説明

石膏ボードおよび石膏ボードの作製方法

石膏マトリクスおよび0.1〜10重量%の炭素粒子を含み、該炭素粒子の粒径(d50)が0.5〜4mmの範囲内である石膏ボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードおよび石膏ボードの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボードの作製は、長く知られている。例えば、石膏ボードの作製は、米国特許第4,009,062号に記載されている。通常の方法では、凝結性(settable)硫酸カルシウム相を含む石膏スラリーを水と混合し、連続的に板紙(cardboard sheet)シートに塗布して第2の板紙で覆う。2枚の板紙は、それぞれ、表ライナーおよび裏ライナーと呼ばれる。
【0003】
次に、この複合ストランドは、いわゆる凝結ベルト上を移動し、凝結ベルトの終端部では、凝結性硫酸カルシウム相の硫酸カルシウム二水和物へのほぼ完全な変換が起こるはずである。この硬化後、シートは、個々のボードに切断され、ボード中に未だ含まれる水分が加熱多段式乾燥機中で除去される。
【0004】
使用する凝結性石膏スラリーは、通常、高回転数の連続ミキサで製造される。
【0005】
ボードを安定化するためには、ボードを囲う板紙を石膏芯材にしっかりと接着する必要があり、且つ石膏芯材が高い強度を有する必要がある。
【0006】
対応する石膏ボードは、天井および壁用の内装に広範囲に使用される。
【0007】
いわゆる孔あきボードもまた当業者に知られている。孔あきボードでは、例えば円形、溝状、矩形などの開口が、穴開け機を用いて打ち出される。得られる天井が高い音吸収性を示すため、このような孔あきボードは、通常、天井構造に使用される。この目的のため、孔あきボードは、通常、一般に亜鉛メッキスチール枠からなる、適切な基板構造物上に取り付けられる。
【0008】
孔を開けるために、ボード芯材は、高い内部強度を有し、実質的に空気を含んでいないことが必要とされる。さらに、表ライナーおよび裏ライナーの石膏芯材への良好な接着が保証されなければならない。
【0009】
原則として、石膏ボードは、可能な限り簡単にネジ留めされる必要があるが、特に天井に取り付けられる場合には、形状にたわみが見られないか、またはたわみがわずかでなければならない。これは、特に、ボードが大気中水分の多い部屋で使用される場合に問題がある。
【0010】
石膏ボードの種々の変形形態が知られている。例えば、国際出願第2006/016200号は、1〜5%の非晶質炭素および15〜25%の黒鉛を石膏マトリクス中に含む石膏マトリクスを開示する。特にナノ粒子状の、非晶質炭素の破片により、板紙が導電性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特性が改善された石膏ボード、特に、たわみの問題が低減または回避されることにより、石膏芯材の強度が高く板紙の接着性が良好なボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、この目的は、石膏マトリクスおよび0.1〜10重量%の炭素粒子を含み、該炭素粒子の粒径(d50)が0.5〜4mmの範囲内である石膏ボードにより達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「石膏マトリクス」は、別の成分を含んでいてもよい、実質的に硫酸カルシウム二水和物からなる石膏芯材を指す。石膏ボードとして、ボードはまた、主要な表面上に2層の板紙層を有する。
【0014】
d50は、マトリクス中に含まれる全炭素粒子の50重量%が対応する径のふるいを通過することができ、50重量%が残留する粒径である。
【0015】
驚くべきことに、炭素粒子は、石膏芯材中で均一に分布し、炭素粒子密度(density)が低くても、石膏スラリー中で軽粒子が最上部に浮遊することがないかほとんどないことが分かった。含有される炭素粒子により、石膏芯材の安定性が改善される。炭素粒子が最上部に浮遊しないため、驚くべきことに板紙への接着性に対する負の影響が認められない。
【0016】
好ましい実施形態では、炭素粒子の含有量は、乾燥石膏芯材を基準として、5〜8重量%の範囲内である。
【0017】
具体的には、炭素粒子として黒鉛が適している。例えば、黒鉛箔断片、膨張性黒鉛、またはこれらの混合物が適している。
【0018】
黒鉛箔断片は、例えば、Graphit Kropfmuhl AG社からO-SM/Fの商品名で入手可能である。これらは、黒鉛からプレスされ、続いて切断された箔である。適切なd50値は、2〜4mmである。
【0019】
例えば、膨張性黒鉛としては、Graphit Kropfmuhl AG社の商品EGPMを使用することができる。膨張性黒鉛は、熱の作用により膨張することができる材料であり、最終体積が開始時体積の数倍となることがある。
【0020】
本発明によれば、膨張性黒鉛は、好ましくは膨張した形で使用される。
【0021】
好ましい実施形態では、異なった炭素粒子が組み合わされる。好ましくは少なくとも2種の異なった炭素粒子、より好ましくは少なくとも3種の異なった炭素粒子が使用される。具体的には、黒鉛箔断片と膨張性黒鉛との混合物、あるいは黒鉛箔断片と人工非晶質黒鉛もしくは天然黒鉛との組み合わせ、または黒鉛箔断片と膨張性黒鉛との混合物と人工非晶質黒鉛もしくは天然黒鉛との組み合わせが適していることが証明された。
【0022】
例えば、非晶質黒鉛粉末としては、Graphit Kropfmuhl AG社の商品AM385を使用することができる。典型的な径は、例えば、91.5重量%の粉末に対して、>325μmである。
【0023】
例えば、天然黒鉛としては、Kropfmuhl社の商品FLP 90 C2-SCを使用することができる。
【0024】
箔断片の典型的な量は、1〜4.5重量%の範囲内であり、他の各粒子についての典型的な量は、1〜3重量%の範囲内である。
【0025】
(人工または天然の)非晶質黒鉛が含まれる場合、微粒子状の黒鉛がさらに含まれる。
【0026】
本発明のある実施形態では、石膏マトリクスは、さらに1〜10重量%の炭酸カルシウムを含む。炭酸カルシウムにより、ネジ留め特性が改善される。
【0027】
本発明のある実施形態では、ボードは孔あきボードの形で使用される。すなわち、ボード作製後、打ち抜きにより溝、円状の孔、四角状の孔、または矩形状の孔が設けられる。
【0028】
驚くべきことに、本発明のボードは、強固な石膏芯材を有し、さらに板紙が非常に良好な接着性を示すため、特に良好なネジ留め特性を有することが分かった。
【0029】
大気中水分が多い室内においてさえ、本発明のボードは、ほとんどたわみを示さない。20℃、相対湿度90%において試験した場合、ボードは、縦目方向(machine direction)に3mm未満、横目方向(cross−machine direction)に5mm未満のたわみを示した。
【0030】
本発明のボードは、良好な芯材強度を示す。強度は、好ましくは150N以上であり、より好ましくは165N以上である。ボードの熱伝導率は、好ましくは>0.4W/mKまたは>0.45W/mKであり、すなわち通常のボードの熱伝導率より増大している。
【0031】
炭素粒子、特に黒鉛が存在するにもかかわらず、ボードは非導電性である。すなわち、乾燥ボードの抵抗は、500Vまたは1000Vの線間電圧の印可で、>500MΩである。しかし、ボードは高い熱伝導率を有する。
【0032】
本発明はまた、
・0.1〜10重量%の炭素粒子を含み、該炭素粒子の粒子径(d50)が0.5〜4mmの範囲内である凝結性石膏スラリーを作製するステップ、
・前記石膏スラリーを板紙シートに塗布するステップ、
・スラリーを第2の板紙シートで覆うステップ、
・石膏スラリーが少なくとも部分的に凝結した後、板紙シート切断してボードにするステップ、を含む本発明の石膏ボードの作製方法にも関する。
【0033】
ある実施形態では、凝結後にボードに孔が開けられて孔あきボードが得られる。
【0034】
別の実施形態では、石膏スラリーに1〜10重量%の炭酸カルシウムを添加してもよく、細かく粉砕された炭酸カルシウムの使用が特に有用であることが分かった。好ましくは、使用される炭酸カルシウムの粒径は、<300μmである。
【0035】
石膏スラリーの作製には、水および焼き石膏(CaSO×0.5HO)が特に適している。石膏に対する水の割合を低く保つために、石膏スラリーを、他の助剤、特に可塑剤と混和してもよい。
【0036】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0037】
実施例1
芯材強度の決定
石膏ボードから、ボード幅にわたって、40℃で300mm幅のストリップを切り取り、穴を有する厚さ10mmのスチールプレート上に置く。長さ40mm、厚さ2.1〜2.4mmの先のとがったスチール製のクギを、表面から裏面へ毎分200mmの速度で、ボードの裏面からクギが見えるまでボードに突き刺す。最大抵抗を決定し、ボードの少なくとも6箇所の測定点についての平均値を決定する。
【0038】
実施例2
たわみ試験
たわみ試験用に、厚さ12.5mmのボードを、高精度丸鋸を使用して、100*670サイズの、複数の長さ方向および幅方向のストリップに慎重に切り分ける。長さ方向の切り口を下にして置きながら、試料を恒量(constant weight)まで40℃で乾燥させる。600mmの間隔で試料を試料スタックに置き、0.01mmの精度でたわみを測定する(開始たわみ)。次に、20℃±1℃および相対湿度90%±1%の耐候試験キャビネット中で、軸受間に距離60mmの領域を有するステージ上に、表面を下にして7日間試料を保存する。たわみは、その後測定されるたわみから開始たわみを引くことで得られる。
【0039】
実施例3
以下の組成を有する石膏スラリーを作製した。
127.55g 焼き石膏
90.00g 水
0.45g 可塑剤
10.00g CaCO
7.50g 黒鉛箔断片 O/SMF
1.50g 膨張性黒鉛 EGMP
3g FLP黒鉛
【0040】
これらを通常の方法で板紙シートに塗布して、別の板紙シートで覆った。硬化後、以下の値を得た。
【0041】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏マトリクスおよび0.1〜10重量%の炭素粒子を含み、前記炭素粒子の粒径(d50)が0.5〜4mmの範囲内である石膏ボード。
【請求項2】
前記炭素粒子の含有量が5〜8重量%の範囲内である、請求項1に記載の石膏ボード。
【請求項3】
前記炭素粒子が黒鉛であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の石膏ボード。
【請求項4】
前記黒鉛が黒鉛箔断片、膨張性黒鉛、非晶質黒鉛、天然黒鉛、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の石膏ボード。
【請求項5】
前記炭素粒子の粒径(d50)が1〜3mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の石膏ボード。
【請求項6】
前記石膏マトリクスがさらに1〜10重量%の炭酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも1項に記載の石膏ボード。
【請求項7】
前記ボードが打ち抜き可能であることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の石膏ボード。
【請求項8】
請求項1〜7の少なくとも1項に記載の石膏ボードの作製方法であって、
0.1〜10重量%の炭素粒子を含み、前記炭素粒子の粒子径(d50)が0.5〜4mmの範囲内である凝結性石膏スラリーを作製するステップ、
前記石膏スラリーを板紙シートに塗布するステップ、
前記スラリーを第2の板紙シートで覆うステップ、
前記石膏スラリーが少なくとも部分的に凝結した後、前記板紙シートを切断してボードにするステップ、
を含む方法。
【請求項9】
使用される1枚または2枚の板紙シートが導電性板紙からなる、請求項8に記載の石膏ボードの作製方法。
【請求項10】
凝結後に前記ボードに孔を開けて孔あきボードを得ることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記石膏スラリーに1〜10重量%の炭酸カルシウムが添加される、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素粒子が、黒鉛粒子、特に黒鉛箔断片、膨張性黒鉛、非晶質黒鉛、天然黒鉛、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記石膏スラリーの作製に、水および焼き石膏が使用されることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
通常の助剤、特に可塑剤が添加されることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−518803(P2013−518803A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552365(P2012−552365)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051801
【国際公開番号】WO2011/095634
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(510094539)
【Fターム(参考)】