好ましくは1.2以上8以下、特に好ましくは1.5以上4以下である。
【0010】
前記ポリマー(a)としては、例えば、変成シリコーンポリマー、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマー、アルコキシシリル基を含有するポリイソブチレンポリマーが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用に供してよい。前記加水分解性シリル基含有ポリマーとして、変成シリコーンポリマーおよび/またはアクリル系ポリマーを使用すると、低モジュラス、高伸長の物性に調整でき、しかも耐候性に優れた、石目地用シーリング材に適したものが得られるため好ましい。
【0011】
前記変成シリコーンポリマーとは、ポリオキシアルキレンエーテルを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に加水分解性基(例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基など)を有するシリル基をもつ液状ポリマーを指称する。なかでも、ポリアルキレンエーテル(例えば、ポリオキシプロピレンエーテル)を主鎖とする、数平均分子量が8,000〜25,000のものが好ましい。
変成シリコーンポリマーの代表的市販品としては、例えば(株)カネカ製のMSポリマーシリーズ(「MSポリマー S−203」など)や旭硝子(株)製「エクセスター」(登録商標)シリーズ(ES−S2410、ES−W2521など)がある。
【0012】
また、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単位で構成され[要すれば、(メタ)アクリル酸エステル単位以外に、(メタ)アクリル酸エステルと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子中にアルコキシシリル基を含有するポリマーであり、例えば、
(i)特公平3−80829号公報に開示の、(a)アクリル酸アルキルエステル(アルキル炭素数は好ましくは2〜4)(例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等)と、(b)ビニルアルコキシシラン(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等)および(メタ)アクリロキシアルコキシシラン(例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)の群から選ばれる1種または2種以上の混合物とを、連鎖移動剤としてメルカプトアルコキシラン(c)(例えばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)の存在下で、ラジカル共重合[通常、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、α,α’−アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシドなど重合開始剤を用いて公知の塊状重合、溶液重合などの手法;あるいはレドックス触媒、例えば、遷移金属塩、アミン等と過酸化物系開始剤を組合せたレドックス重合法により]させることによって製造されるもの(通常、数平均分子量3,000〜100,000、1分子中の平均アルコキシシリル基数1.2〜3個);および
(ii)特公平4−69667号公報に開示の、ビニル系モノマー[例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、ペンチルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート;スチレンもしくはその誘導体(α−メチルスチレン、クロルメチルスチレンなど);ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジプロピルフマレートなどのフマル酸ジエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニレンなどのハロゲン化ビニル類等]100部(重量部、以下同様)に、アルコキシシリル基含有ジスルフィド化合物[例えばビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等]0.05〜50部を加え、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレートなど)中で光重合(常温乃至50〜60℃で、4〜30時間の光照射)に付すことによって製造されるものが挙げられる。
【0013】
また、アルコキシシリル基含有ポリイソブチレン系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくともイソブチレン単位で構成され[要すれば、イソブチレン単位以外に、イソブチレンと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子両末端にアルコキシシリル基を含有し、好ましくは数平均分子量1,000〜40,000で常温ワックス状ないし高粘度液状のものを指称し、一般に、イニファー法と呼ばれるカチオン重合法で得られる全末端官能型イソブチレン系ポリマーを用いることにより製造することができる(特開平8−231758号公報参照)。
【0014】
【化1】

[式中、nは5〜400およびmは5〜400である]
の化学構造を有する、(株)カネカ製の「エピオン」(登録商標)シリーズが例示される。
【0015】
本発明においては、かかる加水分解性シリル基含有ポリマーに加えて、高温・高圧で連続塊状重合によって得られる、常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーを配合するのが好ましい。このような無溶剤型アクリル系ポリマーを使用することにより、低モジュラス、高伸長の物性に調整でき、作業性にも優れる。上記常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーは、官能基を有しないアクリル系モノマー[例えば前記のアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーの重合法(ii)で用いるようなアクリレートやメタクリレート]を用い、例えば400℃付近の高温・高圧で連続塊状重合(開始剤は極少量もしくは不要、連鎖移動剤は不要)により、極めて短い反応時間(5分程度)で製造することができ、100%ポリマーおよび低Tgの常温液状を呈し、かつ変成シリコーン系ポリマーとの相溶性が良好で(∵組成分布・分子量分布が狭い)、シーリング材の粘度粘性を調整して作業性を良好にし、更に、優れた耐候性を向上させる。市販品として例えば東亞合成(株)製、「ARUFON(登録商標)UP−1000」等がある。
また、前記アクリル系ポリマーが、変成シリコーンポリマー中で重合されたアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーと、高温・高圧で連続塊状重合により得られる常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーとの併用であると好ましい。常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーは、可塑剤代替効果があり、硬化したシーリング材は低モジュラス、高伸長の物性を奏し、又、作業性と耐候性の向上に寄与する。
【0016】
本発明のシーリング材組成物における前記ポリマー(a)の使用量は、全量に対して、好適には10〜30重量%、より好適には20〜25重量%である。
【0017】
本発明のシーリング材組成物は、反応性可塑剤として、(b)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーを含む。なかでも、主鎖がポリアルキレンエーテルであるものが好ましい。
前記ポリマー(b)の加水分解性シリル基の数は、分子中に平均して0.5以上1.2未満であり、好ましくは0.5以上1.0以下である。加水分解性シリル基の数が分子中に平均して0.5未満の場合、反応性可塑剤が石材へ移行するおそれがあり、一方、1.2以上の場合、可塑剤としての効果が低くなる。
また、前記ポリマー(b)の数平均分子量は、300以上8,000未満であり、好ましくは2,000以上8,000未満、特に好ましくは3,000以上6,000以下である。数平均分子量が300未満の場合、8,000を超える場合、いずれにおいても可塑剤としての効果が低くなる。
【0018】
前記ポリマー(b)としては、例えば、特開平5−59267号公報に開示されている化合物等が挙げられ、具体的には、旭硝子ウレタン株式会社製「S−1000」などが挙げられる。
【0019】
本発明のシーリング材組成物において、前記ポリマー(b)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、本発明のシーリング材組成物における前記ポリマー(b)の使用量は、全量に対して、好適には10〜30重量%、より好適には15〜20重量%である。
【0020】
本発明のシーリング材組成物は、改質剤として、(c)数平均分子量2,000未満のビスアルコキシシリル化合物を含む。当該化合物(c)の数平均分子量は、2,000未満、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下である。当該化合物(c)の数平均分子量が2,000以上の場合、改質効果が低下する。
当該化合物(c)としては、ビス(アルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、N,N-ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等が挙げられ、好ましくはビス(アルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドが挙げられる。
ビス(アルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドとしては、特開2002−265928号公報に開示されている化合物等が挙げられ、具体的には、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’−(トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’−ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサンスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’−ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド等が挙げられる。なかでも、3,3’−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
【0021】
本発明のシーリング材組成物において、前記化合物(c)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、本発明のシーリング材組成物における前記化合物(c)の使用量は、全量に対して、好適には0.5〜5重量%、より好適には0.5〜2重量%である。
【0022】
本発明のシーリング材組成物に用い得る他の成分としては、前記成分以外の各種充填剤、可塑剤、硬化触媒、およびその他添加剤などを挙げることができる。
充填剤としては、例えば重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、マイカ、クレー、ガラスビーズ、シラスバルーン,ガラスバルーン,シリカバルーン,プラスチックバルーンなどのバルーン、ガラス繊維,金属繊維などの無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの有機繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性フィラー、などが使用できる。
可塑剤としては、例えばフタル酸ジエステル類(ジイソノニルフタレートなど)、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類が使用できる。
硬化触媒としては、例えば、ジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジエチルヘキサノエート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビスエトキシシリケート、ジオクチルスズオキサイドなどのスズ系触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルアセトアセテートなどのチタン系触媒、ラウリルアミンなどの有機アミン系触媒等が使用できる。
【0023】
その他の添加剤としては、着色剤(ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料など)、有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系高沸点溶剤など)、安定剤(メタノール、エタノールなど)、密着剤(アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、エポキシ化合物など)、老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類など)、水分保給剤(水、無機塩類の水和物など)、紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類など)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油など)等を適量範囲で使用できる。
【0024】
かかる構成から成る本発明のシーリング材組成物は、上記配合成分を一括混合した一液型、あるいは上記加水分解性シリル基含有ポリマーを含有する基剤と、硬化触媒を含有する硬化剤の二液型、またはさらに着色剤と可塑剤等からなるトナーを別の一成分とした三液型として使用し得る。
【0025】
また、本発明のシーリング材組成物は、好ましくは、JIS−A−5758による引張試験において、伸び率150%以上、特に300〜500%、および最大引張強度0.8N/mm以下、特に0.2〜0.6N/mmである。当該伸び率が150%未満である場合、目地の動きに追従できないおそれがあり、また、当該最大引張強度が0.8N/mm2を超える場合、被着体を破壊するおそれがある。
【実施例】
【0026】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例等において、特に明記のない限り、記載された単位は重量を基準とする。
【0027】
〔実施例1および比較例1〜3〕
表1に示す部数(重量部)の基剤の各成分を混合し、2成分形シーリング材の基剤とした。また、表1に示す部数(重量部)の硬化剤の各成分を混合し、2成分形シーリング材の硬化剤とした。
【0028】
【表1】

【0029】
(注1)変成シリコーンポリマー:旭硝子ウレタン株式会社製「ES−W2521」(数平均分子量:17,000、加水分解性シリル基の数:1分子当たりの平均1.6)
(注2)ビス(アルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド:デグサジャパン株式会社製(Si69;数平均分子量525)
(注3)光安定剤(HALS):三共ライフテック株式会社製「LS765」ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)
(注4)紫外線吸収剤:城北化学工業株式会社製「JF79」(2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)
(注5)水素添加ヒマシ油:大日化成株式会社製「OHG−FF」(1,2−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド)
(注6)炭化水素系溶剤:丸善石油化学株式会社製(メチルシクロヘキサン)
(注7)加水分解性シリル基含有ポリエーテル:旭硝子ウレタン株式会社製「S−1000」(数平均分子量:5,000、加水分解性シリル基の数:1分子当たりの平均0.8)
(注8)表面処理炭酸カルシウム:神島化学株式会社製「PLS−505」(活性炭酸カルシウム)
(注9)重質炭酸カルシウム:白石カルシウム株式会社製「ホワイトンSB」(重質炭酸カルシウム)
【0030】
上記のように製造した基剤と硬化剤を、10:1(重量比)で混合し、以下に示す性能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0031】
[性能試験]
(1)引張接着性試験
JIS−A−5758:1994に準拠して試験を行い、初期養生後(20℃×7日+50℃×7日)の最大引張応力(N/mm)および最大荷重時の伸び率(%)を測定した。なお、被着体としてアルミニウム合金(5052P)板を使用し、プライマーとしてサンスター技研(株)製「US−2」を使用した。
【0032】
(2)石目地汚染性試験
各シーリング材組成物を、ノンプライマー条件下にて大理石(ビアンコカララ)に打設し、養生(20℃×3日+50℃×3日)後、(80℃×5日+50℃温水×1日+0℃×1日)を1サイクルとして、これを4回繰り返した後、汚染幅(mm)を測定した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2の結果から、実施例1の2成分形シーリング材は、石材に対する汚染性が低く、かつ十分な伸びを示すシーリング材であることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有する数平均分子量2,000以上のポリマーと、
(b)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、
(c)数平均分子量2,000未満のビスアルコキシシリル化合物と
を含んでなる、石目地用シーリング材組成物。
【請求項2】
ポリマー(a)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、請求項1に記載の石目地用シーリング材組成物。
【請求項3】
ポリマー(b)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、請求項1または2に記載の石目地用シーリング材組成物。
【請求項4】
化合物(c)は、ビス(アルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドである、請求項1〜3のいずれかに記載の石目地用シーリング材組成物。
【請求項5】
JIS−A−5758による引張試験において、伸び率150%以上、および最大引張強度0.8N/mm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の石目地用シーリング材組成物。

【公開番号】特開2009−108246(P2009−108246A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283625(P2007−283625)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】