説明

石膏トラップの悪臭防止具

【課題】容易且つ低コストで長期間にわたって石膏トラップから発生する悪臭を防止することができる石膏トラップの悪臭防止具を提供すること。
【解決手段】好気性微生物群を担持している好気性微生物群担持体と、内部に十分な空隙を有するように繊維を編み、好気性微生物群担持体の周囲を囲んで設置される微生物群保持体と、好気性微生物群担持体と微生物群保持体とを収納する外装容器100とを具備する。外装容器100には流入口139と排水口105とを設ける。排水口105は好気性微生物群担持体と微生物群保持体とを水に浸した状態で水を排出する位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医院や歯科技工所等で使用される石膏トラップの悪臭防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科医院や歯科技工所等では、石膏によって種々の義歯製作用模型が作成されている。そしてその作業の過程において、石膏の一部が水道水によってシンク(流しの水槽)に洗い落とされる。洗い落とされた石膏を含む水はそのまま下流側配管に排出されると、下流側配管内において石膏成分(石膏屑)が沈降、分離して堆積し、下流側配管が詰まってしまう。
【0003】
このため従来、シンクの下流側配管中に石膏トラップを設置し、シンクに流された水を一旦この石膏トラップに溜め、石膏トラップ内で水中の石膏成分を沈降・分離するようにしている。
【0004】
一方、石膏トラップを継続的に使用していると、内部で硫化水素のような強烈な臭いが発生し、その臭いがシンクの排水口から出てくる。石膏トラップが臭う原因は、石膏トラップ内で捕集された石膏屑が人の唾液や血液が混ざった状態でヘドロのような状態になり、そこに雑菌が繁殖して腐敗が起こり、水中に含まれる有機物を分解して悪臭を発生させるためと解釈される。
【0005】
この現象を防止するには、石膏トラップを定期的に清掃したり、悪臭を抑える除菌消臭剤のような薬剤などを投入する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−88809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら石膏トラップの清掃は、石膏トラップを分解・清掃する必要があるので煩雑で時間もかかり、臭いも強烈なので大きな負担になる。また石膏トラップの清掃を業者へ委託すると大きなコストがかかる。一方薬剤などの投入は、投入した時は消臭効果があるが、しばらく時間が経過すると再び悪臭が発生し始める。つまり効果は一時的であり、このため頻繁に薬剤などを投入しなければならず、コストがかかってしまう。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、容易且つ低コストで長期間にわたって石膏トラップから発生する悪臭を防止することができる石膏トラップの悪臭防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、シンクの排水口から排水される水を導入し、その水中の石膏成分を分離して溜めると同時に分離後の水を下流側配管に排出する石膏トラップの悪臭防止具であって、前記悪臭防止具は、好気性微生物群を担持している好気性微生物群担持体と、内部に十分な空隙を有するように繊維を編み、前記好気性微生物群担持体の周囲を囲んで設置され、水で満たされた前記空間内に微生物を保持させる微生物群保持体と、前記好気性微生物群担持体と微生物群保持体とを収納する外装容器とを具備し、前記外装容器には、この外装容器内に水を給水する流入口と、この外装容器から水を排出する排水口とを設け、前記排水口は前記好気性微生物群担持体と微生物群保持体とを水に浸した状態で水を排出する位置に設けられていることを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具にある。
【0010】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、前記悪臭防止具は、前記シンクの内側面に取り付けられる取付具を有するか、或いは前記シンクの排水口内に設置されるごみ受けカゴ内に収納設置される外径寸法形状を有するか、或いは前記石膏トラップ内に設置されるごみ受けカゴ内に設置される外径寸法形状を有することを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具にある。
【0011】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、前記外装容器はこれを塞ぐ蓋を有し、この蓋上面の中央部分に凹状の石膏沈殿用液体溜部を形成し、この石膏沈殿用液体溜部の周囲の内周側面に前記流入口を設けたことを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具にある。
【0012】
本願請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、前記外装容器はこれを塞ぐ蓋を有し、この蓋に前記流入口を設けると共に、この流入口を覆うように石膏侵入防止用網を設置したことを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具にある。
【0013】
本願請求項5に記載の発明は、請求項2又は3又は4に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、前記好気性微生物群担持体は担持体ケースに収納されており、この担持体ケースには外部から前記好気性微生物群担持体に至る水導入口を設け、さらに担持体ケースには、その外周に前記微生物群保持体を保持する保持片が形成されていることを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具にある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、好気性微生物群を担持している好気性微生物群担持体の周囲にこれを囲むように微生物群保持体を設置し、同時に外装容器内に一旦水を溜めた後に排水口から排水する構成としているので、好気性微生物群担持体及び微生物群保持体内部の空隙内には常に液体が満たされた状態で安定して好気性微生物群が増殖・保持される領域となる。そして増殖した好気性微生物群を含有する水の一部が排水口から石膏トラップに安定して供給でき、前記好気性微生物群が石膏トラップ内の有機物を分解するとともに悪臭を発する雑菌の繁殖を抑える。これらのことから長期にわたってメンテナンスフリーで安定して容易且つ低コストに石膏トラップから発生する悪臭を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、悪臭防止具を、シンク内での各種作業の邪魔にならない位置に設置することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、蓋上面の石膏沈殿用液体溜部に供給された水は、一旦この石膏沈殿用液体溜部に溜まった後、流入口から悪臭防止具内に導入される。従って前記水中に石膏成分が含まれていても、この水を前記石膏沈殿用液体溜部内に溜めた段階で石膏成分が沈殿し、悪臭防止具内に導入される石膏成分を減少させることができる。これによって悪臭防止具の使用可能期間の長期化が図れる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、外装容器の蓋に設けた流入口に石膏侵入防止用網を設置したので、この悪臭防止具に石膏成分を含有する水を供給した際、石膏侵入防止用網に石膏成分が残され、悪臭防止具内に導入される石膏成分を減少させることができる。これによって悪臭防止具の使用可能期間の長期化が図れる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、担持体ケースを用いることで、好気性微生物群担持体と微生物群保持体の両者の保持が容易且つ確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】石膏トラップの悪臭防止具1−1の斜視図である。
【図2】悪臭防止具1−1を下側から見た斜視図である。
【図3】悪臭防止具1−1の蓋130を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】微生物群保持本体10から微生物群保持体60を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】外装容器本体100Aの斜視図である。
【図6】悪臭防止具1−1をシンク200の内側面に取り付けて使用する例を示す概略図である。
【図7】排水口105の部分を下側から見た要部拡大斜視図である。
【図8】石膏トラップの悪臭防止具1−2の斜視図である。
【図9】石膏トラップの悪臭防止具1−3の斜視図である。
【図10】悪臭防止具1−3の1使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態にかかる石膏トラップの悪臭防止具1−1の斜視図、図2は悪臭防止具1−1を下側から見た斜視図、図3は悪臭防止具1−1の蓋130を取り外した状態を示す斜視図である。これらの図に示すように悪臭防止具1−1は、内部に微生物群保持本体10を収納する外装容器100(外装容器本体100A及び蓋130からなる)と、前記外装容器100(外装容器本体100A)の一方の外周側面上部に取り付けられる一対の取付具170とを具備して構成されている。
【0021】
図4は微生物群保持本体10から微生物群保持体60を取り外した状態を示す斜視図である。同図及び図3に示すように微生物群保持本体10は、担持体ケース20内に好気性微生物群担持体40を収納すると共に、担持体ケース20の周囲を囲むように微生物群保持体60を設置して構成されている。担持体ケース20は筒状で内部が中空のケース本体部21と、ケース本体部21の上下の外周辺部分から複数本ずつ放射状に外方に向けて突出する保持片23とを具備して構成されている。
【0022】
ケース本体部21はその外周面と上下面に、内部の空間に連通することで、外部から好気性微生物群担持体40に至る水導入口22が設けられ、またその上下面の中央には外方に向かって突出する棒状の支持部25(下側の支持部25は図示せず)が設けられている。保持片23は上下5本ずつで、ケース本体部21の上下の外周辺部分から放射状に外方に向けて突出し、それぞれ互い違いにケース本体部21の外周面を覆う方向に屈曲して構成されている。各保持片23とケース本体21の外周面との間のリング状の空間は、微生物群保持体保持空間S1となっている。
【0023】
好気性微生物群担持体40は、好気性微生物群を担持させた袋状の編成加工布の内部に、好気性微生物群を担持させた炭材含有親水性多孔質板状材料及び/又は好気性微生物群を担持させた微生物活性剤含有親水性多孔質板状材料を収容してプレート型(矩形平板状)に形成して構成されている。
【0024】
本発明に利用する好気性微生物群は、石膏に含有された有機物を分解するために有用なものであればよく、土壌から採取された微生物群等が用いられる。このような微生物群としては、例えばシュードモナス属、ストレプトミセス属、ミクロコッカス属、ノカルディア属、アクロモバクター属、フラボバクテリウム属、ミコバクテリウム属、エアロバクター属、ニトロバクター属などに属する菌体が挙げられる。これらは、海辺や川辺などの土壌、好ましくは砂地から容易に採取でき、本発明では複数の属に属する微生物群を使用する。なお、本発明に使用する好気性微生物群としては、上記土壌菌以外の(又は上記土壌菌と共に)、例えば乳酸菌等の他の各種好気性微生物群を使用しても良い。
【0025】
好気性微生物群担持体40を構成する材料は、基本的にすべて上記好気性微生物群を担持させて用いる。編成加工布は、ポリビニルアルコール系合成繊維、蛋白繊維(羊毛、絹などの天然繊維,カゼイン,大豆タンパク質などを用いた人造蛋白繊維)、ポリウレタン合成繊維およびポリアミド合成繊維(ナイロンなど)などの繊維,糸などの形態のものを用いて編成加工したものである。これは、好気性微生物群担持体40を覆う最外層部を構成する。
【0026】
親水性の多孔質板状材料としては、プラスチック材料が用いられ、例えばポリビニルアルコール系合成繊維、ポリアミド合成繊維、これらの不織布などがある。この多孔質板状材料は、微生物の増殖に資するため、炭材、すなわち木炭および竹炭を含有させたり、微生物活性剤を含有させたり、あるいはこれら両者を含有させたりして用いる。また好気性微生物群担持体40に所定の強度と弾性を付与するため、好気性微生物群担持体40の内部(編成加工布の内部)に竹ひごのような補強部材(補強棒)を1本〜複数本収納しても良い。
【0027】
微生物群保持体60は、細い繊維をループ状に編むことで内部に十分な空隙を有するように(フワフワ状に)形成され、全体としては前記微生物群保持体保持空間S1内に収まるようにリング状に構成されている。微生物群保持体60の空隙率は99%以上で、且つ前述のように細い繊維をループ状に編んでいるので、これを水中に沈めた際、高い微生物の保持量を維持しつつ目詰まりしにくい構造となっている。微生物群保持体60を構成する繊維としては、例えばポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン等の各種合成樹脂が好適である。この例では、ティビーアール株式会社製の製品名「バイオコード」が使用されている。
【0028】
なおこの例では、上記担持体ケース20及び微生物群保持体60にもそれらの表面に好気性微生物群を予め担持させている。即ち担持体ケース20及び微生物群保持体60を、好気性微生物群、ポリビニルアルコール、炭材(木炭と竹炭)及び/又は微生物活性剤を含有する水溶液に浸漬してこれら部材の表面にこの水溶液を付着した後に乾燥して膜を形成する操作を1回のみ又は複数回繰り返すことで担持させている。なおこれらの部材への担持は省略しても良い。
【0029】
図5は外装容器本体100Aの斜視図である。同図に示すように外装容器本体100Aは、合成樹脂を上面が解放された箱形状に成形して構成されている。外装容器本体100Aの内部は、前記微生物群保持本体10を収納する収納部101となっている。収納部101の内周面の対向する2つの面のほぼ中央の対向する位置には、周囲を凸状の土手で囲むことで前記ケース本体部21の支持部25を保持する保持部103(図5では一方のみ示す)を設けている。
【0030】
外装容器本体100Aの4つの上辺102の内の長尺な1辺102を除く他の3辺102には、排水口105が形成されている。排水口105は長尺な上辺102に4つ、短い2つの上辺102に1つずつ形成されている。各排水口105は、上辺102に略矩形状の凹部107を設け、凹部107の左右両側に外方に向かって突出する略平板状の一対の側壁部109を設け、また凹部107の底面に外方に向かって突出する略平板状の底壁部111を設けて構成されている。底壁部111の突出長さは側壁部109の突出長さよりも少し短く、これによって下記図7に示すように短くなった底壁部111の前方に排水部114が形成されている。底壁部111の先端辺は下方向に向かって略L字状に屈曲しており、屈曲した部分は排水ガイド部113となっている。
【0031】
蓋130は図1,図2に示すように、前記外装容器本体100Aの上部の開口を塞ぐ略矩形平板状に合成樹脂を成形して構成されている。蓋130の上面の中央には凹状の石膏沈殿用液体溜部131が形成され、この石膏沈殿用液体溜部131の周囲にはこれを囲む土手状の縁部133が形成されている。縁部133はその横断面が略コ字状であって下方に開口が向くように形成されている。石膏沈殿用液体溜部131の底面中央には上方向に突出する給水受け面135が設けられている。給水受け面135は略ドーム形状で、中央部分が高く外周に向かうにつれて低くなるように湾曲した形状である。
【0032】
蓋130の縁部133の前記各排水口105に対向する位置には、これら各排水口105を覆う略矩形状のカバー部137が形成されている。カバー部137は蓋130の縁部133の外周面を突出し、下面が解放された略矩形箱状に形成されている。カバー部137の下面側の開口は、前記排水口105を構成する一対の側壁部109を略ぴったり挿入する寸法形状に形成されている。
【0033】
蓋130の縁部133の前記カバー部137を設けていない1つの辺の内周側面には流入口139が4つ設けられている。流入口139の下辺部の位置は石膏沈殿用液体溜部131の底面の位置よりも高い位置となっている。
【0034】
取付具170は吸盤である。
【0035】
次にこの悪臭防止具1−1の使用方法を説明する。図6はこの悪臭防止具1−1をシンク200の内側面に取り付けて使用する例を示す概略図である。同図に示すようにこの使用例においては、悪臭防止具1−1の取付具170をシンク200の内側面に吸着によって取り付けている。悪臭防止具1−1の設置位置は、水道の蛇口201を何れかの位置に回動した際にこの蛇口201から吐出される水が、悪臭防止具1−1上面の石膏沈殿用液体溜部131に落ちる位置としている。シンク200の排水口の下部には下流側配管133が接続されており、その下端には石膏トラップ250が接続されている。石膏トラップ250はシンク200の下部に設置されている。石膏トラップ250には石膏を分離した後の水を排水する下流側配管135が接続されている。
【0036】
そして歯科医院や歯科技工所等において、石膏を用いた各種作業の過程において、石膏の一部が水道水によってシンク200内に洗い落とされる。洗い落とされた石膏を含む水は下流側配管133に排出され、一旦石膏トラップ250内に溜められる。石膏トラップ250内では導入した水中の石膏成分が沈降・分離され、その後の水が下流側配管135に排水される。
【0037】
一方定期的に(例えば1日に数回〜数十回)、蛇口201から吐出される水(水道水)を直接悪臭防止具1−1の石膏沈殿用液体溜部131に落とす。このとき石膏沈殿用液体溜部131には略ドーム形状の給水受け面135が形成されているので、この面に前記蛇口201からの水が落ち、水跳ねが防止される。そしてこの石膏沈殿用液体溜部131に溜まった水は、流入口139から外装容器100内に導入される。石膏沈殿用液体溜部131には蛇口201から直接水が供給されるが、例えば蛇口201を操作する手に石膏が付いていたりして供給される水に石膏が混じる場合がある。しかしながらこの水は一旦石膏沈殿用液体溜部131に溜まるので、この石膏沈殿用液体溜部131の底面に石膏が溜まり、従って流入口139から外装容器100内に導入される水中の石膏成分は効果的に減少される。
【0038】
外装容器100内に導入された水は外装容器100内を略満たし、このとき図3に示す微生物群保持本体10全体がほぼ水中に水没し、好気性微生物群担持体40と微生物群保持体60中で増殖した好気性微生物群が水中に拡散される。拡散した好気性微生物群を含む水の一部は、外装容器100上部の各排水口105からオーバーフローして外部に排出され、シンク200内に落とされる。そしてこの好気性微生物群を含む水はシンク200から石膏トラップ250に導入される。そしてこの好気性微生物群は石膏トラップ250内の有機物を分解するとともに悪臭を発する雑菌の繁殖を抑える。これによって石膏トラップ250内の悪臭が抑制され、この悪臭がシンクの排水口から出てくる恐れがなくなる。
【0039】
図7は排水口105の部分を下側から見た要部拡大斜視図である。同図に示すように外装容器100からの排水は、一対の側壁部109と底壁部111とカバー部137とによって囲まれた開口である排水部114から行われる。底壁部111を設けたのは、この排水部114から排出される水が外装容器100の外周面を伝わらないようにするためである。特にこの実施形態では底壁部111に排水ガイド部113を設けているので、さらに確実に排出される水が外装容器100の外周面を伝わらないようにすることができる。これによって外装容器100の外周面に石膏が付着することを確実に防げる。
【0040】
以上説明したようにこの悪臭防止具1−1によれば、好気性微生物群を担持して増殖させる好気性微生物群担持体40の周囲にこれを囲むように微生物群保持体60を設置し、同時に外装容器100内に一旦水を溜めた後に排水口105から排水する構成としているので、好気性微生物群担持体40及び微生物群保持体60内部の空隙内には常に水が満たされた状態で安定して好気性微生物群が増殖・保持される領域となる。そして前述のように増殖した好気性微生物群を含有する水の一部が排水口105から石膏トラップ200に安定して供給でき、前記好気性微生物群が石膏トラップ200内の有機物を分解するとともに悪臭を発する雑菌の繁殖を抑える。これらのことから長期にわたってメンテナンスフリーで安定して容易且つ低コストに石膏トラップ200から発生する悪臭を防止することができる。
【0041】
またこの悪臭防止具1−1は、取付具170によってシンク200の内側面に取り付けられるので、悪臭防止具1−1をシンク200内での各種作業の邪魔にならない位置に設置することができる。
【0042】
またこの悪臭防止具1−1は、外装容器100を塞ぐ蓋130を有し、この蓋130上面の中央部分に凹状の石膏沈殿用液体溜部131を形成し、この石膏沈殿用液体溜部131の周囲の内周側面に流入口139を設けているので、蓋130上面の石膏沈殿用液体溜部131に供給された水は一旦この石膏沈殿用液体溜部131に溜まった後、流入口139から悪臭防止具1−1内に導入される。従って水中に石膏成分が含まれていても、この水を石膏沈殿用液体溜部131内に溜めた段階で石膏成分が沈殿し、悪臭防止具1−1内に導入される石膏成分を減少させることができる。これによって悪臭防止具1−1の使用可能期間の長期化が図れる。
【0043】
またこの悪臭防止具1−1は、好気性微生物群担持体40を、水導入口22を有する担持体ケース20に収納し、さらに担持体ケース20の外周に微生物群保持体60を保持する保持片23を形成したので、好気性微生物群担持体40と微生物群保持体20の両者の保持が容易且つ確実に行える。
【0044】
〔第2実施形態〕
図8は本発明の第2実施形態にかかる石膏トラップの悪臭防止具1−2の斜視図である。同図に示す悪臭防止具1−2において、前記図1〜図7に示す悪臭防止具1−1と同一又は相当部分には同一符号(但し添え字「−2」を付する)を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。
【0045】
この悪臭防止具1−2において前記悪臭防止具1−1と相違する点は、蓋130−2の構造のみである。即ち蓋130−2は、外装容器本体100A−2の上部の開口を塞ぐ略矩形平板状に合成樹脂を成形して構成されている。蓋130−2の中央(悪臭防止具1−1の蓋130では石膏沈殿用液体溜部131となっていた部分、即ち縁部133を除く中央部分)は上下に貫通する流入口139−2となっており、この流入口139−2全体を覆うように石膏侵入防止用網141−2が設置されている。石膏侵入防止用網141−2は水は通すが、石膏成分は通さない、きめの細かい網で構成されている。
【0046】
以上のように構成された悪臭防止具1−2に、定期的に(例えば1日に数回〜数十回)水(水道水)が供給されると、この水は石膏侵入防止用網141−2を通して外装容器100−2内に導入される。石膏侵入防止用網141−2に供給される水に石膏成分が混じっている場合があるが、この石膏成分は石膏侵入防止用網141−2上に残って溜まり、従って流入口139−2から外装容器100−2内に導入される水中の石膏成分は効果的に減少される。
【0047】
外装容器100−2内に水が導入された後の水の流れ、作用効果は、上記悪臭防止具1−1の場合と同一なのでその説明は省略する。
【0048】
〔第3実施形態〕
図9は本発明の第3実施形態にかかる石膏トラップの悪臭防止具1−3の斜視図である。同図に示す悪臭防止具1−3において、前記図1〜図7に示す悪臭防止具1−1と同一又は相当部分には同一符号(但し添え字「−3」を付する)を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。
【0049】
この悪臭防止具1−3は、微生物群保持本体10−3と、この微生物群保持本体10−3を収納する外装容器100−3(蓋がなく、外装容器本体100A−3で構成される)とを具備して構成されている。
【0050】
微生物群保持本体10−3は、担持体ケース20−3内に好気性微生物群担持体40−3を収納すると共に、担持体ケース20−3の周囲を囲むように微生物群保持体60−3を設置して構成されている。担持体ケース20−3は略球状で内部が中空のケース本体部21−3に、内部の空間に連通することで外部から好気性微生物群担持体40−3に至る水導入口22−3を設けて構成されている。好気性微生物群担持体40−3及び微生物群保持体60−3は、何れも前記悪臭防止具1−1の好気性微生物群担持体40及び微生物群保持体60と同一のものなので、その説明は省略する。
【0051】
外装容器本体100A−3は、合成樹脂を上面が解放された円形箱型に成形して構成されている。外装容器本体100A−3は、下記するごみ受けカゴ205−3内に収納設置される外径寸法形状を有している。外装容器本体100A−3の内部は、前記微生物群保持本体10−3を収納する収納部101−3となっている。外装容器本体100A−3の外周面の同一高さの位置には略等間隔に8つの円形の貫通孔からなる排水口105−3が形成されている。各排水口105−3の高さ位置は、この外装容器本体100A内に収納した微生物群保持本体10−3の上部近傍位置としている。
【0052】
図10は悪臭防止具1−3の1使用方法を示す図である。同図に示すように悪臭防止具1−3は、シンク200−3の排水口203−3内に収納設置されるごみ受けカゴ205−3の中に収納設置される。なお図示はしていないが、ごみ受けカゴ205−3と悪臭防止具1−3を収納した排水口203−3の開口には、通常排水口蓋が取り付けられる。
【0053】
そして歯科医院や歯科技工所等において、石膏を用いた各種作業の過程において、石膏の一部が水道水によってシンク200−3内に洗い落とされる。このとき悪臭防止具1−3は排水口203−3内にあるので、シンク200−3内での各種作業の邪魔にならない。洗い落とされた石膏を含む水は排水口203−3内に流れ込み、ごみ受けカゴ205−3内の悪臭防止具1−3内を通過した後に、図示しない下流側配管に排出され、図示しない石膏トラップ内に溜められ、前記悪臭防止具1−1の場合と同様に石膏トラップ内で水中の石膏成分が捕集され、その後その下流側配管に排水される。
【0054】
一方悪臭防止具1−3の収納部101−3内に供給された水は、外装容器100−3内を略満たし、このとき微生物群保持本体10−3がほぼ水中に水没し、好気性微生物群担持体40−3と微生物群保持体60−3中で増殖した好気性微生物群が水中に拡散される。拡散した好気性微生物群を含む水の一部は、外装容器100−3の各排水口105−3から外部に排出され、下流側配管を通して石膏トラップに導入される。そしてこの好気性微生物群は石膏トラップ内の有機物を分解するとともに悪臭を発する雑菌の繁殖を抑え、これによって石膏トラップ内の悪臭が抑制され、この悪臭がシンク200−3の排水口203−3から出てくる恐れがなくなる。
【0055】
なおこの悪臭防止具1−3の場合、石膏を含む水がそのまま悪臭防止具1−3内に入り込むことになってその製品寿命を短くしてしまう恐れがあるが、外装容器本体100A−3の収納部101−3の上部開口を覆うように、悪臭防止具1−2で用いた石膏侵入防止用網141−2と同じ石膏侵入防止用網を取り付けることによってこれを防止しても良い。なお石膏侵入防止用網の上部に溜まる石膏成分は悪臭防止具1−3の外壁面を伝って石膏トラップに流されていく。
【0056】
なおこの例では悪臭防止具1−3をシンク200−3の排水口203−3内に設置したごみ受けカゴ205−3内に収納設置したが、図6に示す石膏トラップ250内に設置した図示しないごみ受けカゴ内に同様に設置してもよい。その場合は悪臭防止具1−3を石膏トラップ250内のごみ受けカゴ内に収納できる外径寸法形状に構成する。
【0057】
またこの悪臭防止具1−3は、シンク200−3内(排水口203−3内以外の部分)にそのまま設置しても良い。悪臭防止具1−3をシンク200−3内での各種作業の邪魔にならない位置に設置し、定期的に蛇口から吐出される水(水道水)を直接悪臭防止具1−3に落とせば、悪臭防止具1−3内に石膏成分が溜まることなく、同時に石膏トラップに好気性微生物群を継続的に供給することができる。
【0058】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0059】
1−1 悪臭防止具
10 微生物群保持本体
20 担持体ケース
22 水導入口
23 保持片
40 好気性微生物群担持体
60 微生物群保持体
100 外装容器
100A 外装容器本体
105 排水口
130 蓋
131 石膏沈殿用液体溜部
133,135 下流側配管
139 流入口
170 取付具
200 シンク
250 石膏トラップ
141−2 石膏侵入防止用網
203−3 排水口
205−3 ごみ受けカゴ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクの排水口から排水される水を導入し、その水中の石膏成分を分離して溜めると同時に分離後の水を下流側配管に排出する石膏トラップの悪臭防止具であって、
前記悪臭防止具は、
好気性微生物群を担持している好気性微生物群担持体と、
内部に十分な空隙を有するように繊維を編み、前記好気性微生物群担持体の周囲を囲んで設置され、水で満たされた前記空間内に微生物を保持させる微生物群保持体と、
前記好気性微生物群担持体と微生物群保持体とを収納する外装容器とを具備し、
前記外装容器には、この外装容器内に水を給水する流入口と、この外装容器から水を排出する排水口とを設け、前記排水口は前記好気性微生物群担持体と微生物群保持体とを水に浸した状態で水を排出する位置に設けられていることを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具。
【請求項2】
請求項1に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、
前記悪臭防止具は、前記シンクの内側面に取り付けられる取付具を有するか、或いは前記シンクの排水口内に設置されるごみ受けカゴ内に収納設置される外径寸法形状を有するか、或いは前記石膏トラップ内に設置されるごみ受けカゴ内に設置される外径寸法形状を有することを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具。
【請求項3】
請求項2に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、
前記外装容器はこれを塞ぐ蓋を有し、この蓋上面の中央部分に凹状の石膏沈殿用液体溜部を形成し、この石膏沈殿用液体溜部の周囲の内周側面に前記流入口を設けたことを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具。
【請求項4】
請求項2に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、
前記外装容器はこれを塞ぐ蓋を有し、この蓋に前記流入口を設けると共に、この流入口を覆うように石膏侵入防止用網を設置したことを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具。
【請求項5】
請求項2又は3又は4に記載の石膏トラップの悪臭防止具であって、
前記好気性微生物群担持体は担持体ケースに収納されており、この担持体ケースには外部から前記好気性微生物群担持体に至る水導入口を設け、
さらに担持体ケースには、その外周に前記微生物群保持体を保持する保持片が形成されていることを特徴とする石膏トラップの悪臭防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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