説明

石綿除去作業者用クリーンルーム

【課題】石綿粉塵の外部飛散を防ぎ、安全に撤去できる石綿除去作業者用クリーンルーム。
【解決手段】前室11、洗浄室12、更衣室13の3つの室を区画形成していて、石綿除去作業者が作業開始前に更衣室13で作業衣に着替え、呼吸用保護具27等を着用し、作業後に前室11に入って、呼吸用保護具27を着用したまま保護衣28等を脱ぎ、洗浄室12で呼吸用保護具27、作業衣等に付着した石綿をエアシャワーユニット9で払い落とし、更衣室13で呼吸用保護具27を脱いで室外に出るようになっている石綿除去作業者用クリーンルームであり、骨組Aと、前後左右壁シート部1,2,3,4、屋根シート部5及び床シート部6で袋状に形成されると共に前後壁シート部1,2間が隔壁シート部7,8で前室11と洗浄室12と更衣室13との3つに仕切られたプラスチックシート製の袋状ルーム本体Bとからなり、袋状ルーム本体Bを骨組A内に吊り下げるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を解体・撤去する際に石綿含有吹付け材の除去作業を行なう作業者が、その作業前及び作業後に使用する石綿除去作業者用クリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の耐火被覆材や断熱材として使用されていた石綿の繊維が人体に致命的な悪影響を及ぼすことが判明して以来、石綿含有吹付け材の除去作業従事者には、石綿含有吹付け材のレベルに応じて、身体に付着した石綿含有吹付け材を除去し、ばく露を防止するための洗顔、洗身又はうがいの設備、更衣設備又は洗濯のための設備を設置しなければならず、しかして洗身設備を含む石綿の汚染、ばく露防止施設として、外部及び作業場所から区画された更衣室、洗浄室、前室からなるセキュリティーゾーンとしてのクリーンルームを設置することが法律によって義務づけられている。
【0003】
このクリーンルームは、石綿除去作業場所に近い側から順に前室、洗浄室、更衣室の3つの室を区画形成していて、その洗浄室にはエアシャワーユニットを設置し、石綿除去作業者が作業開始前に更衣室で作業衣に着替え、呼吸用保護具、保護衣及びその他保護手袋、作業靴、保護めがね等の保護具を着用し、作業後に前室に入って、呼吸用保護具は着用したままで保護衣及びその他の保護具を脱ぎ、洗浄室で呼吸用保護具、作業衣、下着、身体に付着した石綿をエアーシャワーで払い落とし、更衣室で呼吸用保護具を脱いで室外に出るようになっている。
【0004】
従来のクリーンルームとして、特許公報等の公知文献を具体的に挙げることはできないが、現在使用されているクリーンルームとしては、鋼管等によって組み立て形成した骨組に可撓性のプラスチックシートを巻き付けたり、貼り付けたりしながら、前後左右の壁面部と屋根面部とを形成すると共に、前壁面部と後壁面部との間に隔壁シート部を介して前室と洗浄室と更衣室との3つの室を形成するようにしたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクリーンルームでは、前室と洗浄室と更衣室の3つの室を形成するのに、骨組にプラスチックシートを巻き付けたり、貼り付けたりして、前後左右壁面部、屋根面部及び隔壁シート部を形成していることから、クリーンルームの使用後にルーム本体を形成するプラスチックシートを廃棄するにあたって、このシートクリーンルームを骨組から取り外すのに手間がかかる共に、その取り外し中に石綿の粉塵が外部に飛散しないように慎重に取り外し作業を行なう必要があって、その取り外し作業が非常に面倒であった。
【0006】
そこで、本発明は、使用済みルーム本体を骨組に対し簡単容易に取付け・取外しできると共に、ルーム本体内部の石綿の粉塵を外部に飛散させるおそれがなく、安全に撤去して処理できるようにした石綿除去作業者用クリーンルームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、石綿除去作業場所に近い側から順に前室11、洗浄室12、更衣室13の3つの室を区画形成していて、洗浄室12にエアシャワーユニット9を設置し、石綿除去作業者が作業開始前に更衣室13で作業衣に着替え、呼吸用保護具27、保護衣28及びその他の保護具を着用し、作業後に前室11に入って、呼吸用保護具27は着用したままで保護衣28及びその他の保護具を脱ぎ、洗浄室12で呼吸用保護具27、作業衣、下着、身体に付着した石綿をエアシャワーユニット9で払い落とし、更衣室13で呼吸用保護具27を脱いで室外に出るようになっている石綿除去作業者用クリーンルームであって、鋼管等によって形成される骨組Aと、前後左右の壁シート部1,2,3,4、屋根シート部5及び床シート部6で袋状に形成されると共に前壁シート部1と後壁シート部2との間が2つの隔壁シート部7,8で前室11と洗浄室12と更衣室13との3つの室に仕切られた可撓性プラスチックシート製の袋状ルーム本体Bとからなり、袋状ルーム本体Bは、骨組Aの内側において床シート部6を地面に接地させた状態で屋根シート部5側を骨組Aに吊り下げるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の作業者用クリーンルームにおいて、骨組Aには袋状ルーム本体Bの屋根シート部5に対応する所要箇所にシート取付用リング24を設け、袋状ルーム本体Bには屋根シート部5の所要箇所に吊り紐25を取り付け、各吊り紐25を骨組のシート取付用リング24に通して縛り付けるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の石綿除去作業者用クリーンルームにおいて、骨組Aは、屋根杆15と支柱14とこれの下端部に取り付けるジャッキベース18とこれの下端部どうしをつなぐ横つなぎ材16とによってユニット枠aを分解可能に組み立て、このユニット枠aを所要間隔おきに複数並置し、対向するユニット枠a,aの支柱14,14どうし及び屋根杆15,15どうしを縦つなぎ材17で切り離し可能に連結して組み立てるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の石綿除去作業者用クリーンルームによれば、鋼管等によって形成される骨組Aと、前後左右の壁シート部1,2,3,4、屋根シート部5及び床シート部6とで袋状に形成されると共に前壁シート部1と後壁シート部2との間が2つの隔壁シート部7,8で前室11と洗浄室12と更衣室13との3つの室に仕切られた可撓性プラスチックシート製の袋状ルーム本体Bとからなるもので、袋状ルーム本体Bが骨組Aの内側において床シート部6を地面に接地させた状態で屋根シート部5側を骨組Aに吊り下げるようになっているから、骨組Aに対する袋状ルーム本体Bの取付け及び取外しが簡単に行なえ、特に袋状ルーム本体Bの使用後、これを廃棄する時には、袋状ルーム本体Bを骨組Aから取り外してたたみ込んだ状態のまま、所定場所まで搬送すればよいから、袋状ルーム本体Bの内部にある石綿の粉塵が外部に飛散するおそれがなく、容易且つ安全に撤去して処分することができる。また、袋状ルーム本体Bが骨組Aの内側に配置されることから、特に骨組Aを解体する時に、この骨組Aを形成する鋼管等によって袋状ルーム本体Bを突き破るおそれがなく、従って袋状ルーム本体B内の石綿粉塵が外部へ漏出する危険性がない。
【0011】
請求項2に係る発明のように、骨組Aには袋状ルーム本体Bの屋根シート部5に対応する所要箇所にシート取付用リング24を設け、袋状ルーム本体Bには屋根シート部5の所要箇所に吊り紐25を取り付け、各吊り紐25を骨組のシート取付用リング24に通して縛り付けるようにしているから、骨組Aの屋根部側に対する袋状ルーム本体Bの取付作業及び取り外し作業を簡単容易にして且つ迅速に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
請求項3に係る発明によれば、屋根杆15と支柱14とジャッキベース18と横つなぎ材16とによってユニット枠aを分解可能に組み立て、このユニット枠aを所要間隔おきに複数並置し、対向するユニット枠a,aの支柱14,14どうし及び屋根杆15,15どうしを縦つなぎ材17で切り離し可能に連結することによって骨組Aを組み立てるようになっているから、骨組Aの組み立て作業及び分解作業を容易且つ迅速に行なうことができる。
【0013】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係る石綿除去作業者用クリーンルームCRの全体を示す斜視図、図2はクリーンルームCRの骨組Aのみを示す斜視図、図3はクリーンルームCRの袋状ルーム本体Bのみを使用状態のまで示す斜視図である。このクリーンルームCRは、スチールパイプで組み立てられた骨組Aと、前後左右の壁シート部1,2,3,4、屋根シート部5及び床シート部6からなる袋状に形成されると共に、前壁シート部1と後壁シート部2との間が2つの隔壁シート部7,8で前室11と洗浄室12と更衣室13との3つの室11〜13に仕切られる可撓性プラスチックシート製の袋状ルーム本体Bとからなるもので、袋状ルーム本体Bは、床シート部6を地面に接地させた状態で屋根シート部5側を骨組Aに吊り下げるようになっている。
【0014】
骨組Aは、山形の屋根杆15と、支柱14と、支柱14の下端部に取り付けるジャッキベース18と、このジャッキベース18の下端部どうしをつなぐ横つなぎ材16とによってユニット枠aを形成し、こうして形成したユニット枠aを所要間隔おきに複数並置し、対向するユニット枠a,aの支柱14,14どうし及び屋根杆15,15どうしを縦つなぎ材17で切り離し可能に連結して組み立てたもので、クリーンルームCRを撤去する際には、これらの支柱14、屋根杆15、横つなぎ16、縦つなぎ材17を互いに切り離して個々に分解することができるようになっている。尚、支柱14、屋根杆15及び縦つなぎ材17は夫々鋼管(スチールパイプ)で形成され、横つなぎ材16は角形鋼で形成される。
【0015】
骨組Aを構成する上記ジャッキベース18、支柱14、屋根杆15、横つなぎ材16及び縦つなぎ材17を図6によって更に詳しく説明すると、同図の(a) に示すように、各屋根杆15の左右両端部には夫々の前後側面部に楔受け29が取り付けられ、各支柱14には下端部の前後側面部に楔受け30が取り付けられ、そして縦つなぎ材17には両端部の夫々下面側に前記楔受け29,30に楔係合する楔片31が下向きに突設されている。ジャッキベース18はベースプレート18aに螺軸18bを立設し、この螺軸18bに支柱受け18cを螺合したものである。ジャッキベース18のベースプレート18aには略々Z字形の取付片32が溶接によって固着されていて、この取付片32を図6の(b) に示すようにように角形鋼からなる横つなぎ材16の端部に挿入して蝶ボルト33及びナット34で固定することにより、ジャッキベース18と横つなぎ材16とを連結することができる。
【0016】
しかして、ユニット枠aを形成するには、屋根杆15の両端差込軸部15a,15aを支柱14,14の夫々の上端部に差し込み、各支柱14の下端部をジャッキベース18の螺軸18bに嵌合して支柱受け18cに支持させると共に、支柱受け18cを適宜回転させて支柱14を高さ調整することにより、所定高さの自立したユニット枠aを形成する。こうして形成したユニット枠a,aの支柱14,14どうし及び屋根杆15,15どうしを縦つなぎ材17で連結するにあたっては、縦つなぎ材17の端部に下向きに突設された楔片31を屋根杆15側の楔受け29及び支柱14の下端部の楔受け30に叩き込むようにすればよい。また、各ユニット枠aの対向するジャッキベース18,18間に横つなぎ材16を配置して、各ジャッキベース18と横つなぎ材16とを前記取付片32を介して蝶ボルト33及びナット34で連結すればよい。
【0017】
骨組Aを形成する各山形屋根杆15の山頂部と両裾部とには、シート取付用リング24が夫々下向きに突出するように取り付けられている。各リング24には、後述するように袋状ルーム本体Bの屋根シート部5に取り付けた吊り紐25を通し入れて縛り付け、袋状ルーム本体Bを骨組Aの屋根杆15から吊り下げるようになっている。
【0018】
袋状ルーム本体Bの構造について更に説明すれば、この袋状ルーム本体Bは、可撓性プラスチックシートとしての例えば半透明ポリエチレンシートによって、前後左右の壁シート部1,2,3,4、切妻形の屋根シート部5及び床シート部6からなる袋状で且つ隔壁シート部7,8によって前室11と洗浄室12と更衣室13との3つの室11〜13に仕切られた無造作にたたみ込みできるように形成されている。
【0019】
図3に示すように、切妻形の屋根シート部5には、骨組Aを形成する各山形屋根杆15の山頂部と両裾部と対応する位置に夫々、各山形屋根杆15の山頂部と両裾部とに取り付けたシート取付用リング24に通して縛り付ける吊り紐25が取り付けられている。
【0020】
この袋状ルーム本体Bの形成にあたっては、例えば、上記ポリエチレンシートを適宜に裁断して、前壁シート部1、後壁シート部2、左壁シート部3、右壁シート部4、屋根シート部5及び床シート部6を夫々形成すると共に、これらのシート部1〜6には夫々糊代部を設けておいて、これらのシート部1〜6を夫々糊代部を介して接着剤で接着することによって、図3に示すような袋状に形成することができる。
【0021】
そして、前壁シート部1、後壁シート部2及び隔壁シート部7,8には夫々、出入り口21,22,19,20が直線状に切り欠かれ、各出入り口21,22,19,20は、図示は省略するが、その切欠き部分が重ね合わされて、その重ね合わせた部分にマジックテープ(登録商標)が貼り付けられたり、あるいはその切欠き部分にスライドファスナーが取り付けられることよって、内部の空気が外部へ漏出したり、隣り合う室の一方の室内の空気が他方の室内へ漏出することがないようになっている。
【0022】
また、洗浄室12の背面側壁シート部分4oには、エアシャワーユニット9を洗浄室12内に入れたり、使用後に取り出すための出し入れ口23が切欠きして形成され、この出し入れ口23の切欠き部分も重ね合わせ状態に形成されて、洗浄室12内の空気が外部へ漏出しないようにガムテープで密封されている。
【0023】
石綿除去作業者用クリーンルームCRの設置にあたっては、骨組Aを所定の場所に組み立てた後、この骨組Aの内側に袋状ルーム本体Bを持ち込んで、このルーム本体Bの床シート部6を地面に接地させた状態で屋根シート部5を骨組Aの屋根相当箇所に吊り下げればよい。この場合、骨組Aの内側に持ち込んだ袋状ルーム本体Bの屋根シート部5を骨組Aの屋根相当箇所に吊り下げれば、床シート部6は必然的に地面に接地する。屋根シート部5を骨組Aに吊り下げるには、屋根シート部5に取り付けてある複数の吊り紐25を各山形屋根杆15の山頂部と両裾部と設けられたシート取付用リング24に通して縛り付ければよい。
【0024】
尚、袋状ルーム本体B内に形成される前室11と洗浄室12と更衣室13との3つの室11〜13のうち、前室11は、石綿除去作業場所に最も近い側に形成される。
【0025】
このように骨組Aの内側において床シート部6を地面に接地させた状態で屋根シート部5を骨組Aに吊り下げてクリーンルームCRの設置を終えたならば、図1に示すように袋状ルーム本体Bの洗浄室12にエアシャワーユニット9を持ち込んで設置する。この際には、洗浄室12の背面側壁シート部分4oに設けてある出し入れ口23を開いて、この出し入れ口23からエアシャワーユニット9を洗浄室12内に搬入し、その設置後に出し入れ口23をガムテープで密封する。
【0026】
また図1に示すように、前室11内には、前壁シート部1の出入り口21より脱衣カゴ10及び真空掃除機26を搬入する。
【0027】
次に、上記のようにして設置された石綿除去作業者用クリーンルームCRの使用方法について図1を参照しながら説明する。尚、このクリーンルームCRの袋状ルーム本体B内では空気の流れは図1に矢印で示すように、後壁シート部2の出入り口22から外部の新鮮な空気Hが入って、更衣室13から洗浄室12を通り、前室11を通って前壁シート部1の出入り口21から石綿除去作業場所側へ流動するような仕組みとなっている。
【0028】
先ず、作業者は、石綿含有吹付け材作業を開始する前に、後壁シート部2の出入り口22から袋状ルーム本体Bの更衣室13に入って作業衣に着替え、呼吸用保護具27を装着し、保護衣28を着用し(保護衣28は呼吸用保護具27の上から着用する。)した後、隔壁シート部8の出入り口20から洗浄室12を通り、更に隔壁シート部7の出入り口19から前室11を通って、前壁シート部1の出入り口21を出て、所定の石綿含有吹付け材除去設備(図示せず)内に入り、その除去作業を行なう。
【0029】
石綿含有吹付け材除去設備での除去作業を終えた作業者は、そのままの姿で図1に示すように、前壁シート部1の出入り口21から前室11に入って、先ず、真空掃除機26で呼吸用保護具27、保護衣28及び作業手袋、靴カバー等のその他の保護具に付着した粉塵とを吸引除去し、それから呼吸用保護具27は着用したままで、保護衣28及び作業手袋、靴カバー等のその他の保護具を脱衣する。脱いだ保護衣28及びその他の保護具で使い捨てタイプのものは廃棄物専用プラスチック袋に詰め、特別管理産業廃棄物として処分する。尚、図1において、点線で示される大きな矢印は作業者が袋状ルーム本体B内を通過する方向を示す。
【0030】
保護衣28及び作業手袋、靴カバー等のその他の保護具を脱ぎ終えた作業者は、呼吸用保護具27を着用したまま、隔壁シート部7の出入り口19から洗浄室12に入って、エアシャワーユニット9で呼吸用保護具27、作業衣や下着、身体に付着した石綿を十分に払い落とす。こうして洗浄室12での洗浄を終えたならば、隔壁シート部8の出入り口20から更衣室13に入って、呼吸用保護具27を脱ぐ。またここで、呼吸用保護具27を清掃、点検し、ろ過材等の部品の交換を行なう。こうして呼吸用保護具27を脱いだ後、作業者は後壁シート部2の出入り口22から外へ出る。
【0031】
上記石綿除去作業者用クリーンルームCRの使用が済んで解体・撤去する時は、袋状ルーム本体B内に設置しているエアシャワーユニット9、脱衣カゴ10、その他の設備を外に取り出す。エアシャワーユニット9を外へ出した後、背面側壁シート部分4oの出し入れ口23は、洗浄室12内にたまっている粉塵等が外部へ漏れないように再びガムテープで密封する。その後、袋状ルーム本体Bを骨組Aから取り外す。
【0032】
袋状ルーム本体Bを骨組Aから取り外すには、図4に示すように、骨組Aの各山形屋根杆15のシート取付用リング24に縛り付けている通し紐25を解くことによって、袋状ルーム本体Bは、骨組Aの屋根部から外れて地面に落下し、図5に示すようなたたみ込まれた状態となる。こうしてたたみこまれた状態の袋状ルーム本体Bは、密封されて袋詰めされた状態にあるから、そのまま特別管理産業廃棄物として所定の場所まで搬送し、処分すればよい。
【0033】
袋状ルーム本体Bを取り外した骨組Aは、適宜に分解し、保管しておくことによって、次の使用に供することができる。
【0034】
以上説明したように、上記石綿除去作業者用クリーンルームCRは、スチールパイプによって組み立てられる骨組Aと、前後左右の壁シート部1,2,3,4、屋根シート部5及び床シート部6からなる袋状に形成されると共に前壁シート部1と後壁シート部2との間が2つの隔壁シート部7,8で前室11と洗浄室12と更衣室13との3つの室に仕切られた可撓性プラスチックシート製の袋状ルーム本体Bとからなるもので、袋状ルーム本体Bは骨組Aの内側において床シート部6を地面に接地させた状態で屋根シート部5側を骨組Aに吊り下げるようになっているから、袋状ルーム本体Bを骨組Aに取り付けるのも簡単に行なえるし、骨組Aから袋状ルーム本体Bを取り外すのも簡単に行なえ、特に袋状ルーム本体Bを使用した後、これを廃棄する時には、袋状ルーム本体Bを骨組Aから取り外してたたみ込んだ状態のままで、所定場所まで搬送すればよいから、袋状ルーム本体Bの内部にある石綿の粉塵が外部に飛散するおそれがなく、安全に撤去して処分することができる。
【0035】
また、このクリーンルームCRによれば、袋状ルーム本体Bが骨組Aの内側に配置されることから、骨組Aを解体する際に、骨組Aを形成する鋼管等によって袋状ルーム本体Bを突き破るおそれがなく、従って袋状ルーム本体B内の石綿粉塵が外部へ漏出する危険性がない。つまり、クリーンルームCRの使用が終了してクリーンルームCRを解体する時は、骨組Aから袋状ルーム本体Bを取り外してたたみ込んだ状態でそのまま所要の場所へ移動した後に骨組Aを分解すればよいから、骨組Aを形成する鋼管等によって袋状ルーム本体Bを突き破るようなことがないわけである。因みに、従来のクリーンルームにあっては、骨組をシート材で覆うような構造であるため、解体時にシート材が骨組を形成する鋼管で突き破られて破損するおそれが十分に考えれられ、石綿粉塵が外部へ漏出する危険性がある。
【0036】
また、このクリーンルームCRでは、骨組Aには袋状ルーム本体Bの屋根シート部5に対応する所要箇所にシート取付用リング24を設け、袋状ルーム本体Bには屋根シート部5の所要箇所に吊り紐25を取り付け、各吊り紐25を骨組のシート取付用リング24に通して縛り付けるようにしているから、骨組Aの屋根部側に対する袋状ルーム本体Bの取付作業及び取り外し作業を簡単容易にして且つ迅速に行なうことができる。
【0037】
この実施形態では、骨組Aは、鋼管(スチールパイプ)製のものであるが、鋼管製のものに限らず、塩化ビニル製パイプや、木製のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る石綿除去作業者用クリーンルームを示す斜視図である。
【図2】クリーンルームの骨組のみを示す斜視図である。
【図3】クリーンルームの袋状ルーム本体のみを使用状態で示す斜視図である。
【図4】骨組から袋状ルーム本体を取り外している途中の状態の斜視図である。
【図5】骨組から袋状ルーム本体を取り外してしまった状態の斜視図である。
【図6】(a) は骨組の組み立て構造を詳細に説明する骨組の分解斜視図、(b) はジャッキベースと横つなぎ材とを連結構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
CR 石綿除去作業者用クリーンルーム
A 骨組
B 袋状ルーム本体
1 前壁シート部
2 後壁シート部
3 左壁シート部
4 右壁シート部
5 屋根シート部
6 床シート部
7,8 隔壁シート部
9 エアシャワーユニット
11 前室
12 洗浄室
13 更衣室
24 シート取付用リング
25 吊り紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石綿除去作業場所に近い側から順に前室、洗浄室、更衣室の3つの室を区画形成していて、洗浄室にエアシャワーユニットを設置し、石綿除去作業者が作業開始前に更衣室で作業衣に着替え、呼吸用保護具、保護衣及びその他の保護具を着用し、作業後に前室に入って、呼吸用保護具を着用したままで、保護衣及びその他の保護具を脱ぎ、洗浄室で呼吸用保護具、作業衣、下着、身体に付着した石綿をエアーシャワーで払い落とし、更衣室で呼吸用保護具を脱いで室外に出るようになっている石綿除去作業者用クリーンルームであって、
鋼管等によって形成される骨組と、前後左右の壁シート部、屋根シート部及び床シート部で袋状に形成されると共に前壁シート部と後壁シート部との間が2つの隔壁シート部で前室と洗浄室と更衣室との3つの室に仕切られる可撓性プラスチックシート製の袋状ルーム本体とからなり、袋状ルーム本体は、骨組の内側において床シート部を地面に接地させた状態で屋根シート部側を骨組に吊り下げるようにした石綿除去作業者用クリーンルーム。
【請求項2】
骨組には袋状ルーム本体の屋根シート部に対応する所要箇所にシート取付用リングを設け、袋状ルーム本体には屋根シート部の所要箇所に吊り紐を取り付け、各吊り紐を骨組のシート取付用リングに通して縛り付けるようにした請求項1に記載の石綿除去作業者用クリーンルーム。
【請求項3】
骨組は、屋根杆と支柱とこれの下端部に取り付けるジャッキベースとこれの下端部どうしをつなぐ横つなぎ材とによってユニット枠を分解可能に組み立て、このユニット枠を所要間隔おきに複数並置し、対向するユニット枠の支柱どうし及び屋根杆どうしを縦つなぎ材で切り離し可能に連結して組み立てるようになっている請求項1又は2に記載の石綿除去作業者用クリーンルーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303165(P2007−303165A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132770(P2006−132770)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000109152)ダイワラクダ工業株式会社 (16)
【出願人】(506160455)株式会社名古屋マルヤマ (2)
【Fターム(参考)】